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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20241210BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20241210BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
B60R16/02 622
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021094664
(22)【出願日】2021-06-04
(65)【公開番号】P2022186441
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安東 雄介
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-072694(JP,A)
【文献】特開2017-158368(JP,A)
【文献】国際公開第2016/043245(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H01B 17/58
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスが通されるパネルの組付孔に組み付けられるグロメットであって、
前記ワイヤハーネスが挿通される筒部と、前記組付孔の周縁に接触するシール部と、を有するグロメット本体と、
前記筒部から外径側に延び、前記パネルの一側面に設けられた遮音部材の挿通孔を被覆可能に構成された遮音壁と、を備え、
前記グロメット本体は、その内部に第1遮音空間を形成し、
前記遮音壁は、前記グロメット本体との間に第2遮音空間を形成しており、
前記グロメット本体は、前記筒部と前記シール部との間に各々設けられる第1壁部及び第2壁部を有し、
前記第2壁部は、前記組付孔の周縁に沿った環状をなす前記シール部の内周側に位置しており、
前記第1壁部は、前記第2壁部と前記遮音壁との間に位置し、前記第2壁部との間に前記第1遮音空間を形成するとともに、前記遮音壁との間に前記第2遮音空間を形成しており、
前記第1壁部は、前記遮音壁に対向する側面に凹部を有している、
グロメット。
【請求項2】
前記第1壁部、前記第2壁部及び前記遮音壁は、前記筒部の軸方向に沿ってそれぞれ間隔を空けて設けられ、
前記第1遮音空間と前記第2遮音空間とは、前記軸方向に並んで配置されている、
請求項に記載のグロメット。
【請求項3】
前記第1壁部及び前記遮音壁は、前記筒部の外周面からそれぞれ延びており、
前記第2遮音空間は、前記第1壁部と前記遮音壁との間における前記筒部の外周に形成される、
請求項または請求項に記載のグロメット。
【請求項4】
前記グロメット本体は、前記第1壁部を有する第1グロメットと、前記第1グロメットに対して別体をなし前記第2壁部を有する第2グロメットと、を有している、
請求項から請求項のいずれか1項に記載のグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グロメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されるように、室内と室外とを隔てる車体パネルを貫通する組付孔に装着され、同組付孔に挿通されるワイヤハーネスを保護するグロメットがある。このようなグロメットは、ゴムなどの弾性材料にて形成され、車体パネルの組付孔とワイヤハーネスとの間を止水可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-131056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、遮音性を高めるために、不織布やゴム板や発泡材などの遮音部材を車体パネルに貼り付ける場合がある。この場合、遮音部材には、車体パネルの組付孔に対応する位置に挿通孔が設けられる。ワイヤハーネスは、車体パネルの組付孔、ならびに遮音部材の挿通孔に挿通される。しかしながら、上記のような遮音部材の挿通孔を通じて音が漏れてしまう問題があった。
【0005】
本開示の目的は、遮音性の向上を可能にしたグロメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のグロメットは、ワイヤハーネスが通されるパネルの組付孔に組み付けられるグロメットであって、前記ワイヤハーネスが挿通される筒部と、前記組付孔の周縁に接触するシール部と、を有するグロメット本体と、前記筒部から外径側に延び、前記パネルの一側面に設けられた遮音部材の挿通孔を被覆可能に構成された遮音壁と、を備え、前記グロメット本体は、その内部に第1遮音空間を形成し、前記遮音壁は、前記グロメット本体との間に第2遮音空間を形成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示のグロメットによれば、遮音性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態のグロメットの斜視図である。
図2図2は、同形態のグロメットの分解斜視図である。
図3図3は、同形態のグロメットにおいて車体に組み付けられた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のグロメットは、
[1]ワイヤハーネスが通されるパネルの組付孔に組み付けられるグロメットであって、前記ワイヤハーネスが挿通される筒部と、前記組付孔の周縁に接触するシール部と、を有するグロメット本体と、前記筒部から外径側に延び、前記パネルの一側面に設けられた遮音部材の挿通孔を被覆可能に構成された遮音壁と、を備え、前記グロメット本体は、その内部に第1遮音空間を形成し、前記遮音壁は、前記グロメット本体との間に第2遮音空間を形成する。
【0010】
この構成によれば、グロメット本体の内部に形成される第1遮音空間と、グロメット本体と遮音壁との間に形成される第2遮音空間とによって、遮音性を向上させることが可能となる。
【0011】
[2]前記グロメット本体は、前記筒部と前記シール部との間に各々設けられる第1壁部及び第2壁部を有し、前記第2壁部は、前記組付孔の周縁に沿った環状をなす前記シール部の内周側に位置しており、前記第1壁部は、前記第2壁部と前記遮音壁との間に位置し、前記第2壁部との間に前記第1遮音空間を形成するとともに、前記遮音壁との間に前記第2遮音空間を形成する。
【0012】
この構成によれば、グロメット本体の第1壁部と第2壁部との間に形成される第1遮音空間と、第1壁部と遮音壁との間に形成される第2遮音空間とによって、遮音性を向上させることが可能となる。
【0013】
[3]前記第1壁部、前記第2壁部及び前記遮音壁は、前記筒部の軸方向に沿ってそれぞれ間隔を空けて設けられ、前記第1遮音空間と前記第2遮音空間とは、前記軸方向に並んで配置されている。
【0014】
この構成によれば、グロメットの第1遮音空間と第2遮音空間とを遮音部材の挿通孔の開口方向に並んで配置することが可能となる。これにより、パネルで区画された室内側と室外側との間で挿通孔を通じて伝わる透過音を、第1遮音空間と第2遮音空間とによって段階的に遮音することが可能となる。
【0015】
[4]前記第1壁部及び前記遮音壁は、前記筒部の外周面からそれぞれ延びており、前記第2遮音空間は、前記第1壁部と前記遮音壁との間における前記筒部の外周に形成される。この構成によれば、筒部の径方向の肉厚を薄く構成することで、第2遮音空間を内径側に広く確保することが可能である。
【0016】
[5]前記グロメット本体は、前記第1壁部を有する第1グロメットと、前記第1グロメットに対して別体をなし前記第2壁部を有する第2グロメットと、を有している。
この構成によれば、グロメット本体の内部における第1遮音空間を形成する第1壁部と第2壁部とが互いに別体の第1グロメットと第2グロメットとにそれぞれ設けられる。これにより、金型成立性が容易な射出成形にて、グロメット本体の内部に第1遮音空間を形成することが可能となる。
【0017】
[6]前記第1壁部は、前記遮音壁に対向する側面に凹部を有している。
この構成によれば、第1壁部において遮音壁と対向する側面に凹部が形成されることで、第1壁部と遮音壁との間に形成される第2遮音空間を広く確保することが可能である。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のグロメットの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。また、本明細書における「直交」は、厳密に直交の場合のみでなく、本実施形態における作用ならびに効果を奏する範囲内で概ね直交の場合も含まれる。
【0019】
なお、本明細書の説明で使用される「筒状」は、周方向全周にわたって連続して周壁が形成されたものだけではなく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状のように周方向の一部に切り欠きなどを有するものも含む。また、「筒状」の形状には、円形、楕円形、及び、尖ったまたは丸い角を有する多角形が含まれる。また、本明細書の説明で使用される「環状」という用語は、ループを形成する任意の構造、または端部のない連続形状、並びに、C字形のようなギャップを有する、一般的にループ形状の構造を指すことがある。なお、「環状」の形状には、円形、楕円形、及び、尖ったまたは丸い角を有する多角形が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
また、本明細書における「対向」とは、面同士又は部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。
【0021】
図1に示すグロメット10は、自動車の室内と室外とを隔てる車体パネルPに貫通形成された組付孔Paに装着される。グロメット10は、組付孔Paに通されるワイヤハーネスWを保護するものである。また、グロメット10は、車体パネルPの組付孔Paにおける止水性を確保する役割も果たす。なお、ワイヤハーネスWは少なくとも1本の電線を含んで構成される。また、グロメット10の軸線L方向は、ワイヤハーネスWがグロメット10内を挿通する挿通方向と一致している。
【0022】
図1及び図3に示すように、グロメット10は、車体パネルPの組付孔Paに対して、グロメット10の軸線Lに沿った挿入方向Dに挿入される。以下の説明では、グロメット10の挿入方向Dにおける前方及び後方をそれぞれ、単に前方及び後方と記載、または、軸線L方向の前方及び軸線L方向の後方と記載する場合がある。また、以下の説明では、軸線Lを中心とする周方向、及び軸線Lを中心とする径方向をそれぞれ、単に周方向、及び径方向と記載する場合がある。グロメット10が組付孔Paに組み付けられた状態において、挿入方向Dの前方側が車体パネルPに対する室内側であり、挿入方向Dの後方側が車体パネルPに対する室外側である。
【0023】
なお、車体パネルPの組付孔Paには、その周縁が車体パネルPの厚さ方向に屈曲するいわゆるバーリング加工が施されている。本実施形態では、組付孔Paの周縁には、車体パネルPの室外側に面する側面Pb側に突出する突出部Pdが形成されている。すなわち、突出部Pdは、組付孔Paの周縁から挿入方向Dの後方側に突出している。突出部Pdは、車体パネルPの側面Pbに対して略直角に屈曲されている。
【0024】
図3に示すように、車体パネルPの側面Pcには、遮音部材40が貼り付けられている。なお、遮音部材40には、不織布や、ゴム板や、発泡材などを用いることができる。遮音部材40における組付孔Paと対応する位置には、ワイヤハーネスWが挿通される挿通孔41が形成されている。
【0025】
(グロメット10の構成)
グロメット10は、グロメット本体11と、遮音壁31とを備えている。グロメット本体11及び遮音壁31を含むグロメット10は、ゴムなどの弾性材料にて形成されている。なお、グロメット10に用いられる弾性材料としては、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などが挙げられる。本実施形態では、遮音壁31は、グロメット本体11に一体に形成されている。
【0026】
図2に示すように、グロメット本体11は、例えば、互いに別体をなす2つの部品で構成されている。以下の説明では、当該2つの部材の一方を第1グロメット11Aとし、他方を第2グロメット11Bとして説明する。なお、第1グロメット11Aに用いる弾性材料と第2グロメット11Bに用いる弾性材料とは、同一の材料であってもよいし、また、別の材料であってもよいが、共に可撓性を有するゴムなどの弾性材料を用いることが好ましい。
【0027】
(グロメット本体11)
図3に示すように、グロメット本体11は、外周縁部にシール部12を有している。グロメット本体11は、車体パネルPの組付孔Paに対して組み付けられる部位である。本実施形態のシール部12は、第1グロメット11Aに形成されている。シール部12は、軸線Lを中心とする環状をなしている。また、シール部12は、組付孔Paの周縁に沿った環状をなしている。シール部12は、組付孔Paの周縁が入り込む外周溝13を有している。外周溝13は、軸線Lを中心とする環状をなすように、シール部12の全周に亘って形成されている。外周溝13が組付孔Paの周縁に対して密着することで、シール部12と組付孔Paとの間が液密にシールされるようになっている。
【0028】
(第1グロメット11A)
第1グロメット11Aは、ワイヤハーネスWが挿通される第1筒部14と、第1筒部14から外径側に延びる第1壁部15と、シール部12とを有している。第1筒部14は、例えば、グロメット10の軸線Lと直交する断面形状が軸線Lを中心とする円環状をなしている。第1筒部14の軸方向は、グロメット10の軸線L方向と一致している。第1筒部14には、止水性を確保した状態でワイヤハーネスWが挿通される。
【0029】
第1壁部15は、第1筒部14の外周面から後方側に拡径しつつ延びる筒状をなしている。第1壁部15は軸線L方向から見て、例えば、軸線Lを中心とする円形をなしている。また、第1壁部15は、軸線L方向の後方側に向かうにつれて拡径するテーパ形状をなしている。シール部12は、第1壁部15の拡径側の端部における外周縁に形成されている。すなわち、第1壁部15は、第1筒部14とシール部12との間に設けられている。なお、本実施形態において、第1壁部15の拡径側の端部とは、第1壁部15の軸線L方向の後方側の端部である。
【0030】
第1グロメット11Aは、シール部12の内周面から径方向内側に延出する連結片16を有している。連結片16は、軸線Lを中心とする環状をなすように、シール部12の全周に亘って形成されている。
【0031】
(第2グロメット11B)
第2グロメット11Bは、第1グロメット11Aの後方側端部の開口を塞ぐように、第1グロメット11Aに組み付けられている。第2グロメット11Bは、ワイヤハーネスWが挿通される第2筒部21と、第2筒部21から外径側に延びる第2壁部22とを有している。
【0032】
第2筒部21は、例えば、グロメット10の軸線Lと直交する断面形状が軸線Lを中心とする円環状をなしている。第2筒部21の軸方向は、グロメット10の軸線L方向と一致している。第2筒部21には、止水性を確保した状態でワイヤハーネスWが挿通される。第2筒部21は、例えば、第1グロメット11Aの第1筒部14と略同径に形成されている。
【0033】
第2壁部22は、例えば第2筒部21の前方側の端部から外径側に鍔状に延出している。第2壁部22は、例えば、軸線L方向から見て略円形をなしている。第2壁部22は、第2筒部21から外周側に延びる延出部23と、延出部23の外周縁に設けられた連結部24と、を備えている。
【0034】
延出部23は、第2筒部21と連結部24とを連結している。延出部23は、第2筒部21の周りに環状に形成されている。延出部23の軸線L方向の厚さは、第2筒部21の径方向の肉厚と略同等に設定されている。また、延出部23は可撓性を有し、その延出部23の可撓性によって、第2筒部21が連結部24に対して軸線L方向に移動可能となっている。
【0035】
連結部24は、第1グロメット11Aの連結片16を軸方向に挟持している。これにより、連結部24と連結片16とが連結されて、第2グロメット11Bが第1グロメット11Aに対して固定されるようになっている。
【0036】
第2壁部22は、第1壁部15の拡径側の端部を閉塞するように設けられている。第2壁部22は、シール部12の内周側に位置している。すなわち、第2壁部22は、第2筒部21とシール部12との間に設けられている。第1壁部15と第2壁部22とは、第1筒部14及び第2筒部21の軸方向において互いに間隔を空けて設けられている。
【0037】
グロメット本体11の内部において、第1壁部15の内周面と第2壁部22との間に第1遮音空間S1が形成されている。第1遮音空間S1は、第1壁部15と、延出部23及び連結部24を含む第2壁部22との間に広がっている。具体的には、第1壁部15と連結部24とは、第1遮音空間S1を介して軸線L方向に対向している。また、第1壁部15と延出部23とは、第1遮音空間S1を介して軸線L方向に対向している。また、第1遮音空間S1は、例えば、連結部24とシール部12の内周面との間にまで広がっている。また、軸線L方向における連結部24の厚さを薄く形成することで、第1遮音空間S1が広くなるとともに、グロメット10の軽量化を図ることが可能である。
【0038】
(遮音壁31)
遮音壁31は、第1筒部14に一体に形成されている。遮音壁31は、第1筒部14の外周面から外径側に延びている。遮音壁31は、第1壁部15の軸線L方向の前方側に設けられている。遮音壁31は、車体パネルPの側面Pcに設けられた遮音部材40の挿通孔41を被覆可能に構成されている。
【0039】
遮音壁31は、例えば、軸線L方向の後方側に向かうにつれて拡径するテーパ形状をなしている。また、遮音壁31は、例えば、軸線Lを中心とする円形をなしている。そして、グロメット10が車体パネルPに組み付けられた状態において、遮音壁31の周縁部が遮音部材40に対して弾性的に当接するようになっている。これにより、遮音壁31が遮音部材40の挿通孔41を被覆するようになっている。
【0040】
遮音壁31は、グロメット本体11の第1壁部15に対し、第1筒部14及び第2筒部21の軸方向において間隔を空けて設けられている。すなわち、遮音壁31は、グロメット本体11の第1壁部15との間に第2遮音空間S2を形成している。なお、グロメット10が車体パネルPの組付孔Paに組み付けられた状態において、第2遮音空間S2の外周は、挿通孔41の内周面によって閉じられる。
【0041】
第1壁部15及び遮音壁31は共に、第1筒部14の外周面から延びている。第2遮音空間S2は、第1壁部15と遮音壁31との間における第1筒部14の外周に形成される。ここで、第1筒部14の径方向の肉厚について、第1壁部15と遮音壁31の間の部位14aの肉厚は、遮音壁31より前方側の部位14bの肉厚の2倍以下に設定されている。これにより、第2遮音空間S2を内径側に広く確保することが可能となっている。また、第1壁部15は、遮音壁31に対向する側面に凹部15aを有している。第1壁部15と遮音壁31との間隔は、凹部15aが形成された箇所で広がっている。つまり、この凹部15aによって、第2遮音空間S2を広く確保することが可能である。
【0042】
また、第1壁部15は、第1筒部14及び第2筒部21の軸方向において、第2壁部22と遮音壁31との間に位置している。すなわち、第1遮音空間S1と第2遮音空間S2とは、第1筒部14及び第2筒部21の軸方向に並んで配置されている。本実施形態では、グロメット10が組付孔Paに組み付けられた状態において、第1筒部14及び第2筒部21の軸方向、つまり、グロメット10の軸線L方向は、遮音部材40の挿通孔41の開口方向と略一致するようになっている。したがって、第1遮音空間S1と第2遮音空間S2とを遮音部材40の挿通孔41の開口方向に並んで配置することが可能となっている。
【0043】
次に、グロメット10の組付孔Paへの組付態様について説明する。
まず、第1グロメット11Aの連結片16を、第2グロメット11Bの連結部24に連結させて、第1グロメット11Aと第2グロメット11Bとを一体部品とし、その一体部品を組付孔Paに対して挿入方向Dに挿入する。このとき、グロメット本体11の第1壁部15は、組付孔Paの周縁との接触により径方向内側に変形しつつ、組付孔Paに挿通される。その後、組付孔Paの周縁は、グロメット本体11におけるシール部12の外周溝13に入り込む。グロメット本体11が組付孔Paに組み付けられた状態では、グロメット本体11の一部が遮音部材40の挿通孔41の内側に位置している。
【0044】
本実施形態の効果について説明する。
(1)グロメット本体11の内部に形成される第1遮音空間S1と、グロメット本体11と遮音壁31との間に形成される第2遮音空間S2とによって、遮音部材40の挿通孔41における遮音性を向上させることが可能となる。
【0045】
(2)グロメット本体11は、筒部とシール部12との間に各々設けられる第1壁部15及び第2壁部22を有している。第2壁部22は、組付孔Paの周縁に沿った環状をなすシール部12の内周側に位置している。そして、第1壁部15は、第2壁部22と遮音壁31との間に位置し、第2壁部22との間に第1遮音空間S1を形成するとともに、遮音壁31との間に第2遮音空間S2を形成する。この構成によれば、グロメット本体11の第1壁部15と第2壁部22との間に形成される第1遮音空間S1と、第1壁部15と遮音壁31との間に形成される第2遮音空間S2とによって、遮音部材40の挿通孔41における遮音性を向上させることが可能となる。
【0046】
(3)第1壁部15、第2壁部22及び遮音壁31は、第1筒部14の軸方向に沿ってそれぞれ間隔を空けて設けられている。そして、第1遮音空間S1と第2遮音空間S2とは、第1筒部14の軸方向に並んで配置されている。この構成によれば、グロメット10の第1遮音空間S1と第2遮音空間S2とを遮音部材40の挿通孔41の開口方向に並んで配置することが可能となる。これにより、車体パネルPで区画された室内側と室外側との間で挿通孔41を通じて伝わる透過音を、第1遮音空間S1と第2遮音空間S2とによって段階的に遮音することが可能となる。
【0047】
(4)第1壁部15及び遮音壁31は、第1筒部14の外周面からそれぞれ延びている。そして、第2遮音空間S2は、第1壁部15と遮音壁31との間における第1筒部14の外周に形成される。この構成によれば、第1筒部14の径方向の肉厚を薄く構成することで、第2遮音空間S2を内径側に広く確保することが可能である。
【0048】
(5)グロメット本体11は、第1壁部15を有する第1グロメット11Aと、第1グロメット11Aに対して別体をなし第2壁部22を有する第2グロメット11Bと、を有している。この構成によれば、グロメット本体11の内部における第1遮音空間S1を形成する第1壁部15と第2壁部22とが互いに別体とされる。これにより、グロメット本体11の内部に第1遮音空間S1を容易に形成することが可能となる。
【0049】
(6)第1壁部15において遮音壁31と対向する側面に凹部15aが形成されることによって、第1壁部15と遮音壁31との間に形成される第2遮音空間S2を広く確保することが可能である。
【0050】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、遮音壁31が第1筒部14に一体に形成されるが、これに特に限定されるものではなく、遮音壁31を第1筒部14に対して別体としてもよい。
【0051】
・第1壁部15の形状などの構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、グロメット10の構成に応じて適宜変更可能である。例えば、上記実施形態の第1壁部15から凹部15aを省略してもよい。
【0052】
・連結片16と連結部24とを構造的に入れ替えた連結構造としてもよい。すなわち、第2グロメット11B側の連結部を、第1グロメット11A側の連結部が軸線L方向に挟む連結構造としてもよい。
【0053】
・軸線L方向から見た遮音壁31の形状は円形に限定されるものではなく、例えば楕円形や多角形などに適宜変更可能である。
・軸線L方向から見たシール部12の形状は円形に限定されるものではなく、組付孔Paの形状に応じて例えば楕円形などに適宜変更可能である。
【0054】
・グロメット本体11の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、シール部12は第1グロメット11Aに形成されるが、これに限らず、第2グロメット11Bに形成してもよい。また、上記実施形態では、グロメット本体11を第1グロメット11Aと第2グロメット11Bの2つの部品で構成したが、これに限らず、グロメット本体11を1つの部品で構成してもよい。
【0055】
・上記実施形態では、第1遮音空間S1と第2遮音空間S2とがグロメット10の軸線L方向に沿って並ぶように構成されるが、これ以外に例えば、第1遮音空間S1と第2遮音空間S2とがグロメット10の径方向に並ぶように構成してもよい。
【0056】
・グロメット10に用いる弾性材料はEPDMに限定されるものではなく、それ以外に例えば、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)などを用いることが可能である。
・本実施形態では、組付孔Paの周縁の突出部Pdが室外側に突出しているが、これに限らず、突出部Pdを室内側に突出させた構成としてもよい。また、グロメット10が組付孔Paに対して室内側から挿入する構成としてもよい。
【0057】
・組付孔Paの周縁の突出部Pdが軸線Lに対して傾斜する構成としてもよい。また、組付孔Paから突出部Pdを省略した構成(すなわち、組付孔Paにバーリング加工を施さない構成)としてもよい。
【0058】
・今回開示された実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
10 グロメット
11 グロメット本体
11A 第1グロメット
11B 第2グロメット
12 シール部
13 外周溝
14 第1筒部(筒部)
14a 部位
14b 部位
15 第1壁部
15a 凹部
16 連結片
21 第2筒部(筒部)
22 第2壁部
23 延出部
24 連結部
31 遮音壁
40 遮音部材
41 挿通孔
D 挿入方向
L 軸線
P 車体パネル(パネル)
Pa 組付孔
Pb 側面
Pc 側面(一側面)
Pd 突出部
S1 第1遮音空間
S2 第2遮音空間
W ワイヤハーネス
図1
図2
図3