(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】パーク装置
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20241210BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F16H63/34
B60T1/06 G
(21)【出願番号】P 2021090484
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 明彦
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-9960(JP,A)
【文献】特開平5-280607(JP,A)
【文献】特開2011-84187(JP,A)
【文献】特開昭59-109678(JP,A)
【文献】特開2020-116985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキングポールを動作させるアクチュエータを備え、前記パーキングポールをパーキングギアに係合してパークロックを行い、前記アクチュエータのトルクに対する前記パーキングポールの作動トルクのトルク比は第1切替ポジションであるパークロックポジション、及び第2切替ポジションであるパークロック解除ポジション間で連続的に変化するパーク装置であって
、
前記アクチュエータにより回転作動する
回転作動プレートと、
前記トルク比が設定され前記アクチュエータのトルクを前記パーキングポールに伝達する回転プレートと、
前記回転作動プレート又は前記回転プレートに設けられ半径変化溝を含むカム溝と、
前記カム溝と係合するピンと、
前記ピンに接続されるとともに
前記カム溝が設けられていない前記回転作動プレート又は前記回転プレートと係合
し、前記回転作動プレートから前記回転プレートに前記アクチュエータのトルクを伝達するロッドと、を備え、
前記半径変化溝は、
前記カム溝が設けられた前記
回転作動プレート
又は前記回転プレート上の角度位置がパークロック解除側になるにつれて次第に大きくなる半径を有するとともに、前記パークロックポジションから前記パークロック解除ポジションに移行する際に前記ピンを案内する第1カム壁と、前記パークロック解除ポジションから前記パークロックポジションに移行する際に前記ピンを案内する第2カム壁とを有し、
前記第1カム壁と前記第2カム壁とは、前記半径変化溝の溝幅を変化させる変化形状を有する、
ことを特徴とするパーク装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパーク装置であって、
前記パークロックポジションで前記ピンが位置する第1位置と、前記パークロック解除ポジションで前記ピンが位置する第2位置とは、前記半径変化溝の延伸方向において前記変化形状が設けられている範囲内に位置し、
前記変化形状は、前記第1カム壁及び前記第2カム壁のそれぞれが他方に対し、一端側から他端側に向かう方向で前記溝幅を次第に増加させるとともに、増加から転じるかたちで前記溝幅を次第に減少させる形状である、
ことを特徴とするパーク装置。
【請求項3】
パーキングポールを動作させるアクチュエータを備え、前記パーキングポールをパーキングギアに係合してパークロックを行い、前記アクチュエータのトルクに対する前記パーキングポールの作動トルクのトルク比は第1切替ポジションであるパークロックポジション、及び第2切替ポジションであるパークロック解除ポジション間で連続的に変化するパーク装置であって
、
前記アクチュエータにより回転作動する
回転作動プレートと、
前記トルク比が設定され前記アクチュエータのトルクを前記パーキングポールに伝達する回転プレートと、
前記回転作動プレート又は前記回転プレートに設けられ半径変化溝を含むカム溝と、
前記カム溝と係合するピンと、
前記ピンに接続されるとともに
前記カム溝が設けられていない前記回転作動プレート又は前記回転プレートと係合
し、前記回転作動プレートから前記回転プレートに前記アクチュエータのトルクを伝達するロッドと、を備え、
前記ロッドは、前記ピンに接続される一端部と、
前記カム溝が設けられていない前記回転作動プレート又は前記回転プレートと係合する他端部と、前記一端部及び前記他端部を接続する延伸部とを有し、
前記カム溝と前記延伸部とは、前記カム溝の深さ方向において位置の重なり合いを有する、
ことを特徴とするパーク装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパーク装置であって、
前記カム溝の深さ方向における前記カム溝の中心位置は、前記カム溝の深さ方向における前記延伸部の位置範囲と重なり合う、
ことを特徴とするパーク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータにより従動ギア等を介してパーキングポールを回転させ、パークロック、パークロック解除を行う技術が開示されている。モータのトルクは従動ギアと一体形成の取付ブラケットに固定されたボール形状ピボットを介してパーキングポールに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにモータのトルクをパーキングポールに伝達する場合、モータのトルクに対するパーキングポールの作動トルクのトルク比は一定となる。このためこの場合は、パークロック解除時にパーキングポールに大きな負荷が作用している場合を想定して大きなモータを設置する必要があり、車両搭載性が悪化し得る。
【0005】
トルク比をパークロックポジション及びパークロック解除ポジション間で連続的に変化させれば、パークロックポジション側で大きくなり、パークロック解除ポジション側で小さくなる特性の駆動トルクを得ることが可能になる。このため、モータを大きくしなくても、最大負荷を上回る駆動トルクを得ることが可能になり、車両搭載性の改善に資する。トルク比を連続的に変化させるには、パーク装置は次のような構成とすることができる。すなわち、パーク装置は、モータにより回転作動するカムプレートが半径変化溝を含むカム溝を有するとともにカム溝にはピンが係合し、ロッドがピンに接続するとともにトルク比が設定された回転プレートと係合する構成とすることができる。半径変化溝はトルク比を連続的に変化させる役割を果たす。
【0006】
しかしながら、パークロックポジションからパークロック解除ポジションに移行する場合はその逆の場合と比べ、パークロック解除の必要があることから回転プレートの軸トルクが大きくなる。このため、半径変化溝により前者の場合に必要な駆動トルクを得ることができても、十分な余裕までは得られない虞がある。また、前者の場合に必要な駆動トルクを確保できた場合でも、半径変化溝がトルク比を連続的に変化させる結果、後者の場合に必要な駆動トルクに対して十分な余裕が得られなくなる虞がある。
【0007】
ロッド作動時にカム溝内を移動するピンに生じる摺動抵抗はトルク損失を発生させる。このため、このような摺動抵抗を抑制することも駆動トルクの確保に資する。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、駆動トルクを確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様のパーク装置では、アクチュエータにより回転作動する回転作動プレート、又はトルク比が設定されアクチュエータのトルクをパーキングポールに伝達する回転プレートが半径変化溝を含むカム溝を有するとともにカム溝にはピンが係合する。また、ロッドがピンに接続するとともにカム溝が設けられていない回転作動プレート又は回転プレートと係合し、回転作動プレートから回転プレートにアクチュエータのトルクを伝達する。半径変化溝はカム溝が設けられた回転作動プレート又は回転プレート上の角度位置がパークロック解除側になるにつれて次第に大きくなる半径を有するとともに、パークロックポジションからパークロック解除ポジションに移行する際にピンを案内する第1カム壁と、パークロック解除ポジションからパークロックポジションに移行する際にピンを案内する第2カム壁とを有する。第1カム壁と第2カム壁とは、半径変化溝の溝幅を変化させる形状を有する。
【0010】
本発明の第2の態様のパーク装置では、アクチュエータにより回転作動する回転作動プレート、又はトルク比が設定されアクチュエータのトルクをパーキングポールに伝達する回転プレートが半径変化溝を含むカム溝を有するとともにカム溝にはピンが係合する。また、ロッドがピンに接続するとともにカム溝が設けられていない回転作動プレート又は回転プレートと係合し、回転作動プレートから回転プレートにアクチュエータのトルクを伝達する。ロッドは、ピンに接続される一端部と、カム溝が設けられていない回転作動プレート又は回転プレートと係合する他端部と、一端部及び他端部を接続する延伸部とを有する。カム溝と延伸部とは、カム溝の深さ方向において位置の重なり合いを有する。
【発明の効果】
【0011】
第1の態様のパーク装置によれば、半径変化溝の溝幅を一定とせずに変化させることで、溝幅が一定の場合からトルク比を変化させることができる。このため、パークロックポジションからパークロック解除ポジションに移行する場合に第1カム壁により必要な駆動トルクを得るだけでなく、必要な駆動トルクに対して十分な余裕を得ることが可能になる。また、パークロックポジションからパークロック解除ポジションに移行する場合とその逆の場合とで第1カム壁及び第2カム壁を使い分けるので、後者の場合にも必要な駆動トルクに対して十分な余裕を得ることが可能になる。
【0012】
第2の態様のパーク装置によれば、カム溝に対しロッドの延伸部がカム溝の深さ方向にオフセットすることが抑制される。このため、ロッド作動時にカム溝のカム壁からピンにかかる負荷によってロッドに捩じりモーメントが生じることを抑制できる。結果、カム溝内を移動するピンに生じる摺動抵抗を抑制できるのでトルク損失を抑制でき、駆動トルクの確保に資する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図8】マニュアルプレートにおけるトルク比の説明図である。
【
図9】減速ギア及びカムプレート周辺部を断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1はパーク装置1の概略構成図である。パーク装置1はパーク機構2とシフト機構3とアクチュエータ4と減速ギア5と第1ギア6と第2ギア7とを有する。
図1ではカムプレート29の正面視でパーク機構2を示すとともに、カムプレート29の側面視でシフト機構3、アクチュエータ4及び減速ギア5を示す。
【0016】
パーク機構2は、パーキングギア21と、パーキングポール22と、パークロッド23と、ウェッジ24と、ウェッジスプリング25と、マニュアルプレート26と、第1ロッド27と、第1ピン28と、カムプレート29と、ディテントスプリング80と、係合部材81とを有する。
【0017】
パーキングギア21は変速機の出力軸に固定され、出力軸と共に回転、停止する。パーキングギア21にはパーキングポール22が係合する。
【0018】
パーキングポール22は、パークロッド23の動きに応じて揺動する。パーキングポール22が揺動すると、パーキングギア21とパーキングポール22との係合状態が変更される。
【0019】
パークロッド23は、パーキングポール22及びマニュアルプレート26間に設けられる。パークロッド23の一端側にはウェッジ24が設けられ、パークロッド23の他端部にはマニュアルプレート26が係合する。
【0020】
ウェッジ24はパーキングポール22との当接部材であり、パークロッド23の軸方向に変位可能に設けられる。ウェッジ24はパークロッド23の動きに応じてパーキングポール22を揺動させる。
【0021】
ウェッジスプリング25は、パークロッド23の鍔部23a及びウェッジ24間に設けられ、パーキングポール22に向けてウェッジ24を付勢する。ウェッジスプリング25はコイルばねであり、パークロッド23を挿通させた状態でパークロッド23に配置される。ウェッジ24とパーキングポール22との接触状態は、ウェッジ24を挟んでパーキングポール22の反対側に位置するスリーブにより保持される。
【0022】
マニュアルプレート26は回転プレートであり、パークロッド係合穴26aと第1ロッド係合穴26bとを有する。パークロッド係合穴26aにはパークロッド23が遊びを有して係合する。マニュアルプレート26は周縁部に第1溝部26c、第2溝部26dを有する。第1溝部26c、第2溝部26dにはディテントスプリング80が係合する。
【0023】
第1ロッド27は第1ピン28に接続されるとともにマニュアルプレート26と係合する。第1ロッド27は一端部27aで第1ピン28に接続されるとともに、他端部27bで第1ロッド係合穴26bに係合する。第1ロッド27は延伸部27cで真っ直ぐに延伸し、一端部27aと他端部27bとは延伸部27cに接続される。
【0024】
第1ピン28はカムプレート29の第1カム溝291に係合する。第1ピン28はカムプレート29の回転に応じて第1カム溝291内を移動する。
【0025】
カムプレート29は円盤状のプレートであり、第1カム溝291を有する。カムプレート29はシャフト51を介して減速ギア5に接続され、減速ギア5と同軸状に配置される。カムプレート29では、アクチュエータ4からの動力が第1カム溝291を介して第1ピン28に伝達される。
【0026】
ディテントスプリング80は板ばねにより構成され、係合部材81をマニュアルプレート26に向けて付勢する。係合部材81は第1溝部26c及び第2溝部26dそれぞれと係合する。本実施形態では係合部材81はディテントスプリング80の先端部に形成され、パーク機構2がパークロックポジションにある場合に第1溝部26cと係合し、パークロック解除ポジションにある場合に第2溝部26dと係合する。パークロック解除ポジションは一定の幅を有して設定される。このため、第2溝部26dは一定の幅を有するパークロック解除ポジションに応じた広さの係合域を有する。
【0027】
パークロックポジションはパーク機構2の第1切替ポジションであり、パークロックポジションではパーキングポール22がパーキングギア21に噛み合い締結する。パークロック解除ポジションはパーク機構2の第2切替ポジションであり、パークロック解除ポジションではパーキングポール22がパークロック解除側に最大限移動し、パーキングギア21に噛み合い締結しない。ディテントスプリング80は係合部材81が第1溝部26c及び第2溝部26dそれぞれと係合した状態で、ばね力によりマニュアルプレート26の回転位置を保持する。
【0028】
減速ギア5はアクチュエータ4に接続される。減速ギア5はアクチュエータ4の出力軸に設けられた第1ギア6と噛み合い、第1ギア6を介してアクチュエータ4と接続される。
【0029】
アクチュエータ4は例えばモータであり、アクチュエータ4の動力は、第1ギア6、減速ギア5、カムプレート29、第1ピン28、第1ロッド27、マニュアルプレート26、パークロッド23、ウェッジスプリング25、ウェッジ24を介してパーキングポール22に伝達される。結果、アクチュエータ4によりパーキングポール22が動作される。
【0030】
減速ギア5はさらにシフト機構3に接続される。シフト機構3はクラッチの締結、解放を行う機構であり、クラッチにはドグクラッチが用いられる。クラッチにはドグクラッチ以外のクラッチが用いられてもよい。シフト機構3はカムシリンダ31と第2ピン32と第2ロッド33とを有する。
【0031】
カムシリンダ31はアクチュエータ4の回転動作を直線動作に変換するために用いられる。カムシリンダ31はドグクラッチのシフトフォークを作動させるために用いられ、カムシリンダ31の回転軸に設けられた第2ギア7を介して減速ギア5に接続される。カムシリンダ31は第2カム溝311を有し、第2カム溝311には第2ピン32が係合する。
【0032】
第2ピン32はカムシリンダ31の回転に応じて第2カム溝311内を移動する。第2ピン32には、カムシリンダ31から第2カム溝311を介してアクチュエータ4からの動力が伝達される。第2ピン32には第2ロッド33の一端部が接続され、第2ロッド33の他端部はばねを介してシフトフォークに接続される。第2ロッド33の一端部は第2ピン32に固定される。
【0033】
次に第1カム溝291、第2カム溝311について説明する。
【0034】
図2は第1カム溝291の説明図である。第1カム溝291はカムプレート29のプレート面に設けられ、半径変化溝291aと半径一定溝291bとを有する。半径変化溝291aは半径が変化するように設定される。
【0035】
半径変化溝291aは第1位置P1及び第2位置P2を有する。第1位置P1にはパーク機構2がパークロックポジションにある場合に第1ピン28が位置し、第2位置P2にはパーク機構2がパークロック解除ポジションにある場合に第1ピン28が位置する。第1ピン28は、半径変化溝291aのパークロック側の一端手前で第1位置P1に位置する。
【0036】
半径変化溝291aの半径は、カムプレート29上の角度位置がパークロック解除側になるにつれて次第に大きくなる。なお、図示のパークロック側、パークロック解除側は、カムプレート29上の半径変化溝291aの位置を示し、パークロック時、パークロック解除時のカムプレート29の回転方向は図示のパークロック側、パークロック解除側とは逆になる。
【0037】
第2位置P2は半径変化溝291aのパークロック解除側の他端手前に位置する。半径変化溝291aの半径は半径変化溝291a及び半径一定溝291bの接続位置で最大になる。半径変化溝291aの半径はパークロックポジションで第1ピン28が位置する第1位置P1の角度位置からパークロック解除ポジションで第1ピン28が位置する第2位置P2の角度位置、さらには半径変化溝291a及び半径一定溝291bの接続位置に亘って、カムプレート29上の角度位置がパークロック解除側になるにつれて次第に大きくなる。半径変化溝291aのパークロック解除側の他端部には半径一定溝291bが連なる。
【0038】
半径一定溝291bでは半径が一定とされる。半径一定溝291bは半径変化溝291aからパークロック解除側と同方向とされるクラッチ締結側に向かって延伸する。半径一定溝291bにおけるクラッチ締結側と反対の方向はクラッチ解放側とされる。なお、図示のクラッチ締結側、クラッチ解放側は、図示のパークロック側、パークロック解除側と同様、カムプレート29上の半径一定溝291bの位置を示す。
【0039】
第1ピン28が半径変化溝291aに位置する場合は、カムプレート29が回転すると半径変化溝291aが第1ピン28に干渉する。このため、第1ピン28は半径変化溝291aに案内されるかたちでカムプレート29の回転に応じて移動する。
【0040】
第1ピン28が半径一定溝291bに位置する場合は、カムプレート29が回転しても半径一定溝291bが第1ピン28に干渉しないので、第1ピン28は移動しない。つまり、半径一定溝291bはカムプレート29の回転時に第1ピン28を空振りさせる空振り溝となっている。半径一定溝291bは第1空振り溝に相当する。
【0041】
図3は第2カム溝311の説明図である。図示のクラッチ締結側、クラッチ解放側はカムシリンダ31の軸方向、回転方向ともに、カムシリンダ31上の第2カム溝311の位置を示す。
【0042】
第2カム溝311はカムシリンダ31の円周面に設けられ、軸方向位置一定溝311aと軸方向位置変化溝311bとを有する。軸方向位置一定溝311aではカムシリンダ31における軸方向位置が一定とされる。軸方向位置一定溝311aはカムシリンダ31の回転時に第2ピン32を空振りさせる空振り溝であり、第2ピン32が軸方向位置一定溝311aに位置する場合はカムシリンダ31が回転しても軸方向位置一定溝311aは第2ピン32に干渉しない。軸方向位置一定溝311aは第2空振り溝に相当する。
【0043】
軸方向位置変化溝311bではカムシリンダ31における軸方向位置が変化する。軸方向位置変化溝311bではカムシリンダ31上の角度位置がクラッチ締結側になるにつれて軸方向位置がクラッチ締結側に次第に変化する。軸方向位置変化溝311bは軸方向位置一定溝311aのカムシリンダ31上の回転方向クラッチ締結側の一端部に連なる。
【0044】
軸方向位置一定溝311aはカムプレート29の半径変化溝291aとの関係で次のように設けられる。すなわち、半径変化溝291aと軸方向位置一定溝311aとは、第2ピン32が軸方向位置一定溝311aに位置する場合に、第1ピン28が半径変化溝291aに位置するように設けられる(
図1参照)。従って、第1ピン28の動作に応じて作動するパーク機構2は、第2ピン32の動作に応じて作動するシフト機構3が非作動の場合に作動する。
【0045】
軸方向位置変化溝311bはカムプレート29の半径一定溝291bとの関係で次のように設けられる。すなわち、半径一定溝291bと軸方向位置変化溝311bとは、第1ピン28が半径一定溝291bに位置する場合に、第2ピン32が軸方向位置変化溝311bに位置するように設けられる(後述する
図6参照)。従って、第2ピン32の動作に応じて作動するシフト機構3は、第1ピン28の動作に応じて作動するパーク機構2が非作動の場合に作動する。
【0046】
図1では、パーク機構2はパークロックポジションにあり、シフト機構3は非作動状態となっている。パークロックポジションではパーキングポール22がパーキングギア21に噛み合い締結する結果、パーキングギア21が機械的にロックされ、車両の移動が規制される。この状態からパークロック解除方向にアクチュエータ4が駆動すると、パーク装置1は次のように動作する。
【0047】
図4から
図6はパーク装置1の動作説明図である。
図4は、パーク機構2がパークロックポジション及びパークロック解除ポジションの中間ポジションにあり、且つシフト機構3が非作動状態の場合を示す。
図5は、パーク機構2がパークロック解除ポジションにあり、且つシフト機構3が非作動状態の場合を示す。
図6は、パーク機構2がパークロック解除ポジションにあり、且つシフト機構3が作動状態の場合を示す。
【0048】
図4では、アクチュエータ4がパークロック解除方向に駆動したことにより、カムプレート29がパークロック解除方向に回転している。結果、第1ピン28が前述の半径変化溝291aに案内されてカムプレート29におけるパークロック解除側に移動する。
【0049】
この際、第1ロッド27は図中左側となるパークロック解除方向に移動し、マニュアルプレート26を押す。結果、マニュアルプレート26は図中反時計回りとなるパークロック解除方向に回転し、パークロッド23を引く。
【0050】
これにより、ウェッジ24がパークロッド23とともにパーキングポール22から遠ざかる方向に移動する。結果、パーキングポール22がウェッジ24のテーパ部に当接しながら、パーキングギア21から遠ざかる方向つまりパークロック解除側に動作する。
【0051】
第1ピン28が半径変化溝291aに位置する場合は、アクチュエータ4がこのようにしてパーキングポール22をパークロック解除側に動作させることにより、パーク機構2が作動する。
【0052】
シフト機構3では第2ピン32が前述の軸方向位置一定溝311aに位置する。このため、アクチュエータ4がパークロック解除方向に駆動しても、第2ピン32は第2カム溝311によって案内されない。従って、第2ピン32及び第2ロッド33は移動せず、シフト機構3は非作動となる。
【0053】
図4ではパーキングギア21とパーキングポール22との噛み合い締結が解除されているものの、第1ピン28は前述の第2位置P2に到達していない。このため、パーク機構2の切替ポジションとしては、パーク機構2はパークロック解除ポジションではなく中間ポジションにある。
【0054】
図5では、第1ピン28がカムプレート29の回転に応じて第2位置P2まで移動している。このため、パーク機構2の切替ポジションがパークロック解除ポジションになり、車両が移動可能になる。ウェッジ24は
図4に示す状態よりもパーキングポール22からさらに離れる方向に移動している。第2ピン32は未だ前述の軸方向位置一定溝311aに位置するため、シフト機構3は非作動のままとなる。係合部材81は図中右側で第2溝部26dと係合している。
【0055】
図6では、アクチュエータ4がさらにパークロック解除方向と同方向のクラッチ締結方向に駆動し、これに応じてカムプレート29が回転することにより、第1ピン28が前述の半径一定溝291bに位置している。このため、カムプレート29が回転しても第1ピン28は移動せず、パーキングポール22が動作しないので、パーク機構2は非作動となる。係合部材81は図中左側で第2溝部26dと係合しており、パーキングポール22はパークロック解除側に最大限移動している。
【0056】
シフト機構3では第2ピン32が前述の軸方向位置変化溝311bに位置している。このため、カムシリンダ31がアクチュエータ4からの動力によりパークロック解除方向と同方向とされるクラッチ締結方向に回転すると、第2ピン32は軸方向位置変化溝311bに案内されてカムシリンダ31における軸方向締結側に移動する。
【0057】
このため、第2ロッド33もクラッチ締結方向に移動し、第2ロッド33からばねを介してシフトフォークに動力が伝達される。結果、アクチュエータ4からの動力によりシフトフォークが移動するか或いはシフトフォークを移動させるべくばねが圧縮され、シフト機構3が作動状態になる。
【0058】
図7は半径変化溝291aの拡大図である。破線は半径変化溝291aの溝幅を一定とした場合のカム壁を示す。半径変化溝291aは第1カム壁W1と第2カム壁W2とを有する。第1カム壁W1は、パークロックポジションからパークロック解除ポジションに移行する際に第1ピン28を案内する。第2カム壁W2は、パークロック解除ポジションからパークロックポジションに移行する際に第1ピン28を案内する。基準中心線Lは破線で示すカム壁それぞれ、つまり半径変化溝291aの溝幅を一定とした場合のカム壁それぞれの基準となる中心線である。このため、カムプレート29に直交する方向に沿って見た場合、基準中心線Lに直交する線上では破線で示す一方のカム壁までの距離と破線で示す他方のカム壁までの距離とは等しい。破線で示すカム壁の溝幅は、第1ピン28の直径に予め設定されたクリアランスを加えた大きさとなっており、半径一定溝291bの溝幅WTH1と等しい。
【0059】
第1カム壁W1及び第2カム壁W2は、半径変化溝291aの溝幅WTHを変化させる変化形状を有する。このような変化形状は換言すれば、第1カム壁W1及び第2カム壁W2それぞれにつき、半径変化溝291aの基準中心線Lからの距離が半径変化溝291aの延伸方向に沿って変化する変化形状といえる。変化形状では、第1ピン28の移動性を確保するために破線で示すカム壁の溝幅、つまり半径一定溝291bの溝幅WTH1よりも溝幅WTHが大きく設定される。変化形状では、第1カム壁W1及び第2カム壁W2のそれぞれが他方に対し、一端側から他端側(例えば、パークロック側からパークロック解除側)に向かう方向で溝幅WTHを次第に増加させるとともに、増加から転じるかたちで溝幅WTHを次第に減少させる。第1位置P1と第2位置P2とは、半径変化溝291aの延伸方向において変化形状が設けられている範囲内(二点破線の範囲内)に位置する。第2位置P2は一定の幅を有するパークロック解除ポジションに対し、最もパークロックポジション寄りの位置とされる。第1カム壁W1では変化形状が半径変化溝291aの延伸方向全域に設けられ、第2カム壁W2では変化形状が半径変化溝291aの延伸方向一部に設けられる。第1位置P1は第1カム壁W1と、第2位置P2は第2カム壁W2と隣り合う位置とすることができる。第1カム壁W1及び第2カム壁W2のプロフィールは、後述する負荷トルクTR、負荷トルクTLに基づき設定される。
【0060】
このように第1カム壁W1及び第2カム壁W2が設けられた結果、パーク装置1では、マニュアルプレート26におけるトルク比が次のように変化する。マニュアルプレート26におけるトルク比は、アクチュエータ4のトルクに対してマニュアルプレート26が伝達するトルクの比であり、アクチュエータ4のトルクに対するパーキングポール22の作動トルクのトルク比に相当する。
【0061】
図8はマニュアルプレート26におけるトルク比の説明図である。縦軸はマニュアルプレート26の軸トルクを示し、横軸はマニュアルプレート26の角度位置を示す。駆動トルクT1、T2、TXはアクチュエータ4のトルクに応じたマニュアルプレート26の軸トルクを示す。駆動トルクT1はパークロックポジションからパークロック解除ポジションに移行する場合、つまり第1ピン28が第1カム壁W1に案内される場合の駆動トルクを示す。駆動トルクT2はその逆の場合、つまり第1ピン28が第2カム壁W2に案内される場合の駆動トルクを示す。駆動トルクTXは比較例の場合の駆動トルクを示す。比較例は半径変化溝291aの溝幅を一定とした場合の駆動トルクを示す。
【0062】
負荷トルクTRはパークロック解除実行時の負荷に応じたマニュアルプレート26の軸トルクを示し、負荷トルクTLはパークロック実行時の負荷に応じたマニュアルプレート26の軸トルクを示す。例えば車両が勾配路でパークロックされていた場合、パーキングポール22にはパーキングギア21から大きな負荷がかかる。
【0063】
このため、マニュアルプレート26の角度位置が第1位置P1に応じた角度位置から第2位置P2に応じた角度位置に向かって変化すると、負荷トルクTRは直ちに急上昇して最大負荷TR_MAXになる。負荷トルクTRは係合部材81がディテントスプリング80のばね力に抗して第1溝部26cの斜面を乗り越える際に最大負荷TR_MAXになる。
【0064】
比較例の場合、半径変化溝291aの溝幅が一定なので、パークロックポジションにあるカムプレート29がパークロック解除側に回転すると、第1ピン28が半径変化溝291aに案内されて径方向外側に移動する。
【0065】
パーク装置1の作動時にアクチュエータ4のトルクは一定とされ、カムプレート29ではアクチュエータ4から伝達されるトルクが一定となる。このため、接線荷重×半径=トルクの関係から、第1ピン28が位置する半径変化溝291aの半径が大きくなるほど、第1ピン28が第1ロッド27を介してマニュアルプレート26に伝達する荷重は小さくなる。
【0066】
従って、アクチュエータ4のトルクに基づきマニュアルプレート26が伝達する駆動トルクTXは、マニュアルプレート26の角度位置が第1位置P1に応じた角度位置から第2位置P2に応じた角度位置に向かって変化するにつれて次第に小さくなる。駆動トルクTXは、第1位置P1に応じた角度位置から第2位置P2に応じた角度位置に亘ってこのように変化することにより、パークロックポジションからパークロック解除ポジションに亘ってこのように変化する。
【0067】
結果、比較例の場合はパークロックポジション側で大きくなり、パークロック解除ポジション側で小さくなる特性の駆動トルクTXが得られる。結果、最大負荷TR_MAXを上回る駆動トルクTXを得ることが可能になる。
【0068】
パーク装置1作動時のアクチュエータ4のトルクは一定のため、駆動トルクTXの変化はマニュアルプレート26におけるトルク比の変化を指標する。駆動トルクTXは、徐変する半径変化溝291aの半径変化に応じて変化することにより、パークロックポジション及びパークロック解除ポジション間で連続的に変化している。
【0069】
従って、パークロックポジション及びパークロック解除ポジション間で連続的に変化するトルク比はマニュアルプレート26に設定される。これにより、トルク比を変化させてもアクチュエータ4のトルクがパーキングポール22に滑らかに伝達され、音の発生も防止される。マニュアルプレート26にはパークロックポジションからパークロック解除ポジションに亘って連続的に変化するトルク比が設定される。
【0070】
マニュアルプレート26におけるトルク比は、パークロック解除時の最大負荷TR_MAXが発生するマニュアルプレート26の角度位置近傍で最大になっている。最大負荷TR_MAXが発生するマニュアルプレート26の角度位置近傍は、パークロック解除時に係合部材81が第1溝部26cの斜面を乗り越える際の角度位置近傍であり、パークロックポジションに応じたマニュアルプレート26の角度位置とされる。これにより、駆動トルクTXを最大負荷TR_MAXより高くするための駆動トルクTXのトルク特性が適切に設定される。
【0071】
このため、比較例ではマニュアルプレート26の角度位置が第1位置P1に応じた角度位置から第2位置P2に応じた角度位置に向かって変化すると、直ちに急上昇して最大負荷TR_MAXになる負荷トルクTRに適した特性の駆動トルクTXが得られる。
【0072】
その一方で、比較例では最大負荷TR_MAXに対する駆動トルクTXの余裕が十分に得られていない。このため、比較例では必要な駆動トルクが確保されないことが懸念される。
【0073】
本実施形態では、第1カム壁W1及び第2カム壁W2は、半径変化溝291aの溝幅WTHを変化させる形状を有する。従って、パークロック解除時には比較例の場合よりも半径変化溝291aの半径を小さくした場合と同様の軌跡に沿って、第1カム壁W1で第1ピン28を案内することが可能になる。結果、比較例の場合の駆動トルクTXよりパークロックポジション側で大きく、パークロック解除ポジション側で小さいトルク特性の駆動トルクT1を得ることが可能になる。このため、パーク装置1ではパークロックポジションからパークロック解除ポジションに移行する場合に第1カム壁W1により最大負荷TR_MAX以上の駆動トルクT1を得るだけでなく、最大負荷TR_MAXに対して十分な余裕を得ることが可能になる。駆動トルクT1がパークロック解除ポジション側で駆動トルクTXより小さくなるのは、第1ピン28が第1カム壁W1から受ける荷重、つまりカムプレート29のトルクに基づく接線力の大きさが半径変化溝291aの半径変化により変化するだけでなく、接線力の接線方向が第1ピン28の位置に応じて変化することによる。
【0074】
その一方で、駆動トルクT1は負荷トルクTLの最大負荷TL_MAXを上回るものの、最大負荷TL_MAXに対して十分な余裕を有していない。負荷トルクTLは係合部材81がディテントスプリング80のばね力に抗して第2溝部26dの斜面を乗り越える際に最大負荷TL_MAXになる。
【0075】
パーク装置1ではパークロックポジションからパークロック解除ポジションに移行する場合とその逆の場合とで第1カム壁W1及び第2カム壁W2を使い分ける。パークロック時には比較例の場合よりも半径変化溝291aの半径を大きくした場合と同様の軌跡に沿って、第2カム壁W2で第1ピン28を案内することが可能になる。結果、比較例の場合の駆動トルクTXよりパークロック解除ポジション側で小さく、パークロックポジション側で大きいトルク特性の駆動トルクT2を得ることが可能になる。このため、パーク装置1ではパークロック解除ポジションからパークロックポジションに移行する場合にも、最大負荷TL_MAXに対して十分な余裕を得ることが可能になる。
【0076】
最大負荷TR_MAXはパークロック解除時に係合部材81が第1溝部26cの斜面を乗り越える際に発生し、最大負荷TL_MAXは係合部材81が第2溝部26dの斜面を乗り越える際に発生する。これに対し、パーク装置1では第1カム壁W1及び第2カム壁W2のそれぞれが他方に対し、一端側から他端側に向かう方向で溝幅WTHを次第に増加させるとともに、増加から転じるかたちで溝幅WTHを次第に減少させる。これにより、上述のように発生する最大負荷TR_MAXび最大負荷TL_MAXに対する十分な余裕が適切に得られる。
【0077】
図9は減速ギア5及びカムプレート29周辺部を断面で示す図である。
図9では延伸部27cの中心線を含み軸方向Dに平行な面による断面を示す。軸方向Dは第1カム溝291の深さ方向に対応する。
図9に示すように、第1カム溝291はカムプレート29を貫通して設けられる。つまり、第1カム溝291は底なし形状のカム溝として形成され、カム溝は底なし形状である場合、つまり貫通孔として形成される場合を含む。第1ロッド27の一端部27aは延伸部27cとの接続部から軸方向Dに分岐し、断面コの字状に形成される。一端部27aの分岐部それぞれの間にはカムプレート29が配置される。一端部27aは介在ピン271を介して第1ピン28に接続される。第1ピン28は円筒状の形状を有し、介在ピン271は第1ピン28を貫通して設けられる。介在ピン271は第1ピン28を貫通した状態で、両端部で一端部27aの分岐部それぞれに固定される。一端部27aは板状の部材で構成することができ、一端部27aに延伸部27cを固定することで第1ロッド27を構成することができる。
【0078】
図10は比較例の場合を断面で示す図である。
図10では
図9同様の断面を示す。比較例では、カムプレート29の代わりにカムプレート29Xが設けられるとともに、第1ロッド27の代わりに第1ロッド27Xが設けられる。カムプレート29は、軸方向Dにおいて第1ロッド27側に開口する有底の第1カム溝291Xを備える。第1ロッド27Xは、延伸部27cXとの接続部から軸方向Dに沿ってカムプレート29側に延伸する一端部27aXを備える。一端部27aXは、第1カム溝291Xに設けられた第1ピン28に挿入される。
【0079】
このように構成された比較例では、第1ロッド27Xの延伸部27cXが第1カム溝291Xに対して軸方向Dにオフセットして配置される。このため、第1ロッド27Xの延伸部27cXと第1カム溝291Xとは軸方向Dにおいて位置の重なり合いを有しない。この場合、第1ロッド27Xの作動時に第1カム溝291Xのカム壁から第1ピン28にかかる負荷によって第1ロッド27Xに捩じりモーメントが発生する。結果、第1ロッド27Xの作動時に第1カム溝291X内を移動する第1ピン28に生じる摺動抵抗が増加し、トルク損失が発生する。
【0080】
本実施形態の場合、
図9に示すように第1ロッド27の延伸部27cと第1カム溝291とは軸方向Dにおいて位置の重なり合いを有する。このため、延伸部27cが第1カム溝291に対し軸方向Dにオフセットすることが抑制される。従って、第1ロッド27の作動時に、つまり第1ピン28が半径変化溝291aに位置する場合に第1ロッド27に捩じりモーメントが生じることが抑制され、これにより第1ピン28に生じる摺動抵抗が抑制される。結果、トルク損失が抑制されるので、駆動トルクの確保に資する。
【0081】
本実施形態では、軸方向Dにおける第1カム溝291の中心位置D1が軸方向Dにおける延伸部27cの位置範囲Rと重なり合う。このため、第1カム溝291の中心位置D1に対する延伸部27cの軸方向Dへのオフセットが極力制限される。結果、トルク損失が極力抑制される。本実施形態ではさらに、軸方向Dにおける第1カム溝291の中心位置D1が軸方向Dにおける延伸部27cの中心位置D2と重なり合う。これにより、延伸部27cが第1カム溝291に対して軸方向Dにオフセットしないので、捩じりモーメントに起因して発生するトルク損失の防止が図られる。
【0082】
次に本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0083】
パーク装置1は、パーキングポール22を動作させるアクチュエータ4を備え、パーキングポール22をパーキングギア21に係合してパークロックを行う。アクチュエータ4のトルクに対するパーキングポール22の作動トルクのトルク比は第1切替ポジションであるパークロックポジション、及び第2切替ポジションであるパークロック解除ポジション間で連続的に変化する。パーク装置1は、トルク比が設定されたマニュアルプレート26と、アクチュエータ4により回転作動するとともに、半径変化溝291aを含む第1カム溝291を有するカムプレート29と、第1カム溝291と係合する第1ピン28と、第1ピン28に接続されるとともにマニュアルプレート26と係合する第1ロッド27とを備える。半径変化溝291aは、カムプレート29上の角度位置がパークロック解除側になるにつれて次第に大きくなる半径を有するとともに、パークロックポジションからパークロック解除ポジションに移行する際に第1ピン28を案内する第1カム壁W1と、パークロック解除ポジションからパークロックポジションに移行する際に第1ピン28を案内する第2カム壁W2とを有する。第1カム壁W1と第2カム壁W2とは、半径変化溝291aの溝幅を変化させる変化形状を有する。
【0084】
このような構成によれば、半径変化溝291aの溝幅WTHを一定とせずに変化させることで、溝幅WTHが一定の場合からトルク比を変化させることができる。このため、パークロックポジションからパークロック解除ポジションに移行する場合に第1カム壁W1により最大負荷TR_MAX以上の駆動トルクT1を得るだけでなく、最大負荷TR_MAXに対して十分な余裕を得ることが可能になる。また、パークロックポジションからパークロック解除ポジションに移行する場合とその逆の場合とで第1カム壁W1及び第2カム壁W2を使い分けるので、後者の場合にも最大負荷TL_MAXに対して十分な余裕を得ることが可能になる。
【0085】
本実施形態では、パークロックポジションで第1ピン28が位置する第1位置P1と、パークロック解除ポジションで第1ピン28が位置する第2位置P2とは、半径変化溝291aの延伸方向において変化形状が設けられている範囲内に位置する。変化形状は、第1カム壁W1及び第2カム壁W2のそれぞれが他方に対し、一端側から他端側に向かう方向で溝幅WTHを次第に増加させるとともに、増加から転じるかたちで溝幅WTHを次第に減少させる形状とされる。このような構成によれば、係合部材81が第1溝部26cの斜面及び第2溝部26dの斜面を乗り越える際に発生する最大負荷TR_MAX及び最大負荷TL_MAXに対し、十分な余裕を適切に得ることができる。
【0086】
パーク装置1は、パーキングポール22を動作させるアクチュエータ4を備え、パーキングポール22をパーキングギア21に係合してパークロックを行う。アクチュエータ4のトルクに対するパーキングポール22の作動トルクのトルク比は第1切替ポジションであるパークロックポジション、及び第2切替ポジションであるパークロック解除ポジション間で連続的に変化する。パーク装置1は、トルク比が設定されたマニュアルプレート26と、アクチュエータ4により回転作動するとともに、半径変化溝291aを含む第1カム溝291を有するカムプレート29と、第1カム溝291と係合する第1ピン28と、第1ピン28に接続されるとともにマニュアルプレート26と係合する第1ロッド27とを備える。第1ロッド27は、第1ピン28に接続される一端部27aと、マニュアルプレート26と係合する他端部27bと、一端部27a及び他端部27bを接続する延伸部27cとを有する。第1カム溝291と延伸部27cとは、第1カム溝291の深さ方向に相当する軸方向Dにおいて位置の重なり合いを有する。
【0087】
このような構成によれば、延伸部27cが第1カム溝291に対し軸方向Dにオフセットすることを抑制できる。従って、第1ロッド27の作動時に第1ロッド27に捩じりモーメントが生じることを抑制でき、これにより第1ピン28に生じる摺動抵抗を抑制できる。結果、トルク損失を抑制でき、駆動トルクの確保に資する。
【0088】
本実施形態では、軸方向Dにおける第1カム溝291の中心位置D1は、軸方向Dにおける延伸部27cの位置範囲Rと重なり合う。このような構成によれば、第1カム溝291の中心位置D1に対する延伸部27cの軸方向Dへのオフセットを極力制限できる。結果、トルク損失を極力抑制できる。
【0089】
パーク装置1は次のように構成されてもよい。
図11はパーク装置1の変形例を示す図である。
図11では
図9と同様の断面を示す。この例では、一端部27aが延伸部27cとの接続部から軸方向Dに沿って減速ギア5とは反対側に延伸した後、延伸部27cの延伸方向に沿ってカムプレート側に延伸する。介在ピン271は一端側が拡径され、他端側から第1ピン28に挿入される。介在ピン271は、第1ピン28を貫通した状態で、他端側で第1ロッド27に固定される。この例でも、延伸部27cと第1カム溝291とは軸方向Dにおいて位置の重なり合いを有する。このため、トルク損失を抑制でき駆動トルクの確保に資する。この例でも、軸方向Dにおける第1カム溝291の中心位置D1は軸方向Dにおける延伸部27cの位置範囲Rと重なり合う。また、軸方向Dにおける第1カム溝291の中心位置D1が軸方向Dにおける延伸部27cの中心位置D2と重なり合う。このためトルク損失を極力抑制でき、また、トルク損失の防止を図ることができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0091】
上述した実施形態では、第1カム溝291を有するカムプレート29から第1ロッド27を介してマニュアルプレート26に動力を伝達することにより、パークロックポジション及びパークロック解除ポジション間でトルク比を連続的に変化させる場合について説明した。しかしながら、トルク比を連続的に変化させる構造は上記に限られない。
【0092】
例えば、第1カム溝291はマニュアルプレート26に設けられてもよい。この場合、第1ロッド27は一端側でカムプレート29に回転自在に係合し、他端側で第1ピン28に設けられる構造とすることができる。
【符号の説明】
【0093】
1 パーク装置
21 パーキングギア
22 パーキングポール
26 マニュアルプレート(回転プレート)
27 第1ロッド(ロッド)
27a 一端部
27b 他端部
27c 延伸部
28 第1ピン(ピン)
29 カムプレート
291 第1カム溝(カム溝)
291a 半径変化溝
4 アクチュエータ
D 軸方向(カム溝の深さ方向)
D1 中心位置
L 基準中心線
P1 第1位置
P2 第2位置
R 位置範囲
W1 第1カム壁
W2 第2カム壁
WTH 溝幅