(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両の荷室構造
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B60R5/04 Z
(21)【出願番号】P 2021072557
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】石井 真治
(72)【発明者】
【氏名】宮本 圭太
(72)【発明者】
【氏名】川浦 貴文
(72)【発明者】
【氏名】桑村 駿平
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-035767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0031670(US,A1)
【文献】特開2007-313916(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007059345(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0286009(US,A1)
【文献】特開2007-308024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00 - 7/14
B60P 3/00 - 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室構造において、
荷室の床面を構成するフロアパネルの上方に配置され、荷物が搭載可能なトランクボードと、
前記トランクボードに取り付けられ、前記荷物を覆うカーゴネットが係止可能なフック部材と、
前記荷室の内側面を構成する内装部材と、
前記内装部材に設けられ、前記フック部材が係合可能な被係合部であって、前記フック部材と係合した状態において前記トランクボードの上下方向の移動を規制する被係合部と、
を備えており、
前記フック部材は、前記被係合部と係合する係合状態と当該係合を解除した非係合状態とで切替可能で、かつ、前記カーゴネットが前記フック部材に係止されることにより、前記係合状態を保持する、
ことを特徴とする車両の荷室構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の荷室構造において、
前記フック部材は、前記カーゴネットが係止されるネット係止部と、前記内装部材側の前記被係合部に係合する係合部とを有する、
ことを特徴とする車両の荷室構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両の荷室構造において、
前記内装部材に設けられ、前記トランクボードを支持する第1支持部、および該第1支持部よりも下方の位置で前記トランクボードを支持する第2支持部をさらに備え、
前記被係合部は、前記第1支持部および第2支持部にそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする車両の荷室構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の荷室構造において、
前記トランクボードには、当該トランクボードの表面から裏面に貫通する開口部が形成され、
前記フック部材は、前記開口部の内部において前記係合状態と前記非係合状態とで切替可能に配置され、前記係合状態において前記トランクボードの前記表面および前記裏面の両面に突出し、当該トランクボードから突出した部分で前記被係合部に係合可能である、
ことを特徴とする車両の荷室構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両の荷室構造において、
前記フック部材は、前記トランクボードに対して回転自在に取り付けられることにより、前記係合状態と前記非係合状態とで切替可能である、
ことを特徴とする車両の荷室構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両の荷室構造において、
前記フック部材は、前記カーゴネットが係止されたときに前記非係合状態から前記係合状態に移行するように、前記トランクボードに取り付けられている、
ことを特徴とする車両の荷室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の荷室に荷物を載せる場合、車両走行中に荷物が移動することを防止するために、カーゴネットが一般に用いられる。
【0003】
特許文献1に記載される荷室構造は、荷室のフロアパネル上方に配置されたトランクボードを備えており、トランクボードには、カーゴネットの周縁に設けられたフックが係止可能な被係止部が設けられている。この荷室構造では、トランクボードに載置された荷物をカーゴネットが上方から覆った状態で、当該カーゴネットのフックがトランクボードの被係止部に係止されることにより、車両走行中の荷物の移動を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の荷室構造では、カーゴネット側のフックをトランクボードの被係止部に係止することにより、荷物をトランクボードに対して固定しているが、段差が大きな路面等を車両が走行した場合、荷物およびトランクボードが一体になって振動する。そのため、トランクボードと荷室の内側面を覆う内装部材との接触によって異音が車室内に発生し、さらにはトランクボードとの接触によって内装部材が傷つけられることが懸念される。
【0006】
なお、近年では荷室の利便性を向上させるために、トランクボードの表面と裏面の両方を使えるようにしたリバーシブル構造や、トランクボードの高さを変更可能な荷室構造など種々の荷室構造が提案されており、トランクボードのレイアウト自由度の向上の要望もある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、カーゴネット使用状態における荷物の車体への保持性能の向上と、荷室の利用目的に合わせたトランクボードのレイアウト自由度の向上とを両立することが可能な車両の荷室構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の車両の荷室構造は、荷室の床面を構成するフロアパネルの上方に配置され、荷物が搭載可能なトランクボードと、前記トランクボードに取り付けられ、前記荷物を覆うカーゴネットが係止可能なフック部材と、前記荷室の内側面を構成する内装部材と、前記内装部材に設けられ、前記フック部材が係合可能な被係合部であって、前記フック部材と係合した状態において前記トランクボードの上下方向の移動を規制する被係合部と、を備えており、前記フック部材は、前記被係合部と係合する係合状態と当該係合を解除した非係合状態とで切替可能で、かつ、前記カーゴネットが前記フック部材に係止されることにより、前記係合状態を保持することを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、トランクボードに取り付けられたフック部材は、荷室の内側面を構成する内装部材に設けられた被係合部に係合する係合状態と当該係合を解除した非係合状態とで切替可能である。フック部材は、荷物を覆うカーゴネットがフック部材に係止されることにより当該係合状態を保持する。この係合状態が保持されることにより、トランクボードの上下方向の移動を規制することが可能である。この構成では、トランクボードおよび荷物の両方がフック部材によって内装部材に対して固定された状態になるので、車両走行時に荷物およびトランクボードが振動で動くことを抑制することが可能である。
【0010】
また、トランクボードは、フック部材と被係合部との係合が解除された非係合状態では内装部材に拘束されておらず、表裏の反転や高さ位置の変更など自由に配置を変更可能であるので、荷室の利用目的に合わせたトランクボードのレイアウト自由度の向上が可能である。
【0011】
上記の車両の荷室構造において、前記フック部材は、前記カーゴネットが係止されるネット係止部と、前記内装部材側の前記被係合部に係合する係合部とを有するのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、フック部材は、その係合部が被係合部に係合することにより係合状態に移行し、荷物を覆うカーゴネットがフック部材のネット係止部に係止したときに当該係合状態を保持することによって、トランクボードの上下方向の移動を規制することが可能である。
【0013】
上記の車両の荷室構造において、前記内装部材に設けられ、前記トランクボードを支持する第1支持部、および該第1支持部よりも下方の位置で前記トランクボードを支持する第2支持部をさらに備え、前記被係合部は、前記第1支持部および第2支持部にそれぞれ設けられているのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、トランクボードを第1支持部および第2支持部のうちのいずれかによって支持された状態でも、トランクボード側のフック部材を被係合部に係合することが可能であり、トランクボードおよび荷物を内装部材に固定することが可能である。
【0015】
上記の車両の荷室構造において、前記トランクボードには、当該トランクボードの表面から裏面に貫通する開口部が形成され、前記フック部材は、前記開口部の内部において前記係合状態と前記非係合状態とで切替可能に配置され、前記係合状態において前記トランクボードの前記表面および前記裏面の両面に突出し、当該トランクボードから突出した部分で前記被係合部に係合可能であるのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、フック部材は、トランクボードの表面から裏面に貫通する開口部の内部において、係合状態と非係合状態で切替可能に取り付けられている。フック部材は、係合状態では、トランクボードの表面および裏面の両面に突出し、当該トランクボードから突出した部分で前記被係合部に係合可能である。これにより、トランクボードの表面および裏面のいずれか一方を上方に向いて使用しても、カーゴネットをトランクボードの上方からフック部材に係止することが可能である。
【0017】
上記の車両の荷室構造において、前記フック部材は、前記トランクボードに対して回転自在に取り付けられることにより、前記係合状態と前記非係合状態とで切替可能であるのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、フック部材はトランクボードに対して回転自在に取り付けられ、フック部材が回転することによって、係合状態と非係合状態とで切替可能である。したがって、フック部材の支持部分の構成が簡単になるとともに、フック部材を非係合状態と係合状態との間で切り替える操作を容易に行うことが可能である。
【0019】
上記の車両の荷室構造において、前記フック部材は、前記カーゴネットが係止されたときに前記非係合状態から前記係合状態に移行するように、前記トランクボードに取り付けられているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、フック部材は、カーゴネットが係止されたときに非係合状態から係合状態に移行するので、フック部材を非係合状態から係合状態に移行する手動操作が不要になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の車両の荷室構造によれば、カーゴネット使用状態における荷物の車体への保持性能の向上と、荷室の利用目的に合わせたトランクボードのレイアウト自由度の向上とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の荷室構造の構成を概略的に示す斜視説明図である。
【
図2】
図1の車室の内側面を構成する内装部材に設けられた第1支持部および第2支持部、ならびに各支持部に設けられた被係合部を示す拡大斜視図である。
【
図3】
図2の第1支持部および第2支持部、ならびに各支持部に設けられた被係合部の正面図である。
【
図6】
図1のトランクボード側端の開口部に設けられたフック部材が、内装部材に設けられた被係合部に係合する動作を示す斜視説明図である。
【
図7】
図1のトランクボードの側端の開口部に枠部材を介してフック部材が設けられた構造を示す拡大斜視図である。
【
図8】
図1の荷室構造におけるトランクボードのレイアウトの一例を示す説明図であって、トランクボードの前側部分と後側部分が同一高さに配置された状態を示す断面説明図である。
【
図9】
図1の荷室構造におけるトランクボードのレイアウトの他の例を示す説明図であって、トランクボードの前側部分が上段の第1支持部に配置され、後側部分が下段の第2支持部に配置され、前側部分と後側部分が上下方向に積層された状態を示す断面説明図である。
【
図10】
図1の荷室構造におけるトランクボードのレイアウトのさらに他の例を示す説明図であって、トランクボードの前側部分が上段の第1支持部に配置され、後側部分が下段の第2支持部の車両後方側に配置され、前側部分と後側部分とが階段状に配置された状態を示す断面説明図である。
【
図11】
図1の荷室構造におけるトランクボードのレイアウトのさらに他の例を示す説明図であって、トランクボードの前側部分が下段の第2支持部に配置され、後側部分が上段の第1支持部の車両後方側に配置され、前側部分と後側部分とが階段状に配置された状態を示す断面説明図である。
【
図12】
図1の荷室構造におけるトランクボードのレイアウトのさらに他の例を示す説明図であって、トランクボードの前側部分が下段の第2支持部に配置され、後側部分が上段の第1支持部に配置され、前側部分と後側部分が上下方向に積層された状態を示す断面説明図である。
【
図13】本発明の車両の荷室構造の変形例として、トランクボード側のフック部材が突起を有し、内装部材側の被係合部が当該突起に嵌合可能な係合穴によって構成されている構成を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0024】
本実施形態の荷室構造が適用される車両1の荷室7は、
図1に示されるように、荷物を収容するための広さを有する空間であり、例えば、車両1の後部に形成されている。具体的には、荷室7は、リヤシート3のやや後傾したシートバック3a(背もたれ)と、車両1の車幅方向Yの両側のサイドパネル2に固定された一対の内装部材6と、荷室7の床面を構成するフロアパネル4と、車両1後端のバックドア(図示せず)とによって形成されている。なお、
図1では、荷室7の内部を見えやすいように、図面手前側のサイドパネル2、内装部材6およびバックドアが省略されている。
【0025】
図1~3に示される荷室構造は、本発明の主要な構成として、上記の一対の内装部材6と、フロアパネル4の上方に配置され、荷物が搭載可能なトランクボード5と、トランクボード5の車幅方向Yの両側の側端に取り付けられた一対のフック部材8と、一対の内装部材6にそれぞれ設けられ、フック部材8が係合可能な被係合部9とを備えている。
【0026】
内装部材6は、
図2~3に示されるように、荷室7の内側面を構成し、樹脂などで形成された装飾部材(トリム)によって構成されている。内装部材6には、トランクボード5を支持する少なくとも1つの支持部が設けられている。具体的には、内装部材6には、トランクボード5の車幅方向Yの側縁を下方から支持する第1支持部11、および該第1支持部11よりも下方Z2の位置でトランクボード5の側縁を下方から支持する第2支持部12が設けられている。
【0027】
第1支持部11および第2支持部12は、トランクボード5の車幅方向Yの側縁を下方から支持することが可能な形状を有する。すなわち、第1支持部11および第2支持部12は、上下方向Zに離間した位置で車両前後方向に延びるレール状の部分であり、内装部材6の内側面から車幅方向Yにおいて車両中心へ向けて突出している。これにより、第1支持部11および第2支持部12の上に、トランクボード5の車幅方向Yの側縁が載置されることにより、当該トランクボード5を下方から支持することが可能である。
【0028】
図3に示されるように、上段の第1支持部11の車両前方側X1の端部には、前下がり、すなわち車両前方X1へ向かうにつれて下降する方向に傾斜した傾斜面11aを有する。一方、下段の第2支持部12の車両前方側X1の端部には、前上がり、すなわち車両前方X1へ向かうにつれて上昇する方向に傾斜した傾斜面12aを有する。
【0029】
また、第1支持部11および第2支持部12のそれぞれの車両後方側X2の端部近傍の部分には、トランクボード5が車両前後方向Xへ移動することを規制するための突起13が設けられている。
【0030】
被係合部9は、レール状の第1支持部11および第2支持部12にそれぞれ設けられている。具体的には、被係合部9は、トランクボード5の側縁が第1支持部11および第2支持部12のいずれか一方に下方から支持された状態で、トランクボード5に設けられたフック部材8が当該被係合部9に係合可能な位置に、それぞれ設けられている。さらに具体的には、上段の第1支持部11に設けられた被係合部9は、後傾したシートバック3aの傾斜角度に対応するように、下段の第2支持部12に設けられた被係合部9よりも車両後方側X2にオフセットした位置に配置されている。
【0031】
本実施形態の被係合部9は、車両前後方向Xに延びるレール状の第1支持部11および第2支持部12のそれぞれの途中に分断された位置に配置され、内装部材6の内側面から車幅方向Yにおいて車両中心へ向けて突出する突起によって構成されている。
【0032】
トランクボード5は、
図1および
図4~5に示されるように、車両前後方向Xに分割された前側部分5aと後側部分5bとを有する。トランクボード5の表面5fおよび裏面5gは異なる素材で形成され、例えば、表面5fが不織布で形成され、裏面5gが防水性の良い樹脂などの材料で形成されている。
【0033】
前側部分5aの車幅方向Yの両側端には、トランクボード5の表面5fから裏面5gに貫通する開口部5cが形成されている。本実施形態では、開口部5cは、前側部分5aの車幅方向Yの側端から車幅方向Yの外方に開いており、開口部5c内部に配置されたフック部材8を作業者の指で立ち上げやすい(アクセスしやすい)。なお、開口部5cは、前側部分5aの車幅方向Yの側端において車幅方向Yの外方に閉じていてもよい。
【0034】
本実施形態では、開口部5cの内周縁には、略U字状の枠部材10が取り付けられている。フック部材8は、枠部材10に回転自在に取り付けられている。すなわち、フック部材8は、枠部材10を介してトランクボード5に取り付けられている。枠部材10は、フック部材8を非係合状態(トランクボード5と略同一平面上になる状態)に保持するために、フック部材8の後述の係合部8dと係合可能な係合突起10aを有している。
【0035】
前側部分5aの車両前方側X1の端部には、当該前側部分5aに対して上下方向Zに揺動自在に取り付けられた薄板状のフラップ5hが設けられている。フラップ5hは、
図3に示される第1支持部11の傾斜面11aまたは第2支持部12の傾斜面12aに沿って配置されることにより、前側部分5aとシートバック3aとの隙間を小さくすることが可能である(
図8~12参照)。
【0036】
後側部分5bの車両後方側X2の端部付近であって車幅方向Yの中間位置には、取っ手5eが取り付けられており、取っ手5eを用いて当該後側部分5bを上方へ持ち上げてトランクボード5の下方空間を開きやすくなっている。さらに、後側部分5bの車両後方側X2かつ車幅方向Yの両側端には、フロアパネル4に設けられた突起(図示せず)に嵌合して後側部分5bの位置決めをするための位置決め孔5dが形成されている。
【0037】
フック部材8は、
図6~7に示されるように、トランクボード5の車幅方向Yの両側端の開口部5cの内部に配置され、内装部材6の被係合部9と係合する係合状態と当該係合を解除した非係合状態とで切替できるように、トランクボード5に対して回転自在に取り付けられている。
【0038】
本実施形態のフック部材8は、矩形リング状の本体8aと、当該本体8aをトランクボード5の開口部5cの内壁に回転自在に支持する回転軸8bとを有する。
【0039】
回転軸8bは、トランクボード5の面内方向であって車両前後方向Xに延びている。これにより、矩形リング状本体8aは、回転軸8bを回転中心として旋回し、トランクボード5と略同一平面上になる非係合状態と、トランクボード5の表面5fおよび裏面5gに突出する係合状態に切り替えることが可能である。
【0040】
矩形リング状の本体8aは、カーゴネット14が係止されるネット係止部8cと、内装部材6側の被係合部9と係合する係合部8dとを有する。矩形リング状の本体8aがトランクボード5と略同一平面上になる非係合状態で見た場合、係合部8dは当該本体8aの車幅方向Yの内側の部分によって構成され、ネット係止部8cは当該本体8aの車幅方向Yの外側の部分によって構成されている。
【0041】
以上のように構成されたフック部材8は、
図6に示されるように、トランクボード5の開口部5cの内部において係合状態と非係合状態とで切替可能に配置され、非係合状態から係合状態に移行したときに、トランクボード5の表面5fおよび裏面5gの両面に突出し、当該トランクボード5から下方に突出した係合部8dが被係合部9に係合すること可能である。そして、荷物Bを覆うカーゴネット14の周縁に取り付けられたフック15がフック部材8のネット係止部8cに係止したときに当該係合状態を保持することによって、トランクボード5の上下方向Zの移動を規制することが可能である。
【0042】
一方、カーゴネット14を使用しない場合には、フック部材8は、係合状態から非係合状態へ移行することにより、トランクボード5と同一平面上になり、被係合部9との係合が解除される。これにより、トランクボード5は内装部材6に拘束されておらず、表裏の反転や高さ位置の変更など自由に配置を変更可能である。
【0043】
例えば、
図8に示されるように、トランクボード5の前側部分5aを下段の第2支持部12によって支持し、トランクボード5の前側部分5aと後側部分5bが同一高さに配置された状態にする。このとき、後側部分5bの前方側X1の部分は、第2支持部12の車両後方側X2の部分12bに下方から支持され、後方側X2の部分は荷室7の後端に設けられた下側段部17に下方から支持される。
図8のようにトランクボード5を配置した場合、荷室7の内部に広い平面を形成することが可能であり、大きい荷物を載せることが可能になる。
図8に示されるトランクボード5の配置では、トランクボード5の前側部分5aに設けられたフック部材8は、下段の第2支持部12の被係合部9に係合し、荷物を覆うカーゴネット14のフック15(
図6参照)をフック部材8に係止すれば、フック部材8と被係合部9との係合状態を保持することによって、トランクボード5の前側部分5aの上下方向Zの移動を規制することが可能である。
【0044】
また、
図9に示されるように、トランクボード5の前側部分5aが上段の第1支持部11に配置され、後側部分5bが下段の第2支持部12に配置され、荷室7の前方側X1の位置において前側部分5aと後側部分5bが上下方向Zに積層された状態にしてもよい。この場合、荷室7の後方側X2において上下方向Zに広い空間が確保され、背の高い荷物Bを載せることが可能である。なお、この場合も、前側部分5aのフック部材8は、上段の第1支持部11の被係合部9に係合することが可能である。そのため、前側部分5aに別の荷物を置き、カーゴネット14で覆い、カーゴネット14のフック15をフック部材8に係止すれば、フック部材8と被係合部9との係合状態を保持することによって、トランクボード5の前側部分5aの上下方向Zの移動を規制することが可能である。
【0045】
また、
図10に示されるように、トランクボード5の前側部分5aが上段の第1支持部11に配置され、後側部分5bが下段の第2支持部12の車両後方側X2に配置され、前側部分5aと後側部分5bとが階段状に配置されてもよい。この場合、後側部分5bの前方側X1の部分は、第2支持部12の車両後方側X2の部分に下方から支持され、後方側X2の部分は荷室7の後端に設けられた下側段部17に下方から支持される。この場合、トランクボード5の後側部分5bが前側部分5aよりも若干下方の位置に配置されているので、後側部分5bに荷物Bを載せたときに前側部分5aが荷物Bの車両前方X1への移動を規制することが可能である。
【0046】
また、
図11に示されるように、トランクボード5の前側部分5aが下段の第2支持部12に配置され、後側部分5bが上段の第1支持部11の車両後方側X2に配置され、前側部分5aと後側部分5bとが階段状に配置されてもよい。この場合、後側部分5bの前方側X1の部分は、第1支持部11の車両後方側X2の部分11bに下方から支持され、後方側X2の部分は荷室7の後端に設けられた上側段部18に下方から支持される。この場合、トランクボード5の前側部分5aが後側部分5bよりも若干下方の位置に配置されているので、前側部分5aに荷物Bを載せたときに後側部分5bが荷物Bの車両後方X2への移動を規制することが可能である。
【0047】
さらに、
図12に示されるように、トランクボード5の前側部分5aが下段の第2支持部12に配置され、後側部分5bが上段の第1支持部11に配置され、荷室7の前方側X1の位置において、前側部分5aと後側部分5bが上下方向Zに積層された状態にしてもよい。この場合も上記
図9と同様に、荷室7の後方側X2において上下方向Zに広い空間が確保され、背の高い荷物Bを載せることが可能である。
【0048】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の車両1の荷室構造は、
図1および
図6~7に示されるように、荷室7の床面を構成するフロアパネル4の上方に配置され、荷物が搭載可能なトランクボード5と、トランクボード5に取り付けられ、荷物を覆うカーゴネット14がフック部材8に係止可能なフック部材8と、荷室7の内側面を構成する内装部材6と、内装部材6に設けられ、フック部材8が係合可能な被係合部9であって、フック部材8と係合した状態においてトランクボード5の上下方向Zの移動を規制する被係合部9とを備えている。
【0049】
フック部材8は、
図6に示されるように、被係合部9と係合する係合状態と当該係合を解除した非係合状態とで切替可能である。フック部材8は、カーゴネット14がフック部材8に係止されることにより、係合状態を保持する。
【0050】
かかる構成によれば、トランクボード5に取り付けられたフック部材8は、荷室7の内側面を構成する内装部材6に設けられた被係合部9に対する係合状態と非係合状態とで切替可能である。フック部材8は、荷物を覆うカーゴネット14がフック部材8に係止されることにより当該係合状態を保持する。この係合状態が保持されることにより、トランクボード5の上下方向Zの移動を規制することが可能である。この構成では、トランクボード5および荷物の両方がフック部材8によって内装部材6に対して固定された状態になるので、車両1の走行時に荷物およびトランクボード5が振動で動くことを抑制することが可能である。
【0051】
また、トランクボード5は、フック部材8と被係合部9との係合が解除された非係合状態では内装部材6に拘束されておらず、表裏の反転や
図8~12に示されるように高さ位置の変更など自由に配置を変更可能であるので、荷室7の利用目的に合わせたトランクボード5のレイアウト自由度の向上が可能である。換言すれば、本実施形態の荷室構造では、カーゴネット14によって荷物を固定する荷室構造においても、以下の(2)~(5)のように、内装部材6側の被係合部9にトランクボード5側のフック部材8の構造または内装部材6側の被係合部9の配置などの最適化により、トランクボード5のレイアウト自由度の向上が担保されている。
【0052】
(2)
本実施形態の車両1の荷室構造では、フック部材8は、カーゴネット14が係止されるネット係止部8cと、内装部材6側の被係合部9と係合する係合部8dとを有する。
【0053】
かかる構成によれば、フック部材8は、その係合部8dが被係合部9に係合する係合状態に移行し、荷物を覆うカーゴネット14がフック部材8のネット係止部8cに係止したときに当該係合状態を保持することによって、トランクボード5の上下方向Zの移動を規制することが可能である。
【0054】
(3)
本実施形態の車両1の荷室構造は、内装部材6に設けられ、トランクボード5を支持する第1支持部11、および該第1支持部11よりも下方の位置でトランクボード5を支持する第2支持部12をさらに備えている。被係合部9は、第1支持部11および第2支持部12にそれぞれ設けられている。
【0055】
かかる構成によれば、トランクボード5を第1支持部11および第2支持部12のうちのいずれかによって支持された状態でも、トランクボード5側のフック部材8を被係合部9に係合することが可能であり、トランクボード5および荷物を内装部材6に固定することが可能である。
【0056】
(4)
本実施形態の車両1の荷室構造では、トランクボード5には、当該トランクボード5の表面5fから裏面5gに貫通する開口部5cが形成されている。フック部材8は、開口部5cの内部において係合状態と非係合状態とで切替可能に配置され、係合状態においてトランクボード5の表面5fおよび裏面5gの両面に突出し、当該トランクボード5から突出した部分で被係合部9に係合可能である。
【0057】
かかる構成によれば、フック部材8は、トランクボード5の表面5fから裏面5gに貫通する開口部5cの内部において、係合状態と非係合状態で切替可能に取り付けられている。フック部材8は、係合状態では、トランクボード5の表面5fおよび裏面5gの両面に突出し、当該トランクボード5から突出した部分で被係合部9に係合可能である。これにより、トランクボード5の表面5fおよび裏面5gのいずれか一方を上方に向いて使用しても、カーゴネット14をトランクボード5の上方からフック部材8に係止することが可能である。その結果、トランクボード5を表裏両面で使用することが可能である。
【0058】
(5)
本実施形態の車両1の荷室構造では、フック部材8は、トランクボード5に対して回転自在に取り付けられることにより、係合状態と非係合状態とで切替可能である。
【0059】
かかる構成によれば、フック部材8はトランクボード5に対して回転自在に取り付けられ、フック部材8が回転することによって、係合状態と非係合状態とで切替可能である。したがって、フック部材8の支持部分の構成が簡単になるとともに、フック部材8を非係合状態と係合状態との間で切り替える操作を容易に行うことが可能である。
【0060】
(6)
なお、フック部材8は、カーゴネット14が係止されたときに非係合状態から係合状態に移行するように、トランクボード5に取り付けられているのが好ましい。この場合、フック部材8は、カーゴネット14が係止されたときに非係合状態から係合状態に移行するので、フック部材8を非係合状態から係合状態に移行する手動操作が不要になる。
【0061】
(変形例)
(A)
上記実施形態では、被係合部9は、内装部材6の内側面から車幅方向Yにおいて車両中心へ向けて突出する突起によって構成されているが、本発明の被係合部はこれに限定されない。本発明の荷室構造の変形例として、
図13に示されるように、トランクボード5側のフック部材8におけるネット係止部8cと反対側の位置に係合部としての突起8eが設けられている場合には、内装部材6側の被係合部が当該突起8eに嵌合可能な係合穴16によって形成されていてもよい。
【0062】
図13に示される構成においても、フック部材8は、内装部材6に形成された被係合部としての係合穴16に対して突起8eを係合する係合状態と当該係合を解除する非係合状態とで切替可能である。フック部材8は、非係合状態から係合状態に移行し、荷物を覆うカーゴネット14のフック15がフック部材8のネット係止部8cに係止したときに当該係合状態を保持することによって、トランクボード5の上下方向Zの移動を規制することが可能である。
【0063】
(B)
上記の実施形態では、本発明の荷室構造の一例として、車両1のリヤシート3の後方側X2に設けられた荷室7における構造を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、車両1の他の場所における荷室についても本発明を適用することが可能である。したがって、電気自動車などの車両のように車体前部に荷室が設けられている場合も、本発明の荷室構造を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 車両
4 フロアパネル
5 トランクボード
5a 前側部分
5b 後側部分
5c 開口部
5f 表面
5g 裏面
6 内装部材
7 荷室
8 フック部材
8c ネット係止部
8d 係合部
8e 突起(係合部)
9 被係合部
11 第1支持部
12 第2支持部
14 カーゴネット
15 フック
16 係合穴(被係合部)