(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】試料分析装置、試料分析方法、医薬分析装置および医薬分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/15 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G01N33/15 Z
(21)【出願番号】P 2021092141
(22)【出願日】2021-06-01
【審査請求日】2023-10-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、医薬品等規制調和・評価研究事業「多様な創薬モダリティに対応する人工知能等の情報処理技術を駆使した品質評価法の開発に関する研究」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】中井 裕介
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/245140(WO,A1)
【文献】特表2009-520503(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101448852(CN,A)
【文献】Paul Faya et al,Using accelerated drug stability results to inform long-term studies in shelf life determination,Statistics in Medicine,2018年,37(17),2599-2615
【文献】Jie Chen et al,Bayesian hierarchical modeling of drug stability data,Statistics in Medicine,2008年,27(13),2361-2380
【文献】Xiang-Yao Su et al,A Bayesian Approach to Arrhenius Prediction of Shelf-Life,Pharmaceutical Research,1994年,11,1462-1466
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する取得部と、
記憶装置に記憶された反応モデルを読み出し、アレニウスの式または修正アレニウスの式と前記反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの事後分布をベイズ推定により推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記パラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における前記被検物質の定量的な情報の信頼区間または分位点を算出する算出部と、を備える、試料分析装置。
【請求項2】
試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する取得部と、
記憶装置に記憶された反応モデルを読み出し、アレニウスの式または修正アレニウスの式と前記反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの事後分布をベイズ推定により推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記パラメータの事後分布に基づいて、前記被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間または分位点を算出する算出部と、を備える、試料分析装置。
【請求項3】
試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する工程と、
記憶装置に記憶された反応モデルを読み出し、アレニウスの式または修正アレニウスの式と前記反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの事後分布をベイズ推定により推定する工程と、
推定された前記パラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における前記被検物質の定量的な情報の信頼区間または分位点を算出する工程と、を含む、試料分析方法。
【請求項4】
試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する工程と、
記憶装置に記憶された反応モデルを読み出し、アレニウスの式または修正アレニウスの式と前記反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの事後分布をベイズ推定により推定する工程と、
推定された前記パラメータの事後分布に基づいて、前記被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間または分位点を算出する工程と、を含む、試料分析方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の試料分析装置において、前記試料は製剤または原薬を含み、前記被検物質は前記製剤または前記原薬中に存在する有効成分または不純物を含む、医薬分析装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の試料分析方法において、前記試料は製剤または原薬を含み、前記被検物質は前記製剤または前記原薬中に存在する有効成分または不純物を含む、医薬分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる被検物質を分析する試料分析装置および方法、並びに、製剤等に含まれる有効成分等を分析する医薬分析装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬の経時的変化を評価するために安定性試験が行われる。この試験により、医薬の有効成分が基準値の範囲内にあること、または、不純物が基準値以下であることを担保できる期間(有効期間)が算出される。一般には、恒温恒湿槽などで一定期間保存した医薬に対して液体クロマトグラフィーにより有効成分や不純物の同定、定量を行い、この結果に基づいて、有効期間が算出される。
【0003】
安定性試験を実施するためには、医薬の長期保管が必要である。この期間を短縮するために、反応モデル関数を利用して有効期間の予測を行う方法(時間軸方向の外挿)、あるいは、アレニウスの式を利用して、高温(高湿)条件での分解量から低温(低湿)条件下での有効期間を予測する方法(温度軸方向の外挿)が行われている。時間軸方向の外挿としては、例えば、下記非特許文献1に、温度軸方向の外挿としては、例えば、下記非特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「新有効成分含有医薬品の安定性試験データの評価」日本製薬工業協会、医薬出版センター発行、平成17年3月
【文献】「ASAPprime(医薬品安定性迅速評価ソフトウェア)WEBページ」、FreeThink社、[2021年5月24日検索]、<URL:https://www.ms-scientific.com/products/lifescience/asapprime>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医薬の安定性試験の結果としては、単に当て嵌まりの良い予測だけでなく、妥当な分布や信頼区間の設定が求められる。従来、モデル関数を利用する方法においては、モデル誤差を考慮して広めの信頼区間を設定する、あるいは、充分な長さの期間のデータを取得するというアプローチが取られている。しかし、このようなアプローチを取っているために、有効期間が過剰に短くなるといった問題や、必要なデータの取得に長期間を要するといった問題が生じている。
【0006】
本発明の目的は、妥当な信頼区間を提示可能な試料分析装置および方法並びに医薬分析装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に従う試料分析装置は、試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する取得部と、複数の反応モデルにより一般化された一般化反応モデルを記憶装置から読み出し、一般化反応モデルのパラメータの事後分布をベイズ推定により推定する推定部と、推定部により推定されたパラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における被検物質の定量的な情報の信頼区間または分位点を算出する算出部とを備える。
【0008】
本発明の他の局面に従う試料分析装置は、試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する取得部と、複数の反応モデルにより一般化された一般化反応モデルを記憶装置から読み出し、一般化反応モデルのパラメータの事後分布をベイズ推定により推定する推定部と、推定部により推定されたパラメータの事後分布に基づいて、被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間または分位点を算出する算出部とを備える。
【0009】
本発明の他の局面に従う試料分析装置は、試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する取得部と、記憶装置に記憶された反応モデルを読み出し、アレニウスの式または修正アレニウスの式と反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの事後分布をベイズ推定により推定する推定部と、推定部により推定されたパラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における被検物質の定量的な情報の信頼区間または分位点を算出する算出部とを備える。
【0010】
本発明の他の局面に従う試料分析装置は、試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する取得部と、記憶装置に記憶された反応モデルを読み出し、アレニウスの式または修正アレニウスの式と反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの事後分布をベイズ推定により推定する推定部と、推定部により推定されたパラメータの事後分布に基づいて、被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間または分位点を算出する算出部とを備える。
【0011】
本発明は、また、試料分析方法、医薬分析装置および医薬分析方法に向けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、妥当な信頼区間を提示可能な試料分析装置および方法並びに医薬分析装置および方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態に係る試料分析装置の構成図である。
【
図2】本実施の形態に係る試料分析装置の機能ブロック図である。
【
図6】第1の実施の形態に係る分析方法を示すフローチャートである。
【
図8】シミュレーションデータを用いてベイズ推定により推定したピーク面積比の事後分布を示す図である。
【
図9】第1の実施の形態の変形例1に係る分析方法を示すフローチャートである。
【
図10】第2の実施の形態に係る分析方法を示すフローチャートである。
【
図11】第2の実施の形態の変形例に係る分析方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態に係る試料分析装置および方法並びに医薬分析装置および方法について説明する。
【0015】
(1)試料分析装置の構成
図1は、実施の形態に係る試料分析装置1の構成図である。本実施の形態の試料分析装置1は、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフまたは質量分析装置などにおいて得られた試料の測定データMDを取得する。測定データMDは、試料中の存在する被検物質の定量的な情報を有している。具体的には、測定データMDは、試料中に存在する被検物質のピーク面積比に関するデータを有している。本実施の形態においては、特に、試料として医薬(製剤または原薬)を用いる場合を例に説明する。具体的には、本実施の形態においては、測定データMDは、医薬に含まれる有効成分のピーク面積に対する不純物のピーク面積の比に関するデータである。測定データMDは、複数の時間についてピーク面積比に関するデータを有している。
【0016】
本実施の形態の試料分析装置1は、パーソナルコンピュータにより構成されている。試料分析装置1は、
図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、操作部14、ディスプレイ15、記憶装置16、通信インタフェース(I/F)17、デバイスインタフェース(I/F)18を備える。
【0017】
CPU11は、試料分析装置1の全体制御を行う。RAM12は、CPU11がプログラムを実行するときにワークエリアとして使用される。ROM13には、各種データ、プログラムなどが記憶される。操作部14は、ユーザによる入力操作を受け付ける。操作部14は、キーボードおよびマウスなどを含む。ディスプレイ15は、分析結果などの情報を表示する。記憶装置16は、ハードディスクなどの記憶媒体である。記憶装置16には、プログラムP1および測定データMDが記憶される。
【0018】
プログラムP1は、複数の反応モデルにより一般化された一般化反応モデルのパラメータの取りうる値(事後分布)をベイズ推定により推定する。また、プログラムP1は、アレニウスの式または修正アレニウスの式と反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの取りうる値(事後分布)をベイズ推定により推定する。また、プログラムP1は、推定されたパラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における被検物質の定量的な情報の信頼区間もしくは分位点を算出する。また、プログラムP1は、推定されたパラメータの事後分布に基づいて、被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間または分位点を算出する。
【0019】
通信インタフェース17は、他のコンピュータとの間で有線または無線による通信を行うインタフェースである。デバイスインタフェース18は、CD、DVD、半導体メモリなどの記憶媒体19にアクセスするインタフェースである。
【0020】
(2)試料分析装置の機能構成
図2は、試料分析装置1の機能構成を示すブロック図である。
図2において、制御部20は、CPU11がRAM12をワークエリアとして使用しつつ、プログラムP1を実行することにより実現される機能部である。制御部20は、取得部21、推定部22、算出部23および出力部24を備える。つまり、取得部21、推定部22,算出部23および出力部24は、プログラムP1の実行により実現される機能部である。言い換えると、各機能部21~24は、CPU11が備える機能部とも言える。
【0021】
取得部21は、測定データMDを入力する。取得部21は、例えば、通信インタフェース17を介して他のコンピュータや分析装置などから測定データMDを入力する。あるいは、取得部21は、デバイスインタフェース18を介して、記憶媒体19に保存された測定データMDを入力する。
【0022】
推定部22は、測定データMDを用いて、一般化反応モデルのパラメータの事後分布をベイズ推定により推定する。一般化反応モデルは、複数の反応モデルにより一般化されたモデルである。推定部22は、また、アレニウスの式または修正アレニウスの式と反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの事後分布をベイズ推定により推定する。
【0023】
算出部23は、推定部22により推定されたパラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における被検物質の定量的な情報の信頼区間もしくは分位点を算出する。算出部23は、また、推定部22により推定されたパラメータの事後分布に基づいて、被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間もしくは分位点を算出する。
【0024】
出力部24は、被検物質の定量的な情報の信頼区間もしくは分位点をディスプレイ15に表示させる。出力部24は、また、被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間または分位点をディスプレイ15に表示させる。
【0025】
プログラムP1は、記憶装置16に保存されている場合を例として説明する。他の実施の形態として、プログラムP1は、記憶媒体19に保存されて提供されてもよい。CPU11は、デバイスインタフェース18を介して記憶媒体19にアクセスし、記憶媒体19に保存されたプログラムP1を、記憶装置16またはROM13に保存するようにしてもよい。あるいは、CPU11は、デバイスインタフェース18を介して記憶媒体19にアクセスし、記憶媒体19に保存されたプログラムP1を実行するようにしてもよい。
【0026】
(3)測定データに基づく予測
(3-1)時間軸方向の外挿
本実施の形態の試料分析装置1による分析方法を説明する前に、本実施の形態の分析方法を実施する上で基本となる測定データMDに基づく時間軸方向の外挿について説明する。
図3は、時間軸方向の外挿を示す図である。
図3において、横軸は日数(時間)、縦軸は主成分のピーク面積に対する不純物のピーク面積の比である。医薬の場合、縦軸は有効成分のピーク面積に対する不純物のピーク面積の比である。
【0027】
図3において、プロットされた点は測定データMDである。測定データMDは、複数の日数において取得されたピーク面積比のデータである。
図3の例では、測定データMDは、1日目から400日付近までに取得されたデータである。この取得された測定データMDに対して回帰を実行することにより、図に示すモデルM1が当て嵌められる。モデルM1を当て嵌めることにより、400日程度までの測定データMDから、600日、800日といった将来の日数におけるピーク面積比が推定される。このようにモデルM1を当て嵌めることにより、ピーク面積比の時間軸方向の外挿が行われる。同様に、モデルM1を当て嵌めることにより、ピーク面積比の時間軸方向の内挿も可能である。
【0028】
図4は、反応モデルの例を示す図である。図
4において、各反応モデルは、微分形式(differential form)および積分形式(integral form)の2つの形式で表現されている。図において、αは転化率(conversion rate)であり、反応の進行度合いを示す0~1の値である。kは、反応速度定数である。測定データMDにいずれかの反応モデルを適応させ、回帰によってkなどのパラメータを推定することで、時間軸方向への外挿(および内挿)が可能となる。なお、微分形式を用いて回帰する場合は、dα/dt=kf(α)と変形して微分方程式を解く必要があるが、積分形式よりもモデル式を一般化し易いという特徴がある。
【0029】
(3-2)温度方向の外挿
続いて、本実施の形態の分析方法を実施する上で基本となる測定データMDに基づく温度軸方向の外挿について説明する。
図5は、温度軸方向の外挿を示す図である。
図5において、横軸は日数(時間)、縦軸は主成分のピーク面積に対する不純物のピーク面積の比である。医薬の場合、縦軸は有効成分のピーク面積に対する不純物のピーク面積の比である。
【0030】
図3と同様、
図5においても、プロットされた点は測定データMDであり、複数の日数において取得されたピーク面積比のデータである。図
5において、黒丸の点は高温条件下(過酷条件下)で取得された測定データMDであり、黒三角の点は低温条件下(通常保管条件下)で取得された測定データMDである。図
5の例では、高温および低温いずれの条件の測定データMDも、1日目から60日付近までに取得されたデータである。そして、次に示すアレニウスの式を利用することで、高温条件下で取得された測定データMDから低温条件下のデータを予測することができる。これにより、低温条件下(通常保管条件下)で100日、200日、1年、2年といった将来の日数におけるピーク面積比が推定される。このようにして、ピーク面積比の温度軸方向の外挿が行われる。
【0031】
ある単一の反応に対する反応速度定数kは、温度や湿度が一定の場合は変化しないが、それらが変化する場合には、数1式で示すアレニウスの式もしくは数2式で示す修正アレニウスの式に従うと見なすことができる。
【0032】
【0033】
【0034】
数1式、数2式において、Rは気体定数、Tは絶対温度、Hは相対湿度である。また、Aは頻度因子、Eは活性化エネルギー、Bは湿度に対するパラメータである。パラメータ(A,E,B)は、各反応において固有であるが、非結晶の場合や非常に高温・高湿な場合など、物性が変化するような条件下では必ずしも成立しない。そして、試料がある分解量になるまでの時間をtとすると、k×tは一定となる。したがって、複数の温度または湿度において取得された測定データMDから未知の反応に対するパラメータ(A,E,B)を求めることで、
図5に示すように、過酷条件下での測定結果を通常の保管条件での予測に活用することができる。ここでは、温度軸方向の外挿について説明したが、湿度軸方向の外挿についても同様の方法で行われる。
【0035】
(4)第1の実施の形態
次に、第1の実施の形態に係る分析方法について
図6のフローチャートを参照しつつ説明する。第1の実施の形態の分析方法は、(3-1)で説明した反応モデルを利用した時間軸方向の外挿である。
図6のフローチャートは、
図1に示したCPU11により実行される処理である。つまり、CPU11がRAM12などのハードウェア資源を利用しつつプログラムP1を動作させることにより、
図2に示す各機能部21~24により実行される処理である。
【0036】
ステップS11において、取得部21は、試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する。具体的には、取得部21は、医薬に含まれる有効成分のピーク面積に対する不純物のピーク面積の比に関するデータを取得する。次に、ステップS12において、推定部22は、複数の反応モデルにより一般化された一般化反応モデルのパラメータの事後分布をベイズ推定により推定する。
【0037】
一般化反応モデルについて説明する。測定データMDから特定の1つの反応モデルを絞り込むことが難しいとき、複数の反応モデルを一般化する。数3式および数4式は、一般化反応モデルの例である。
【0038】
【0039】
【0040】
数3式は、複数の反応モデルを加算することにより一般化反応モデルを構築する例である。この一般化反応モデルは、
図4に示した反応モデルのうちP2モデルとD1モデルを加算したモデルである。数4式は、複数の反応モデルを包含することにより構築される一般化反応モデルの例である。この一般化反応モデルは、
図4に示した反応モデルのうちF1モデルとF2モデルを包含するモデルである。
【0041】
推定部22は、数3式および数4式などで示す一般化反応モデルを適用し、取得部21が取得した測定データMDを用いてベイズ推定を行い、パラメータの事後分布を取得する。
【0042】
測定データMDの代わりにシミュレーションデータSDを用いて、本実施の形態の分析方法の実施例を説明する。
図7は、シミュレーションデータSDを示す図である。シミュレーションデータSDは、0~300日程度までのピーク面積比のデータである。このシミュレーションデータSDは、反応関数TD(真の関数)に基づいて作成されたデータである。
【0043】
図8は、
図7で示すシミュレーションデータSDに対して、一般化反応モデルを適用ささせた上で、ベイズ推定により推定した反応モデルの事後分布を示す。
図8において、斜線で示した領域が、反応モデルの事後分布の95%信頼区間を示す。また、
図8の一点鎖線は反応モデルの事後分布の中央値である。また、
図8の実線は、
図7で示したシミュレーションデータSDの反応関数TD(真の関数)である。
【0044】
図8に示す確率分布を得るために、一般化反応モデルに適当な事前分布を与えて、シミュレーションデータSDを用いてベイズ推定を行った。所定のステップのウォームアップ期間を経た後、統計量計算に所定ステップのマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)を実行することによりベイズ推定を行った。
【0045】
図6のフローチャートに戻る。次に、ステップS13において、算出部23が、推定部22により推定された反応モデルの事後分布に基づいて、任意の時間における被検物質の定量的な情報の信頼区間または分位点を算出する。つまり、算出部23は、任意の時間におけるピーク面積比の値の信頼区間または分位点を算出する。例えば、算出部23は、医薬に含まれる有効成分に対する不純物のピーク面積比について、1年後、2年後、3年後などの信頼区間または分位点を算出する。算出された信頼区間または分位点は出力部24によってディスプレイ15に表示されてもよい。
【0046】
反応モデルを複数組み合わせて予測を行った場合であっても、取得したデータに対して誤差が小さくなるようなパラメータの値が算出される場合には、本実施の形態の分析方法のような効果は得られない。誤差が小さくなるようなパラメータの値を算出する方法は、表現可能なモデルから当てはまりの良いモデル関数を得るという点では優れているが、他のモデルに従っている可能性も考慮した上で信頼区間を算出したいような場合には適切とは言えない。
【0047】
例えば、線形モデルy=axと2次関数モデルy=bx^2を加算したモデルとして、反応モデルy=ax+bx^2を構築する場合を考える。このモデルは2つのモデルとそれらの加算モデルを表現可能である。取得されたデータが「実は線形モデルに従っているが、計測誤差によって2次関数となっている」場合だとしても、このモデルを用いて誤差が小さくなるように当てはめを行うと、2次関数となり、線形モデルである可能性は考慮されない。
【0048】
このモデルに対し、本実施の形態においては、ベイズ理論に基づいたアプローチを適用してパラメータを推定する。ベイズ推定では、誤差が小さくなるようなパラメータの値を得るのではなく、妥当な誤差分布や事前分布を設定した上でパラメータの「分布」を取得する。そのため、上記の「実は線形モデルに従っているが、計測誤差によって2次関数となっている」場合においても、誤差によって線形モデルに見えている場合を考慮したパラメータの分布を得ることができる。なお、数3式で示した加算による一般化の例では、反応が並列して起こる場合も考慮することができる。つまり、同じ種類の反応が2つ並列して起きている場合にもモデルが構築可能である。一方、数4式で示す包含による一般化の例では、加算による方法と比べてパラメータ数が少なくできるというメリットがある。
【0049】
(5)第1の実施の形態の変形例1
上述した第1の実施の形態においては、算出部23は、推定部22において推定されたパラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における被検物質の定量的な情報の信頼区間または分位点を算出する。第1の実施の形態の変形例1では、被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間などが算出される。
【0050】
図9は、変形例1に係るフローチャートである。ステップS21,S22は、
図6で説明したステップS11,S12と同様である。ステップS21において、取得部21は、医薬に含まれる有効成分のピーク面積に対する不純物のピーク面積の比に関するデータを取得する。ステップS22において、推定部22は、複数の反応モデルにより一般化された一般化反応モデルのパラメータの事後分布をベイズ推定により推定する。
【0051】
ステップS23において、算出部23は、推定部22において推定されたパラメータの事後分布に基づいて、被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間または分位点を算出する。例えば、算出部23は、不純物のピーク面積比が所定の閾値となるまでの日数(時間)の信頼区間または分位点を算出する。これにより、医薬の不純物のピーク面積比の許容値が定められている場合、医薬の有効保存期間の信頼区間または分位点を提示することが可能である。
【0052】
(6)第1の実施の形態の変形例2
第1の実施の形態によるベイズ推定を用いた分析方法においては、加速度的な反応の判定を行うことで、より効率的な推定が可能である。測定データMDの2次近似が正である場合、反応モデル関数は下に凸となる特徴を有する。これは、試料の反応が加速度的に進むことを示す。そこで、測定データMDを2次近似し、2次の係数が正であることを棄却できるか否かによって処理を切り替える。
【0053】
(6-1:2次の係数が正であることを棄却できる場合)
加速度的な反応を示す反応モデルを、反応モデルの候補から除外してベイズ推定を行う。具体的には、加算による一般化の場合は、加速度的な反応モデルを候補から除外する。また、包含による一般化の場合は、パラメータの範囲に制約を加える、または、一部のパラメータを削除する。これにより、測定データMDから加速度的な反応の可能性を棄却できる場合には、一般化反応モデルに制限を加えることでより精度の高いベイズ推定を行うことができる。
【0054】
(6-2:2次の係数が正であることを棄却できないが、温度・湿度条件で基準値まで分解している場合)
加速度的な反応モデルを含めたままベイズ推定を行う。有効成分は既に基準値まで分解しているので、さらに事後分布の信頼区間が大幅に広がる可能性は低いためである。
【0055】
(6-3:2次の係数が正であることを棄却できないが、基準値まで分解していない場合)
加速度的な反応モデルを含めてベイズ推定を実行した場合、事後分布の信頼区間が大きく広がってしまう可能性がある。この場合、実用的な信頼区間または分位点を提示することが難しくなる。そこで、有効成分の分解が基準値に到達するまで測定データMDの取得を継続する。測定データMDの取得を継続しつつ、再び、(6-1)~(6-3)の判定を行う。
【0056】
このように、変形例2によれば、反応が加速度的に進む場合を棄却することで、ベイズ推定による推定結果の精度を向上させることができる。加速度的な反応モデルをそのまま利用して時間軸方向に外挿を行った場合、微小な誤差が時間経過とともに大きくなり、信頼区間が大幅に広がるという問題があるが、変形例2によればそのような問題を回避可能である。
【0057】
(7)第1の実施の形態の変形例3
変形例3は、一般化反応モデルの構築にあたり、複数の反応モデルを確率的に選択する方法である。
【0058】
(7-1:2つ以上の反応モデルを加算し、各反応モデルが選択される確率を取得)
上述したように、加算または包含により一般化反応モデルを構築する。このとき、新たにパラメータを付加することや、分布の設定を変えることで、実際の反応がその反応モデルに従っているとされる確率を求めることができる。例えば微分形式のP2モデルとD1モデルが候補の場合、数5式に示すように、新たに{0,1}の2値をとる離散パラメータpを追加する。
【0059】
【0060】
数5式で示す一般化反応モデルに対し、ベイズ推定を行うことで、pの分布が得られる。ただし、pは離散パラメータで、0もしくは1を取るものとする。「p=0を取る確率」をD1モデルが選択される確率、「p=1を取る確率」をP2モデルが選択される確率とすれば、測定データMDが特定のモデルに従っている確率が得られる。3以上の反応モデルによる一般化の場合も同様である。さらに、数6式で示す一般化反応モデルを構築することもできる。
【0061】
【0062】
数6式において、「p1=0,p2=1を取る確率」「p1=1,p2=0を取る確率」「p1=1,p2=1を取る確率」が得られるため、並列的なパターンを候補に入れることも可能である。また、離散パラメータpを加える代わりにspike and slab分布(0を取る離散的な確率と、連続的な分布を組み合わせたもの)をkに課すといった手法も考えられる。
【0063】
(7-2:一般化モデルの次数パラメータを離散化し、それぞれのモデルが選択される確率を取得)
例えば微分形式のP2モデルとD1モデルが候補の場合、数7式に示すように、パラメータ(c,m,n)を用いた以下のような一般化モデルを考える。
【0064】
【0065】
このとき、P2モデルf(α)=2α^(1/2)は、(c,m,n)=(2,0.5,0)として、D1モデルf(α)=1/(2α)は、(c,m,n)=(0.5,-1,0)として表すことができる。したがって、(7-1)と同様に、数8式で示すような一般化反応モデルを構築し、パラメータ(c,m,n)の取りうる値を離散的にして、ベイズ推定を行うことで特定の反応モデルに従う確率を得ることができる。
【0066】
【0067】
(7-3:2つ以上の事前分布を用意し、事前分布セットの取りうる確率を取得)
例えば微分形式のP2モデルとD1モデルが候補の場合、(7-1)と同様、パラメータ(c,m,n)を用いた数9式に示すような一般化モデルを考える。
【0068】
【0069】
このとき、パラメータ(c,m,n)の取りうる値を離散的とする代わりに、パラメータ(c,m,n)の事前分布のセットを複数用意することで、類似のことを行うことができる。極端な例を挙げると、(c,m,n)が(2,0.5,0)の一点のみに分布するとした事前分布X1(他のパラメータについては適切に設定する)。(c,m,n)が(0.5,-1,0)の一点のみに分布するとし、他は事前分布X1と同様の事前分布X2を用意し、2つの事前分布のどちらかが選ばれるとして推定を行えば、2つの事前分布セットが取りうる確率が取得されるので、(7-2)と同様の効果が得られる。また、事前分布を設定する場合、一点のみでなく、分布として指定することができるため、幅を持ったモデル関数「群」を指定することが可能であり、パラメータ(c,m,n)以外のパラメータに対して適切な事前分布を群ごとに設定することが可能である。また、(7-1)のような加算の一般化式についても、同様に事前分布で対応可能である。
【0070】
(8)第2の実施の形態
次に、第2の実施の形態に係る分析方法について
図10のフローチャートを参照しつつ説明する。第2の実施の形態の分析方法は、(3-2)で説明したアレニウスの式または修正アレニウスの式を利用した温度軸方向の外挿である。
図10のフローチャートは、
図1に示したCPU11により実行される処理である。
【0071】
ステップS31において、取得部21は、試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する。具体的には、取得部21は、医薬に含まれる有効成分のピーク面積に対する不純物のピーク面積の比に関するデータを取得する。ここで、ステップS31において取得される測定データMDは、高温条件下(過酷条件下)で取得されたデータである。次に、ステップS32において、推定部22は、アレニウスの式(数1式)または修正アレニウスの式(数2式)を反応モデル式(数8式)に適用し、温度軸や湿度軸に関するパラメータ(A,E,Bなど)と、反応モデルを決定するパラメータ(m,nなど)の事後分布をベイズ推定により推定する。これにより、測定データMDについて温度軸方向の外挿と時間軸方向の外挿が行われ、低温条件下(通常保管条件下)の任意の時間におけるピーク面積比の信頼区間または分位点が算出できる。このように、推定部22は、アレニウスの式または修正アレニウスの式と反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの事後分布をベイズ推定により推定する。
【0072】
次に、算出部23が、ステップS33において、推定部22により推定されたパラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における被検物質の定量的な情報の信頼区間または分位点を算出する。つまり、算出部23は、任意の時間におけるピーク面積比の値の信頼区間または分位点を算出する。例えば、算出部23は、医薬に含まれる有効成分に対する不純物のピーク面積比について、1年後、2年後、3年後などの信頼区間または分位点を算出する。算出された信頼区間または分位点は出力部24によってディスプレイ15に表示されてもよい。
【0073】
(9)第2の実施の形態の変形例
第2の実施の形態においては、算出部23は、推定部22において推定されたパラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における被検物質の定量的な情報の信頼区間または分位点を算出する。第2の実施の形態の変形例では、被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間などが算出される。
【0074】
図11は、変形例に係るフローチャートである。ステップS41,S42は、
図10で説明したステップS31,S32と同様である。ステップS43において、算出部23は、推定部22において推定されたパラメータの事後分布に基づいて、被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間または分位点を算出する。例えば、算出部23は、不純物のピーク面積比が所定の閾値となるまでの日数(時間)の信頼区間または分位点を算出する。これにより、医薬の不純物のピーク面積比の許容値が定められている場合、医薬の有効保存期間の信頼区間または分位点を提示することが可能である。
【0075】
(10)その他の変形例
以上説明した各実施の形態においては、試料分析装置1が医薬分析装置である場合を例に説明した。本実施の形態の試料分析装置1は、医薬以外にも様々な試料における被検物質の定量的な情報を取得するために利用可能である。
図4で示した反応モデルのリストは一例である。本実施の形態における分析方法が適用される反応モデルは特に限定されることはない。
【0076】
(11)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0077】
(第1項)
一態様に係る試料分析装置は、
試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する取得部と、
複数の反応モデルにより一般化された一般化反応モデルを記憶装置から読み出し、前記一般化反応モデルのパラメータの事後分布をベイズ推定により推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記パラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における前記被検物質の定量的な情報の信頼区間または分位点を算出する算出部と、を備える。
【0078】
ベイズ推定による推定結果の信頼度を向上させることができる。
【0079】
(第2項)
他の態様に係る試料分析装置は、
試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する取得部と、
複数の反応モデルにより一般化された一般化反応モデルを記憶装置から読み出し、前記一般化反応モデルのパラメータの事後分布をベイズ推定により推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記パラメータの事後分布に基づいて、前記被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間または分位点を算出する算出部と、を備える。
【0080】
ベイズ推定による推定結果の信頼度を向上させることができる。
【0081】
(第3項)
第1項または第2項に記載の試料分析装置において、
前記推定部は前記複数の反応モデルを確率的に選択してもよい。
【0082】
ベイズ推定による推定結果の信頼度を向上させることができる。
【0083】
(第4項)
第1項または第2項に記載の試料分析装置において、
前記推定部は、前記複数の反応モデルの組み合わせを複数の事前分布として設定することにより、ベイズ推定により事後分布を推定し、推定された事後分布に基づいて前記複数の反応モデルを選択してもよい。
【0084】
ベイズ推定による推定結果の信頼度を向上させることができる。
【0085】
(第5項)
第1項~第4項のいずれか一項に記載の試料分析装置において、
前記一般化反応モデルは、前記複数の反応モデルの加算により得られてもよい。
【0086】
複合的な反応に対しても、適切な反応モデルを適用させることが可能である。
【0087】
(第6項)
第1項~第4項のいずれか一項に記載の試料分析装置において、
前記一般化反応モデルは、前記複数の反応モデルを包含する1つのモデルであってもよい。
【0088】
複合的な反応に対しても、適切な反応モデルを適用させることが可能である。
【0089】
(第7項)
第1項~第6項のいずれか一項に記載の試料分析装置において、
前記推定部は、前記試料の反応が加速的な反応を含むか否かに応じて、適用する前記複数の反応モデルを切り替えてもよい。
【0090】
ベイズ推定による推定結果の精度を向上させることができる。
【0091】
(第8項)
第7項に記載の試料分析装置において、
前記推定部は、加速的な反応を含むか否かの判定に2次近似を用いてもよい。
【0092】
ベイズ推定による推定結果の精度を向上させることができる。
【0093】
(第9項)
他の態様に係る試料分析装置は、
試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する取得部と、
記憶装置に記憶された反応モデルを読み出し、アレニウスの式または修正アレニウスの式と前記反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの事後分布をベイズ推定により推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記パラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における前記被検物質の定量的な情報の信頼区間または分位点を算出する算出部と、を備える。
【0094】
必要なデータの取得に要する時間を短縮させながら、妥当な信頼区間を提示することができる。
【0095】
(第10項)
他の態様に係る試料分析装置は、
試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する取得部と、
記憶装置に記憶された反応モデルを読み出し、アレニウスの式または修正アレニウスの式と前記反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの事後分布をベイズ推定により推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記パラメータの事後分布に基づいて、前記被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間または分位点を算出する算出部と、を備える。
【0096】
必要なデータの取得に要する時間を短縮させながら、妥当な信頼区間を提示することができる。
【0097】
(第11項)
他の態様に係る試料分析方法は、
試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する工程と、
複数の反応モデルにより一般化された一般化反応モデルを記憶装置から読み出し、前記一般化反応モデルのパラメータの事後分布をベイズ推定により推定する工程と、
推定された前記パラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における前記被検物質の定量的な情報の信頼区間または分位点を算出する工程と、を含む。
【0098】
ベイズ推定による推定結果の信頼度を向上させることができる。
【0099】
(第12項)
他の態様に係る試料分析方法は、
試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する工程と、
複数の反応モデルにより一般化された一般化反応モデルを記憶装置から読み出し、前記一般化反応モデルのパラメータの事後分布をベイズ推定により推定する工程と、
推定された前記パラメータの事後分布に基づいて、前記被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間または分位点を算出する工程と、を含む。
【0100】
ベイズ推定による推定結果の信頼度を向上させることができる。
【0101】
(第13項)
他の態様に係る試料分析方法は、
試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する工程と、
記憶装置に記憶された反応モデルを読み出し、アレニウスの式または修正アレニウスの式と前記反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの事後分布をベイズ推定により推定する工程と、
推定された前記パラメータの事後分布に基づいて、任意の時間における前記被検物質の定量的な情報の信頼区間または分位点を算出する工程と、を含む。
【0102】
必要なデータの取得に要する時間を短縮させながら、妥当な信頼区間を提示することができる。
【0103】
(第14項)
他の態様に係る試料分析方法は、
試料中に存在する被検物質の定量的な情報を取得する工程と、
記憶装置に記憶された反応モデルを読み出し、アレニウスの式または修正アレニウスの式と前記反応モデルとを組み合わせることにより、パラメータの事後分布をベイズ推定により推定する工程と、
推定された前記パラメータの事後分布に基づいて、前記被検物質の定量的な情報が所定の閾値に到達するまでの時間の信頼区間または分位点を算出する工程と、を含む。
【0104】
必要なデータの取得に要する時間を短縮させながら、妥当な信頼区間を提示することができる。
【0105】
(第15項)
他の態様に係る医薬分析装置は、
第1項、第2項、第9項または第10項に記載の試料分析装置において、前記試料は製剤または原薬を含み、前記被検物質は前記製剤または前記原薬中に存在する有効成分または不純物を含む。
【0106】
ベイズ推定による推定結果の信頼度を向上させることができる。
【0107】
(第16項)
他の態様に係る医薬分析方法は、
第11項、第12項、第13または第14項に記載の試料分析方法において、前記試料は製剤または原薬を含み、前記被検物質は前記製剤または前記原薬中に存在する有効成分または不純物を含む。
【0108】
ベイズ推定による推定結果の信頼度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0109】
1…試料分析装置、11…CPU、12…RAM、13…ROM、14…操作部、15…ディスプレイ、16…記憶装置、21…取得部、22…推定部、23…算出部、24…出力部、P1…プログラム、MD…測定データ