(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】リアクトル構造体、コンバータ、及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20241210BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01F37/00 Z
H01F37/00 F
H01F37/00 T
H01F37/00 J
H01F37/00 G
H01F37/00 M
H02M3/155 Y
(21)【出願番号】P 2021044122
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】古川 尚稔
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩平
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-033135(JP,A)
【文献】実開昭55-149996(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル及びコアを有するリアクトルと、
前記コイルと外部機器とを電気的に接続するバスバと、を備えるリアクトル構造体であって、
前記リアクトルは、
前記リアクトルに対する前記バスバの位置を決めるピン
と、
前記リアクトルを設置対象に固定するネジが貫通される貫通孔とを備え、
前記バスバは、
前記コイルの巻線端部に重ねられた状態で接続される第一片と、
前記外部機器と接続される第二片と、
前記第一片と前記第二片とをつなぐ本体片とを備え、
前記本体片は、X方向に延びる長孔状のスライド孔を備え、
前記X方向は、前記巻線端部と前記第一片とが並列される方向であり、
前記ピンは、前記スライド孔に貫通され、前記X方向と前記ピンの突出方向とに交差する方向における前記バスバの動きを規制
し、
前記貫通孔の軸線は、Y方向又はZ方向に一致し、
前記Y方向は、前記X方向に交差し、かつ前記巻線端部の延伸方向に沿った方向であり、
前記Z方向は、前記X方向及び前記Y方向に交差する方向である、
リアクトル構造体。
【請求項2】
前記スライド孔は、前記X方向につながる大孔部と小孔部とを備え、
前記大孔部は、前記X方向における前記小孔部よりも前記第一片の側に配置され、
前記巻線端部と前記第一片とが接続された状態で、前記ピンが前記小孔部に配置されている請求項1に記載のリアクトル構造体。
【請求項3】
前記ピンは、
軸部と、
前記軸部の先端に設けられるヘッドと、を備え、
前記軸部は、前記小孔部を貫通し、
前記ヘッドは、前記小孔部の外側に配置され、
前記軸部の軸方向から見た前記ヘッドの外寸は、前記小孔部の幅よりも大きい請求項2に記載のリアクトル構造体。
【請求項4】
前記ヘッドは、前記X方向における前記第一片の側が欠けた形状を有し、
前記大孔部は、前記ヘッドの形状に沿った形状を有する請求項3に記載のリアクトル構造体。
【請求項5】
前記貫通孔の軸線は、前記Z方向に一致し、
前記ピンは、前記Y方向に突出する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル構造体。
【請求項6】
前記貫通孔の軸線は、前記Z方向に一致し、
前記バスバは、X-Y平面に平行な第一平面を有し、
前記リアクトルは、前記Z方向に突出する台座部を備え、
前記台座部は、前記第一平面を前記X-Y平面に平行に支持する支持部を備える
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル構造体。
【請求項7】
前記リアクトルは、前記コイルと前記コアとの相対的な位置を決める絶縁部材を備え、
前記ピンは、前記絶縁部材に一体に設けられる請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載のリアクトル構造体。
【請求項8】
前記絶縁部材は、前記コイルと前記コアとを一体化する樹脂モールド部である
請求項7に記載のリアクトル構造体。
【請求項9】
前記リアクトルは、前記コアと前記コイルの組物を収納するケースを備え、
前記ケースは、絶縁材料によって構成される樹脂部を備え、
前記ピンは、前記樹脂部に一体に設けられる請求項1から
請求項8のいずれか1項に記載のリアクトル構造体。
【請求項10】
請求項1から
請求項9のいずれか1項に記載のリアクトル構造体を備える、
コンバータ。
【請求項11】
請求項10に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル構造体、コンバータ、及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車などに備わるコンバータの構成部品として、リアクトル構造体が挙げられる。例えば特許文献1に開示されるリアクトル構造体は、リアクトルと端子部材とを備える。リアクトルは、コイル及びコアを備える。コイルは、巻線が螺旋状に巻回されることで形成される。特許文献1に記載されるリアクトルは更に、枠状ボビンと内側ボビンとケースとを備える。枠状ボビンと内側ボビンは、コイルとコアとの絶縁を確保する絶縁部材である。ケースは、コイルとコアと絶縁部材の組物を収納する。
【0003】
リアクトル構造体に備わる端子部材はバスバとも呼ばれる。バスバは、コイルと外部機器とを電気的に接続する。バスバの端部は、コイルの端部に溶接などで接続される。特許文献1に記載されるバスバの中間部は、リアクトルを構成するケースにネジ止めされている。バスバがケースにネジ止めされることで、リアクトルに対するバスバの位置が決まるので、バスバの端部とコイルの端部との接続が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のリアクトル構造体では、バスバをネジ止めする手間がかかる。また、リアクトル構造体を構成する部品点数が増加する。従って、特許文献1のリアクトル構造体の生産性が芳しくない。
【0006】
そこで、本開示は、生産性に優れるリアクトル構造体を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、生産性に優れるコンバータ、及び電力変換装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のリアクトル構造体は、
コイル及びコアを有するリアクトルと、
前記コイルと外部機器とを電気的に接続するバスバと、を備えるリアクトル構造体であって、
前記リアクトルは、
前記リアクトルに対する前記バスバの位置を決めるピンを備え、
前記バスバは、
前記コイルの巻線端部に重ねられた状態で接続される第一片と、
前記外部機器と接続される第二片と、
前記第一片と前記第二片とをつなぐ本体片とを備え、
前記本体片は、X方向に延びる長孔状のスライド孔を備え、
前記X方向は、前記巻線端部と前記第一片とが並列される方向であり、
前記ピンは、前記スライド孔に貫通され、前記X方向と前記ピンの突出方向とに交差する方向における前記バスバの動きを規制する。
【0008】
本開示のコンバーターは、
本開示のリアクトル構造体を備える。
【0009】
本開示の電力変換装置は、
本開示のコンバーターを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示のリアクトル構造体、本開示のコンバーター、及び本開示の電力変換装置は、生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るリアクトル構造体の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るリアクトル構造体に備わる組物の概略斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係るリアクトル構造体に備わるバスバの概略斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係るリアクトル構造体に備わるバスバの概略上面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係るリアクトル構造体に備わる台座部の概略斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係るリアクトル構造体の製造手順を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係るリアクトル構造体の製造時におけるピンとバスバの位置関係を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係るリアクトル構造体に備わるバスバの概略斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態3に係るリアクトル構造体に備わるリアクトルの概略正面図である。
【
図10】
図10は、実施形態4に係るハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
【
図11】
図11は、実施形態4に係るコンバータを備える電力変換装置の一例の概略を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0013】
<1>実施形態に係るリアクトル構造体は、
コイル及びコアを有するリアクトルと、
前記コイルと外部機器とを電気的に接続するバスバと、を備えるリアクトル構造体であって、
前記リアクトルは、
前記リアクトルに対する前記バスバの位置を決めるピンを備え、
前記バスバは、
前記コイルの巻線端部に重ねられた状態で接続される第一片と、
前記外部機器と接続される第二片と、
前記第一片と前記第二片とをつなぐ本体片とを備え、
前記本体片は、X方向に延びる長孔状のスライド孔を備え、
前記X方向は、前記巻線端部と前記第一片とが並列される方向であり、
前記ピンは、前記スライド孔に貫通され、前記X方向と前記ピンの突出方向とに交差する方向における前記バスバの動きを規制する。
【0014】
上記リアクトル構造体は生産性に優れる。
上記リアクトル構造体の作製時、バスバのスライド孔をピンに嵌め込み、バスバをX方向にスライドさせるだけで、バスバの第一片が巻線端部に当接される。スライド後のバスバの動きはピンに規制されるので、リアクトルに対してバスバが保持される。そのため、本例のリアクトル構造体では、バスバをリアクトルに固定するネジが無くても、バスバの第一片と巻線端部とを容易に接続させることができる。このように、上記リアクトル構造体は、バスバを固定するネジを必要とせず、ネジを取り付ける作業も必要としない。従って、上記リアクトル構造体は生産性に優れる。
【0015】
<2>実施形態に係るリアクトル構造体の一形態として、
前記スライド孔は、前記X方向につながる大孔部と小孔部とを備え、
前記大孔部は、前記X方向における前記小孔部よりも前記第一片の側に配置され、
前記巻線端部と前記第一片とが接続された状態で、前記ピンが前記小孔部に配置されている形態が挙げられる。
【0016】
スライド孔が大孔部を備えることで、バスバのスライド孔をピンに嵌め込み易い。バスバがX方向にスライドされると、ピンが小孔部に配置される。小孔部は、小孔部の幅方向にバスバの動きを規制する。小孔部の幅方向は、X方向とピンの突出方向とに交差する方向である。小孔部の幅方向にバスバの動きが規制されることで、リアクトルの駆動時にリアクトルが振動したとき、リアクトルに対するバスバの振動が抑制される。その結果、バスバの振動に起因する応力が第一片と巻線端部との接続箇所に作用し難くなる。
【0017】
<3>上記形態<2>に係るリアクトル構造体の一形態として、
前記ピンは、
軸部と、
前記軸部の先端に設けられるヘッドと、を備え、
前記軸部は、前記小孔部を貫通し、
前記ヘッドは、前記小孔部の外側に配置され、
前記軸部の軸方向から見た前記ヘッドの外寸は、前記小孔部の幅よりも大きい形態が挙げられる。
【0018】
小孔部の幅は、上述したように、X方向と、ピンの突出方向とに交差する方向である。ピンのヘッドの外寸が小孔部の幅よりも大きければ、ピンの突出方向にバスバが振動したとき、ピンのヘッドにバスバが引っかかる。つまり、上記形態<3>の構成では、ピンの軸部によって小孔部の幅方向におけるバスバの動きが規制されると共に、ピンのヘッドによってピンの突出方向におけるバスバの動きが規制される。従って、上記形態<3>の構成では、上記形態<2>の構成よりも、バスバの振動に起因する応力が第一片と巻線端部との接続箇所に作用し難くなる。
【0019】
<4>上記形態<3>に係るリアクトル構造体として、
前記ヘッドは、前記X方向における前記第一片の側が欠けた形状を有し、
前記大孔部は、前記ヘッドの形状に沿った形状を有する形態が挙げられる。
【0020】
ヘッドの一部が欠けていることで、ヘッドが小型化される。大孔部の内周面形状は、ピンの軸方向から見たヘッドの輪郭形状に沿った形状となっている。従って、ヘッドが小型化されると、大孔部の占有面積も小さくなる。その結果、大孔部によるバスバの強度の低下が抑制される。
【0021】
<5>実施形態に係るリアクトル構造体の一形態として、
前記リアクトルは、前記リアクトルを設置対象に固定するネジが貫通される貫通孔を備え、
前記貫通孔の軸線は、Y方向又はZ方向に一致し、
前記Y方向は、前記X方向に交差し、かつ前記巻線端部の延伸方向に沿った方向であり、
前記Z方向は、前記X方向及び前記Y方向に交差する方向である形態が挙げられる。
【0022】
一般的に、設置対象に固定されるリアクトルは、その使用時に貫通孔の軸線に沿った方向に振動し易い。バスバは、その取付け時にX方向にスライド可能に構成されているので、貫通孔の軸線がX方向に一致していると、バスバの第一片と巻線端部との接続箇所に強い応力が作用し易い。これに対して、上記形態<5>の構成では、貫通孔の軸線がX方向に交差するように配置されているので、上記接続箇所に強い応力が作用し難い。
【0023】
<6>上記形態<5>のリアクトル構造体として、
前記貫通孔の軸線は、前記Z方向に一致し、
前記ピンは、前記Y方向に突出する形態が挙げられる。
【0024】
上記形態<6>の構成では、ネジ軸の軸線に一致するZ方向にリアクトルが振動し易い。この構成において、Z方向に交差するY方向にピンが突出していれば、Z方向におけるバスバの動きは、スライド孔の内周縁がピンの軸部に当て止めされることによって規制される。従って、上記形態<6>の構成では、Z方向におけるバスバの振動が効果的に抑制される。
【0025】
<7>上記形態<5>又は形態<6>のリアクトル構造体として、
前記貫通孔の軸線は、前記Z方向に一致し、
前記バスバは、X-Y平面に平行な第一平面を有し、
前記リアクトルは、前記Z方向に突出する台座部を備え、
前記台座部は、前記第一平面を前記X-Y平面に平行に支持する支持部を備える形態が挙げられる。
【0026】
リアクトルにバスバが取り付けられる際、リアクトルは水平な作業台上に置かれ、そのリアクトルに対してバスバが取り付けられる。貫通孔の軸線がZ方向に一致する構成では、X-Y平面が作業台に平行となるようにリアクトルが作業台上に置かれる。このリアクトルがX-Y平面に平行にバスバを支持する支持部を備えていれば、バスバは、スライドされる際、その軸線回りに回転し難い。そのため、バスバがスライドされ、バスバの第一片が巻線端部に当接される際、第一片が巻線端部からずれ難い。
【0027】
上記形態<7>の構成では、X-Y平面に平行な支持部上にバスバが安定して保持されているため、リアクトルがZ方向に振動したとき、バスバがリアクトルと一体となってZ方向に動き易い。従って、リアクトルの動きとバスバの動きとがずれ難く、リアクトルに対するバスバの振動が抑制され易い。
【0028】
<8>実施形態に係るリアクトル構造体の一形態として、
前記リアクトルは、前記コイルと前記コアとの相対的な位置を決める絶縁部材を備え、
前記ピンは、前記絶縁部材に一体に設けられる形態が挙げられる。
【0029】
バスバは導電部材であるため、バスバとコイルとの間の絶縁、及びバスバとコアとの間の絶縁を確保する必要がある。上記形態<8>では、ピンが絶縁部材の一部によって構成されるため、上記絶縁が確保される。ここで、コイルとコアとの相対的な位置を決める絶縁部材として、例えばコイルの端部とコアとの間に配置される保持部材が挙げられる。また、上記絶縁部材として、コイルとコアとを一体化する樹脂モールド部が挙げられる。
【0030】
<9>上記形態<8>のリアクトル構造体として、
前記絶縁部材は、前記コイルと前記コアとを一体化する樹脂モールド部である形態が挙げられる。
【0031】
樹脂モールド部によってコイルとコアとが分解し難くなる。従って、コイルとコアとの組物が扱い易くなる。
【0032】
<10>実施形態に係るリアクトル構造体の一形態として、
前記リアクトルは、前記コアと前記コイルの組物を収納するケースを備え、
前記ケースは、絶縁材料によって構成される樹脂部を備え、
前記ピンは、前記樹脂部に一体に設けられる形態が挙げられる。
【0033】
ピンがケースの樹脂部の一部によって構成されていることで、バスバとコアとの間の絶縁が確保される。ケース全体が絶縁材料によって構成されていても良いし、ケースの一部が絶縁材料によって構成されていても良い。
【0034】
<11>実施形態に係るコンバータは、
上記形態<1>から形態<10>のいずれかのリアクトル構造体を備える。
【0035】
上記コンバーターは、生産性に優れる実施形態のリアクトル構造体を備える。従って、上記コンバーターは、生産性に優れる。
【0036】
<12>実施形態に係る電力変換装置は、
上記<11>のコンバータを備える。
【0037】
上記電力変換装置は、生産性に優れる実施形態のコンバーターを備える。従って、上記電力変換装置は、生産性に優れる。
【0038】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示のリアクトル構造体、コンバータ、及び電力変換装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明は実施形態に示される構成に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0039】
<実施形態1>
実施形態1では、
図1から
図7に基づいてリアクトル構造体αの構成を説明する。
図1に示されるリアクトル構造体αは、コイル2及びコア3(
図2)を有するリアクトル1と、コイル2を外部機器に電気的に接続するバスバ4とを備える。このリアクトル構造体αの特徴の一つとして、バスバ4の構成が挙げられる。以下、リアクトル構造体αに備わる各構成を詳細に説明する。
【0040】
≪リアクトル≫
本例のリアクトル1は、組物10(
図2)と絶縁部材9とを備える。組物10は、
図2に示されるように、コイル2とコア3との組み合わせたものである。絶縁部材9は、コイル2とコア3との相対的な位置を決めるものである。
【0041】
[コイル]
本例のコイル2は、巻線を巻回してなる巻回部20を備える。巻線には公知の巻線が利用可能である。本例の巻線は、被覆平角線である。被覆平角線の導体線は、銅製の平角線で構成されている。被覆平角線の絶縁被覆は、エナメルからなる。巻回部20は、被覆平角線をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルで構成されている。本例に用いるコイル2では、一つの巻回部20を備える。本例とは異なり、コイル2は、複数の巻回部20を備えていても良い。例えば、互いに並列される二つの巻回部20を備えるコイル2が挙げられる。
【0042】
巻回部20の形状は、矩形筒状である。矩形には、正方形が含まれる。即ち、巻回部20の端面形状は、矩形枠状である。巻回部20の形状が矩形筒状であることで、巻回部が同じ断面積の円筒状である場合に比較して、巻回部20と設置対象との接触面積が大きくなり易い。その結果、巻回部20を介してリアクトル構造体αの熱が設置対象に放熱され易い。更に、設置対象に対する巻回部20の安定性が向上する。巻回部20の角部は丸められていることが好ましい。
【0043】
コイル2の巻線端部21,22はそれぞれ、巻回部20の外周側へ引き伸ばされている。巻線端部21及び巻線端部22では絶縁被覆が剥がされて導体線が露出している。露出した導体線には、バスバ4が接続される。本例の図では、巻線端部21に取り付けられるバスバ4のみ図示する。巻線端部22に取り付けられるバスバの構成は、図示されるバスバ4と同じであっても良いし、異なっていても良い。コイル2にはバスバ4を介して外部装置が接続される。外部装置の図示は省略する。外部装置としては、コイル2に電力供給を行なう電源などが挙げられる。
【0044】
ここで、コイル2及びバスバ4を基準にしてリアクトル構造体αにおける方向を規定する。まず、コイル2の巻線端部21と、バスバ4の第一片41とが並列される方向をX方向とする。第一片41は、バスバ4のうち、巻線端部21に重ねられた状態で接続される部分である。第一片41の詳細な構成については後述する。このX方向に交差し、巻線端部21の延伸方向に沿った方向をY方向とする。本例では、Y方向はX方向に直交している。そして、X方向とY方向の両方に交差する方向をZ方向とする。本例では、Z方向は、X方向とY方向とに直交している。更に、以下に示す方向を規定する。
・X1方向…X方向のうち、バスバ4から見て巻線端部21に向う方向
・X2方向…X1方向の反対方向
・Y1方向…Y方向のうち、巻線端部21の先端に向う方向
・Y2方向…Y1方向の反対方向
・Z1方向…Z方向のうち、リアクトル1の設置対象から離れる方向(紙面上方向)
・Z2方向…Z1方向の反対方向
【0045】
[コア]
コア3は、その内部に閉磁路が形成される磁性体である。コア3は、圧粉成形体及び複合材料の成形体などで構成される。圧粉成形体は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形したものである。軟磁性粉末としては、純鉄及び鉄合金などが挙げられる。複合材料の成形体は、軟磁性粉末と未固化の樹脂との混合物を金型に充填し、樹脂を固化させたものである。複合材料の成形体では、軟磁性粉末が樹脂中に分散されている。
【0046】
コア3は、内側コア部31と外側コア部32とを備える。内側コア部31は、コイル2の巻回部20の内部に配置され、巻回部20の軸方向に沿った部分である。本例では、コア3のうち、巻回部20の軸方向に沿った部分の両端部が巻回部20の端面から突出している。その突出する部分も内側コア部31の一部である。
【0047】
内側コア部31の形状は、巻回部20の内部形状に沿った形状であれば特に限定されない。本例の内側コア部31は、略直方体状である。内側コア部31は、複数の分割コアとギャップ板とを連結した構成としても良いし、一つの部材としても良い。
【0048】
外側コア部32は、コア3のうち、巻回部20の外部に配置される部分である。外側コア部32の形状は、内側コア部31の端部を繋ぐ形状であれば特に限定されない。本例の外側コア部32は、巻回部20におけるY1方向の端面に臨むエンドコア片と、巻回部20におけるY2方向の端面に臨むエンドコア片と、巻回部20におけるX1方向の側面に臨むサイドコア片と、巻回部20におけるX2方向の側面に臨むサイドコア片とを備える。従って、本例の外側コア部32は、Z方向から見たときに矩形環状である。
【0049】
本例のコア3は、二つの分割コア3A,3Bによって構成される。分割コア3Aは、Z方向から見て略T字形状である。分割コア3Bは、Z方向から見て略E字形状である。分割コア3A,3Bの形状は特に限定されない。例えば、内側コア部31となる略I字型の分割コアと、外側コア部32となる略O字型の分割コアとの組み合わせが挙げられる。コア3は、三つ以上の分割コアから構成されていても良い。例えば、内側コア部31となる略I字型の分割コアと、外側コア部32となる二つの略U字型の分割コアとの組み合わせが挙げられる。
【0050】
[絶縁部材]
本例の絶縁部材9は、コイル2とコア3とを一体化する樹脂モールド部6である。樹脂モールド部6は、コイル2及びコア3を外部環境から保護する機能も有する。本例の樹脂モールド部6は、巻回部20におけるZ方向の外面を覆っていない。つまり、巻回部20のZ方向の外面が樹脂モールド部6から露出している。その結果、コイル2で発生した熱が外部に放出され易くなる。
【0051】
樹脂モールド部6は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂によって構成される。その他、樹脂モールド部6は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂などで構成されていても良い。これらの樹脂にセラミックスフィラーが含有されることで、樹脂モールド部6の放熱性が向上される。セラミックスフィラーとしては、例えば、アルミナやシリカなどの非磁性粉末などが挙げられる。
【0052】
樹脂モールド部6は、端子台61を備える。端子台61は、図示しない外部機器の接続端子を支持するための台座である。接続端子がバスバ4のZ1方向に臨む面に重ねられ、ネジ止めされる。端子台61には、接続端子を固定するネジが取り付けられるネジ孔61hが設けられている。本例のネジ孔61hは、Z方向に延びている。本例では端子台61にナットが埋設されている。このナットの内周面がネジ孔61hを構成している。このネジ孔61hの軸線は、後述するバスバ4の端子孔42hの軸線に一致している。従って、接続端子がネジ止めされることで、接続端子が端子台61に固定されると共に、接続端子がバスバ4に電気的に接続される。ここで、ナットは必須では無い。また、ネジ孔61hの軸線はZ方向に交差する方向に延びていても良い。
【0053】
樹脂モールド部6は、組物10の全体を覆っていなくても良い。例えば、樹脂モールド部6は、組物10の下方側の部分のみを覆う構成であっても良い。樹脂モールド部6の下面は、リアクトル1を図示しない設置対象に面接触することが好ましい。樹脂モールド部6は、図示しない取付部を備えることが好ましい。取付部には、リアクトル1を設置対象に固定するネジが貫通される貫通孔が設けられていることが好ましい。この場合、貫通孔の軸線はZ方向に一致していることが好ましい。
【0054】
樹脂モールド部6は、
図5に示されるように、ピン5を有する台座部60を備える。台座部60は、Z1方向を向く第一面6aと、Y1方向を向く第二面6bとの角部に設けられている。つまり、台座部60は、第一面6aから第二面6bにわたって設けられている。台座部60のうち、第一面6aからZ1方向に突出する部分には支持部8が設けられている。台座部60のうち、第二面6bからY1方向に突出する部分にはピン5が設けられている。これら台座部60とピン5は、樹脂モールド部6に一体に設けられている。
【0055】
支持部8は、後述するバスバ4をX-Y平面に平行に支持する平面8pを有する。平面8pは、X-Y平面に平行になっている。支持部8の数は一つでも良いし、複数でも良い。本例の支持部8の数は二つである。支持部8が複数であれば、支持部8によってバスバ4が安定して支持され易い。
【0056】
ピン5は、リアクトル1に対するバスバ4の位置を決める部材である。ピン5によってバスバ4の位置が決まるメカニズムは、バスバ4を説明する際に説明する。
【0057】
本例のピン5は、軸部50とヘッド51とを備える。軸部50は、柱状体である。本例の軸部50は円柱である。ヘッド51は、軸部50の先端に設けられる。軸部50の軸方向から見たヘッド51の外寸は、軸部50よりも大きい。ヘッド51の外寸は、後述するバスバ4の小孔部h2(
図4,7参照)の幅よりも大きく、大孔部h1(
図4,7参照)の寸法よりも若干小さい。ヘッド51は、Y方向から見て、円のX1方向の部分が欠けた形状を備える(特に
図7参照)。
【0058】
[その他]
リアクトル1は、
図2に示されるコイル2とコア3とを保持する保持部材(図示せず)を備えていても良い。保持部材は、巻回部20の端面と外側コア部32との間に介在され、コイル2とコア3との間の絶縁を確保する機能を有する。保持部材は、樹脂モールド部6の製造に利用可能な絶縁材料によって形成される。つまり、保持部材は、コイル2とコア3との相対的な位置を決める絶縁部材9である。リアクトル1が保持部材を備える場合、樹脂モールド部6は無くても構わない。その場合、ピン5は保持部材に設けられることが好ましい。
【0059】
≪バスバ≫
バスバ4は、
図1に示されるように、コイル2と外部機器(図示せず)とを電気的に接続する部材である。従って、バスバ4は、導電性に優れる金属によって構成される。そのような金属として、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金などが挙げられる。バスバ4は、
図3,4に示されるように、第一片41と第二片42と本体片40とを備える。
【0060】
第一片41は、コイル2の巻線端部21に重ねられた状態で接続される部分である。本例の第一片41は矩形板状である。矩形板状の第一片41の厚み方向はX方向に一致している。また、平角線からなる巻線端部21の厚み方向もX方向に一致している。従って、第一片41のX1方向に臨む面と、巻線端部21のX2方向に臨む面とが面接触する。第一片41と巻線端部21とは、溶接又は圧接などによって接続される。溶接としてはTIG溶接などが挙げられる。圧接としては摩擦撹拌接合などが挙げられる。その他、第一片41と巻線端部21を外周から締め付ける環状の留め具などで第一片41と巻線端部21とが接続されていても良い。
【0061】
第二片42は、外部機器と接続される部分である。第二片42は、第一片41からX2方向に離れた位置に配置される。
図3において、第二片42と本体片40との境界は二点鎖線で示されている。本例の第二片42は、外部機器の接続端子と接続される平板状に形成されている。第二片42の厚み方向はZ方向に一致している。第二片42には、第二片42を厚み方向に貫通する端子孔42hが設けられている。端子孔42hの軸線はZ方向に一致している。この端子孔42hは、樹脂モールド部6の端子台61のネジ孔61hに一致している。第二片42のZ1方向の臨む面に、外部機器の接続端子を重ね合わせてネジ止めすることで、第二片42と接続端子とが電気的に接続される。
【0062】
本体片40は、第一片41と第二片42とをつなぐ部分である。本例の本体片40はX方向に延びる板状片である。本体片40のX方向の中間部は屈曲している。この屈曲部は、第二片42を端子台61の高さに一致させるためのものである。本体片40における中間部よりもX2方向側の部分には張出部40Pが設けられている。本体片40における張出部40P以外の部分の厚み方向はZ方向に一致している。従って、本体片40と第一片41とはほぼ直角につながっている。
【0063】
図4に示されるように、本体片40におけるZ2方向に臨む面のうち、張出部40Pにつながる部分は、平坦な第一平面4pを構成する。第一平面4pは、樹脂モールド部6(
図5)における支持部8の平面8pに対応する位置にある。第一平面4pは平面8pに支持される。平面8pはX-Y平面に平行となっているため、平面8pに支持される第一平面4pもX-Y平面に平行になる。従って、バスバ4が支持部8上に安定して保持される。バスバ4と樹脂モールド部6とが平面接触する本例の構成では、リアクトル1がZ方向に振動したとき、バスバ4がリアクトル1と一体となってZ方向に動き易い。従って、リアクトル1の動きとバスバ4の動きとがずれ難く、リアクトル1に対するバスバ4の振動が抑制され易い。
【0064】
本体片40に備わる張出部40Pは、本体片40における第二片42寄りの位置に設けられている。張出部40Pは平板状である。張出部40Pの厚み方向は、Y方向に一致している。本体片40が張出部40Pを備えることで、樹脂モールド部6における第一面6aと第二面6bとの間の角部に本体片40がひっかかり、バスバ4がX軸まわりに回転し難くなる。
【0065】
本体片40の張出部40Pにはスライド孔4hが設けられている。スライド孔4hは、バスバ4をリアクトル1に取り付ける際に利用される。バスバ4の具体的な取付け手順は、
図6,7を参照する「バスバの取付け手順」の項目において説明する。
【0066】
スライド孔4hは、X方向に延びる長孔である。スライド孔4hの軸方向はY方向に一致する。本例のスライド孔4hは、大孔部h1と小孔部h2とを備える。大孔部h1と小孔部h2とはX方向につながっている。大孔部h1は、小孔部h2よりもX1方向側に配置されている。即ち、大孔部h1は、小孔部h2よりも第一片41の側に配置されている。
【0067】
大孔部h1は、バスバ4をリアクトル1に取り付ける際に利用される(
図7の上段図参照)。大孔部h1は、Y方向から見たピン5のヘッド51の形状に沿った形状を有する。より具体的には、大孔部h1におけるX1方向側の部分は、Z方向に沿って真っ直ぐになっている。大孔部h1の内寸は、ヘッド51の外寸よりも若干大きくなっている。従って、ヘッド51は大孔部h1に貫通させられる。
【0068】
小孔部h2は、リアクトル1における所定位置にバスバ4を配置するために利用される(
図7の下段図参照)。小孔部h2は、Y方向から見たピン5の軸部50の形状に沿った形状を有する。リアクトル構造体α(
図1)において、軸部50は小孔部h2に配置される。小孔部h2の幅、即ち小孔部h2のZ方向の長さは、軸部50よりも若干大きい。そのため、Z方向にバスバ4が振動したとき、小孔部h2の内周面が軸部50に引っかかる。軸部50によってバスバ4のZ方向の動きが規制されるので、リアクトル1に対するバスバ4のZ方向の振動が抑制される。従って、バスバ4の振動に起因する応力が第一片41と巻線端部21との接続箇所に作用し難くなる。
【0069】
小孔部h2の幅、即ちZ方向における小孔部h2の長さは、ヘッド51の外寸よりも小さい。そのため、Y方向にバスバ4が振動したとき、張出部40PのY1方向に向く平面はヘッド51に引っかかる。ヘッド51によってバスバ4のY方向の動きが規制されるため、リアクトル1に対するバスバ4のY方向の振動が抑制される。従って、バスバ4の振動に起因する応力が第一片41と巻線端部21との接続箇所に作用し難くなる。
【0070】
[バスバの取付け手順]
バスバ4の取付け手順を
図6,7に基づいて説明する。まず、
図6に示されるように、リアクトル1のピン5にバスバ4が取り付けられる。このとき、
図7の上段図に示されるように、ピン5のヘッド51がスライド孔4hの大孔部h1に貫通される。この時点では、
図6に示されるように、バスバ4の第一片41は、巻線端部21から離れた位置にある。また、バスバ4の端子孔42hも、端子台61のネジ孔61hからずれた位置にある。
【0071】
次に、バスバ4がX1方向にスライドされる。その結果、
図7の下段図に示されるように、ピン5の軸部50が小孔部h2に配置される。その際、バスバ4の第一平面4pが支持部8の平面8pにガイドされる。そのため、バスバ4がX軸回りに回転することなく、安定してスライドされる。スライドされたバスバ4の端子孔42hは、端子台61のネジ孔61hに一致する。また、
図1に示されるように、第一片41が巻線端部21に当接される。スライド孔4hが軸部50にガイドされることで、巻線端部21の所定箇所に第一片41が精度良く配置される。このように、本例の構成では、ピン5に嵌め込まれるバスバ4をX方向にスライドさせるだけで、バスバ4の第一片41が巻線端部21に当接される。
【0072】
最後に、第一片41と巻線端部21とが溶接などで接合される。このとき、バスバ4の動きはピン5に規制されるので、バスバ4の第一片41と巻線端部21とを容易に接合させられる。
【0073】
≪リアクトル構造体の設置手順≫
図1のリアクトル構造体αは、例えば設置対象にネジ止めされる。設置対象としては、例えばコンバータを収納するコンバータケースなどが挙げられる。設置対象にネジ止めされたリアクトル構造体αに対して、外部機器の接続端子が取り付けられる。ここで、端子台61に接続端子をネジ止めする際、ネジ軸回りにバスバ4を回転させるトルクが発生する。本例の構成では、Y1方向のバスバ4の動きがピン5のヘッド51によって規制されている。そのため、第一片41と巻線端部21の接続箇所に過大なトルクが作用することが抑制される。
【0074】
≪効果≫
本例のリアクトル構造体αでは、バスバ4をリアクトル1に固定するネジが必要ない。このように、リアクトル構造体αは、バスバ4を固定するネジを必要とせず、ネジを取り付ける作業も必要としない。従って、本例のリアクトル構造体αは生産性に優れる。
【0075】
本例のリアクトル構造体αでは、ヘッド51を有するピン5によってバスバ4のY方向の振動とZ方向の振動が抑制されている。そのため、バスバ4の振動に起因する応力が第一片41と巻線端部21との接続箇所に作用し難い。従って、従来技術のようにバスバ4の中間部がネジ止めされていなくても、接続箇所の信頼性が確保される。
【0076】
<変形例1>
スライド孔4hは、一様な幅を有する長孔形状であっても良い。この場合、スライド孔4hに貫通されるピン5は軸部50のみで構成される。
【0077】
<変形例2>
ピン5は、コア3に設けられていても良い。例えば、コア3の外側コア部32にピンが設けられていても良い。その場合、ピン5とバスバ4との絶縁を確保する必要がある。例えば、ピン5の外周及びバスバ4の外周の少なくとも一方に絶縁被覆を形成することが挙げられる。コア3が複合材料の成形体で構成される場合、ピン5の形成が容易である。
【0078】
<実施形態2>
実施形態2では、バスバ4の形状が実施形態1と異なるリアクトル構造体を
図8に基づいて説明する。
図8にはバスバ4のみが図示されている。
【0079】
本例のバスバ4は、実施形態1のバスバ4と同様に、本体片40と第一片41と第二片42とを備える。第一片41と第二片42の形状は、実施形態1と同じである。
【0080】
本体片40は、Y1方向に突出する平板状の張出部40Pを備える。張出部40Pの厚み方向はZ方向に一致する。本体片40の一部である張出部40Pには、実施形態1と同じ形状のスライド孔4hが設けられている。張出部40Pの厚み方向がZ方向に一致しているため、スライド孔4hの軸方向はZ方向に一致している。
【0081】
本例のバスバ4のスライド孔4hに貫通されるピン(図示せず)は、Z1方向に延びる。ピンの形状は、
図5に示されるピン5の形状と同じである。
【0082】
本例の構成では、バスバ4のZ方向の振動は、ピンのヘッドによって抑制される。また、バスバ4のY方向の振動は、ピンの軸部によって抑制される。
【0083】
<実施形態3>
実施形態3では、組物10を収納するケース7を備えるリアクトル構造体αを
図9に基づいて説明する。ケース7はリアクトル1の一部である。
【0084】
ケース7は、少なくともバスバ4が接触する部分が絶縁材料によって構成される樹脂部70を備える。本例のケース7は、組物10が載置される底板部71と、組物10の側面を覆う側壁部72とを備える。本例の場合、側壁部72全体が樹脂部70によって構成されている。
【0085】
本例の側壁部72は、組物10のZ1方向の端部よりも高い。従って、組物10全体が、ケース7内に収納される。この側壁部72には、ケース7内に収納される組物10の巻線端部21をケース7外に導くスリット72sが設けられている。側壁部72におけるスリット72sよりも下側の部分は、相対的にY1方向に張り出す張出部72Pである。張出部72PにおけるZ1方向に臨む面が、実施形態1における第一面6aと同じ役割を担う。また、張出部72PにおけるY1方向に臨む面が、実施形態1における第二面6bと同じ役割を担う。従って、本例ではこの張出部72Pに、ピン5と端子台61とが設けられている。ピン5及び端子台61の構成は、実施形態1と同じである。
【0086】
底板部71は、絶縁材料で構成されていても良いし、金属で構成されていても良い。金属製の底板部71は、剛性と熱伝導性に優れる。金属製の底板部71と組物10との間には絶縁シートが配置されていることが好ましい。底板部71は、複数の取付部76が設けられている。底板部71の取付部76は、ケース7を設置対象に固定するためのものである。取付部76には貫通孔76hが設けられている。貫通孔76hの軸線はZ方向に一致している。貫通孔76hには、ケース7を設置対象に固定するネジが配置される。
【0087】
本例の構成によっても、バスバ4がリアクトル1に安定して取り付けられる。従って、本例の構成においても、バスバ4の中間部がネジで止められている必要はない。
【0088】
<実施形態4>
≪コンバータ・電力変換装置≫
実施形態に係るリアクトル構造体αは、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度であることが挙げられる。実施形態に係るリアクトル構造体αは、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用できる。
【0089】
ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両1200は、
図10に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。
図10では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態とすることができる。
【0090】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V以上300V以下程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V以上700V以下程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0091】
コンバータ1110は、
図11に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル構造体1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワーデバイスが利用される。リアクトル構造体1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル構造体1115として、実施形態1から実施形態3のいずれかのリアクトル構造体αを備える。軽量で磁気特性に優れるリアクトル構造体αなどを備えることで、電力変換装置1100やコンバータ1110は、軽量で変換効率に優れる。
【0092】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトル構造体1115に、実施形態1から実施形態3のいずれかのリアクトル構造体αなどと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトル構造体を利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、実施形態1から実施形態3のいずれかのリアクトル構造体αなどを利用することもできる。
【符号の説明】
【0093】
α リアクトル構造体
1 リアクトル
10 組物
2 コイル
20 巻回部、21,22 巻線端部
3 コア
3A,3B 分割コア
31 内側コア部、32 外側コア部
4 バスバ
40 本体片、40P 張出部
41 第一片
42 第二片、42h 端子孔
4h スライド孔、h1 大孔部、h2 小孔部
4p 第一平面
5 ピン
50 軸部、51 ヘッド
6 樹脂モールド部
6a 第一面、6b 第二面
60 台座部
61 端子台、61h ネジ孔
7 ケース
70 樹脂部、71 底板部、72 側壁部、72P 張出部
76 取付部、76h 貫通孔
8 支持部
8p 平面
9 絶縁部材
1100 電力変換装置
1110 コンバータ、1111 スイッチング素子、1112 駆動回路
1115 リアクトル構造体、1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ、1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ、1220 モータ、1230 サブバッテリ
1240 補機類、1250 車輪
1300 エンジン