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特許7600868電極対を含む人工筋肉およびこれを含む人工筋肉アセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電極対を含む人工筋肉およびこれを含む人工筋肉アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20241210BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F15B15/10 H
B25J19/00 A
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021089582
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2021191973
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2024-04-23
(31)【優先権主張番号】16/886,282
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ピー.ロウ
(72)【発明者】
【氏名】シャーダル エス.パンワー
(72)【発明者】
【氏名】マディソン ビー.エメット
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-314219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0321232(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0121843(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/10
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極領域および膨張性流体領域を含むハウジングと、
前記ハウジングの前記電極領域内に位置付けされた電極対であって、前記ハウジングの第1の表面に固定された第1の電極および前記ハウジングの第2の表面に固定された第2の電極を含む電極対であって、
前記第1の電極および前記第2の電極が各々、2つ以上のタブ部分および2つ以上のブリッジ部分を含み、
前記2つ以上のブリッジ部分の各々が、隣接するタブ部分を相互接続しており、
前記第1の電極および前記第2の電極のうちの少なくとも1つが、前記2つ以上のタブ部分の間に位置付けされ前記膨張性流体領域を取巻く中央開口部を含む、
電極対と、
前記ハウジングの内部に収納された誘電性流体と、
を含む、人工筋肉であって、
前記電極対は、非作動状態から作動状態への作動によって前記誘電性流体が前記膨張性流体領域内に誘導されるように、前記非作動状態と前記作動状態の間で作動可能である、 人工筋肉。
【請求項2】
前記ハウジングが、前記ハウジングの封止部分を画定するように互いに部分的に封止された第1のフィルム層と第2のフィルム層を含み、前記ハウジングがさらに、前記封止部分によって取り囲まれた未封止部分を含み、前記ハウジングの前記電極領域および前記膨張性流体領域が前記未封止部分内に配置されている、請求項1に人工筋肉。
【請求項3】
前記第1のフィルム層および前記第2のフィルム層が各々、2軸延伸ポリプロピレンフィルムである、請求項2に記載の人工筋肉。
【請求項4】
前記ハウジングの前記第1の表面とは反対側の前記第1の電極の内側表面に対して固定された第1の電気絶縁体層と、前記ハウジングの前記第2の表面とは反対側の前記第2の電極の内側表面に対して固定された第2の電気絶縁体層とをさらに含み、前記第1の電気絶縁体層および前記第2の電気絶縁体層が各々、粘着性表面および反対側の封止不能表面を含んでいる、請求項1に記載の人工筋肉。
【請求項5】
前記第1の電極および前記第2の電極が各々、アルミニウム被覆ポリエステル電極である、請求項1に記載の人工筋肉。
【請求項6】
前記第1の電極および前記第2の電極が各々、2つのタブ部分対と2つのブリッジ部分対を含み、各々のブリッジ部分が、隣接するタブ部分の対を相互接続し、各タブ部分が、反対側のタブ部分と直径方向に相対している、請求項1に記載の人工筋肉。
【請求項7】
前記中央開口部から半径方向に延在して、前記2つ以上のタブ部分が各々タブ長を有し、前記2つ以上のブリッジ部分が各々ブリッジ長を有し、前記ブリッジ長が前記タブ長の20%~50%である、請求項1に記載の人工筋肉。
【請求項8】
前記第1の電極および前記第2の電極の各々が、前記2つ以上のタブ部分の間に位置付けされ前記膨張性流体領域を取り巻く中央開口部を含み、前記中央開口部が互いに同軸的に整列されている、請求項1に記載の人工筋肉。
【請求項9】
前記電極対が前記非作動状態にある場合、前記第1の電極と前記第2の電極は互いに平行ではなく、
前記電極対が前記作動状態にある場合、前記第1の電極と前記第2の電極は互いに平行であり、こうして前記第1の電極および前記第2の電極は、前記非作動状態から前記作動状態へと作動させられた時点で前記中央開口部に向かっておよび互いに向かってファスナ様に閉じるように構成されている、
請求項1に記載の人工筋肉。
【請求項10】
複数の人工筋肉を有する人工筋肉アセンブリであって、
各人工筋肉が、
電極領域および膨張性流体領域を含むハウジングと、
前記ハウジングの前記電極領域内に位置付けされた電極対であって、前記ハウジングの第1の表面に固定された第1の電極および前記ハウジングの第2の表面に固定された第2の電極を含む電極対であって、
前記第1の電極および前記第2の電極が各々、2つ以上のタブ部分および2つ以上のブリッジ部分を含み、
前記2つ以上のブリッジ部分の各々が、隣接するタブ部分を相互接続しており、
前記第1の電極および前記第2の電極のうちの少なくとも1つが、前記2つ以上のタブ部分の間に位置付けされ前記膨張性流体領域を取巻く中央開口部を含む、
電極対と、
前記ハウジングの内部に収納された誘電性流体と、
を含み、
前記複数の人工筋肉は、各人工筋肉の前記膨張性流体領域が互いに同軸的に整列されるように、スタックの形に配設されており、
前記電極対は、非作動状態から作動状態への作動によって前記誘電性流体が前記膨張性流体領域内に誘導されるように、前記非作動状態と前記作動状態の間で作動可能である、
人工筋肉アセンブリ。
【請求項11】
前記複数の人工筋肉が互いに電気的に結合され、非作動状態と作動状態の間で同時に作動するように構成されている、請求項10に記載の人工筋肉アセンブリ。
【請求項12】
前記ハウジングの前記第1の表面とは反対側の前記第1の電極の内側表面に対して固定された第1の電気絶縁体層と、前記ハウジングの前記第2の表面とは反対側の前記第2の電極の内側表面に対して固定された第2の電気絶縁体層とをさらに含み、
前記第1の電気絶縁体層および前記第2の電気絶縁体層が各々、粘着性表面および反対側の封止不能表面を含んでいる、請求項10に記載の人工筋肉アセンブリ。
【請求項13】
前記第1の電極および前記第2の電極が各々、2つのタブ部分対と2つのブリッジ部分対を含み、各々のブリッジ部分が、隣接するタブ部分の対を相互接続し、各タブ部分が、反対側のタブ部分と直径方向に相対している、請求項10に記載の人工筋肉。
【請求項14】
前記第1の電極および前記第2の電極の各々が、前記2つ以上のタブ部分の間に位置付けされ前記膨張性流体領域を取り巻く中央開口部を含み、前記中央開口部が互いに同軸的に整列されている、請求項10に記載の人工筋肉。
【請求項15】
前記電極対が前記非作動状態にある場合、前記第1の電極と前記第2の電極は互いに平行ではなく、
前記電極対が前記作動状態にある場合、前記第1の電極と前記第2の電極は互いに平行であり、こうして前記第1の電極および前記第2の電極は、前記非作動状態から前記作動状態へと作動させられた時点で前記中央開口部に向かっておよび互いに向かってファスナ様に閉じるように構成されている、
請求項10に記載の人工筋肉。
【請求項16】
人工筋肉アセンブリを作動させる方法であって、
人工筋肉の電極対に対して電気的に結合された電源を用いて電圧を生成することであって、前記人工筋肉が、電極領域および膨張性流体領域を有するハウジングを含み、
前記電極対が前記ハウジングの前記電極領域の中に位置付けされており、
前記電極対が、前記ハウジングの第1の表面に固定された第1の電極および前記ハウジングの対向する第2の表面に固定された第2の電極を含み、
前記第1の電極および前記第2の電極が各々、2つ以上のタブ部分および2つ以上のブリッジ部分を含み、
前記2つ以上のブリッジ部分の各々が、隣接するタブ部分を相互接続しており、
前記第1の電極および前記第2の電極のうちの少なくとも1つが、前記2つ以上のタブ部分の間に位置付けされ前記膨張性流体領域を取巻く中央開口部を含み、
前記ハウジングの内部に、誘電性流体が収納されている、
ことと、
前記人工筋肉の前記電極対に対して前記電圧を印加し、これにより、前記誘電性流体が前記ハウジングの前記膨張性流体領域内に誘導されかつ前記膨張性流体領域を膨張させるように、前記電極対を非作動状態から作動状態に作動させることと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記ハウジングが第1のフィルム層および第2のフィルム層を含み、前記ハウジングの封止部分を画定するように第1のフィルム層と第2のフィルム層を互いに部分的にヒートシールし、前記ハウジングがさらに、前記封止部分によって取り囲まれた未封止部分を含み、前記ハウジングの前記電極領域および前記膨張性流体領域が前記未封止部分内に配置されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
コントローラが前記電極対に対して通信可能に結合され、前記コントローラは、前記人工筋肉を前記非作動状態から前記作動状態へと作動させるために前記第1の電極および前記第2の電極を横断して前記電源から電圧を誘導する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記人工筋肉は、各々の人工筋肉の前記膨張性流体領域が互いに同軸的に整列されるようにスタックの形に配設された複数の人工筋肉のうちの1つである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記膨張性流体領域を拡張させることによって、アクチュエータ体積1cm3あたり4N・mm超の力が生成される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は概して、デバイスの少なくとも1つの表面上での集中的膨張のための装置および方法に関し、より詳細にはデバイスを膨張させる目的で流体を誘導するために電極対を使用する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のロボット技術は、多くの場合構造化された環境においてタスクを行なうのにサーボモータなどの剛性の構成要素に依存している。該剛性は、多くのロボット応用分野において、少なくとも部分的にサーボモータおよび他の剛性ロボティクスデバイスの重量対出力比によってひき起こされる制約条件をもたらしている。ソフトロボティクスの分野は、人工筋肉および他のソフトアクチュエータを使用することによって、これらの制約条件を改善する。人工筋肉は、生体筋肉の汎用性、性能および信頼性の模倣を試みる。いくつかの人工筋肉は、流体アクチュエータを援用するが、流体アクチュエータは、加圧ガスまたは液体の供給を必要とし、流体輸送は、チャネルおよび管のシステムを通して行なわれなければならず、人工筋肉の速度および効率が制約される。他の人工筋肉は、熱活性化されたポリマ繊維を使用するが、これらは制御が困難でかつ動作効率が低い。
【0003】
1つの特定の人工筋肉設計が、E.Acome、S.K.Mitchell、T.G.Morrissey、M.B.Emmett、C.Benjamin、M.King、M.Radakovitz、およびC.Keplinger著の「Hydraulically amplified self-healing electrostatic actuators whith muscle-like performance」という題の論文(Science 05 Jan 2018:Vol.359、Issue6371、pp.61~65)中に記載されている。これらの流体圧増幅された自己修復型静電(HASEL)アクチュエータは、さまざまな作動モードを達成するために静電力および流体圧力を使用する。しかしながら、HASELアクチュエータ人工筋肉の単位体積あたりのアクチュエータ出力には限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、単位体積あたりのアクチュエータ出力が増大した改良型人工筋肉に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において人工筋肉は、電極領域および膨張性流体領域を有するハウジングと、ハウジングの電極領域内に位置付けされた電極対であって、ハウジングの第1の表面に固定された第1の電極およびハウジングの第2の表面に固定された第2の電極を含む電極対とを含む。第1および第2の電極は各々、2つ以上のタブ部分および2つ以上のブリッジ部分を有する。2つ以上のブリッジ部分の各々は、隣接するタブ部分を相互接続しており、第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも1つは、前記2つ以上のタブ部分の間に位置付けされ前記膨張性流体領域を取巻く中央開口部を含む。誘電性流体はハウジングの内部に収納され、かつ電極対は、非作動状態から作動状態への作動によって誘電性流体が膨張性流体領域内に誘導されるように、非作動状態と作動状態の間で作動可能である。
【0006】
別の実施形態において、人工筋肉アセンブリは、複数の人工筋肉であって、各人工筋肉が、電極領域および膨張性流体領域を有するハウジングと、ハウジングの電極領域内に位置付けされた電極対であって、ハウジングの第1の表面に固定された第1の電極およびハウジングの第2の表面に固定された第2の電極を含む電極対とを含む。第1の電極および第2の電極は各々、2つ以上のタブ部分および2つ以上のブリッジ部分を含む。2つ以上のブリッジ部分の各々は、隣接するタブ部分を相互接続しており、第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも1つは、2つ以上のタブ部分の間に位置付けされ膨張性流体領域を取巻く中央開口部を含む。ハウジングの内部に誘電性流体が収納され、複数の人工筋肉は、各人工筋肉の膨張性流体領域が互いに同軸的に整列するように、スタック(stack)の形に配設されており、電極対は、非作動状態から作動状態への作動によって誘電性流体が膨張性流体領域内に誘導されるように、非作動状態と作動状態の間で作動可能である。
【0007】
さらに別の実施形態において、人工筋肉アセンブリを作動させる方法は、人工筋肉の電極対に対して電気的に結合された電源を用いて電圧を生成することであって、人工筋肉が、電極領域および膨張性流体領域を伴うハウジングを有することを含む。電極対はハウジングの電極領域の中に位置付けされている。電極対は、ハウジングの第1の表面に固定された第1の電極およびハウジングの第2の表面に固定された第2の電極を含む。第1の電極および第2の電極は各々、2つ以上のタブ部分および2つ以上のブリッジ部分を含む。2つ以上のブリッジ部分の各々は、隣接するタブ部分を相互接続しており、第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも1つは、2つ以上のタブ部分の間に位置付けされ膨張性流体領域を取巻く中央開口部を有する。ハウジングの内部に、誘電性流体が収納されている。該方法はさらに、人工筋肉の電極対に対して電圧を印加し、これにより、誘電性流体がハウジングの膨張性流体領域内に誘導されかつ膨張性流体領域を膨張させるように、電極対を非作動状態から作動状態まで作動させることを含む。
【0008】
本明細書中に記載の実施形態により提供されるこれらのおよび追加の特徴部は、図面と併せて以下の詳細な説明を考慮することによって、より完全に理解されるものである。
【0009】
図面中に記載の実施形態は、事実上例証的かつ例示的なものであって、クレームにより定義されている主題を限定するように意図されたものではない。例証的実施形態についての以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で標示されている以下の図面と併せて読んだ場合に、理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本明細書中で示され説明された1つ以上の実施形態に係る、例証的人工筋肉の分解組立図を概略的に描いている図である。
図2】本明細書中で示され説明された1つ以上の実施形態に係る、図1の人工筋肉の上面図を概略的に描いている図である。
図3】本明細書中で示され説明された1つ以上の実施形態に係る、非作動状態にある図2中のライン3-3に沿って切り取った図1の人工筋肉の横断面図を概略的に描いている図である。
図4】本明細書中で示され説明された1つ以上の実施形態に係る、作動状態にある図3の人工筋肉の横断面図を概略的に描いている図である。
図5】本明細書中で示され説明された1つ以上の実施形態に係る、非作動状態にある例証的人工筋肉の横断面図を概略的に描いている図である。
図6】本明細書中で示され説明された1つ以上の実施形態に係る、作動状態にある図5の人工筋肉の横断面図を概略的に描いている図である。
図7】本明細書中で示され説明された1つ以上の実施形態に係る、図1の複数の人工筋肉を含む人工筋肉アセンブリを概略的に描いている図である。
図8】本明細書中で示され説明された1つ以上の実施形態に係る、図1の人工筋肉を動作させるための作動システムを概略的に描いている図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中に記載の実施形態は、人工筋肉および複数の人工筋肉を含む人工筋肉アセンブリに向けられている。本明細書中に記載の人工筋肉は、選択的かつオンデマンドで拡張させられる膨張性流体領域を提供する目的で人工筋肉の領域を上昇および下降させるべく作動可能である。人工筋肉は、ハウジングおよび電極対を含む。ハウジングの内部に誘電性流体が収納されており、ハウジングは、電極領域と膨張性流体領域を含み、ここで電極対は電極領域内に位置付けされている。電極対は、ハウジングの第1の表面に固定された第1の電極とハウジングの第2の表面に固定された第2の電極とを含む。電極対は、非作動状態から作動状態への作動が誘電性流体を膨張性流体領域内へ誘導するように、非作動状態と作動状態の間で作動可能である。これにより、膨張性流体領域が膨張され、人工筋肉の一部分をオンデマンドで上昇させる。さらに、第1の電極および第2の電極は各々、2つ以上のタブ部分および隣接するタブ部分を相互接続する2つ以上のブリッジ部分を含み、第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも1つは、タブ部分間に位置付けされた中央開口部を含み、膨張性流体領域を取り巻く。電極対のタブ部分およびブリッジ部分の設計は、ファスナ様の作動動作を容易にして、人工筋肉の作動により達成可能な単位体積あたりの力を増大させる。人工筋肉のさまざまな実施形態および人工筋肉の動作が、本明細書中でより詳細に説明される。可能な場合にはつねに、図面全体を通して同じまたは同様の部品に言及するために同じ参照番号が使用される。
【0012】
ここで図1および2を参照すると、人工筋肉100が示されている。人工筋肉100はハウジング102、ハウジング102の相対する表面に固定された第1の電極106と第2の電極108を含む電極対104、第1の電極106に固定された第1の電気絶縁体層110および第2の電極108に固定された第2の電気絶縁体層112を含む。いくつかの実施形態において、ハウジング102は、第1の内側表面114および第2の内側表面116などの相対する内側表面対と、第1の外側表面118および第2の外側表面120などの相対する外側表面対とを含むワンピースモノリシック層である。いくつかの実施形態において、ハウジング102の第1の内側表面114および第2の内側表面116は、ヒートシール可能である。他の実施形態では、ハウジング102は、第1のフィルム層122および第2のフィルム層124などの個別に製造されたフィルム層の対であり得る。したがって、第1のフィルム層122は、第1の内側表面114と第1の外側表面118を含み、第2のフィルム層124は第2の内側表面116と第2の外側表面120を含む。
【0013】
以下の説明を通して、ワンピースハウジングとは対照的に、主として第1のフィルム層122および第2のフィルム層124を含むハウジング102している可能性がある。いずれの配設も企図されているということを理解すべきである。いくつかの実施形態において、第1のフィルム層122および第2のフィルム層124は概して同じ構造および組成を含む。例えば、いくつかの実施形態において、第1のフィルム層122および第2のフィルム層124は各々、2軸延伸ポリプロピレンを含む。
【0014】
第1の電極106および第2の電極108は各々、第1のフィルム層122と第2のフィルム層124の間に位置付けされる。いくつかの実施形態において、第1の電極106および第2の電極108は各々、例えばMylar(登録商標)などのアルミニウム被覆ポリエステルである。さらに、第1の電極106および第2の電極108のうちの一方は、負荷電電極であり、第1の電極106および第2の電極108のうちの他方は、正荷電電極である。本明細書中で論述されている目的のためには、人工筋肉100の他方の電極106、108が負に荷電されているかぎりにおいて、いずれかの電極106、108が正に荷電されていてよい。
【0015】
第1の電極106は、フィルムに面する表面126および反対側の内側表面128を有する。第1の電極106は、第1のフィルム層122、具体的には第1のフィルム層122の第1の内側表面114に接して位置付けされる。さらに、第1の電極106は、第1のフィルム層122の縁部を通過して第1の電極106から延在する第1の端子130を含み、該第1の端子130が第1の電極106を作動させるべく電源に接続され得るようになっている。具体的には、端子は、図8に示されているように、電源および作動システム400のコントローラに対して、直接かまたは直列で結合される。同様にして、第2の電極108は、フィルムに面する表面148および反対側の内側表面150を有する。第2の電極108は、第2のフィルム層124、具体的には第2のフィルム層124の第2の内側表面116に接して位置付けされる。第2の電極108は、第2のフィルム層124の縁部を通過して第2の電極108から延在する第2の端子152を含み、該第2の端子152が第2の電極108を作動させるべく電源および作動システム400のコントローラに接続され得るようになっている。
【0016】
第1の電極106は、2つ以上のタブ部分132と2つ以上のブリッジ部分140を含む。各ブリッジ部分140は、隣接するタブ部分132の間に位置付けされ、これらの隣接するタブ部分132を相互接続している。各タブ部分132は、第1の電極106の中心軸Cからタブ部分132の反対側の第2の端部136まで半径方向に延在する第1の端部134を有し、ここで第2の端部136は第1の電極106の外周138の一部分を画定する。各ブリッジ部分140は、第1の電極106の中心軸Cから、第1の電極106の外周138の別の部分を画定するブリッジ部分140の反対側の第2の端部144まで半径方向に延在する第1の端部142を有する。第1の電極106の中心軸Cから半径方向に延在して、各タブ部分132はタブ長L1を有し、各ブリッジ部分140はブリッジ長L2を有する。タブ長L1は、タブ部分132の第1の端部134から第2の端部132までの距離であり、ブリッジ長L2は、ブリッジ部分140の第1の端部142から第2の端部144までの距離である。各タブ部分132のタブ長L1は、各ブリッジ部分140のブリッジ長L2よりも長い。いくつかの実施形態において、ブリッジ長L2は、タブ長L1の20%~50%、例えばタブ長L1の30%~40%である。
【0017】
いくつかの実施形態において、2つ以上のタブ部分132は、1つ以上のタブ部分132の対の形で配設されている。各タブ部分対132は、互いに直径方向に相対して配設された2つのタブ部分132を含む。いくつかの実施形態において、第1の電極106は、第1の電極106の相対する側または端部に位置付けされたわずか2つのタブ部分132しか含まない可能性がある。図1および2に示されているように、いくつかの実施形態において、第1の電極106は、4つのタブ部分132および隣接するタブ部分132を相互接続する4つのブリッジ部分140を含む。該実施形態では、4つのタブ部分132は、互いに直径方向に相対する2つのタブ部分対132として配設されている。さらに、図示されている通り、第1の端子130は、タブ部分132のうちの1つのタブ部分の第2の端部136から延在し、それと一体化して形成されている。
【0018】
第1の電極106と同様、第2の電極108は、少なくとも1対のタブ部分154と2つ以上のブリッジ部分162を含む。各ブリッジ部分162は、隣接するタブ部分154の間に位置付けされ、これらの隣接するタブ部分154を相互接続している。各タブ部分154は、第2の電極108の中心軸Cからタブ部分154の反対側の第2の端部158まで半径方向に延在する第1の端部156を有し、ここで第2の端部158は第2の電極108の外周160の一部分を画定する。第1の電極106および第2の電極108は同軸であることから、第1の電極106および第2の電極108の中心軸Cは同じである。各ブリッジ部分162は、第2の電極の中心軸Cから、第2の電極108の外周160の別の部分を画定するブリッジ部分162の反対側の第2の端部166まで半径方向に延在する第1の端部164を有する。第2の電極108の中心軸Cから半径方向に延在して、各タブ部分154はタブ長L3を有し、各ブリッジ部分162はブリッジ長L4を有する。タブ長L3は、タブ部分154の第1の端部156から第2の端部158までの距離であり、ブリッジ長L4は、ブリッジ部分162の第1の端部164から第2の端部166までの距離である。タブ長L3は、各ブリッジ部分162のブリッジ長L4よりも長い。いくつかの実施形態において、ブリッジ長L4は、タブ長L3の20%~50%、例えばタブ長L3の30%~40%である。
【0019】
いくつかの実施形態において、2つ以上のタブ部分154は、1つ以上のタブ部分154対の形で配設されている。各タブ部分対154は、互いに直径方向に相対して配設された2つのタブ部分154を含む。いくつかの実施形態において、第2の電極108は、第1の電極106の相対する側または端部に位置付けされたわずか2つのタブ部分154しか含まない可能性がある。図1および2に示されているように、いくつかの実施形態において、第2の電極108は、4つのタブ部分154および隣接するタブ部分154を相互接続する4つのブリッジ部分162を含む。該実施形態では、4つのタブ部分154は、互いに直径方向に相対する2つのタブ部分対154として配設されている。さらに、図示されている通り、第2の端子152は、タブ部分154のうちの1つのタブ部分の第2の端部158から延在し、それと一体化して形成されている。
【0020】
ここで図1~6を参照すると、第1の電極106および第2の電極108のうちの少なくとも1つは、タブ部分132の第1の端部134とブリッジ部分140の第1の端部142の間で内部に形成された中央開口部を有する。図3および4において、第1の電極106は、中央開口部146を有する。しかしながら、図5および6に示されているように、中央開口部が第2の電極108の内部に具備されている場合には、第1の電極106は中央開口部146を含む必要がないということを理解すべきである。代替的には、中央開口部146が第1の電極106の内部に具備されている場合には、第2の電極108は中央開口部を含む必要がない。なおも図1~6を参照すると、第1の電気絶縁体層110および第2の電気絶縁体層112は、概してそれぞれ第1の電極106および第2の電極108に対応する幾何形状を有する。したがって、第1の電気絶縁体層110および第2の電気絶縁体層112は各々、第1の電極106および第2の電極108上の同様の部分に対応するタブ部分170、172およびブリッジ部分174、176を有する。さらに、第1の電気絶縁体層110および第2の電気絶縁体層112は各々、上に位置付けされている場合には第1の電極106の外周138および第2の電極108の外周160に対応する外周178、180を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、第1の電気絶縁体層110および第2の電気絶縁体層112が概して同じ構造および組成を含むということを認識すべきである。したがって、いくつかの実施形態において、第1の電気絶縁体層110および第2の電気絶縁体層112は各々、粘着性表面182、184および反対側の封止不能表面186、188をそれぞれ含んでいる。こうして、いくつかの実施形態において、第1の電気絶縁体層110および第2の電気絶縁体層112は、各々、第1の電極106の内側表面128および第2の電極108の内側表面150にそれぞれ接着されたポリマーテープである。
【0022】
ここで図2~6を参照すると、人工筋肉100は、第1の電極106の第1の端子130および第2の電極108の第2の端子152がハウジング102、すなわち第1のフィルム層122と第2のフィルム層124の外周を超えて延在している状態で、その組立て形態で示されている。図2に示されているように、第2の電極108は、第1の電極106上に積み重ねられており、したがって、第1の電極106、第1のフィルム層122および第2のフィルム層124は示されていない。第1の電極106、第2の電極108、第1の電気絶縁体層110および第2の電気絶縁体層112は、その組立て形態において、第1のフィルム層122と第2のフィルム層124の間に挟まれている。第1のフィルム層122は、第1の電極106の外周138および第2の電極108の外周160を取り囲む部域において第2のフィルム層124に対して部分的に封止されている。いくつかの実施形態において、第1のフィルム層122は、第2のフィルム層124にヒートシールされる。具体的には、いくつかの実施形態において、第1のフィルム層122は第2のフィルム層124に封止されて、第1の電極106および第2の電極108を取り囲む封止部分190を画定する。第1のフィルム層122および第2のフィルム層124は、例えば接着剤、ヒートシールなどを用いて、任意の好適な方法で封止されてよい。
【0023】
第1の電極106、第2の電極108、第1の電気絶縁体層110および第2の電気絶縁体層112は、第1のフィルム層122が第2のフィルム層124に対し封止するのを妨げて、未封止部分192を形成する障壁を提供する。ハウジング102の未封止部分192は、内部に電極対104が具備されている電極領域194、および電極領域194により取り囲まれている膨張性流体領域196を含む。第1の電極106および第2の電極108の中央開口部146、168は、膨張性流体領域196を形成し、互いの上に軸方向に積み重ねられるように配設されている。図示されていないものの、ハウジング102は、電極対104の幾何形状に適合しかつ人工筋肉100のサイズすなわち封止部分190のサイズを縮小させるように切断されてよい。
【0024】
未封止部分192の内部に誘電性流体198が提供され、第1の電極106と第2の電極108の間を自由に流れる。本明細書中で使用される「誘電性」流体は、伝導無く電気力を伝達し、したがって低い導電率を有する媒体または材料である。非限定的ないくつかの例示的誘電性流体としては、ペルフルオロアルカン、変圧器油、および脱イオン水が含まれる。誘電性流体198は、針または他の好適な注入デバイスを用いて、人工筋肉100の未封止部分192内に注入され得る、ということを認識すべきである。
【0025】
ここで図3および4を参照すると、人工筋肉100は、非作動状態と作動状態の間で作動可能である。図3に示されている非作動状態において、第1の電極106および第2の電極108は、それらの中央開口部146、168およびタブ部分132、154の第1の端部134、156に近接して、部分的に互いに離隔されている。タブ部分132、154の第2の端部136、158は、ハウジング102が、第1の電極106の外周138および第2の電極108の外周160で封止されているために、互いとの関係において所定の位置にとどまる。図4に示されている作動状態において、第1の電極106および第2の電極108は、互いに接触させられ互いに平行に配向されて、誘電性流体198を膨張性流体領域196内に強制する。これにより、誘電性流体198は、第1の電極106および第2の電極108の中央開口部146、168を通って流れ膨張性流体領域196を拡張させることになる。
【0026】
ここで図3を参照すると、人工筋肉100は、非作動状態で示されている。電極対104は、ハウジング102の未封止部分192の電極領域194の内部に具備される。第1の電極106の中央開口部146および第2の電極108の中央開口部168は、膨張性流体領域196の内部で同軸的に整列している。非作動状態において、第1の電極106および第2の電極108は部分的に互いから離隔され、互いに平行ではない。第1のフィルム層122は、電極対104の周りで第2のフィルム層124に封止されていることから、タブ部分132、154の第2の端部136、158は、互いに接触させられる。したがって、第1の電極106と第2の電極108の間に誘電性流体198が提供され、こうして膨張性流体領域196に近接してタブ部分132、154の第1の端部134、156が分離される。換言すると、第1の電極106のタブ部分132の第1の端部134と第2の電極108のタブ部分154の第1の端部156の間の距離が、第1の電極106のタブ部分132の第2の端部136と第2の電極108のタブ部分154の第2の端部158の間の距離よりも大きい。その結果、電極対104は、作動された時点で膨張性流体領域196に向かってファスナ様に閉じる(zipper)ことになる。いくつかの実施形態において、第1の電極106および第2の電極108は可撓性であってよい。したがって、図3に示されているように、第1の電極106および第2の電極108は、凸状であり、こうしてそのタブ部分132、154の第2の端部136、158は、互いに閉じてはいるものの中央開口部146、168に近接して互いに離隔した状態にとどまることができるようになっている。非作動状態では、膨張性流体領域196は第1の高さH1を有する。
【0027】
図4に示されているように、作動された時点で、第1の電極106および第2の電極108は、そのタブ部分132、154の第2の端部144、158から互いに向かってファスナ様に閉じ、これにより、誘電性流体198を膨張性流体領域196内に押込む。図示されているように、作動状態において、第1の電極106および第2の電極108は互いに平行である。作動状態において、誘電性流体198は膨張性流体領域196に流入して、膨張性流体領域196を拡張させる。こうして、第1のフィルム層122および第2のフィルム層124は、反対方向に膨張する。作動状態において、膨張性流体領域196は第2の高さH2を有し、非作動状態にあるときの膨張性流体領域196の第1の高さH1よりも大きい。図示されてはいないものの、電極対104は、非作動状態と作動状態の間の1つの位置まで部分的に作動され得る、ということを指摘しておかなければならない。これにより、必要なときに膨張性流体領域196の部分的拡張および調整が可能になる。
【0028】
第1の電極106および第2の電極108を互いに向かって移動させるために、電源により電圧が印加される。いくつかの実施形態において、誘電性流体198を通して電場を誘発するために、最高10kVの電圧を電源から提供することができる。第1の電極106と第2の電極108の間に結果として得られる引力は、誘電性流体198を膨張性流体領域196内に押込む。膨張性流体領域196内部の誘電性流体198由来の圧力は、第1のフィルム層122および第1の電気絶縁体層110を第1の電極106の中心軸Cに沿って第1の軸方向に変形させ、第2のフィルム層124および第2の電気絶縁体層112を、第2の電極108の中心軸Cに沿って反対側の第2の軸方向に変形させる。第1の電極106および第2の電極108に供給されている電圧がひとたび中断されたならば、第1の電極106および第2の電極108は、非作動状態でそれらの初期非平行位置に戻る。
【0029】
本明細書中で開示されている当該実施形態、具体的には相互接続用ブリッジ部分174、176を伴うタブ部分132、154は、タブ部分132、154を含まないHASELアクチュエータなどのアクチュエータに比べて多くの改善を提供するということを認識すべきである。2つのタブ部分対132、154をそれぞれ第1の電極106および第2の電極108の各々の上に含む人工筋肉100の実施形態は、均一の半径方向に延在する幅を有するドーナツ形の電極を含む公知のHASELアクチュエータに比べて、作動後の結果として得られる力の量を削減することなく、人工筋肉100の全体的質量および厚みを削減し、作動中に必要とされる電圧量を削減し、かつ人工筋肉100の総体積を減少させる。より詳細には、人工筋肉100のタブ部分132、154は、ドーナツ形の電極を含むHASELアクチュエータに比べて人工筋肉100の局在化した均一な液圧作動を提供することによって増大した作動出力を結果としてもたらすファスナ様の前面を提供する。具体的には、1つのタブ部分対132、154は、ドーナツ形HASELアクチュエータに比べて単位体積あたり2倍のアクチュエータ出力量を提供し、一方、2つのタブ部分対132、154は、単位体積あたり4倍のアクチュエータ出力量を提供する。タブ部分132、154を相互接続するブリッジ部分174、176は、同様に、作動中、隣接するタブ部分間の距離を維持することによりタブ部分132、154の座屈を制限する。ブリッジ部分174、176は、タブ部分132、154と一体化して形成されることから、ブリッジ部分174、176は同様に、破断リスクを増大させる取付け場所を無くすことによりタブ部分132、154間の漏出も防止する。
【0030】
動作中、人工筋肉100が作動された時点で、膨張性流体領域196の膨張は、アクチュエータ体積1立方センチメートル(cm3)あたり3ニュートン-ミリメートル(N・mm)以上、例えば4N・mm/cm3以上、5N・mm/cm3以上、6N・mm/cm3以上、7N・mm/cm3以上、8N・mm/cm3以上といった力を生成する。一実施例において、人工筋肉100が9.5キロボルト(kV)の電圧によって作動させられた場合、人工筋肉100は、5Nの力を結果として提供する。別の実施例では、人工筋肉100が10kVの電圧により作動させられた場合、人工筋肉100は500グラムの負荷の下で440%のひずみを提供する。
【0031】
さらに、第1の電極106および第2の電極108のサイズは、誘電性流体198の変位量に比例する。したがって、膨張性流体領域196の内部でより大きな変位が所望される場合、電極対104のサイズは、膨張性流体領域196のサイズとの関係において増大させられる。膨張性流体領域196のサイズは、第1の電極106および第2の電極108の中の中央開口部146、168によって画定されることを認識すべきである。したがって、膨張性流体領域196の内部の変位度は、代替的にまたは付加的に、中央開口部146、168のサイズを増大または減少させることによって制御され得る。
【0032】
図5および6に示されているように、人工筋肉200の別の実施形態が例証されている。人工筋肉200は、実質的に人工筋肉100と類似している。したがって、同様の構造は同様の参照番号で標示されている。しかしながら、図示されているように、第1の電極106は、中央開口部を含まない。したがって、第2の電極108のみが内部に中央開口部168を含む。図5に示されているように、人工筋肉200は非作動状態にあり、第1の電極106は平面的であり、第2の電極108は第1の電極106との関係において凸状である。非作動状態において、膨張性流体領域196は第1の高さH3を有する。図6に示されている作動状態において、膨張性流体領域196は、第1の高さH3より大きい第2の高さH4を有する。第1の電極106と第2の電極108の両方の中とは対照的に第2の電極108中のみに中央開口部168を提供することによって、人工筋肉200の一方の側に全変形を形成することができるということを認識すべきである。さらに、全変形が人工筋肉200の一方の側のみに形成されることから、人工筋肉200の膨張性流体領域196の第2の高さH4は、誘電性流体の他の全ての寸法、配向および体積が同じである場合、人工筋肉100の膨張性流体領域196の第2の高さH2に比べて、人工筋肉200の中央軸Cに直交する長手方向軸からさらに遠くに延在する。
【0033】
ここで図7を参照すると、人工筋肉100などの複数の人工筋肉を含む人工筋肉アセンブリ300が示されている。しかしながら、複数の人工筋肉200を積重ね編成で配設することも同様に可能である。各人工筋肉100は、構造的に同一であり得、各人工筋肉100の膨張性流体領域196が隣接する人工筋肉100の膨張性流体領域196と重ね合わさるようにスタック(stack)の形に配設されてもよい。各人工筋肉100の端子130、152は、人工筋肉100が非作動状態と作動状態の間で同時に作動され得るように互いに電気的に接続される。人工筋肉100を積重ね構成で配設することにより、人工筋肉アセンブリ300の全変形は、各人工筋肉100の膨張性流体領域196の内部の変形の合計である。したがって、結果としての人工筋肉アセンブリ300由来の変形の度合は、人工筋肉100単独により提供されると考えられるものよりも大きい。
【0034】
ここで図8を参照すると、人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300などの人工筋肉または人工筋肉アセンブリを非作動状態と作動状態の間で動作させるための作動システム400を提供することができる。したがって、作動システム400は、コントローラ402、操作デバイス404、電源406、および通信経路408を含み得る。ここで作動システム400のさまざまな構成要素について説明する。
【0035】
コントローラ402は、さまざまな構成要素が通信可能に結合されている非一時的電子メモリ412およびプロセッサ410を含む。いくつかの実施形態において、プロセッサ410および非一時的電子メモリ412および/または他の構成要素は、単一のデバイスの内部に内含されている。他の実施形態においては、プロセッサ410および非一時的電子メモリ412および/または他の構成要素は、通信可能に結合された多数のデバイスの間で分散されていてよい。コントローラ402は、機械可読命令セットを記憶する非一時的電子メモリ412を含む。プロセッサ410は、非一時的電子メモリ412内に記憶された機械可読命令を実行する。非一時的電子メモリ412は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードドライブまたは、プロセッサ410が機械可読命令にアクセスできるように機械可読命令を記憶する能力を有する任意のデバイスを含むことができる。したがって、本明細書中に記載されている作動システム400は、任意の従来のコンピュータプログラミング言語で、予めプログラミングされたハードウェア素子として、またはハードウェアおよびソフトウェア構成要素の組合せとして、実装され得る。非一時的電子メモリ412は1つのメモリモジュールまたは複数のメモリモジュールとして実装され得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、非一時的電子メモリ412は、作動システム400の機能を実行するための命令を含む。命令は、ユーザコマンドに基づいて人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300を動作させるための命令を含み得る。
【0037】
プロセッサ410は、機械可読命令を実行する能力を有するあらゆるデバイスであり得る。例えばプロセッサ410は、集積回路、マイクロチップ、コンピュータまたは他の任意のコンピュータデバイスであり得る。非一時的電子メモリ412およびプロセッサ410は、作動システム400のさまざまな構成要素および/またはモジュールの間の信号相互接続性を提供する通信経路408に結合される。したがって、通信経路408は、任意の数のプロセッサを互いに通信可能に結合することができ、通信経路408に結合されたモジュールが分散コンピューティング環境内で動作できるようにすることができる。具体的には、モジュールの各々は、データを送信および/または受信できるノードとして動作し得る。本明細書中で使用される「通信可能に結合された」なる用語は、結合された構成要素が、データ信号を相互に交換する、例えば導電媒体を介して電気信号を、空気を介して電磁信号を、光導波路を介して光信号を交換する能力を有することを意味する。
【0038】
図8に概略的に描かれているように、通信経路408は、コントローラ402のプロセッサ410および非一時的電子メモリ412を作動システム400の複数の他の構成要素と通信可能に結合する。例えば、図8中に描かれている作動システム400は、操作デバイス404および電源406と通信可能に結合されたプロセッサ410および非一時的電子メモリ412を含む。
【0039】
操作デバイス404は、ユーザが人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300の動作を制御できるようにする。いくつかの実施形態において、操作デバイス404は、スイッチ、トグル、ボタンまたは、ユーザによる操作を提供するための制御機構の任意の組合せであり得る。非限定的な例として、ユーザは、操作デバイス404の制御機構を第1の位置まで作動させることによって、人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300を作動状態へと作動させることができる。第1の位置にある間、人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300は作動状態にとどまる。ユーザは、操作デバイス404の制御機構を第1の位置から出て第2の位置へと動作させることにより、人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300を非作動状態へと切換えることができる。
【0040】
操作デバイス404は、通信経路408が操作デバイス404を作動システム400の他のモジュールに対して通信可能に結合するように、通信経路408に結合される。操作デバイス404は、人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300の特定の動作構成に関してユーザ命令を受信するためのユーザインターフェースを提供することができる。さらに、ユーザ命令は、一定の条件でのみ人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300を動作させるための命令を含むことができる。
【0041】
電源406(例えばバッテリ)は、人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300に対して電力を提供する。いくつかの実施形態において、電源406は、充電式直流電源である。電源406は、人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300に対して電力を提供するための単一の電源またはバッテリであり得るということを理解しなければならない。電源406を介して人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300に対し電力を提供するために、電力アダプタ(図示せず)を具備して、配線用ハーネスなどを介して電気的に結合させることができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、作動システム400は同様に表示デバイス414を含む。表示デバイス414は、通信経路408が作動システム400の他のモジュールに対して表示デバイス414を通信可能に結合するように、通信経路408に結合される。表示デバイス414は、人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300の作動の状態または人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300の作動の状態の変化の標示に応答して通知を出力し得る。さらに、表示デバイス414は、光学的情報の提供に加えて、表示デバイス414の表面上のまたは表示デバイス414に隣接する触覚入力の存在および場所を検出するタッチスクリーンであってよい。したがって、表示デバイス414は、操作デバイス404を含み、表示デバイス414が光学的出力を提供した時点で直接機械的入力を受信することができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、作動システム400は、ネットワーク420を介して作動システム400を携帯デバイス418に対し通信可能に結合するネットワークインタフェースハードウェア416を含む。携帯デバイス418は、非限定的に、スマートホン、タブレット、パーソナルメディアプレーヤーまたは、無線通信機能性を含む他の任意の電気デバイスを含み得る。携帯デバイス418が提供される場合、これは、操作デバイス404の代りにコントローラ402に対しユーザコマンドを提供するのに役立ち得るということを認識しなければならない。こうして、ユーザは、操作デバイス404の制御機構を利用することなく人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300を制御するかまたはこれを制御するためのプログラムを設定することが可能となり得る。したがって、人工筋肉100、200または人工筋肉アセンブリ300は、ネットワーク420を通してコントローラ402と無線で通信する携帯デバイス418を介して遠隔制御可能である。
【0044】
以上のことから、本明細書中では、人工筋肉を選択的に作動してその領域を上昇および下降させることによって、物体の表面を膨張または変形させるための人工筋肉が定義されている、と言うことを認識すべきである。これによりオンデマンドで動作可能な薄型膨張部材が提供される。
【0045】
「実質的に」および「約」なる用語は本明細書において、任意の定量比較、値、測定値または他の表現に起因し得る固有の不確実性の度合を表わすために使用され得る。これらの用語は、同様に、本明細書において、問題となっている主題の基本的機能を変化させる結果をもたらすことなく、定量的表現が提示された基準から変動し得る度合を表わすためにも使用される。
【0046】
本明細書では特定の実施形態が例証され説明されてきたが、請求対象の主題の範囲から逸脱することなく、さまざまな他の変更および修正を加えることが可能である、ということを理解すべきである。さらに、請求対象の主題のさまざまな態様が本明細書中で説明されてきたが、このような態様を組合せた形で使用する必要はない。したがって、添付のクレームが請求対象の主題の範囲内に入るこのような変更および修正の全てを網羅することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8