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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】燃料電池用のセパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20241210BHJP
   H01M 8/026 20160101ALI20241210BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241210BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/026
H01M8/10 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021089379
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022182065
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青野 晴之
(72)【発明者】
【氏名】河邉 聡
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112993311(CN,A)
【文献】特開2019-121530(JP,A)
【文献】特開平11-250923(JP,A)
【文献】特開2000-294261(JP,A)
【文献】特開2004-356100(JP,A)
【文献】特開2008-282821(JP,A)
【文献】特開2007-200864(JP,A)
【文献】国際公開第2019/207811(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/072584(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の発電部に当接する当接面を有し、前記当接面に、反応ガスが流通する複数の溝流路が並んで設けられている燃料電池用のセパレータであって、
前記溝流路における前記反応ガスの流れ方向の上流側及び下流側を上流側及び下流側とするとき、
前記溝流路は、前記当接面の面方向において波状に延在するとともに、複数の支流路と、上流側から下流側に向かって複数の前記支流路が合流する合流部と、を有しており
前記支流路の数は、上流側ほど多く、
複数の前記溝流路の各々の流路断面積は、前記溝流路の延在方向の全体にわたって一定である、
燃料電池用のセパレータ。
【請求項2】
前記溝流路は、複数の前記合流部を有している、
請求項1に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項3】
前記溝流路の下流側の振幅は、上流側の振幅よりも大きい、
請求項1または請求項2に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項4】
前記溝流路の各々が、前記当接面の面方向において波状に延在するとともに、複数の前記支流路と、前記合流部と、を有している、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項5】
前記溝流路において前記合流部で合流する複数の前記支流路は、前記合流部以外において互いに独立している、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項6】
前記溝流路の各々の並び方向において最も外側に位置する前記溝流路である外側溝流路は、前記並び方向において前記当接面の外縁と同一の位置または前記外縁よりも外側に位置する部分を有している、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の燃料電池用のセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用のセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池スタックを構成する単セルが開示されている。この単セルは、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly 、以下、MEA)と、MEAを挟持する第1セパレータ及び第2セパレータとを有している。
【0003】
MEAは、電解質膜及び触媒層を有する触媒層接合電解質膜(Catalyst Coated Membrane、以下、CCM)と、CCMの両面にそれぞれ設けられたガス拡散層(Gas Diffusion Layer 、以下、GDL)とを有している。
【0004】
第1セパレータは、酸化ガス用の複数の第1溝流路と、冷却媒体用の複数の冷却溝流路とを有している。第1溝流路は、直線形状であり、第1セパレータの面のうちMEAと対向する面に形成されている。第1溝流路の凹凸と冷却溝流路の凹凸とは、表裏一体の関係にある。
【0005】
第2セパレータは、燃料ガス用の複数の第2溝流路と、冷却媒体用の複数の冷却溝流路とを有している。第2溝流路は、波線形状であり、第2セパレータの面のうちMEAと対向する面に形成されている。第2溝流路の凹凸と冷却溝流路の凹凸とは、表裏一体の関係にある。第2溝流路の振幅は、第2セパレータと対向する第1セパレータにおいて複数の第1溝流路の裏面を構成する複数の凸部と重なるような大きさに設定されている。
【0006】
こうした単セルによれば、単セル同士を積層した際に、一方の単セルにおける第2溝流路を構成する凸部と、他方の単セルにおける第1溝流路の裏面を構成する凸部との接触部分が多くなる。そのため、隣接するセパレータ同士の接触構造の安定性、ひいては単セル同士の接触構造の安定性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-78020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、こうした単セルにおいては、発電によって第2溝流路を流れる燃料ガスが流路の上流側から下流側にかけて徐々に消費される。そのため、溝流路の下流側において燃料ガスの流量が減少するとともに、このことに伴ってGDLに潜り込む燃料ガスの流量が減少しやすい。その結果、溝流路の下流側における発電量の低下を招くおそれがある。
【0009】
なお、こうした課題は、燃料ガス用の溝流路を有するセパレータに限定されず、酸化ガス用の溝流路を有するセパレータにおいても同様に生じる。
本発明の目的は、溝流路の下流側においてガス拡散層に潜り込む反応ガスの流量の減少を抑制できる燃料電池用のセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための燃料電池用のセパレータは、燃料電池の発電部に当接する当接面を有し、前記当接面に、反応ガスが流通する複数の溝流路が並んで設けられている燃料電池用のセパレータであって、前記溝流路における前記反応ガスの流れ方向の上流側及び下流側を上流側及び下流側とするとき、前記溝流路は、前記当接面の面方向において波状に延在するとともに、複数の支流路と、上流側から下流側に向かって複数の前記支流路が合流する合流部と、を有している。
【0011】
反応ガスは、セパレータの溝流路を流れる過程で、同セパレータと隣接する発電部、より詳しくは、発電部を構成するガス拡散層に徐々に潜り込む。ここで、上記構成によれば、溝流路では、合流部よりも上流側において複数の支流路が延びている。そのため、溝流路において複数の支流路を流れる反応ガスが合流部で合流して下流側へと流れる。ここで、溝流路において合流部よりも下流側における反応ガスの圧力損失は、合流部よりも上流側における反応ガスの圧力損失に比べて大きくなる。これにより、溝流路において合流部よりも下流側におけるガス拡散層への反応ガスの潜り込みが促進される。したがって、溝流路の下流側においてガス拡散層に潜り込む反応ガスの流量の減少を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】燃料電池の単セルを示す分解斜視図。
図2】燃料電池用のセパレータの一実施形態について、燃料ガスが流通する複数の溝流路が並んで設けられているセパレータを示す平面図。
図3図2の3-3線における断面図。
図4図2の4-4線における断面図。
図5】溝流路からガス拡散層に潜り込む燃料ガスの流れを示す断面図。
図6】溝流路からガス拡散層に潜り込む燃料ガスの流れを示す断面図。
図7】溝流路の変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1図6を参照して、燃料電池用のセパレータの一実施形態について説明する。
<燃料電池スタックの単セルの全体構成>
図1に示すように、燃料電池スタックの単セルは、膜電極接合体10(以下、MEA10)と、MEA10を支持する枠部材20と、MEA10及び枠部材20を挟持する一対のセパレータ30,40とを有している。
【0014】
単セルは、全体として長方形板状である。
なお、以降では、セパレータ30、MEA10及び枠部材20、セパレータ40の積層方向を第1方向Xとして説明する。
【0015】
また、単セルの長手方向であるとともに、第1方向Xと直交する方向を第2方向Yとして説明する。
また、第1方向X及び第2方向Yの双方に直交する方向を第3方向Zとして説明する。
【0016】
単セルは、反応ガスまたは冷却媒体を単セル内に導入するための導入孔91,93,95と、単セル内の反応ガス及び冷却媒体を外部へ導出するための導出孔92,94,96とを有している。なお、本実施形態では、導入孔91及び導出孔92は、燃料ガスが流通する孔である。また、導入孔93及び導出孔94は、冷却媒体が流通する孔である。また、導入孔95及び導出孔96は、酸化剤ガスが流通する孔である。ここで、燃料ガスは、水素ガスである。また、冷却媒体は冷却水である。また、酸化剤ガスは、空気である。
【0017】
導入孔91,93,95及び導出孔92,94,96は、第2方向Yに長い平面視長方形状であり、単セルを第1方向Xに貫通している。導入孔91及び導出孔94,96は、第2方向Yにおける単セルの一側(図1の左右方向における左側)に設けられている。導入孔91及び導出孔94,96は、互いに間隔をあけて第3方向Zに並んでいる。導出孔92及び導入孔93,95は、第2方向Yにおける単セルの他側(図1の右側)に設けられている。導出孔92及び導入孔93,95は、互いに間隔をあけて第3方向Zに並んでいる。
【0018】
<MEA10>
図1に示すように、MEA10は、第2方向Yに長い平面視長方形状である。
MEA10は、図示しない固体高分子電解質膜(以下、電解質膜)と、電解質膜の両面に設けられた電極11A,11Bとを有している。なお、本実施形態では、第1方向Xにおける電解質膜(図示略)の一側(図1の上下方向における上側)の面に接合された電極が、カソード電極11Aである。また、第1方向Xにおける電解質膜の他側(図1の下側)の面に接合された電極が、アノード電極11Bである。
【0019】
電極11A,11Bは、電解質膜に接合された触媒層(図示略)と、触媒層に接合されたガス拡散層12(以下、GDL12)とを有している。
なお、MEA10が本発明に係る燃料電池の発電部に相当する。
【0020】
<枠部材20>
図1に示すように、枠部材20は、第2方向Yに長い長方形枠状である。
枠部材20は、例えば、硬質樹脂材料により形成されている。
【0021】
枠部材20は、孔91,92,93,94,95,96を構成する貫通孔21,22,23,24,25,26を有している。
枠部材20は、中央に第2方向Yに長い平面視長方形状の開口部27を有している。開口部27の縁部には、第1方向Xの一側(図1の上側)からMEA10が接合されている。
【0022】
<セパレータ30>
図1に示すように、セパレータ30は、第2方向Yに長い平面視長方形板状である。
セパレータ30は、例えば、チタンやステンレス鋼などの金属部材をプレス成形することにより形成されている。
【0023】
セパレータ30は、MEA10のアノード電極11B側に設けられている。セパレータ30は、MEA10に当接する当接面30a(図2参照)を含む第1面30Aと、第1面30Aとは反対側の第2面30Bとを有している。
【0024】
セパレータ30は、孔91,92,93,94,95,96を構成する貫通孔31,32,33,34,35,36を有している。貫通孔31,34,36は、それぞれ第3方向Zにおいて枠部材20の貫通孔21,24,26と対応した位置に設けられている。また、貫通孔32,33,35は、それぞれ第3方向Zにおいて枠部材20の貫通孔22,23,25と対応した位置に設けられている。
【0025】
セパレータ30は、燃料ガスが流通する複数の溝流路37と、冷却媒体が流通する複数の溝流路38とを有している。なお、図1には、セパレータ30において、複数の溝流路37が形成された部分の外縁と、複数の溝流路38が形成された部分の外縁とを簡略化して示している。
【0026】
<溝流路37,38>
図2に示すように、複数の溝流路37は、貫通孔31と貫通孔32とを連通する溝である。複数の溝流路37は、第1面30Aに設けられている。なお、本実施形態では、4つの溝流路37が第3方向Zに互いに間隔をあけて並んでいる。すなわち、4つの溝流路37の各々は、互いに独立している。
【0027】
なお、以降では、溝流路37における燃料ガスの流れ方向の上流側及び下流側を、単に上流側及び下流側として説明する。
溝流路37の溝幅、すなわち流路断面積は、溝流路37の延在方向の全体にわたって一定である。各溝流路37の溝幅は、互いに同一である。
【0028】
図2に示すように、溝流路37は、当接面30aに設けられるとともに、当接面30aの面方向において波状に延在する波状部70を有している。波状部70の下流側の振幅Aは、上流側の振幅Aよりも大きい。詳しくは、波状部70の振幅Aは、下流側ほど大きい。
【0029】
波状部70は、合流部71a,71b,71cを有している。
また、波状部70は、波状部70の下流側に位置する本流路72と、本流路72へ合流する複数の第1支流路73と、各第1支流路73へ合流する複数の第2支流路74とを有している。
【0030】
また、波状部70は、波状部70の上流側において各第2支流路74と接続する接続流路75を有している。
合流部71aは、本流路72の上流側の端部に設けられている。
【0031】
複数の第1支流路73は、上流側から合流部71aに向かって延びている。詳しくは、2つの第1支流路73が合流部71aで合流している。
第1支流路73同士は、合流部71a以外において互いに独立している。詳しくは、第1支流路73同士は、間隔S1をあけて第3方向Zに並んでいる。第1支流路73同士は、互いに平行に延びる部分を有している。
【0032】
合流部71b,71cは、2つの第1支流路73の上流側の端部にそれぞれ設けられている。合流部71b及び合流部71cは、第3方向Zに沿う同一軸線上に位置している。
複数の第2支流路74は、上流側から合流部71b,71cに向かって延びている。詳しくは、各合流部71b,71cに対して互いに隣り合う2つの第2支流路74が合流している。
【0033】
図2及び図3に示すように、4つの第2支流路74は、合流部71b,71c以外においてそれぞれ独立している。詳しくは、第2支流路74同士は、互いに間隔S2をあけて第3方向Zに並んでいる。第2支流路74同士は、互いに平行に延びる部分を有している。
【0034】
4つの溝流路37の各々が、波状部70を有している。各溝流路37の波状部70は、互いに同一の形状を有している。各溝流路37における波状部70同士は、互いに平行に延びる部分を有している。
【0035】
図2図4に示すように、各波状部70同士の間隔S3の大きさは、下流側の大きさの方が上流側の大きさよりも大きい。詳しくは、間隔S3の大きさは、下流側ほど大きい。なお、本実施形態では、隣り合う溝流路37同士において、一方の溝流路37における第1支流路73と他方の溝流路37における第1支流路73との間隔S3の大きさは、両第1支流路73が平行に延びる部分において間隔S1の大きさと同一である。また、一方の溝流路37における第2支流路74と他方の溝流路37における第2支流路74との間隔S3の大きさは、両第2支流路74が平行に延びる部分において間隔S2の大きさと同一である(図3参照)。
【0036】
図5に示すように、各波状部70は、セパレータ30の第1面30Aに形成された複数の凹部51により構成されている。凹部51同士の間には、凸部としてのリブ52が設けられている。リブ52の突端は、セパレータ30に隣接するMEA10のGDL12と当接している。
【0037】
図2に示すように、複数の溝流路37のうち第3方向Zにおいて最も外側に位置する溝流路37を外側溝流路37Aとする。外側溝流路37Aは、第3方向Zにおいて当接面30aの外縁よりも外側に位置する部分を有している。
【0038】
図1に示すように、複数の溝流路38は、貫通孔33と、貫通孔34とを連通する溝である。複数の溝流路38は、第2面30Bに設けられている。溝流路38内では、冷却媒体が溝流路37を流れる燃料ガスと反対方向に流れる。
【0039】
図5に示すように、溝流路38は、当接面30aの反対側の面30bに設けられるとともに、面30bの面方向において波状に延在する波状部80を有している。各波状部80は、セパレータ30の第2面30Bに形成された複数の凹部61により構成されている。凹部61同士の間には、凸部としてのリブ62が設けられている。リブ62の裏側が、溝流路37の波状部70を構成する凹部51である。同様に、リブ52の裏側が、溝流路38の波状部80を構成する凹部61である。すなわち、溝流路38の波状部80を形成する凹凸形状は、溝流路37の波状部70を形成する凹凸形状と表裏一体の関係にある。
【0040】
<セパレータ40>
図1に示すように、セパレータ40は、第2方向Yに長い平面視長方形板状である。
セパレータ40は、例えば、チタンやステンレス鋼などの金属部材をプレス成形することにより形成されている。
【0041】
セパレータ40は、MEA10のカソード電極11A側に設けられている。セパレータ40は、MEA10に当接する当接面を含む第1面40Aと、第1面40Aとは反対側の第2面40Bとを有している。
【0042】
セパレータ40は、孔91,92,93,94,95,96を構成する貫通孔41,42,43,44,45,46を有している。貫通孔41,44,46は、それぞれ第3方向Zにおいて枠部材20の貫通孔21,24,26と対応した位置に設けられている。また、貫通孔42,43,45は、それぞれ第3方向Zにおいて枠部材20の貫通孔22,23,25と対応した位置に設けられている。
【0043】
図1に示すように、セパレータ40は、酸化剤ガスが流通する複数の溝流路47と、冷却媒体が流通する複数の溝流路48とを有している。なお、図1には、セパレータ40において、複数の溝流路47が形成された部分の外縁と、複数の溝流路48が形成された部分の外縁をそれぞれ簡略化して示している。
【0044】
複数の溝流路47は、貫通孔45と、貫通孔46とを連通する溝である。溝流路47内では、酸化剤ガスが溝流路37を流れる燃料ガスと反対方向に流れる。
複数の溝流路48は、貫通孔43と、貫通孔44とを連通する溝である。溝流路48内では、冷却媒体が溝流路47を流れる酸化剤ガスと同方向に流れる。
【0045】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図5及び図6には、溝流路37からGDL12へ潜り込む燃料ガスの流れを矢印にて示している。
【0046】
図5に示すように、燃料ガスは、セパレータ30の溝流路37を流れる過程で、セパレータ30と隣接するMEA10、より詳しくは、MEA10を構成するGDL12に徐々に潜り込む。ここで、本実施形態の構成によれば、図2に示すように、溝流路37では、貫通孔31から接続流路75へと流れる燃料ガスが、4つの第2支流路74へ分岐して流れるとともに第2支流路74を下流側に向けて流れる。そして、第2支流路74を流れる燃料ガスは、各合流部71b,71cにて合流して第1支流路73へと流れる。そして、第1支流路73を流れる燃料ガスは、合流部71aにて合流して本流路72へと流れる。ここで、溝流路37において合流部71a(71b,71c)よりも下流側における燃料ガスの圧力損失は、合流部71a(71b,71c)よりも上流側における燃料ガスの圧力損失に比べて大きくなる。これにより、溝流路37において合流部71a(71b,71c)よりも下流側におけるGDL12への燃料ガスの潜り込みが促進される。
【0047】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)溝流路37の波状部70は、当接面30aの面方向において波状に延在するとともに、複数の支流路73(74)と、上流側から下流側に向かって複数の支流路73(74)が合流する合流部71a(71b,71c)とを有している。
【0048】
こうした構成によれば、上述した作用を奏する。したがって、溝流路37の下流側においてGDL12に潜り込む燃料ガスの流量の減少を抑制できる。また、これにより、溝流路37の下流側における発電量を増大させることができる。したがって、燃料電池の発電効率を高めることができる。
【0049】
また、上記構成によれば、単セル同士を積層した際に、一方の単セルにおいてセパレータ40の複数の溝流路47を構成するリブと、他方の単セルにおいてセパレータ30の複数の溝流路37を構成するリブ62との接触部分が多くなる。そのため、隣接するセパレータ30,40同士の接触構造の安定性、ひいては単セル同士の接触構造の安定性が向上する。
【0050】
(2)波状部70は、合流部71a,71b,71cを有している。
こうした構成によれば、波状部70において上流側ほど支流路の数が多くなる。そのため、溝流路37の下流側ほど燃料ガスの圧力損失が大きくなる。これにより、溝流路37を流れる燃料ガスの流量が少なくなる下流側ほど、GDL12への燃料ガスの潜り込みが促進される。したがって、GDL12に潜り込む燃料ガスの流量の減少を効果的に抑制できる。
【0051】
(3)波状部70の下流側の振幅Aは、上流側の振幅Aよりも大きい。
こうした構成によれば、溝流路37の下流側における燃料ガスの圧力損失が上流側における燃料ガスの圧力損失に比べて大きくなる。これにより、波状部70の下流側の振幅Aが上流側の振幅Aと同一である場合に比べて、溝流路37の下流側におけるGDL12への燃料ガスの潜り込みが促進される。したがって、GDL12に潜り込む燃料ガスの流量の減少を一層効果的に抑制できる。
【0052】
(4)溝流路37の各々が、当接面30aの面方向において波状に延在する波状部70を有している。波状部70の各々は、複数の支流路73,74と、合流部71a,71b,71cとを有している。各波状部70同士の間隔S3の大きさは、下流側ほど大きい。
【0053】
こうした構成によれば、溝流路37の各々において、合流部71a,71b,71cよりも下流側における燃料ガスの圧力損失が、合流部71a,71b,71cよりも上流側における燃料ガスの圧力損失に比べて大きくなる。したがって、溝流路37の下流側においてGDL12に潜り込む燃料ガスの流量の減少をより一層抑制できる。
【0054】
溝流路47では、酸化剤ガスが燃料ガスと反対方向に流れている。そのため、溝流路47の上流側、すなわち溝流路37の下流側においてMEA10が高温になりやすい。この点、上記構成によれば、各波状部70同士の間隔S3の大きさは、下流側ほど大きい。そのため、溝流路37の下流側、すなわち溝流路38の上流側において溝流路38を流れる冷却媒体の流量が増大する。これにより、溝流路37の下流側においてMEA10が高温になることを抑制できる。したがって、燃料電池の発電効率をより高めることができる。
【0055】
(5)溝流路37において合流部71aで合流する複数の第1支流路73は、合流部71a以外において互いに独立している。また、溝流路37において合流部71b,71cで合流する複数の第2支流路74は、合流部71b,71c以外において互いに独立している。
【0056】
例えば、第2支流路74同士が連通されている場合、各第2支流路74を流れる燃料ガスの流動圧が連通部分で均一化される。この場合、第2支流路74における燃料ガスの圧力損失と合流部71b、71cよりも下流側における燃料ガスの圧力損失との間の差が小さくなるおそれがある。この点、上記構成によれば、第1支流路73同士及び第2支流路74同士は、合流部71a,71b,71c以外において互いに独立している。したがって、合流部71a,71b,71cよりも上流側における燃料ガスの圧力損失と合流部71a,71b,71cよりも下流側における燃料ガスの圧力損失との間の差が小さくなることを抑制できる。
【0057】
(6)溝流路37の各々の並び方向である第3方向Zにおいて最も外側に位置する溝流路37である外側溝流路37Aは、第3方向Zにおいて当接面30aの外縁よりも外側に位置する部分を有している。
【0058】
図6に示すように、互いに隣り合う溝流路37同士において燃料ガスの圧力損失の大きさに差がある場合、相対的に圧力損失の大きい溝流路37を流れる燃料ガスの一部が、GDL12に潜り込み、相対的に圧力損失の小さい溝流路37へ流れることがある。このようにして、GDL12のうち互いに隣り合う溝流路37同士の間に位置する部分に燃料ガスが潜り込むことによっても発電が行われる。
【0059】
ただし、外側溝流路37Aにおいては、自身よりも第3方向Zの外側に溝流路37が存在しない。そのため、外側溝流路37A全体が、第3方向Zにおいて当接面30aよりも内側に位置している場合、GDL12のうち外側溝流路37Aよりも外側に位置する部分には、上記のように燃料ガスの圧力損失の差を利用して燃料ガスが潜り込みにくい。その結果、発電効率を低下させる一因となっている。
【0060】
この点、上記構成によれば、GDL12のうち外側溝流路37Aよりも外側に位置する部分の割合が減少する。これにより、GDL12のより広い範囲に対して燃料ガスを潜り込ませることができる。したがって、発電効率を向上させることができる。
【0061】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・導入孔91,93,95及び導出孔92,94,96の形状は、本実施形態で例示したように平面視長方形状に限定されない。例えば、導入孔91,93,95及び導出孔92,94,96の形状は、平面視正方形状や平面視長円形状であってもよい。
【0063】
・孔91,92,93,94,95,96における反応ガスの流れは、本実施形態で例示したものに限定されず、例えば、孔96を酸化剤ガスの導入孔とし、孔95を酸化剤ガスの導出孔としてもよい。また、これに伴って孔94を冷却媒体の導入孔とし、孔93を冷却媒体の導出孔としてもよい。すなわち、溝流路47を流れる酸化剤ガスと、溝流路38,48を流れる冷却媒体とが、溝流路37を流れる燃料ガスと同方向に流れるようにしてもよい。
【0064】
・溝流路37の数は、本実施形態で例示した4つに限定されず、3つ以下でもよいし、5つ以上であってもよい。
・セパレータ30は、本実施形態で例示したように、波状部70の各々が同一の形状を有するものに限定されず、例えば、溝流路37毎に波状部70の波長及び振幅Aを適宜変更してもよい。
【0065】
・溝流路37の溝幅、すなわち流路断面積は、本発明に係る作用効果を奏するのであれば、溝流路37の延在方向の全体にわたって一定でなくてもよい。
・溝流路37は、本実施形態で例示したように、外側溝流路37Aが第3方向Zにおいて当接面30aの外縁よりも外側に位置する部分を有しているものに限定されない。例えば、外側溝流路37Aが第3方向Zにおいて当接面30aの外縁と同一の位置にあってもよいし、同外縁よりも内側に位置するものであってもよい。
【0066】
・溝流路37は、各々が当接面30aの面方向において波状に延在するものに限定されない。すなわち、全ての溝流路37が波状に延在する波状部70を有していなくてもよく、少なくとも1つの溝流路37が波状部70を有していればよい。
【0067】
・溝流路37は、本実施形態で例示したように、溝流路37の各々が互いに独立しているものに限定されず、例えば、隣り合う溝流路37同士が、第3方向Zに延びる別の溝流路によって連通されるものであってもよい。
【0068】
・2つの第1支流路73は、本実施形態で例示したように、合流部71a以外において互いに独立しているものに限定されない。例えば、第1支流路73同士が、第3方向Zに延びる別の溝流路によって連通されるものであってもよい。
【0069】
・2つの第2支流路74は、本実施形態で例示したように、合流部71b(71c)以外において互いに独立しているものに限定されない。例えば、第2支流路74同士が、第3方向Zに延びる別の溝流路によって連通されるものであってもよい。
【0070】
・波状部70は、本実施形態で例示したように、下流側ほど振幅Aが大きいものに限定されない。例えば、波状部70の振幅Aは、波状部70の延在方向の全体にわたって一定であってもよい。
【0071】
・本実施形態では、本流路72及び支流路73,74の波数がそれぞれ1つのものを例示したが、波状部70の形状はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、第2支流路74の波数が3つ、第1支流路73の波数が2つ、本流路72の波数が1つといったように、下流側の流路ほど、波数を段階的に少なくすることもできる。
【0072】
・接続流路75は省略することができる。この場合、第2支流路74の各々の上流側の端部を貫通孔31まで延長すればよい。
・合流部の数及び配置は、本実施形態で例示したものに限定されず、適宜変更してもよい。これに伴って、支流路の数及び配置も、適宜変更すればよい。
【0073】
・本発明に係る燃料電池用のセパレータは、本実施形態で例示したようなMEA10のアノード電極11B側に接合されるセパレータ30に限定されず、カソード電極11A側に接合されるセパレータ40に対して適用することもできる。
【0074】
・セパレータ30,40は、金属部材をプレス成形することにより形成されるものに限定されず、例えば、切削加工やエッチング加工により成形することもできる。
・セパレータ30,40に用いる材料としては、チタンやステンレス鋼に限定されず、アルミニウムやカーボンを用いることもできる。
【符号の説明】
【0075】
A…振幅
S1…間隔
S2…間隔
S3…間隔
X…第1方向
Y…第2方向
Z…第3方向
10…膜電極接合体、MEA
11A…カソード電極
11B…アノード電極
12…ガス拡散層、GDL
20…枠部材
21…貫通孔
22…貫通孔
23…貫通孔
24…貫通孔
25…貫通孔
26…貫通孔
27…開口部
30…セパレータ
30A…第1面
30a…当接面
30B…第2面
30b…面
31…貫通孔
32…貫通孔
33…貫通孔
34…貫通孔
35…貫通孔
36…貫通孔
37…溝流路
37A…外側溝流路
38…溝流路
40…セパレータ
40A…第1面
40B…第2面
41…貫通孔
42…貫通孔
43…貫通孔
44…貫通孔
45…貫通孔
46…貫通孔
47…溝流路
48…溝流路
51…凹部
52…リブ
61…凹部
62…リブ
70…波状部
71a…合流部
71b…合流部
71c…合流部
72…本流路
73…第1支流路
74…第2支流路
75…接続流路
80…波状部
91…導入孔
92…導入孔
93…導入孔
94…導出孔
95…導出孔
96…導出孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7