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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241210BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/165 303
B41J2/01 401
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021041090
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022140983
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信隆
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-114744(JP,A)
【文献】特開平03-290260(JP,A)
【文献】特開2013-132885(JP,A)
【文献】特開2018-130960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0114649(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01- 2/215
23/00-25/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送経路と、
前記媒体に対し液体を吐出する液体吐出部を有し、前記液体吐出部によって前記搬送経路を搬送される媒体に記録を行う第1位置と、前記搬送経路から退避する第2位置とに移動可能な記録部と、
前記記録部を、前記搬送経路から退避する方向である第1方向及び前記搬送経路に向かう方向である第2方向に移動させる移動手段と、
前記記録部が前記第2位置にある状態で前記液体吐出部の液体吐出面に沿った方向に移動することで前記液体吐出面をワイピングするワイパーと、
記記録部が前記第2位置にある際に制状態をとる規制手段と、を備え、
前記記録部は、前記移動手段によって、前記第2位置より前記第1方向に移動可能であり、
前記規制手段は、前記記録部の前記第1方向への移動を規制する規制状態と前記規制を行わない非規制状態とに変位可能である、ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記記録部の移動方向は、水平方向及び鉛直方向に対して交差する方向である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、前記記録部の移動方向は、水平方向に対して45°より小さい鋭角を成す、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の記録装置において、前記移動手段は、ラックピニオン機構を含む、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の記録装置において、前記規制手段は、前記記録部の移動動作に伴って前記記録部によって状態が切り換えられる構成を有する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の記録装置において、
前記規制手段は、前記規制状態にあるとき、前記記録部の前記第2方向への移動を規制しない、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
媒体を搬送する搬送経路と、
前記媒体に対し液体を吐出する液体吐出部を有し、前記液体吐出部によって前記搬送経路を搬送される媒体に記録を行う第1位置と、前記搬送経路から退避する第2位置とに移動可能な記録部と、
前記記録部を、前記搬送経路から退避する方向である第1方向及び前記搬送経路に向かう方向である第2方向に移動させる移動手段と、
前記記録部が前記第2位置にある状態で前記液体吐出部の液体吐出面に沿った方向に移動することで前記液体吐出面をワイピングするワイパーと、
前記記録部の前記第1方向への移動を規制する規制状態と前記規制を行わない非規制状態とを切り換え可能であって、前記記録部が前記第2位置にある際に前記規制状態をとる規制手段と、を備え、
前記規制手段は、前記規制状態にあるとき、前記記録部の前記第2方向への移動を規制しなく、
前記記録部は、前記第2位置より更に前記第1方向の位置である第3位置に移動可能であり、
前記規制手段は、前記記録部が前記第1位置から前記第3位置に移動する場合、及び前記第3位置から前記第1位置に移動する場合に、前記非規制状態を維持する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項7に記載の記録装置において、
前記記録部は、
前記規制手段と当接可能な当接部と、
前記第2位置において前記第1方向への移動を規制される部位である被規制部と、を備え、
前記規制手段は、
回転することにより前記被規制部の移動領域に対し進退するロック部と、
回転することにより前記ロック部の姿勢を切り換える部材であって、前記ロック部を支持可能な支持部、並びに前記当接部と当接可能な第1部位及び第2部位を有し、前記記録部の移動動作に伴い前記当接部により回転させられるカムと、を備え、
前記ロック部は、
前記被規制部の移動領域に進出して前記規制状態を形成する第1姿勢と、
前記被規制部の移動領域から離れて前記非規制状態を形成する第2姿勢と、に切り換え可能であり、
前記カムは、
前記支持部により前記ロック部を支持することで前記ロック部を前記第2姿勢とする第1回転位相と、
前記支持部による前記ロック部の支持を解除して前記ロック部の前記第2姿勢から前記第1姿勢への切り換わりを許容する第2回転位相と、の間で回転可能であり、
前記カムが前記第1回転位相にある状態で前記記録部が前記第3位置より更に前記第1方向に移動すると、前記当接部が前記第1部位に当接して前記カムを前記第2回転位相に向けて回転させることにより、前記第2姿勢をとる前記ロック部が回転して前記被規制部の上面に載り、
前記ロック部が前記被規制部の上面に載った状態で前記記録部が前記第2方向に移動すると、前記ロック部が前記被規制部の上面から落下して前記第1姿勢に切り換わり、
前記カムが前記第2回転位相にあるとともに前記ロック部が前記第1姿勢をとる状態で前記記録部が前記第2方向に移動すると、前記当接部が前記第2部位に当接して前記カムを前記第1回転位相に向けて回転させる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項8に記載の記録装置において、前記カムの前記第2部位は、前記カムが前記第2回転位相にある状態で前記第1位置から前記第1方向に向かって移動する前記記録部の前記当接部と当接可能なカム面を有し、
前記当接部が前記カム面に当接した状態で前記記録部が前記第1方向に移動することで、前記カムが前記第1回転位相に向けて回転する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の記録装置において、前記ロック部は、回転可能なホルダー部材と、
前記ホルダー部材に保持されるとともに前記被規制部と当接可能な部材であって、前記ホルダー部材に対し前記被規制部の移動方向成分を含む方向にスライド可能なスライド部材と、
前記ホルダー部材に保持される部材であって、前記スライド部材を前記被規制部に押し当たる方向に押圧する押圧部材と、を備えて構成され、
前記押圧部材が前記スライド部材を押圧する押圧力は、前記ワイパーが前記液体吐出面をワイピングする際に、前記スライド部材の前記ホルダー部材に対する位置を維持する大きさに設定されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項10に記載の記録装置において、前記移動手段の動力源であるモーターと、
前記モーターを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ワイパーによる前記液体吐出面のワイピングが終了して前記ワイパーが前記液体吐出面から外れる前に、前記記録部を前記第1方向に移動させて前記液体吐出面を前記ワイパーから離間させる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項12】
媒体を搬送する搬送経路と、
前記媒体に対し液体を吐出する液体吐出部を有し、前記液体吐出部によって前記搬送経路を搬送される媒体に記録を行う第1位置と、前記搬送経路から退避する第2位置とに移動可能な記録部と、
前記記録部を、前記搬送経路から退避する方向である第1方向及び前記搬送経路に向かう方向である第2方向に移動させる移動手段と、
前記記録部が前記第2位置にある状態で前記液体吐出部の液体吐出面に沿った方向に移動することで前記液体吐出面をワイピングするワイパーと、
前記記録部の前記第1方向への移動を規制する規制状態と前記規制を行わない非規制状態とを切り換え可能であって、前記記録部が前記第2位置にある際に前記規制状態をとる規制手段と、を備え、
前記規制手段は、前記記録部の移動動作に伴って前記記録部によって状態が切り換えられる構成を有し、
前記記録部は、前記第2位置より更に前記第1方向の位置である第3位置に移動可能であり、
前記規制手段は、前記記録部が前記第1位置から前記第3位置に移動する場合、及び前記第3位置から前記第1位置に移動する場合に、前記非規制状態を維持する、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクジェットヘッドがラックピニオン機構によってプラテンに対し昇降可能に構成された記録装置が開示されている。この記録装置では、インクジェットヘッドが昇降することで、用紙に記録を行う記録位置と、ワイパーによりインク吐出面のワイピングを行うワイピング位置とに移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-158036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットヘッドのインク吐出面がワイパーによりワイピングされる際、インクジェットヘッドはワイパーの弾性による外力を受ける。この場合、上記特許文献1記載の構成の様にインクジェットヘッドが移動可能な構成では、ギアのバックラッシュ等によりインクジェットヘッドが動いてしまい、即ちインクジェットヘッドがワイパーから離れる方向に動いてしまう為、インク吐出面を適切にワイピングすることができなくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明の記録装置は、媒体を搬送する搬送経路と、前記媒体に対し液体を吐出する液体吐出部を有し、前記液体吐出部によって前記搬送経路を搬送される媒体に記録を行う第1位置と、前記搬送経路から退避する第2位置とに移動可能な記録部と、前記記録部を、前記搬送経路から退避する方向である第1方向及び前記搬送経路に向かう方向である第2方向に移動させる移動手段と、前記記録部が前記第2位置にある際に前記液体吐出部の液体吐出面をワイピングするワイパーと、前記記録部の前記第1方向への移動を規制する規制状態と前記規制を行わない非規制状態とを切り換え可能であって、前記記録部が前記第2位置にある際に前記規制状態をとる規制手段とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】プリンターの媒体搬送経路を示す図であって、ヘッドユニットが第1位置にある状態を示す図。
図2】プリンターの媒体搬送経路を示す図であって、ヘッドユニットが第2位置にある状態を示す図。
図3】ヘッドユニット及び移動手段の斜視図であって、ヘッドユニットが第1位置にある状態を示す図。
図4】ヘッドユニット及び移動手段の斜視図であって、ヘッドユニットが第2位置にある状態を示す図。
図5】ヘッドユニット及び移動手段の断面図であって、ヘッドユニットが第1位置にある状態を示す図。
図6】ヘッドユニット及び移動手段の断面図であって、ヘッドユニットが第2位置にある状態を示す図。
図7】ヘッドユニットが第1位置にある場合の、第1部材及びヘッドユニットの一部の断面斜視図。
図8】ヘッドユニットが第2位置にある場合の、第1部材及びヘッドユニットの一部の断面斜視図。
図9】+Y方向端部に設けられた規制手段を示す斜視図。
図10】-Y方向端部に設けられた規制手段を示す斜視図。
図11】-Y方向端部に設けられた規制手段を示す斜視図。
図12】-Y方向端部に設けられた規制手段を示す斜視図。
図13】ヘッドユニットの移動領域と位置を模式的に示す図。
図14】規制手段の正面図であって、非規制状態を示す図。
図15】規制手段の正面図であって、規制状態への切り換わりの途中状態を示す図。
図16】規制手段の正面図であって、規制状態を示す図。
図17】規制手段の正面図であって、イレギュラー状態を示す図。
図18】規制手段の正面図であって、イレギュラー状態が解消される途中の状態を示す図。
図19】規制手段の状態切り換えを行う際の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る記録装置は、媒体を搬送する搬送経路と、前記媒体に対し液体を吐出する液体吐出部を有し、前記液体吐出部によって前記搬送経路を搬送される媒体に記録を行う第1位置と、前記搬送経路から退避する第2位置とに移動可能な記録部と、前記記録部を、前記搬送経路から退避する方向である第1方向及び前記搬送経路に向かう方向である第2方向に移動させる移動手段と、前記記録部が前記第2位置にある際に前記液体吐出部の液体吐出面をワイピングするワイパーと、前記記録部の前記第1方向への移動を規制する規制状態と前記規制を行わない非規制状態とを切り換え可能であって、前記記録部が前記第2位置にある際に前記規制状態をとる規制手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、記録装置は前記記録部の前記第1方向への移動を規制する規制状態と前記規制を行わない非規制状態とを切り換え可能であって、前記記録部が前記第2位置にある際に前記規制状態をとる規制手段を備えるので、前記記録部が前記ワイパーから離れる方向に動いてしまうことを抑制でき、前記液体吐出面を適切にワイピングすることができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、前記記録部の移動方向は、水平方向及び鉛直方向に対して交差する方向であることを特徴とする。
本態様によれば、前記記録部の移動方向は、水平方向及び鉛直方向に対して交差する方向であるので、前記記録部の移動に必要なスペースの、水平方向と鉛直方向の大きさのバランスをとることができ、水平方向と鉛直方向に装置が極端に大型化することを抑制できる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、前記記録部の移動方向は、水平方向に対して45°より小さい鋭角を成すことを特徴とする。
本態様によれば、前記記録部の移動方向は、水平方向に対して45°より小さい鋭角を成すことから、前記移動方向に沿って移動する際に前記記録部に作用する重力の影響が顕著に減少し、前記記録部が前記ワイパーから受ける力によって前記ワイパーから離れる方向に動いてしまう問題が生じ易くなる。しかしながら上記第1の態様により、前記記録部が前記ワイパーから離れる方向に動いてしまうことを抑制でき、前記液体吐出面を適切にワイピングすることができる。
【0011】
第4の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記移動手段は、ラックピニオン機構を含むことを特徴とする。
本態様によれば、前記移動手段は、ラックピニオン機構を含むことから、ギアのバックラッシュによって前記記録部が前記ワイパーから受ける力によって前記ワイパーから離れる方向に動いてしまう問題が生じ易くなる。しかしながら上記第1の態様により、前記記録部が前記ワイパーから離れる方向に動いてしまうことを抑制でき、前記液体吐出面を適切にワイピングすることができる。
【0012】
第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記規制手段は、前記記録部の移動動作に伴って前記記録部によって状態が切り換えられる構成を有することを特徴とする。
本態様によれば、前記規制手段は、前記記録部の移動動作に伴って前記記録部によって状態が切り換えられる構成を有するので、前記規制手段の状態切り換えを行う為の動力源が不要となり、装置のコストアップ及び大型化を抑制できる。
【0013】
第6の態様は、第1から第5の態様のいずれかにおいて、前記規制手段は、前記規制状態にあるとき、前記記録部の前記第2方向への移動を規制しないことを特徴とする。
本態様によれば、前記規制手段は、前記規制状態にあるとき、前記記録部の前記第2方向への移動を規制しない構成であり、即ち前記規制手段は前記規制状態にあるとき、前記記録部の前記第1方向への移動のみを規制する構成であるため、前記第1方向への移動と前記第2方向への移動の双方を規制する構成と比較して、前記規制手段の構成を簡略化できる。
【0014】
第7の態様は、第5のまたは第6の態様において、前記記録部は、前記第2位置より更に前記第1方向の位置である第3位置に移動可能であり、前記規制手段は、前記記録部が前記第1位置から前記第3位置に移動する場合、及び前記第3位置から前記第1位置に移動する場合に、前記非規制状態を維持することを特徴とする。
本態様によれば、前記規制手段は、前記記録部が前記第1位置から前記第3位置に移動する場合、及び前記第3位置から前記第1位置に移動する場合に、前記非規制状態を維持するので、前記記録部が頻繁に前記第1位置と前記第3位置との間を移動する場合に、当該移動を前記規制手段が阻害せず、円滑に移動することができる。
【0015】
第8の態様は、第7の態様において、前記記録部は、前記規制手段と当接可能な当接部と、前記第2位置において前記第1方向への移動を規制される部位である被規制部と、を備え、前記規制手段は、回転することにより前記被規制部の移動領域に対し進退するロック部と、回転することにより前記ロック部の姿勢を切り換える部材であって、前記ロック部を支持可能な支持部、並びに前記当接部と当接可能な第1部位及び第2部位を有し、前記記録部の移動動作に伴い前記当接部により回転させられるカムと、を備え、前記ロック部は、前記被規制部の移動領域に進出して前記規制状態を形成する第1姿勢と、前記被規制部の移動領域から離れて前記非規制状態を形成する第2姿勢と、に切り換え可能であり、前記カムは、前記支持部により前記ロック部を支持することで前記ロック部を前記第2姿勢とする第1回転位相と、前記支持部による前記ロック部の支持を解除して前記ロック部の前記第2姿勢から前記第1姿勢への切り換わりを許容する第2回転位相と、の間で回転可能であり、前記カムが前記第1回転位相にある状態で前記記録部が前記第3位置より更に前記第1方向に移動すると、前記当接部が前記第1部位に当接して前記カムを前記第2回転位相に向けて回転させることにより、前記第2姿勢をとる前記ロック部が回転して前記被規制部の上面に載り、前記ロック部が前記被規制部の上面に載った状態で前記記録部が前記第2方向に移動すると、前記ロック部が前記被規制部の上面から落下して前記第1姿勢に切り換わり、前記カムが前記第2回転位相にあるとともに前記ロック部が前記第1姿勢をとる状態で前記記録部が前記第2方向に移動すると、前記当接部が前記第2部位に当接して前記カムを前記第1回転位相に向けて回転させることを特徴とする。
本態様によれば、前記カムの回転により、前記ロック部の姿勢を切り換えることができ、前記記録部の移動動作によって状態が切り換えられる前記規制手段を、少ない部品点数で大型化を抑制しつつ構成できる。
【0016】
第9の態様は、第8の態様において、前記カムの前記第2部位は、前記カムが前記第2回転位相にある状態で前記第1位置から前記第1方向に向かって移動する前記記録部の前記当接部と当接可能なカム面を有し、前記当接部が前記カム面に当接した状態で前記記録部が前記第1方向に移動することで、前記カムが前記第1回転位相に向けて回転することを特徴とする。
【0017】
前記規制手段は、前記記録部が前記第3位置より更に前記第1方向に移動し、そして前記第2方向に移動することで前記非規制状態から前記規制状態に切り換わる構成である。ところが、前記記録部が前記第1位置から前記第3位置へ移動しようとする際に、前記規制手段が振動や衝撃等の何らかのイレギュラーな事象により既に前記規制状態に切り換わってしまっていると、前記記録部が前記第3位置へ移動することができない。
この様な問題に鑑み、本態様では、前記カムの前記第2部位に前記カム面を設け、前記当接部が前記カム面に当接した状態で前記記録部が前記第1方向に移動することで、前記カムが前記第1回転位相に向けて回転する様に構成した。これにより、前記記録部が前記第1位置から前記第3位置へ移動しようとする際に、前記規制手段が前記規制状態に切り換わってしまっていても、前記規制手段を前記非規制状態に戻すことができ、前記記録部が前記第3位置に移動することができる。
【0018】
第10の態様は、第8のまたは第9の態様において、前記ロック部は、回転可能なホルダー部材と、前記ホルダー部材に保持されるとともに前記被規制部と当接可能な部材であって、前記ホルダー部材に対し前記被規制部の移動方向成分を含む方向にスライド可能なスライド部材と、前記ホルダー部材に保持される部材であって、前記スライド部材を前記被規制部に押し当たる方向に押圧する押圧部材と、を備えて構成され、前記押圧部材が前記スライド部材を押圧する押圧力は、前記ワイパーが前記液体吐出面をワイピングする際に、前記スライド部材の前記ホルダー部材に対する位置を維持する大きさに設定されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記ロック部が、前記ホルダー部材と、前記スライド部材と、前記押圧部材とを備えて成り、これにより前記押圧部材に対抗できる力で前記記録部を前記第1方向に駆動すれば、前記記録部を前記スライド部材のスライド可能範囲内で、ある程度動かすことができる。このことにより、前記ワイパーと前記液体吐出面との相対位置を微調整でき、前記液体吐出面を適切にワイピングできる。
そして前記押圧部材が前記スライド部材を押圧する押圧力は、前記ワイパーが前記液体吐出面をワイピングする際に、前記スライド部材の前記ホルダー部材に対する位置を維持する大きさに設定されているので、前記ワイパーが前記液体吐出面をワイピングする際に前記記録部が前記ワイパーから離れる方向に動いてしまうことを抑制でき、前記液体吐出面を適切にワイピングすることができる。
【0020】
第11の態様は、第10の態様において、前記移動手段の動力源であるモーターと、前記モーターを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ワイパーによる前記液体吐出面のワイピングが終了して前記ワイパーが前記液体吐出面から外れる前に、前記記録部を前記第1方向に移動させて前記液体吐出面を前記ワイパーから離間させることを特徴とする。
【0021】
前記ワイパーが前記液体吐出面に押し当たって変形した状態のまま、前記ワイパーの移動により当該ワイパーが前記液体吐出面から外れると、前記ワイパーが弾性で元の形状に戻る際に、付着している液体が飛散してしまう虞がある。しかしながら本態様では、前記制御手段は、前記ワイパーによる前記液体吐出面のワイピングが終了して前記ワイパーが前記液体吐出面から外れる前に、前記記録部を前記第1方向に移動させて前記液体吐出面を前記ワイパーから離間させるので、上述した液体の飛散の問題を抑制できる。
【0022】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では記録用紙に代表される媒体に対し、液体の一例であるインクを吐出することで記録を行うインクジェットプリンター1を、記録装置の一例として説明する。以下においてインクジェットプリンター1は、プリンター1と略称する。
尚、各図において示すX-Y-Z座標系は直交座標系であって、Y軸方向が媒体の搬送方向と交差する方向、即ち媒体幅方向であり、また装置奥行き方向でもある。Y軸方向のうち+Y方向は装置前面から装置背面に向かう方向であり、-Y方向は装置背面から装置前面に向かう方向である。また本実施形態においてY軸方向は、後述するヘッドユニット50の移動方向であるV軸方向と交差する幅方向の一例である。
【0023】
X軸方向は装置幅方向であり、プリンター1の操作者から見て+X方向が左側、-X方向が右側となる。Z軸方向は鉛直方向であって、載置面Gに対する法線方向であり、即ち装置高さ方向となる。Z軸方向のうち+Z方向が上方向、-Z方向が下方向となる。
以下では、媒体が送られていく方向を「下流」と言い、またその反対方向を「上流」と言う場合がある。また各図においては、媒体搬送経路を破線で示している。プリンター1において媒体は、破線で示す媒体搬送経路を通って搬送される。
【0024】
またF軸方向は後述するラインヘッド51と搬送ベルト13との間、即ち記録領域における媒体搬送方向であり、+F方向が搬送方向の下流となり、その反対の-F方向が搬送方向の上流となる。またV軸方向はF軸方向と直交する方向であって、後述する記録部の一例であるヘッドユニット50の移動方向であり、V軸方向のうち+V方向はヘッドユニット50が記録時搬送経路T1から退避する第1方向の一例であり、-V方向はヘッドユニット50が記録時搬送経路T1に向かう第2方向の一例である。本実施形態においてV軸方向は、後述する排出トレイ8の傾斜に沿った方向でもある。
【0025】
以下、図1を参照してプリンター1における媒体搬送経路について説明する。プリンター1は装置本体2の下部に増設ユニット6を連結可能に構成されており、図2は増設ユニット6を連結した状態を示している。
装置本体2は、下部に媒体を収容する第1媒体カセット3を備えており、増設ユニット6を連結した場合、更にその下に第2媒体カセット4及び第3媒体カセット5が設けられる。
【0026】
各媒体カセットに対しては、収容された媒体を-X方向に送り出すピックローラーが設けられている。ピックローラー21、22、23は、それぞれ第1媒体カセット3、第2媒体カセット4、及び第3媒体カセット5に対して設けられたピックローラーである。
また各媒体カセットに対しては、-X方向に送り出された媒体を、斜め上方向に給送する給送ローラー対が設けられている。給送ローラー対25、26、27は、それぞれ第1媒体カセット3、第2媒体カセット4、及び第3媒体カセット5に対して設けられた給送ローラー対である。
尚、以下では「ローラー対」とは、特に説明しない限り不図示のモーターによって駆動される駆動ローラーと、この駆動ローラーに接して従動回転する従動ローラーとで構成されるものとする。
【0027】
第3媒体カセット5から送り出された媒体は、搬送ローラー対29、28によって搬送ローラー対38に送られる。また第2媒体カセット4から送り出された媒体は、搬送ローラー対28によって搬送ローラー対38に送られる。媒体は搬送ローラー対38でニップされ、搬送ローラー対31へ送られる。
第1媒体カセット3から送り出された媒体は、搬送ローラー対38を経ずに搬送ローラー対31へ送られる。
尚、搬送ローラー対38の近傍に設けられた供給ローラー19及び分離ローラー20は、図1では図示を省略する供給トレイから媒体を送り出すローラー対である。
【0028】
搬送ローラー対31から送り力を受ける媒体は、液体吐出ヘッドの一例であるラインヘッド51と搬送ベルト13との間、つまりラインヘッド51と対向する記録位置に送られる。尚、以下では搬送ローラー対31から搬送ローラー対32までの媒体搬送経路を記録時搬送経路T1と称する。
【0029】
ラインヘッド51はヘッドユニット50を構成する。ラインヘッド51は、媒体の面に液体の一例であるインクを吐出して記録を実行する。ラインヘッド51は、インクを吐出するノズルが媒体幅方向の全域をカバーする様に構成されたインク吐出ヘッドであり、媒体幅方向への移動を伴わないで媒体幅全域に記録が可能なインク吐出ヘッドとして構成されている。但し、インク吐出ヘッドはこれに限られず、キャリッジに搭載されて媒体幅方向に移動しながらインクを吐出するタイプであってもよい。
【0030】
ヘッドユニット50は記録時搬送経路T1に対し進退可能に設けられ、記録時搬送経路T1に最も進出する位置と、記録時搬送経路T1から最も退避する位置との間で移動可能に設けられている。図1はヘッドユニット50が記録時搬送経路T1に対し最も進出した位置であり、この状態において媒体に対し記録が行われる。図2はラインヘッド51のインク吐出面51aをワイピングする際のヘッドユニット50の位置を示しているが、インク吐出面51aをワインピングするワイピング動作の詳細については後に説明する。
【0031】
符号10A、10B、10C、及び符号10Dは、液体収容部としてのインク収容部である。ラインヘッド51から吐出されるインクは、各インク収容部から、図示を省略するチューブを介してラインヘッド51へと供給される。インク収容部10A、10B、10C、及び10Dは、それぞれ装着部11A、11B、11C、及び11Dに対して着脱可能に設けられる。
また符号12は、ラインヘッド51から不図示のフラッシングキャップに向けてメンテナンスの為に吐出された、廃液としてのインクを貯留する廃液収容部である。
【0032】
搬送ベルト13は、プーリー14及びプーリー15に掛け回される無端ベルトであって、プーリー14及びプーリー15のうち少なくとも一方が不図示のモーターにより駆動されることで回転する。媒体は、搬送ベルト13のベルト面に吸着されつつラインヘッド51と対向する位置を搬送される。搬送ベルト13に対する媒体の吸着は、エアー吸引方式や静電吸着方式などの公知の吸着方式を採用できる。
【0033】
ここでラインヘッド51と対向する位置を通る記録時搬送経路T1は、水平方向と鉛直方向の双方に対して交差し、上向きに媒体を搬送する構成である。このことにより、ヘッドユニット50の移動方向であるV軸方向も、水平方向と鉛直方向の双方に対して交差し、V軸方向の水平方向に対する傾斜角αが、45°より小さく、より具体的には概ね15°となっている。
この様な構成により、ヘッドユニット50の移動に必要なスペースの、水平方向と鉛直方向の大きさのバランスをとることができ、水平方向と鉛直方向に装置が極端に大型化することを抑制できる。
尚、上記構成に限られず、V軸方向が水平方向と平行であっても良いし、或いはV軸方向が鉛直方向と平行であっても良い。
【0034】
またヘッドユニット50より+Z方向に設けられ、媒体搬送経路から排出された媒体を支持する支持面8bを形成する排出トレイ8を備え、支持面8bは、ヘッドユニット50の移動方向であるV軸方向に沿って延びる。これにより排出トレイ8とヘッドユニット50の移動領域との関係において無駄なスペースが形成されず、装置の大型化を抑制できる。
またZ軸方向においてヘッドユニット50の一部が、インク収容部10A~10B液体収容部とオーバーラップしているので、Z軸方向の装置寸法を抑制できる。
【0035】
次に、ラインヘッド51により第1面に記録が行われた媒体は、搬送ベルト13の下流に位置する搬送ローラー対32により、更に上方向に送られる。
搬送ローラー対32の下流にはフラップ41が設けられており、このフラップ41によって媒体の搬送方向が切り換えられる。媒体をそのまま排出する場合は、媒体の搬送経路はフラップ41によって上方の搬送ローラー対35に向かう様に切り換えられ、媒体は搬送ローラー対35によって排出トレイ8に向けて排出される。
【0036】
媒体の第1面に加えて更に第2面に記録を行う場合、媒体の搬送方向は、フラップ41によって分岐位置K1に向けられる。そして媒体は分岐位置K1を通り、スイッチバック経路T2に入る。本実施形態においてスイッチバック経路T2は分岐位置K1から上側の媒体搬送経路とする。スイッチバック経路T2には搬送ローラー対36、37が設けられている。スイッチバック経路T2に入った媒体は、搬送ローラー対36、37によって上方向に搬送され、そして媒体の下エッジが分岐位置K1を通過したら、搬送ローラー対36、37の回転方向が切り換えられ、これにより媒体は下方向に搬送される。
【0037】
スイッチバック経路T2には、反転経路T3が接続している。本実施形態において反転経路T3は、分岐位置K1から、搬送ローラー対33、34を通って搬送ローラー対38に至る媒体搬送経路とする。
分岐位置K1から下方向に搬送された媒体は搬送ローラー対33、34から送り力を受けて搬送ローラー対38に到達し、湾曲反転され、搬送ローラー対31に送られる。
【0038】
再びラインヘッド51と対向する位置に送られた媒体は、既に記録が行われた第1面に対し反対側の第2面がラインヘッド51と対向する。これにより、媒体の第2面に対しラインヘッド51による記録が可能となる。
【0039】
続いてヘッドユニット50をV軸方向に沿って移動させる移動手段について図3図8を参照して説明する。尚、図3図4では、図5図6に示す第1部材61の図示は省略し、ヘッドユニット50の側面を明瞭に示している。
図3図6において、移動手段60は、第1部材61、第2ラック形成部材62、第2部材63、第3ラック形成部材64、第1ピニオン歯車65、及び第2ピニオン歯車67を備えている。
本実施形態において移動手段60は、ヘッドユニット50に対しV軸方向と交差する方向であるY軸方向の両側に設けられている。
【0040】
第1部材61は、ヘッドユニット50のY軸方向における側面と対向する位置において装置のフレーム(不図示)に対して固定的に設けられており、ヘッドユニット50と対向する側に、V軸方向に沿って第1ラック61aが形成されている。また第1部材61には、図7図8に示す様にV軸方向に沿って延びる第1ガイド溝61bと第2ガイド溝61cが形成されている。
ヘッドユニット50のY軸方向における側面即ち第1部材61と対向する側面には、図3図4に示す様に2つの上部ローラー52がV軸方向に間隔を空けて配置されている。2つの上部ローラー52は、図7図8に示す様に第1部材61の第1ガイド溝61bに入り込み、これによりヘッドユニット50が、第1部材61によってV軸方向に案内される。また上部ローラー52の回転によって、ヘッドユニット50が移動する際の摺動抵抗が軽減される。
【0041】
次に、ヘッドユニット50のY軸方向の端部には第2ラック形成部材62が設けられ、第2ラック形成部材62にはV軸方向に沿って第2ラック62aが形成されている。そして図5図6に示す様に第1ラック61aと第2ラック62aとが対向するとともに、第1ラック61aと第2ラック62aの間に第1ピニオン歯車65が配置され、且つ、第1ラック61aと第2ラック62aの双方に第1ピニオン歯車65が噛み合っている。
【0042】
第1ピニオン歯車65は、第2部材63において回転可能に設けられている。第2部材63においてY軸方向の側面には、図3図4に示す様に2つの下部ローラー53がY軸方向に沿って間隔を空けて設けられている。下部ローラー53は、第2部材63に対して固定される下部ローラー支持部材54によって支持されている。
これら2つの下部ローラー53は、第1部材61の第2ガイド溝61c(図7図8参照)に入り込んでいる。これにより第2部材63が、第1部材61によってV軸方向に案内される。また下部ローラー53の回転によって、第2部材63が移動する際の摺動抵抗が軽減される。
【0043】
第2部材63の下側には、図3図4に示す様に第3ラック形成部材64が設けられており、第3ラック形成部材64にはV軸方向に沿って第3ラック64aが形成されている。そして第3ラック64aに、第2ピニオン歯車67が噛み合っている。尚、第3ラック形成部材64は、第2部材63の下側においてY軸方向の両端部に設けられている。また第2ピニオン歯車67は、Y軸方向に平行な回転軸中心を有する回転軸68において第3ラック64aと対向する位置に設けられ、2つの第2ピニオン歯車67が回転軸68の回転によって同時に回転する様に構成されている。尚、回転軸68には、図3図4では図示を省略する歯車機構を介してモーター59の動力が伝達される。
【0044】
尚、符号58はモーター59を制御する制御部である。制御部58は不図示の基準位置センサーから受ける信号と、モーター59の駆動量をもとに、ヘッドユニット50のV軸方向位置を把握できる。尚、基準位置センサー(不図示)を備えていない場合、ヘッドユニット50が移動可能範囲における+V方向の端部に達した場合、及び-V方向の端部に達した場合に、モーター59の電流値が増加する為、これを検知することでヘッドユニット50のV軸方向位置を把握することもできる。
【0045】
以上の構成において、第2ピニオン歯車67が回転すると、第2部材63がV軸方向に沿って移動する。ここで第1部材61即ち第1ラック61aは固定的に設けられているので、V軸方向に移動する第2部材63に設けられた第1ピニオン歯車65は、第1ラック61aとの噛み合いに基づき回転する。
そして第1ピニオン歯車65は、ヘッドユニット50に設けられた第2ラック62aと噛み合っている為、第1ピニオン歯車65の回転により、ヘッドユニット50がV軸方向に押し出される様に移動する。
【0046】
例えば、ヘッドユニット50が図5に示す位置にある状態で、第2部材63が+V方向に移動すると、図5の右側の第1ピニオン歯車65は図5において反時計回り方向に回転し、図5の左側の第1ピニオン歯車65は図5において時計回り方向に回転する。これにより、ヘッドユニット50は+V方向に移動させられる。
またヘッドユニット50が図6に示す位置にある状態で、第2部材63が-V方向に移動すると、図5の右側の第1ピニオン歯車65は図6において時計回り方向に回転し、図6の左側の第1ピニオン歯車65は図6において反時計回り方向に回転する。これにより、ヘッドユニット50は-V方向に移動させられる。
【0047】
ここで、図5及び図6において符号M1で示すV軸方向の範囲は、第1ピニオン歯車65の回転軸中心を基準にした、第2部材63の移動範囲である。また図5及び図6において符号M2で示すV軸方向の範囲は、第2ラック形成部材62の-V方向端部位置を基準にした、ヘッドユニット50の移動範囲である。
上述した様にヘッドユニット50は、第1ピニオン歯車65の回転によってV軸方向に移動するが、第1ピニオン歯車65それ自体もV軸方向に移動する構成であるので、第2部材63の移動範囲M1よりも、ヘッドユニット50の移動範囲M2のほうが大きくなる。本実施形態では、移動範囲M2は移動範囲M1の約2倍の大きさとなる。
【0048】
以上の様に移動手段60は、媒体を搬送する搬送経路に進出し搬送される媒体に記録を行う位置と、搬送経路から退避する位置とに移動可能なヘッドユニット50をモーター59の動力によってV軸方向に移動させる。この移動手段60は、ヘッドユニット50の移動方向に沿って第1ラック61aが形成された第1部材61と、第1ラック61aと噛み合う第1ピニオン歯車65と、ヘッドユニット50において第1ラック61aと対向する位置に設けられ、ヘッドユニット50の移動方向であるV軸方向に沿って形成されたラックであって、第1ピニオン歯車65と噛み合う第2ラック62aと、第1ピニオン歯車65が回転可能に設けられ、モーター59の動力を受けてV軸方向に移動可能な第2部材63とを備える。そしてV軸方向に移動する第1ピニオン歯車65の回転により、ヘッドユニット50の移動量が、第2部材63の移動量よりも増える。換言すれば、第2部材63の移動量を抑制しつつ、ヘッドユニット50の移動量を確保できるため、第2部材63を移動させる機構の大型化を抑制でき、具体的には本実施形態において第3ラック64aのV軸方向の長さを抑制できる。その結果、プリンター1の大型化を抑制できる。
【0049】
尚、本実施形態では第1ラック61aが形成された第1部材61が装置のフレーム(不図示)に対して固定的に設けられていたが、第1部材61をV軸方向に移動可能に設けるとともに第1部材61をV軸方向に移動させるラックピニオン機構を別途設けても良い。これにより、ヘッドユニット50の移動領域をより一層拡大させることができる。
また、第1ピニオン歯車65を、メイン歯車とサブ歯車の二段構造とすることも好適である。より詳しくは、このサブ歯車の歯数をメイン歯車の歯数より増やした上で、メイン歯車は第1ラック61aに噛み合わせ、そしてサブ歯車は第2ラック62aに噛み合わせる。この様な構成により、第1ピニオン歯車65の回転に対する第2ラック62aの移動量をより一層増やすことができ、ヘッドユニット50の移動領域をより一層拡大させることができる。
【0050】
また本実施形態において第2ラック62aは、V軸方向と交差する方向であるY軸方向において、ヘッドユニット50の側面に設けられるので、Y軸方向から見た場合の第2ラック62aを含めたヘッドユニット50の大きさを抑制できる。
【0051】
また移動手段60は、Y軸方向において、ヘッドユニット50の両側に設けられるので、Y軸方向におけるヘッドユニット50の一端側と他端側とにおけるV軸方向の移動量を等しくすることができる。このことにより、ヘッドユニット50の姿勢を適切に維持しながらヘッドユニット50をV軸方向に移動させることができる。
【0052】
次にヘッドユニット50は、第1部材61及び第2部材63を備える装置本体2に対し着脱可能に構成されている。図7及び図8において第1部材61には、第3ガイド溝61dと第4ガイド溝61eとが形成されており、ヘッドユニット50のY軸方向側面に設けられた上部ローラー52、52が、第1ガイド溝61bから、第3ガイド溝61dと第4ガイド溝61eを通って上方に抜けることができる様に構成されている。即ち、ヘッドユニット50が第1部材61から外れることができる様に構成されている。また第1部材61に対しヘッドユニット50を落とし込むことで、上部ローラー52、52が第1ガイド溝61bに入り込むことができ、即ちヘッドユニット50を装着することができる。第3ガイド溝61dと第4ガイド溝61eは、ヘッドユニット50を着脱方向にガイドするガイド部として機能する。
この様にヘッドユニット50は、装置本体2に対し着脱可能であるので、ヘッドユニット50のメンテナンスや交換が容易となる。
【0053】
続いて、ヘッドユニット50の移動を規制する規制手段について説明する。
先ず、図13を参照してヘッドユニット50の移動範囲について説明する。図13はヘッドユニット50の移動範囲を模式的に示したものであり、便宜上ヘッドユニット50の移動経路をループ状で示している。また以降においてヘッドユニット50のV軸方向における位置とは、厳密には後述する被規制面55a(図3図4参照)のV軸方向における位置とする。
図13において位置F1は、ヘッドユニット50が記録時搬送経路T1に最も進出する位置であり、第1位置の一例あって、図1に示されるヘッドユニット50の位置に対応している。ヘッドユニット50が位置F1にあるとき、媒体に対し記録が行われる。
【0054】
図13において位置F5は、ヘッドユニット50が記録時搬送経路T1から最も退避する位置である。図13の位置F3は不図示のフラッシングキャップに対してフラッシング動作、即ちラインヘッド51の全インク吐出ノズル(不図示)からフラッシングキャップ(不図示)に向けてインク吐出を行う位置であり、第3位置の一例である。プリンター1は媒体への記録実行中、ヘッドユニット50が定期的に位置F1から位置F3へ移動し、フラッシング動作を行う。フラッシング動作が終了すれば、ヘッドユニット50は位置F3から位置F1へ戻る。
【0055】
位置F6はラインヘッド51のインク吐出面51aをワイピングする位置であり、ヘッドユニット50の第2位置の一例である。図2は、ヘッドユニット50が位置F6にある状態を示しており、符号43はワイパーユニットであり、符号44はワイパーユニット43に設けられたワイパーである。ワイパー44は、ゴムやエラストマ等の弾性材料で形成され、弾性によってインク吐出面51aに押し当たることができる。
【0056】
ワイパーユニット43は、不図示のモーターによってインク吐出面51aに沿った方向の一例であるY軸方向に移動可能に設けられており、移動可能領域における+Y方向の端部位置をホームポジションとし、ワイピング時を除いてホームポジションに位置している。尚、制御部58(図3図4参照)は、ワイパーユニット43の位置を、不図示のホームポジションセンサーの検出信号と、ワイパーユニット43を駆動するモーター(不図示)の駆動量とで把握することができる。
【0057】
ワイパー44によりインク吐出面51aのワイピングを行う場合、ヘッドユニット50は図13の位置F1から+V方向に移動して位置F5に向かう。一方、ワイパーユニット43はインク吐出面51aにワイパー44が接触しない位置までヘッドユニット50が+V方向に移動したら、ホームポジションから-Y方向の端部へと移動する。
次いで、ヘッドユニット50は移動方向を+V方向に切り換えて位置F6へ向かい、ヘッドユニット50が位置F6に達したら、ワイパーユニット43が-Y方向端部から+Y方向に向かって移動する。これにより、ワイパー44がインク吐出面51aに押し当たり、インク吐出面51aのワイピングが行われる。
尚、厳密にはヘッドユニット50は位置F5から位置F6に向かい、位置F6をやや-V方向に過ぎてから、+V方向に戻って位置F6で停止するが、これについては後に説明する。
また、図13の位置F2、F4、F7についても追って説明する。
【0058】
次に、プリンター1は、ヘッドユニット50の-V方向への移動を規制する規制状態と、前記規制を行わない非規制状態とを切り換え可能であって、ヘッドユニット50が位置F6にある際即ちインク吐出面51aのワイピングを行う際に前記規制状態をとる規制手段70A、70Bを備えている。
規制手段70Aは、図10に示す様にヘッドユニット50に対し-Y方向の端部に設けられ、規制手段70Bは、図9に示す様にヘッドユニット50に対し+Y方向の端部に設けられている。回転軸71はY軸方向に沿って延設された回転軸であり、+Y方向の端部に設けられた規制手段70Bと、-Y方向の端部に設けられた規制手段70Aとで共用される軸である。
【0059】
規制手段70A、70Bは、Y軸方向において左右対称の構造を成すものであり基本的構成は同じである為、以下では-Y方向の端部に設けられた規制手段70Aについて詳説する。尚、本実施形態では規制手段をヘッドユニット50に対し+Y方向端部と-Y方向端部に設けたが、いずれか一方のみに設けられていても良い。
【0060】
図11図12に示す様に、ヘッドユニット50は、規制手段70Aと当接可能な当接部であるピン部材56と、位置F6において+V方向への移動を規制される部位である被規部としての被規制フレーム55とを備えている。被規制フレーム55は、図3図4にも示されている。符号55aは、V軸方向に沿って延びる被規制フレーム55の+V方向端部が-F方向に折り曲げられて形成された面であり、後述するロック部73と当接する被規制面である。
【0061】
規制手段70Aは、回転軸71を中心に回転することにより被規制フレーム55の移動領域に対し進退するロック部73と、Y軸方向に平行なカム回転軸81を中心に回転することによりロック部73の姿勢を切り換えるカム80を有している。尚、本実施形態において回転軸71は固定軸であり、ロック部73がカム回転軸81に対し相対的に回転する構成である。これにより規制手段70Aが備えるロック部73と、規制手段70B(図9参照)が備えるロック部73は、互いに独立して回転することができる。
カム80は、ロック部73を支持可能な支持部80aと、ピン部材56と当接可能な第1部位80f及び第2部位80bを有しており、ヘッドユニット50の移動動作に伴いピン部材56により回転させられる。ピン部材56によるカム80の回転については、後に改めて詳説する。
【0062】
ロック部73は、回転することにより、被規制フレーム55の移動領域に進出して規制手段70Aの規制状態を形成する第1姿勢(図11図12図16)と、被規制フレーム55の移動領域から離れて規制手段70Aの非規制状態を形成する第2姿勢(図14)と、に切り換え可能に設けられている。
【0063】
カム80は、支持部80aによりロック部73を支持することでロック部73を第2姿勢(図14)とする第1回転位相(図14)と、支持部80aによるロック部73の支持を解除してロック部73の第2姿勢から第1姿勢への切り換わりを許容する第2回転位相(図11図12図15図16図17)との間で回転可能に設けられている。
【0064】
尚、本実施形態においてロック部73は、ばね等の押圧部材によって特定の回転方向へ押圧されてはおらず、例えば図14の状態では自重によって支持部80aに載っている状態である。
同様にカム80も、ばね等の押圧部材によって特定の回転方向へ押圧されてはいない。但し、振動や衝撃等によって不用意に回転することがないよう、回転に際して所定の摩擦力が生じる様に設けられている。
【0065】
次に、図11においてロック部73は、回転軸71を中心に回転可能なホルダー部材74と、ホルダー部材74に対してスライド可能なスライド部材75とを備えている。スライド部材75は、ホルダー部材74に保持されるとともに被規制フレーム55と当接可能な部材であって、ホルダー部材74に対し回転軸71の径方向にスライド可能に保持されている。ここでの回転軸71の径方向には、被規制フレーム55の移動方向成分即ちV軸方向成分が含まれている。
スライド部材75は、押圧部材の一例であるコイルばね76により、回転軸71の径方向に沿った方向であって被規制フレーム55に押し当たる方向に押圧されている。
【0066】
以上の様に構成された規制手段70Aの、非規制状態と規制状態との切り換え動作について以下説明する。
媒体に対し記録を行う際は、ヘッドユニット50は図13の位置F1に位置している。この状態では、規制手段70Aは図14に示す状態にあり、ロック部73は第2姿勢にあり、カム80は第1回転位相にある。
この状態では、カム80の第1部位80fがヘッドユニット50に設けられたピン部材56の移動領域に進出しており、ヘッドユニット50が+V方向に移動すると、-V方向の側面である第1部位当接面80gがピン部材56と当接可能な状態にある。尚、この状態において第2部位80bは、ピン部材56の進退領域には進出していない。
【0067】
そしてヘッドユニット50が図13の位置F1から+V方向に移動し、位置F3を過ぎて位置F4の手前に達すると、図14に示す様にピン部材56が第1部位当接面80gに当接する。そして更にヘッドユニット50が+V方向に移動すると、ピン部材56がカム80を第2回転位相に向けて回転させる。図15は、カム80が第2回転位相に回転した状態であり、この様にカム80が回転することで第2姿勢をとるロック部73が回転して被規制フレーム55の上面に載る。このときのヘッドユニット50の位置が、図13に示す位置F4である。この状態では、規制手段70Aはまだ規制状態に切り換わっていない。
尚、位置F4は位置F3より+V方向に位置するので、ヘッドユニット50が位置F1と位置F3との間で往復する場合、規制手段70Aは図14の非規制状態を維持する。
【0068】
そして図15に示す様にロック部73が被規制フレーム55の上面に載った状態でヘッドユニット50が-V方向に移動すると、図15から図16への変化で示す様にロック部73が被規制フレーム55の上面から落下して第1姿勢に切り換わる。即ち規制手段70Aが規制状態に切り換わる。詳しくは後に説明するが、このときのヘッドユニット50の位置は、位置F6よりやや-V方向の位置F6-である。
この状態、即ちカム80の第2回転位相では、第2部位80bがピン部材56の進退領域に進出しており、第2部位80bの+V方向の面である第2部位当接面80dに対しピン部材56が当接可能となっている。これにより、図16に示す状態即ちカム80が第2回転位相にあるとともにロック部73が第1姿勢をとる状態で、ヘッドユニット50が-V方向に移動すると、ピン部材56が第2部位当接面80dに当接してカム80を第1回転位相に向けて回転させ、図14に示す状態に戻る。カム80が第1回転位相に切り換わった際のヘッドユニット50の位置が、図13の位置F7となる。
尚、ホルダー部材74の底部には、支持部80aがロック部73を押し上げる際のガイドとして機能するガイド面74aが形成されている(図12も参照)。
【0069】
次に、ワイピング動作時の制御について図19及び必要に応じて他の図を参照して説明する。尚、図19に示す制御は、説明の便宜上ヘッドユニット50が図13の位置F5に到達した時点からの制御を示している。
制御部58(図3図4参照)は、ワイピング動作を行う為にヘッドユニット50を図13の位置F5から-V方向に移動させる際、先ず位置F6-(図16参照)へ移動させる(ステップS101)。これによりロック部73が第1姿勢に切り換わり、規制手段70Aは規制状態となる。この時点では、ロック部73を構成するスライド部材75は、コイルばね76(図11参照)のばね力によってホルダー部材74において最も-V方向に位置した状態にある。
【0070】
次にヘッドユニット50を位置F6-から位置F6へ移動させる(ステップS102)。図16はヘッドユニット50が位置F6-から位置F6に移動した状態を示しており、この状態ではコイルばね76(図11参照)のばね力に抗してスライド部材75がやや+V方向に移動させられた状態となる。即ち、被規制フレーム55にコイルばね76(図11参照)のばね力が作用し、被規制フレーム55即ちヘッドユニット50の+V方向への移動が規制された状態となる。
以上の様にプリンター1は、ヘッドユニット50の+V方向への移動を規制する規制状態と前記規制を行わない非規制状態とを切り換え可能であって、ヘッドユニット50が第2位置の一例である位置F6、即ちワイピングが行われる位置にある際に前記規制状態をとる規制手段70A、70Bを備える。これによりワイピング動作時にインク吐出面51aがワイパー44(図2参照)から受ける力によってヘッドユニット50がワイパー44から離れる方向に動いてしまうことを抑制でき、インク吐出面51aを適切にワイピングすることができる。
【0071】
尚、本実施形態の規制手段70A(及び70B)は、前記規制状態において、ヘッドユニット50の+V方向への移動を規制している一方で、ヘッドユニット50の-V方向の移動は規制していない。しかしながら、規制手段が、ヘッドユニット50の+V方向及び-V方向への移動を規制するものであっても良い。
【0072】
特に、図3図8を参照しつつ説明した移動手段60は、ラックピニオン機構を含むことから、ギアのバックラッシュによってヘッドユニット50がワイパー44から受ける力によってワイパー44から離れる方向に動いてしまう問題が生じ易くなる。しかしながら上記規制手段70A(及び70B)により、ヘッドユニット50がワイパー44から離れる方向に動いてしまうことを抑制でき、インク吐出面51aを適切にワイピングすることができる。
【0073】
尚、ワイピング動作時にヘッドユニット50がワイパー44(図2参照)から受ける力によって移動しない様に、コイルばね76(図11参照)がスライド部材75を押圧する押圧力は、ワイピング動作時に、スライド部材75のホルダー部材74に対する位置を維持する大きさに設定されている。但しコイルばね76の押圧力は、ヘッドユニット50の+V方向への動作に伴うスライド部材75の+V方向への変位は許容する大きさである。
【0074】
そして上述の様にモーター59の力でヘッドユニット50を+V方向に駆動すれば、コイルばね76のばね力に対抗してヘッドユニット50をある程度動かすことができる。この様な構成により、ワイパー44とインク吐出面51aとの相対位置を微調整でき、インク吐出面51aを適切にワイピングできる。
【0075】
図19に戻り、ワイピング動作(ステップS103)が終了した場合(ステップS104においてYes)、ワイパーユニット43を停止させる(ステップS105)。この状態では、ワイパー44がまだインク吐出面51aに押し当たって変形した状態にある。
ここで、この状態のまま、ワイパーユニット43の移動によりワイパー44がインク吐出面51aから外れると、ワイパー44が弾性で元の形状に戻る際に、付着しているインクが飛散してしまう虞がある。そこで制御部58は、ワイパー44によるインク吐出面51aのワイピングが終了してワイパー44がインク吐出面から外れる前に、ヘッドユニット50を+V方向に移動させる。より詳しくは、ヘッドユニット50を位置F6から位置F6+(図16参照)へ移動させる(ステップS106)。この位置F6+は、インク吐出面51aがワイパー44から離間する位置である。この様な制御により、上述したインクの飛散の問題を抑制できる。
【0076】
インク吐出面51aがワイパー44から離間したら、ワイパーユニット43をホームポジションに戻し(ステップS107)、ヘッドユニット50を位置F6+から位置F1へ移動させる(ステップS108)。
【0077】
以下では、本実施形態のその他の特徴について説明する。
規制手段70A(及び70B)は、ヘッドユニット50の移動動作に伴ってヘッドユニット50によって状態が切り換えられる構成を有することから、規制状態と非規制状態との切り換えを行う為の動力源が不要となり、装置のコストアップ及び大型化を抑制できる。
また規制手段70A(及び70B)は、カム80の回転により、ロック部73の姿勢を切り換えることができ、ヘッドユニット50の移動動作によって状態を切り換える構成を、少ない部品点数で大型化を抑制しつつ構成できる。
【0078】
尚、規制手段の規制状態と非規制状態との切り換えは、専用の駆動源を用いて行っても良い。一例としてソレノイドを用い、進退動作するプランジャーによってヘッドユニット50の+V方向への移動を規制する様に構成することもできる。
尚、規制手段70A(及び70B)は、カム80の代わりに、ロック部73の姿勢を切り換える他の部材を備えていても良い。
【0079】
また図13においてヘッドユニット50は、+V方向への移動が規制される位置F6より更に+V方向の位置である位置F3に移動可能であり、規制手段70A(及び70B)は、ヘッドユニット50が位置F1から位置F3に移動する場合、及び位置F3から位置F1に移動する場合に、非規制状態を維持する。これにより、媒体への記録動作時にフラッシング動作の為に定期的に位置F1と位置F3との間を移動する場合に、当該移動を規制手段70A(及び70B)が阻害せず、円滑に移動することができる。図13において符号L1で示すルートは、フラッシング動作を終了して位置F1へ戻る際のルートを概念的に示したものである。尚、位置F3はフラッシング動作を行う位置に限らず、他の処理を行う位置であっても良い。
【0080】
また図17に示す様にカム80の第2部位80bは、カム80が第2回転位相にある状態で位置F1から+V方向に向かって移動するピン部材56と当接可能なカム面80cを有している。そしてピン部材56がカム面80cに当接した状態で+V方向に移動することで、図17から図18への変化で示す様にカム80が第1回転位相に向けて回転し、最終的に図14の状態に戻ることができる。
【0081】
即ち規制手段70A(及び70B)は、ヘッドユニット50が位置F3より更に+V方向に移動し、そして-V方向に移動することで非規制状態から規制状態に切り換わる構成である。ところが、ヘッドユニット50が位置F1から位置F3へ移動しようとする際に、規制手段70A(及び70B)が振動や衝撃等の何らかのイレギュラーな事象により既に規制状態に切り換わってしまっていると、ヘッドユニット50が位置F3即ちフラッシング位置へ移動することができない。
しかしながら上述の様に、ピン部材56がカム面80cに当接した状態で+V方向に移動することで、規制手段70A(及び70B)を非規制状態に戻すことができ、ヘッドユニット50を位置F3即ちフラッシング位置に移動させることができる。
尚、ピン部材56がカム面80cに当接してカム80が第1回転位相に切り換わった際のヘッドユニット50の位置が、図13の位置F2である。
【0082】
本実施形態では、ヘッドユニット50は、図13における位置F5に移動した際に、装置本体2に対し着脱可能となる。つまり、ヘッドユニット50は、V軸方向に沿って、記録位置、ワイピング位置、フラッシング位置及び着脱位置に移動可能である。
尚、ヘッドユニット50が移動可能な位置の順番を変えても良い。例えば、ワイピング位置が、記録位置よりも-V方向に位置させても良い。搬送ベルト13が記録時搬送経路T1から離間した後、ヘッドユニット50が記録位置から-V方向に移動し、ワイピングを行う構成であっても良い。また、ワイピング位置をフラッシング位置または着脱位置よりも+V方向に位置させても良い。尚、ヘッドユニット50は、上記の4つの位置以外の位置に移動しても良い。
【0083】
本発明は上記において説明した各実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1…インクジェットプリンター、2…装置本体、3…第1媒体カセット、4…第2媒体カセット、5…第3媒体カセット、6…増設ユニット、7…操作パネル、8…排出トレイ、8a…突出部、8b…支持面、9…スキャナーユニット、10A、10B、10C、10D…インク収容部、11A、11B、11C、11D…装着部、12…廃液収容部、13…搬送ベルト、14、15…プーリー、18…外部搬送ローラー対、19…供給ローラー、20…分離ローラー、21、22、23…ピックローラー、25、26、27…給送ローラー対、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38…搬送ローラー対、41…フラップ、43…ワイパーユニット、44…ワイパー、50…ヘッドユニット、51…ラインヘッド、51a…インク吐出面、52…上部ローラー、53…下部ローラー、54…下部ローラー支持部材、55…被規制フレーム、55a…被規制面、56…ピン部材、58…制御部、59…モーター、60…移動手段、61…第1部材、61a…第1ラック、61b…第1ガイド溝、61c…第2ガイド溝、61d…第3ガイド溝、61e…第4ガイド溝、62…第2ラック形成部材、62a…第2ラック、63…第2部材、64…第3ラック形成部材、64a…第3ラック、65…第1ピニオン歯車、67…第2ピニオン歯車、68…回転軸、69…ガイドローラー、70A、70B…規制手段、71…回転軸、73…ロック部、74…ホルダー部材、74a…ガイド面、75…スライド部材、76…コイルばね、80…カム、80a…支持部、80b…第2部位、80c…カム面、80d…第2部位当接面、80f…第1部位、80g…第1部位当接面、81…カム回転軸、T1…記録時搬送経路、T2…スイッチバック経路、T3…反転経路
図1
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