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  • 特許-車両装備品搭載構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両装備品搭載構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/32 20190101AFI20241210BHJP
   B60K 15/01 20060101ALI20241210BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20241210BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241210BHJP
【FI】
F02M37/32
B60K15/01 Z
B62D25/20 G
B60K1/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021073251
(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公開番号】P2022167457
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】外園 和昭
(72)【発明者】
【氏名】村上 友和
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-172878(JP,A)
【文献】実開昭58-094871(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/32
B60K 15/01
B62D 25/20
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルの下方側に電力コンバータ、モータ駆動用バッテリ、及び燃料フィルタが搭載された車両装備品搭載構造において、
前記燃料フィルタの車両前方側に前記電力コンバータが配置され、
前記燃料フィルタの車両後方側に前記モータ駆動用バッテリが配置され、
車両前方側から車両後方側へ、前記電力コンバータ、前記燃料フィルタ及び前記モータ駆動用バッテリが並べて配置されており、
少なくとも前記燃料フィルタの下方側が、アンダーカバーに覆われており、
前記燃料フィルタの少なくとも一部は、車両正面視で、前記電力コンバータ及び前記モータ駆動用バッテリに重なるように配置され、
前記燃料フィルタの下面と前記アンダーカバーとの間の空間には、前記電力コンバータが発する放射熱により暖められた空気が流れることを特徴とする車両装備品搭載構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両装備品搭載構造において、
前記電力コンバータの後部の下面が、前記燃料フィルタの下面よりも相対的に下側に位置していることを特徴とする車両装備品搭載構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両装備品搭載構造において、
前記モータ駆動用バッテリの下面が、前記燃料フィルタの下面よりも相対的に下側に位置していることを特徴とする車両装備品搭載構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の車両装備品搭載構造において、
前記燃料フィルタ全体が、車両正面視で前記モータ駆動用バッテリに重なるように配置されていることを特徴とする車両装備品搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両装備品搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンの燃焼室に供給される燃料に含まれるゴミや異物の捕捉除去を行うための燃料フィルタが知られている。この燃料フィルタは、通常、整備・点検のために車両前部のエンジンルーム内に交換可能に装備されている。
【0003】
燃料フィルタの処理能力は、エンジンの排気量に比例した設定にする必要がある。このため、大きな排気量のエンジンを搭載した車両では大型の燃料フィルタを装備する必要がある。しかし、大きな排気量のエンジンを搭載した車両のエンジンルーム内に、大型の燃料フィルタを配置するスペースを確保することは難しい。
【0004】
そこで、フロアパネルの下面に燃料フィルタを配置することが提案されている。ところで、この燃料フィルタの低温時には燃料内に含まれたワックスが燃料フィルタ内で析出し、燃料フィルタの目詰まりが生じることがある。エンジンルーム内に燃料フィルタが装備されている場合、燃料フィルタがエンジンの熱を受熱することで昇温し、この目詰まりが抑制される。一方、エンジンルーム以外に燃料フィルタが装備されている場合、燃料フィルタを昇温させるための電気負荷や電気ヒータ等の装備を設けることで、この目詰まりを抑制することはできる。しかし、このような電気負荷や電気ヒータ等の装備を設けると、車両全体の電気消費率が悪化する懸念がある。
【0005】
特許文献1には、フロアパネルの下面に設けられた燃料フィルタの後方近傍位置に電気部品を配置することが記載されている。この後方近傍に配置された電気部品の熱によって燃料フィルタを昇温させることで、電気消費率の悪化を招かずに燃料フィルタを昇温することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-172878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の燃料供給装置では、燃料フィルタの後方近傍位置の電気部品のさらに後方に燃料タンクが配置されている。このため、電気部品の発する熱は、燃料フィルタだけではなく燃料タンクにも伝熱される。このように、燃料タンクに電気部品の発する熱が奪われると、燃料フィルタの早期の昇温が抑制される可能性がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フロアパネルの下面に取り付けられた燃料フィルタを電気消費率を悪化させることなく昇温させ、燃料のワックス成分の析出による燃料フィルタの目詰まりを防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、燃料フィルタの前方に電力コンバータを、燃料フィルタの後方にモータ駆動用バッテリを配置することで、燃料フィルタが前方と後方とから受熱するようにした。
【0010】
具体的に、ここに開示する車両装備品搭載構造は、
車両のフロアパネルの下方側に電力コンバータ、モータ駆動用バッテリ、及び燃料フィルタが搭載されたエンジンの車両装備品搭載構造において、
前記燃料フィルタの車両前方側に前記電力コンバータが配置され、
前記燃料フィルタの車両後方側に前記モータ駆動用バッテリが配置され、
車両前方側から車両後方側へ、前記電力コンバータ、前記燃料フィルタ及び前記モータ駆動用バッテリが並べて配置されており、
少なくとも前記燃料フィルタの下方側が、アンダーカバーに覆われており、
前記燃料フィルタの少なくとも一部は、車両正面視で、前記電力コンバータ及び前記モータ駆動用バッテリに重なるように配置され、
前記燃料フィルタの下面と前記アンダーカバーとの間の空間には、前記電力コンバータが発する放射熱により暖められた空気が流れることを特徴とする。
【0011】
この車両装備品搭載構造によれば、燃料フィルタは、その前方からは電力コンバータの放射熱を、後方からはモータ駆動用バッテリの放射熱を受熱する。このように、燃料フィルタは前後両方から暖められるために昇温しやすく、燃料フィルタ内での燃料のワックス成分の析出を抑制できる。
【0012】
また、これら電力コンバータ及びモータ駆動用バッテリの放射熱により、燃料フィルタ周辺のフロアパネルとアンダーカバーとの間の空間の空気が暖められる。この空気により燃料フィルタが暖められるため、燃料フィルタの保温性が向上する。これにより、燃料フィルタの内での燃料のワックス成分の析出を抑制できる。
【0013】
さらに、アンダーカバーにより、燃料フィルタが走行風によって冷却されることが抑制され、その保温性が向上するようになっている。これにより、燃料のワックス成分の析出を抑制できる。
【0014】
一実施形態では、前記電力コンバータの後部の下面が、前記燃料フィルタの下面よりも相対的に下側に位置していることを特徴とする。
【0015】
このようにすれば、電力コンバータの放射熱によって暖められた空気が、燃料フィルタの下面とアンダーカバーとの間の空間に流れやすくなり、その空間の空気を暖めることができる。暖められた空気が上昇することで燃料フィルタが暖められるため、その保温性が向上する。これにより、燃料フィルタ内で燃料のワックス成分の析出を抑制でき、燃料フィルタの目詰まりを防ぐことができる。
【0016】
一実施形態では、前記モータ駆動用バッテリの下面が、前記燃料フィルタの下面よりも相対的に下側に位置していることを特徴とする。
【0017】
このようにすれば、電力コンバータの発する放射熱により暖められた空気が燃料フィルタの下面を経由して後方へ流れたとき、この空気をモータ駆動用バッテリによってせき止めることができる。このため、暖められた空気が燃料フィルタ周辺に籠ることになり、燃料フィルタの保温性を向上することができる。これにより、燃料フィルタ内で燃料のワックス成分の析出を抑制でき、燃料フィルタの目詰まりを防ぐことができる。
【0018】
一実施形態では、前記燃料フィルタ全体が、車両正面視で前記モータ駆動用バッテリに重なるように配置されていることを特徴とする。
【0019】
このようにすれば、電力コンバータの発する放射熱により暖められた空気が燃料フィルタの周辺を経由して後方へ流れたとき、この空気をモータ駆動用バッテリによってせき止めることができる。このため、暖められた空気が燃料フィルタ周辺に籠ることになり、燃料フィルタの保温性を向上することができる。これにより、燃料フィルタ内における燃料のワックス成分の析出を抑制でき、燃料フィルタの目詰まりを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車両のフロアパネルの下面に設けられた燃料フィルタが、燃料のワックス成分が析出することによって目詰まりすることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、車両の下面図である。
図2図2は、車両の下面図である。
図3図3は、電力コンバータ、燃料フィルタ及びモータ駆動用バッテリの位置関係を示す下面図である。
図4図4は、電力コンバータ、燃料フィルタ及びモータ駆動用バッテリの位置関係を示す縦断面図である、
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0023】
図1は、車両を下側から見た図である。この車両は、ディーゼルエンジンとモータとを組み合わせたハイブリット車である。図1においては、上下方向が車幅方向、左側が車両前方、右側が車両後方、紙面奥側が上側、紙面手前側が下側である。車両の車幅方向両端には、車両前後方向に延びるサイドシルSSが設けられている。サイドシルSSには、空気抵抗を抑えたり、機材を保護したりするためのアンダーカバー1が固定されている。このアンダーカバー1によって、この車両は下方側の全面が覆われている。図1では、車幅方向における略中央部に設けられた、車両前後方向に延びるプロペラシャフトPSを図示するために、部分的にアンダーカバー1が取り外されている。
【0024】
図2は、図1のアンダーカバー1を部分的に取り外した図である。これにより、車両のフロアパネル2とアンダーカバー1との間の構成が示されている。図2に示すように、サイドシルSSの内側には、車両前後方向に延び且つフロアパネル2の下面に取り付けられたフロアフレーム3が設けられている。フロアフレーム3は、上側に開口を持ったU字状である。この車両には、車両前方側(図2で左側)から車両後方側(図2で右側)へ、電力コンバータ4、燃料フィルタ5及びモータ駆動用バッテリ6が並べて配置されている。上述のアンダーカバー1によって、これら電力コンバータ4、燃料フィルタ5及びモータ駆動用バッテリ6が下方側から覆われている。
【0025】
モータ駆動用バッテリ6は、例えばリチウムイオンバッテリである。このモータ駆動用バッテリ6は、高電圧の直流電源である。モータ駆動用バッテリ6からは、車両の走行用モータ(図示せず)を駆動するために電力が供給される。モータ駆動用バッテリ6は、その充放電時に発熱する。
【0026】
電力コンバータ4は、直流電流を変圧するためのものである(いわゆるDC/DCコンバータ)。電力コンバータ4の内部には、IGBT等、複数のスイッチング素子、コンデンサ、コイルを含む降圧回路が設けられている。電力コンバータ4は、スイッチング素子をオンオフ制御することによって、直流電流の電圧を降圧させることができる。このスイッチング制御に伴って、電力コンバータ4は発熱する。電力コンバータ4には、モータ駆動用バッテリ6から電力が供給される。電力コンバータ4により降圧させられた電力により、ヘッドライトやオーディオ等の電装品や車両の電気装置等が作動する。
【0027】
燃料フィルタ5は、エンジンの燃焼室に燃料を供給するための燃料供給装置を構成している。燃料フィルタ5は、燃焼室に供給される燃料に含まれるゴミや異物の捕捉除去を行うためのものである。燃料フィルタ5は、金属製の楕円筒形状のケースに、補強材やフィルタ要素等を収容することで形成されている。燃料フィルタ5には、燃料パイプ51が接続されている。燃料パイプ51を介して燃料フィルタ5内を燃料が経由することにより、フィルタ要素に燃料中のゴミや異物が捕捉される。この燃料フィルタ5は、ブラケット7を介してフロアパネル2の下面に取り付けられている。このブラケット7は車幅方向外側がフロアフレーム3に、車幅方向内側がフロアパネル2に夫々固定されている。
【0028】
これらの、電力コンバータ4、燃料フィルタ5及びモータ駆動用バッテリ6の位置関係(車両への搭載構造)が図3及び図4に示されている。図3及び図4においては、図で右側が車両前側、左側が車両後側になっている。
【0029】
図3に示すように、モータ駆動用バッテリ6の車幅方向(図3で上下方向)の寸法が、燃料フィルタ5の車幅方向の寸法よりも大きくなっている。また、モータ駆動用バッテリ6の車幅方向内側(図3で上側)の端部は、燃料フィルタ5の車幅方向内側の端部に比べて、車幅方向内側に位置している。さらに、モータ駆動用バッテリの車幅方向外側(図3で下側)の端部は、燃料フィルタ5の車幅方向外側の端部に比べて、車幅方向外側に位置している。このようにして、車両正面視で、燃料フィルタ5の車幅方向全体がモータ駆動用バッテリ6に重なるように配置されている。
【0030】
図4に示すように、電力コンバータ4は、車両前方から車両後方に向けて下側に傾斜するように傾けて配置されている。これにより、電力コンバータ4の後部の下面が、燃料フィルタ5の下面よりも相対的に下側(図4で下側)に位置している。また、燃料フィルタ5の上下方向の寸法は、モータ駆動用バッテリ6の上下方向の寸法に比べ小さくなっている。これにより、モータ駆動用バッテリ6の下面が、燃料フィルタ5の下面よりも相対的に下側に位置している。また、モータ駆動用バッテリ6の上面が、燃料フィルタ5の上面よりも相対的に上側に位置している。このようにして、車両正面視で、燃料フィルタ5の上下方向全体がモータ駆動用バッテリ6に重なるように配置されている。
【0031】
<燃料フィルタの受熱>
本実施形態によれば、燃料フィルタ5はフロアパネル2の下面に配置されている。このため、大型の燃料フィルタ5を車両に搭載することができる。この燃料フィルタ5の前方には、電力コンバータ4が配置されている。このため、電力コンバータ4が作動することで発する放射熱を、燃料フィルタ5が前方から受熱する。これにより、燃料フィルタ5が昇温し、燃料のワックス成分の析出が抑制され、ワックス成分によって燃料フィルタ5が目詰まりすることを防ぐことができる。
【0032】
車両走行中、電力コンバータ4が発する放射熱により暖められた空気は後方へ流れる。この電力コンバータ4の後部の下面は燃料フィルタ5の下面よりも相対的に低い位置にある。このため、電力コンバータ4の放射熱により暖められた空気は、燃料フィルタ5とアンダーカバー1との間を通りやすくなっている。これにより、燃料フィルタ5とアンダーカバー1との間の空間の空気が暖められる。この空気は暖められることで燃料フィルタ5の方へ上昇し、この空気の熱を燃料フィルタ5が受熱する。このようにして、燃料フィルタ5が昇温することで、燃料フィルタ5内での燃料のワックス成分の析出を抑制でき、燃料フィルタの目詰まりを防ぐことができる。
【0033】
また、燃料フィルタ5の下側がアンダーカバー1に覆われていることにより、燃料フィルタ5が走行風によって冷却されることが抑制されている。これにより、燃料フィルタ5の保温性が向上し、燃料フィルタ5の温度が低下して燃料のワックス成分が析出することによる、燃料フィルタ5の目詰まりを抑制できる。
【0034】
電力コンバータ4が発する放射熱により暖められた空気は、モータ駆動用バッテリ6によってせき止められる。このモータ駆動用バッテリ6は、上述のように車幅方向及び上下方向において車両正面視で燃料フィルタ5全体が完全に重なるように配置されている。これにより、燃料フィルタ5の車幅方向両側や下側等の燃料フィルタ5の周辺を経由して後方へ流れた空気がモータ駆動用バッテリ6にせき止められることとなる。このため、電力コンバータ4の発する放射熱により暖められた空気が燃料フィルタ5の周辺に籠ることになり、燃料フィルタ5の保温性が向上する。従って、燃料フィルタ5内での燃料のワックス成分の析出を抑制でき、燃料フィルタ5の目詰まりを防ぐことができる。
【0035】
さらに、モータ駆動用バッテリ6が作動することで発する放射熱を、燃料フィルタ5が車両後側から受熱する。これにより、燃料フィルタ5が昇温し、燃料のワックス成分の析出が抑制され、燃料フィルタ5の目詰まりすることを防ぐことができる。また、燃料フィルタは、前方から電力コンバータ4の放射熱を、後方からモータ駆動用バッテリ6の放射熱を受熱するため、昇温しやすくなっている。
【符号の説明】
【0036】
1 アンダーカバー
2 フロアパネル
4 電力コンバータ
5 燃料フィルタ
6 モータ駆動用バッテリ
図1
図2
図3
図4