(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】制御装置、車両管理システム及び車両管理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20241210BHJP
B60R 25/01 20130101ALI20241210BHJP
G06Q 50/26 20240101ALI20241210BHJP
【FI】
G08G1/09 V
B60R25/01
G06Q50/26
(21)【出願番号】P 2021078795
(22)【出願日】2021-05-06
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【氏名又は名称】河合 隆慶
(72)【発明者】
【氏名】林 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】柏井 忠大
(72)【発明者】
【氏名】松谷 慎太郎
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086847(JP,A)
【文献】特開2021-054233(JP,A)
【文献】特開2019-108080(JP,A)
【文献】特開2019-215657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車中泊に供される車両を示す車両情報が格納される記憶部と、
災害発生時に前記車両情報を用い、前記車両に、ドアを解錠するとともに運転のための操作に応じた動作を停止するモードに移行させるための指示を出力する制御部とを有する、制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記車両から位置情報を取得し、前記車両の位置が所定の条件を満たすことを条件として、前記指示を出力する、
制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記指示は、前記車両が車中泊をする避難者を認証するための認証情報を取得することを、当該車両が前記ドアを開錠するための条件として含む、
制御装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記制御部は、前記車両にて取得される前記認証情報による認証が成立することを条件として、当該避難者による操作に応じて前記車両に前記ドアを施錠又は解錠させるための指示を出力する、
制御装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記指示は、前記避難者の認証情報が他の車両を前記モードに移行させるために用いられていないことを、前記車両が前記ドアを開錠するための条件として含む、
制御装置。
【請求項6】
請求項3又は5において、
前記認証情報は、当該避難者の顔の特徴、指紋の特徴、パスワード、及び暗証番号の一以上を含む、
制御装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかにおいて、
前記運転のための操作に応じた動作は、シフト切替操作に応じたパーキングレンジの解除、エンジンの始動操作に応じたエンジンの始動、及びパーキングブレーキの解除操作に応じたパーキングブレーキの解除の一以上を含む、
制御装置。
【請求項8】
車中泊に供される車両と制御装置とを有する車両管理システムであって、
前記制御装置が、前記車両を示す車両情報が格納される記憶部と、災害発生時に前記車両情報を用い、前記車両に、ドアを解錠するとともに運転のための操作に応じた動作を停止するモードに移行させるための指示を出力する制御部とを有し、
前記車両が、前記指示に応じて前記モードに移行する、
車両管理システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記制御部は、前記車両から位置情報を取得し、前記車両の位置が所定の条件を満たすことを条件として、前記指示を出力する、
車両管理システム。
【請求項10】
請求項8又は9において、
前記指示は、前記車両が車中泊をする避難者を認証するための認証情報を取得することを、当該車両が前記ドアを開錠するための条件として含む、
車両管理システム。
【請求項11】
請求項9において、
前記制御部は、前記車両にて取得される前記認証情報による認証が成立することを条件として、当該避難者による操作に応じて前記車両に前記ドアを施錠又は解錠させるための指示を出力する、
車両管理システム。
【請求項12】
請求項10において、
前記指示は、前記避難者の認証情報が他の車両を前記モードに移行させるために用いられていないことを、前記車両が前記ドアを開錠するための条件として含む、
車両管理システム。
【請求項13】
請求項10又は12において、
前記認証情報は、当該避難者の顔の特徴、指紋の特徴、パスワード、及び暗証番号の一以上を含む、
車両管理システム。
【請求項14】
請求項8~13のいずれかにおいて、
前記運転のための操作に応じた動作は、シフト切替操作に応じたパーキングレンジの解除、エンジンの始動操作に応じたエンジンの始動、及びパーキングブレーキの解除操作に応じたパーキングブレーキの解除の一以上を含む、
車両管理システム。
【請求項15】
車中泊に供される車両と制御装置とを有する車両管理システムの車両管理方法であって、
災害発生時に前記制御装置の制御部が、記憶部に格納される前記車両を示す車両情報を用い、前記車両に、ドアを解錠するとともに運転のための操作に応じた動作を停止するモードに移行させるための指示を出力し、
前記車両が、前記指示に応じて前記モードに移行する、
車両管理方法。
【請求項16】
請求項15において、
前記制御部は、前記車両から位置情報を取得し、前記車両の位置が所定の条件を満たすことを条件として、前記指示を出力する、
車両管理方法。
【請求項17】
請求項15又は16において、
前記指示は、前記車両が車中泊をする避難者を認証するための認証情報を取得することを、当該車両が前記ドアを開錠するための条件として含む、
車両管理方法。
【請求項18】
請求項16において、
前記制御部は、前記車両にて取得される前記認証情報による認証が成立することを条件として、当該避難者による操作に応じて前記車両に前記ドアを施錠又は解錠させるための指示を出力する、
車両管理方法。
【請求項19】
請求項17において、
前記指示は、前記避難者の認証情報が他の車両を前記モードに移行させるために用いられていないことを、前記車両が前記ドアを開錠するための条件として含む、
車両管理方法。
【請求項20】
請求項15~19のいずれかにおいて、
前記運転のための操作に応じた動作は、シフト切替操作に応じたパーキングレンジの解除、エンジンの始動操作に応じたエンジンの始動、及びパーキングブレーキの解除操作に応じたパーキングブレーキの解除の一以上を含む、
車両管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、車両管理システム及び車両管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害発生時には、駐車場、駐輪場といった施設又は路上等に、車両が駐停車されたまま放置されるといった事態が想定される。そのような車両を、車両自体が被災することを回避し、又は避難者の避難経路を妨害しないようにするために、遠隔制御により移動可能な状態にする技術が種々提案されている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-224748号公報
【文献】特開2008-90421号公報
【文献】特開2019-108080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
災害時に車両を遠隔制御する場合において、避難者及び車両の所有者の利便性を更に向上させる余地がある。
【0005】
本開示は、災害時に避難者及び車両の所有者の利便性向上を可能にする制御装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における制御装置は、車中泊に供される車両を示す車両情報が格納される記憶部と、災害発生時に前記車両情報を用い、前記車両に、ドアを解錠するとともに運転のための操作に応じた動作を停止するモードに移行させるための指示を出力する制御部とを有する。
【0007】
本開示における車両管理システムは、車中泊に供される車両と制御装置とを有するシステムであって、前記制御装置が、前記車両を示す車両情報が格納される記憶部と、災害発生時に前記車両情報を用い、前記車両に、ドアを解錠するとともに運転のための操作に応じた動作を停止するモードに移行させるための指示を出力する制御部とを有し、前記車両が、前記指示に応じて前記モードに移行する。
【0008】
本開示における車両管理方法は、前記制御装置の制御部が、記憶部に格納される前記車両を示す車両情報を用い、前記車両に、ドアを解錠するとともに運転のための操作に応じた動作を停止するモードに移行させるための指示を出力し、前記車両が、前記指示に応じて前記モードに移行する。
【発明の効果】
【0009】
本開示における制御装置等によれば、災害時に避難者及び車両の所有者の利便性向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】車両管理システムの動作例を示すシーケンス図である。
【
図5】車両管理システムの動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、一実施形態における車両管理システムの構成例を示す図である。車両管理システム1は、ネットワーク11を介して互いに情報通信可能に接続される、それぞれ一以上のサーバ装置10及び車両12を有する。サーバ装置10は、例えば、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属し、各種機能を実装するサーバとして機能するサーバコンピュータである。車両12は、通信機能と情報処理機能とを備える乗用車、商用車等であって、移動通信ネットワークを介してネットワーク11に接続される。車両12は、運転手によって運転されてもよいし、任意のレベル(例えば、SAE(Society of Automotive Engineers)におけるレベル1~レベル5のいずれか)で運転が自動化されていてもよい。ネットワーク11は、例えばインターネットであるが、アドホックネットワーク、LAN、MAN(Metropolitan Area Network)、もしくは他のネットワーク又はこれらいずれかの組合せが含まれる。
【0013】
本実施形態において、車両12は、自然災害、人的災害等の災害発生時に、宿泊可能な避難所を必要とする避難者のための車中泊用に供される。サーバ装置10は、「制御装置」に対応し、車中泊に供される車両12を示す車両情報が格納される記憶部と、災害発生時に車両情報を用い、車両12に、ドアを解錠するとともに運転のための操作に応じた動作を停止するモード(以下、車中泊モードという)に移行させるための指示を出力する制御部とを有する。災害発生時に車両12が放置された状態であっても、車両12が車中泊モードに移行してドアを開錠することで、車両12の所有者以外の避難者が車内に入り車中泊をすることが可能となる。また、車両12が運転のための操作に応じた動作を停止することで、所有者が関知しないまま車両12が移動させられたり持ち去られたりすることを回避でき、車両12の所有者が安心して車両12を公益のために提供することが可能となる。このように、災害時に、避難者及び車両12の所有者の利便性向上が可能となる。
【0014】
図2は、サーバ装置10の構成例について説明するための図である。サーバ装置10は、通信部21、記憶部22、制御部23、入力部25、及び出力部26を有する。サーバ装置10は、例えば、一のコンピュータである。または、サーバ装置10は、情報通信可能に接続されて連携動作する二以上のコンピュータで構成されてもよい。その場合、
図2に示す構成は二以上のコンピュータに適宜に配置される。
【0015】
通信部21は、一以上の通信用インタフェースを含む。通信用インタフェースは、例えば、LANインタフェースである。通信部21は、サーバ装置10の動作に用いられる情報を受信し、またサーバ装置10の動作によって得られる情報を送信する。サーバ装置10は、通信部21によりネットワーク11に接続され、ネットワーク11経由で車両12と情報通信を行う。
【0016】
記憶部22は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する一以上の半導体メモリ、一以上の磁気メモリ、一以上の光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)である。RAMは、例えば、SRAM(Static RAM)又はDRAM(Dynamic RAM)である。ROMは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)である。記憶部22は、サーバ装置10の動作に用いられる情報と、サーバ装置10の動作によって得られた情報とを格納する。
【0017】
制御部23は、一以上のプロセッサ、一以上の専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化したGPU(Graphics Processing Unit)等の専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。制御部23は、サーバ装置10の各部を制御しながら、サーバ装置10の動作に係る情報処理を実行する。
【0018】
入力部25は、一以上の入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイクロフォンである。入力部25は、サーバ装置10の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付け、入力される情報を制御部23に送る。
【0019】
出力部26は、一以上の出力用インタフェースを含む。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイである。出力部26は、サーバ装置10の動作によって得られる情報を出力する。
【0020】
サーバ装置10の機能は、制御プログラムを、制御部23に含まれるプロセッサで実行することにより実現される。制御プログラムは、サーバ装置10の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、そのステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムである。すなわち、制御プログラムは、コンピュータをサーバ装置10として機能させるためのプログラムである。また、サーバ装置10の一部又は全ての機能が、制御部23に含まれる専用回路により実現されてもよい。また、制御プログラムは、サーバ装置10に読取り可能な非一過性の記録・記憶媒体に格納され、サーバ装置10が媒体から読み取ってもよい。
【0021】
図3は、本実施形態に関する車両12の構成例を示す。車両12は、通信部31、記憶部32、制御部33、測位部34、入力部35、出力部36、検知部37、撮像部38、及びECU(Electronic Control Unit)39を有する。これらの一以上が一の制御装置として構成されてもよいし、タブレット端末を含むパーソナルコンピュータ、スマートフォン端末、ナビゲーション装置により構成されてもよい。あるいは、各部がCAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワークを介して情報通信可能に接続されてもよい。車両12の各部は、例えば、車両12が駐車されてアクセサリがオフの状態であってもバッテリ電源により動作可能に構成される。
【0022】
通信部31は、一以上の通信用インタフェースを含む。通信用インタフェースは、例えば、LTE、4G、若しくは5Gなどの移動通信規格に対応したインタフェースである。通信部31は、制御部33の動作に用いられる情報を受信し、また制御部33の動作によって得られる情報を送信する。制御部33は、通信部31により、移動体通信の基地局を介してネットワーク11に接続され、ネットワーク11経由で他の装置と情報通信を行う。
【0023】
記憶部32は、一以上の半導体メモリ、一以上の磁気メモリ、一以上の光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、RAM又はROMである。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。ROMは、例えば、EEPROMである。記憶部32は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部32は、制御部33の動作に用いられる情報と、車載装置30の動作によって得られた情報とを格納する。
【0024】
制御部33は、一以上のプロセッサ、一以上の専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA又はASICである。制御部33は、制御部33の各部を制御しながら、車両12の動作に係る情報処理を実行する。
【0025】
測位部34は、一以上のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を含む。GNSSには、例えば、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)、BeiDou、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、及びGalileoの少なくともいずれかが含まれる。測位部34は、車両12の位置情報を取得する。
【0026】
入力部35は、一以上の入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイクロフォンである。入力インタフェースは、さらに、撮像画像又は画像コードを取り込むカメラ、又はICカードリーダーを含んでもよい。入力部35は、制御部33の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付け、入力される情報を制御部33に送る。
【0027】
出力部36には、一以上の出力用インタフェースを含む。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。出力部36は、制御部33の動作によって得られる情報を出力する。
【0028】
検知部37は、車両12の各部の状態を検知する一以上のセンサとのインタフェース、又は一以上のセンサを有する。センサには、例えば、車両12のドアに設けられる指紋センサのほか、速度、前後方向加速度、左右方向加速度、減速度、アクセル操作量、ブレーキ操作量、ステアリング操舵角、安全装備の作動情報、エンジンの諸元、バッテリの状態等を検知するセンサ類が含まれる。検知部37は、センサにより検知した各状態を示す情報を制御部33に送る。
【0029】
制御部33の機能は、制御プログラムを、制御部33に含まれるプロセッサで実行することにより実現される。制御プログラムは、制御部33の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、そのステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムである。すなわち、制御プログラムは、コンピュータを制御部33として機能させるためのプログラムである。また、制御部33の一部又は全ての機能が、制御部33に含まれる専用回路により実現されてもよい。
【0030】
撮像部38は、車両12の周囲又は車室内を撮像可能な位置に設けられる、一以上のカメラとその制御回路とを有する。撮像部38が有するカメラは、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。撮像部38は、車両12の周囲又は車室内を任意の時間間隔で撮像し、撮像画像を制御部33に送る。
【0031】
ECU39は、車両12の各種アクチュエータ、機構の状態を検知しながら動作を制御する。ECU39は、制御対象の状態を検知するセンサから検知結果を受け、制御対象に制御指示を送る。ECU39には、ドアの解錠、施錠を制御するドアロックECU、エンジンの始動を制御するエンジンECU、トランスミッションの切替えを制御するトランスミッションECU、パーキングブレーキを含む各ブレーキを制御するブレーキECUが含まれ、これらをECU39と総称する。
【0032】
上述の構成において、サーバ装置10の記憶部22には、車中泊に供される車両12を特定するための車両情報が予め格納される。車両情報は、車両ごとに、車両の識別情報とこれに対応付けられた車両のオーナーの識別情報とを有する。車両情報は、例えば、車両12の所有者の操作に応じて車両12からサーバ装置10へ送られる。あるいは、車両12の所有者が操作する任意の通信端末装置から車両情報がサーバ装置10へ送られる。サーバ装置10では、制御部23が通信部21を介して車両情報を受けて記憶部22に格納する。
【0033】
図4、
図5は、本実施形態における車両管理システムの動作手順を説明するためのシーケンス図である。
図4、
図5は、サーバ装置10と車両12との連係動作にかかる手順を示す。
図4、
図5におけるサーバ装置10及び車両12の各種情報処理に係るステップは、それぞれサーバ装置10の制御部23及び車両12の制御部33により実行される。また、サーバ装置10と車両12との各種情報の送受に係るステップは、サーバ装置10の制御部23と車両12の制御部33がそれぞれ通信部21及び31を介して互いに情報を送受することにより実行される。
【0034】
図4の手順は、車両12が災害発生時に車中泊モードに移行するときの手順例である。
【0035】
ステップS400において、サーバ装置10は、災害発生を検知する。例えば、制御部23は、災害情報の配信を行うクラウドサーバから災害情報を、通信部21を介して受けることで、災害の発生を検知する。災害は、地震、気象、噴火等に起因する自然災害、及び、交通機関、工場設備等の事故、テロ行為等に起因する人的災害を含む。
【0036】
ステップS402において、サーバ装置10は、被災状況を把握する。例えば、制御部23は、各種報道情報の配信を行うクラウドサーバ又は各自治体のサーバから、被災状況の情報を、通信部21を介して受けることで、被災状況を把握する。被災状況は、被災した被災地域、被災者数、被災地域における避難所の占有状況等の情報を含む。
【0037】
ステップS404において、サーバ装置10は、被災状況に基づいて、車中泊を提供すべき車中泊提供地域を決定する。例えば、制御部23は、避難所の占有状況が、被災者数を収容しきれていないような状況を示す場合に、その被災地域を車中泊提供地域として決定する。あるいは、制御部23は、被災地域を任意の単位地域に分割し、避難所から任意の基準距離以上の離れている一以上の単位地域、すなわち、避難者が避難所に到達することが困難である蓋然性が高い単位地域を、車中泊提供地域としてもよい。
【0038】
ステップS406において、サーバ装置10は、予め格納された車両情報を用いて、車中泊に供される車両12に位置情報と空き状況とを要求する。空き状況は、車両12がその所有者による車中泊のために占有されているか否か、すなわち他の避難者に車中泊用に提供可能か否かを示す情報である。
【0039】
ステップS408おいて、車両12は、サーバ装置10からの要求に応じて自車の位置情報と空き状況の情報とをサーバ装置10へ送る。制御部33は、測位部34から位置情報を取得してサーバ装置10へ送る。また、制御部33は、車両12を自らの車中泊に使用するか否かの入力を所有者に促す情報を出力部36により出力し、車中泊に使用するか否かを示す情報を入力部35により所有者から受け付ける。所有者が車両12を使用しなければ、車両12は空き状況であるので、空きを示す情報を、一方、所有者が車両12を使用すれば、車両12は空き状況ではないので、占有を示す情報を、車両12がサーバ装置10へ送る。
【0040】
ステップS410において、サーバ装置10は、車中泊に供するための車中泊用車両を選定する。制御部23は、車両12の位置情報と空き状況とに基づき、車中泊提供地域に位置する空き状況の車両12を車中泊用車両として選定する。更に、制御部23は、車両12が、例えば、路上の車線内、鉄道の踏切といった交通の妨げになるような位置に駐車されていないことを車中泊用車両に特定する条件としてもよい。そうすることで、避難又は救援物資の運搬を駐車された車中泊用車両が妨げるといった事態を回避することが可能となる。
【0041】
ステップS412において、サーバ装置10は、車両12を車中泊用の車両に通常時の動作モードから車中泊モードへ移行する準備をさせるための車中泊モード準備指示を送る。
【0042】
ステップS414において、車両12は、車中泊モード移行の準備として、車中泊を利用しようとする避難者の認証情報を取得する。制御部33は、車中泊モード準備指示を受けた後、通信部31、検知部37又は撮像部38に認証情報の取得を開始させる。例えば、通信部31は、近距離無線通信により避難者の通信端末装置から認証情報を受ける。避難者は、スマートフォン等の通信端末装置のアプリケーションを利用し、パスワード又は暗証番号を入力して車両12へ送る。制御部33は、パスワード又は暗証番号を、認証情報として記憶部32に格納する。また、検知部37は、ドアのノブ等に設けられる指紋センサにより、そこに触れる避難者の指から指紋を読み取り、読み取った情報を制御部33へ送る。制御部33は、指紋の特徴を抽出し、その特徴を示す情報を認証情報として記憶部33に格納する。また、撮像部38は、車外カメラにより、任意に設定される距離範囲内に接近した避難者の顔を撮像し、撮像画像を制御部33へ送る。制御部33は、顔の特徴を抽出し、その特徴を示す情報を認証情報として記憶部32に格納する。
【0043】
ステップS414を実行するとき、車両12は、車中泊用車両であることを示す情報を出力し、車両12の存在を避難者に認識しやすくてもよい。例えば、制御部33は、車両12の照明を任意のパターンで明滅させたり、ウィンドウシールドに車中泊用車両であることを示す情報を投影したりする。あるいは、サーバ装置10が、車中泊用車両として選定した車両12の位置を示す情報を避難者の情報通信端末装置に向けて配信してもよい。
【0044】
ステップS416において、車両12は、認証情報をサーバ装置10へ送る。
【0045】
ステップS418において、サーバ装置10は、車両12から受け取った認証情報を検証する。制御部23は、車両12から受け取った認証情報を他の車両の車両情報と対応付けられた認証情報と照合する。車両12から受け取った認証情報が他の車両の車両情報と対応づけられている場合、すでに避難者が他の車両を車中泊用に確保したことを示す。よって、その場合は、制御部23は、その避難者用に車両12が車中泊モードに移行しないように、例えば、ステップS412に戻って、車両12に車中泊モード以降の準備状態を維持させる。そうすることで、他の避難者による車中泊用車両の機会が担保される。一方、車両12から受け取った認証情報が他の車両の車両情報と対応づけられていない場合、制御部23は、その認証情報を車両12の車両情報と対応づける。これにより、車両12が車中泊用車両として避難者に割り当てられる。そして、ステップS420において、サーバ装置10は、車両12を車中泊用の車両に車中泊モードへ移行させるための車中泊モード移行指示を送る。
【0046】
ステップS422において、車両12は、通常時の動作モードから車中泊モードに移行する。通常時の動作モードでは、車両12は、ドアのロック、トランスミッション、ブレーキ、及びエンジンを、それぞれ使用者の操作に応じて動作させる。一方、車中泊モードでは、車両12は、ドアが施錠された状態であればこれを開錠し、運転操作に応じた動作を停止する。制御部33は、車中泊モードへ移行するための指示をECU39へ送る。例えば、制御部33は、ドアECUに向けドアロックを開錠する指示を送る。また、制御部33は、トランスミッションECUへのパーキングレンジの解除を停止する指示、ブレーキECUへのパーキングブレーキの解除を停止する指示、及びエンジンECUへのエンジン始動を停止する指示のいずれか一以上を対象のECUへ送る。ECU39のそれぞれが指示に応じて動作することで、車両12が車中泊モードに移行する。
【0047】
車両12が車中泊モードに移行すると、ドアが開錠されるので、避難者が車両内に乗り込んで車中泊することが可能となる。また、パーキングレンジ解除、パーキングブレーキ解除、及びエンジン始動といった運転のための操作がなされたとしても、そうした操作に応じた動作の少なくとも一以上が停止されるので、車両12は移動できない状態となる。よって、所有者が関知しないままに車両12が移動させられたり、持ち去られたりすることを防止することが可能となる。
【0048】
図5の手順は、車両12が車中泊モードに移行してからの手順である。
図5の手順は、車中泊をする避難者が車両12に乗り込んでから、車中泊が行われるときに実行される。
【0049】
ステップS500において、車両12は、車中泊をする避難者の認証情報を取得する。
【0050】
ステップS502において、車両12は、認証情報をサーバ装置10へ送る。
【0051】
ステップS504において、サーバ装置10は、車両12から受けた認証情報を車両12の車両に対応付けた認証情報と照会して認証を行う。認証が不成立の場合、サーバ装置10は、以降のステップを中止する。一方、認証が成立した場合、サーバ装置10は、ステップS506において、避難者による操作に車両12に対応させるための操作対応指示を車両12へ送る。
【0052】
ステップS508において、車両12は、避難者によるドアの施錠又は解錠操作を受け付け、ステップS510において操作に応じた施錠又は解錠を行う。例えば、制御部23は、ドアECUに対し操作の受付けと操作に応じた施錠及び解錠とを許可する指示を送る。
【0053】
図5の手順によれば、車両12で車中泊をする避難者が、車内から施錠したり、車外に出る場合に解錠及び施錠をしたりすることが可能となる。よって、車中泊中の避難者の安全、及び避難者が車外へ出る場合に車内に残される避難者の所有物等の安全を担保することが可能となる。
【0054】
上述のように、本実施形態によれば、災害時に避難者及び車両の所有者の利便性向上が可能となる。
【0055】
上述における「制御装置」に対応するサーバ装置10の動作の一部以上は、適宜、車両12の制御部33が担うことが可能である。その場合、サーバ装置10及び車両12の制御部33、あるいは車両12の制御部33が、「制御装置」に対応する。車両12の制御部33が、「制御装置」に対応する場合、車両12の制御部33は、他の車両と情報通信を行ってサーバとして機能するとともに、自車両の動作を制御するように構成される。
【0056】
上述において、実施形態を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段、ステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 車両管理システム
10 サーバ装置
11 ネットワーク
12 車両
21、31 通信部
22、32 記憶部
23、33 制御部
34 測位部
25、35 入力部
26、36 出力部
37 検知部
38 撮像部
39 ECU