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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両用ドア装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B60J5/04 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021046246
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022145006
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山口 真誉
(72)【発明者】
【氏名】角谷 誠一
(72)【発明者】
【氏名】西尾 泰明
(72)【発明者】
【氏名】内藤 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】荒木 克介
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-328916(JP,A)
【文献】実開昭59-179974(JP,U)
【文献】実開平02-121420(JP,U)
【文献】特開2010-084430(JP,A)
【文献】特開平07-069064(JP,A)
【文献】米国特許第03095600(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00 - 5/14
E05D 15/00 - 15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対する第1の回動連結点と車両のドアに対する第2の回動連結点とを有する第1及び第2のリンクアームを備え、
前記第1及び第2のリンクアームが形成するリンク機構の動作に基づき前記ドアが開閉動作するとともに、
前記第1のリンクアームに該第1のリンクアームと一体に回動する手置き部を設けることにより、該手置き部に印加された荷重を前記第1のリンクアームが支えるように構成され
前記手置き部は、前記ドアが全閉状態にある場合にドアトリムに沿って車両前後方向に延在するアームレストを構成するとともに、前記ドアが開動作することにより前記第1のリンクアームと一体に回動して車幅方向に延在する手摺部を構成し、
前記第1のリンクアームは、前記ドアが全閉状態にある場合に、前記ドアトリムとの間に隙間が形成されるように、前記ドアに連結される先端部分が湾曲した折曲形状をなしている車両用ドア装置。
【請求項2】
車体に対する第1の回動連結点と車両のドアに対する第2の回動連結点とを有する第1及び第2のリンクアームを備え、
前記第1及び第2のリンクアームが形成するリンク機構の動作に基づき前記ドアが開閉動作するとともに、
前記第1のリンクアームに該第1のリンクアームと一体に回動する手置き部を設けることにより、該手置き部に印加された荷重を前記第1のリンクアームが支えるように構成され、
前記第1のリンクアームを覆う状態で該第1のリンクアームと一体に回動する第1のリンクカバーを備えるとともに、
前記手置き部は、前記第1のリンクカバーと一体に設けられ、
前記車体に対する固定端と前記第1のリンクカバーに設けられた開口部を介して前記第1のリンクカバーの内側に挿入される自由端とを備えて前記車体に対する前記第1のリンクアームの連結部を覆う可撓性を有した連結部カバーを備える車両用ドア装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載の車両用ドア装置において、
前記ドアには、前記ドアが閉動作することにより前記第2のリンクアームを内側に収容する収容凹部が設けられるものであって、
前記ドアの閉動作に連動して前記収容凹部の開口部を覆う蓋部材を備えること、
を特徴とする車両用ドア装置。
【請求項4】
請求項1~請求項の何れか一項に記載の車両用ドア装置において、
前記第2のリンクアームを覆う状態で該第2のリンクアームと一体に回動する第2のリンクカバーを備えること、を特徴とする車両用ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体に対する第1の回動連結点と車両のドアに対する第2の回動連結点とを有した第1及び第2のリンクアームを備える車両用ドア装置がある。このような車両用ドア装置は、第1及び第2のリンクアームが形成するリンク機構の動作に基づいて、そのドア開口部に設けられたドアが開閉動作する。また、例えば、特許文献1には、そのリンク機構を形成する各リンクアームを、ドアが閉状態にある場合において、車体側部の端末部に装着されるドアオープニングの外側、且つドアの車内側に装着されるウェザストリップの内側に格納する構成が記載されている。そして、例えば、特許文献2には、このような各リンクアームが形成するリンク機構を、車体側のガイドレールとドア側のガイドローラユニットとが係合する構造に組み合わせる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-90097号公報
【文献】特開2008-163693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような車両用ドア装置においては、そのリンク機構を形成するリンクアームが、ドアの内側面から突出するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する車両用ドア装置は、車体に対する第1の回動連結点と車両のドアに対する第2の回動連結点とを有する第1及び第2のリンクアームを備え、前記第1及び第2のリンクアームが形成するリンク機構の動作に基づき前記ドアが開閉動作するとともに、前記第1のリンクアームに該第1のリンクアームと一体に回動する手置き部を設けることにより、該手置き部に印加された荷重を前記第1のリンクアームが支えるように構成される。
【0006】
上記構成によれば、例えば、手を載せる等の態様で、車両の乗員が手置き部に加えた荷重を、その第1のリンクアームが支えることができる。そして、これにより、ドアの内側面から突出した第1のリンクアームを有効に利用することができる。
【0007】
上記課題を解決する車両用ドア装置において、前記手置き部は、前記ドアが全閉状態にある場合にドアトリムに沿って車両前後方向に延在するアームレストを構成するとともに、前記ドアが開動作することにより前記第1のリンクアームと一体に回動して車幅方向に延在する手摺部を構成することが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、例えば、ドアの側方に位置するシートの乗員が、そのアームレストを構成する手置き部にもたれ掛かる態様で、くつろいだ着座姿勢をとることができる。また、ドア開口部を利用する車両の乗員が、その移動方向に延在する手摺部としての手置き部に掴まることで、容易に乗降することができる。そして、これにより、利便性の向上を図ることができる。更に、アームレストとしての手置き部をドアトリムに沿って配置することで、そのドアとの一体性を高めることができる。そして、これにより、その意匠性の向上を図ることができる。
【0009】
上記課題を解決する車両用ドア装置において、前記第1のリンクアームは、前記ドアが全閉状態にある場合に、前記ドアトリムとの間に隙間が形成されるように、前記ドアに連結される先端部分が湾曲した折曲形状をなしていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、ドアの開閉動作に伴い、互いの離間距離が変化する第1のリンクアームとドアトリムとの間に挟み込みが生じ難くなる。特に、ドアに連結された第1のリンクアームの先端部に近い位置ほど、ドアの閉動作時、そのドアトリムとの離間距離が狭まりやすい。しかしながら、先端部分が湾曲した折曲形状を第1のリンクアームに付与することで、効果的に、その先端部分におけるドアトリムとの間の挟み込みを抑制することができる。そして、これにより、高い安全性を確保することができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用ドア装置は、前記第1のリンクアームを覆う状態で該第1のリンクアームと一体に回動する第1のリンクカバーを備えるとともに、前記手置き部は、前記第1のリンクカバーと一体に設けられていることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、その意匠性の向上を図ることができる。加えて、その第1のリンクアームを保護することができる。
上記課題を解決する車両用ドア装置は、前記車体に対する固定端と前記第1のリンクカバーに設けられた開口部を介して前記第1のリンクカバーの内側に挿入される自由端とを備えて前記車体に対する前記第1のリンクアームの連結部を覆う可撓性を有した連結部カバーを備えることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、第1のリンクカバーに連続するかたちで、その車体に対する第1のリンクアームの連結部を覆うことができる。更に、ドアの開閉動作に伴い第1のリンクアームが回動する際、第1のリンクカバーの内側に挿入された自由端が、その第1のリンクカバー内を摺動する。そして、これにより、簡素な構成にて、その連結部カバーが第1のリンクカバーに連続して車体2に対する第1のリンクアーム11の連結部を覆う状態を維持することができる。
【0014】
上記課題を解決する車両用ドア装置において、前記ドアには、前記ドアが閉動作することにより前記第2のリンクアームを内側に収容する収容凹部が設けられるものであって、前記ドアの閉動作に連動して前記収容凹部の開口部を覆う蓋部材を備えることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、高い意匠性を確保することができる。加えて、その第2のリンクアームを保護することができる。
上記課題を解決する車両用ドア装置は、前記第2のリンクアームを覆う状態で該第2のリンクアームと一体に回動する第2のリンクカバーを備えることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、その意匠性を高めることができる。そして、より効果的に、その第2のリンクアームを保護することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ドアの内側面から突出したリンクアームを有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両用ドア装置の斜視図。
図2】車両用ドア装置の斜視図。
図3】リンク機構を形成する第1及び第2のリンクアームの平面図。
図4】リンク機構を形成する第1及び第2のリンクアームの平面図。
図5】リンク機構を形成する第1及び第2のリンクアームの平面図。
図6】全閉状態のドア及びシートの側方に配置されたアームレストの斜視図。
図7】全開状態のドア及びシートの側方に展開された手摺部の斜視図。
図8】手摺部を利用する乗員の説明図。
図9】ドアが全開状態にある場合の斜視図。
図10】ドアが全閉状態にある場合の斜視図。
図11】ドアが全開状態にある場合の平面図。
図12】ドアが全閉状態にある場合の平面図。
図13】第1のリンクアーム及び第1のリンクカバーの断面図。
図14】車室側から見たドア及び第1及び第2のリンクアームの斜視図。
図15】車体に対する第1のリンクアームの連結部を覆う連結部カバーの斜視図。
図16】連結部カバーの自由端が挿入される第1のリンクカバーに設けられた開口部を示す側面図。
図17】連結部カバーの動作説明図。
図18】連結部カバーの動作説明図。
図19】第2のリンクアームを収容する収容凹部、及び収容凹部の開口部を覆う蓋部材の正面図。
図20】蓋部材の動作説明図。
図21】蓋部材の動作説明図。
図22】蓋部材の動作説明図。
図23】第2のリンクアームを覆う第2のリンクカバーの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両用ドア装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の車両1は、車体2の側面に設けられたドア開口部3を備えている。そして、そのドア開口部3には、このドア開口部3に車両1のドア5を支持する第1のリンクアーム11及び第2のリンクアーム12が設けられている。
【0020】
詳述すると、本実施形態の車両1において、これら第1及び第2のリンクアーム11,12は、それぞれ、車体2に対する第1の回動連結点X1と、ドア5に対する第2の回動連結点X2と、を有している。具体的には、第1のリンクアーム11は、上下方向(各図中、上下方向)に延びる支軸N1aに軸支された状態で車体2に連結されるとともに、上下方向に延びる支軸N1bに軸支された状態でドア5に連結されている。そして、第2のリンクアーム12もまた、上下方向に延びる支軸N2aに軸支された状態で車体2に連結されるとともに、上下方向に延びる支軸N2bに軸支された状態でドア5に連結されている。
【0021】
即ち、図3図5に示すように、本実施形態の車両1においては、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12が四節リンクとしての構成を有したリンク機構15を形成する。そして、本実施形態の車両1は、このリンク機構15の動作に基づいて、そのドア開口部3に支持されたドア5が開閉動作する構成になっている。
【0022】
さらに詳述すると、図1及び図2に示すように、本実施形態の車両1は、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12を用いて、そのドア5を車両後方側(図1中、左側、図2中、右側)のドア開口部3に支持する。本実施形態の車両1において、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12は、それぞれ、ドア開口部3の後縁部3rにおいて、その車体2に対して回動可能に連結された第1の回動連結点X1を有している。そして、本実施形態の車両1においては、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12が上下方向に離間して配置されている。
【0023】
本実施形態の車両1においては、第1のリンクアーム11の方が、第2のリンクアーム12よりも上方に設けられている。また、第1のリンクアーム11は、ドア5の前後方向略中央位置において、このドア5に対して回動可能に連結された第2の回動連結点X2を有している。一方、第2のリンクアーム12は、ドア5の前端部5f近傍において、このドア5に連結された第2の回動連結点X2を有している。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、その第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15の動作に基づいて、そのドア5が開閉動作するような車両用ドア装置20が形成されている。
【0024】
具体的には、図3図5に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20は、ドア5の開動作時、第1及び第2のリンクアーム11,12が、それぞれ、その第1の回動連結点X1周りに、各図中、反時計回り方向に回動する。そして、これにより、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12に支持された車両1のドア5が、車両後方側(各図中、左側)に開動作する。
【0025】
また、本実施形態の車両用ドア装置20は、ドア5の閉動作時、第1及び第2のリンクアーム11,12が、それぞれ、その第1の回動連結点X1周りに、各図中、時計回り方向に回動する。そして、これにより、これら第1及び第2のリンクアーム11,12に支持された車両1のドア5が、車両前方側(各図中、右側)に閉動作する構成になっている。
【0026】
更に、本実施形態の車両用ドア装置20は、第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15の動作に基づいて、そのドア5の開閉動作軌跡が規定される。即ち、図4に示すように、第1及び第2のリンクアーム11,12が車幅方向(図3図5中、上下方向)に延在する状態となる中間位置においては、車両前後方向への移動成分が大きくなる。そして、図3に示すように、ドア5の開閉動作位置が全閉位置P0に近いほど、第1及び第2のリンクアーム11,12が車両前後方向(図3図5中、左右方向)に延在する状態となることで、その車幅方向への移動成分が大きくなる。
【0027】
また、図1図5に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20においては、第2のリンクアーム12よりも第1のリンクアーム11の方が、より重心Gに近い位置に、そのドア5に対する第2の回動連結点X2を有している。即ち、本実施形態の車両用ドア装置20においては、これにより、この第1のリンクアーム11が、より大きなドア荷重を支えるメインリンク21に位置付けられている。そして、第2のリンクアーム12は、その作用するドア荷重が比較的小さいサブリンク22に位置付けられている。
【0028】
尚、本実施形態の車両用ドア装置20においては、第1のリンクアーム11の方が、第2のリンクアーム12よりも大きな径を有している。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、そのメインリンク21に位置付けられた第1のリンクアーム11に高い支持剛性を付与する構成となっている。
【0029】
また、本実施形態の車両用ドア装置20は、モータ23を駆動源として、その第1のリンクアーム11を回転駆動するアクチュエータ25を備えている。本実施形態の車両用ドア装置20において、このアクチュエータ25は、第1のリンクアーム11の下方となる位置に設けられている。詳しくは、このアクチュエータ25は、その出力軸が第1の回動連結点X1と略同軸となる位置において車体2に固定されている。即ち、本実施形態のアクチュエータ25は、第1のリンクアーム11を回動させるかたちで、この第1のリンクアーム11及び第2のリンクアーム12が形成するリンク機構15を駆動する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、このアクチュエータ25の駆動力に基づいて、そのドア5を開閉動作させることができるパワードア装置30としての構成を有している。
【0030】
(手置き部)
次に、本実施形態の車両用ドア装置20において、その第1のリンクアーム11に設けられた手置き部について説明する。
【0031】
図6に示すように、本実施形態の車両1において、シート31の側方に配置されたドア5には、このドア5が全閉状態にある場合に、そのドアトリム32に沿って、車両前後方向(図6中、左右方向)に延在するアームレスト33が設けられている。即ち、このアームレスト33は、シート31に着座した乗員が、その腕や肘を置くことのできる位置に配置されている。そして、本実施形態の車両1は、このアームレスト33を利用することで、そのシート31の乗員がくつろいだ着座姿勢をとることができるようになっている。
【0032】
また、図7及び図8に示すように、本実施形態の車両1においては、ドア5が開動作することにより、そのシート31の側方に配置されたアームレスト33が、車幅方向(図6中、紙面に直交する方向)に延在する手摺部34に変化する。尚、図7及び図8には、ドア5が全開位置P1にある状態、つまりは、その全開状態が図示されている。そして、本実施形態の車両1は、この手摺部34を利用することで、容易に、その乗員35が乗降することができるように構成されている。
【0033】
詳述すると、図9図12に示すように、本実施形態の車両1において、車両用ドア装置20のリンク機構15を構成する第1のリンクアーム11には、この第1のリンクアームと一体に回動する手置き部40が設けられている。更に、本実施形態の車両用ドア装置20は、この手置き部40に印加された荷重を、そのメインリンク21に位置付けられた第1のリンクアーム11が支える構成になっている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20においては、これにより、そのドア5の開閉動作位置に応じて、この第1のリンクアーム11に設けられた手置き部40が、上記のようなアームレスト33又は手摺部34として機能するように構成されている。
【0034】
さらに詳述すると、本実施形態の車両用ドア装置20は、第1のリンクアーム11の外周を覆う状態で、この第1のリンクアーム11と一体に回動する第1のリンクカバー41を備えている。そして、本実施形態の手置き部40は、この第1のリンクカバー41と一体に設けられている。
【0035】
具体的には、図13に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20において、第1のリンクカバー41は、断面略矩形状をなす第1のリンクアーム11の外周に固着された内側カバー42と、この内側カバー42の外側を覆う外側カバー43と、を備えている。また、これらの内側カバー42及び外側カバー43は、樹脂やスポンジ等、軟質な素材を用いて構成されている。更に、これらの内側カバー42及び外側カバー43は、それぞれ、複数の部品に分割された状態で、第1のリンクアーム11に組み付けられている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、その外側カバー43の構成部品のうち、第1のリンクアーム11の上方に配置された上部カバー44が、その手置き部40として機能する構成になっている。
【0036】
また、図14に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20において、第1のリンクアーム11は、そのドアトリム32に設けられた孔部46を介してドア5の内側面5sに連結される。更に、第1のリンクアーム11を覆う第1のリンクカバー41については、ドアトリム32と調和するように、その手置き部40の外皮を構成する外側カバー43の材質が選定されている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、そのドア5の側方に配置されるアームレスト33及び手摺部34とドアトリム32との一体性が高められている。
【0037】
更に、図9図12に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20において、第1のリンクアーム11は、そのドア5に連結される先端部分が湾曲した折曲形状をなしている。具体的には、第1のリンクアーム11は、ドア5に連結される先端部11bに、そのドア5が全閉状態にある場合において、車幅方向外側(図12中、上側)に向かって湾曲して延びる折曲部47を有している。また、手置き部40は、その車体2に対する連結部から略直線的に延びる第1のリンクアーム11の本体部48に設けられている。更に、本実施形態の車両用ドア装置20において、第1のリンクアーム11は、ドア5が全閉状態にある場合において、その本体部48がドア5の内側面5sと略平行に配置される。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、その手置き部40が形成するアームレスト33を含め、ドア5が全閉状態にある場合に、そのドアトリム32と第1のリンクアーム11との間に隙間αが形成されるように構成されている。
【0038】
また、図9及び図10に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20は、車体2に対する第1のリンクアーム11の連結部50を覆う連結部カバー51を備えている。具体的には、本実施形態の車両用ドア装置20は、ドア開口部3の後縁部3rにおいて、その車体2に固定された連結部材52を備えている。また、この連結部材52には、上下方向に延びる支軸N1aが設けられている。更に、第1のリンクアーム11は、この支軸N1a周りの回動が許容される状態で、その連結部材52に対して基端部11aが連結されている。そして、本実施形態の連結部カバー51は、車体2に対する第1の回動連結点X1を構成する支軸N1aの径方向外側において、その連結部50となる連結部材52及び第1のリンクアーム11の基端部11aを覆う構成になっている。
【0039】
詳述すると、図15図18に示すように、本実施形態の連結部カバー51は、例えば、樹脂や皮革材等、厚み方向の可撓性を有した軟質素材からなるシート状の外形を有している。また、この連結部カバー51は、連結部材52の側方において、この連結部材52とともに車体2に固定される固定端51aを有している。そして、本実施形態の連結部カバー51は、その第1のリンクアーム11を覆う第1のリンクカバー41に設けられた開口部54を介して、この第1のリンクカバー41の内側に挿入される自由端51bを有している。
【0040】
具体的には、本実施形態の車両用ドア装置20において、第1のリンクカバー41は、その内側カバー42と外側カバー43との間に隙間βを有している。更に、第1のリンクカバー41においては、この隙間βが、その第1のリンクアーム11の基端部11a側に臨む開口部54を形成する。そして、本実施形態の連結部カバー51は、この開口部54を介して、その自由端51bが第1のリンクカバー41の内側に挿入されることにより、この第1のリンクカバー41に連続するかたちで、その車体2に対する連結部50を覆う構成になっている。
【0041】
即ち、本実施形態の車両用ドア装置20においては、その車体2に対する第1の回動連結点X1を構成する支軸N1a周りに、図17及び図18中、反時計回り方向に第1のリンクアーム11が回動することで、そのドア5が開動作する。このとき、本実施形態の連結部カバー51は、厚み方向の変形を伴いながら、その開口部54を介して第1のリンクカバー41の内側に挿入された自由端51bが、この第1のリンクカバー41内を第1のリンクアーム11の基端部11a側に向かって摺動する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、第1のリンクカバー41の内側から、その連結部カバー51が部分的に引き出されることで、この連結部カバー51が第1のリンクカバー41に連続する状態が維持される構成になっている。
【0042】
また、本実施形態の車両用ドア装置20は、その車体2に対する第1の回動連結点X1を構成する支軸N1a周りに、図17及び図18中、時計回り方向に第1のリンクアーム11が回動することで、そのドア5が閉動作する。この場合もまた、本実施形態の連結部カバー51は、厚み方向の変形を伴いながら、その開口部54を介して連結部カバー51の内側に挿入された自由端51bが、この連結部カバー51内を第1のリンクアーム11の先端部11b側に向かって摺動する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、その第1のリンクカバー41内に挿入される連結部カバー51の長さが増加することで、弛むことなく、その連結部カバー51が第1のリンクカバー41に連続する状態を維持する構成になっている。
【0043】
さらに詳述すると、図9図10図14及び図19に示すように、本実施形態の車両1において、ドアトリム32には、そのドア5が閉動作することにより第2のリンクアーム12を内側に収容する収容凹部60が設けられている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、ドア5の閉動作に連動して、その収容凹部60の開口部60xを覆う蓋部材61を備えている。
【0044】
具体的には、本実施形態の収容凹部60は、ドアトリム32の下端部32b近傍において、車両前後方向に延びる溝形状を有している。また、この収容凹部60の前端部60fには、その第2のリンクアーム12の先端部12bをドア5に連結するための孔部62が設けられている。更に、第2のリンクアーム12は、ドア5の開閉動作に伴って、このドア5に対する第2の回動連結点X2、つまりは、その先端部12bを軸支する支軸N2b回りに回動する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、その車体2に連結された第2のリンクアーム12の基端部12aと、その収容凹部60が設けられたドアトリム32の下端部32bとの相対位置が車幅方向に変化する構成になっている。
【0045】
即ち、本実施形態の車両用ドア装置20において、第2のリンクアーム12は、ドア5が全閉状態にある場合には、車両前後方向に延在する収容凹部60の溝形状に沿う状態で、この収容凹部60内に収容される。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、ドア5の開動作に伴い第2のリンクアーム12が回動することで、その基端部12a側から徐々に、この第2のリンクアーム12が収容凹部60の外部に離脱する構成になっている。
【0046】
また、本実施形態の車両用ドア装置20において、蓋部材61は、その収容凹部60の開口形状と略等しい略平板状の外形を有している。更に、この蓋部材61は、その収容凹部60の上方に設定された回動軸61xを有している。そして、本実施形態の蓋部材61は、この回動軸61x回りに回動することで、その車幅方向内側(図19中、紙面手前側)に臨む収容凹部60の開口部60xを開閉する構成になっている。
【0047】
即ち、図20図22に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20においては、全閉状態からドア5が開動作することにより、収容凹部60内に収容された第2のリンクアーム12が、その開口部60xを覆う蓋部材61を内側から押圧する。また、これにより、その回動軸61x回りに蓋部材61が回動する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、その基端部12aがドアトリム32から離間する方向に回動する第2のリンクアーム12に押し上げられるかたちで、その蓋部材61が開動作する構成になっている。
【0048】
また、本実施形態の車両用ドア装置20においては、ドア5の閉動作に伴い、第2のリンクアーム12が収容凹部60内に収容されることで、その回動軸61x回りに先端が下がる方向に蓋部材61が回動する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、そのドア5の閉動作に連動して、このドア5が全閉状態にある場合に、その蓋部材61が収容凹部60の開口部60xを覆う閉状態となるように構成されている。
【0049】
尚、本実施形態の車両用ドア装置20は、その回動軸61x回りに先端が下がる方向、つまりは閉動作する方向に蓋部材61を付勢する弾性部材63を備えている。即ち、本実施形態の車両用ドア装置20においては、蓋部材61の自重に加え、この弾性部材63の付勢力に基づいて、その蓋部材61が開口部60xを覆う閉状態に移行する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、更に、この弾性部材63の付勢力に基づいて、その回動軸61x回りに回動する蓋部材61のバタつきを抑える構成になっている。
【0050】
次に、本実施形態の効果について説明する。
即ち、本実施形態の車両用ドア装置20は、ドア5が全閉状態にある場合に、その第1のリンクアーム11に設けられた手置き部40が、ドアトリム32に沿って車両前後方向に延在する状態となる。そして、これにより、ドア5の内側面5sから突出する第1のリンクアーム11に設けられた手置き部40が、そのドア5の側方に位置するシート31の乗員35が利用することのできるアームレスト33を構成する。
【0051】
また、ドア5の開動作に連動して、その第1のリンクアーム11と一体に手置き部40が回動することで、この手置き部40が車幅方向に延在する状態となる。そして、これにより、この手置き部40が、そのドア5が設けられたドア開口部3から乗降する車両1の乗員35が利用することのできる手摺部34を構成する。
【0052】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)車両用ドア装置20は、車体2に対する第1の回動連結点X1と車両1のドア5に対する第2の回動連結点X2とを有する第1及び第2のリンクアーム11,12を備える。また、車両用ドア装置20は、第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15の動作に基づきドア5を開閉動作させる。更に、第1のリンクアーム11には、この第1のリンクアーム11と一体に回動する手置き部40が設けられる。そして、車両用ドア装置20は、この手置き部40に印加された荷重を第1のリンクアーム11が支えるように構成される。
【0053】
上記構成によれば、例えば、手を載せる等の態様で、車両1の乗員35が手置き部40に加えた荷重を、その第1のリンクアーム11が支えることができる。そして、これにより、ドア5の内側面5sから突出した第1のリンクアーム11を有効に利用することができる。
【0054】
(2)手置き部40は、ドア5が全閉状態にある場合に、そのドアトリム32に沿って車両前後方向に延在するアームレスト33を構成する。そして、手置き部40は、ドア5が開動作することにより、その第1のリンクアーム11と一体に回動して車幅方向に延在する手摺部34を構成する。
【0055】
上記構成によれば、例えば、ドア5の側方に位置するシート31の乗員35が、そのアームレスト33を構成する手置き部40にもたれ掛かる態様で、くつろいだ着座姿勢をとることができる。また、ドア開口部3を利用する車両1の乗員35が、その移動方向に延在する手摺部34としての手置き部40に掴まることで、容易に乗降することができる。そして、これにより、利便性の向上を図ることができる。更に、アームレスト33としての手置き部40をドアトリム32に沿って配置することで、そのドア5との一体性を高めることができる。そして、これにより、その意匠性の向上を図ることができる。
【0056】
(3)第1のリンクアーム11は、ドア5が全閉状態にある場合に、そのドアトリム32との間に隙間が形成されるように、ドア5に連結される先端部分が湾曲した折曲形状をなしている。
【0057】
上記構成によれば、ドア5の開閉動作に伴い、互いの離間距離が変化する第1のリンクアーム11とドアトリム32との間に挟み込みが生じ難くなる。特に、ドア5に連結された第1のリンクアーム11の先端部11bに近い位置ほど、ドア5の閉動作時、そのドアトリム32との離間距離が狭まりやすい。しかしながら、先端部分が湾曲した折曲形状を第1のリンクアーム11に付与することで、効果的に、その先端部分におけるドアトリム32との間の挟み込みを抑制することができる。そして、これにより、高い安全性を確保することができる。
【0058】
(4)車両用ドア装置20は、第1のリンクアームを覆う状態で、この第1のリンクアーム11と一体に回動する第1のリンクカバー41を備える。そして、手置き部40は、この第1のリンクカバー41と一体に設けられる。これにより、その意匠性の向上を図ることができる。加えて、その第1のリンクアーム11を保護することができる。
【0059】
(5)車両用ドア装置20は、車体2に対する第1のリンクアーム11の連結部50を覆う連結部カバー51を備える。この連結部カバー51は、可撓性を有した軟質素材を用いて構成される。また、この連結部カバー51は、車体2に対する固定端51aを備える。そして、この連結部カバー51は、第1のリンクカバー41に設けられた開口部54を介して第1のリンクカバー41の内側に挿入される自由端51bを備える。
【0060】
上記構成によれば、第1のリンクカバー41に連続するかたちで、その車体2に対する第1のリンクアーム11の連結部50を覆うことができる。更に、ドア5の開閉動作に伴い第1のリンクアーム11が回動する際、第1のリンクカバー41の内側に挿入された自由端51bが、その第1のリンクカバー41内を摺動する。そして、これにより、簡素な構成にて、その連結部カバー51が第1のリンクカバー41に連続して車体2に対する第1のリンクアーム11の連結部50を覆う状態を維持することができる。
【0061】
(6)ドアトリム32には、そのドア5が閉動作することにより第2のリンクアーム12を内側に収容する収容凹部60が設けられる。そして、車両用ドア装置20は、ドア5の閉動作に連動して、その収容凹部60の開口部60xを覆う蓋部材61を備える。これにより、高い意匠性を確保することができる。加えて、その第2のリンクアーム12を保護することができる。
【0062】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0063】
・上記実施形態では、手置き部40は、ドア5が全閉状態にある場合に、そのドアトリム32に沿って車両前後方向に延在するアームレスト33を構成し、ドア5が開動作することにより車幅方向に延在する手摺部34を構成することとした。しかし、これに限らず、手置き部40が、アームレスト33又は手摺部34の何れか一方の機能を有する構成であってもよい。また、任意のドア5の開閉動作位置において、その手置き部40に印加された荷重を第1のリンクアーム11が支えることができるとよい。更に、必ずしも、ドア5の側方にシート31が配置されていなくともよい。そして、例えば、ドア5が全閉状態にある場合に、車両前後方向に延在する手摺部を構成する等、その手置き部40に印加された荷重を支える形態については、任意に変更してもよい。
【0064】
・上記実施形態では、第1のリンクアームを覆う状態で、この第1のリンクアーム11と一体に回動する第1のリンクカバー41を備える。また、この第1のリンクカバー41は、第1のリンクアーム11の外周に固着された内側カバー42と、この内側カバー42の外側を覆う外側カバー43と、を備える。そして、外側カバー43の構成部品のうち、第1のリンクアーム11の上方を覆う上部カバー44が、その手置き部40として機能することとした。しかし、これに限らず、第1のリンクアーム11を覆う第1のリンクカバー41の形状は、任意に変更してもよい。また、第1のリンクカバー41が部分的に第1のリンクアーム11を覆う構成であってもよい。更に、第1のリンクアーム11とは、別体に、その第1のリンクアーム11に対して手置き部40が固定される構成であってもよい。そして、第1のリンクカバー41のような第1のリンクアームを覆うカバー部材を有しない構成に具体化してもよい。
【0065】
・上記実施形態では、手置き部40が設けられた第1のリンクアーム11は、第2のリンクアーム12よりも大きなドア荷重を支えることのできるメインリンク21としての構成を有することとした。しかし、これに限らず、第1のリンクアーム11が、その作用するドア荷重が比較的小さいサブリンク22である構成に具体化してもよい。そして、第1及び第2のリンクアーム11,12の配置についてもまた、任意に変更してもよい。
【0066】
・上記実施形態では、第2のリンクアーム12の収容凹部60は、ドアトリム32に設けられることとしたが、例えば、その内側面5sに凹設する等により、ドア5の本体部分に収容凹部60を設ける構成としてもよい。
【0067】
・また、収容凹部60の開口部60xを覆う蓋部材61は、収容凹部60の上方に回動軸61xを有して開閉動作することとしたが、収容凹部60の下方に回動軸61xを有して開閉動作する構成であってもよい。更に、軟質素材を用いて蓋部材61を構成してもよい。そして、例えば、その長手方向に延在するスリットを介して第2のリンクアーム12が収容凹部60内に進入し、及び、その収容凹部60から離脱する等、その蓋部材61が、収容凹部60の開口部60xを覆う態様は任意に変更してもよい。
【0068】
・また、図23に示すように、第2のリンクアーム12の外周を覆う状態で、この第2のリンクアーム12と一体に回動する第2のリンクカバー72を備える構成としてもよい。このような構成を採用することで、より一層、その意匠性を高めることができる。そして、より効果的に、その第2のリンクアーム12を保護することができる。尚、この第2のリンクカバー72もまた、部分的に第2のリンクアーム12を覆う構成であってもよい。
【0069】
・上記実施形態では、車両1のドア5が車両後方側に開動作する構成に適用したが、ドア5が車両前方側に開動作する構成に適用してもよい。そして、アクチュエータ25のような駆動源を有しない手動式のドア装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…車両
2…車体
5…ドア
11…第1のリンクアーム
12…第2のリンクアーム
15…リンク機構
20…車両用ドア装置
40…手置き部
X1…第1の回動連結点
X2…第2の回動連結点
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