(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】燃料電池触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/92 20060101AFI20241210BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20241210BHJP
B01J 35/58 20240101ALI20241210BHJP
B01J 37/06 20060101ALI20241210BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20241210BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20241210BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20241210BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20241210BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01M4/92
B01J23/42 M
B01J35/58 J
B01J37/06
B01J37/08
B01J37/16
H01M4/86 M
H01M4/88 K
H01M4/90 M
(21)【出願番号】P 2021063103
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】桑木 聴
(72)【発明者】
【氏名】長井 智幸
(72)【発明者】
【氏名】草野 巧巳
(72)【発明者】
【氏名】吉宗 航
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0226120(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0099109(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0099069(US,A1)
【文献】Efficient synthesis of Pt-Co nanowires as cathode catalysis for proton exchange membrane fuel cells,RSC Advances,The Royal Society of Chemistry,2020年02月10日,10,p.6287-6296
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86-4/98
B01J 23/42
B01J 35/58
B01J 37/06
B01J 37/08
B01J 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えた燃料電池触媒。
(1)前記燃料電池触媒は、
導電性を有する担体と、
前記担体表面に担持されたPtを含むナノワイヤ粒子と
を備えている。
(2)前記ナノワイヤ粒子は、
短径dが0.8nm以上10.0nm以下であり、
長さが5nm以上50nm以下であり、
担持率が15mass%以上50mass%以下である。
(3)前記燃料電池触媒は、
Ptを含む球状粒子の含有量(=前記ナノワイヤ粒子と前記球状粒子の総個数に対する前記球状粒子の個数の割合)が10%以下であり、
MA(Pt質量当たりの活性)が900A/g
Pt以上30000A/g
Pt以下である。
【請求項2】
ECSA(有効電気化学表面積)が40m
2/g
Pt以上200m
2/g
Pt以下である請求項1に記載の燃料電池触媒。
【請求項3】
SA(比活性)が2000μA/cm
2以上15000μA/cm
2以下である請求項1又は2に記載の燃料電池触媒。
【請求項4】
卑金属元素の含有量が0.01mass%未満である請求項1から3までのいずれか1項に記載の燃料電池触媒。
【請求項5】
以下の構成を備えた燃料電池触媒の製造方法。
(1)前記燃料電池触媒の製造方法は、
Pt前駆体、W(CO)
6及び/又はMo(CO)
6、並びに、含窒素界面活性剤をオレイルアミン中に溶解又は分散させ、前駆体溶液を得る第1工程と、
前記前駆体溶液を100℃以上120℃以下で保持することにより、ナノワイヤ粒子の表面が前記オレイルアミンで修飾されたナノワイヤ粒子前駆体を得る第2工程と、
前記ナノワイヤ粒子前駆体を洗浄することにより、表面を修飾している前記オレイルアミンの一部が除去された前記ナノワイヤ粒子を得る第3工程と、
導電性を有する担体の表面に、前記ナノワイヤ粒子を担持させ、前記担体表面に前記ナノワイヤ粒子が担持された触媒前駆体を得る第4工程と、
前記触媒前駆体を洗浄することにより、前記ナノワイヤ粒子の表面に残存している前記オレイルアミンをさらに除去し、請求項1から4までのいずれか1項に記載の燃料電池触媒を得る第5工程と
を備えている。
(2)前記第3工程は、エタノール、又は、シクロヘキサン/エタノール混合溶媒を用いて、前記ナノワイヤ粒子前駆体の洗浄を1回行う工程からなる。
(3)前記第5工程は、ヘキサン、芳香族炭化水素、シクロパラフィン、及び、n-パラフィンからなる群から選ばれるいずれか1以上のみからなる溶媒を用いて、前記触媒前駆体を3回以上洗浄する工程からなる。
【請求項6】
前記第1工程は、前記オレイルアミン中に卑金属元素前駆体をさらに溶解又は分散させるものからなる請求項5に記載の燃料電池触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池触媒及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、担体の表面にPtを含むナノワイヤ粒子が高密度に担持された燃料電池触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、電解質膜の両面に触媒を含む電極(触媒層)が接合された膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly,MEA)を備えている。触媒層の外側には、通常、ガス拡散層が配置されている。ガス拡散層の外側には、さらにガス流路を備えた集電体(セパレータ)が配置される。固体高分子形燃料電池は、通常、このようなMEA、ガス拡散層、及び集電体からなる単セルが複数個積層された構造(燃料電池スタック)を備えている。
【0003】
固体高分子形燃料電池の電極触媒には、通常、担体表面に触媒粒子が担持されたものが用いられる。触媒粒子には、Pt、Pd、Ruなどの貴金属、又はこれらを含む合金が用いられる。電極反応は、触媒粒子の表面において起こるので、担体表面に微細な触媒粒子を高分散に担持させると、貴金属の利用率が向上し、高価な貴金属の使用量の低減が可能になる。そのため、微細な触媒粒子の製造方法及び担持方法に関し、従来から種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、
(a)Pt(acac)2、Ni(acac)2、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、及びMo(CO)6をオレイルアミン(OA)中に溶解させ、
(b)得られた均一溶液をオイルバス中において160℃で2時間加熱し、
(c)コロイド生成物を遠心分離により捕集し、シクロヘキサン/エタノール(1:9、v/v)混合液で3回洗浄する
Ptナノワイヤの製造方法が開示されている。
【0005】
さらに、非特許文献1には、
(a)このようにして得られたPtナノワイヤをカーボン担体表面に担持させ、
(b)Ptナノワイヤ/Cをシクロヘキサン/エタノール混合液で3回洗浄する
ことにより得られる触媒が開示されている。
【0006】
同文献には、
(A)このような方法により、直径が0.8nmであり、アスペクト比が約22.5であるPtナノワイヤが得られる点、及び、
(B)Ptナノワイヤ/Cの質量活性(MA)、比活性(SA)、及び電気化学的有効表面積(ECSA)は、それぞれ、1.06A/mg、1.39mA/cm2、及び76.4m2/gである点、
が記載されている。
【0007】
非特許文献1に記載の方法を用いると、Ptナノワイヤを合成することができる。しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、Ptナノワイヤを凝集させることなく、Ptナノワイヤを担体表面に高担持密度で担持することはできない。また、非特許文献1に記載の方法により得られるPtナノワイヤ/C触媒は、相対的に触媒活性が低い。
また、Ni(acac)2等のNi化合物は、合金効果と面制御によるナノワイヤ触媒の高活性化のために必要な成分であるが、製造条件によっては、触媒中にNi又はNi化合物が残存することがある。Ptと合金化したNiは、Ptの触媒活性を向上させる作用があるが、触媒中に含まれるNi、Ni化合物、及びPtと合金化したNiは、燃料電池環境下では容易に溶出し、カチオンコンタミの原因となる。
【0008】
さらに、非特許文献1に記載の方法において、Ni化合物の添加を省略すると、Niを含まないPtナノワイヤが生成する。しかし、同文献に記載の方法において、単にNi化合物の添加を省略するだけでは、短径及び長径が揃ったPtナノワイヤは得られない。また、Ptナノワイヤに加えて、Ptを含む球状粒子が相対的に多量に副生するという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Kezhu Jiang et al., Sci. Adv. 2017;3:e1601705
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、担体の表面にPtを含むナノワイヤ粒子が高密度に担持され、ナノワイヤ粒子の凝集が少なく、触媒被毒による活性低下が少なく、かつ、Ptを含む球状粒子が少ない燃料電池触媒及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、金属イオンの溶出の少ない燃料電池触媒及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池触媒は、以下の構成を備えている。
(1)前記燃料電池触媒は、
導電性を有する担体と、
前記担体表面に担持されたPtを含むナノワイヤ粒子と
を備えている。
(2)前記ナノワイヤ粒子は、
短径dが0.8nm以上10.0nm以下であり、
担持率が15mass%以上50mass%以下である。
(3)前記燃料電池触媒は、Ptを含む球状粒子の含有量(=前記ナノワイヤ粒子と前記球状粒子の総個数に対する前記球状粒子の個数の割合)が10%以下である。
【0012】
本発明に係る燃料電池触媒の製造方法は、以下の構成を備えている。
(1)前記燃料電池触媒の製造方法は、
Pt前駆体、W(CO)6及び/又はMo(CO)6、並びに、含窒素界面活性剤をオレイルアミン中に溶解又は分散させ、前駆体溶液を得る第1工程と、
前記前駆体溶液を100℃以上120℃以下で保持することにより、ナノワイヤ粒子の表面が前記オレイルアミンで修飾されたナノワイヤ粒子前駆体を得る第2工程と、
前記ナノワイヤ粒子前駆体を洗浄することにより、表面を修飾している前記オレイルアミンの一部が除去された前記ナノワイヤ粒子を得る第3工程と、
導電性を有する担体の表面に、前記ナノワイヤ粒子を担持させ、前記担体表面に前記ナノワイヤ粒子が担持された触媒前駆体を得る第4工程と、
前記触媒前駆体を洗浄することにより、前記ナノワイヤ粒子の表面に残存している前記オレイルアミンをさらに除去し、本発明に係る燃料電池触媒を得る第5工程と
を備えている。
(2)前記第3工程は、エタノール、又は、シクロヘキサン/エタノール混合溶媒を用いて、前記ナノワイヤ粒子前駆体の洗浄を1回行う工程からなる。
(3)前記第5工程は、ヘキサン、芳香族炭化水素、シクロパラフィン、及び、n-パラフィンからなる群から選ばれるいずれか1以上のみからなる溶媒を用いて、前記触媒前駆体を3回以上洗浄する工程からなる。
前記第1工程は、前記オレイルアミン中に卑金属元素前駆体をさらに溶解又は分散させるものでも良い。
【発明の効果】
【0013】
Pt前駆体からPtを含むナノワイヤ粒子を合成する場合において、相対的に低温で合成すると、Ptを含む球状粒子の含有量が少ないナノワイヤ粒子が得られる。
【0014】
また、ナノワイヤ粒子を合成した後、相対的に弱い洗浄を行うと、表面修飾剤であるオレイルアミンが過度に除去されないので、ナノワイヤ粒子の凝集を抑制することができる。そのため、ナノワイヤ粒子を凝集させることなく、ナノワイヤ粒子を担体表面に高密度に担持することができる。
さらに、ナノワイヤ粒子を担体表面に担持した後、相対的に強い洗浄を行うと、残存している表面修飾剤をほぼ完全に除去することができる。そのため、残存している表面修飾剤による触媒被毒を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1で得られたナノワイヤ粒子のSTEM像である。
【
図2】実施例2で得られたナノワイヤ粒子のSTEM像である。
【
図3】比較例1で得られたナノワイヤ粒子のSTEM像である。
【
図4】実施例1で得られた燃料電池触媒のSTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 燃料電池触媒]
本発明に係る燃料電池触媒(以下、単に「触媒」ともいう)は、
導電性を有する担体と、
前記担体表面に担持されたPtを含むナノワイヤ粒子と
を備えている。
【0017】
[1.1. 担体]
担体は、導電性材料からなる。担体の材料は、導電性を示し、かつ、燃料電池作動環境下において使用可能なものである限りにおいて、特に限定されない。担体の材料としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、活性炭、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ガラス状炭素粉末などがある。
【0018】
[1.2. ナノワイヤ粒子]
[1.2.1. 形状]
本発明において、「ナノワイヤ粒子」とは、ワイヤ状の細長い形状を有し、直径がナノメートルサイズである粒子をいう。後述する方法を用いると、短径が0.8nm超10nm以下、あるいは、0.8nm超5.0nm以下であるナノワイヤ粒子が得られる。
製造条件を最適化すると、短径は、0.8nm超3nm以下となる。
同様に、製造条件を最適化すると、長さは、5nm以上50nm以下となる。
【0019】
[1.2.2. 組成]
本発明において、ナノワイヤ粒子は、Ptを含む。後述する方法を用いると、Pt含有量が90mass%以上であるナノワイヤ粒子が得られる。製造条件を最適化すると、Pt含有量は、95mass%以上、あるいは、98mass%以上となる。
ナノワイヤ粒子に含まれることがある不純物としては、例えば、出発原料に由来する金属元素(例えば、Ni、Mo、Wなど)などがある。
【0020】
[1.2.3. 担持率]
「担持率」とは、触媒の総質量に対するナノワイヤ粒子の質量の割合をいう。
一般に、担持率が小さくなりすぎると、膜電極接合体(MEA)を作製した際の、単位体積当たりのPt量が少なくなる。そのため、発電に十分なPt量を確保するために必要な触媒層の厚さが厚くなる。一般に、触媒層が厚くなるほど、触媒層内の物質移動に係わる抵抗が大きくなる。従って、担持率は、15mass%以上である必要がある。担持率は、好ましくは、20mass%以上、さらに好ましくは、30mass%以上である。
一方、担持率を必要以上に大きくしても、効果に差が無く、実益がない。従って、担持率は、50mass%以下である必要がある。
【0021】
[1.3. 特性]
[1.3.1. Ptを含む球状粒子の含有量]
「Ptを含む球状粒子」とは、ナノワイヤ粒子を合成する際に副生するPtを主成分とする粒子(Pt含有量が90mass%以上である粒子)であって、アスペクト比が1.1以下であるものをいう。
「球状粒子の含有量」とは、視野内に50個以上のナノワイヤ粒子が観察される倍率で、合成されたナノワイヤ粒子を顕微鏡で観察した場合において、視野内に含まれるナノワイヤ粒子と球状粒子の総個数に対する球状粒子の個数の割合をいう。
【0022】
本発明に係るナノワイヤ粒子は、後述する方法用いて合成されるため、従来に比べて球状粒子の含有量が少ない。製造条件を最適化すると、球状粒子の含有量は、10%以下となる。製造条件をさらに最適化すると、球状粒子の含有量は、5%以下、あるいは、3%以下となる。
【0023】
[1.3.2. ECSA(有効電気化学表面積)]
本発明に係る燃料電池触媒は、担体表面にナノワイヤ粒子が高密度で担持され、かつ、ナノワイヤ粒子の凝集が少ないために、高いECSAを示す。製造条件を最適化すると、ECSAが40m2/gPt以上200m2/gPt以下である触媒が得られる。製造条件をさらに最適化すると、ECSAは、70m2/gPt以上、あるいは、100m2/gPt以上となる。
【0024】
[1.3.3. MA(Pt質量当たりの活性)]
ナノワイヤ粒子は、直径がナノメートルサイズであり、Pt質量あたりの表面積が大きいため、また、高活性な(111)面を高密度で有するために、高いMAを示す。製造条件を最適化すると、MAが900A/gPt以上30000A/gPt以下である触媒が得られる。製造条件をさらに最適化すると、MAは、1000A/gPt以上となる。
【0025】
[1.3.4. SA(比活性)]
本発明に係る燃料電池触媒は、高いSAを示す。製造条件を最適化すると、SAが2000μA/cm2以上15000μA/cm2以下である触媒が得られる。製造条件をさらに最適化すると、SAは、2500μA/cm2以上となる。
【0026】
[1.3.5. 卑金属元素の含有量]
「卑金属元素の含有量」とは、触媒の総質量に対する卑金属元素の質量の割合をいう。
Ptを含むナノワイヤ粒子を合成する場合において、原料中にNi(acac)2のような卑金属元素前駆体を添加すると、Ptと卑金属元素との合金からなるナノワイヤ粒子を合成することができる。卑金属元素を使用すると、合金効果と面制御によりナノワイヤ粒子を高活性化させることができる場合がある。
しかしながら、ナノワイヤ粒子の合成時に卑金属元素前駆体を使用すると、未反応の卑金属元素前駆体、又は、卑金属元素前駆体が分解・反応することにより生成する卑金属元素の化合物若しくは卑金属元素の微粒子がナノワイヤ粒子中に混在することがある。
【0027】
Ptと合金化した卑金属元素は、Ptの触媒活性を向上させる場合がある。しかし、ナノワイヤ粒子中に混在している卑金属元素の微粒子、卑金属元素の化合物、及びPtと合金化した卑金属元素は、いずれも、燃料電池環境下では容易に溶出し、カチオンコンタミの原因となる場合がある。
これに対し、後述する方法を用いると、卑金属元素の含有量が0.01mass%未満である触媒が得られる。製造条件を最適化すると、卑金属元素の含有量は、0.005mass%以下となる。
【0028】
[2. 燃料電池触媒の製造方法]
本発明に係る燃料電池触媒の製造方法は、
Pt前駆体、W(CO)6及び/又はMo(CO)6、並びに、含窒素界面活性剤をオレイルアミン中に溶解又は分散させ、前駆体溶液を得る第1工程と、
前記前駆体溶液を100℃以上120℃以下で保持することにより、ナノワイヤ粒子の表面が前記オレイルアミンで修飾されたナノワイヤ粒子前駆体を得る第2工程と、
前記ナノワイヤ粒子前駆体を洗浄することにより、表面を修飾している前記オレイルアミンの一部が除去された前記ナノワイヤ粒子を得る第3工程と、
導電性を有する担体の表面に、前記ナノワイヤ粒子を担持させ、前記担体表面に前記ナノワイヤ粒子が担持された触媒前駆体を得る第4工程と、
前記触媒前駆体を洗浄することにより、前記ナノワイヤ粒子の表面に残存している前記オレイルアミンをさらに除去し、本発明に係る燃料電池触媒を得る第5工程と
を備えている。
【0029】
[2.1. 第1工程]
まず、Pt前駆体、W(CO)6及び/又はMo(CO)6、並びに、含窒素界面活性剤をオレイルアミン中に溶解又は分散させ、前駆体溶液を得る(第1工程)。
前記第1工程は、前記オレイルアミン中に卑金属元素前駆体をさらに溶解又は分散させるものでも良い。
【0030】
[2.1.1. 成分]
Pt前駆体は、ナノワイヤ粒子の主原料である。Pt前駆体の種類は、ナノワイヤ粒子を合成可能なものである限りにおいて、特に限定されない。Pt前駆体としては、例えば、白金(II)アセチルアセトナート(Pt(acac)2)、塩化白金酸(H2PtCl6)、テトラアンミン白金クロリド(Pt(NH3)4Cl2)などがある。
【0031】
W(CO)6及びMo(CO)6は、ナノワイヤ粒子の長さや表面の凹凸を制御するために必要な成分である。前駆体溶液には、W(CO)6又はMo(CO)6のいずれか一方が含まれていても良く、あるいは、双方が含まれていても良い。
前駆体溶液にW(CO)6及び/又はMo(CO)6を添加すると、W(CO)6又Mo(CO)6からCOが放出される。放出されたCOは、成長途中のナノワイヤ粒子の表面において吸着・脱離を繰り返す。その結果、ナノワイヤ粒子の長さや表面の凹凸が制御されると考えられる。
【0032】
含窒素界面活性剤は、Ptをワイヤ状に成長させるために必要な成分である。前駆体溶液に含窒素界面活性剤を添加すると、棒状ミセルが生成し、その棒状ミセル内でPt前駆体が還元されることで、ナノワイヤ粒子が生成すると考えられる。
含窒素界面活性剤の種類は、ナノワイヤ粒子を合成可能なものである限りにおいて、特に限定されない。含窒素界面活性剤としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DDAB)などがある。
【0033】
卑金属元素前駆体は、ナノワイヤ粒子の高活性化のために有効な成分であり、必要に応じて添加することができる。前駆体溶液中に強力な還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4))が含まれていない場合、通常、卑金属元素前駆体は還元されることがなく、実質的にPtのみからなるナノワイヤ粒子が得られる。但し、合成条件によっては、卑金属元素又は卑金属元素の化合物が副生することがある。
卑金属元素前駆体の種類は、ナノワイヤ粒子を合成可能なものである限りにおいて、特に限定されない。例えば、Niを含む卑金属元素前駆体としては、例えば、Ni(II)アセチルアセトナート(Ni(acac)2)、塩化ニッケル(NiCl2)、酢酸ニッケル(Ni(CH3COO)2)などがある。
【0034】
オレイルアミンは、
(a)原料を溶解させるための溶媒、
(b)Pt前駆体を還元するための還元剤、及び、
(c)ナノワイヤ粒子の表面に吸着し、ナノワイヤ粒子の凝集を防ぐ表面修飾剤
として機能する。
但し、オレイルアミンの還元力は相対的に弱いので、Pt前駆体の還元は進行するが、それ以外の物質(例えば、Ni(caca)2などの卑金属元素前駆体)の還元は、通常、ほとんど進行しない。
【0035】
[2.1.2. 濃度]
前駆体溶液に含まれる各成分の濃度は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な濃度を選択することができる。
一般に、Pt前駆体の濃度が低すぎると、ナノワイヤ粒子の収量が少なくなる。従って、Pt前駆体の濃度は、0.24mass%以上が好ましい。
一方、Pt前駆体の濃度を必要以上に高くしても、効果に差が無く、実益がない。従って、Pt前駆体の濃度は、0.48mass%以下が好ましい。
【0036】
一般に、W(CO)6及びMo(CO)6の総濃度が低すぎると、ナノワイヤ粒子を回収できなくなる。従って、W(CO)6及びMo(CO)6の総濃度は、0.07mass%以上が好ましい。
一方、W(CO)6及びMo(CO)6の総濃度を必要以上に高くしても、効果に差が無く、実益がない。従って、W(CO)6及びMo(CO)6の総濃度は、0.7mass%以下が好ましい。
【0037】
一般に、含窒素界面活性剤の濃度が高くなるほど、棒状ミセルが形成しやすくなり、これによってPtがナノワイヤ状に成長しやすくなる。このような効果を得るためには、含窒素界面活性剤の濃度は、0.39mass%以上が好ましい。
一方、含窒素界面活性剤の濃度を必要以上に高くしても、効果に差が無く、実益がない。従って、含窒素界面活性剤の濃度は、3.0mass%以下が好ましい。
【0038】
原料中に卑金属元素前駆体を添加する場合において、一般に、卑金属元素前駆体の濃度が低すぎると、合金効果と面制御によるナノワイヤ粒子の高活性化が得られなくなる場合がある。従って、卑金属元素前駆体の濃度は、0.01mass%以上が好ましい。
一方、卑金属元素前駆体の濃度が高くなりすぎると、還元される卑金属元素量が多くなる。従って、卑金属元素前駆体の濃度は、0.15mass%以下が好ましい。
【0039】
[2.2. 第2工程]
次に、前駆体溶液を100℃以上120℃以下の温度で保持する(第2工程)。これにより、ナノワイヤ粒子の表面がオレイルアミンで修飾されたナノワイヤ粒子前駆体が得られる。
【0040】
処理温度が低すぎると、実用的な時間内に還元反応が進行しない。従って、処理温度は、100℃以上が好ましい。
一方、処理温度が高すぎると、相対的に多量の球状粒子が副生する。従って、処理温度は、120℃以下が好ましい。
【0041】
処理時間が短すぎると、ナノワイヤ粒子が得られる割合が低下する。従って、処理時間は、2時間以上が好ましい。処理時間は、さらに好ましくは、4時間以上、さらに好ましくは、8時間以上である。
一方、処理時間を必要以上に長くしても、効果に差がなく、実益がない。従って、処理時間は、目的に応じて最適な時間を選択するのが好ましい。
【0042】
[2.3. 第3工程]
次に、ナノワイヤ粒子前駆体を洗浄することにより、表面を修飾しているオレイルアミンの一部が除去されたナノワイヤ粒子を得る(第3工程)。
【0043】
オレイルアミンは、ナノワイヤ粒子を形成するために必要な成分であるが、触媒の活性点を被毒する物質でもある。触媒被毒を低減するには、ナノワイヤ粒子の表面からオレイルアミンを完全に除去するのが好ましい。しかしながら、オレイルアミンは、溶液中に生成したナノワイヤ粒子の凝集を抑制する表面修飾剤としても機能する。そのため、反応終了後、担体表面に担持させる前に、ナノワイヤ粒子の表面を修飾しているオレイルアミンの全部が除去されるような条件下で洗浄すると、ナノワイヤ粒子が凝集しやすくなる。
【0044】
従って、ナノワイヤ粒子前駆体を担体表面に担持する前に行う洗浄は、副生成物及び未反応物が除去され、かつ、ナノワイヤ粒子の表面を修飾しているオレイルアミンの一部が除去されるような条件下で行う必要がある。本発明において、担持前の洗浄は、エタノール、又は、シクロヘキサン/エタノール混合溶媒を用いて、ナノワイヤ粒子前駆体の洗浄を1回だけ行う。この点が、従来とは異なる。
エタノール、及び、シクロヘキサン/エタノール混合溶媒は、いずれも中程度の洗浄力を持つ。そのため、エタノール、又は、シクロヘキサン/エタノール混合溶媒を用いて多数回洗浄を行うと、オレイルアミンが過度に除去される。従って、担持前の洗浄は、1回だけ行う。
【0045】
洗浄用の溶媒として、シクロヘキサン/エタノール混合溶媒を用いる場合において、混合溶媒中のシクロヘキサンの含有量は、目的に応じて最適な含有量を選択する。一般に、シクロヘキサンの含有量が多くなるほど、洗浄力が強くなる。このような効果を得るためには、シクロヘキサンの含有量は、10vol%以上が好ましい。
一方、シクロヘキサンの含有量を必要以上に多くしても、効果に差が無く、実益がない。従って、シクロヘキサンの含有量は、50vol%以下が好ましい。
【0046】
[2.4. 第4工程]
次に、導電性を有する担体の表面に、ナノワイヤ粒子を担持させる(第4工程)。これにより、担体表面にナノワイヤ粒子が担持された触媒前駆体が得られる。
担体表面へのナノワイヤ粒子の担持方法は、特に限定されない。例えば、ナノワイヤ粒子前駆体及び担体を溶媒中に分散させ、超音波を照射すると、ナノワイヤ粒子前駆体及び担体が均一に分散すると同時に、ナノワイヤ粒子表面のオレイルアミンが溶媒によって徐々に除去される。さらに、ナノワイヤ粒子表面のオレイルアミンの大半が除去されると、ナノワイヤ粒子が担体上に付着する。その結果、担体表面にナノワイヤ粒子を担持することができる。
【0047】
[2.5. 第5工程]
次に、触媒前駆体を洗浄することにより、ナノワイヤ粒子の表面に残存しているオレイルアミンをさらに除去する(第5工程)。これより、本発明に係る燃料電池触媒が得られる。
【0048】
上述したように、オレイルアミンは、凝集を抑制するための表面修飾剤であると同時に、触媒被毒の原因物質でもある。触媒被毒を低減するためには、ナノワイヤ粒子を担体表面に担持した後に行う洗浄は、ナノワイヤ粒子の表面に残存しているオレイルアミンがほぼ完全に除去されるような条件下で行うのが好ましい。「ほぼ完全に除去される」とは、洗浄後の触媒のSAが2000μA/cm2以上となることをいう。
本発明において、担持後の洗浄は、ヘキサン、芳香族炭化水素、シクロパラフィン、及び、n-パラフィンからなる群から選ばれるいずれか1以上のみからなる溶媒を用いて、触媒前駆体を3回以上洗浄する。この点が、従来とは異なる。
【0049】
ヘキサン、芳香族炭化水素、シクロパラフィン、及び、n-パラフィンは、いずれも、シクロヘキサン/エタノール混合溶媒に比べて洗浄力が強い。そのため、これらを用いて触媒前駆体を洗浄すると、残存しているオレイルアミンの大半を除去することができる。
上記の溶媒は、洗浄力が強いので、1回の洗浄でも相応の効果が得られる。しかしながら、一般に、洗浄回数が多くなるほど、オレイルアミンの残存量が少なくなる。触媒被毒を低減するためには、洗浄回数は、3回以上である必要がある。洗浄回数は、好ましくは、5回以上である。
なお、原料中に卑金属元素前駆体を添加した場合、強洗浄を行った後、さらに酸洗を行い、ナノワイヤ粒子中に残存している余分な卑金属元素を除去しても良い。
【0050】
[3. 作用]
[3.1. 球状粒子の生成の抑制]
非特許文献1に記載されているように、Ptナノワイヤを合成する際にNi(acac)2を原料中に添加すると、Pt-Ni合金からなるナノワイヤを合成することができる。しかしながら、NiはPtの触媒活性を向上させる作用はあるが、Ptと合金化したNiは燃料電池環境下において容易に溶出し、カチオンコンタミの原因となる。
一方、非特許文献1に記載の方法において、Ni(acac)2の使用を省略すると、Niを含まないPtナノワイヤが生成する。しかし、同文献に記載の方法において、単にNi化合物の使用を省略するだけでは、短径及び長径の揃ったPtナノワイヤは得られない。また、Ptナノワイヤに加えて、Ptを含む球状粒子が相対的に多量に副生するという問題がある。これは、反応温度が高く(160℃)、界面活性剤のミセルが不安定化しやすいためと考えられる。
【0051】
これに対し、Pt前駆体からPtを含むナノワイヤ粒子を合成する場合において、相対的に低温(具体的には、100℃~120℃)で合成すると、Ptを含む球状粒子の含有量が少ないナノワイヤ粒子が得られる。
【0052】
Ptを含むナノワイヤ粒子を合成する場合において、卑金属元素前駆体を使用しない時には、卑金属元素前駆体を還元する必要がない。そのため、Pt合金を合成する場合に比べて反応温度を低くしても、Pt前駆体の還元が完了する。但し、反応温度を低くした場合、Pt前駆体の還元反応を完了させるには、反応時間を長くする必要がある。
一方、反応温度を低くすると、ナノワイヤ形成時において界面活性剤のミセルが安定化する。その結果、短径方向の大きさが小さく、短径方向の大きさのバラツキが小さく、かつ、球状粒子の含有量が少ないナノワイヤ粒子が得られる。
【0053】
このようなナノワイヤ粒子を担体表面に高分散に担持させると、反応面積が大きいために活性が高い触媒が得られる。また、粒子径が揃っているためにオストワルド粒成長による反応面積の低下が生じにくい触媒が得られる。さらに、このような触媒を燃料電池に適用すると、燃料電池の性能が向上する。
【0054】
[3.2. ナノワイヤ粒子の凝集の抑制]
オレイルアミンは、ナノワイヤ粒子の凝集を防ぐ表面修飾剤としての機能を持つ。オレイルアミン共存下でナノワイヤ粒子を合成した後、ナノワイヤ粒子をシクロヘキサン/エタノール混合溶媒で3回洗浄すると、オレイルアミンがナノワイヤ粒子表面から過度に除去される。そのため、ナノワイヤ粒子の凝集を抑制するのが困難となり、担体表面にナノワイヤ粒子を高密度、かつ、高分散に担持することは難しい。
【0055】
次に、ナノワイヤ粒子を担体表面に担持した後、シクロヘキサン/エタノール混合溶媒で3回洗浄しても、ナノワイヤ粒子の表面に残存しているオレイルアミンを完全に除去することができない。残存しているオレイルアミンは、触媒の活性点をブロック(被毒)し、触媒活性を低下させる原因となる。
【0056】
これに対し、ナノワイヤ粒子を合成した後、相対的に弱い洗浄を行うと、表面修飾剤であるオレイルアミンが過度に除去されないので、ナノワイヤ粒子の凝集を抑制することができる。そのため、ナノワイヤ粒子を凝集させることなく、ナノワイヤ粒子を担体表面に高密度に担持することができる。
また、ナノワイヤ粒子を担体表面に担持した後、相対的に強い洗浄を行うと、残存している表面修飾剤をほぼ完全に除去することができる。そのため、残存している表面修飾剤による触媒被毒を抑制することができる。
【実施例】
【0057】
(実施例1~2、比較例1)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1~2]
Pt(acac)2、Mo(CO)6、及び、含窒素界面活性剤をオレイルアミン中に加え、1時間超音波分散させ、前駆体溶液を得た。この前駆体溶液を室温から反応温度まで10℃/minで昇温し、反応温度で8時間保持した。反応温度は、100℃(実施例1)又は120℃(実施例2)とした。その後、室温まで降温し、Ptを含むナノワイヤ粒子が分散しているコロイド溶液を得た。
コロイド溶液からナノワイヤ粒子を回収し、ナノワイヤ粒子をエタノールで1回洗浄することにより、未反応物と表面修飾剤(オレイルアミン)の一部とを除去した。その後、コロイド溶液の遠心分離を行い、ナノワイヤ粒子を回収した。
【0058】
次に、洗浄後のナノワイヤ粒子をヘキサン中に再分散させ、分散液Aを得た。また、カーボン担体をヘキサン中に分散させ、分散液Bを得た。分散液Aを分散液Bに加え、1時間超音波照射することでナノワイヤ粒子をカーボン担体表面に担持させた。
さらに、分散液からナノワイヤ粒子担持カーボン(以下、「ナノワイヤ粒子/C」ともいう)を回収し、ナノワイヤ粒子/Cをヘキサンで5回洗浄した。さらに、固形物をろ過、乾燥させることで触媒を得た。
【0059】
[1.2. 比較例1]
前駆体溶液の反応温度を160℃とし、反応温度での保持時間を2時間とした以外は、実施例1と同様にして触媒を得た。
【0060】
[2. 試験方法]
[2.1. STEM観察]
走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて、カーボン担体に担持される前のナノワイヤ粒子、及び、ナノワイヤ粒子/Cの観察を行った。
【0061】
[2.2. 電気化学評価]
[2.2.1. 質量活性]
回転ディスク電極(RDE)を用いて、触媒の電気化学評価を行った。セルは三極式とし、電解液には0.1M HClO4を用いた。作用極には、触媒を塗布したグラッシーカーボンを用いた。参照極及び対極には、それぞれ、可逆水素電極(RHE)及びPt黒メッシュを用いた。
Arで飽和した電解液に作用極を浸漬し、0.05V⇔1.2V(RHE)で電位掃引を行った。電位掃引は、サイクリックボルタモグラム(CV)の形状が安定するまで行った。その後、電解液をO2で飽和させ、電極を1600rpmで回転させながら、リニアスイープボルタンメトリ(LSV、正方向電位掃引、掃引速度:10mV/s)を行った。得られたLSVの0.9Vにおける電流値を白金質量で除すことで、各試料の質量活性(MA)を求めた。
【0062】
[2.2.2. 耐久試験]
初期活性の評価後に耐久試験を行った。耐久試験は、酸素飽和した電解液(0.1M HClO4)中において、0.4V⇔1.0V(RHE基準、各電位で3s保持)の電位掃引を2000サイクル繰り返すことにより行った。
各試料について、耐久試験前後の0.9Vにおける質量活性(MA)を求めた。さらに、耐久試験前の質量活性(MA0)に対する耐久試験後の質量活性(MA)の比率(=MA×100/MA0)を活性維持率として求めた。
【0063】
[3. 結果]
[3.1. TEM観察]
図1に、実施例1で得られたナノワイヤ粒子のSTEM像を示す。
図2に、実施例2で得られたナノワイヤ粒子のSTEM像を示す。
図3に、比較例1で得られたナノワイヤ粒子のSTEM像を示す。
図4に、実施例1で得られた燃料電池触媒(ナノワイヤ粒子/C)のSTEM像を示す。さらに、表1に、球状粒子の含有量を示す。
図1~4、及び、表1より、実施例1、2のナノワイヤ粒子は、比較例1のナノワイヤ粒子に比べて短径が揃っていること、及び、球状粒子の含有量が少ないことが分かる。
【0064】
【0065】
[3.2. 電気化学評価]
表2に、実施例2及び比較例1で得られたナノワイヤ粒子/Cの初期の質量活性、耐久試験後の質量活性、及び質量活性維持率を示す。表2より、実施例2の質量活性及び質量活性維持率は、比較例1のそれらより大きいことが分かる。すなわち、本発明に係る方法を用いると、高活性・高耐久の触媒が得られることが分かった。
【0066】
【0067】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る燃料電池触媒は、自動車用動力源、定置型小型発電機等に用いられる固体高分子形燃料電池の空気極及び/又は燃料極の電極触媒として用いることができる。