(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25D 7/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
F25D7/00 A
(21)【出願番号】P 2021064266
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】佐土 克也
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-094794(JP,A)
【文献】特開2020-098039(JP,A)
【文献】特開2006-349287(JP,A)
【文献】特開2012-154315(JP,A)
【文献】特開2014-159749(JP,A)
【文献】特開2013-236581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0300278(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 7/00
F25D 23/00
A23L 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内に収容された被冷却物を冷却する真空冷却装置であって、
複数の真空ポンプと、熱交換器と、徐冷手段と、圧力検出手段と、制御手段とを備え、
前記複数の真空ポンプは、並列に配置されるとともに、前記熱交換器を介して前記処理槽と接続され、
前記熱交換器は、前記処理槽から排気された蒸気を凝縮可能に構成され、
前記徐冷手段は、前記複数の真空ポンプによる前記処理槽の排気速度を低減可能に構成され、
前記圧力検出手段は、前記処理槽内の圧力を検出可能に構成され、
前記制御手段は、記憶部と、徐冷制御部と、ポンプ運転台数決定部とを備えており、
前記記憶部は、予め定めた複数の時間区分ごとに設定される目標圧力を記憶し、
前記徐冷制御部は、前記圧力検出手段が検出する前記処理槽の槽内圧力が前記記憶部の記憶する目標圧力となるよう前記徐冷手段を制御
する徐冷制御を実行し、
前記ポンプ運転台数決定部は、
前記徐冷制御の実行中に、前記複数の真空ポンプのうち1台以上の真空ポンプの運転を停止しても残りの真空ポンプの排気能力の和が前記
複数の時間区分ごとの必要排気能力
を超えている場合に、前記1台以上の真空ポンプの運転を停止する、真空冷却装置。
【請求項2】
処理槽内に収容された被冷却物を冷却する真空冷却装置であって、
複数の真空ポンプと、熱交換器と、徐冷手段と、圧力検出手段と、制御手段とを備え、
前記複数の真空ポンプは、並列に配置されるとともに、前記熱交換器を介して前記処理槽と接続され、
前記熱交換器は、前記処理槽から排気された蒸気を凝縮可能に構成され、
前記徐冷手段は、前記複数の真空ポンプによる前記処理槽の排気速度を低減可能に構成され、
前記圧力検出手段は、前記処理槽内の圧力を検出可能に構成され、
前記制御手段は、記憶部と、徐冷制御部と、ポンプ運転台数決定部とを備えており、
前記記憶部は、予め定めた複数の時間区分ごとに設定される目標圧力を記憶し、
前記徐冷制御部は、前記圧力検出手段が検出する前記処理槽の槽内圧力が前記記憶部の記憶する目標圧力となるよう前記徐冷手段を制御する徐冷制御を行い、
前記ポンプ運転台数決定部は、
前記徐冷手段による排気速度の低減率に基づいて、前記真空ポンプの運転台数を決定する、真空冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載の真空冷却装置であって
、
前記ポンプ運転台数決定部は、前記徐冷手段による排気速度の低減率が所定率以上であれば前記運転台数を削減し、前記徐冷手段による排気速度の低減率が前記所定率未満であれば前記運転台数を削減しない、真空冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の真空冷却装置であって、
前記徐冷手段は、前記処理槽内に導入する空気を調整可能な徐冷弁を備え、
前記ポンプ運転台数決定部は、前記徐冷弁の開度が所定開度以上であれば前記運転台数を削減し、前記徐冷弁の開度が前記所定開度未満であれば前記運転台数を削減しない、真空冷却装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載の真空冷却装置であって、
前記真空ポンプは、水封式の真空ポンプである、真空冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の真空ポンプを備えた真空冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱調理された食品等の被冷却物を真空冷却する真空冷却装置がある。例えば、特許文献1に開示される真空冷却装置は、生産性を高めつつも被冷却物へのダメージを低減するため、冷却槽内の圧力を検出する圧力検出手段(圧力センサ)と冷却槽内に大気を導入可能な徐冷弁(圧力調整弁)を備え、槽内圧力が予め設定された圧力制御条件の特性ライン(徐冷プログラム)に沿うよう徐冷弁を制御することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような徐冷弁等の徐冷手段により徐冷制御を行う真空冷却装置であっても、排気速度(排気速度)を早めて冷却能力を高めるには、複数の真空ポンプを備え、複数の真空ポンプによって排気を行うことが考えられる。そして、複数の真空ポンプにより真空冷却を行う場合には、真空ポンプにおけるキャビテーションの発生を抑制し、また、消費電力を低減するため、冷却槽内の減圧が進んだ段階で真空ポンプの運転台数を削減し、排気速度を低下させるのが好ましい。
【0005】
しかしながら、真空ポンプの運転台数を増減させると、排気速度は大きく増減することになる。したがって、槽内圧力だけに基づいて真空ポンプの運転台数を削減すると、真空ポンプの運転台数の変更に徐冷弁による槽内圧力の制御が追いつかず、徐冷プログラムに沿った槽内圧力の調整ができないおそれがある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、複数の真空ポンプを備えた真空冷却装置において、真空ポンプの運転台数を変更しても複数の時間区分ごとに設定された目標圧力に沿って槽内圧力を調整可能な真空冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、処理槽内に収容された被冷却物を冷却する真空冷却装置であって、複数の真空ポンプと、熱交換器と、徐冷手段と、圧力検出手段と、制御手段とを備え、前記複数の真空ポンプは、並列に配置されるとともに、前記熱交換器を介して前記処理槽と接続され、前記熱交換器は、前記処理槽から排気された蒸気を凝縮可能に構成され、前記徐冷手段は、前記複数の真空ポンプによる前記処理槽の排気速度を低減可能に構成され、前記圧力検出手段は、前記処理槽内の圧力を検出可能に構成され、前記制御手段は、記憶部と、徐冷制御部と、ポンプ運転台数決定部とを備えており、前記記憶部は、予め定めた複数の時間区分ごとに設定される目標圧力を記憶し、前記徐冷制御部は、前記圧力検出手段が検出する前記処理槽の槽内圧力が前記記憶部の記憶する目標圧力となるよう、前記徐冷手段を制御し、前記ポンプ運転台数決定部は、下記(1)又は(2)に基づいて、前記真空ポンプの運転台数を決定する、真空冷却装置が提供される。
(1)前記複数の時間区分ごとの必要排気能力
(2)前記徐冷手段による排気速度の低減率
【0008】
本発明によれば、制御手段のポンプ運転台数決定部が上記(1)又は(2)に基づいて真空ポンプの運転台数を決定することで、適切なタイミングで運転台数を削減でき、徐冷手段により予め定めた複数の時間区分ごとの目標圧力に沿って槽内圧力を調整することが可能となっている。なお、前記処理槽の排気速度を低減する徐冷手段としては、上述した徐冷弁を備えるもののほか、制御手段が備える真空ポンプの回転数制御部や、真空ポンプの給気ラインに設けた開度調整弁が挙げられる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0010】
好ましくは、前記ポンプ運転台数決定部は、前記(1)に基づいて前記運転台数を決定するものであり、前記ポンプ運転台数決定部は、前記複数の真空ポンプのうち1台以上の真空ポンプの運転を停止しても残りの真空ポンプの排気能力の和が前記必要排気能力を超えている場合に、前記1台以上の真空ポンプの運転を停止する。
【0011】
好ましくは、前記ポンプ運転台数決定部は、前記(2)に基づいて前記運転台数を決定するものであり、前記ポンプ運転台数決定部は、前記徐冷手段による排気速度の低減率が所定率以上であれば前記運転台数を削減し、前記徐冷手段による排気速度の低減率が前記所定率未満であれば前記運転台数を削減しない。
【0012】
好ましくは、前記徐冷手段は、前記処理槽内に導入する空気を調整可能な徐冷弁を備え、前記ポンプ運転台数決定部は、前記徐冷弁の開度が所定開度以上であれば前記運転台数を削減し、前記徐冷弁の開度が前記所定開度未満であれば前記運転台数を削減しない。
【0013】
好ましくは、前記真空ポンプは、水封式の真空ポンプである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る真空冷却装置1を示す模式図である。
【
図2】
図1の真空冷却装置1の制御手段10の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2の制御手段10の記憶部101が記憶する徐冷プログラムの一例を、時間-圧力のグラフで示す図である。
【
図4】
図1の真空冷却装置1の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る真空冷却装置1の動作を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の変形例に係る真空冷却装置1の一部の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0016】
1.第1実施形態
1.1 真空冷却装置1の構成
まず、本発明の一実施形態に係る真空冷却装置1の構成について説明する。真空冷却装置1は、熱調理された食品等の被冷却物Fを処理槽2内で真空冷却するものである。本実施形態の真空冷却装置1は、
図1に示すように、処理槽2と、熱交換器4と、複数の真空ポンプ(本実施形態では、第1~第3真空ポンプ5A~5Cの3台の真空ポンプ)と、給水手段6と、徐冷手段7と、制御手段10とを備える。また、真空冷却装置1は、処理槽2内の気体(空気及び蒸気)を排気するための排気路11を備える。排気路11には、熱交換器4が接続されるとともに、熱交換器4の下流側において第1~第3真空ポンプ5A~5Cの吸気ライン9A~9Cが並列に接続されている。なお、
図1においては、排気路11及びこれと接続される吸気ライン9A~9Cを太線で図示している。以下、各構成を具体的に説明する。
【0017】
処理槽2は、内部空間の減圧に耐える中空容器であり、ドア(図示省略)で開閉可能とされる。処理槽2は、典型的には略矩形の箱状に形成され、正面の開口部がドアで開閉可能とされる。ドアを開けることで、処理槽2に被冷却物Fを出し入れすることができ、ドアを閉じることで、処理槽2の開口部を気密に閉じることができる。ドアは、処理槽2の正面および背面の双方に設けられてもよい。なお、図示例では、被冷却物Fは、ホテルパンや番重のような食品容器に入れられて、処理槽2内に収容されている。また、処理槽2には、処理槽2内の圧力を検出する圧力検出手段としての圧力センサ14が設けられている。加えて、処理槽2内には、収容された被冷却物Fの温度(品温)を検出する品温センサ15が設けられている。
【0018】
熱交換器4は、排気路11内の流体と冷却水とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器である。熱交換器4により、排気路11内の蒸気を、冷却水により冷却し凝縮させることができる。冷却水は、後述する給水手段6から熱交給水路40を介して供給され、熱交排水路41を介して排出される。熱交排水路41は、図示しない冷水タンク(チラーの給水源)への冷水戻し路42と、外部への排水出口路43とに分岐されており、冷水戻し路42には冷水戻し弁44が設けられ、排水出口路43には排水出口弁45が設けられている。冷水戻し弁44及び排水出口弁45により、熱交換器4を通過後の水を、冷水タンクへ戻すか、排水出口路43から排出するか、あるいはいずれも行わずに熱交換器4の通水を阻止するか(つまり熱交換器4の冷却水出口側を閉じるか)を切り替えることができる。
【0019】
第1~第3真空ポンプ5A~5Cは、それぞれ水封式の真空ポンプであり、封水と呼ばれる水が供給されつつ駆動される。封水を供給するため、各真空ポンプ5A~5Cの給水口5xには、後述する給水手段6から封水給水路50を介して水が供給される。ここで、封水給水路50は、各真空ポンプ5A~5Cに対応して3つの封水給水路50A~50Cに分岐している。各封水給水路50A~50Cには、封水弁51及び定流量弁52が設けられている。ここで、定流量弁52は、周知の通り、一定の流量で通水可能に構成される。
【0020】
そして、封水給水路50から給水しつつ真空ポンプ5A~5Cを作動させると、各真空ポンプ5A~5Cは、吸気口5yから気体を吸入し、排気口5zへ排気および排水する。
【0021】
また、第1~第3真空ポンプ5A~5Cの各吸気ライン9A~9Cには、それぞれ対応する逆止弁13A~13Cが設けられている。逆止弁13A~13Cは、真空ポンプ5A~5Cから吸気ライン9A~9C側への気体の逆流を阻止するものである。逆止弁13A~13Cは、真空ポンプ5A~5Cの不具合時や停電時に、気体が処理槽2内へと逆流しないようにするための緊急遮断弁として機能する。
【0022】
加えて、第1~第3真空ポンプ5A~5Cには、それぞれ封水温度センサ16が設けられている。封水温度センサ16は、各真空ポンプ5A~5Cの内部に存在する封水の温度(封水温度)を検出可能に構成される。封水温度センサ16は、具体的には例えば、各真空ポンプ5A~5Cの内部に挿入された熱電対により構成することができる。
【0023】
給水手段6は、熱交換器4及び第1~第3真空ポンプ5A~5Cへ常温水又は冷水を供給可能に構成される。ここで、冷水とは、チラー(図示省略)により所定温度に冷却を図られた水(チラー水)であり、常温水とは、そのような冷却を図られない水である。給水手段6は、具体的には、給水源に接続された常温水給水路60と、チラーに接続された冷水給水路61とを備える。また、常温水給水路60には常温水給水弁62が設けられ、冷水給水路61には、冷水給水弁63が設けられている。加えて、冷水給水路61には、冷水の温度を検出可能な冷水温度センサ17が設けられている。
【0024】
常温水給水路60と冷水給水路61とは、常温水給水弁62及び冷水給水弁63それぞれの下流の位置において合流し、共通給水路64となっている。この共通給水路64は、熱交換器4への熱交給水路40と、第1~第3真空ポンプ5A~5Cへの封水給水路50とに分岐されている。そして、給水手段6は、常温水給水弁62または冷水給水弁63を開けることで、熱交換器4に冷却水を給水し、さらに封水弁51を開けることで、真空ポンプ5A~5Cに給水するようになっている。
【0025】
徐冷手段7は、第1~第3真空ポンプ5A~5Cによる処理槽2の排気速度を低減する手段である。本実施形態において、徐冷手段7は、減圧中の処理槽2内へ外気を導入することで処理槽2の排気速度を低減する。本実施形態の徐冷手段7は、具体的には、処理槽2に接続される給気路70と、エアフィルタ71と、徐冷弁72とを備える。エアフィルタ71と徐冷弁72とは、上流側からこの順で給気路70に設けられている。そして、処理槽2内が減圧された状態で徐冷弁72を開けると、外気がエアフィルタ71を介して処理槽2内へ導入され、処理槽2内を復圧することができる。
【0026】
徐冷弁72は、具体的には開度調整可能な電動弁とされ、開度調整により、処理槽2内への空気の導入量を調整可能(復圧の速度を調整可能)となっている。本実施形態の真空冷却装置1は、徐冷手段7の徐冷弁72を制御することにより、後述する徐冷制御を行うようになっている。なお、真空冷却装置1の冷却運転の終了後には、徐冷弁72を開放することで、処理槽2内を大気圧に復圧することも可能である。
【0027】
制御手段10は、各センサの検出信号や経過時間などに基づき、上述した各構成を制御する。制御手段10は、冷水戻し弁44及び排水出口弁45と、封水弁51と、常温水給水弁62及び冷水給水弁63と、徐冷弁72とを制御する。また、制御手段10は、第1~第3真空ポンプ5A~5Cの駆動制御を行う。加えて、制御手段10には、圧力センサ14、品温センサ15、封水温度センサ16及び冷水温度センサ17などが接続されている。
【0028】
本実施形態の制御手段10はさらに、
図2に示すように、目標圧力受付部100と、記憶部101と、徐冷制御部102と、ポンプ運転台数決定部103とを備えている。
【0029】
目標圧力受付部100は、図示しない入力手段(パーソナルコンピュータ、タッチパネル等)を介して、ユーザから、予め定めた複数の時間区分ごとに設定される目標圧力、言い換えると、運転開始からの経過時間と各目標圧力の組み合わせのテーブルにより構成される徐冷プログラムを受け付ける。ここで、「複数の時間区分」の各区分は、全て一定の時間であってもよく、時間経過に伴い変化する一定でない時間であっても良い。目標圧力受付部100は、また、ユーザからの入力に応じて、記憶部101に記憶された徐冷プログラムの修正や、徐冷プログラムの追加を受け付ける。
【0030】
記憶部101は、各種データを記憶する機能を有する。本実施形態において、記憶部101は、目標圧力受付部100が受け付けた複数の時間区分ごとの目標圧力(徐冷プログラム)を記憶する。なお、徐冷プログラムは、複数種類を記憶部101に記憶しておき、そのうちの何れかを選択して実行可能に構成することが好適である。また、複数の時間区分ごとの目標圧力を予め記憶部101に記憶させておくことで、目標圧力受付部100を備えない構成とすることも可能である。加えて、本実施形態の記憶部101は、後述する複数の時間区分ごとの必要排気能力を記憶している。
【0031】
徐冷制御部102は、徐冷手段7の徐冷弁72を制御することで徐冷制御を行う。徐冷制御は、具体的には、圧力センサ14が検出した槽内圧力が記憶部101の記憶する複数の時間区分ごとの目標圧力となるよう(徐冷プログラムに沿うよう)、徐冷弁72の開度調整により排気速度を調整しつつ被冷却物Fを冷却する制御である。制御手段10による徐冷制御により、処理槽2内は、徐冷プログラムが規定する
図3に示すような時間-圧力のグラフのラインに沿って減圧される。なお、
図3のグラフでは、一例として時間が進むに従って圧力を単調減少させているが、被冷却物Fの種類等によっては、圧力を単調減少させない徐冷プログラムを用いることも可能である。
【0032】
ポンプ運転台数決定部103は、本実施形態では、記憶部101の記憶する複数の時間区分ごとの必要排気能力に基づいて、第1~第3真空ポンプ5A~5Cの運転台数を決定する。ここで、必要排気能力とは、所定時間の間に槽内圧力を目標圧力に到達させるために必要な排気速度であり、目標圧力が設定されたある時間から次の目標圧力が設定された時間までの間に必要な排気量に、所定の安全率を設けて算出されるものである。ただし、安全率は0%であっても良い。必要な排気量は、処理槽2の容積と真空ポンプ5A~5Cの排気速度計算式とにより算出される。なお、必要排気能力は、予め算出して記憶部101に記憶しても良いが、真空冷却装置1の冷却運転中にリアルタイムで算出しても良い。
【0033】
以上のような構成の制御手段10は、後述するように、所定の手順(プログラム)に従い、被冷却物Fの冷却のための制御を行う。
【0034】
なお、上記構成の制御手段10は、具体的には例えば、CPU、メモリ(例えばフラッシュメモリ)、入力部及び出力部を備えた情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段10の上述した各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)あるいはマイコンが用いられる。ただし、制御手段10の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。
【0035】
1.2 真空冷却装置1の動作
次に、
図2のフローチャートを参照して、本実施形態の真空冷却装置1の動作について説明する。本実施形態の真空冷却装置1は、制御手段10の制御により各真空ポンプ5A~5Cを駆動し、処理槽2内を減圧することにより、徐冷手段7による徐冷制御を行いつつ、処理槽2内に収容される被冷却物Fを冷却する。また、本実施形態の制御手段10は、ポンプ運転台数決定部103を備えており、処理槽2内の減圧が進んでくると、ポンプ運転台数決定部103の判断に基づいて一部の真空ポンプ(5A,5B,5C)の駆動を停止させるようになっている。
【0036】
以下、上記のような徐冷制御を含む、制御手段10による具体的な冷却制御について説明する。なお、真空冷却装置1の運転開始前において、徐冷手段7の徐冷弁72を除く各弁は閉じられた状態となっている。
【0037】
真空冷却装置1のスタートボタン(図示せず)が押されるなど、運転開始が指示されると、制御手段10は、ステップS1において、まず、徐冷弁72を全閉にするとともに、第1~第3真空ポンプ5A~5Cの駆動を開始させ、給水手段6の常温水給水弁62及び各封水弁51を開く。これにより、真空ポンプ5A~5Cに封水として常温水が供給され、3台の真空ポンプ5A~5Cによる処理槽2内の減圧が開始される。これにより、高温の被冷却物Fから発生される蒸気を含む空気が排気路11を通って排出される。
【0038】
また、同時に、制御手段10は、排水出口路43の排水出口弁45も開く。これにより、給水手段6からは熱交換器4にも常温水が供給されることになり、処理槽2内からの蒸気と常温水の間で熱交換が行われ、処理槽2内からの蒸気が凝縮されて真空ポンプ5A~5Cに送水される。一方、熱交換器4において吸熱した常温水は、排水出口路43を通って外部へと排出される。なお、ステップS1においては、槽内圧力がまだ高い状態であり被冷却物Fの沸騰や突沸は生じないので、徐冷弁72を全閉とし、且つ全ての真空ポンプ5A~5Cを駆動させることで処理槽2内の圧力を迅速に低下させる(急冷制御)。
【0039】
次に、制御手段10は、ステップS2において、運転開始から所定時間が経過したかどうかを判定する。そして、運転開始から所定時間が経過すると、ステップS3において、制御手段10は、常温水給水弁62を閉じるとともに冷水給水弁63を開いて、第1~第3真空ポンプ5A~5Cに封水として冷水を供給する。この際、各真空ポンプ5A~5Cの駆動は継続させる。封水として冷水を用いることにより、各真空ポンプ5A~5C内の飽和圧力を下げることができ、処理槽2内をさらに減圧することが可能となる。
【0040】
また、ステップS3において、制御手段10は、排水出口弁45を閉じるとともに冷水戻し弁44を開くことで、熱交換器4にも冷水を供給し、熱交換器4において吸熱した冷水を冷水タンク(図示せず)へと戻す。冷水タンクに戻された水は、チラー(図示せず)で冷却されて、再び冷水給水路61へ供給されることになる。熱交換器4にも冷水を供給することで、排気路11を通る気体を凝縮できるようになっている。
【0041】
さらに、ステップS3において、制御手段10は、徐冷手段7による徐冷制御を開始する。徐冷制御において、制御手段10の徐冷制御部102は、圧力センサ14の検出する上記複数の時間区分ごとの槽内圧力と、記憶部101に記憶された当該時間における目標圧力を比較する。そして、徐冷制御部102は、槽内圧力がその時間における目標圧力よりも低圧であれば、徐冷弁72の開度を大きくすることで、真空ポンプ5A~5Cによる処理槽2内の排気速度を低減する。
【0042】
一方、徐冷制御部102は、槽内圧力がその時間における目標圧力よりも高圧であれば、徐冷弁72の開度を小さくすることで、真空ポンプ5A~5Cによる処理槽2内の排気速度を増加させる。このような制御により、制御手段10の徐冷制御部102は、処理槽2の槽内圧力を素早く目標圧力に近づけ、予め設定された徐冷プログラムに沿うように処理槽2内の圧力を減圧することが可能となる。
【0043】
次に、ステップS4において、制御手段10のポンプ運転台数決定部103は、複数の時間区分ごとに、第2、第3真空ポンプ5B,5Cの排気能力の和が、上述した必要排気能力を超えているかどうかを判定する。そして、ポンプ運転台数決定部103は、第2、第3真空ポンプ5B,5Cの排気能力の和が必要排気能力を超えている場合には、第1真空ポンプ5Aの駆動は必要ないと判断して、次のステップS5において、第1真空ポンプ5Aの運転を停止する。また、合わせて、第1真空ポンプ5Aに対応する封水弁51も閉じる。
【0044】
第3真空ポンプ5Cの駆動を停止した後は、第2及び第3真空ポンプ5B,5Cの駆動により処理槽2内の減圧を継続する。この際、制御手段10のポンプ運転台数決定部103は、ステップS6において、複数の時間区分ごとに、第3真空ポンプ5Cの排気能力が、上述した必要排気能力を超えているかどうかを判定する。そして、ポンプ運転台数決定部103は、第3真空ポンプ5Cの排気能力が必要排気能力を超えている場合には、第2真空ポンプ5Bの駆動は必要ないと判断して、次のステップS7において、第2真空ポンプ5Bの運転を停止する。また、合わせて、第2真空ポンプ5Bに対応する封水弁51も閉じる。
【0045】
第2真空ポンプ5Bの駆動を停止した後は、第3真空ポンプ5Cの駆動により処理槽2内の減圧を継続する。この際、制御手段10は、ステップS8において、圧力センサ14の検出する槽内圧力が最終的な目標圧力(最終目標圧力)以下になったかどうかを判定する。そして、槽内圧力が最終目標圧力以下になると、真空冷却装置1による被冷却物Fの冷却を停止する。冷却を停止するには、具体的には、制御手段10は、冷水戻し弁44、封水弁51、冷水給水弁63の各弁を閉じ、第3真空ポンプ5Cの駆動を停止する。その後、徐冷手段7の徐冷弁72を開けて、処理槽2内を大気圧まで復圧する。なお、真空冷却装置1による冷却の停止は、運転開始からの経過時間によって決めることも可能である。
【0046】
1.3 作用効果
以上のように、本実施形態の真空冷却装置1は、第1~第3真空ポンプ5A~5Cの3台の真空ポンプにより、冷却開始直後は槽内圧力を迅速に減圧可能とするとともに、処理槽2内の減圧が進んで全ての真空ポンプ5A~5Cによる排気が必要なくなった場合には一部の真空ポンプ(5A,5B,5C)を停止させることで、ランニングコストを抑えることが可能となっている。
【0047】
また、本実施形態の真空冷却装置1では、制御手段10がポンプ運転台数決定部103を備え、ポンプ運転台数決定部103は、第1~第3真空ポンプ5A~5Cの運転台数を、槽内圧力のみに基づいて決定するのではなく、記憶部101に記憶された複数の時間区分ごとの必要排気能力に基づいて決定するよう構成されている。より具体的には、ポンプ運転台数決定部103は、真空ポンプ(5A,5B,5C)のうち1つの真空ポンプ(5A)の運転を停止しても残りの真空ポンプ(5B,5C)の排気能力の和がそのタイミングでの必要排気能力を超えている場合に、真空ポンプ5Aを停止させる。また、真空ポンプ(5B,5C)のうち1つの真空ポンプ(5B)の運転を停止しても残りの真空ポンプ(5C)の排気能力がそのタイミングでの必要排気能力を超えている場合に、当該1つの真空ポンプ(5B)の運転を停止させる。
【0048】
本実施形態の真空冷却装置1は、このような構成となっていることから、適切なタイミングで一部の真空ポンプ(例えば、第1真空ポンプ5A)を停止させることが可能となっている。つまり、一部の真空ポンプ(5A)の駆動停止後の残りの真空ポンプ(5B,5C)の排気能力の和が必要排気能力を下回ってしまうと、排気速度が徐冷プログラムに追いつかず処理槽2内の減圧が遅れてしまうことになるが、このような減圧の遅れを防止することが可能である。また、逆に、真空ポンプの排気能力の和が必要排気能力を大幅に超えた状態でも真空ポンプを停止しないでいると、徐冷弁72を全開にしても徐冷手段7による排気速度の低減が追いつかず、徐冷プログラムよりも早く減圧してしまうことになるが、このような徐冷プログラムを超えた過剰な減圧も防止することが可能である。そして、適切なタイミングで真空ポンプ(5A,5B,5C)の運転台数を削減可能となることで、大容量(大流量)の徐冷弁72により徐冷制御を行わなくても良くなり、部品コストも削減することが可能となる。
【0049】
2.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係る真空冷却装置1について説明する。本実施形態の真空冷却装置1は、第1実施形態に係る真空冷却装置1と類似しており、制御手段10の制御による第1~第3真空ポンプ5A~5Cの動作、具体的には、第1~第3真空ポンプ5A~5Cの運転台数の決定のしかたのみが異なっている。したがって、以下では、主に第1実施形態の真空冷却装置1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0050】
本実施形態に係る真空冷却装置1の制御手段10は、具体的には、ポンプ運転台数決定部103が、徐冷手段7による排気速度の低減率に基づいて、第1~第3真空ポンプ5A~5Cの運転台数を決定する。なお、本実施形態において、徐冷手段7による排気速度の低減率は、具体的には、徐冷弁72の開度により規定される。すなわち、徐冷弁72の開度が大きければ、給気路70を介して処理槽2内に多くの外気が導入されるため、排気速度は大きく低下し、排気速度の低減率は高くなる。一方、徐冷弁72の開度が小さければ、給気路70を介して処理槽2内にあまり外気が導入されないため、排気速度はあまり低下せず、排気速度の低減率は低くなる。以下、
図5のフローチャートを用いて、本実施形態の真空冷却装置1の冷却動作について説明する。
【0051】
2.1 真空冷却装置1の動作
真空冷却装置1のスタートボタン(図示せず)が押されるなど、運転開始が指示されると、制御手段10は、ステップS1において、まず、徐冷弁72を全閉にするとともに、第1~第3真空ポンプ5A~5Cの駆動を開始させ、給水手段6の常温水給水弁62及び各封水弁51を開く。これにより、真空ポンプ5A~5Cに封水として常温水が供給され、3台の真空ポンプ5A~5Cによる処理槽2内の減圧が開始される。これにより、高温の被冷却物Fから発生される蒸気を含む空気が排気路11を通って排出される。
【0052】
また、同時に、制御手段10は、排水出口路43の排水出口弁45も開く。これにより、給水手段6からは熱交換器4にも常温水が供給されることになり、処理槽2内からの蒸気と常温水の間で熱交換が行われ、処理槽2内からの蒸気が凝縮されて真空ポンプ5A~5Cに送水される。一方、熱交換器4において吸熱した常温水は、排水出口路43を通って外部へと排出される。なお、ステップS1においては、槽内圧力がまだ高い状態であり被冷却物Fの沸騰や突沸は生じないので、徐冷弁72を全閉とし、且つ全ての真空ポンプ5A~5Cを駆動させることで処理槽2内の圧力を迅速に低下させる(急冷制御)。
【0053】
次に、制御手段10は、ステップS2において、運転開始から所定時間が経過したかどうかを判定する。そして、運転開始から所定時間が経過すると、ステップS3において、制御手段10は、常温水給水弁62を閉じるとともに冷水給水弁63を開いて、第1~第3真空ポンプ5A~5Cに封水として冷水を供給する。この際、各真空ポンプ5A~5Cの駆動は継続させる。封水として冷水を用いることにより、各真空ポンプ5A~5C内の飽和圧力を下げることができ、処理槽2内をさらに減圧することが可能となる。
【0054】
また、ステップS3において、制御手段10は、排水出口弁45を閉じるとともに冷水戻し弁44を開くことで、熱交換器4にも冷水を供給し、熱交換器4において吸熱した冷水を冷水タンク(図示せず)へと戻す。冷水タンクに戻された水は、チラー(図示せず)で冷却されて、再び冷水給水路61へ供給されることになる。熱交換器4にも冷水を供給することで、排気路11を通る気体を凝縮できるようになっている。
【0055】
さらに、ステップS3において、制御手段10は、徐冷手段7の徐冷弁72の開度を調整することで処理槽2内の圧力を調整する徐冷制御を開始する。徐冷制御において、制御手段10の徐冷制御部102は、圧力センサ14の検出する複数の時間区分ごとの槽内圧力と、記憶部101に記憶された当該時間における目標圧力を比較する。そして、徐冷制御部102は、槽内圧力が目標圧力よりも低圧であれば、徐冷弁72の開度を大きくすることで、真空ポンプ5A~5Cによる処理槽2内の排気速度を低減する。一方、徐冷制御部102は、槽内圧力が目標圧力よりも高圧であれば、徐冷弁72の開度を小さくすることで、真空ポンプ5A~5Cによる処理槽2内の排気速度を増加させる。このような制御により、制御手段10の徐冷制御部102は、処理槽2の槽内圧力を目標圧力に近づけ、予め設定された徐冷プログラムに沿うように処理槽2内の圧力を減圧することが可能となる。
【0056】
次に、ステップS4において、制御手段10のポンプ運転台数決定部103は、徐冷手段7による処理槽2の排気速度の低減率が所定率以上であるかどうか、すなわち徐冷弁72の開度が第1所定開度以上であるかどうかを判定する。そして、ポンプ運転台数決定部103は、徐冷弁72の開度が第1所定開度以上(排気速度の低減率が所定率以上)であれば、3台の真空ポンプ5A~5Cによる排気は余剰であると判断して、次のステップS5において、第1真空ポンプ5Aの運転を停止する。一方、ポンプ運転台数決定部103は、徐冷弁72の開度が第1所定開度未満(排気速度の低減率が所定率未満)であれば、真空ポンプ5A~5Cの運転台数は適切であると判断して、3台の真空ポンプ5A~5Cによる排気を継続する。なお、第1所定開度は、具体的には例えば、30~40%とされる。ただし、第1所定開度は、徐冷弁72の流量特性やその他の条件によって適宜設定され、運転状況に応じて変更も可能である。
【0057】
第1真空ポンプ5Aの駆動を停止した後は、第2及び第3真空ポンプ5B,5Cの駆動により処理槽2内の減圧を継続する。この際、制御手段10のポンプ運転台数決定部103は、ステップS6において、徐冷手段7による処理槽2の排気速度の低減率が所定率以上であるかどうか、すなわち徐冷弁72の開度が第2所定開度以上(排気速度の低減率が所定率以上)であるかどうかを判定する。そして、ポンプ運転台数決定部103は、徐冷弁72の開度が第2所定開度以上であれば、2台の真空ポンプ5B,5Cによる排気は余剰であると判断して、次のステップS7において、第2真空ポンプ5Bの運転を停止する。
【0058】
一方、ポンプ運転台数決定部103は、徐冷弁72の開度が第2所定開度未満(排気速度の低減率が所定率未満)であれば、真空ポンプ5B,5Cの運転台数は適切であると判断して、2台の真空ポンプ5B,5Cによる排気を継続する。なお、第2所定開度は、第1所定開度と同じであってもよく、第1所定開度とは異なる値を設定しても良い。また、第2所定開度は、具体的には例えば、30~40%とされる。ただし、第2所定開度も、徐冷弁72の流量特性やその他の条件によって適宜設定され、運転状況に応じて変更も可能である。
【0059】
第2真空ポンプ5Bの駆動を停止した後は、第3真空ポンプ5Cの駆動により処理槽2内の減圧を継続する。この際、制御手段10は、ステップS8において、圧力センサ14の検出する槽内圧力が最終的な目標圧力(最終目標圧力)以下になったかどうかを判定する。そして、槽内圧力が最終目標圧力以下になると、真空冷却装置1による被冷却物Fの冷却を停止する。なお、冷却を停止するには、具体的には、制御手段10は、冷水戻し弁44、封水弁51、冷水給水弁63の各弁を閉じ、第3真空ポンプ5Cの駆動を停止する。その後、徐冷手段7の徐冷弁72を開けて、処理槽2内を大気圧まで復圧する。なお、真空冷却装置1による冷却の停止は、運転開始からの経過時間によって決めることも可能である。
【0060】
2.2 作用効果
以上のように、本実施形態の制御手段10のポンプ運転台数決定部103は、徐冷弁72の開度が所定開度以上であれば第1~第3真空ポンプ5A~5Cの運転台数を削減し、徐冷弁72の開度が所定開度未満であれば、第1~第3真空ポンプ5A~5Cの運転台数を削減しないようになっている。本実施形態の真空冷却装置1も、このような構成となっていることにより、適切なタイミングで一部の真空ポンプ(例えば、第1真空ポンプ5A)を停止させることが可能となっている。つまり、徐冷制御のため開閉する徐冷手段7の徐冷弁72の開度を取得することで、運転中の真空ポンプ(5A,5B,5C)の排気能力に余裕があるかどうかを推定することができる。そして、ポンプ運転台数決定部103が排気能力に余裕がある場合に真空ポンプ(5A,5B,5C)の運転台数を削減することで、槽内圧力を記憶部101の記憶する複数の時間区分ごとの目標圧力となるよう(徐冷プログラムに沿うよう)調整可能となっている。また、徐冷弁72の開度に基づいて第1~第3真空ポンプ5A~5Cの運転台数を削減するようにすることで、徐冷プログラムを追加・更新した場合(例えば、冷却速度を早めた場合)であっても、排気速度を維持することが可能となっている。
【0061】
4.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0062】
上記各実施形態において、制御手段10のポンプ運転台数決定部103は、駆動する真空ポンプ(5A,5B,5C)を3台、2台、1台と段階的に削減するよう判断していた。しかしながら、ポンプ運転台数決定部103は、徐冷プログラムによって、あるいは被冷却物Fの冷却状況等によっては、一度削減した駆動する真空ポンプ(5A,5B,5C)の台数を再度増加させるような判断をしても良い。
【0063】
上記各実施形態では、冷却運転において、まず、第1真空ポンプ5Aを停止させ、その後、第2真空ポンプ5Bの運転を停止させていたが、第1~第3真空ポンプ5A~5Cのうち停止させる真空ポンプは、毎回同じでなくても良い。
【0064】
上記各実施形態では、各真空ポンプ5A~5Cは水封式の真空ポンプであった。しかしながら、真空ポンプ5A~5Cは、他の方式のもの、例えば、回転数(排気量)を調整可能なドライポンプや、油回転式等であっても良い。
【0065】
上記各実施形態では、第1~第3真空ポンプ5A~5Cによる処理槽2の排気速度を低減する徐冷手段7が給気路70と徐冷弁72とを備え、減圧中の処理槽2内へ外気を導入することで処理槽2内の圧力を調整する構成であった。しかしながら、処理槽2の排気速度を低減する徐冷手段7は、このような構成に限定されない。例えば、第1~第3真空ポンプ5A~5Cが回転数を調整可能な真空ポンプ(例えば、ドライポンプ等)であり、制御手段10が各真空ポンプ5A~5Cの回転数を制御する回転数制御部(図示せず)を備えている場合には、当該回転数制御部を徐冷手段7とすることも可能である。この場合、徐冷手段7としての回転数制御部は、運転中の真空ポンプ(5A,5B,5C)の回転数を低下させることで、処理槽2の排気速度を低減することが可能である。
【0066】
そして、このような構成の場合には、ポンプ運転台数決定部103は、運転中の真空ポンプ(5A,5B,5C)の回転数に基づいて第1~第3真空ポンプ5A~5Cの運転台数を決定することが可能である。つまり、このような構成の場合、ポンプ運転台数決定部103は、徐冷手段7としての回転数制御部から各真空ポンプ5A~5Cの回転数を取得し、当該回転数の定格回転数に対する比を排気速度の低減率と規定する。そして、当該排気速度の低減率に基づいて運転中の真空ポンプ(5A,5B,5C)の排気能力に余裕があるかどうかを推定することで、第2実施形態の制御手段10と同様、適切なタイミングで一部の真空ポンプを停止させることが可能となる。
【0067】
また、排気路11又は真空ポンプ5A~5Cの給気ラインに開度調整が可能な自動弁(図示せず)が設けられている場合には、当該開度調整弁を処理槽2の排気速度を低減する徐冷手段7として用いることも可能である。この場合、徐冷手段7としての開度調整弁は、開度を小さくすることで処理槽2の排気速度を低減することが可能である。そして、このような構成の場合には、ポンプ運転台数決定部103は、開度調整弁の開度に基づいて第1~第3真空ポンプ5A~5Cの運転台数を決定することが可能である。つまり、このような構成の場合、ポンプ運転台数決定部103は、100%から徐冷手段7としての開度調整弁の開度(%)を引いた値を排気速度の低減率と規定する。そして、当該排気速度の低減率に基づいて運転中の真空ポンプ(5A,5B,5C)の排気能力に余裕があるかどうかを推定することで、第2実施形態の制御手段10と同様、適切なタイミングで一部の真空ポンプを停止させることが可能となる。
【0068】
上記各実施形態では、真空冷却装置1は3台の真空ポンプ5A~5Cを備える構成であった。しかしながら、真空冷却装置1が備える真空ポンプの数は、2台であってもよく、4台以上であっても良い。また、上記第1実施形態では、真空ポンプ5A~5CをステップS4及びS6において1台ずつ停止させていた。しかしながら、残りの真空ポンプの排気能力の和と必要排気能力との差に応じて、2台以上の真空ポンプを一度に停止させるようにしても良い。
【0069】
上記各実施形態の真空冷却装置1は、第1~第3真空ポンプ5A~5Cにより処理槽2内の気体(空気及び蒸気)を排気する構成であった。しかしながら、第1~第3真空ポンプ5A~5Cに加え、処理槽2と熱交換器4の間にエゼクタ(図示せず)を設け、処理槽2内の減圧が進んだ後は、エゼクタと第1~第3真空ポンプ5A~5Cとによって処理槽2内の気体(空気及び蒸気)を排気する構成とすることも可能である。ここで、エゼクタは、流体(例えば、蒸気)を高速で通過させることによって減圧域を作り、減圧域の周囲に設けた吸引口から流体を吸引するものである。
【0070】
上記各実施形態において、封水給水路50は、第1~第3真空ポンプ5A~5Cに対応して3本の封水給水路50A~50Cを備えていた。しかしながら、
図6に示すように、第1真空ポンプ5Aへの封水給水路50Aを2つの封水給水路50AX,50AYに分岐させ、各封水給水路50AX,50AYそれぞれに封水弁51X,51Y及び定流量弁52X,52Yを設けることも好適である(図示は省略するが、第2及び第3真空ポンプ5B,5Cも同様に封水給水路50B,50Cを分岐させる)。このような構成であれば、封水給水路50を介した各真空ポンプ5A~5Cへの封水の給水量を調整可能となる。すなわち、例えば、第1真空ポンプ5Aに供給される封水は、封水弁51X又は封水弁51Yのいずれか一方(例えば、封水弁51X)を開き他方(例えば、封水弁51Y)を閉じることで少流量となり、封水弁51X及び封水弁51Yをともに開くことで大流量となる。なお、具体的な制御としては、制御手段10は、真空冷却の開始後減圧が進むまでは、一方の封水弁51Xのみを開いて駆動中の真空ポンプ5A~5Cに少流量の封水(常温水又は冷水)を供給する。そして、制御手段10は、減圧が進んだ際には、両方の封水弁51X,51Yを開いて駆動中の真空ポンプ(例えば、第2及び第3真空ポンプ5B,5C)に大流量の封水(冷水)を供給する。このような制御により、給水量を節約しつつ、高真空状態では大流量の冷水を供給して駆動中の真空ポンプの排気能力を高めることが可能となる。
【0071】
さらに、前記実施形態では、真空冷却装置1は、冷却専用機として説明したが、少なくとも真空冷却機能を有するのであれば、適宜に変更可能である。たとえば、蒸気による加熱手段を備えることで、蒸煮冷却装置や飽和蒸気調理装置のように構成されてもよい。あるいは、冷凍機やファンを用いた冷風冷却手段を備えることで、冷風真空複合冷却装置のように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 :真空冷却装置
2 :処理槽
4 :熱交換器
5A :第1真空ポンプ
5B :第2真空ポンプ
5C :第3真空ポンプ
5x :給水口
5y :吸気口
5z :排気口
6 :給水手段
7 :徐冷手段
9A~9C :吸気ライン
10 :制御手段
11 :排気路
13A~13C :逆止弁
14 :圧力センサ(圧力検出手段)
15 :品温センサ
16 :封水温度センサ
17 :冷水温度センサ
40 :熱交給水路
41 :熱交排水路
42 :冷水戻し路
43 :排水出口路
44 :冷水戻し弁
45 :排水出口弁
50 :封水給水路
50A~50C :封水給水路
51 :封水弁
52 :定流量弁
60 :常温水給水路
61 :冷水給水路
62 :常温水給水弁
63 :冷水給水弁
64 :共通給水路
70 :給気路
71 :エアフィルタ
72 :徐冷弁
100 :目標圧力受付部
101 :記憶部
102 :徐冷制御部
103 :ポンプ運転台数決定部
F :被冷却物
S1~S8 :ステップ