(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電池管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20241210BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241210BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241210BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02J7/34 B
H02J7/00 Y
H02J3/32
H01M10/42 P
(21)【出願番号】P 2021048291
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周布 正之介
(72)【発明者】
【氏名】泉 純太
(72)【発明者】
【氏名】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】土生 雅和
(72)【発明者】
【氏名】村松 牧人
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/215817(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/029031(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0231064(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
H02J 7/00
H02J 3/32
H01M 10/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバを用いた電池管理方法であって、
前記サーバが保管庫に保管された複数の電池を電力系統からのデマンドレスポンス要求に応じて充放電させるステップと、
前記サーバが、劣化度合いに応じてランク付けされた前記複数の電池のなかから、第1のユーザ拠点の要求ランクの電池と、前記第1のユーザ拠点の要求ランクよりも高いランクの電池とを含む少なくとも2つの電池を選択するステップと、
前記サーバが、選択された前記少なくとも2つの電池を前記第1のユーザの拠点で使用しつつ、ランク付けされた前記複数の電池と、前記少なくとも2つの電池とのなかから、第2のユーザ拠点の要求ランクに応じた電池を選択するステップを含む、電池管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電池管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-205873号公報(特許文献1)には、電力貯蔵システムに適合する蓄電池を有する電気自動車のユーザに当該蓄電池の交換を促すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、走行用の組電池が搭載された車両の普及が急速に進んでいる。そのため、これらの車両の買い換え、解体等に伴って回収される中古電池の数量が増加している。持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)を推進する観点からは、回収された中古電池を用いて新たな組電池を製造し、中古電池を再利用することが要望される。発明者らは、中古電池を再利用する際などには以下のような課題が生じ得ることに着目した。
【0005】
電池は、利用を待つ間、物流拠点などに保管される。電池を適切に保管するにはコストが掛かる。また、電池の入庫から次の利用に向けた出庫までには一定程度の時間(保管期間)を要し得る。したがって、電池の保管期間を有効活用することが望ましい。
【0006】
一般に車両走行用の電池は大型であるため、保管には広大な保管スペースが求められる。特に、劣化度合いに応じて電池をランク付けすることが考えられるところ、用途などによって電池に要求されるランクも異なる。そのため、様々なランクの電池を在庫として確保しておくことが望ましい。この点からも電池の保管には広大な保管スペースが必要となる。
【0007】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、電池の保管期間を有効活用しつつ、電池の保管スペースを確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面に係る電池管理方法は、サーバを用いた電池管理方法であって、第1~第3のステップを含む。第1のステップは、サーバが保管庫に保管された複数の電池を電力系統からのデマンドレスポンス要求に応じて充放電させるステップである。第2のステップは、サーバが、劣化度合いに応じてランク付けされた複数の電池のなかから、第1のユーザ拠点の要求ランクの電池と、第1のユーザ拠点の要求ランクよりも高いランクの電池とを含む少なくとも2つの電池を選択するステップである。第3のステップは、サーバが、選択された少なくとも2つの電池を第1のユーザの拠点で使用しつつ、ランク付けされた複数の電池と、上記少なくとも2つの電池とのなかから、第2のユーザ拠点の要求ランクに応じた電池を選択するステップである。
【0009】
上記方法においては、複数の電池が保管庫に保管されている状態で、複数の電池の劣化度合いが評価される(第1および第2のステップ)。つまり、電池の保管期間中に劣化度合いの評価も完了するので、劣化度合いの評価を別途実施する時間を節約できる。さらに、電力系統からのデマンドレスポンス要求に応じて複数の電池が充放電される機会を利用して複数の電池の劣化度合いが評価される。デマンドレスポンス要求に応えることで電力系統の管理者(一般的には電力会社)から対価を得ることができる。よって、電池の保管期間を時間的にも金銭的にも有効活用できる。さらに、上記方法においては、保管庫に加えて第1のユーザの拠点にも、第1のユーザ拠点の要求ランクの電池と、第1のユーザ拠点の要求ランクよりも高いランクの電池とが保管される(第3のステップ)。これにより、大量の電池の保管スペースの確保が容易になる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、電池の保管期間を有効活用しつつ、電池の保管スペースを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態における組電池の物流の一態様を示す図である。
【
図2】中古電池が保管ユニットに保管されている様子の一例を示す図である。
【
図3】中古電池を再利用するための作業工程の概要を示すフローチャートである。
【
図4】本実施の形態における中古電池の販売および出荷の態様を説明するための概念図である。
【
図5】本実施の形態における販売および出荷工程を示すフローチャートである。
【
図6】電池セラーの電気的な構成を示すシステム構成図である。
【
図7】電池データのデータ構造の一例を示す図である。
【
図8】中古電池の劣化評価に関するサーバの機能ブロック図である。
【
図9】電池セラーと電力系統との間の電力調整に関するサーバの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示および実施の形態において、電池の充放電とは、電池の充電および放電のうちの少なくとも一方を意味する。すなわち、電池の充放電とは、電池の充電および放電の両方に限られず、電池の充電だけであってもよいし、電池の放電だけであってもよい。
【0013】
本開示および実施の形態において、組電池は、複数のモジュール(ブロック、スタックとも呼ばれる)を含む。複数のモジュールは、直列接続されていてもよいし、互いに並列接続されていてもよい。複数のモジュールの各々は、複数のセル(単電池)を含む。
【0014】
一般に、組電池の「再利用」は、リユース、リビルド、材料リサイクルに大別される。リユースの場合、回収された組電池は、必要な出荷検査を経て、そのままリユース品として出荷される。リビルトの場合、回収された組電池は、一旦、モジュールに分解される。そして、分解されたモジュールのうち、使用可能なモジュール(性能回復後に使用可能となるモジュールであってもよい)が組み合わされて新たな組電池が製造される。新たに製造された組電池は、出荷検査を経て、リビルト品として出荷される。これに対し、材料リサイクルでは、各セルから再生可能な材料(資源)が取り出される。回収された組電池が他の組電池として使用されることはない。
【0015】
以下に説明する実施の形態においては、車両から回収された組電池が一旦モジュールに分解される。そして、モジュール単位で各種工程が行われる。つまり、以下では、再利用が可能な中古電池とは、リビルトが可能なモジュールを意味する。しかしながら、モジュールへの分解は必須ではない。組電池の構成または組電池の劣化度合いによっては、モジュールに分解することなくリユースすることも可能である。
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0017】
[実施の形態]
<電池物流モデル>
図1は、本実施の形態における組電池の物流の一態様を示す図である。以下では、
図1に示される物流の態様を「電池物流モデル」と称する。電池物流モデル100は、回収業者1と、電池セラー2と、販売先3と、リサイクル工場4と、電力系統5と、分散型エネルギーリソース(DER:Distributed Energy Resource)6とを含む。
【0018】
回収業者1は、複数の車両から使用済みの組電池(中古電池9)を回収する。回収業者1は、車両販売店(ディーラー)であってもよいし、車両の解体業者であってもよい。なお、この例では、中古電池9毎に識別情報(電池ID)が付与されている(
図7参照)。したがって、電池物流モデル100では、IDを用いて中古電池9を特定し、その中古電池9のデータ(後述する電池データなど)を管理したり、その中古電池9の流通経路を追跡したりすることができる。
【0019】
電池セラー2とは、ワインボトルを温度および湿度の管理下で貯蔵するワインセラーのように、回収業者1により回収された中古電池9を適切に管理するための施設である。電池セラー2は、
図1に示す例では港湾近くの物流拠点に設置されている。電池セラー2は、中古電池9に関するデータを管理するサーバ20と、複数の保管ユニット21とを含む。なお、保管ユニット21は、本開示に係る「保管庫」に相当する。電池セラー2に保管される電池は、中古電池に限らず、新品の電池が含まれてもよい。
【0020】
図2は、中古電池9が保管ユニット21に保管されている様子の一例を示す図である。
図2に示すように、電池セラー2の建屋内には複数の保管ユニット21が配置されている。複数の保管ユニット21の各々は、多くの中古電池9を格納するように構成されている。詳細は後述するが、本実施の形態においては、電池セラー2は、保管ユニット21に格納された中古電池9の各々について劣化評価試験を実施する。そして、電池セラー2は、劣化評価試験の結果に基づいて、各中古電池9を再利用可能か再利用不可能か(再利用に適するか適さないか)を判定する。
【0021】
図1に戻り、販売先3は、電池セラー2により再利用可能と判定された中古電池9を販売する。販売先3は、中古電池9を車両用として販売する販売店31と、工場、ビル等で使用される定置用として使用するユーザ32とを含み得る。また、販売先3は、中古電池9を補給品(保守・修理用の交換部品)として販売する販売店33を含んでもよい。
【0022】
リサイクル工場4は、電池セラー2により再利用不可能と判定された中古電池9を他の製品の原料として再生するための材料リサイクルを行う。
【0023】
電力系統5は、発電所および送配電設備等によって構築された電力網である。この実施の形態では、電力会社が発電事業者と送配電事業者とを兼ねる。電力会社は、一般送配電事業者に相当するとともに、電力系統5の管理者に相当し、電力系統5を保守および管理する。電力系統5には事業者サーバ50が設けられている。事業者サーバ50は、電力会社に帰属し、電力系統5の電力需給を管理する。サーバ20と事業者サーバ50とは双方向通信が可能に構成されている。
【0024】
DER6は、電池セラー2が設置された物流拠点(または、その周辺地域)に設けられ、電池セラー2との間で電力の授受が可能な比較的小規模な電力設備である。DER6は、たとえば、発電型DERと、蓄電型DERとを含む。
【0025】
発電型DERは、自然変動電源と、発電機とを含み得る。自然変動電源は、気象条件によって発電出力が変動する発電設備である。
図1には太陽光発電設備(太陽光パネル)が例示されているが、自然変動電源は、太陽光発電設備に代えてまたは加えて、風力発電設備を含んでもよい。一方、発電機は、気象条件に依存しない発電設備である。発電機は、蒸気タービン発電機、ガスタービン発電機、ディーゼルエンジン発電機、ガスエンジン発電機、バイオマス発電機、定置式の燃料電池などを含み得る。発電機は、発電時に発生する熱を活用するコージェネレーションシステムを含んでもよい。
【0026】
蓄電型DERは、電力貯蔵システムと、蓄熱システムとを含み得る。電力貯蔵システムは、自然変動電源などにより発電された電力を蓄える定置式の蓄電装置である。電力貯蔵システムは、電力を用いて気体燃料(水素、メタン等)を製造するパワー・ツー・ガス(Power to Gas)機器であってもよい。蓄熱システムは、熱源と負荷との間に設けられた蓄熱槽を含み、蓄熱槽内の液媒体を保温状態で一時的に蓄えるように構成されている。蓄熱システムを用いることで熱の発生と消費とを時間的にずらすことができる。そのため、たとえば、夜間に電力を消費して熱源機を運転することで発生した熱を蓄熱槽に蓄えておき、昼間にその熱を消費して空調することが可能になる。
【0027】
このように、回収業者1により回収された中古電池9は、販売先3またはリサイクル工場4への出庫を待つ間、電池セラー2に保管される。しかし、電池セラー2を用いて中古電池9を適切に保管するにも維持費(ランニングコスト)が掛かる。さらに、回収された中古電池9の入庫から販売先3またはリサイクル工場4への出庫までの間には一定程度の時間を要し得る。したがって、電池セラー2における中古電池9の保管期間を有効活用することが望ましい。
【0028】
そこで、本実施の形態においては、電池セラー2を中古電池9の保管場所に加えてバーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)としても機能させる構成を採用する。これにより、中古電池9が充放電する機会が、中古電池9の再利用態様を決定するための中古電池9の劣化評価と、中古電池9を利用した電力系統5の電力需給バランス調整とを兼ねる。その結果、電池セラー2では、中古電池9の保管と、中古電池9の劣化評価と、中古電池9による電力需給バランス調整とが「三位一体」に行われる。
【0029】
<中古電池の再利用工程>
図3は、中古電池9を再利用するための作業工程の概要を示すフローチャートである。まず、回収業者1により回収された中古電池9が電池セラー2に引き渡される(S1)。
【0030】
本実施の形態においては、サーバ20は、中古電池9の各々について、保管ユニット21に格納された状態で劣化評価試験(性能検査)を実施する(S2)。サーバ20は、各中古電池9について、満充電容量、内部抵抗(たとえば交流インピーダンス)等の電気的特性に基づいて劣化度合いを評価する。そして、サーバ20は、劣化評価試験の結果に応じて、各中古電池9が再利用可能か再利用不可能かを判定する(S3)。
【0031】
本実施の形態では、劣化評価試験の結果(より具体的には満充電容量の測定結果)に応じて中古電池9のランク付けが行われる。たとえば
図2に示すように、リビルドが可能な中古電池9に関しては、満充電容量が大きい順に、Sランク、Aランク、Bランク、Cランクの4段階にランク付けされる。これにより、中古電池9の売買価格をランクに紐付けて設定したり、中古電池9の品質をランクに応じて保証したりすることが可能になる。よって、電池セラー2を経た中古電池9を市場に円滑に流通させることができる。なお、満充電容量が規定値を下回る中古電池9に関しては、Cランクよりも低くランク付けされ(Reと記載)、材料リサイクルに回される。
【0032】
再利用可能と判定された場合(S3においてYES)、作業工程は性能回復工程へと進む(S4)。性能回復工程においては、中古電池9の性能を回復させるための処理(性能回復処理)が実施される。たとえば中古電池9を過充電することによって、中古電池9の満充電容量を回復させることができる。ただし、性能回復工程を省略してもよい。また、劣化評価試験の結果、劣化度合いが大きい(性能が大きく低下している)中古電池9には性能回復処理を実施する一方で、劣化度合いが小さい(あまり性能低下していない)中古電池9については性能回復処理を非実施としてもよい。
【0033】
続いて、性能回復工程により性能が回復された中古電池9を用いて新たな組電池が製造(リビルド)される(S5)。組電池のリビルドに用いられる中古電池9は、基本的には性能回復工程を経て性能が回復された中古電池9であるが、性能回復工程が省略された中古電池9を含んでもよいし、新品電池(新品のモジュール)を含んでもよい。その後、組電池は販売先3へと販売および出荷される(S6)。
【0034】
劣化評価試験の結果、再利用不可能と判定された場合(S3においてNO)、中古電池9は、リサイクル工場4へと運ばれる(S7)。リサイクル工場4では中古電池9が解体されて再資源化される。
【0035】
このように、回収業者1により回収されて販売先3またはリサイクル工場4に引き渡されるまでの間、中古電池9は、電池セラー2内に保管され、その間に劣化評価試験が実施される。劣化評価試験において中古電池9の満充電容量等の電気的特性を測定する際には、中古電池9が充放電される。本実施の形態では、この充放電に、電池セラー2(およびDER6)と電力系統5との間で授受される電力が用いられる。これにより、電池セラー2がVPP(またはDERの1つ)として機能し、電力系統5の負荷平準化に貢献する。より詳細には、電池セラー2は、電力系統5において需要に対して供給の余剰が生じている時間帯には、その余剰分の電力を中古電池9に充電することで電力余剰を吸収する。一方、電池セラー2は、電力系統5において需要に対して供給の不足が生じている場合には、その不足分の電力を中古電池9から放電することで電力不足を緩和する。
【0036】
ただし、電池セラー2は、電力系統5における電力余剰の吸収および電力不足の緩和の両方に貢献するように構成されていなくてもよい。電池セラー2は、電力余剰の吸収および電力不足の緩和のうちの一方のみに貢献するように構成されていてもよい。たとえば、電池セラー2は、電力系統5における余剰分の電力を中古電池9に充電する一方で、中古電池9からの放電先に電力系統5を含まないようにすることも可能である。中古電池9からの放電先は、たとえばDER6のみであってもよい。
【0037】
<中古電池の保管>
回収された中古電池9は、再利用先への出荷を待つ間、電池セラー2に保管される。車両走行用である中古電池9は大型であるため、電池セラー2に広大な保管スペースが求められる。さらに、車両用、定置用など再利用先での使用用途によって中古電池9に要求されるランクも異なる。そのため、電池セラー2には様々なランクの中古電池9を在庫として確保しておくことが望ましい。この点からも電池セラー2に求められる保管スペースが増大し得る。そこで、本実施の形態においては、中古電池9の販売先の1つであるユーザ32の拠点に設置された定置用電池を中古電池9の保管スペースとして利用する。
【0038】
図4は、本実施の形態における中古電池9の販売および出荷の態様を説明するための概念図である。
図5は、本実施の形態における販売および出荷工程(
図3のS6参照)を示すフローチャートである。
図4および
図5を参照して、電池セラー2からユーザ32に販売された組電池は、ユーザ32の拠点で定置用電池として使用されている。
【0039】
一般に、定置用電池の組電池では、多数のモジュールのうちの一定割合のモジュールに異常(故障)が発生する。したがって、定置用電池の組電池は定期的に点検され、点検の結果、異常が見付かったモジュールは交換される。したがって、メンテナンスのしやすさの観点から、定置用電池の組電池は、異常なモジュールを取り出したり正常なモジュールを組み入れたりすることが容易に構成されている。
【0040】
本実施の形態では、電池セラー2から出荷されてユーザ32の拠点に設置される組電池に、ユーザ32に要求されたランクの中古電池9に加えて、ユーザ32に要求されたランクよりも高いランクの中古電池9を混在させておく(S61)。たとえば、ユーザ32からはCランクの中古電池9しか要求されていない場合であっても、Cランクの中古電池9に加えて、Sランク、Aランクおよび/またはBランクの中古電池9も組電池に混在させておく。これにより、電池セラー2からの組電池の販売先であるユーザ32の拠点に様々なランクの中古電池9を保管できる(S62)。
【0041】
サーバ20は、ユーザ32の拠点に設置された組電池についても監視する。たとえば、サーバ20は、組電池を管理するサーバ(ユーザ32が所有するサーバ)から、組電池を構成する複数の中古電池9の各々の満充電容量を取得することで、各中古電池9のランク付けを適宜更新する。そして、サーバ20は、他のユーザ(たとえば新規顧客)から中古電池9の購入依頼を受けた場合には、電池セラー2に保管された中古電池9、および、ユーザ32の拠点に保管された中古電池9のどちらから、必要なランクの中古電池9を他のユーザの拠点へと出荷するかを検討する。より具体的には、サーバ20は、電池セラー2に保管された中古電池9を出荷する場合に輸送コストおよび/または納期が所定条件を満たすどうかを判定する(S63)。
【0042】
輸送コストおよび/または納期が所定条件を満たす場合(S63においてYES)、サーバ20は、上記他のユーザへの出荷用の中古電池として、電池セラー2に保管された中古電池9を選択する(S64)。たとえば、ユーザ32の拠点から中古電池9を出荷する方が、電池セラー2から中古電池9を出荷しても輸送コストが所定額を下回り、かつ、納期も所定日数を下回るときには、サーバ20は、電池セラー2に保管された中古電池9を選択できる。
【0043】
これに対し、輸送コストおよび/または納期が所定条件を満たさない場合(S63においてNO)、サーバ20は、上記他のユーザへの出荷用の中古電池として、ユーザ32の拠点に保管された中古電池9を選択する(S65)。たとえば、ユーザ32の拠点から中古電池9を出荷する方が、電池セラー2から中古電池9を出荷する場合と比べて、輸送コストを削減できたり納期を短縮できたりするときには、サーバ20は、ユーザ32の拠点に保管された中古電池9を選択できる。なお、中古電池9の出荷後には、新たな中古電池9がユーザ32の拠点へと補充される。
【0044】
図示しないが、上記他のユーザへの出荷用の中古電池として、電池セラー2に保管された中古電池9と、ユーザ32の拠点に保管された中古電池9とを組み合わせてもよい。
【0045】
このように、本実施の形態においては、電池セラー2の運営者にとっては、電池セラー2に加えてユーザ32の拠点も中古電池9の保管スペースとして利用できるため、大量の中古電池9の保管スペースの確保が容易になるとともに、様々なランクの在庫の確保が容易になる。
【0046】
一方、ユーザ32にとっては、自身が要求するよりも高いランクの中古電池9の提供を受けることができるので、組電池を実質的に安く購入できる。また、ユーザ32の組電池において同じ中古電池9を使い続けた場合、時間の経過とともに、または充放電の繰り返しに伴って、各中古電池9の劣化が進行する。これに対し、本実施の形態では、ユーザ32の組電池を構成する中古電池9が適宜交換されるため、劣化の影響を低減できる。
【0047】
なお、ユーザ32の拠点は、本開示に係る「第1のユーザ拠点」に相当する。上記他のユーザの拠点は、本開示に係る「第2のユーザ拠点」に相当する。
【0048】
<電池セラーのシステム構成>
図6は、電池セラー2の電気的な構成を示すシステム構成図である。電池セラー2は、たとえば、保管ユニット21と、AC/DCコンバータ22と、DC/DCコンバータ23と、サーバ20とを備える。なお、
図6では紙面の都合上、保管ユニット21が1つだけ図示されているが、
図2に示したように、典型的な電池セラー2は複数の保管ユニット21を備える。
【0049】
保管ユニット21は複数の中古電池9を格納する。
図6では複数の中古電池9が互いに並列接続されているが、これは例示に過ぎず、複数の中古電池9の接続態様は特に限定されない。複数の中古電池9は、直列接続されていてもよいし、直列接続と並列接続とが組み合わせられていてもよい。保管ユニット21は、電圧センサ211と、電流センサ212と、リレー213とを含む。
【0050】
電圧センサ211は、中古電池9の電圧VBを検出し、その検出値をサーバ20に出力する。電流センサ212は、中古電池に充放電される電流IBを検出し、その検出値をサーバ20に出力する。なお、中古電池9の劣化評価に温度が用いられる場合には、保管ユニット21が温度センサ(図示せず)をさらに含んでもよい。また、各センサは、中古電池9に備え付けのセンサであってもよい。
【0051】
リレー213は、たとえば、中古電池9の正極側に電気的に接続された第1リレーと、中古電池9の負極側に電気的に接続された第2リレーとを含む。これにより、任意の中古電池9を他の中古電池9の充放電中にも電気的に切り離し、その中古電池9を保管ユニット21から取り出すことができる。
【0052】
AC/DCコンバータ22は、電力系統5とDC/DCコンバータ23との間に電気的に接続されている。AC/DCコンバータ22は、サーバ20からの制御指令(充放電指令)に従って、保管ユニットに格納された中古電池9を充放電するための双方向の電力変換動作が可能に構成されている。より具体的には、AC/DCコンバータ22は、電力系統5から供給される交流電力を、中古電池9を充電するための直流電力に変換する。また、AC/DCコンバータ22は、中古電池9から放電される直流電力を、電力系統5に供給するための交流電力に変換する。
【0053】
DC/DCコンバータ23は、AC/DCコンバータ22と保管ユニット21との間に電気的に接続されているとともに、DER6と保管ユニット21との間に電気的に接続されている。DC/DCコンバータ23もAC/DCコンバータ22と同様に、サーバ20からの制御指令(充放電指令)に従って双方向の電力変換動作が可能に構成されている。DC/DCコンバータ23は、AC/DCコンバータ22および/またはDER6からの直流電力を中古電池9に充電させたり、中古電池9に蓄えられた直流電力をAC/DCコンバータ22および/またはDER6に放電させたりすることができる。
【0054】
サーバ20は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリと、各種信号が入出力される入出力ポート(いずれも図示せず)とを含む。サーバ20は、各センサから受ける信号ならびにメモリに記憶されたプログラムおよびマップに基づいて、様々な制御を実行する。サーバ20は、電池データ記憶部201と、劣化評価部202と、電力調整部203と、タイミング調整部204と、表示部205とを含む。
【0055】
電池データ記憶部201は、電池セラー2において中古電池9を管理するために使用される電池データを記憶する。
【0056】
図7は、電池データのデータ構造の一例を示す図である。電池データは、たとえばマップ形式で記憶されている。電池データは、パラメータとして、たとえば、中古電池9を識別するための識別情報(電池ID)と、中古電池9の型番と、製造日と、現在のSOC(State Of Charge)と、満充電容量と、ランクと、劣化評価日時(劣化評価試験を実施した最新の日時)とを含む。
【0057】
本実施の形態において、電池データは、保管拠点(電池セラー2/ユーザ32の拠点)に関する情報と、中古電池9が格納された保管ユニットの識別情報とをさらに含む。なお、電池データは上記以外のパラメータ(中古電池9の内部抵抗、中古電池9の電解液中の塩濃度分布の偏りを示す指標ΣDなど)を含んでもよい。
【0058】
図6を再び参照して、劣化評価部202は、中古電池9の充放電に際して電圧センサ211および電流センサ212によりそれぞれ検出される電圧VBおよび電流IBに基づいて、中古電池9の劣化評価試験を実施する。この評価手法の一例については
図8にて説明する。
【0059】
電力調整部203は、電池セラー2(およびDER6)と電力系統5との間の電力調整を行う。より具体的には、サーバ20は、複数の中古電池9のなかから、事業者サーバ50(
図1参照)からのデマンドレスポンス(DR:Demand Response)要求に応えるために充放電される中古電池9を選択する。電力調整部203は、選択された中古電池9が充放電されるように、リレー213、AC/DCコンバータ22およびDC/DCコンバータ23への指令を出力する。この制御手法の一例については
図9にて説明する。
【0060】
タイミング調整部204は、劣化評価部202による中古電池9の劣化評価試験のタイミングと、電力調整部203による電池セラー2と電力系統5との間の電力調整のタイミングとを調整する。より具体的には、タイミング調整部204は、事業者サーバ50からのDR要求に応答して電池セラー2のDRが行われるタイミングに合わせて中古電池9の劣化評価試験が実施されるように、タイミング調整を行う。なお、電池セラー2のDRに合わせて行われるのは中古電池9の劣化評価試験に限られず、劣化評価試験に加えて性能回復処理(
図3のS4参照)が行われてもよい。
【0061】
表示部205は、電池セラー2の管理者(電池セラー2で働く作業員であってもよい)の操作に応じて電池データ(
図7参照)を表示する。また、表示部205は、劣化評価部202による劣化評価試験の進捗および結果を表示する。これにより、管理者が劣化評価試験の状況を把握できる。さらに、表示部205は、電力調整部203により選択されて充放電されている中古電池9の状態を表示する。これにより、管理者が電池セラー2と電力系統5との間の電力調整の状況を把握できる。
【0062】
なお、サーバ20は、本開示に係る「制御装置」に相当する。AC/DCコンバータ22およびDC/DCコンバータ23は、本開示に係る「電力変換装置」に相当する。
【0063】
<劣化評価>
図8は、中古電池9の劣化評価に関するサーバ20(劣化評価部202)の機能ブロック図である。以下では、説明の簡略化のため、1つの中古電池9に着目して説明する。しかし、実際には、劣化評価が未実施の中古電池9が複数存在する場合には、それらの中古電池9に対して同様の処理が同時に実行され得る。劣化評価部202は、電流積算部71と、OCV(Open Circuit Voltage)算出部72と、SOC変化量算出部73と、満充電容量算出部74と、ランク付け部75とを含む。
【0064】
電流積算部71は、電流センサ212により検出される電流IBに基づいて、電流積算の開始条件が成立してから終了条件が成立するまでの間に中古電池9に充放電された電流の積算値(電流積算量)ΔAh(単位:Ah)を算出する。本実施の形態では前述のように、中古電池9の充放電が事業者サーバ50からのDR要求に応じて実施され、そのDR時に流れる電流が積算される。より具体的には、上げDR(電力需要の増大要請)を行う場合には、電池セラー2の電力需要を増やすために中古電池9が充電され、そのときの充電電流が積算される。一方、下げDRを行う場合には、電池セラー2の電力需要を減らすために中古電池9が放電され、そのときの放電電流が積算される。電流積算部71は、算出された電流積算量ΔAhを満充電容量算出部74に出力する。
【0065】
OCV算出部72は、電流積算開始時における中古電池9のOCVと、電流積算終了時における中古電池9のOCVとを算出する。OCVは、たとえば下記式(1)に従って算出できる。
OCV=VB-ΔVp-IB×R ・・・(1)
【0066】
式(1)では、中古電池9の内部抵抗をRと記載し、分極電圧をVpと記載している。電流積算開始時(充放電の開始直前)には電流IB=0である。また、電流積算開始前に中古電池9が充放電されずに放置されていた場合には分極電圧Vp≒0と近似できる。したがって、電流積算開始時におけるOCVは、電圧センサ211により検出される電圧VBに基づいて算出できる。一方、内部抵抗Rについては電圧VBと電流IBとの間の関係(オームの法則)から特定できる。また、中古電池9の充放電時が一定電流で行われる場合には、電流と分極電圧Vpとの間の関係を事前に測定しておくことで、電流センサ212により検出される電流IBから分極電圧Vpも特定できる。したがって、電流積算終了時における中古電池9のOCVも電圧VBおよび電流IBに基づいて算出できる。OCV算出部72は、算出された2通りのOCVをSOC変化量算出部73に出力する。
【0067】
SOC変化量算出部73は、2通りのOCVに基づいて、電流積算開始時から電流積算終了時までの間の中古電池9のSOC変化量ΔSOCを算出する。SOC変化量算出部73は、OCVのSOC依存性を示す特性曲線(OCV-SOCカーブ)を予め有している。したがって、SOC変化量算出部73は、OCV-SOCカーブを参照することによって、電流積算開始時におけるOCVに対応するSOCと、電流積算終了時におけるOCVに対応するSOCとを読み出し、これらのSOC間の差をΔSOCとして算出できる。SOC変化量算出部73は、算出されたΔSOCを満充電容量算出部74に出力する。
【0068】
満充電容量算出部74は、電流積算部71からのΔAhと、SOC変化量算出部73からのΔSOCとに基づいて、中古電池9の満充電容量Cを算出する。詳細には、中古電池9の満充電容量Cは、ΔSOCに対するΔAhとの比率と、ΔSOC=100%に対する満充電容量Cとの比率とが等しいとする下記式(2)に従って算出できる。なお、初期状態における満充電容量C0は中古電池9の仕様から既知であるため、満充電容量算出部74は、満充電容量Cから容量維持率Qをさらに算出してもよい(Q=C/C0)。満充電容量算出部74は、算出された満充電容量Cをランク付け部75に出力する。
C=ΔAh/ΔSOC×100 ・・・(2)
【0069】
ランク付け部75は、満充電容量Cに応じて中古電池9をランク付けする。ランク付け部75は、ランク付けの日時を劣化評価日時として電池データ(
図7参照)に記録できる。
【0070】
中古電池9のランクは、その中古電池9の電池ID、保管位置などとともに表示部205に表示される。これにより、販売先3から中古電池9の購入の要望を受けた場合に、電池セラー2で働く作業員が販売先3の要望に合うランクの中古電池9を保管位置から取り出すことができる。販売する中古電池については保管ユニット21から適宜取り出すことで、保管ユニット21の空きがなくなる状況を抑制できる。
【0071】
なお、上記の満充電容量Cの算出手法は一例に過ぎない。満充電容量Cの算出には、中古電池9の充放電に伴って検出される電圧VBおよび電流IBを用いる手法であれば、任意の手法を採用できる。また、満充電容量Cに代えてまたは加えて他の特性(中古電池9の内部抵抗、リチウムイオン電池における電解液濃度の偏りを表す指標ΣDなど)に基づいて中古電池9のランクを決定してもよい。また、ランク付け部75は、中古電池9が充放電された時間の長さ、および/または、中古電池9が充放電された回数に応じて、中古電池9のランクを決定してもよい。ランク付け部75は、精度は多少低下する可能性はあるものの、中古電池9の製造時からの経過時間に応じて中古電池9のランクを決定してもよい。ランク付け部75は、上記の各要素(満充電容量C、内部抵抗R、指標ΣD、充放電時間、充放電回数、製造時からの経過時間など)を組み合わせて中古電池9のランクを決定することも可能である。
【0072】
<電力調整>
図9は、電池セラー2と電力系統5との間の電力調整に関するサーバ20(電力調整部203)の機能ブロック図である。この例では、理解を容易にするため、DER6が発電型DER(特に、太陽光発電設備などの自然変動電源)である状況を想定して説明する。電力調整部203は、全体調整量算出部81と、DER調整量算出部82と、電池セラー調整量算出部83と、中古電池選択部84と、変換演算部85と、指令生成部86とを含む。
【0073】
全体調整量算出部81は、事業者サーバ50からDR要求を受け、電池セラー2およびDER6を用いて所定期間中(たとえば30分間)に電力調整を要する全体の電力量を算出する。この電力量を以下、全体調整量と呼び、kWh(total)とも記載する。全体調整量算出部81は、算出されたkWh(total)を電池セラー調整量算出部83に出力する。
【0074】
DER調整量算出部82は、各DER6の運転状態(より詳細には、所定期間中に各DER6で発電される予想電力量)を、そのDER6との通信により取得する。この電力量を以下、DER調整量と呼び、kWh(DER)とも記載する。DER調整量算出部82は、取得されたkWh(DER)を電池セラー調整量算出部83に出力する。
【0075】
電池セラー調整量算出部83は、全体調整量算出部81からのkWh(total)と、DER調整量算出部82からのkWh(DER)とに基づいて、電池セラー2を用いた電力調整を要する電力量を算出する。この電力量を以下、電池セラー調整量と呼び、kWh(bat)とも記載する。電池セラー調整量算出部83は、たとえば、上記2つの電力量の差であるΔkWh=kWh(total)-kWh(DER)を電池セラー調整量kWh(bat)として算出できる。電池セラー調整量算出部83は、算出されたkWh(bat)を中古電池選択部84に出力する。
【0076】
中古電池選択部84は、複数の保管ユニット21に格納された多数の中古電池9の各々について、充放電可能な電力量を把握している(
図7の電池データ参照)。中古電池選択部84は、電池セラー調整量算出部83からのkWh(bat)に基づいて、多数の中古電池9のなかから電力調整に使用する中古電池を選択する。kWh(bat)>0である場合、電池セラー2からの放電により電力系統5の電力不足分が補われる。したがって、中古電池選択部84は、kWh(bat)以上の電力量を放電可能な数量の中古電池9を選択する。一方、kWh(bat)<0である場合には、電池セラー2への充電により電力系統5の電力余剰分が吸収される。したがって、中古電池選択部84は、kWh(bat)(絶対値)以上の電力量を充電可能な数量の中古電池9を選択する。中古電池選択部84は、選択された中古電池9と、選択された各中古電池9に割り当てられる電力量(各中古電池9により調整される電力量)とを変換演算部85に出力する。
【0077】
変換演算部85は、中古電池選択部84により選択された中古電池9毎に、その中古電池9に充放電される電力を算出する。より具体的には、変換演算部85は、中古電池9毎に、その中古電池9により調整される電力量(単位:kWh)を電力調整の残り時間を用いて電力(単位:kW)へと換算する。一例として、ある中古電池9に割り当てられた電力調整量が10kWhであり、電力調整の残り時間が15分である場合、10kWh×(60分/15分)=40kWと算出できる。変換演算部85は、各中古電池9に充放電される電力を指令生成部86に出力する。
【0078】
指令生成部86は、変換演算部85による演算結果に基づいて、AC/DCコンバータ22およびDC/DCコンバータ23への充放電指令を生成するとともに、リレー213への開閉指令を生成する。より詳細には、また、指令生成部86は、選択された中古電池9がDC/DCコンバータ23に電気的に接続される一方で、非選択の中古電池9がDC/DCコンバータ23から電気的に遮断されるように開閉指令を生成する。指令生成部86は、選択された中古電池9に割り当てられた電力の合計が充放電されるように充放電指令を生成する。
【0079】
なお、
図9に示した電力調整手法も例示に過ぎないことを確認的に記載する。この例では、DER6が発電型DER、特に発電量を制御できない自然変動電源である状況を想定した。そのため、電池セラー調整量算出部83は、全体調整量kWh(total)からDER調整量kWh(DER)を差し引いた差分kWh(total)-kWh(DER)に基づいて電池セラー調整量kWh(bat)を算出する。つまり、この例では、DER調整量kWh(DER)の決定後に、電池セラー調整量kWh(bat)によって最終的な電力調整が行われる。しかし、たとえばDER6が蓄電型DERを含む場合には、電池セラー調整量算出部83は、全体調整量kWh(total)を、DER調整量kWh(DER)と電池セラー調整量kWh(bat)とに分配し、DER調整量kWh(DER)および電池セラー調整量kWh(bat)の両方を用いて電力調整を行ってもよい。
【0080】
以上のように、本実施の形態においては、保管ユニット21に格納された状態で各中古電池9の劣化度合いが評価される。これにより、中古電池9の保管期間を時間的に有効活用できる。さらに、中古電池9の劣化度合いを評価するための中古電池9の充放電が基本的には事業者サーバ50からのDR要求に応じて行われる。また、中古電池9の数量が多い場合には大電力が充放電されるところ、その大電力が事業者サーバ50からのDR要求に応じて電池セラー2と電力系統5との間で授受される。これにより、電池セラー2の運営会社は、電力会社から対価(インセンティブ)の支払いを受けることができるので、その対価を電池セラー2のランニングコストとして使用できる。あるいは、電池セラー2の運営会社は、電池セラー2の初期投資(イニシャルコスト)の一部を回収できる。これにより、中古電池9の保管期間を金銭的にも有効活用できる。
【0081】
さらに、本実施の形態では、電池セラー2に加えて、電池セラー2からの組電池の販売先であるユーザ32の拠点も中古電池9の保管スペースとして利用される。これにより、中古電池9が大量に回収された場合に保管スペースが不足する事態を回避できる。
【0082】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0083】
100 電池物流モデル、1 回収業者、2 電池セラー、3 販売先、31 販売店、32 ユーザ、33 販売店、4 リサイクル工場、5 電力系統、50 事業者サーバ、6 分散型エネルギーリソース(DER)、9 中古電池、20 サーバ、201 電池データ記憶部、202 劣化評価部、203 電力調整部、204 タイミング調整部、205 表示部、21 保管ユニット、211 電圧センサ、212 電流センサ、213 リレー、22 AC/DCコンバータ、23 DC/DCコンバータ、71 電流積算部、72 OCV算出部、73 SOC変化量算出部、74 満充電容量算出部、75 ランク付け部、81 全体調整量算出部、82 調整量算出部、83 電池セラー調整量算出部、84 中古電池選択部、85 変換演算部、86 指令生成部。