(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0276 20160101AFI20241210BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20241210BHJP
H01M 8/0267 20160101ALI20241210BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20241210BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241210BHJP
【FI】
H01M8/0276
H01M8/0258
H01M8/0267
H01M8/2483
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2021082272
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】野々山 順朗
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-021179(JP,A)
【文献】特開2011-008951(JP,A)
【文献】特開2010-257906(JP,A)
【文献】特開2006-302702(JP,A)
【文献】特開2011-222393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/24
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空冷式の燃料電池であって、
複数の単セル、
冷却板、及び
ガスケットを備え、
前記冷却板は、複数の前記単セルのうち互いに隣り合う2つの前記単セルの間に配置され、
前記冷却板は、冷媒流路として機能する複数の凹溝を有するコルゲート状の板であり、 前記ガスケットは、前記冷却板の厚さより大きな高さの第1凸部を有し、且つ、隣り合う2つの前記単セルのマニホールドをシールし、
前記単セルは、膜電極ガス拡散層接合体と、前記膜電極ガス拡散層接合体を挟持する第1セパレータ及び第2セパレータと、前記膜電極ガス拡散層接合体の外周に配置され、且つ、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間に配置される樹脂フレームと、を有し、
前記第1凸部は、前記マニホールドの周囲を囲うように配置され、
前記ガスケットは、
前記第1凸部の外周の領域、且つ、前記第1凸部の外周の周長の50%を占める領域、且つ、前記マニホールドを基準として面方向において前記膜電極ガス拡散層接合体が配置されている側とは反対側の領域に、前記第1凸部と同じ方向に凸部を有する第2凸部を備え、
前記第2凸部は、前記第1凸部の高さ
と同じ高さを有し、
前記冷媒流路には、空気を流すことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記冷却板の材料は、アルミニウムである、請求項1に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)は、1つの単セル(以下、セルと記載する場合がある)又は複数の単セルを積層した燃料電池スタック(以下、単にスタックと記載する場合がある)で構成され、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化剤ガスとの電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。なお、実際に燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスは、酸化・還元に寄与しないガスとの混合物である場合が多い。特に酸化剤ガスは酸素を含む空気である場合が多い。
なお、以下では、燃料ガスや酸化剤ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。また、単セル、及び、単セルを積層した燃料電池スタックのいずれも、燃料電池と呼ぶ場合がある。
【0003】
燃料電池について、様々な技術が提案されている。
例えば特許文献1では、複数のセルのうち互いに隣り合う2つのセルの間に、空冷ガス流路として機能する凹溝を有するコルゲート状の板により形成された冷却板(コルゲートフィン)が開示されている。
【0004】
特許文献2では、冷却水を必要としない空冷式金属分離板が開示されている。
【0005】
特許文献3では、冷却効率を改善した燃料電池用スタック及びこれを有する燃料電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-126782号公報
【文献】特表2013-500567号公報
【文献】特開2006-210351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料電池の電気化学反応時に各セルは発熱する。燃料電池の中には、互いに隣り合う2つのセルの間、および互いに隣り合うセル側面と側板部との間に冷却板をそれぞれ設け、これら冷却板により、各セルを冷却し、燃料電池の温度が過剰に高温とならないようにしているものがある。また冷却方式としては水冷式だけでなく、空冷式も検討されているが、その場合は冷媒となる空気が水と比較して熱容量が小さいため、冷却のための体積流量が水の場合の数十倍になるため冷媒流路を水冷式の場合よりも大幅に深くする必要がある。
上記特許文献1では、ガスケットやシールについての言及はないものの、特許文献1の
図2より、空冷ガス流路を形成するコルゲートフィン端部がセル端部まで到達していることが読み取れる。このような場合、セル端部において、コルゲートフィンと第1セルおよびコルゲートフィンと第2セル、それぞれの間をシールするためのガスケットが2種類必要となり、部品点数が多くなる。また、それにより組み付けの煩雑さが増加することが想定される。そこでコルゲートフィン端部をセル端部まで到達させないようにするとガスケットは1種類で済むが、空冷ガス流路断面積を大きくするために、コルゲートフィンはその折り曲げピッチを大きくする必要がある。そのピッチに応じてガスケットの高さを大きくすると、ガスケットに荷重がかかるときにぐらつきやすくなるなど変形しやすくなり、ねじれたり曲がったりすることでシール性低下を招く虞がある。
【0008】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、単セル間のガスシール性が高く、且つ、冷媒流路断面積が大きい燃料電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の燃料電池は、燃料電池であって、
複数の単セル、
冷却板、及び
ガスケットを備え、
前記冷却板は、複数の前記単セルのうち互いに隣り合う2つの前記単セルの間に配置され、
前記冷却板は、冷媒流路として機能する複数の凹溝を有するコルゲート状の板であり、
前記ガスケットは、前記冷却板の厚さより大きな高さの第1凸部を有し、且つ、隣り合う2つの前記単セルのマニホールドをシールし、
前記ガスケットは、前記第1凸部の側部の少なくとも一部に、前記第1凸部と同じ方向に凸部を有する第2凸部を備えることを特徴とする。
【0010】
本開示の燃料電池においては、前記第2凸部は、前記第1凸部の高さ以下の高さを有してもよい。
【0011】
本開示の燃料電池においては、前記冷媒流路には、冷却水又は空気を流してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の燃料電池は、単セル間のガスシール性が高く、且つ、冷媒流路断面積が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の燃料電池の一部の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の燃料電池の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の燃料電池は、燃料電池であって、
複数の単セル、
冷却板、及び
ガスケットを備え、
前記冷却板は、複数の前記単セルのうち互いに隣り合う2つの前記単セルの間に配置され、
前記冷却板は、冷媒流路として機能する複数の凹溝を有するコルゲート状の板であり、
前記ガスケットは、前記冷却板の厚さより大きな高さの第1凸部を有し、且つ、隣り合う2つの前記単セルのマニホールドをシールし、
前記ガスケットは、前記第1凸部の側部の少なくとも一部に、前記第1凸部と同じ方向に凸部を有する第2凸部を備えることを特徴とする。
【0015】
水冷に比べて、空冷は冷却のための体積流量が数十倍になるため冷媒流路を大幅に深くする必要がある。また、冷却部材が反応系に触れる場合、耐蝕性が要求されるために、従来は高コストで重いSUSやTiに表面処理して用いるか、カーボンの深溝切削加工のセパレータが用いられてきた。
本開示により、互いに隣り合う2つの単セルのバイポーラプレート部を1方の単セルのセパレータ、冷却板、もう一方の単セルのセパレータの3枚構成とすることで、セパレータの深溝プレス成型が不要となる。特に空冷式など、セル間の冷却空間を大きく設ける必要があり、ガスケットが変形しやすい場合でも、セル間のシールの信頼性が向上するとともに、一体成形が可能でるため、部品点数の増加や組み付け時の煩雑さも抑制できる。またシールの信頼性が向上することで冷却板への耐食性の要求も低くなるため、冷却板として折り曲げ加工がしやすく低コストであるアルミニウムなどの材料を適用できる。
【0016】
燃料電池は、複数の単セルと、互いに隣り合う2つの単セルの間に配置される冷却板、及びガスケットと、を備える。
【0017】
燃料電池は、単セルを複数個積層した積層体である燃料電池スタックである。
単セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよく、2~600個であってもよく、2~200個であってもよい。
燃料電池スタックは、単セルの積層方向の両端にエンドプレート、集電板、加圧板等を備えていてもよい。
【0018】
燃料電池の単セルは、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)を有していてもよい。燃料電池の単セルは、膜電極ガス拡散層接合体を挟持する第1セパレータ及び第2セパレータを有していてもよい。
【0019】
膜電極ガス拡散層接合体は、第1ガス拡散層、第1触媒層、電解質膜、第2触媒層、及び、第2ガス拡散層をこの順に有する。
膜電極ガス拡散層接合体は、具体的には、アノード側ガス拡散層及び、アノード触媒層及び、電解質膜及び、カソード触媒層及び、カソード側ガス拡散層をこの順に有する。
【0020】
第1触媒層と第2触媒層は、一方がカソード触媒層であり、もう一方がアノード触媒層である。
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層及びカソード側ガス拡散層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層及びアノード側ガス拡散層を含む。
第1触媒層及び第2触媒層をまとめて触媒層と称する。カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。
【0021】
第1ガス拡散層と第2ガス拡散層は、一方がカソード側ガス拡散層であり、もう一方がアノード側ガス拡散層である。
第1ガス拡散層は、第1触媒層がカソード触媒層の場合はカソード側ガス拡散層であり、第1触媒層がアノード触媒層の場合はアノード側ガス拡散層である。
第2ガス拡散層は、第2触媒層がカソード触媒層の場合はカソード側ガス拡散層であり、第2触媒層がアノード触媒層の場合はアノード側ガス拡散層である。
第1ガス拡散層と第2ガス拡散層をまとめてガス拡散層又は拡散層と称する。カソード側ガス拡散層及びアノード側ガス拡散層をまとめてガス拡散層又は拡散層と称する。
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
【0022】
燃料電池は、触媒層とガス拡散層との間にマイクロポーラス層(MPL)を有していてもよい。マイクロポーラス層は、PTFE等の撥水性樹脂とカーボンブラック等の導電性材料との混合物を含んでいてもよい。
【0023】
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0024】
第1セパレータと第2セパレータは、一方がカソード側セパレータであり、もう一方がアノード側セパレータである。
第1セパレータは、第1触媒層がカソード触媒層の場合はカソード側セパレータであり、第1触媒層がアノード触媒層の場合はアノード側セパレータである。
第2セパレータは、第2触媒層がカソード触媒層の場合はカソード側セパレータであり、第2触媒層がアノード触媒層の場合はアノード側セパレータである。
第1セパレータと第2セパレータをまとめてセパレータと称する。アノード側セパレータとカソード側セパレータとをまとめてセパレータと称する。
膜電極ガス拡散層接合体は、第1セパレータと第2セパレータにより挟持される。
セパレータは、反応ガス及び冷媒等の流体を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔を有していてもよい。冷媒としては、気体の場合は、冷却用の空気等を用いることができる。冷媒としては、液体の場合は低温時の凍結を防止するために例えばエチレングリコールと水との混合溶液等の冷却水を用いることができる。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷媒供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷媒排出孔等が挙げられる。
セパレータは、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよい。
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがアノード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、アノード側セパレータは、アノード側ガス拡散層に接する面に燃料ガス供給孔から燃料ガス排出孔に燃料ガスを流す燃料ガス流路を有していてもよく、必要に応じてアノード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがカソード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、カソード側セパレータは、カソード側ガス拡散層に接する面に酸化剤ガス供給孔から酸化剤ガス排出孔に酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路を有していてもよく、必要に応じてカソード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、熱硬化樹脂、熱可塑樹脂、樹脂繊維等の樹脂材、及び、カーボン粉末、カーボン繊維等のカーボン材を含むプレス成形したカーボンコンポジット材、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、チタン、鉄、アルミニウム、及び、SUS等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
【0025】
燃料電池は、各供給孔が連通した入口マニホールド、及び、各排出孔が連通した出口マニホールド等のマニホールドを有していてもよい。
入口マニホールドは、アノード入口マニホールド、カソード入口マニホールド、及び、冷媒入口マニホールド等が挙げられる。
出口マニホールドは、アノード出口マニホールド、カソード出口マニホールド、及び、冷媒出口マニホールド等が挙げられる。
【0026】
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、水素であってもよい。酸化剤ガスは酸素、空気、乾燥空気等であってもよい。
【0027】
燃料電池は樹脂フレームを備えていてもよい。
樹脂フレームは、膜電極ガス拡散層接合体の外周に配置され、且つ、第1セパレータと第2セパレータとの間に配置されてもよい。
また、樹脂フレームは、クロスリークや膜電極ガス拡散層接合体の触媒層同士の電気的短絡を防ぐための部材であってもよい。
樹脂フレームは、骨格部と、開口部と、供給孔と、排出孔を有していてもよい。
骨格部は、膜電極ガス拡散層接合体と接続する樹脂フレームの主要部分である。
開口部は、膜電極ガス拡散層接合体の保持領域であり、膜電極ガス拡散層接合体を収納するために骨格部の一部を貫通する貫通孔である。開口部は、樹脂フレームにおいて、膜電極ガス拡散層接合体の周囲(外周部)に骨格部が配置される位置に配置されていればよく、樹脂フレームの中央に有していてもよい。
供給孔及び排出孔は、反応ガス及び冷媒等を単セルの積層方向に流通させる。樹脂フレームの供給孔は、セパレータの供給孔と連通するように位置合わせされて配置されていてもよい。樹脂フレームの排出孔は、セパレータの排出孔と連通するように位置合わせされて配置されていてもよい。
樹脂フレームは、枠状のコア層と、コア層の両面に設けられた枠状の二つのシェル層、即ち、第1シェル層と第2シェル層とを含んでいてもよい。
第1シェル層及び第2シェル層は、コア層と同様に、コア層の両面に枠状に設けられていてもよい。
【0028】
コア層は、ガスシール性、絶縁性を有する構造部材であればよく、燃料電池の製造工程での熱圧着時の温度条件下でも構造が変化しない材料により形成されていてもよい。具体的には、コア層の材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、PC(ポリカーボネート)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PA(ポリアミド)、PI(ポリイミド)、PS(ポリスチレン)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、シクロオレフィン、PES(ポリエーテルサルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、LCP(液晶ポリマー)、エポキシ樹脂等の樹脂等であってもよい。コア層の材料は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、フッ素系ゴム、シリコン系ゴム等のゴム材であってもよい。
コア層の厚さは、絶縁性を担保する観点から、5μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、セル厚さを低減する観点から、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。
【0029】
第1シェル層及び第2シェル層は、コア層とアノード側セパレータ及びカソード側セパレータとを接着してシール性を確保するために、他の物質との接着性が高く、熱圧着時の温度条件下で軟化し、コア層よりも粘度及び融点が低い性質を有していてもよい。具体的には、第1シェル層及び第2シェル層は、ポリエステル系及び変性オレフィン系等の熱可塑性樹脂であってもよく、変性エポキシ樹脂である熱硬化性樹脂であってもよい。第1シェル層及び第2シェル層は、接着剤層と同種の樹脂であってもよい。
第1シェル層を構成する樹脂と第2シェル層を構成する樹脂とは、同種の樹脂であってもよく、異なる種類の樹脂であってもよい。コア層の両面にシェル層を設けることで、樹脂フレームと2つのセパレータとの間の加熱プレスによる接着が容易になる。
第1シェル層及び第2シェル層のそれぞれのシェル層の厚さは、接着性を担保する観点から、5μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、セル厚さを低減する観点から、100μm以下であってもよく、40μm以下であってもよい。
【0030】
樹脂フレームにおいて、第1シェル層及び第2シェル層は、それぞれアノード側セパレータ及びカソード側セパレータと接着する部分にのみに設けられていてもよい。コア層の一方の面に設けられた第1シェル層は、カソード側セパレータと接着していてもよい。コア層の他方の面に設けられた第2シェル層は、アノード側セパレータと接着していてもよい。そして、樹脂フレームは、一対のセパレータにより挟持されてもよい。
【0031】
ガスケットは、冷却板の厚さより大きな高さの第1凸部を有し、且つ、前記隣り合う2つの単セルのマニホールドをシールする。これにより、冷却板がマニホールドに露出せず、冷却板が酸化剤ガス、燃料ガス等の反応ガスに触れない構造とすることができる。
すなわち、ガスケットは、隣り合う2つの単セルの間に配置され、冷却板がマニホールドから隔離され、且つ、冷却板が配置される領域にマニホールドを流れる反応ガスが漏れないように、隣り合う2つの単セルのマニホールドの周囲をシールする。これにより、マニホールドは、隣り合う2つの単セルの間の領域において積層方向にのみ反応ガスを流通させ、面方向への反応ガスの漏れを防止することができる。
マニホールドが複数存在する場合は、各マニホールドにガスケットを配置して各マニホールドをシールしてもよい。また、各マニホールドをシールすることが可能な構造の一枚の板状のガスケットを配置してもよい。マニホールドの内、冷媒入口マニホールド及び冷媒出口マニホールドにはガスケットを配置しなくてもよく、冷却板及びセパレータの冷媒流路と連通させてもよい。
ガスケットは、第1凸部の側部の少なくとも一部に、前記第1凸部と同じ方向に凸部を有する第2凸部(サイドリップ)を備える。第2凸部は、第1凸部の側部の少なくとも一部に備えられていればよく、側部の全周に備えられていてもよいが、ガスケット周長の50%を占める領域に備えられていてもよい。第2凸部は、第1凸部の側部のガスケット周長の50%を占める領域且つ面方向においてMEGAが配置されている側とは反対側の領域、すなわち単セルの外部側の領域に備えられていてもよい。これにより、単セルの面方向における内側の領域はセパレータのねじれが生じにくいため製造コストを低減することができる。
サイドリップを備えることによりサイドリップが圧縮されるため、ガスケットの足下のセル内シール接着ラインが常に圧縮され剥離しにくくなる。また、サイドリップにより、セパレータのねじれ破壊を抑制することができる。セパレータのねじれを抑制することができることは、有限要素法(FEM :Finite Element Method)による計算結果により本研究者により確認されている。
第2凸部高さは、第1凸部の高さと同じであってもよく高くてもよく、低くてもよいが、第1凸部の高さ以下の高さを有してもよく、第1凸部の高さより低くてもよい。
ガスケットは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)ゴム、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー樹脂等を材料として用いてもよい。
ガスケットの高さは、1つの単セルと1枚の冷却板とを含む単セル-冷却板接合体の厚さの50%より大きくてもよい。
なお、ここでいう単セルの厚さとは、第1セパレータ、MEGAを開口部に収容する樹脂フレーム、第2セパレータを含む厚さを意味する。
【0032】
冷却板は、複数の単セルのうち互いに隣り合う2つの単セルの間に配置される。
冷却板は、互いに隣り合う2つの単セルの間に配置されていれば、隣り合う2つの単セルの間の面方向の少なくとも一部の領域に配置されていてもよい。
冷却板は、面方向において隣り合う2つの単セルの間の少なくともMEGAと対向する領域に配置されていてもよい。
冷却板は、面方向において隣り合う2つの単セルの間のガスケットが配置される領域以外の領域に配置されていてもよい。
冷却板は、面方向において隣り合う2つの単セルの間のガスケットが配置される領域以外の領域に配置され、且つ、隣り合う2つの単セルの間の面方向の外周縁部を除く領域に配置されていてもよい。すなわち、冷却板は、当該冷却板の面方向の端部が単セルの面方向の端部に到達しないように隣り合う2つの単セルの間に配置されていてもよい。
冷却板は、面方向において隣り合う2つの単セルの間のガスケットが配置される領域以外の領域であってMEGAと対向する領域に配置されていてもよい。
冷却板は、冷媒流路として機能する複数の凹溝を有するコルゲート状の板である。
冷媒流路には、冷却水又は冷却用の空気を流してもよく、冷却用の空気を流してもよい。冷却板により、冷媒流路の体積を大きくすることができる。そのため、冷媒が空気の場合に十分な体積を確保することができる。また、冷媒が液体の場合、冷却ポンプの容量を小さくすることができ、且つ、圧損を低減することができる。
冷却板はアルミ等の金属板をコルゲート状に折り曲げ加工されたもの等を用いることができる。冷却板は、表面に銀、ニッケル、カーボン等の導電処理がされていてもよい。
冷却板の凹溝は、折り曲げ加工により形成してもよい。
凹溝の深さは例えば、1.0~2.0mmであってもよい。
折り曲げ加工は、例えば凹溝深さ1.0~2.0mm、幅1.0~2.0mmのピッチで凹凸成型してもよい。
【0033】
図1は、本開示の燃料電池の一部の一例を示す分解斜視図である。
燃料電池は、単セル90と冷却板50とガスケット60を有する集合体100を含む。
単セル90は、第1セパレータ20、MEGAを開口部に収容する樹脂フレーム40、第2セパレータ30をこの順に有する。
冷却板50は、単セル90の第2セパレータ30の面上の各ガスケット60が配置されている領域以外の領域であって、MEGAと対向する領域に配置されている。
各ガスケット60は、第2セパレータ30の冷却板50側の面の各マニホールド80の周囲に配置されている。
第1セパレータ20、樹脂フレーム40、第2セパレータ30には、矢印で示すように酸化剤ガスである反応用空気又は燃料ガスである水素が流通可能なマニホールド80である酸化剤ガス供給孔、酸化剤ガス排出孔、燃料ガス供給孔、燃料ガス排出孔が設けられている。
冷却板50には、矢印で示すように冷媒である冷却用空気が流通可能な冷媒流路となる複数の凹溝が設けられている。
【0034】
図2は、本開示の燃料電池の一例を示す平面図である。
燃料電池200には、ガスケット60、マニホールド80が設けられている。
図3は、
図2に示す燃料電池のE-E断面図である。
燃料電池200は、複数の単セル90が積層されて構成される。
燃料電池200は、複数の単セル90と、隣り合う2つの単セル90の間に冷却板50及びガスケット60と、を有する。
燃料電池は、単セル90と冷却板50とガスケット60を有する集合体100を含む。
単セル90は、第1セパレータ20、MEGA10を開口部に収容する樹脂フレーム40、第2セパレータ30をこの順に有する。
冷却板50は、隣り合う2つの単セル90の一方の単セル90の第2セパレータ30ともう一方の単セル90の第1セパレータ20との間の領域のガスケット60が配置されている領域以外の領域であって、MEGAと対向する領域に配置されている。
ガスケット60は、隣り合う2つの単セル90の一方の単セル90の第2セパレータ30ともう一方の単セル90の第1セパレータ20との間の領域のマニホールド80の周囲に配置されている。
ガスケット60は、第1凸部61を有し、面方向において第1凸部61のMEGA10とは反対側の周囲の少なくとも一部に第2凸部70を有する。
【0035】
本開示の燃料電池の製造方法の一例は以下の通りである。
第1セパレータ、第2セパレータとしてプレス成型したカーボン樹脂コンポジット材(例えば、流路溝深さ0.3mm)を準備する。
第1セパレータの一方の面上のマニホールド周囲にガスケット(EPDMゴムまたはシリコンゴム)を成型する。なお、ガスケットは第2セパレータに付けてもよい。また、ガスケットはセパレータ上に成型せずに、金型上にガスケットを成型したものをセパレータに転写してもよい。
樹脂フレームとして、PENに接着性の熱可塑樹脂をコーティングしたシート(例えば、厚さ0.20μm)を枠形状に打ち抜きした物を準備する。
膜電極ガス拡散層接合体として、第1ガス拡散層、第1触媒層、電解質膜、第2触媒層、及び、第2ガス拡散層をこの順に有するものを準備する。
長方形状の膜電極ガス拡散層接合体端部で枠形状の樹脂フレームと膜電極ガス拡散層接合体とを接着剤により接合し、樹脂フレーム-MEGA接合体を得る。第1セパレータのガスケットが成形された面とは反対側の面が樹脂フレーム-MEGA接合体と接するように樹脂フレーム-MEGA接合体を第1セパレータと第2セパレータで挟持する。そして、熱プレスにより第1セパレータと樹脂フレームを溶着させ、且つ、第2セパレータと樹脂フレームを溶着させて第2セパレータ-樹脂フレーム-MEGA-第1セパレータ接合体を得る。これにより、第2セパレータ、MEGAを開口部に収容する樹脂フレーム、第1セパレータをこの順に有する単セルが得られる。
冷却板としてアルミニウムシート(厚さ0.10mm)にAgメッキ(50nm)したシートを折り曲げ加工により例えば凹溝深さ1.5mm、幅1.5mmピッチで凹凸成型したものを準備する。
単セルの第1セパレータのMEGAと接する面とは反対側の面上に冷却板を配置する。冷却板の第1セパレータ側の4隅に接着剤を配置し、第1セパレータと冷却板を接着させる。これにより単セルの第1セパレータの面上に冷却板及びガスケットを備える集合体を得る。
そして、別の単セルを準備し、集合体の冷却板の別の単セルの第2セパレータ側の4隅に接着剤を配置し、別の単セルの第2セパレータと冷却板とを接着させる。これにより、互いに隣り合う2つの単セルの間に冷却板とガスケットが配置された燃料電池が得られる。同様の方法で互いに隣り合う2つの単セルの間に冷却板とガスケットが配置されるように複数の単セルを積層し、積層体を得てもよい。必要に応じて積層体の両端に集電板及び加圧板をこの順に配置して、燃料電池(燃料電池スタック)としてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 MEGA
20 第1セパレータ
30 第2セパレータ
40 樹脂フレーム
50 冷却板
60 ガスケット
61 第1凸部
70 第2凸部
80 マニホールド
90 単セル
100 集合体
200 燃料電池