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特許7600789情報処理システム、方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】情報処理システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G05B23/02 G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021039413
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022139154
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大串 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭朗
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-012191(JP,A)
【文献】国際公開第2019/202934(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理システムであって、
前記情報処理システムは、
制御対象を駆動する駆動機器の制御プログラムを実行し前記駆動機器を制御する指令値を出力するコントローラと、シミュレータと、を備え、
前記シミュレータは、
前記制御プログラムを実行することにより前記コントローラの挙動を模擬するコントローラエミュレータと、
前記コントローラエミュレータによって前記制御プログラムが実行されるときに出力される前記指令値を入力として、前記駆動機器のモデルを実行することにより当該駆動機器の挙動値を算出するアクチュエータエミュレータと、を有し、
前記情報処理システムは、さらに、
前記コントローラによって前記制御プログラムが実行されているとき、前記駆動機器の挙動を示す挙動値を収集する第1収集部と、
前記コントローラエミュレータによって前記制御プログラムが実行されて、前記アクチュエータエミュレータによって前記挙動値が算出されるシミュレーションにおいて、算出される当該挙動値を収集する第2収集部と、
前記第1収集部によって収集された時系列の前記挙動値と、前記第2収集部によって収集された時系列の前記挙動値との間の同一時間または同一時刻での差に基づき、前記モデルに予め設定されたモデルパラメータを調整する調整部と、を備え、
前記コントローラは、さらに、前記駆動機器の挙動値を入力として、第1制御パラメータに基づき前記制御プログラムを実行し、
前記コントローラエミュレータは、さらに、前記アクチュエータエミュレータによって算出される挙動値を入力として、第2制御パラメータに基づき前記制御プログラムを実行し、
前記調整部は、さらに、
前記第2制御パラメータを、前記第1制御パラメータに整合するように調整し、その後、前記モデルパラメータの調整を実施する、情報処理システム。
【請求項2】
前記第1収集部によって収集された時系列の前記挙動値と、前記第2収集部によって収集された時系列の前記挙動値とを、収集された時間に基づき、時間軸上で互いに関連付けて出力する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記関連付けは、前記挙動値を縦軸とし、前記時間軸を横軸とした2次元平面の上に、前記第1収集部によって収集された時系列の前記挙動値と、前記第2収集部によって収集された時系列の前記挙動値とを、収集された時間に基づきプロットすることを含む、請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記モデルパラメータは、前記駆動機器の機械的特性または物理的特性に基づくパラメータを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記シミュレーションにおいて、
前記アクチュエータエミュレータによって実行されるモデルは、前記調整部によって調整された前記モデルパラメータが設定されたモデルを含む、請求項1から4のいずれか1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記調整部は、
前記同一時間または前記同一時刻での前記差に基づき、前記モデルパラメータを調整するためのガイド情報を出力する、請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記ガイド情報は、調整対象のモデルパラメータの識別子と、当該モデルパラメータの調整量とを含む、請求項に記載の情報処理システム。
【請求項8】
ユーザ操作によって指定される調整対象のモデルパラメータおよび当該モデルパラメータの調整量に基づき、前記モデルに設定されている前記モデルパラメータを調整する、請求項に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記シミュレータは、前記差が予め定められた条件を満たすまで、前記調整部によって前記調整が実施される毎に、調整後のモデルパラメータが設定されたモデルを用いて前記シミュレーションを実行する、請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項10】
制御対象の駆動機器を制御する指令値を出力する制御プログラムをコントローラに実行させ、当該指令値に従って当該駆動機器を制御する制御ステップと、
前記制御プログラムを実行することにより前記コントローラの挙動を算出するコントローラエミュレーションを実行するステップと、
前記コントローラエミュレーションによって前記制御プログラムが実行されるときに出力される前記指令値を入力として、前記駆動機器のモデルを実行することにより当該駆動機器の挙動値を算出するアクチュエータエミュレーションを実行するステップと、
前記コントローラによって前記制御プログラムが実行されているとき、前記駆動機器の挙動を示す挙動値を収集する第1収集ステップと、
前記コントローラエミュレーションにおいて前記制御プログラムが実行されているとき、前記アクチュエータエミュレーションによって算出される前記挙動値を収集する第2収集ステップと、
前記第1収集ステップによって収集された時系列の前記挙動値と、前記第2収集ステップによって収集された時系列の前記挙動値との間の同一時間または同一時刻での差に基づき、前記モデルに予め設定されたモデルパラメータを調整するステップと、
前記制御ステップは、前記コントローラに、前記駆動機器の挙動値を入力として、第1制御パラメータに基づき前記制御プログラムを実行させるステップを有し、
前記コントローラエミュレーションを実行するステップは、前記アクチュエータエミュレーションによって算出される挙動値を入力として、第2制御パラメータに基づき前記制御プログラムを実行するステップを有し、
前記調整するステップは、
前記第2制御パラメータを、前記第1制御パラメータに整合するように調整し、その後、前記モデルパラメータの調整を実施するステップを有する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法をプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、FA(Factory Automation)の機器を制御するプログラムを開発する環境を提供するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な生産現場において、生産工程を自動化するためのFAシステムが普及している。FAシステムは生産工程に備えられる制御対象の機器と、制御プログラムを実行するPLC(Programmable Logic Controller)などの制御装置を備える。
【0003】
通常、設計者は、制御プログラムの開発にシミュレータを利用することができる。シミュレータは、制御対象の制御プログラムを実行し、その実行結果を用いて当該制御対象の挙動を算出するためのモデルを実行する。シミュレーションを支援するための技術に関し、特開2016-42378号公報(特許文献1)は、視覚センサを含めた統合的なシミュレーションを実現することが可能なシミュレーション装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-42378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生産現場の多様性が高まる傾向にあり、当該多様性に追従するために、制御対象の制御プログラムと制御対象の駆動する機器のモデルを簡単に取得したいとの要望がある。特許文献1は、制御プログラムと対応のモデルを取得する仕組みは提案していない。
【0006】
本開示は、制御対象の制御プログラムと当該制御対象の駆動機器のモデルとを簡単に取得できる構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる情報処理システムは、駆動機器の制御プログラムを実行し駆動機器を制御する指令値を出力するコントローラと、シミュレータと、を備え、シミュレータは、制御プログラムを実行することによりコントローラの挙動を模擬するコントローラエミュレータと、コントローラエミュレータによって制御プログラムが実行されるときに出力される指令値を入力として、駆動機器のモデルを実行することにより当該駆動機器の挙動値を算出するアクチュエータエミュレータと、を有る。情報処理システムは、コントローラによって制御プログラムが実行されているとき、駆動機器の挙動を示す挙動値を収集する第1収集部と、コントローラエミュレータによって制御プログラムが実行されて、アクチュエータエミュレータによって挙動値が算出されるシミュレーションにおいて、算出される当該挙動値を収集する第2収集部と、第1収集部によって収集された時系列の挙動値と、第2収集部によって収集された時系列の挙動値との間の同一時間または同一時刻での差に基づき、モデルに予め設定されたモデルパラメータを調整する調整部と、をさらに備える。
【0008】
上述の開示によれば、調整部は、制御プログラムがコントローラによって実行されるとき第1収集部が駆動機器から収集する時系列の挙動値と、当該駆動機器のモデルから第2収集部が収集した時系列の挙動値との間の同一時間または同一時刻での差に基づき、モデルパラメータを調整する。これにより、実機の駆動機器の挙動に整合するように、当該モデルが有するモデルパラメータを調整することができて、制御対象の駆動機器の制御プログラムと当該駆動機器のモデルとを簡単に取得できる。
【0009】
上述の開示において、情報処理システムは、第1収集部によって収集された挙動値と、第2収集部によって収集された挙動値とを、収集された時間に基づき、時間軸上で互いに関連付けて出力する。
【0010】
上述の開示によれば、実機である駆動機器の挙動と、当該駆動機器のモデルによって算出された挙動とを関連付けて、ユーザに提示することができる。
【0011】
上述の開示において、関連付けは、挙動値を縦軸とし、時間軸を横軸とした2次元平面の上に、第1収集部によって収集された時系列の挙動値と、第2収集部によって収集された時系列の挙動値とを、収集された時間に基づきプロットすることを含む。
【0012】
上述の開示によれば、実機である駆動機器の挙動と、当該駆動機器のモデルによって算出された挙動とを、それらの挙動値をグラフ上にプロットして関連付けを示すことができる。
【0013】
上述の開示において、モデルパラメータは、駆動機器の機械的特性または物理的特性に基づくパラメータを含む。
【0014】
上述の開示によれば、モデルパラメータは駆動機器の機械的特性または物理的特性のパラメータを含むことにより、モデルによって算出される挙動に、駆動機器の機械的挙動または物理的挙動を含めることができる。
【0015】
上述の開示において、シミュレーションにおいて、アクチュエータエミュレータによって実行されるモデルは、調整部によって調整されたモデルパラメータが設定されたモデルを含む。
【0016】
上述の開示によれば、調整後パラメータが設定されたモデルを用いて、シミュレーションが実施されることにより、シミュテーションにおいてモデルから算出される挙動値に、モデルパラメータの調整結果を反映させることができる。
【0017】
上述の開示において、コントローラは、駆動機器の挙動値を入力として、第1制御パラメータに基づき制御プログラムを実行し、コントローラエミュレータは、アクチュエータエミュレータによって算出される挙動値を入力として、第2制御パラメータに基づき制御プログラムを実行し、調整部は、さらに、第2制御パラメータを、第1制御パラメータに整合するように調整し、その後、モデルパラメータの調整を実施する。
【0018】
上述の開示によれば、第2制御パラメータが第1パラメータに整合されてからモデルパラメータの調整が実施される。したがって、第2制御パラメータと第1パラメータ制御との間の相違が、モデルパラメータの調整量に影響することを排除した上で、モデルパラメータを調整できる。
【0019】
上述の開示においては、調整部は、上記の同一時間または同一時刻での差に基づき、モデルパラメータを調整するためのガイド情報を出力する。
【0020】
上述の開示によれば、モデルパラメータを調整するためのガイド情報をユーザに提示することができる。
【0021】
上述の開示において、ガイド情報は、調整対象のモデルパラメータの識別子と、当該モデルパラメータの調整量とを含む。
【0022】
上述の開示によれば、ガイド情報として、調整対象のパラメータとその調整量を提示することができる。
【0023】
述の開示において、ユーザ操作によって指定される調整対象のモデルパラメータおよび当該モデルパラメータの調整量に基づき、モデルに設定されているモデルパラメータを調整する。
【0024】
上述の開示によれば、調整後のパラメータをモデルに再設定できる。
【0025】
上述の開示において、シミュレータは、上記の差が予め定められた条件を満たすまで、調整部によって調整が実施される毎に、調整後のモデルパラメータが設定されたモデルを用いてシミュレーションを実行する。
【0026】
この開示によれば、調整部によって調整が実施される毎に、調整後のモデルパラメータが設定されたモデルを用いてシミュレーションが繰り返し実行されて、調整とシミュレーションの繰り返しを、上記の差が予め定められた条件を満たすときに自動的に終了させることができる。
【0027】
本開示に係る方法は、制御対象の駆動機器を制御する指令値を出力する制御プログラムをコントローラに実行させ、当該指令値に従って当該駆動機器を制御するステップと、制御プログラムを実行することによりコントローラの挙動を算出するコントローラエミュレーションを実行するステップと、コントローラエミュレーションによって制御プログラムが実行されるときに出力される指令値を入力として、駆動機器のモデルを実行することにより当該駆動機器の挙動値を算出するアクチュエータエミュレーションを実行するステップと、コントローラによって制御プログラムが実行されているとき、駆動機器の挙動を示す挙動値を収集する第1収集ステップと、コントローラエミュレーションにおいて制御プログラムが実行されているとき、アクチュエータエミュレーションによって算出される挙動値を収集する第2収集ステップと、第1収集ステップによって収集される時系列の挙動値と、第2収集ステップによって収集される時系列の挙動値との間の同一時間または同一時刻での差に基づき、モデルに予め設定されているモデルパラメータを調整するステップと、を備える。
【0028】
上述の開示によれば、方法が実施されると、制御プログラムがコントローラによって実行されるとき第1収集部が駆動機器から収集する時系列の挙動値と、当該駆動機器のモデルから第2収集部が収集した時系列の挙動値との間の同一時間または同一時刻での差に基づき、モデルパラメータが調整される。これにより、実機の駆動機器の挙動に整合するように、当該モデルに設定されるモデルパラメータを調整することができて、制御対象の駆動機器の制御プログラムと当該駆動機器のモデルとを簡単に取得できる。
【0029】
本開示の他の局面によれば、上記に述べた方法をプロセッサに実行させるためのプログラムが提供される。
【0030】
上述に開示において、プログラムがプロセッサによって実行されると、制御プログラムがコントローラによって実行されるとき第1収集部が駆動機器から収集する時系列の挙動値と、当該駆動機器のモデルから第2収集部が収集した時系列の挙動値との間の同一時間での差に基づき、モデルパラメータが調整される。これにより、実機の駆動機器の挙動に整合するように、当該モデルに設定されるモデルパラメータを調整することができて、制御対象の駆動機器の制御プログラムと当該駆動機器のモデルとを簡単に取得できる。
【発明の効果】
【0031】
本開示によれば、制御対象の制御プログラムと、制御対象の駆動機器のモデルとを簡単に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施の形態に係る情報処理システム1の構成を模式的に示す図である。
図2】本実施の形態に係る開発環境の一例を模式的に示す図である。
図3】本実施の形態に係る制御対象を有するFAシステム50の構成を模式的に示す図である。
図4】本実施の形態に係る制御プログラム15の一例を模式的に示す図である。
図5】本実施の形態に係るパラメータの作成を支援するUIの一例を模式的に示す図である。
図6】本実施の形態に係るモデル16の演算式741の一例を示す図である。
図7】本実施の形態に係る制御対象を指定するUIの一例を示す図である。
図8】本実施の形態に係るモデルパラメータを指定するUIの一例を示す図である。
図9】本実施の形態に係る実機の出力に基づく調整の構成の一例を示す図である。
図10】本実施の形態に係る調整処理のためのUIの一例を示す図である。
図11】本実施の形態に係る情報処理装置10の構成の一例を示す模式図である。
図12】本実施の形態に係る作成処理のフローチャートである。
図13】本実施の形態に係る実機の出力に基づく調整処理のフローチャートである。
図14】本実施の形態に係る実機の出力に基づく調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0034】
<A.適用例>
本発明の適用例について説明する。本実施の形態に従う情報処理装置10は、生産工程に備えられる制御対象である機械を駆動するための駆動機器(以下、実機ともいう)の制御プログラム15と当該駆動機器のモデル16を開発する環境を提供する。
【0035】
図2は、本実施の形態に係る開発環境の一例を模式的に示す図である。情報処理装置10は、シミュレータ21を利用してユーザ設定19に基づき制御プログラム15およびモデル16を開発するための開発支援ツール20と、作成された制御プログラム15を実行可能形式に変換するビルダ18と、開発に関する情報を格納する記憶部とを備える。設計者は、情報処理装置10が提供するUIツールを操作して、開発支援ツール20およびビルダ18を操作できる。
【0036】
情報処理装置10は、ビルダ18によって変換された制御プログラム15を、実機を制御するコントローラ51に転送する。コントローラ51は、転送された制御プログラム15を実行することによって実機を制御する。コントローラ51は、典型的にはPLCを含むが、PLCの名称に限定されず、コントローラは実機を制御する制御装置全般を指す概念である。
【0037】
制御プログラム15は、ユーザプログラムの一例であってサイクリック実行型のプログラム言語(たとえば、ラダー言語やST(Structured Text)言語)で記述される。より具体的には、制御プログラム15は、ユーザプログラムを構成するPOU(Program Organization Unit)と呼ばれる基本的な構成要素であるプログラム要素として、FU(Function),FB(Function Block)などを有するラダープログラムを含む。制御プログラム15は、ラダープログラムのようなサイクリック実行型のプログラム言語で記述されるプログラムに限定されず、例えば、逐次実行型の言語で記述されるプログラムも含み得る。本実施の形態では、制御プログラム15を構成するプログラム要素として、主にFBを説明するが、FUであっても本実施の形態は同様に適用できる。
【0038】
ユーザ設定19は、ユーザが指定する制御対象(機械)を識別する識別子を含む制御対象19aと、モデル16のパラメータに関する設定19bと、実機の制御方法を示す制御の仕方19cを有する。
【0039】
記憶部は、制御対象になり得る複数の機械それぞれについて、当該機械を識別する対象ID1381を有するFB(Function Block)セット138と、当該機械を識別する対象ID1391を有するCAD(Computer-Aided Design)セット139とを格納するとともに、後述するペア17を格納する。FBセット138は、対応の機械を制御するための制御演算処理を実現する1または複数のFBを含む。CADセット139は、対応の機械の3次元形状を表す1または複数の画像のデータとともに、制御対象(機械)の駆動機器の基本モデル16Bを含む。基本モデル16Bは、未だ、具体的なモデルパラメータが未設定のモデル、例えば初期値のモデルパラメータが設定された状態のモデルを示す。
【0040】
制御プログラム作成ツール22は、ユーザ設定19の制御対象19aの識別子に基づき、記憶部から当該識別子に一致する対象ID1381のFBセット138を検索する。制御パラメータ設定部23は、検索されたFBセット138のFBに、ユーザ設定19の制御の仕方19cに基づく制御用の制御パラメータを設定する。本実施の形態では、制御の仕方19cは、制御対象の機械または駆動機器の仕様書データが示す制御のための仕様値を含む。制御パラメータ設定部23は、制御の仕方19cが示す仕様値を、予め定められた換算式を用いて、制御パラメータの値に換算し、換算後の制御パラメータをFBに設定する。本実施の形態では、「パラメータ」とは、パラメータを表す変数に相当し、「パラメータを設定する」とは、パラメータを表す変数の種類を設定する、または変数に値を設定することを意味する。また「パラメータを調整する」、「制御プログラム15を調整する」または「モデル16を調整する」とは、本実施の形態では、パラメータの値を調整(変更)することを意味する。
【0041】
制御パラメータは、FBが実現する制御演算処理のパラメータを含む。例えば、制御対象の実機がサーボモータを含む場合、当該制御演算処理はPID(Proportional-Integral-Differential Controller)演算を含み得る。PIDパラメータは、例えばゲイン、目標値、時定数などを含む。制御パラメータの種類は、制御の仕方によって相違し、これらに限定されない。例えば、制御パラメータには、演算のタイミングを示すトリガが含まれ得る。制御パラメータ設定部23が制御パラメータをFBセット138の各FBに設定することにより、仕様に基づく制御プログラム15が作成される。
【0042】
モデル作成ツール24は、ユーザ設定19の制御対象19aに識別子に基づき、記憶部から当該識別子に一致する対象ID1391のCADセット139と基本モデル16Bを検索する。モデルパラメータ設定部25は、検索された基本モデル16Bに、ユーザ設定19の設定19bに基づくモデルの仕様に基づくモデルパラメータを設定することにより、モデル16を作成する。なお、基本モデル16Bは、ユーザ設定19の設定19bによって提供されてもよい。
【0043】
より具体的には、モデルは制御対象の駆動機器(実機)の挙動を算出する物理演算式を含む各種演算式で示されて、モデルパラメータは、当該モデルの演算式に設定されるべきパラメータを表す。モデルパラメータは、実機の機械的特性と物理的特性のパラメータを含む。設定19bは機械的特性と物理的特性とを示す。機械的特性に基づくパラメータ(以下、メカパラメータともいう)は、サイズ、位置などに基づくパラメータを含み、物理的特性のパラメータ(以下、物理パラメータともいう)は、摩擦係数、質量(重さ)などに基づくパラメータを含む。物理パラメータは、例えば、駆動機器がサーボモータを含んで構成される場合、摩擦係数は、モータ軸受けの摩擦係数を含み得る。なお、メカパラメータおよび物理パラメータの種類はこれらに限定されない。
【0044】
開発支援ツール20は、制御パラメータが設定された制御プログラム15およびモデルパラメータが設定されたモデル16を、シミュレータ21を用いて実行することにより、制御パラメータが調整された制御プログラム15を取得し、調整後の制御プログラム15をコントローラ51に転送する。
【0045】
より具体的には、シミュレータ21は、入力としての挙動値に基づき制御プログラム15を実行し、実行結果である制御の指令値を入力としてモデル16の演算を実行し、算出値である実機の挙動を示す挙動値を制御プログラム15の入力として出力する。シミュレータ21は、この一連の処理を、後述するタイムステップti(i=1,2,3・・・)毎に繰り返し実行する。これにより、シミュレータ21は、制御プログラム15およびモデル16を実行することによって、制御プログラム15によって実機が制御された場合の実機の挙動を推定することができる。本実施の形態では、「挙動を算出する」は、「挙動を推定する」または「挙動を模擬する」を包含し得る概念を示す。
【0046】
シミュレーションを実行時は、情報処理装置10は、後述するビジュアライザ27によって、CADセット139のCADデータ(画像)を用いてモデル16が算出する挙動に従う制御対象の動きを視覚化する画像を生成し、生成された画像をディスプレイに表示させる。これにより、設計者に、推定された実機の挙動を視覚的に提示することができる。
【0047】
本実施の形態において、駆動機器はサーボモータ等のアクチュエータを含み、指令値は駆動機器の角速度を含む。モデル16によって算出される挙動値は、サーボモータ等の回転数を含む。なお、「指令値」は角速度に限定されず、例えばサーボモータ等のアクチュエータを含む駆動機器に対しての指令、例えば位置、速度、加速度、ジャーク(加加速度)、角度、角加速度、角加加速度等の数値を指令として表したものであってもよい。
【0048】
設計者は、開発支援ツール20を操作して、制御プログラム15を開発するとき、制御プログラム作成ツール22を操作することにより、仕様を満たす挙動値を導出できるように制御パラメータを調整し、制御プログラム15を作成する。また、設計者は、開発支援ツール20を操作して、モデルパラメータを調整することによって、モデル16を作成する。
【0049】
より具体的には、シミュレータ21は、周期なタイムステップti毎に、制御プログラム15とモデル16を実行する。シミュレーションの開始時に、モデル16は設定19bが示すモデルパラメータが設定されて、制御プログラム15には制御の仕方19cに基づく制御パラメータが設定されている。タイムステップtiにおいて、モデル16からの挙動値を入力にして制御プログラム15が実行されて、当該制御プログラム15からの指令値を入力にしてモデル16が実行されて挙動値が算出さる。次のタイムステプt(i+1)で、制御プログラム15は直前のタイムステップtiで算出された挙動値を入力にして実行される。このように、シミュレータ21によって、タイムステップti毎の時系列の挙動値が導出される。
【0050】
シミュレータ21から導出された時系列の挙動値が、仕様に示される目標の挙動値から乖離している場合、開発支援ツール20は、設計者のユーザ操作に基づき、乖離の程度に基づき制御パラメータを調整し、調整後の制御パラメータが設定された制御プログラム15を用いて、上記のシミュレーションを実施する。開発支援ツール20は、シミュレータ21から導出される時系列の挙動値が、目標の挙動値に整合すると検出されるまで、制御パラメータを調整しながら、シミュレーションを繰り返し実行する。このとき、開発支援ツール20は、ユーザ操作に基づき、モデルパラメータを調整し、調整後のモデル16を用いてシミュレーションを実行してもよい。
【0051】
紐付け部26は、制御プログラム15をモデル16に紐付けてペア17で格納することにより管理する管理手段の一実施例である。より具体的は、開発支援ツール20は、シミュレータ21から導出される時系列の挙動値が、目標の挙動値に整合すると検出したときに、紐付け部26は、調整後の制御パラメータが設定された制御プログラム15をモデル16(または調整後のモデルパラメータが設定されたモデル16)に紐付けて、ペア17を生成し格納する。
【0052】
ユーザ設定19(制御対象19a、設定19bおよび制御の仕方19c)を情報処理装置10に対して入力し、開発支援ツール20を操作することにより、設計者は、仕様を満たすように実機を制御する制御プログラム15を取得し、これを工場の生産現場等のオンライン環境下のコントローラ51に転送することができる。
【0053】
このように制御プログラム15は、開発支援ツール20が提供するオフライン環境において、あらかた調整されているので、オンライン環境で実機を用いた調整時間を削減できる。
【0054】
また、制御プログラム15およびモデル16をペア17で管理することは、両者を、オンライン環境下の制御プログラム15および実機の機械的特性または物理的特性に整合させるシーンにおいて有用である。
【0055】
より具体的には、オンライン環境の変化に因り、コントローラ51が実行する制御プログラム15の制御パラメータは調整され、または実機の機械的特性または物理的特性が変化する。設計者は、オンライン環境の変化をオフライン環境下の制御プログラム15およびモデル16に反映するように、再度、オフライン環境下で制御プログラム15およびモデル16のパラメータを調整する。このようなシーンでは、両者がペア17で管理されていることによって、設計者は調整の対象を簡単に特定できる。これにより、同一のオフライン環境下で複数の制御プログラム15が開発される場合、または、制御プログラム15の調整後のバージョンを管理する場合であっても、ペア17の管理により、調整対象を容易に特定できる。
【0056】
上記に述べたオンライン環境の変化をオフライン環境下の制御プログラム15およびモデル16に反映する構成を説明する。
【0057】
当該構成においては、オンライン環境において、駆動機器を制御する指令値を出力する制御プログラム15をコントローラに実行させ、当該指令値に従って当該駆動機器を制御する。オフライン環境では、情報処理装置10は、制御プログラム15を実行することによりコントローラの挙動を算出するコントローラエミュレーションを実行し、コントローラエミュレーションによって制御プログラム15が実行されるときに出力される指令値を入力として、モデル16を実行することにより駆動機器の挙動値を算出するアクチュエータエミュレーションを実行する。情報処理装置10は、コントローラによって制御プログラム15が実行されているとき、駆動機器の挙動を示すオンライン環境の挙動値を収集する。また、情報処理装置10は、オフライン環境において、コントローラエミュレーションにおいて制御プログラム15が実行されているとき、アクチュエータエミュレーションによって算出されるオフライン環境の挙動値を収集する。情報処理装置10は、オンライン環境下で収集された時系列の挙動値と、オフライン環境下で収集された時系列の挙動値との間の同一時間軸上の差、例えば同じ時間または同じ時刻における差に基づき、制御プログラム15に紐付けされたモデル16に設定されているモデルパラメータを調整する。これにより、情報処理装置10は、制御プログラム15に紐付けされるモデル16を、オンライン環境下の実機の変化が反映された状態に維持することができる。
【0058】
上記に述べた「同じ時間」は、例えば、オフライン環境下で情報処理装置10が制御プログラム15を実行開始、すなわちアクチュエータエミュレーションを開始してからの経過時間、および、オンライン環境下でコントローラが制御プログラム15を実行し、当該指令値に従って当該駆動機器を制御開始してからの経過時間を示す。また、上記の「同じ時刻」は、これら両方の経過時間における共通した時刻を示す。
【0059】
以下、本実施の形態のより具体的な応用例について説明する。
【0060】
<B.システムの全体的なモジュール構成>
図1は、本実施の形態に係る情報処理システム1の構成を模式的に示す図である。以下では、制御対象は後述する包装機400を例示し、駆動機器は包装機400が有するロータリーナイフを駆動するサーボモータを例示する。なお、制御対象は、包装機400に限定されず、ワークの移動テーブルやワークを搬送するためのコンベアなどであってもよい。
【0061】
図1を参照して、情報処理システム1は、FAシステム50と、情報処理装置10と、ディスプレイ109とを含む。FAシステム50は、コントローラ51と、駆動機器55と、第1収集部60とを含む。情報処理装置10は、開発支援ツール20と、シミュレータ21と、ビジュアライザ27と、第2収集部130とを含む。開発支援ツール20は、制御パラメータ20Bが設定される制御プログラム15またはモデルパラメータ16Aが設定されるモデル16を調整するための調整ツール123を有する。
【0062】
コントローラ51は、産業用のフィールドネットワークで駆動機器55とネットワーク接続されており、各種の駆動機器55を制御する。
【0063】
コントローラ51は、制御パラメータ20Aを用いて制御プログラム15を実行することにより駆動機器55を制御する。駆動機器55は、生産工程において直接的または間接的にワークに対して作用を及ぼす機器であり、駆動機器55は、コントローラ51からの指令値に従って動作し、ロータリーナイフを回転駆動する。駆動機器55は、より具体的には、指令値に従い、PWM(Pulse Width Modulation)駆動されるサーボモータを含む。駆動機器55に関連のセンサ等の計測デバイスは指令値に従って動作するサーボモータの挙動を計測し挙動値を出力する。コントローラ51は、指令値に従う挙動を示す挙動値を入力データとして取得する処理、および、入力データに基づき指令値を算出し駆動機器55へ出力する処理を含むIO(Input Output)リフレッシュを制御周期毎に実行する。なお、IOリフレッシュを実行する周期は、予め定められた周期であればよく、制御周期に限定されない。
【0064】
第1収集部60は、制御周期に同期して駆動機器55の挙動を示す挙動値D1を収集する。第1収集部60は、駆動機器55の挙動値D1を検知するためのエンコーダを含む各種センサであってもよいし、データ収集のための収集プログラムであってもよい。挙動値D1は、たとえば、駆動機器55の各部分の位置、速度、回転数、加速度、角速度、角加速度などを含む。
【0065】
シミュレータ21は、コントローラエミュレータ120と、アクチュエータエミュレータ124と、仮想時刻ジェネレータ122とを含む。仮想時刻ジェネレータ122は、コントローラエミュレータ120とアクチュエータエミュレータ124とを同期して動作させるための仮想時刻を出力する。コントローラエミュレータ120とアクチュエータエミュレータ124とは、仮想時刻に従うタイムステップtiに基づく周期で同期して動作する。コントローラエミュレータ120は、コントローラ51の挙動を算出するためのコントローラエミュレーションのためのプログラムである。アクチュエータエミュレータ124は、駆動機器55の挙動を算出するアクチュエータエミュレーションのためのプログラムである。
【0066】
より具体的には、タイムステップti毎に、アクチュエータエミュレータ124は、コントローラエミュレータ120からの指令値に基づきモデル16の演算式に従って挙動値を算出し、コントローラエミュレータ120は、アクチュエータエミュレータ124からの挙動値に基づき制御パラメータ20Bの制御プログラム15を実行して指令値をアクチュエータエミュレータ124出力する。このように、コントローラエミュレータ120とアクチュエータエミュレータ124とは同期しながら、指令値と挙動値とを遣り取りする。この遣り取りによって、シミュレータ21においてFAシステム50のIOリフレッシュが模擬される。本実施の形態では、コントローラエミュレータ120とアクチュエータエミュレータ124とが同期する周期は、制御周期に基づく周期とするが、これに限定されない。
【0067】
第2収集部130は、データ収集のための収集プログラムである。第2収集部130は、シミュレーションを実行時に、アクチュエータエミュレータ124がタイムステップti毎に出力する挙動値D2を収集する。挙動値D2は、たとえば、駆動機器55の各部分のシミュレーション上における位置、回転数、速度、加速度、角速度、角加速度などである。
【0068】
図1では、制御パラメータ20A,20Bを個別に記載するが、両者は共通するパラメータを示し得る。
【0069】
(b1.ビジュアライズの構成)
ビジュアライザ27は、制御対象の動きを、3次元仮想空間に視覚化してディスプレイ109に描画する3D(3-dimensions)描画データを生成する視覚化モジュールを構成する。
【0070】
より具体的には、ビジュアライザ27は、包装機400のロータリーナイフの軌跡データと、ロータリーナイフを有する包装機400を表す画像データとに基づいて、ロータリーナイフのエミュレートされた動きをディスプレイ109に描画する描画データを生成する。ロータリーナイフを有する包装機400を表す画像データは、制御対象19aによって指定されたCADセット139のCADデータを含む。
【0071】
ビジュアライザ27は、コントローラエミュレータ120からの指令値(回転量を表す角速度など)に所定関数を用いて演算を施すことで、3次元座標P(x,y,z)を算出し、軌跡データを取得する。このように軌跡データは、制御対象のシミュレーションによって推定された包装機400の3次元仮想空間における動きを示す情報を含む。ビジュアライザ27は、算出された軌跡データと包装機400の画像データに従い、包装機400の動きを3次元仮想空間内で立体的に描画するための描画データを生成し、描画データに基づきディスプレイ109に画像を表示させる。設計者は、シミュレーションの結果を、ディスプレイ109に描画される包装機400のロータリーナイフの回転挙動から確認することができる。なお、ビジュアライザ27は、上記の軌跡データをモデル16からの挙動値に予め定められた関数を用いて算出してもよい。
【0072】
<C.FAシステム50の構成>
図3を参照して、FAシステム50の構成とともに制御対象である包装機400の構成を説明する。図3は、本実施の形態に係る制御対象を有するFAシステム50の構成を模式的に示す図である。図3を参照して、情報処理システム1はFAシステム50と、情報処理装置10とを含む。FAシステム50は、例えばPLCを含んで構成されるコントローラ51と、包装機400と、サーボドライバ500A,500Bとを含む。サーボドライバ500A,500Bは、それぞれ、コントローラ51からの指令値に従って、包装機400が有するサーボモータ410,56を駆動する。図3では、制御対象(包装機400)の駆動機器は、サーボドライバ500A,500Bとサーボモータ410,56を含んで構成される。
【0073】
情報処理装置10は、たとえば、PC(Personal Computer)、タブレット端末、または、スマートフォンなどのコンピュータに相当する構成を有する。コントローラ51および情報処理装置10は、フィールドネットワークNW1に接続されている。フィールドネットワークNW1には、たとえば、EtherNET(登録商標)が採用される。ただし、フィールドネットワークNW1は、EtherNETに限定されず、任意の通信手段が採用され得る。たとえば、コントローラ51および情報処理装置10は、USB(Universal Serial Bus)などの信号線で直接接続されてもよい。
【0074】
コントローラ51およびサーボドライバ500A,500Bは、デイジーチェーンでフィールドネットワークNW2に接続されている。フィールドネットワークNW2には、データの到達時間が保証される、定周期通信を行うネットワークを採用することが好ましい。このような定周期通信を行うネットワークとしては、EtherCAT(登録商標)、(登録商標)、DeviceNet(登録商標)、CompoNet(登録商標)などが知られている。
【0075】
図3を参照して、包装機400は、互いに連係して動作する複数の機構を含んで構成される。具体的には、包装機400は、矢印413の方向に包装材412を搬送する搬送路に関連したサーボモータ56を備える搬送機構と、搬送路の途中に設けられるセンサ408と、搬送路上の包装材412を切断して個別パッケージ418を生成する切断機構406とを含む。
【0076】
搬送路には、図示しない供給機構からロール状の包装母材が順次送出されるとともに、搬送路において、図示しないラインから供給されるワーク414が包装母材で覆われることで、ワーク414が封入された包装材412が連続的に搬送路に供給される。センサ408は、例えば近接スイッチを含んで構成される。センサ408は、搬送路の予め定められた位置をワーク414が通過したことを検出することが可能なように設けられる。センサ408は、ワーク414の通過を検出すると、トリガ402を出力する。
【0077】
切断機構406はサーボモータ410と、416と、エンコーダ411とを備える。切断機構406では、センサ408からのトリガ402に従って、サーボモータ410がロータリーナイフ416を駆動することで、ロータリーナイフ416が包装材412を切断および封止して個別パッケージ418を順次生成する。エンコーダ411は、サーボモータ410の回転量(回転の方向、角度、回転数など)を計測し、計測値401を出力する。本実施の形態では、計測値401は、例えば単位時間あたりの回転数を示す。図3のFAシステム50では、コントローラ51が制御プログラム15を実行して出力する指令値に対する応答として、計測値401を取得することができる。
【0078】
<D.制御プログラムと作成>
図4は、本実施の形態に係る制御プログラム15の一例を模式的に示す図である。図4を参照して、包装機400の制御プログラム15の一部を説明する。図4の制御プログラム15は、包装機400の搬送機構の制御演算処理を実行するための搬送機FB60と、包装機400の切断機構406の制御演算処理を実行するための切断機FB61を含むラダー言語で記述される。情報処理装置10が、制御プログラム作成ツール22として、制御プログラム15を作成する処理を説明する。
【0079】
情報処理装置10は、ユーザ設定19の制御対象19aに基づき、包装機400の対象ID1381で識別されるFBセット138を検索する。検索されたFBセット138は、搬送機FB60と切断機FB61とを含む。搬送機FB60および切断機FB61は、それぞれ、PID演算62のアルゴリズムとPID演算63のアルゴリズムを有する。搬送機FB60は、入力として駆動機器55の挙動値64(回転数)を受付け、演算結果として指令値66(角速度)を出力するよう構成される。切断機FB61は、入力として駆動機器55の挙動値67(回転数)と、ブロックTriggerの出力を受付け、演算結果として指令値69(角速度)を出力するよう構成される。情報処理装置10は、制御パラメータ設定部23として、ユーザ設定19の制御の仕方19cに基づき、搬送機FB60と切断機FB61に、それぞれ、PIDパラメータ65とPIDパラメータ68を設定する。また、ユーザ設定19の制御の仕方19cに基づき、切断機FB61には、PIDパラメータ68に追加しトリガ402が設定される。
【0080】
コントローラ51は、図4の制御プログラム15を実行する。より具体的には、コントローラ51は、搬送機FB60を実行するとき、回転数を示す挙動値64とPIDパラメータ65に基づき回転数を目標値に収束させるようにPID演算62を実行し、実行結果として、角速度を示す指令値66を出力する。
【0081】
センサ408からトリガ402が出力されると、ブロックTriggerがオフ状態からオン状態に変化する。切断機FB61は、入力パラメータとしてブロックTriggerの出力を受け付けて、当該出力がオフからオンに変化したことに応じて活性化される。コントローラ51は、活性化状態となったとき切断機FB61を実行する。より具体的には、コントローラ51は、回転数を示す挙動値67とPIDパラメータ68に基づき回転数を目標値に収束させるようにPID演算63を実行し、実行結果として、角速度を示す指令値69を出力する。
【0082】
コントローラ51は、搬送機FB60の指令値66をサーボドライバ500Bに出力し、切断機FB61の指令値69をサーボドライバ500Aに出力する。サーボドライバ500Aと500Bは、それぞれ、図示しないPWM(Pulse Width Modulation)回路を有する。サーボドライバ500Aは、PWM回路によって、指令値66が示す角速度に基づくパルス幅を有した電気信号であるPWM信号を生成し、サーボモータ56に出力する。サーボドライバ500Bは、PWM回路によって、指令値69が示す角速度に基づくパルス幅を有した電気信号であるPWM信号を生成し、サーボモータ410に出力する。コントローラ51は、このように制御プログラム15を周期的に繰返し実行することにより、駆動機器55の回転数を目標値に維持することができる。
【0083】
なお、通常、制御プログラムは、プログラムが用いるパラメータ、入出力値を、変数名を用いて記述されるが、図4の制御プログラム15のFBは、説明のために、変数名に代えて、パラメータと入出力値の説明を用いている。また、FBは、通常、当該FBの状態(指令値を出力したときの実行完了状態、実行中状態、実行中断状態、エラー状態など)の変数値を出力するとともに、起動指令の変数値を入力するが、図4では、説明のために、これら変数値の図示は略されている。
【0084】
<E.制御プログラムまたはモデルを作成する構成>
図5は、本実施の形態に係るパラメータの作成を支援するUIの一例を模式的に示す図である。設計者は、開発支援ツール20を操作して制御プログラム15またはモデル16を作成する場合、開発支援ツール20によって、シミュレータ21の実行結果の情報を含むパラメータ調整のためのガイド情報を、図5のUI画面125に出力する。
【0085】
図5を参照して、ディスプレイ109に表示されるUI画面125は、ガイド情報として、領域91にモデル16が出力する時系列の挙動値D2を表すグラフを表示し、領域92に制御パラメータ20Bが設定された制御プログラム15のコードを表示し、領域93にビジュアライザ27が描画する制御対象の動きを表す3D画像を表示する。また、UI画面125には、ガイド情報として、シミュレーションの実行を指示するために操作されるボタン94、パラメータを調整(変更)して制御プログラム15またはモデル16を作成するために操作されるボタン95、および、パラメータを調整するために操作されるボタン96を含む。
【0086】
調整ツール123は、制御プログラムまたはモデルを作成するとき「調整量の見積もり」を実施する環境を提供する。調整ツール123によって、パラメータの調整が完了したとき、制御プログラム15はあらかた完成し、対応のモデル16の作成も完了する。「調整量の見積もり」では、設計者に、調整量の情報を提供する。
【0087】
より具体的には、図9の領域91のグラフG4は目標を示し、グラフG5はシミュレーション値を示す。グラフG4は、仕様を満たす理想的な挙動、すなわちサーボモータ410の回転数の時系列の理想的な変化を示す。対照的に、グラフG5は、シミュレータ21によって制御プログラム15およびモデル16が実行された場合にモデル16が出力する挙動値の時系列変化を示す。グラフG4とグラフG5は同一時間軸上で互いに関連付けて出力される。シミュレーションを実行時に、第2収集部130によってアクチュエータエミュレータ124からの挙動値が時系列に収集される。グラフG5は、収集された時系列の挙動値に基づいている。上記に述べた同一時間軸は、例えば、オフライン環境下で情報処理装置10が制御プログラム15を実行開始してからの時間の経過および駆動機器を仕様に従い理想的に制御開始してからの時間の経過を示す。
【0088】
挙動値(回転数)が開始から目標TRに収束するまでの立ち上がり時間に着目すると、目標のグラフG4では、立ち上がりに時間t0~t5を要する。対照的に、グラフG5では、立ち上がりに時間t0~t7を要しており、立ち上がりに遅れが生じている。
【0089】
情報処理装置10は、調整ツール123として、「調整量の見積もり」において、領域91のグラフのデータに基づき、グラフG4とグラフG5の差の変化傾向が表すパターンに基づき、パラメータを調整する必要があるかを判定するとともに、調整量の目安の情報を提供する。
【0090】
より具体的には、情報処理装置10は、グラフG4とグラフG5のデータを照合することによって、差の変化傾向を検出する。情報処理装置10は、検出した変化傾向を、予め定められた複数種類の変化パターンと比較することで、いずれの変化パターンにマッチするかを判定する。例えば、立ち上がり遅れのパターンとマッチすると判定する。
【0091】
情報処理装置10は、立ち上がり遅れ時間を抽出し、立ち上がり遅れ時間を閾値と比較し、比較の結果から、立ち上がり時間に関連するパラメータを調整する必要があるかを判定する。例えば、遅れ時間が、閾値を超えると判定したとき、情報処理装置10は、LUT(Look Up Table)から、差が示す遅れ時間を小さくするように対処するための調整対象のパラメータと調整方法を検索する。なお、調整対象のパラメータと調整方法の特定方法は、LUTの方法に限定されず、機械学習による学習データを用いた特定方法であってもよい。
【0092】
情報処理装置10は、LUTから、調整対象パラメータとして、立ち上がり時間に関連するパラメータである、例えば制御パラメータについては、PIDパラメータ68のうちのI(積分値)を検索し、また、モデルパラメータについては、“摩擦係数”を検索する。また、調整量として、I(積分値)のパラメータと“摩擦係数”とはいずれも現在値よりも「小さくする」が検索される。
【0093】
情報処理装置10は、調整ツール123として、調整量のガイド情報を、UI画面125のボタン96に表示する。例えば、ボタン96は、調整対象のパラメータを摩擦係数として、その現在値と、摩擦係数の調整量、すなわち現在値よりも小さくする、または大きくすることをガイドする矢印アイコンを含む。情報処理装置10は、ボタン96の矢印アイコンのうち、「小さくする」ことを示す下向き矢印のアイコンをブリンク表示する。
【0094】
設計者はボタン96を操作して摩擦係数の値を増減し調整できる。調整後に作成のボタン95が操作されると、ボタン96の調整後の摩擦係数がモデル16のモデルパラメータ16Aに設定され、ボタン94が操作されると、シミュレータ21によるシミュレーションが開始される。シミュレータ21は、調整後の摩擦係数を有したモデル16を用いてシミュレーションを実施する。調整ツール123は、シミュレーション結果によって、領域91のグラフG5を更新する。調整ツール123は、更新後のグラフG5と目標のグラフG4との比較に基づき、上記に述べた「調整量の見積もり」の処理を実行する。
【0095】
これにより、設計者は、パラメータの調整(変更)と、調整後のパラメータを設定した制御プログラム15またはモデル16を用いたシミュレーションとを、立ち上がり遅れの差が予め定められた値に収束するまで繰返し、収束したとき調整を終了する。設計者は、調整ツール123が提供するボタン96の調整対象のパラメータと調整量の情報に基づき、領域91の更新後のグラフG5の立ち上がり時間を目標のグラフG4の立ち上がり時間に整合させるよう速やかに調整できる。なお、図5では、調整対象のパラメータとして摩擦係数を示したが、これに限定されず、制御パラメータであるI(積分値)のパラメータであってもよい。
【0096】
なお、調整ツール123を利用せずに、設計者は、領域91のグラフから、立ち上がり時間の差(遅れ)が小さくなるように、調整対象のパラメータと調整量を試行錯誤的に探索してもよい。
【0097】
<F.モデルを用いた挙動の算出と視覚化>
図6は、本実施の形態に係るモデル16の演算式741の一例を示す図である。シミュレータ21が実行されるとき、仮想時刻ジェネレータ122が出力する仮想時刻に従う周期に基づくタイムステップti毎に、アクチュエータエミュレータ124は、コントローラエミュレータ120と同期して、コントローラエミュレータ120からの指令値に基づき、図6の演算式741に従った挙動値Yを算出する。シミュレータ21の実行時は、アクチュエータエミュレータ124は、コントローラエミュレータ120からの指令値に基づき、モデル16の演算式に従って、挙動値を算出する。
【0098】
演算式741は、制御対象である包装機400の駆動機器のサーボモータ410の挙動値を算出するために、例えば、物理シミュレーションモデルの方程式を利用して構成される。
【0099】
図6を参照して、演算式741は、タイムステップtiにおける挙動値Yは関数F(X、A、B)によって算出されることを示す。説明742に示すように、関数FのパラメータXは、制御プログラム15の切断機FB61からの指令値69(角速度)を示し、パラメータAはサーボモータ410の物理パラメータを示し、パラメータBはサーボモータ410のメカパラメータを示す。また、初期値743に示すように、関数FのパラメータXの初期値X0は関数FB(C、D)によって算出される。パラメータCは、切断機FB61の入力パラメータを示し、パラメータDは、切断機FB61の演算開始指令を示す。本実施の形態では、パラメータCは、PIDパラメータ68と挙動値67の初期値を示し、パラメータDは、トリガ402を示す。
【0100】
シミュレータ21が実行されるとき、アクチュエータエミュレータ124はモデル16の演算式741に従って挙動値Yを算出する。これにより、タイムステップti毎に、サーボモータ410の挙動値Y、すなわち挙動値67(回転数)を算出することができる。
【0101】
ビジュアライザ27は、コントローラエミュレータ120から出力されるタイムステップtiに従う時系列の指令値66、69に基づき、3次元仮想空間のオブジェクトの時系列の3次元座標P(x、y、z)を含む機器挙動データを算する。より具体的には、ビジュアライザ27は、タイムステップti毎の指令値66に基づいて、包装機400の搬送機構(包装材412、ワーク414、個別パッケージ418)の動作を表す機器挙動データを生成するとともに、タイムステップti毎の指令値69に基づいて、切断機構(ロータリーナイフ416)の動作を表す機器挙動データを生成する。
【0102】
ビジュアライザ27は、機器挙動データおよびCADセット139の画像に基づき、3次元仮想空間における制御対象である包装機400の動作を視覚化する画像データを生成する。画像データはディスプレイ109に出力される。これにより、シミュレータ21によって算出された挙動値に基づく制御対象(包装機400)の動作示す画像が、図5の領域93に示されるように、ディスプレイ109に表示される。
【0103】
本実施の形態では、ビジュアライザ27は、機器挙動データの画像をタイムステップti毎に更新して表示する。設計者は、UIを介して、ビジュアライザ27に対し、画像を更新する周期を設定できる。例えば、設計者は、スロー再生、早送り、巻き戻しなどの設定をすることにより、制御対象の動きを所望する早さで視覚的に確認できる。
【0104】
<G.UIの一例>
情報処理装置10が提供するUIツールの一例が図7図8に示される。図7は、本実施の形態に係る制御対象を指定するUIの一例を示す図である。図8は、本実施の形態に係るモデルパラメータを指定するUIの一例を示す図である。図7を参照して、設計者は、制御対象19aを指定するために、制御対象の名称などの識別子151を情報処理装置10に対し入力するとともに、制御の仕方19cとして駆動機器のモーションの制御パラメータ152を指定する。より具体的には、情報処理装置10は、識別子151に一致する対象ID1381のFBセット138を記憶部から検索し、検索されたFBセット138の各FBに設定するべきパラメータの候補を表示する。設計者は、その候補パラメータのうちから、所望のパラメータを制御パラメータ152として指定できる。なお、各FBに設定するべきパラメータの候補は、各FBセット138に関連付けて格納されている。
【0105】
図8を参照して、設計者は、設定19bを指定するために、制御対象の駆動機器(サーボモータ410)のメカパラメータ81および物理パラメータ82を情報処理装置10に対して入力する。より具体的には、メカパラメータ81にサイズ、動作方向、初期位置などを入力し、また、物理パラメータ82の説明821に、軸受け摩擦係数、質量、密度などを入力する。
【0106】
<H.実機の出力に基づく調整>
本実施の形態では、オンライン環境下で取得される挙動値に基づき、オフライン環境下において制御パラメータ20Aまたはモデルパラメータ16Aを調整することで、オフライン環境下の制御プログラム15とモデル16を、オンライン環境下における制御プログラム15または実機の変化を反映するように維持できる。
【0107】
ここでは、オンライン環境下における制御プログラム15または実機の変化として、例えば、サーボモータ410の軸受けまたは軸が、長期間の使用によって摩耗し、その結果、軸受け摩擦係数が変化するケースを説明する。なお、変化は、物理的特性に限定されず、機械的特性であってもよい。また、実機の特性の変化に限定されず、制御パラメータ20Aの変更であってもよい。
【0108】
図9は、本実施の形態に係る実機の出力に基づく調整の構成の一例を示す図である。図9を参照して、情報処理システム1は、実機の出力に基づく調整の主要な構成機器として、FAシステム50と、情報処理装置10と、記憶装置113とを含む。FAシステム50は、コントローラ51と、駆動機器55と、第1収集部60とを含む。情報処理装置10は、コントローラエミュレータ120と、アクチュエータエミュレータ124と、ビジュアライザ27と、第2収集部130と、挙動値D1とD2との差D3を算出する算出部131と、調整ツール123とを含む。調整ツール123は、調整量を決定するための調整量決定部141と、決定された調整量で調整を実施する調整実施部142と、調整に関する情報を出力する出力部143とを有する。なお、算出部131は、調整ツール123内に設けられてもよい。算出部131および調整ツール123以外の構成については、図1で説明した通りであるので、それらの詳細説明は繰り返さない。
【0109】
算出部131は、第1収集部60によって収集された時系列の挙動値D1と、第2収集部130によって収集された時系列の挙動値D2とを同一時間軸で比較し、比較結果に基づく挙動値D1,D2の差D3を算出し、調整ツール123に出力する。
【0110】
(h1.モデル調整処理)
情報処理装置10は、調整ツール123として、モデル16からの挙動値D2をFAシステム50からの挙動値D1に合わせる調整処理を実行する。図10は、本実施の形態に係る調整処理のためのUIの一例を示す図である。図10は、調整するためのユーザ支援情報であって、グラフと、調整量のガイド情報103を含む。ガイド情報103は、モデル16によって算出されて収集された挙動値D2と実機から収集された挙動値D1との間の同じ時間または同じ時刻における差の大きさに基づき、モデルパラメータ16Aを調整するためのガイド情報を出力する。なお、調整対象は、制御パラメータ20Bが含まれてもよい。
【0111】
情報処理装置10は、算出部131によって算出される図9の差D3が小さくなるように、すなわちアクチュエータエミュレータ124が算出する挙動値D2が実機で計測された挙動値D1にマッチ(整合)するように、上記に述べた「調整量の見積もり」を実施して、調整対象のパラメータと、調整量を決定する。
【0112】
より具体的には、情報処理装置10は、調整量決定部141として、図10に示すように、第1収集部60によって時系列に収集された挙動値D1と、第2収集部130によって収集された時系列に収集された挙動値D2とを互いに関連付けて出力する。より具体的には、図10に示すように、この関連付けは、挙動値を縦軸とし、時間軸を横軸とした2次元平面のグラフ上に、第1収集部60によって時系列に収集された挙動値D1と、第2収集部130によって時系列に収集された挙動値D2とを、収集された時間または時刻に基づきプロットすることを含む。これにより、情報処理装置10は、制御周期毎の時系列の挙動値D1とタイムステップti毎の時系列の挙動値D2を、収集された時間または時刻に基づきプロットして、挙動値D1,D2の変化を表す図10のグラフを算出する。情報処理装置10は、グラフから、実機の挙動値D1が目標TRに収束するのに要する立ち上がり時間(時刻t0~t4)とモデル16が算出する挙動値D2が目標TRに収束するのに要する立ち上がり時間(時刻t0~t8)とを算出し、立ち上がりの遅れを、両者の時間の差D3として算出する。グラフから、実機の挙動値D1の立ち上がりが挙動値D2の立ち上がりよりも差D3だけ早くなっている、すなわち実機のサーボモータ410の摩擦係数がモデルパラメータ16Aの摩擦係数よりも小さくなっていることが推察される。
【0113】
情報処理装置10は、「調整量の見積もり」に基づき、調整対象のパラメータ1341と調整量1342を有するガイド情報103を作成し、ディスプレイ109に出力する。より具体的には、情報処理装置10は、立ち上がり時間の遅れである差D3が予め定められた閾値を超える場合、調整対象のパラメータ1341は、「摩擦係数」と決定する。また、調整量1342を、遅れを示す差D3が生じていることに基づき摩擦係数を「小さくする」と決定する。逆に、差D3は生じず、実機の立ち上がりの方が遅くなっている場合、調整量決定部141は、摩擦係数を「大きくする」と決定する。グラフの場合、遅れを示す差D3が生じていることに基づき、調整量1342は、摩擦係数を「小さくする」がブリンク表示される。
【0114】
情報処理装置10は、調整実施部142として、UIを介したユーザ操作に基づき、モデルパラメータ16Aを調整する。例えば、設計者は、グラフが示す差D3またはガイド情報103に基づき、調整量を情報処理装置10に対し入力する。
【0115】
情報処理装置10は、設計者が調整後のモデルパラメータ16Aをモデル16に設定し、シミュレータ21を起動する。シミュレータ21が起動されると、調整後のモデル16および当該モデル16に紐付けされた制御プログラム15が、それぞれ、コントローラエミュレータ120およびアクチュエータエミュレータ124によって実行されて、シミュレータ21の実行結果として第2収集部130は挙動値D2を収集する。
【0116】
情報処理装置10は、調整ツール123として、調整後のモデル16からの挙動値D2をFAシステム50から取得していた挙動値D1に合わせる「調整量の見積もり」に基づく処理を実行する。
【0117】
情報処理装置10は、差D3(立ち上がりの遅れ時間)が予め定められた収束条件を満たしたと検出したとき、モデル調整処理を終了する。当該収束条件は、たとえば、挙動値D1,D2の差D3が予め定められた閾値よりも小さくなったときに満たされる。あるいは、当該収束条件は、調整回数が所定回数を超えたときに満たされてもよい。
【0118】
なお、立ち上がりの時間遅れに関連するパラメータとして、モデルパラメータ16Aの摩擦係数に代えて、または摩擦係数とともに、例えば制御パラメータ20BのPIDパラメータ68のI(積分値)のパラメータが調整されるとしてもよい。
【0119】
情報処理装置10は、収束条件を満たしたときの調整後のモデルパラメータ16Aをモデル16に最終的な設定値として設定する、または、調整後の制御パラメータ20Bを当該モデル16に紐付けされた制御プログラム15に設定する。情報処理装置10は、調整後に、シミュレータ21に制御プログラム15およびモデル16を実行させることによって、実機のサーボモータ410の挙動をより正確に算出できる。なお、調整ツール123を利用せずに、設計者は、図10のグラフから、UIツールを介して、調整対象のパラメータと調整量を試行錯誤的に探索してもよい。
【0120】
<I.情報処理装置10の構成>
図11は、本実施の形態に係る情報処理装置10の構成の一例を示す模式図である。本実施の形態に係る開発環境を提供する構成を、図11を参照して説明する。
【0121】
図11情報処理装置10は、主たるコンポーネントとして、オペレーティングシステム(OS:Operating System)および後述するような各種プログラムを実行するプロセッサ102と、プロセッサ102でのプログラム実行に必要なデータを格納するための作業領域を提供する主メモリ104と、キーボードやマウスなどの情報処理装置10に対するユーザ操作を受付ける操作ユニット106と、ディスプレイ109、各種インジケータ、プリンタなどの処理結果を出力する出力ユニット108と、ネットワークNW1を含む各種ネットワークに接続されるネットワークインターフェイス110と、光学ドライブ112と、外部装置と通信するローカル通信インターフェイス116と、ストレージ111とを含む。これらのコンポーネントは、内部バス118などを介してデータ通信可能に接続される。
【0122】
情報処理装置10は、光学ドライブ112を有しており、コンピュータ読取可能なプログラムを非一過的に格納する光学記録媒体(例えば、DVD(Digital Versatile Disc)など)を含むコンピュータ読取可能な記録媒体114から、各種プログラムを読取ってストレージ111などにインストールする。
【0123】
情報処理装置10で実行される各種プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体114を介してインストールされてもよいが、ネットワーク上の図示しないサーバ装置などからネットワークインターフェイス110を介してダウンロードする形でインストールするようにしてもよい。
【0124】
ストレージ111は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Flash Solid State Drive)などで構成され、プロセッサ102で実行されるプログラムを格納する。具体的には、ストレージ111は、仮想時刻ジェネレータ122を実現する仮想時刻生成プログラム119と、開発支援ツール20を実現する開発支援プログラム121と、モデルパラメータ16Aと、シミュレータ21を実現するシミュレーションプログラム126と、制御パラメータ20Bと、実行されるとUIツールを実現するUIプログラム129と、調整ツール123を実現する調整プログラム132と、制御プログラム15とモデル16を紐付けてペア17として管理する管理プロフラム134と、描画データ136を用いて制御対象の挙動を描画するためのビジュアライザプログラム135と、ペア17と、制御対象毎のFBセット138と、制御対象毎のCADセット139および基本モデル16Bとを格納する。
【0125】
ビジュアライザプログラム135は、実行されるとビジュアライザ27を実現する。ビジュアライザ27は、主メモリ104の仮想空間情報105に基づきディスプレイ109に制御対象の動きを描画するための描画データ136を生成する。仮想空間情報105は、シミュレータ21の実行時に取得されるタイムステップti毎の時系列の指令値66および指令値69が示す角速度を、所定関数を用いて算出される時系列の3次元座標P(x,y,z)を示す。ビジュアライザ27は、制御対象のCADセット139に基づくオブジェクト画像を、仮想空間情報105に基づき、3次元仮想空間内で立体的に描画するための描画データ136を生成し、ディスプレイ109に出力する。これにより、ディスプレイ109には、シミュレーションにより算出された挙動値に従いオブジェクトが表示されて、制御対象の機械の動きを再現することができる。
【0126】
図11には、単一の情報処理装置10で開発環境を実現する例を示したが、複数の情報処理装置を連係させて開発環境を実現するようにしてもよい。この場合には、開発環境を実現するために必要な処理の一部を情報処理装置10で実行させるとともに、残りの処理をクラウドベースのサーバまたはオンプレミスサーバで実行するようにしてもよい。
【0127】
図11には、プロセッサ102が1または複数のプログラムを実行することで、開発環境が実現される例を示すが、開発環境を実現するために必要な処理および機能の一部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの回路を用いて実装するようにしてもよい。
【0128】
<J.作成処理のフローチャート>
図12は、本実施の形態に係る作成処理のフローチャートである。図12を参照して、プロセッサ102が、開発支援ツール20を実行することによって、制御プログラム15またはモデル16を作成する処理を説明する。
【0129】
まず、プロセッサ102は、制御対象19a、設定19bおよび制御の仕方19cを含むユーザ設定19を、UIツールを介したユーザ操作から受付ける(ステップS1)。
【0130】
プロセッサ102は、制御プログラム作成ツール22およびモデル作成ツール24として、ストレージ111から、制御対象19aを示す対象ID1381および対象ID1391に対応のFBセット138およびCADセット139を検索する(ステップS3)。これにより、プロセッサ102は、制御対象19aに対応のFBセット138およびCADセット139を決定する。
【0131】
プロセッサ102は、決定されたFBセット138の各FBに、制御パラメータ設定部23として、制御の仕方19cに基づく制御パラメータ20Bを設定し(ステップS5)、また、設定19bに基づくモデルパラメータ16Aをモデル16に設定する(ステップS7)。
【0132】
プロセッサ102は、シミュレータ21として、制御パラメータ20Bが設定された制御プログラム15およびモデルパラメータ16Aが設定されたモデル16を実行して、制御対象の挙動をシミュレーションする(ステップS10)。
【0133】
プロセッサ102は、シミュレーションを実施するとき、ビジュアライザ27として、シミュレーションによって算出される指令値に基づく描画データ136を生成するビジュアライズ処理を実施する(ステップS11)。描画データ136に基づきディスプレイ109が駆動されて、ディスプレイ109は制御対象の動きを描画する。
【0134】
シミュレーションにおいては、プロセッサ102は、調整ツール123として、上記に述べた「調整量の見積もり」によって制御パラメータ20Bまたはモデルパラメータ16Aを変更(調整)しながらシミュレーションを繰り返し実施する(ステップS12)。
【0135】
プロセッサ102は、シミュレーションによって制御パラメータ20Bおよびモデルパラメータ16Aを取得する。プロセッサ102は、紐付け部26として、これら取得されたパラメータが設定された制御プログラム15とモデル16を互いに紐付けたペア17を作成し格納する(ステップS13)。
【0136】
プロセッサ102は、ビルダ18として制御プログラム15をビルドし、プロセッサ102はビルドされた制御プログラム15をコントローラ51に転送する(ステップS15)。これにより、プロセッサ102は、コントローラ51に転送する制御プログラム15を、実機を仕様に従って制御可能なようにあらかた調整された制御パラメータ20Bを有したプログラムとして転送できる。転送されると、コントローラ51は、制御パラメータ20Bを、制御パラメータ20Aとして扱う。このように、オンライン環境下では、ユーザは、あらかた調整済み制御プログラム15を調整すればよいから、調整作業に係る負担を軽減できる。
【0137】
<K.実機の出力に基づく調整処理のフローチャート>
図13図14は、本実施の形態に係る実機の出力に基づく調整処理のフローチャートである。情報処理装置10のプロセッサ102は、調整ツール123として、実機の出力に基づく調整処理を実施する。ここでは、説明を簡単にするために、モデル16のパラメータAの摩擦係数が調整されるが、制御パラメータ20Bがであっても同様に適用できる。図13図14の処理を、適宜、図9を参照しながら説明する。
【0138】
まず、プロセッサ102は、算出部131からの差D3を閾値と比較し、比較の結果に基づきモデルパラメータ16Aの調整が必要かを判定する(ステップS20)。例えば、差D3の遅れ時間を閾値と比較し、比較の結果に基づき、差D3が閾値を超えると検出したとき、モデルパラメータ16Aの調整が必要と判定し(ステップS20でYES)、ステップS21に移行する。プロセッサ102は、差D3が閾値を超えないと検出したときは(ステップS20でNO)、ステップS20を繰り返す、または、調整処理を終了する。
【0139】
ステップS21において、プロセッサ102は、FAシステム50のサーボモータ410の挙動値D1を受付けて、制御周期の1~N周期分を格納する(ステップS21)。これにより、プロセッサ102は、時系列の挙動値D1を格納する。プロセッサ102は、実機の稼働時のプロジェクトをオフライン環境のプロジェクトと照合に、照合結果が一致を示すかを判定する(ステップS23)。より具体的には、プロセッサ102は、コントローラ51から取得した制御パラメータ20Aをオフライン環境下の制御パラメータ20Bと照合し、照合の結果に基づき、両方のパラメータの値は一致しているかを判定する。プロセッサ102は、両方の制御パラメータの値は一致していると判定したとき(ステップS23でYES)、ステップS27に移行するが、一致していないと判定したとき(ステップS23でNO)、プロセッサ102は、オフライン環境のプロジェクトを実機のプロジェクトに一致させる(ステップS25)。より具体的には、プロセッサ102は、オフライン環境下の制御パラメータ20Bをオンライン環境下から取得した制御パラメータ20Aに整合(一致)するように、調整・変更する。
【0140】
ステップS27では、プロセッサ102は、生産工程の現場において実機に設計変更がなされたかを判定する(ステップS27)。より具体的には、プロセッサ102は、設計者から受付けるユーザ操作に基づき、当該判定を実施する。ここでは、実機の設計変更は、サーボモータ410のサイズ、位置などの機械的特性の変更または調整を含む。
【0141】
プロセッサ102は、ユーザ操作に基づき、設計変更がされていると判定すると(ステップS27でNO)、ユーザ操作に基づき、実機の変更後の機械的特性に対応のメカパラメータをモデルパラメータ16Aに設定する(ステップS29)。より具体的には、プロセッサ102は、入力した機械的特性を示すサイズ、位置のメカパラメータを示すように、モデル16の式741のパラメータBを変更する。
【0142】
プロセッサ102は、調整ツール123として、調整後のモデル16からの挙動値D2をFAシステム50から取得していた挙動値D1に合わせる「調整量の見積もり」に基づく調整処理を実行する(ステップS31、S33、S35)を実施する。より具体的には、プロセッサ102は、モデル16の式741における摩擦係数などのパラメータAを推定(算出)する(ステップS31)。ステップS31の処理の詳細は図14で後述する。
【0143】
プロセッサ102は、調整処理の結果を含むガイダンス情報を出力する(ステップS33)。例えば、調整処理の結果として、調整後の摩擦係数の値がディスプレイ109に表示される。
【0144】
プロセッサ102は、設計者のユーザ操作を受付け、受付けたユーザ操作が“OK”を示すか否かを判定する(ステップS35)。プロセッサ102は、ユーザ操作は“OK”を示さないと判定すると(ステップS35でNO)、ステップS31に移行して、パラメータ調整処理を継続する。
【0145】
一方、プロセッサ102は、ユーザ操作は“OK”を示すと判定すると(ステップS35でYES)、プロセッサ102は、モデルパラメータ16Aの摩擦係数を、調整後の摩擦係数に書き換えることによって、モデルパラメータ16Aを更新する(ステップS37)。例えば、設計者は、図10のグラフなどから、モデル16が算出する挙動は実機のサーボモータ410の挙動に整合していると判断したとき、ユーザ操作として“OK”を情報処理装置10に対し入力する。
【0146】
図14を参照して、仮パラメータセットを用いたパラメータ調整処理(ステップS31)を説明する。仮パラメータセットは、摩擦係数を含むパラメータBとステップS29で入力したパラメータAとを含む。ここでは、仮パラメータセットは調整対象である摩擦係数が変更されることにより更新されて、更新される毎に新たな仮パラメータセットが生成される。
【0147】
まず、プロセッサ102は、パラメータ調整処理におけるモデルパラメータ16Aの仮パラメータセットを生成する(ステップS311)。パラメータ調整処理の開始時には、摩擦係数には初期値が設定されることにより、仮パラメータセットが生成される。
【0148】
プロセッサ102は、シミュレータ21として、制御プログラム15とステップS311で生成された仮パラメータセットがモデルパラメータとして設定されたモデル16とを、タイムステップti毎に繰り返し実行し、シミュレーション結果を生成する(ステップS313)。生成されるシミュレーション結果は、タイムステップtiに従う時系列の挙動値D2を示す。
【0149】
プロセッサ102は、シミュレーション結果である時系列の挙動値D2とステップS21で格納された実機の時系列の挙動値D1との差D3が十分に小さいかを判定する(ステップS315)。より具体的には、例えば差D3を閾値と比較し、比較結果に基づき差D3は十分に小さいかを判定する。
【0150】
差D3は十分に小さくないと判定されると(ステップS315でNO)、ステップS311に戻る。ステップS311では、プロセッサ102は、現在の仮パラメータセットの摩擦係数を変更することによって、新たな仮パラメータセットを生成する。プロセッサ102は、生成された新たな仮パラメータセットを用いてシミュレーションを実行する(ステップS313)。プロセッサ102は、シミュレーション結果としての時系列の挙動値D2とステップS29で格納された実機の時系列の挙動値D1との差D3が十分に小さいかを判定する(ステップS315)。このように、プロセッサ102は、差D3が十分に小さくなるまで、すなわち最適な仮パラメータセットが得られるまでシミュレーションとシミュレーション結果に基づく仮パラメータセットの生成を繰り返す。
【0151】
プロセッサ102は、差D3が十分に小さいと判定したとき(ステップS315でYES)、プロセッサ102は、最も最近に生成された仮パラメータセットを、モデルパラメータ16Aに採用する(ステップS317)。より具体的には、プロセッサ102は、モデルパラメータ16Aを、最も最近に生成された仮パラメータセットで書換える。これにより、オフライン環境下のモデルパラメータ16Aを、オンライン環境下の実機が機械的特性または物理的特性に整合させることができる。
【0152】
図13および図14の調整処理によれば、オフライン環境において、情報処理装置10は、制御パラメータ20Bおよびモデルパラメータ16Aを、オンライン環境下の制御パラメータ20Aの変化と実機の機械的特性および物理的特性の変化とに追従させて変更(調整)することができる。
【0153】
図14の最適な仮パラメータセットを探索するアルゴリズムには、各種のアルゴリズムを適用できる。また、ステップS315では、当該アリゴリズムの処理を終了する条件に差D3を用いたが、終了判定条件は、差D3を用いた条件に限定されない。例えば、終了判定条件に、ステップS311~S315の処理を繰り返した回数を用いてもよい。その場合は、プロセッサ102は、処理を繰り返す過程で得られたベストの仮パラメータセットを保存しておき、当該ベストの仮パラメータセットを最適な仮パラメータセットに採用する。
【0154】
<L.プログラム>
情報処理装置10のプロセッサ102は、ストレージ111のプログラムを実行することにより、ユーザに対し、オフライン環境における制御プログラム15またはモデル16の開発環境を提供する。
【0155】
開発環境を実現するためのプログラムおよびデータは、ネットワークインターフェイス110またはローカル通信インターフェイス116および通信回線を介してストレージ111にダウンロードされてもよい。または、記録媒体114を介してストレージ111にダウンロードされるとしてもよい。記録媒体114は、コンピュータその他装置、機械等が記録されたプログラム等の情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的または化学的作用によって蓄積する媒体である。情報処理装置10は、この記録媒体114から、開発環境を実現するためのプログラムまたはデータを取得してもよい。
【0156】
プログラムは、プロセッサ102などの1つ以上のプロセッサにより、またはプロセッサとASIC(Application Specific Integrated Circuit),FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの回路との組合せにより実行され得る。
【0157】
<M.付記>
上述したような本実施の形態は、以下のような技術思想を含む。
[構成1]
情報処理システムであって、
情報処理システムは、
制御対象を駆動する駆動機器(56,410)の制御プログラム(15)を実行し前記駆動機器を制御する指令値を出力するコントローラ(51)と、シミュレータ(21)と、を備え、
前記シミュレータは、
前記制御プログラムを実行することにより前記コントローラの挙動を模擬するコントローラエミュレータ(120)と、
前記コントローラエミュレータによって前記制御プログラムが実行されるときに出力される前記指令値を入力として、前記駆動機器のモデルを実行することにより当該駆動機器の挙動値を算出するアクチュエータエミュレータ(124)と、を有し、
前記情報処理システムは、さらに、
前記コントローラによって前記制御プログラムが実行されているとき、前記駆動機器の挙動を示す挙動値を収集する第1収集部(60)と、
前記コントローラエミュレータによって前記制御プログラムが実行されて、前記アクチュエータエミュレータによって前記挙動値が算出されるシミュレーションにおいて、算出される当該挙動値を収集する第2収集部(130)と、
前記第1収集部によって収集された時系列の前記挙動値(D1)と、前記第2収集部によって収集された時系列の前記挙動値(D2)との間の同一時間または同一時刻での差(D3)に基づき、前記モデルに予め設定されたモデルパラメータ(16A)を調整する調整部(123)と、備える、情報処理システム。
[構成2]
前記第1収集部によって収集された時系列の前記挙動値と、前記第2収集部によって収集された時系列の前記挙動値とを、収集された時間に基づき、時間軸上で互いに関連付けて出力する、構成1に記載の情報処理システム。
[構成3]
前記関連付けは、前記挙動値を縦軸とし、前記時間軸を横軸とした2次元平面の上に、前記第1収集部によって時系列に収集された時系列の前記挙動値と、前記第2収集部によって時系列に収集された時系列の前記挙動値とを、収集された時間に基づきプロットすることを含む、構成2に記載の情報処理システム。
[構成4]
前記モデルパラメータは、前記駆動機器の機械的特性または物理的特性に基づくパラメータを含む、構成1から3のいずれか1項に記載の情報処理システム。
[構成5]
前記シミュレーションにおいて、
前記アクチュエータエミュレータによって実行されるモデルは、前記調整部によって調整された前記モデルパラメータが設定されたモデルを含む、構成1から4のいずれか1に記載の情報処理システム。
[構成6]
前記コントローラは、前記駆動機器の挙動値を入力として、第1制御パラメータに基づき前記制御プログラムを実行し、
前記コントローラエミュレータは、前記アクチュエータエミュレータによって算出される挙動値を入力として、第2制御パラメータに基づき前記制御プログラムを実行し、
前記調整部は、さらに、
前記第2制御パラメータを、前記第1制御パラメータに整合するように調整し、その後、前記モデルパラメータの調整を実施する、構成1から5のいずれか1に記載の情報処理システム。
[構成7]
前記調整部は、
前記同一時間または同一時刻での前記差に基づき、前記モデルパラメータを調整するためのガイド情報(103)を出力する、構成1から6のいずれか1に記載の情報処理システム。
[構成8]
前記ガイド情報は、調整対象のモデルパラメータの識別子(1341)と、当該モデルパラメータの調整量(134)とを含む、構成7に記載の情報処理システム。
[構成9]
ユーザ操作によって指定される調整対象のモデルパラメータおよび当該モデルパラメータの調整量に基づき、モデルに設定されているモデルパラメータを調整する、構成8に記載の情報処理システム。
[構成10]
前記シミュレータは、前記差が予め定められた条件を満たすまで、前記調整部によって前記調整が実施される毎に、調整後のモデルパラメータが設定されたモデルを用いて前記シミュレーションを実行する、構成1から9のいずれか1に記載の情報処理システム。
[構成11]
制御対象の駆動機器(56,410)を制御する指令値を出力する制御プログラム(15)をコントローラ(51)に実行させ、当該指令値に従って当該駆動機器を制御するステップと、
前記制御プログラムを実行することにより前記コントローラの挙動を算出するコントローラエミュレーションを実行するステップと、
前記コントローラエミュレーションによって前記制御プログラムが実行されるときに出力される前記指令値を入力として、前記駆動機器のモデルを実行することにより当該駆動機器の挙動値を算出するアクチュエータエミュレーションを実行するステップと、
前記コントローラによって前記制御プログラムが実行されているとき、前記駆動機器の挙動を示す挙動値(D1)を収集する第1収集ステップと、
前記コントローラエミュレーションにおいて前記制御プログラムが実行されているとき、前記アクチュエータエミュレーションによって算出される前記挙動値(D2)を収集する第2収集ステップと、
前記第1収集ステップによって収集された時系列の前記挙動値と、前記第2収集ステップによって収集された時系列の前記挙動値との間の同一時間または同一時刻での差に基づき、前記モデルに予め設定されたモデルパラメータを調整するステップと、を備える、方法。
[構成12]
構成11に記載の方法をプロセッサに実行させるためのプログラム。
【0158】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0159】
1 情報処理システム、10 情報処理装置、15 制御プログラム、16 モデル、16A モデルパラメータ、16B 基本モデル、17 ペア、18 ビルダ、19 ユーザ設定、19a 制御対象、19b 設定、19c 制御の仕方、20 開発支援ツール、20A,20B,152 制御パラメータ、21 シミュレータ、22 制御プログラム作成ツール、23 制御パラメータ設定部、24 モデル作成ツール、25 モデルパラメータ設定部、26 紐付け部、27 ビジュアライザ、402 トリガ、50 FAシステム、51 コントローラ、55 駆動機器、56,410 サーボモータ、60 第1収集部、62,63 PID演算、64,67,D1,D2,Y 挙動値、66,69 指令値、81 メカパラメータ、82 物理パラメータ、91,92,93 領域、94,95,96 ボタン、102 プロセッサ、103 ガイド情報、104 主メモリ、105 仮想空間情報、106 操作ユニット、108 出力ユニット、109 ディスプレイ、111 ストレージ、114 記録媒体、119 仮想時刻生成プログラム、120 コントローラエミュレータ、121 開発支援プログラム、122 仮想時刻ジェネレータ、123 調整ツール、124 アクチュエータエミュレータ、125 画面、126 シミュレーションプログラム、130 第2収集部、131 算出部、132 調整プログラム、134 管理プロフラム、135 ビジュアライザプログラム、136 描画データ、138 FBセット,139 CADセット、141 調整量決定部、142 調整実施部、143 出力部、400 包装機、401 計測値、406 切断機構、408 センサ、411 エンコーダ、412 包装材、414 ワーク、416 ロータリーナイフ、418 個別パッケージ、500A,500B サーボドライバ、741 演算式、1342 調整量、D3 差、G4,G5 グラフ、1381,1391 対象ID、TR 目標。
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