(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】排ガス浄化材料及び排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20241210BHJP
B01J 35/40 20240101ALI20241210BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241210BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20241210BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B01J23/63 A
B01J35/40 ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
(21)【出願番号】P 2021050112
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島野 紀道
(72)【発明者】
【氏名】吉永 泰三
(72)【発明者】
【氏名】白川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】高木 信之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真秀
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/021512(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/175142(WO,A1)
【文献】特開2016-137445(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03736037(EP,A1)
【文献】特表2021-531957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0134313(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105817223(CN,A)
【文献】特表2022-531543(JP,A)
【文献】特表2021-527555(JP,A)
【文献】特表2018-510053(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107438483(CN,A)
【文献】国際公開第2019/202949(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/00-23/96
B01J 35/00-35/80
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス浄化材料であって、
金属酸化物粒子と、
前記金属酸化物粒子に担持された貴金属粒子と、
を含み、
前記貴金属粒子の粒径分布の平均が
4~
14nmであり且つ標準偏差が1.6nm未満であ
り、
前記金属酸化物粒子が、アルミナ、セリア、及びジルコニアを含む複合酸化物粒子であり、
前記貴金属粒子がロジウム粒子である、排ガス浄化材料。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子と前記貴金属粒子の総重量を基準として、前記貴金属粒子の割合が、0.01~2重量%である、請求項1に記載の排ガス浄化材料。
【請求項3】
前記貴金属粒子の粒径分布の平均が6.17~13.16nmである、請求項1又は2に記載の排ガス浄化材料。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子が、アルミナ、セリア、ジルコニア、イットリア、ランタナ、及び酸化ネオジムを含む複合酸化物の粒子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化材料。
【請求項5】
基材と、
前記基材上に配置された請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化材料と、
を含む、排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化材料及び排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両で使用される内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分の排出量の規制は年々強化されており、これらの有害成分を除去するために、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が触媒として用いられている。
【0003】
一方、資源リスクの観点から、貴金属の使用量を低減させることが求められている。排ガス浄化装置において、貴金属の使用量を低減させる方法の一つとして、貴金属を担体上に微細な粒子として担持することが知られている。例えば、特許文献1には、酸化物担体に貴金属粒子を担持させて貴金属担持触媒とする工程と、還元雰囲気中で貴金属担持触媒を加熱処理して、貴金属の粒径を所定の範囲に制御する工程とを含む、触媒の製造方法が開示されている。特許文献2には、酸化物担体粒子、及び前記酸化物担体粒子に担持されている貴金属粒子を有し、前記貴金属粒子の質量が、前記酸化物担体粒子の質量を基準として5質量%以下であり、透過型電子顕微鏡により測定された前記貴金属粒子の平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、かつ標準偏差σが0.8nm以下である、担持触媒粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-147256号公報
【文献】国際公開第2020/175142号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の貴金属粒子は、高温に対する耐久性が十分でなく、高温条件下において触媒活性が低下することがあった。
【0006】
そこで、本発明は、高温条件に曝された後も高効率に有害成分を除去することができる排ガス浄化材料及び排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、排ガス浄化材料であって、
金属酸化物粒子と、
前記金属酸化物粒子に担持された貴金属粒子と、
を含み、
前記貴金属粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmであり且つ標準偏差が1.6nm未満である、排ガス浄化材料が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様に従えば、
基材と、
前記基材上に配置された第1の態様の排ガス浄化材料と、
を含む、排ガス浄化装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排ガス浄化材料及び排ガス浄化装置は、高温条件に曝された後も高効率に有害成分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1~4及び比較例1~3のペレットの初期Rh粒子の粒径分布の平均とNOx-T50の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図面において、同一の部材又は同様の機能を有する部材には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率が説明の都合上実際の比率とは異なったり、部材の一部が図面から省略されたりする場合がある。また、本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。
【0012】
(1)排ガス浄化材料
実施形態に係る排ガス浄化材料は、金属酸化物粒子と、前記金属酸化物粒子に担持された貴金属粒子と、を含む。
【0013】
金属酸化物粒子としては、例えば、元素周期表の3族、4族及び13族の金属、並びにランタノイド系の金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物の粒子が挙げられる。金属酸化物粒子が2種以上の金属の酸化物を含む場合、金属酸化物粒子は、2種以上の金属酸化物の混合物であってもよいし、2種以上の金属を含む複合酸化物であってもよいし、あるいは、少なくとも1種の金属酸化物と少なくとも1種の複合酸化物の混合物であってもよい。
【0014】
金属酸化物粒子は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物、好ましくはY、La、Ce、Ti、Zr及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物、より好ましくは、アルミナ(Al2O3)、セリア(CeO2)、及びジルコニア(ZrO2)からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物、さらに好ましくは、アルミナ、セリア、及びジルコニアを含む複合酸化物、特にアルミナ、セリア、ジルコニア、イットリア(Y2O3)、ランタナ(La2O3)、及び酸化ネオジム(Nd3O3)を含む複合酸化物の粒子であってよい。
【0015】
金属酸化物粒子は、酸素過剰雰囲気下で雰囲気中の酸素を吸蔵し、酸素欠乏雰囲気下で酸素を放出するOSC(Oxygen Storage Capacity)材として機能してもよい。
【0016】
金属酸化物粒子は、目的に応じて任意の粒径を有してよい。
【0017】
金属酸化物粒子に担持されている貴金属粒子は、排ガス中の有害成分を除去する触媒として機能する。貴金属粒子は、Pt、Pd、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種の金属の粒子であってよく、特に、Rh粒子であってよい。
【0018】
貴金属粒子の粒径分布の平均は、1.5~18nmの範囲内である。一般に、貴金属粒子の粒径が小さいほど、貴金属粒子の比表面積が大きいため、高い触媒性能を示す。しかし、粒径が過度に小さい貴金属粒子は、高温条件下で凝集等により粗大化して、触媒性能の劣化を引き起こす傾向がある。本実施形態では、貴金属粒子の粒径分布の平均が1.5nm以上であることにより、高温条件下での貴金属粒子の粗大化が抑制され、触媒性能の低下が抑制される。また、貴金属粒子の粒径分布の平均が18nm以下であることにより、貴金属粒子の比表面積が十分に大きくなるため、貴金属粒子が高い触媒性能を発揮することができる。貴金属粒子の粒径分布の平均は、3~17nmの範囲内、4~14nmの範囲内であってもよい。
【0019】
また、貴金属粒子の粒径分布の標準偏差は、1.6nm未満である。貴金属粒子の粒径分布の標準偏差が1.6nm未満であることにより、後述する実施例で示すように、高温条件に曝された後も高効率に有害成分を除去することができる。貴金属粒子の粒径分布の標準偏差が1.6nm未満であることにより、粗大な貴金属粒子の数、及び高温条件下で粗大化しやすい微小な貴金属粒子の数が少なくなるため、高温条件に曝された後の貴金属粒子の比表面積が十分大きく、高い触媒性能を発揮することができる。貴金属粒子の粒径分布の標準偏差は、1nm以下であってもよい。
【0020】
なお、本願において、貴金属粒子の粒径分布は、透過型電子顕微鏡(TEM)により得た画像に基づき、50個以上の貴金属粒子の投影面積円相当径を測定することによって得られる、個数基準の粒径分布である。
【0021】
貴金属粒子の担持量、すなわち、金属酸化物粒子と貴金属粒子の総重量を基準とする貴金属粒子の割合は、0.01~2重量%の範囲内であってよい。貴金属粒子の割合が0.01重量%以上であることにより、十分な量の貴金属粒子が存在するため排ガス中の有害成分を除去することができる。貴金属粒子の割合が2重量%以下であることにより、貴金属粒子が金属酸化物粒子上に十分に疎に担持されるため、高温条件下での貴金属粒子の粗大化が抑制される。金属酸化物粒子と貴金属粒子の総重量を基準とする貴金属粒子の割合は、0.2~1.8重量%の範囲内であってもよい。
【0022】
貴金属粒子を金属酸化物粒子に担持する方法は特に限定されない。例えば、金属酸化物粒子、貴金属粒子の分散液、及び水を混合し、得られた混合物を乾燥させ、次いで焼成することによって、貴金属粒子を金属酸化物粒子に担持することができる。
【0023】
貴金属粒子の分散液は、例えば、貴金属の塩化物及びポリビニルピロリドンをエチレングリコール中に溶解し、この溶液に水酸化ナトリウムを加えて加熱することによって調製することができる。金属酸化物粒子に担持される貴金属粒子の平均粒径は、水酸化ナトリウムの添加量によって制御することができる。
【0024】
実施形態に係る排ガス浄化材料は、別の粒子をさらに含んでもよい。別の粒子としては、OSC材として機能する粒子が挙げられる。例えば、セリア、セリアを含む複合酸化物(例えば、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物(ACZ複合酸化物))等がOSC材として機能し得る。特に、高い酸素吸蔵能を有し且つ比較的安価であることから、CZ複合酸化物が好ましい。CZ複合酸化物を、ランタナ、イットリア等とさらに複合化させた酸化物も、OSC材として用いることができる。
【0025】
排ガス浄化材料は、粉状であってもよいし、プレス成型等によりペレット状等の任意の形状に成型されていてもよい。
【0026】
(2)排ガス浄化装置
上記実施形態の排ガス浄化材料は、排ガス浄化装置に用いることができる。排ガス浄化装置は、基材と、基材上に配置された排ガス浄化材料とを含む。排ガス浄化材料は、バインダー、添加物等とともに、基材上に配置されてよい。
【0027】
基材としては、特に限定されないが、例えばハニカム構造を有するモノリス基材を用いることができる。基材は、例えば、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の高い耐熱性を有するセラミックス材料、ステンレス鋼等の金属箔からなるメタル材料から形成されてよい。コストの観点から、基材はコージェライト製であることが好ましい。
【0028】
基材が複数の細孔を有する多孔質体である場合、排ガス浄化材料は、基材の細孔を画成する内表面に配置されてもよい。つまり、本願において「基材上に配置される」とは、基材の外表面上に配置されることと、基材の内表面上に配置されることのいずれをも包含する。
【0029】
排ガス浄化材料は、例えば以下のようにして、基材上に配置することができる。まず、排ガス浄化材料を含むスラリーを調製する。スラリーは、バインダー、添加物等をさらに含んでよい。スラリーの性状、例えば、粘性、固形成分の粒子径等は、適宜調整してよい。調製したスラリーを、基材の所定の領域に塗布する。例えば、基材の所定の領域をスラリーに浸漬し、所定の時間が経過した後、スラリーから基材を引き上げることにより、基材の所定の領域にスラリーを塗布できる。あるいは、基材にスラリーを流し込み、ブロアーで風を吹きつけてスラリーを塗り広げることにより、スラリーを基材に塗布してもよい。次に、所定の温度及び時間でスラリーを乾燥及び焼成する。それにより、排ガス浄化材料が基材上に配置される。
【0030】
実施形態に係る排ガス浄化装置は、内燃機関を備える種々の車両に適用され得る。
【0031】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
<実施例1>
(1)試料の作製
エチレングリコールにポリビニルピロリドン及び塩化ロジウムを溶解させた。得られた溶液に水酸化ナトリウムを加えた。この溶液を一晩200℃に加熱した。それにより、ロジウム粒子分散液(Rh粒子分散液)を得た。
【0034】
蒸留水に、Rh粒子分散液、並びにAl2O3、CeO2、ZrO2、La2O3、Y2O3、及びNd2O3の複合酸化物粒子(以下、適宜「ACZ粒子」と表記する。ACZ粒子中の各成分の重量比は、Al2O3:30重量%、CeO2:20重量%、ZrO2:44重量%、La2O3:2重量%、Y2O3:2重量%、Nd2O3:2重量%であった)を加え、得られた混合物を攪拌しながら加熱して乾燥させた。得られた粒子を120℃に保たれた乾燥機中に2時間置いて水分をさらに除去し、次いで電気炉中で500℃に加熱して2時間焼成した。
【0035】
焼成した粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、ACZ粒子にRh粒子が担持されたことを確認した。また、TEM像に基づき、ACZ粒子に担持されたRh粒子(初期Rh粒子)の粒径分布を求めた。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差を表1に示す。また、焼成した粒子中のRh粒子の重量割合(すなわち、ACZ粒子とRh粒子の総重量を基準とする、Rh粒子の重量割合)は、表1に記載の通りであった。
【0036】
焼成した粒子に、これと同じ重量のCeO2及びZrO2の複合酸化物粒子(以下、適宜「CZ粒子」と表記する。CZ粒子中の成分の重量比は、CeO2:46重量%、ZrO2:54重量%であった)を加え、乳鉢中で粉砕及び混合した。得られた粉末を2g量り取り、成型してペレットを得た。
【0037】
(2)耐久試験後のRh粒子の平均粒径の測定
ペレットを1100℃に加熱しながら、5時間にわたり、ストイキ(空燃比A/F=14.6)の混合気と酸素過剰(リーン:A/F>14.6)の混合気に、時間比1:1の一定の周期で交互に曝した。その後、一酸化炭素パルス法により、ペレット中のRh粒子の平均粒径を求めた。結果を表1中に示す。
【0038】
(3)排ガス浄化性能評価
耐久試験後のペレットに表2に記載の組成のガスを15L/分の流量で流通させながら、ペレットを600℃に加熱して5分間維持した後、150℃まで冷ました。その後、ガスの流通を継続しながら、ペレットを20℃/分の速度で600℃まで昇温させ、ガス中のNOxの50%が除去されたときのペレットの温度(適宜「NOx-T50」と表記する)を測定した。結果は、表1に記載の通りであった。
【0039】
<比較例1>
Rh粒子分散液の代わりに、硝酸ロジウム水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様にしてペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに、焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表1に記載の通りであった。
【0040】
実施例1と同様にして、ペレットの耐久試験後のRh粒子の平均粒径の測定、及びペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
<比較例2>
実施例1で調製したRh粒子分散液に代えて、以下のようにして調製したRh粒子分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてペレットを作製した。50mLのイオン交換水に0.2gの硝酸ロジウム(III)を溶解させ、硝酸ロジウム水溶液(pH1.0)を調製した。また、濃度175g/Lの水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(pH14)を用意した。クリアランス調節部材として2枚の平板を有する反応器(マイクロリアクター)を用いて、硝酸ロジウム水溶液と水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液を反応させた。具体的には、クリアランスを10μmに設定した反応場に、硝酸ロジウム水溶液と水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液を、水酸化テトラエチルアンモニウム:硝酸ロジウム=18:1のモル比で導入して反応させて、Rh粒子分散液を調製した。得られたRh粒子分散液のpHは14であった。
【0042】
初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに、焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表1に記載の通りであった。
【0043】
実施例1と同様にして、ペレットの耐久試験後のRh粒子の平均粒径の測定、及びペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
<実施例2>
Rh粒子分散液の調製に用いた水酸化ナトリウムの量を変更したこと以外は実施例1と同様にしてペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに、焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表1に記載の通りであった。
【0045】
実施例1と同様にして、ペレットの耐久試験後のRh粒子の平均粒径の測定、及びペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
<実施例3、4、及び比較例3>
Rh粒子分散液の調製に用いた水酸化ナトリウムの量を変更したこと以外は実施例1と同様にしてペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに、焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表1に記載の通りであった。
【0047】
実施例1と同様にして、ペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
<比較例4>
実施例1と同様にして、蒸留水、Rh粒子分散液、及びACZ粒子の混合物を調製し、乾燥及び焼成した。得られた粒子を900℃に加熱しながら、5時間にわたり、ストイキ(空燃比A/F=14.6)の混合気と酸素過剰(リーン:A/F>14.6)の混合気に、時間比1:1の一定の周期で交互に曝した。
【0049】
次いで、混合気に曝露した粒子をTEMで観察した。TEM像に基づき、ACZ粒子に担持されているRh粒子(初期Rh粒子)の粒径分布を求めた。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差は表1に記載の通りであった。また、粒子中のRh粒子の重量割合(すなわち、ACZ粒子とRh粒子の総重量を基準とする、Rh粒子の重量割合)は、表1に記載の通りであった。
【0050】
混合気に曝露した粒子に、これと同じ重量のCZ粒子を加え、乳鉢中で粉砕及び混合した。得られた粉末を2g量り取り、成型してペレットを得た。
【0051】
実施例1と同様にして、ペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
<実施例5>
Rh粒子分散液とACZ粒子の混合比を変更したこと以外は実施例1と同様にしてペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに、焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表1に記載の通りであった。
【0053】
実施例1と同様にして、ペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
<比較例5>
Rh粒子分散液とACZ粒子の混合比を変更したこと以外は比較例2と同様にしてペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに、焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表1に記載の通りであった。
【0055】
実施例1と同様にして、ペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
図1に、実施例1~4、及び比較例1~3における初期Rh粒子の粒径分布の平均とNOx-T50の関係を示す。初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmの範囲内であった実施例1~4におけるNOx-T50は、比較例1~3のNOx-T50よりも低く、実施例1~4のペレットがより高いNOx還元性能を有していたことが示された。実施例1、2及び比較例1、2における耐久試験後のRh粒子の平均粒径の測定結果(表1参照)から、初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5nm以上であった実施例1、2では、初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5nm未満であった比較例1、2と比べて、耐久試験によるRh粒子の粗大化が抑えられたことが示された。したがって、初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5nm以上であった実施例1~4では、Rh粒子の粗大化が抑制され、それによりRh粒子の比表面積の減少が抑えられたために、高いNOx還元性能が得られたと考えられる。また、初期Rh粒子の粒径分布の平均が18nm超であった比較例3では、耐久試験前の時点でRh粒子の比表面積が小さかったため、NOx還元性能が劣っていたと考えられる。
【0057】
比較例4では、実施例1~4と同様に初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmの範囲内であったが、初期Rh粒子の粒径分布の標準偏差が1.6nm以上であり、実施例1~4よりも大きかった(表1参照)。これは、比較例4のペレットには、実施例1~4のペレットと比べて、微小なRh粒子がより多く含まれていたことを示している。比較例4では、耐久試験により微小なRh粒子が粗大化したために、耐久試験後のRh粒子の比表面積が実施例1~4よりも小さくなり、その結果、実施例1~4よりもNOx還元性能が低かったと考えられる。
【0058】
同様に、初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmの範囲内である実施例5のペレットは、初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5nm未満である比較例5のペレットより低いNOx-T50、すなわち、より高いNOx還元性能を示した。なお、実施例5と比較例5のNOx還元性能の差は、実施例1と比較例2のNOx還元性能の差よりも小さかった。このことは、以下のことを示唆している。すなわち、焼成した粒子中のRh粒子の重量割合が0.01~2重量%、特に0.2~1.8重量%の範囲内である場合は、初期Rh粒子の粒径分布の平均を1.5nm以上とすることにより、十分なNOx還元性能向上効果が得られる。しかし、焼成した粒子中のRh粒子の重量割合がより大きい(例えば2重量%を超える)場合は、初期Rh粒子の粒径分布の平均を1.5nm以上としても、十分なNOx還元性能向上効果が得られないおそれがある。
【0059】
【0060】