(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】空調用ダクト装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20241210BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B60H1/34 631
B60H1/00 102T
B60H1/00 102L
B60H1/34 651Z
(21)【出願番号】P 2021106463
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺井 伸弘
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-321524(JP,A)
【文献】実開昭58-043510(JP,U)
【文献】特開2000-326719(JP,A)
【文献】特開2012-126248(JP,A)
【文献】特開2015-042534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0369115(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調装置の下流側に取り付けられ、内部に空調空気が流通するダクトと、
前記ダクトの前記内部と車両室内とを連絡する吹出口と、
前記吹出口の奥側において前記ダクトの前記内部に配置され、閉状態と、前記閉状態に比べて前記ダクトへの突出量の大きな開状態と、の間を状態変化することで前記吹出口に供給される前記空調空気の量を調整するダンパと、
前記ダンパに接続され、一部が前記車両室内に露出する操作部と、を具備し、
前記吹出口は長尺形状をなし、
前記操作部の少なくとも一部は、前記吹出口に対して、短手方向における外側に配置され、
前記ダクトの長手方向は車両進行方向であり、
前記吹出口の長手方向は前記ダクトの長手方向と同方向であり、
前記ダンパは回動軸を中心として回動することで前記閉状態と前記開状態との間を状態変化し、前記回動軸は前記ダンパのうち前記ダクトの
下流方向における一端側にある、空調用ダクト装置。
【請求項2】
前記ダンパのうち前記回動軸側の端部は、前記吹出口における長手方向の一端側にあり、
前記ダンパのうち前記回動軸とは逆側の端部は、前記閉状態において、前記吹出口における長手方向の他端側にある、請求項1に記載の空調用ダクト装置。
【請求項3】
前記ダンパよりも前記吹出口側に、前記ダンパとは別体の複数のフィン部を備える、請求項1または請求項2に記載の空調用ダクト装置。
【請求項4】
前記ダンパは前記開状態にあるときに前記ダクトの内部を閉じる、請求項1~請求項3の何れか一項に記載の空調用ダクト装置。
【請求項5】
前記操作部は、前記吹出口に対して、上側かつ外側または下側かつ外側に配置される、請求項1~4の何れか一項に記載の空調用ダクト装置。
【請求項6】
前記ダンパは、上流側-下流側方向に沿って配列する複数のダンパ分体を有する、請求項1~請求項5の何れか一項に記載の空調用ダクト装置。
【請求項7】
各々の前記ダンパ分体の前記ダクトへの突出量は、前記開状態において、上流側の前記ダンパ分体から前記下流側の前記ダンパ分体にかけて増大する、請求項6に記載の空調用ダクト装置。
【請求項8】
前記下流側にある前記ダンパ分体の前記突出量は、前記上流側にある前記ダンパ分体の前記突出量の2倍以上である、請求項7に記載の空調用ダクト装置。
【請求項9】
前記下流側にある前記ダンパ分体の前記突出量は、前記上流側にある前記ダンパ分体の前記突出量の3倍以上である、請求項8に記載の空調用ダクト装置。
【請求項10】
前記吹出口に供給される前記空調空気の量は、各々の前記ダンパ分体によって、前記上流側-下流側方向における前記吹出口の領域毎に調整され、
前記下流側にある前記領域の開口面積は、前記上流側にある前記領域の開口面積の1倍以上である、請求項7~請求項9の何れか一項に記載の空調用ダクト装置。
【請求項11】
前記下流側にある前記領域の開口面積は、前記上流側にある前記領域の開口面積の2倍以上である、請求項10に記載の空調用ダクト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の冷暖房を行うための車両用空調装置に接続される、空調用ダクト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両には、冷暖房を行うための空調空気を生じる車両用空調装置が搭載されている。当該車両用空調装置には、当該車両用空調装置が生じた空調空気を車両室内に供給するための空調用ダクト装置が接続される。
【0003】
ガソリン等の石油燃料を動力源としエンジンを原動機とするエンジン車においては、車両用空調装置における暖房用の熱源として、石油燃料の燃焼時の排熱を利用するのが一般的である。また、電気自動車においては、熱源として専用の電熱ヒータを設ける場合もある。
【0004】
近年台頭のめざましい電気自動車は、リチウムイオン二次電池等の自動車用電池を動力源とするものであり、石油燃料の燃焼がないために、上記したエンジン車に比べて、CO2排出量低減等の面で有利である。
【0005】
しかしその反面、電気自動車は、石油燃料の燃焼時の排熱を利用できない。
このため、電気自動車に搭載される車両用空調装置においては、電動モータの動力源である自動車用電池を電熱ヒータの動力源としても用いるのが一般的である。しかし、走行用の電動モータ及び暖房用の電熱ヒータの動力源として同じ自動車用電池を用いることで、例えば厳寒期等の暖房に必要なエネルギ量が大きい場合、大きなエネルギを車両用空調装置に費やすことで車両の走行可能な距離が短くなる問題がある。この面において、電気自動車はエンジン車に比べて不利といい得る。エンジンと電動モータとを併用したハイブリッド車についても同様である。
【0006】
近年、車室全体の空調を行うかわりに、車室のうちの目的とする部分だけに空調を行う技術が提案されている。具体的には、車室内において乗員に近接した部分だけに空調を行うことで、車室全体の空調を行う場合に比べてエネルギの使用量を低減できると考えられる。
以下、本明細書において、このように車室内において乗員に近接した部分に空調を行う技術を近接空調と称する場合がある。また、車室内の広範囲にわたって空調を行う技術を一般空調と称する場合がある。
【0007】
本発明の発明者等も、上記の近接空調に関する技術を開発し、既に出願した(例えば特許文献1参照)。
特許文献1には、コンソールボックス等の筐体に、長尺形状をなす近接空調用の吹出口(第1吹出口21)を設け、当該第1吹出口を介して座席に空調空気を供給する空調用ダクト装置が開示されている。
【0008】
上記した特許文献1の空調用ダクト装置によると、エネルギの使用量を低減しつつ、近接空調により座席に着座した乗員を充分に暖めることが可能である。
【0009】
ところで、特許文献1に紹介されている空調用ダクト装置では、ダクトを近接空調用の流路と一般空調用の流路とに分岐させている。
しかし、一般空調用の流路と近接空調用の流路とにダクトを分岐させると、ダクトが嵩高くなり、ダクトの配策の自由度が低下するとともに、ダクトに要するコストも高くなる問題が生じる。
【0010】
直管状のダクトを近接空調用の流路かつ一般空調用の流路として共用し、当該ダクトの一端部に一般空調用の吹出口を設け、当該ダクトの周壁に長尺形状をなす近接空調用の吹出口を設ければ、ダクトをコンパクトにできる可能性がある。しかしこの場合には、近接空調用の流路と一般空調用の流路とを兼用することにより、近接空調用の流路に充分な量の空調空気を供給し難くなる。
【0011】
本発明の発明者は、鋭意研究を重ね、長尺形状をなす吹出口の奥側においてダクトの内部にダンパを配置し、当該ダンパによって当該長尺形状をなす吹出口に供給される空調空気の量を調整することを想起した。この種のダンパとしては、状態変化することによってダクトの流路断面積を狭め得る、一般的なものを用いれば良いと考えられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2020-200007号公報
【文献】特開2015-101181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、吹出口が長尺形状をなす場合、当該吹出口に供給する空調空気の量を調整するためのダンパとしては、吹出口に対応した長尺形状をなすものを用いる必要があると考えられる。このような長尺形状のダンパを状態変化させるためには、比較的大きな力が必要であり、当該ダンパを手動で操作するための操作部にもまた、比較的大きな操作荷重が作用する。このため、当該ダンパは、ユーザーに負担を強いる虞がある。
【0014】
ダンパの操作荷重をなるべく小さくし、ユーザーの負担を軽減するためには、操作部の外形を大きくするのが有効である。具体的には、例えばダイヤル状の操作部であれば、当該操作部の外形を大きくすると良い。
しかし、外形の大きな操作部を配置するためには、大きなスペースを必要とする。
車両室内の空間は限られており、操作部のために大きなスペースを確保することは困難である。このため、当該操作部の外形を大きくすることは困難であり、長尺形状をなす吹出口を有する空調用ダクト装置において、操作部の操作荷重を低減するのは困難であった。
【0015】
また、長尺形状をなす吹出口に供給される空調空気の量は、流路上流側部分において多く、流路下流側部分において少なくなる。これにより、長尺形状をなす吹出口から吹き出す空調空気の量には、偏りが生じる場合がある。この場合には空調を好適に行い難くなる虞がある。
このように、長尺形状をなす吹出口を有する空調用ダクト装置は、依然として充分な機能性を有すると言い難く、その機能性の向上が望まれている。
【0016】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、長尺形状の吹出口を有し、かつ、機能性の向上した空調用ダクト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する本発明の空調用ダクト装置は、
車両用空調装置の下流側に取り付けられ、内部に空調空気が流通するダクトと、
前記ダクトの前記内部と車両室内とを連絡する吹出口と、
前記吹出口の奥側において前記ダクトの内部に配置され、閉状態と、前記閉状態に比べて前記ダクトへの突出量の大きな開状態と、の間を状態変化することで前記吹出口に供給される前記空調空気の量を調整するダンパと、
前記ダンパに接続され、一部が前記車両室内に露出する操作部と、を具備し、
前記吹出口は長尺形状をなし、
前記操作部の少なくとも一部は、前記吹出口に対して、短手方向における外側に配置される、空調用ダクト装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の空調用ダクト装置は、長尺形状の吹出口を有し、かつ、機能性の向上したものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】車室内内における実施例1の空調用ダクト装置を模式的に表す説明図である。
【
図2】実施例1の空調用ダクト装置と座席に着座した乗員との位置関係を説明する説明図である。
【
図3】実施例1の空調用ダクト装置を分解した様子を模式的に説明する説明図である。
【
図4】実施例1の空調用ダクト装置を車両室内側から見た様子を模式的に説明する説明図である。
【
図5】実施例1の空調用ダクト装置を
図4中のB-B位置で切断した様子を模式的に説明する説明図である。
【
図6】実施例1の空調用ダクト装置を
図4中のA-A位置で切断した様子を模式的に説明する説明図である。
【
図7】実施例1の空調用ダクト装置を
図4中のA-A位置で切断した様子を模式的に説明する説明図である。
【
図8】実施例2の空調用ダクト装置1を分解した様子を模式的に説明する説明図である。
【
図9】実施例2の空調用ダクト装置を車両室内側から見た様子を模式的に説明する説明図である。
【
図10】実施例2の空調用ダクト装置を
図9中のB-B位置で切断した様子を模式的に説明する説明図である。
【
図11】実施例2の空調用ダクト装置を
図9中のA-A位置で切断した様子を模式的に説明する説明図である。
【
図12】実施例2の空調用ダクト装置を
図9中のA-A位置で切断した様子を模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例等に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0021】
本発明の空調用ダクト装置は、長尺形状をなす吹出口を具備するものである。本発明の空調用ダクト装置において、ダクトの内部かつ吹出口の奥側には、開状態と閉状態との間で状態変化するダンパが配置されている。当該ダンパが状態変化することにより、吹出口への空調空気の供給量が調整される。
【0022】
本発明の空調用ダクト装置は、ダンパに接続され、一部が車両室内に露出する操作部を具備する。ユーザーは、操作部のうち車両室内に露出する部分を操作することによって、ダンパを状態変化させ、吹出口への空調空気の供給量を、必要に応じた量になるように適宜調整することが可能である。
【0023】
ここで、本発明の空調用ダクト装置においては、吹出口が長尺形状をなす。このような形状の吹出口への空調空気の供給量を調整するためには、既述したように、長尺形状のダンパを用いる必要がある。そして、当該長尺形状のダンパを状態変化させるためには比較的大きな力が必要であり、操作部に作用する操作荷重は大きくなる。
既述したように、操作部に作用する操作荷重を小さくするためには外形の大きな操作部が必要である。空調用ダクト装置の操作部は、通常、吹出口の側方に配置されるが、長尺形状をなす吹出口の側方に外形の大きな操作部を配置するためには大きなスペースを要する問題があった。このため、従来の空調用ダクト装置では、操作部の外形を大きくすることが困難であり、操作部の操作荷重を低減し難い問題があった。さらには、従来の空調用ダクト装置では、吹出口への空調空気の供給量を望み通りに調整し難い問題もあった。そして、これにより、従来の空調用ダクト装置において、その機能性を充分に向上させ難い問題があった。
【0024】
これに対して、本発明の空調用ダクト装置は、吹出口に対して短手方向における外側に操作部の少なくとも一部を配置したものである。長尺形状をなす吹出口の短手方向の外側には、当該吹出口の長手方向に沿って比較的大きなスペースを確保することが可能である。このため、本発明の空調用ダクト装置には、操作部として比較的外形の大きなものを設けることができ、当該操作部に作用する操作荷重を低減することが可能である。
以下、本発明の空調用ダクト装置をその構成要素毎に説明する。
【0025】
本発明の空調用ダクト装置は、長尺形状をなす吹出口を具備するものであり、当該吹出口の用途は特に限定しない。当該吹出口は、既述した近接空調用の吹出口とするのが好ましいが、一般空調用の吹出口として用いても良いし、さらには、フロントガラス等に空調空気を供給するためのデフロスタの吹出口として用いても良い。
【0026】
吹出口の長尺形状とは、第1の方向における開口長さが当該第1の方向に直交する第2の方向における開口長さよりも大きな形状、具体的には、当該第1の方向における開口長さが、当該第2の方向における開口長さの2倍以上であるものを意味する。吹出口の形状は、矩形であっても良いし、楕円形やその他の形状であっても良い。
【0027】
吹出口が近接空調用の吹出口である場合には、当該吹出口は座席の側方に配置されるのが好ましく、その長手方向を車両進行方向に向けるのがより好ましい。座席に着座した乗員の主に大腿部に空調空気を供給するためである。
なお本明細書において、「向ける」または後述する「沿う」とは、対象となる方向に対して45°以内の角度で交差することを意味する。このときの交差角の好ましい範囲として、30°以内、20°以内、10°以内、5°以内を例示できる。当該交差角は0°であるのが特に好ましい。
すなわち、吹出口の長手方向は車両進行方向であるのが特に好ましい。
【0028】
吹出口の形状について更にいえば、吹出口の第1の方向における開口長さが第2の方向における開口長さの3倍以上、より好適には5倍以上である場合に、本発明の空調用ダクト装置による効果がより顕著になる。
【0029】
吹出口は、ダクトの内部と車両室内とを連絡するものであれば良く、ダクトに一体に設けられるとともにその一部が車両室内に露出する部分ともいえる。
【0030】
吹出口は、ダクトの一端部に設けられても良いし、ダクトの周壁に設けられても良い。さらに、本発明の空調用ダクト装置は長尺形状の吹出口に加えて、それ以外の吹出口を具備しても良い。
【0031】
つまり、本発明の空調用ダクト装置は、既述した近接空調と一般空調との両方を行うための空調用ダクト装置として使用することが可能である。この場合、長尺形状の吹出口をダクトの周壁に設け、近接空調用の吹出口として用いれば良い。そして、当該長尺形状の吹出口よりも下流側に位置するダクトの一端部に第2の吹出口を設け、当該第2の吹出口を一般空調用の吹出口として用いても良い。
【0032】
なお、長尺形状の吹出口よりも下流側に位置するダクトの一端部には、第2のダクトを連結しても良い。当該第2のダクトには、第3の吹出口を設けても良く、当該第3の吹出口は近接空調用の吹出口として用いても良いし、一般空調用の吹出口として用いても良い。
【0033】
ダクトは、車両用空調装置の下流側に取り付けられ、内部に空調空気が流通すればよく、その形状は特に限定しないが、本発明の空調用ダクト装置が近接空調と一般空調との両方を行うための空調用ダクト装置であれば、直管状をなすのが好ましい。
【0034】
なお、ダクトが接続される車両用空調装置は、熱源としてエンジンの排熱を利用するものであっても良いし、電熱ヒータを用いるものであっても良い。
【0035】
ダンパは、上記した吹出口の奥側においてダクトの内部に配置される。ダンパは、吹出口およびダクトとは別体であり、ダクトに対して直接的または間接的に取り付けられて、開状態と閉状態との間を状態変化する。
【0036】
ダンパのダクトへの突出量は、開状態において閉状態よりも大きい。つまり、ダンパは閉状態においては吹出口を閉じ、このときダクトへのダンパの突出量は小さい。一方、ダンパは開状態においては吹出口を開き、このときダクトへのダンパの突出量は大きくなる。このように、ダンパが吹出口の奥側において当該吹出口を開閉することにより、吹出口に供給される空調空気の量は調整される。
【0037】
また、上記したように、開状態においてダンパはダクトに大きく突出する。このためダンパは、開状態において、ダクト内の空調空気の流路を区画するといい得る。具体的には、ダンパにおける上流側の面に当接した空調空気は、当該上流側の面に沿って流れ、吹出口に案内される。当該上流側の面に当接しなかった空調空気は、ダクト内を吹出口よりも下流側に向けて流れる。
【0038】
開状態においてダンパはダクトに大きく突出するために、ダンパに当接する空調空気の量は開状態において閉状態よりも大きい。このため、ダンパにより案内される空調空気の量は、ダンパが開状態にあるときにダンパが閉状態にあるときに比べて多くなる。このことによっても、本発明の空調用ダクト装置におけるダンパは、開状態と閉状態との間を状態変化することで、吹出口に供給される空調空気の量を調整するといい得る。
【0039】
ここで、本明細書において、ダンパの突出量とは、ダクトの上流側-下流側方向におけるダンパの投影面積、または、吹出口の奥側に向けたダンパの突出長さと言い換えることが可能である。後述するダンパ分体についても同様である。
【0040】
ダンパは、吹出口を開閉するために、吹出口に対応した長尺形状をなすのが好ましい。
【0041】
ダンパは、単一の構造であっても良いし、複数のダンパ分体で構成されても良い。ダンパを複数のダンパ分体で構成する場合、個々のダンパ分体を小型化できる。これにより、各ダンパ分体を状態変化させるのに要する力を小さくしたり、操作部の操作荷重を低減したりすることが期待できる。
【0042】
なお、ダンパは、閉状態において吹出口の一部のみを閉じても良いし、吹出口の全体を閉じても良い。ダンパが閉状態において吹出口の全体を閉じる場合に、隣り合うダンパ分体同士は、閉状態において、互いに面一になるように隙間なく連なるか、または、その端部同士が互いに重なり合うのが好ましい。
【0043】
ダンパを複数のダンパ分体で構成する場合、各ダンパ分体は、各々独立して状態変化しても良い。この場合、各ダンパ分体に別々の操作部を接続するのが好ましい。しかし、ダンパの操作性を考慮すると、各ダンパ分体が同期して状態変化するのが好ましい。この場合、各ダンパ分体を、リンク部材を介して連結し、何れかのダンパ分体またはリンク部材に操作部を接続するのが良い。リンク部材としては、操作部に作用した力を各ダンパ分体に伝達し得る、既知構造のものを採用すれば良い。
【0044】
各ダンパ分体は、吹出口の長手方向に沿って配列するのが好ましい。既述したように、ダンパは吹出口の形状に対応する長尺形状をなすのが好ましいところ、ダンパ分体を当該態様にする場合には、吹出口の長手方向における各ダンパ分体の長さを充分に小さくし、かつ、ダンパ分体の集合体たるダンパについては、吹出口の長手方向において充分な長さにすることが可能である。
【0045】
また、各ダンパ分体は、上流側-下流側方向に沿って配列するのが好ましい。この場合、吹出口もまたその長手方向を上流側-下流側方向に向けるのが好ましい。
この態様によると、ダクト内の空調空気の流路を各ダンパ分体によって別々に区画し、空調空気を各ダンパ分体によって吹出口における上流側-下流側方向の異なる領域に案内することが可能である。これにより、吹出口における上流側-下流側方向の異なる領域に均等に、または、狙い通りの量の空調空気を供給することが可能になり、吹出口が長尺形状をなし、かつ長手方向を上流側-下流側方向に向けるにもかかわらず、当該吹出口から吹き出す空調空気の量の、偏りをなくすかまたは低減することが可能である。
【0046】
各ダンパ分体のダクトへの突出量は、同じであっても良いし異なっていても良いが、吹出口に供給する空調空気の量を望み通りにコントロールするためには、当該突出量は、開状態において、上流側のダンパ分体から下流側のダンパ分体にかけて増大するのが好ましい。
【0047】
具体的には、下流側にあるダンパ分体の突出量は、上流側にあるダンパ分体の突出量の2倍以上であるのが好ましく、3倍以上であるのがより好ましい。
ダンパ分体の突出量をこのような比率にする場合、長尺形状の吹出口から吹き出す空調空気の量の偏りをなくすかまたは低減することが可能である。
【0048】
ダンパが2つのダンパ分体で構成される場合における、各ダンパ分体の好ましい突出量として、上流側から下流側に向けて、1:3となる量を例示することができる。この場合には、ダクト内の流路を吹出口から奥側に向けて1:2となるように区画できる。
ダンパが3つのダンパ分体で構成される場合における、各ダンパ分体の好ましい突出量として、上流側から下流側に向けて、1:2:3となる量を例示することができる。この場合には、ダクト内の流路を吹出口から奥側に向けて1:1:1となるように区画できる。
【0049】
さらには、最上流側にあるダンパ分体の突出量は、ダクトの内部の手前側-奥側方向の長さの1/4以上であるのが好ましく、1/3~2/3の範囲内であるのがより好ましく、2/5~3/5の範囲内であるのが特に好ましいといえる。
ダンパ分体の突出量をこのような比率にする場合、長尺形状の吹出口から吹き出す空調空気の量の偏りをなくすかまたは低減することが可能である。
【0050】
ダンパまたは各ダンパ分体のうち開状態において吹出口側に位置する端部は、開状態において吹出口に近い位置にあるのが好ましい。以下、必要に応じて、ダンパまたは各ダンパ分体のうち開状態において吹出口側に位置する端部を、吹出側端部と称する。
開状態において、当該吹出側端部が吹出口に近い位置にある場合には、ダンパによって、ダクトの内部から吹出口に至る空調空気の流路を区画することが可能であり、これにより、吹出口に供給する空調空気の量を望み通りにコントロールすることが可能である。
具体的には、開状態における吹出側端部と吹出口との距離の好ましい範囲として、10mm以下、5mm以下、2mm以下を例示することができる。開状態における吹出側端部と吹出口との距離は0mmであるのが特に好ましい。
【0051】
開状態において吹出側端部が吹出口に近い位置にある場合、吹出口に供給される空調空気の量は、各々のダンパ分体によって、上流側-下流側方向における吹出口の領域毎に調整されるともいえる。以下、必要に応じて、当該吹出口の各領域を吹出領域と称する。
【0052】
吹出口に供給される空調空気の量が各々のダンパ分体によって吹出口の吹出領域毎に調整される場合、下流側にある吹出領域の開口面積は、上流側にある吹出領域の開口面積の1倍以上であるのが好ましく、2倍以上であるのがより好ましい。
吹出領域の開口面積をこのような比率にする場合、長尺形状の吹出口から吹き出す空調空気の量の偏りをなくすかまたは低減することが可能である。
【0053】
ダンパが2つのダンパ分体で構成され、当該2つのダンパ分体により吹出口が2つの吹出領域に区画される場合には、各吹出領域の好ましい開口面積として、上流側から下流側に向けて、1:2となる量を例示することができる。
ダンパが3つのダンパ分体で構成され、当該3つのダンパ分体により吹出口が3つの吹出領域に区画される場合には、各吹出領域の好ましい開口面積として、上流側から下流側に向けて、1:1:1となる量を例示することができる。
【0054】
ダンパまたはダンパ分体の状態変化機構は、回動等の既知の機構を利用すれば良い。以下、ダンパとダンパ分体とを総称してダンパと称する場合がある。
ダンパが回動する場合、ダンパは位置変化しない回動軸を中心として回動しても良いし、スライド等の位置変化を伴う回動軸を中心として回動しても良い。回動軸が位置変化しない場合には、ダンパの構造が堅牢になり、ダンパの耐久性が向上する利点がある。また、回動軸が位置変化する場合には、ダンパが状態変化する際の軌跡を小さくすることができ、車両用空調装置をよりコンパクトにできる利点がある。
【0055】
ダンパの回動軸は、その端部にあっても良いし、中央部にあっても良い。但し、ダンパは、開状態においても吹出口の奥側にあり吹出口よりも手前側すなわち車両室内側には露出しないのが好ましい。このため、ダンパの回動軸と吹出口およびダクトとの位置関係を考慮すると、ダンパの回動軸はダンパの端部にありかつダクトにおける吹出口側に配置されるのが好ましい。
【0056】
操作部は、ダンパに接続され、かつ、その一部が車両室内に露出する部分であり、ダンパを状態変化させるためにユーザーが操作する部分である。
操作部は、ユーザーの操作が容易となる形状であれば良く、ダイヤル状やレバー状等の既知形状をなせば良い。
【0057】
ここで、操作部の大きさが大きいほど、梃子の原理により、当該操作部に作用する操作荷重を小さくすることができる。吹出口の長手方向における操作部の長さは、当該長手方向における吹出口の長さ、換言すれば、既述した吹出口の第1の方向における開口長さの1/8倍以上であるのが好ましく、1/5倍以上であるのがより好ましく、1/3倍以上であるのがさらに好ましい。
【0058】
操作部の少なくとも一部は、吹出口に対して、短手方向における外側に配置される。これにより、本発明の空調用ダクト装置では外形の大きな操作部を省スペースで配置することができる。操作部は、その長手方向を吹出口の長手方向に向けるのが好ましい。または、操作部は、その長手方向を吹出口の手前側-奥側方向に向けても良い。さらには、操作部の長手方向に延びる直線は、吹出口の長手方向に延びる直線、および、吹出口の手前側-奥側方向に延びる直線と同一平面上にあっても良い。いずれの場合にも、外形の大きな操作部を省スペースで配置することができる。
以下、具体例を挙げて本発明の空調用ダクト装置を説明する。
【0059】
(実施例1)
車室内における実施例1の空調用ダクト装置を模式的に表す説明図を
図1に示す。実施例1の空調用ダクト装置と座席に着座した乗員との位置関係を説明する説明図を
図2に示す。実施例1の空調用ダクト装置を分解した様子を模式的に説明する説明図を
図3に示す。実施例1の空調用ダクト装置を車両室内側から見た様子を模式的に説明する説明図を
図4に示す。実施例1の空調用ダクト装置を
図4中のB-B位置で切断した様子を模式的に説明する説明図を
図5に示す。実施例1の空調用ダクト装置を
図4中のA-A位置で切断した様子を模式的に説明する説明図を
図6および
図7に示す。なお、
図6はダンパが開状態にある様子を示し、
図6はダンパが閉状態にある様子を示す。
以下、上、下、手前、奥、前、後とは各図における上、下、手前、奥、前、後を指すものとする。なお、上、下とは、鉛直方向における上、下を意味し、前、後とは車両進行方向における前、後を意味する。手前側-奥側方向は車幅方向と一致する。
【0060】
図1に示すように、実施例1の空調用ダクト装置1は、車両室内95に配置され、車両のセンターコンソールボックス92に取り付けられる。センターコンソールボックス92は、前部座席である助手席98(
図2参照)と図略の運転席との間に配置されている。
空調用ダクト装置1は、センターコンソールボックス92の内部に配置されている。
センターコンソールボックス92の側壁には開口92oが設けられており、後述する空調用ダクト装置1の吹出口2は当該開口92oに対応する位置に配置されている。
【0061】
図3に示すように、空調用ダクト装置1は、ダクト3、吹出口2、ダンパ4および操作部5を具備する。
このうちダクト3は、ダクト本体3m、開口フレーム3fおよび第1シール36を有する。
【0062】
ダクト本体3mは、前後方向に延びる直管状をなす。開口フレーム3fは略板状をなし、ダクト本体3mに一体化され、ダクト本体3mの周壁35を外側から覆う。
【0063】
ダクト3の前端部は、
図1に示すように、センターコンソールボックス92よりも前側に配置されている車両用空調装置93の下流側に接続されている。
図3に示すダクト本体3mの内部30は、車両用空調装置93が供給する空調空気の流路であり、当該流路における上流側は前側であり、下流側は後側である。上流側-下流側方向は、車両進行方向に一致するともいえる。ダクト本体3mの内部30は、ダクト3の内部でもある。
【0064】
ダクト本体3mの周壁35には、ダクト本体3mの内部30と外部とを連絡するダクト窓部20が設けられている。当該ダクト窓部20は、長尺形状をなし、その長手方向を前後に向け、短手方向を上下に向けている。
【0065】
開口フレーム3fは、略板状をなすフレーム本体31mと、フレーム本体31mから手前側に突出する筒状のフレーム窓部21oとを有する。
【0066】
フレーム窓部21oの内部は、フレーム本体31mを手前側-奥側方向に貫通する窓状をなす。また、フレーム窓部21oの内部は、ダクト窓部20に対応し、かつ、当該ダクト窓部20よりもやや大形の長尺形状をなす。
フレーム窓部21oの内部には、複数のフィン部21fが取り付けられている。各フィン部21fは、略板状をなし、フレーム窓部21oの長手方向、すなわち前後方向に配列している。
フレーム窓部21oの上側には、長尺状の操作窓部32が設けられている。操作窓部32は、長手方向を前後に向け、フレーム本体31mを手前側-奥側方向に貫通する窓状をなす。
【0067】
フレーム本体31mは、フレーム窓部21oをダクト窓部20に対面させつつ、ダクト本体3mの周壁35を手前側から覆っている。
実施例1の空調用ダクト装置1においては、ダクト窓部20の内部およびフレーム窓部21oの内部が、ダクト3の内部30と車両室内95とを連絡する吹出口2を構成する。吹出口2の寸法は、実質的には、ダクト窓部20の内寸である。長手方向つまり前後方向における吹出口2の開口長さは、短手方向つまり上下方向における吹出口2の開口長さの6倍程度である。
【0068】
開口フレーム3fとダクト本体3mとの間には、第1シール36が介在している。第1シール36は弾性変形可能であり、吹出口2よりもやや内寸の大きな枠状をなし、吹出口2の周縁部において、ダクト本体3mの周壁35と、開口フレーム3fにおけるフレーム本体31mと、の隙間をシールし、当該隙間からの空調空気の漏れを抑制している。
【0069】
ダンパ4は、ダンパ本体40mと、第2シール41と、回動軸40sとを有する。ダンパ本体40mは吹出口2の形状に対応する長尺の板状をなし、長手方向を前後に向け短手方向を上下に向けている。第2シール41は、弾性変形可能であり、ダンパ本体40mよりもやや外寸の大きな長尺の枠状をなし、ダンパ本体40mの外周側を覆っている。ダンパ4の寸法は、実質的に、第2シール41の外寸である。
回動軸40sは、その軸方向を上下に向け、ダンパ本体40mにおける長手方向の一端部、具体的には、ダンパ本体40mの後端部に一体化されている。
【0070】
ダンパ4はダクト3の内部30に配置され、吹出口2の奥側において当該吹出口2に対面する。
操作部5は略半円盤形のダイヤル状をなし、その長手方向を前後方向かつ手前側-奥側方向に向ける。換言すると、操作部5の長手方向に延びる直線は、吹出口2の長手方向に延びる直線、および、吹出口2の手前側-奥側方向に延びる直線と同一平面上にある。操作部5は、ダンパ本体40mの上側において、当該ダンパ本体40mの後側部分に一体化されている。
【0071】
操作部5における奥側端部は、ダンパ4とともにダクト3の内部30に配置される。操作部5は、ダクト3の内部30から手前側に向けて突出する。操作部5における手前側部分は、ダクト窓部20を経てダクト本体3mの外部に露出し、さらに、開口フレーム3fにおける操作窓部32を経てダクト3の手前側に露出する。
【0072】
ダンパ4の回動軸40sの上端部はダクト本体30に軸支され、下端部はダクト本体30における周壁35の手前側において、センターコンソールボックス92に軸支される。
【0073】
ダンパ4は、回動軸40sと中心として回動し、
図5および
図6に示す開状態と、
図7に示す閉状態との間を状態変化する。
ダクト3へのダンパ4の突出量は、
図5および
図6に示す開状態において、
図7に示す閉状態よりも大きい。
【0074】
実施例1の空調用ダクト装置1では、開状態において、ダンパ4はダクト3の内部30を閉じる。具体的には、このときダンパ4は、ダクト3の内部30を、前側すなわち上流側かつ奥側から、後側すなわち下流側かつ手前側に区画して、空調空気を吹出口2に案内する。
なお、このときダンパ4は吹出口2を開いた状態にあり、吹出口2に供給される空調空気の量は最大となる。
【0075】
図7に示すように、閉状態においてダンパ4は吹出口2を閉じる。これにより、空調空気は吹出口2よりも後側、つまりダクト3の下流側に流出する。このとき吹出口2に供給さえる空調空気の量は最小となる。
【0076】
図3および
図4に示すように、実施例1の空調用ダクト装置1における操作部5は、吹出口2に対して、短手方向における外側、より具体的には吹出口2の上側かつ外側に配置されている。このため、実施例1の空調用ダクト装置1は、操作部5の外形が大きいにも拘わらずコンパクトである。また、操作部5の外形が大きいことにより、長尺形状をなす比較的大型のダンパ4を操作するにも拘わらず、操作部5に作用する荷重は充分に低減される。これにより、実施例1の空調用ダクト装置1には優れた操作性が付与される。つまり実施例1の空調用ダクト装置1は機能性に優れる。
【0077】
なお、操作部5を吹出口2の下側かつ外側に配置する場合にも、実施例1の空調用ダクト装置1と同様に、空調用ダクト装置1全体をコンパクトにできる効果は得られる。しかし、実施例1の空調用ダクト装置1における吹出口2のように、その長手方向を水平方向に向ける近接空調用の吹出口であれば、操作部5を当該吹出口2の上側に配置することで、座席に着座したユーザーが操作部5を動かす動作を無理なく行い得る利点がある。またこの場合、ユーザーは、吹出口5を手で塞ぐことなく操作部5に容易にアクセスできる。これにより、操作部5を動かす際にも、吹出口2からユーザーの大腿部への空調空気の供給は好適に維持され、近接空調が好適に継続される利点がある。
【0078】
参考までに、実施例1の空調用ダクト装置1において、前後方向における操作部5の長さは、同じく前後方向における吹出口2の開口長さの2/5倍程度である。
【0079】
図2に示すように、吹出口3は座席(助手席98)を向き、当該座席に着座した乗員96の大腿部に空調空気を吹き付ける。したがって、実施例1の空調用ダクト装置1は近接空調用の空調用ダクト装置1として機能する。また、図示しないが実施例1の空調用ダクト装置1におけるダクト3の下流側端部は、図略の一般空調用の空調用ダクト装置に接続される。したがって、ダクト3の下流側に流出した空調空気は、一般空調に供される。
【0080】
(実施例2)
実施例2の空調用ダクト装置1は、ダンパが二つのダンパ分体とリンク部材とで構成されていること以外は、実施例2の空調用ダクト装置1と概略同じものである。実施例2の空調用ダクト装置1を分解した様子を模式的に説明する説明図を
図8に示す。実施例2の空調用ダクト装置を車両室内側から見た様子を模式的に説明する説明図を
図9に示す。実施例2の空調用ダクト装置を
図9中のB-B位置で切断した様子を模式的に説明する説明図を
図10に示す。実施例2の空調用ダクト装置を
図9中のA-A位置で切断した様子を模式的に説明する説明図を
図11および
図12に示す。なお、
図11はダンパが開状態にある様子を示し、
図12はダンパが閉状態にある様子を示す。
以下、実施例1の空調用ダクト装置1との相違点を中心に、実施例2の空調用ダクト装置1を説明する。
【0081】
図8に示すように、実施例2の空調用ダクト装置1におけるダンパ4は、第1ダンパ分体45、第2ダンパ分体46およびリンク部材47を具備する。
【0082】
第1ダンパ分体45は、第1ダンパ本体45m、第3シール43および第1回動軸45sを具備する。第1ダンパ本体45mは略板状をなし、長手方向を前後に向け短手方向を上下に向けている。第3シール43は、弾性変形可能であり、第1ダンパ本体45mよりもやや外寸の大きな長尺の枠状をなし、第1ダンパ本体45mの外周側を覆っている。第1ダンパ分体45の寸法は、実質的に、第3シール43の外寸である。
第1回動軸45sは、その軸方向を上下に向け、第1ダンパ本体45mにおける長手方向の一端部、具体的には、第1ダンパ本体45mの後端部に一体化されている。
【0083】
第2ダンパ分体46は、第2ダンパ本体46mおよび第2回動軸46sを具備する。第2ダンパ本体46mは略板状をなし、長手方向を前後に向け短手方向を上下に向けている。第2回動軸46sは、その軸方向を上下に向け、第2ダンパ本体46mにおける長手方向の一端部、具体的には、第2ダンパ本体46mの後端部に一体化されている。
【0084】
第2ダンパ分体46および第1ダンパ分体45は、前後方向すなわち上流側-下流側方向に配列している。
前後方向において、第1ダンパ本体45mの長さは、第2ダンパ本体46mの長さよりも長い。また、上下方向において、第1ダンパ本体45mの長さと第2ダンパ本体46mの長さとは略同じである。第1ダンパ本体45mと第2ダンパ本体46mとは、実施例1の空調用ダクト装置1におけるダンパ本体40mを概略2分割した形状をなす。
【0085】
第1ダンパ分体45における第1回動軸45sの上側部分と、第2ダンパ分体46における第2回動軸46sの上側部分とは、各々、奥側に向けて延びている。
リンク部材47は、長尺の竿状をなし、第1回動軸45sの上側部分と第2回動軸46sの上側部分とをともに枢支している。これにより、第1ダンパ分体45および第2ダンパ分体46は同期して回動する。
【0086】
実施例2の空調用ダクト装置1における操作部5は、実施例1の空調用ダクト装置1における操作部5と略同形のダイヤル状をなし、実施例1の空調用ダクト装置1における操作部5と同様に、その長手方向を前後方向かつ手前側-奥側方向に向けている。操作部5は、第1ダンパ本体45mの上側において、当該第1ダンパ本体45mの後側部分に一体化されている。
【0087】
操作部5は、ダクト3の内部30から手前側に向けて突出する。操作部5における手前側部分は、ダクト窓部20を経てダクト本体3mの外部に露出し、さらに、開口フレーム3fにおける操作窓部32を経てダクト3の手前側に露出する。
【0088】
第1ダンパ分体45は、第1回動軸45sを中心として回動し、
図10および
図11に示す開状態と、
図12に示す閉状態との間を状態変化する。
第2ダンパ分体46は、第2回動軸46sを中心として回動し、
図10および
図11に示す開状態と、
図12に示す閉状態との間を状態変化する。
第1ダンパ分体45および第2ダンパ分体46が開状態となることで、ダンパ4自体もまた開状態となる。同様に、第1ダンパ分体45および第2ダンパ分体46が閉状態となることで、ダンパ4自体もまた閉状態となる。
【0089】
ダクト3への第1ダンパ分体45の突出量は、
図10および
図11に示す開状態において、
図12に示す閉状態よりも大きい。また、ダクト3への第2ダンパ分体46の突出量は、
図10および
図11に示す開状態において、
図12に示す閉状態よりも大きい。
【0090】
より詳しくは、
図11に示す開状態においては、ダクト3への第1ダンパ分体45の突出量、すなわち、吹出口2の奥側に向けたダンパ分体45の突出長さ(L1+L2)は、ダクト3への第2ダンパ分体46の突出量、すなわち、吹出口2の奥側に向けたダンパ分体46の突出長さ(L2)の2倍である。なお、ダクト3の内部30の手前側-奥側方向の長さは、吹出口2の奥側に向けたダンパ分体45の突出長さ(L1+L2)に一致する。したがって、吹出口2の奥側に向けたダンパ分体46の突出長さ(L2)は、ダクト3の内部30の手前側-奥側方向の長さ(L1+L2)の1/2といえる。
【0091】
また、
図11に示す開状態においては、第1ダンパ分体45のうち下流側の端部すなわち第1ダンパ分体45の吹出側端部45oeは吹出口2に近い位置にある。同様に、第2ダンパ分体46のうち下流側の端部すなわち第2ダンパ分体46の吹出側端部46oeは、吹出口2に近い位置にある。より詳しくは、吹出側端部45oeと吹出口2との距離、および、吹出側端部46oeと吹出口2との距離は略0mmである。
これにより、第1ダンパ分体45および第2ダンパ分体46は、ダクト3の内部30から吹出口2に至る空調空気の流路を区画する。
【0092】
より詳しくは、開状態において、第1ダンパ分体45および第2ダンパ分体46は、吹出口2を、その上流側-下流側方向において、二つの領域に区画する。当該二つの領域の一方を第1吹出領域と称し、他方を第2吹出領域と称する。第2吹出領域は、第2ダンパ分体46よりも上流側に形成される領域であり、第1吹出領域は第2ダンパ分体46よりも下流側に形成される領域である。実施例2の空調用ダクト装置1においては、第1吹出領域は第2吹出領域の下流側に配置され、第1吹出領域の開口面積S1は第2吹出領域の開口面積S2の2倍である。また、実施例2の空調用ダクト装置1においては、吹出口2の開口高さはその長手方向に一定であるために、第1吹出領域の開口幅は第2吹出領域の開口幅の2倍ともいえる。
【0093】
実施例2の空調用ダクト装置1では、ダンパ4を第1ダンパ分体45および第2ダンパ分体46に分けたことにより、各ダンパ分体45、46を小型化でき、ダンパを状態変化させる操作荷重を低減できる。また、操作部5を、吹出口2に対して、短手方向における外側に配置したことで、操作部5の外形を充分に大きくしつつ、空調用ダクト装置1をコンパクトにでき、かつ、操作部5に作用する荷重を充分に低減できる。これにより、実施例2の空調用ダクト装置1には優れた操作性が付与される。
【0094】
また、実施例2の空調用ダクト装置1では、第1ダンパ分体45および第2ダンパ分体46の突出量が上記の範囲にあり、また、第1吹出領域および第2吹出領域の開口面積が上記の比率であることにより、長尺形状の吹出口に供給される空調空気の量を、吹出口2の長手方向に略均一にできる。これにより、実施例2の空調用ダクト装置1では、長尺形状の吹出口から吹き出す空調空気の量の偏りをなくすかまたは低減することが可能である。
実施例2の空調用ダクト装置1は、上記の協働により非常に優れた機能性を発揮する。
【0095】
なお、実施例2の空調用ダクト装置1において、ダンパ4が
図12に示す閉状態にあるときには、第1ダンパ分体45と第2ダンパ分体46との隙間は第3シール43によってシールされる。
【0096】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0097】
1:空調用ダクト装置 2:吹出口
3:ダクト 30:ダクトの内部
4:ダンパ 45:第1ダンパ分体(ダンパ分体)
46:第2ダンパ分体(ダンパ分体) 5:操作部
93:車両用空調装置 95:車両室内