IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-スパークプラグ 図1
  • 特許-スパークプラグ 図2
  • 特許-スパークプラグ 図3
  • 特許-スパークプラグ 図4
  • 特許-スパークプラグ 図5
  • 特許-スパークプラグ 図6
  • 特許-スパークプラグ 図7
  • 特許-スパークプラグ 図8
  • 特許-スパークプラグ 図9
  • 特許-スパークプラグ 図10
  • 特許-スパークプラグ 図11
  • 特許-スパークプラグ 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
H01T13/20 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021106714
(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公開番号】P2023005039
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100142918
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 貴志
(72)【発明者】
【氏名】高田 健一朗
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/129342(WO,A2)
【文献】特開2016-146274(JP,A)
【文献】特表2009-541946(JP,A)
【文献】特開2007-287667(JP,A)
【文献】特開2014-116181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の中心軸を中心に筒状に形成される絶縁碍子(12)と、
前記絶縁碍子の先端部から露出するように前記絶縁碍子に挿入される中心電極(13)と、
前記中心電極の外周に設けられる筒状のハウジング(11)と、
前記ハウジングに接合される接地電極(14)と、を備え、
前記接地電極は、
前記ハウジングの先端面から前記中心軸の方向に延びるように形成される立設部(51)と、
前記立設部の先端部から前記中心電極に対向する位置まで延びるように形成される延伸部(52)と、を有し、
前記中心軸を中心とする周方向をプラグ周方向とし、前記立設部において前記プラグ周方向に設けられる外面を側面(511,512)とするとき、
前記立設部の側面に対して前記プラグ周方向に所定の隙間を有して配置される外側壁(71,72,80)を更に備え、
前記外側壁は、前記中心軸に対向するように形成され、且つ前記中心軸に近い部分ほど前記立設部の側面から離間するように形成される対向面(710,720,811,812)を有しており、
前記外側壁(71,72)は、前記ハウジングとは別体からなり、一対の長手側面(710,711,720,721)及び一対の短手側面(712,713,722,723)を有する矩形状の部材であるとともに、前記ハウジングの先端面に接合されており、
前記一対の長手側面のうち、前記中心軸に対向するように配置される一方の長手側面(710,720)は、前記対向面として、前記中心軸に近い部分ほど前記立設部の側面から離間するように形成されている
スパークプラグ。
【請求項2】
前記立設部の前記側面と前記外側壁との間に形成される隙間において最も狭い部分を絞り部(P11,P12)とするとき、
前記絞り部の幅は前記外側壁の前記長手側面の幅よりも狭い
請求項に記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記外側壁において前記長手側面と前記短手側面との間に位置する角部(714,724)は、前記プラグ周方向において前記立設部の前記側面に対向するように配置されている
請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【請求項4】
前記外側壁において前記長手側面と前記短手側面との間に位置する角部は、前記プラグ周方向において前記立設部の側面よりも前記中心軸の近くに配置されている
請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【請求項5】
前記プラグ周方向における前記立設部の幅の中央と前記中心軸とを結ぶ線を基準線とするとき、
前記基準線に平行な線を投影線として前記絶縁碍子及び前記外側壁を平行投影したときに、投影面において前記絶縁碍子の投影領域よりも前記外側壁の前記対向面の投影領域の方が外側に位置している
請求項1~4のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
【請求項6】
所定の中心軸を中心に筒状に形成される絶縁碍子(12)と、
前記絶縁碍子の先端部から露出するように前記絶縁碍子に挿入される中心電極(13)と、
前記中心電極の外周に設けられる筒状のハウジング(11)と、
前記ハウジングに接合される接地電極(14)と、を備え、
前記接地電極は、
前記ハウジングの先端面から前記中心軸の方向に延びるように形成される立設部(51)と、
前記立設部の先端部から前記中心電極に対向する位置まで延びるように形成される延伸部(52)と、を有し、
前記中心軸を中心とする周方向をプラグ周方向とし、前記立設部において前記プラグ周方向に設けられる外面を側面(511,512)とするとき、
前記立設部の側面に対して前記プラグ周方向に所定の隙間を有して配置される外側壁(71,72,80)を更に備え、
前記外側壁は、前記中心軸に対向するように形成され、且つ前記中心軸に近い部分ほど前記立設部の側面から離間するように形成される対向面(710,720,811,812)を有しており、
前記外側壁は、前記ハウジングの先端面に一体的に形成され、
前記外側壁は、前記ハウジングの先端面に沿って円弧状に形成された円弧部(80)からなり、
前記円弧部には、前記立設部が配置される切り欠き部(81)が形成され、
前記切り欠き部において前記立設部の前記側面に対向する内面(811,812)に前記対向面が形成されている
スパークプラグ。
【請求項7】
前記中心軸を中心とする径方向をプラグ径方向とするとき、
前記切り欠き部の前記内面には、前記対向面(811a,812a)と、前記対向面に対して前記プラグ径方向の外側に連続するように設けられて前記立設部の前記側面に平行な平行面(811b,812b)とが形成されている
請求項に記載のスパークプラグ。
【請求項8】
前記円弧部は、半円弧状に形成されている
請求項6又は7に記載のスパークプラグ。
【請求項9】
前記外側壁の先端部は、前記接地電極の延伸部において前記中心電極に対向する面の位置よりも前記ハウジングの先端面の近くに位置している
請求項1~8のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
【請求項10】
前記接地電極の内部には、銅芯が設けられている
請求項1~9のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載のスパークプラグがある。特許文献1に記載のスパークプラグは、主体金具と、絶縁碍子と、中心電極と、接地電極とを備えている。接地電極は、主体金具の先端面に接合される基部と、基部よりも先端側に位置する幅狭部と、基部及び幅狭部の間に位置するテーパ部とを備えている。基部は、一定の幅を有する断面略矩形状に形成されている。幅狭部は断面円形状に形成されている。テーパ部は、断面形状が長手方向に沿って除変するように形成されている。このスパークプラグでは、混合気が接地電極の背面に当たるような状況であっても、断面円形状に形成される幅狭部では混合気が接地電極の内側に回り込むように流れ易くなるため、着火性を向上させることができる。また、一定の幅を有する基部において放熱性を確保することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4676912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の熱効率の向上を図ったエンジンでは、その燃焼ガスの温度が従来よりも高温となっているため、接地電極が高温の燃焼ガスに曝されることになる。そのため、特許文献1に記載のスパークプラグのような放熱性を確保可能な構造を採用したとしても、接地電極の温度が十分に下がらない可能性がある。これは、意図しないタイミングで混合気が自着火する、いわゆるプレイグニッション等を招くおそれがあるため、好ましくない。
【0005】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、接地電極の放熱性を向上させることが可能なスパークプラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するスパークプラグ(10)は、所定の中心軸を中心に筒状に形成される絶縁碍子(12)と、絶縁碍子の先端部から露出するように絶縁碍子に挿入される中心電極(13)と、中心電極の外周に設けられる筒状のハウジング(11)と、ハウジングに接合される接地電極(14)と、を備える。接地電極は、ハウジングの先端面から中心軸の方向に延びるように形成される立設部(51)と、立設部の先端部から中心電極に対向する位置まで延びるように形成される延伸部(52)と、を有する。中心軸を中心とする周方向をプラグ周方向とし、立設部においてプラグ周方向に設けられる外面を側面とするとき、スパークプラグは、立設部の側面に対してプラグ周方向に所定の隙間を有して配置される外側壁(71,72,80)を更に備える。外側壁は、中心軸に対向するように形成され、且つ中心軸に近い部分ほど立設部の側面から離間するように形成される対向面(710,720,811,812)を有している。
【0007】
この構成によれば、中心電極から接地電極の立設部に向かう気流が発生すると、この気流が外側壁の対向面に沿って流れる。外側壁の対向面と立設部の側面との間に形成される隙間は、プラグ径方向の外側に向かうほど狭くなっているため、外側壁の対向面に沿って流れる気流は一旦絞り込まれた後、開放空間に抜けることになる。これにより気流の流速が増加するため、より温度の低い新規の気体が接地電極に順次送り込まれる。結果的に、外側壁が設けられていない場合と比較すると、より多くの熱を接地電極から奪うことができるため、接地電極の放熱性を向上させることが可能となる。
【0008】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0009】
本開示のスパークプラグによれば、接地電極の放熱性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態のスパークプラグの破断断面構造を示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態のスパークプラグの接地電極周辺の斜視構造を示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態の接地電極の破断断面構造を示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態のスパークプラグの底面構造を示す底面図である。
図5図5は、第1実施形態のスパークプラグの接地電極周辺の断面構造を示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態のスパークプラグの底面構造を示す底面図である。
図7図7は、発明者の実験により得られた絞り部の幅と接地電極の温度との関係を示すグラフである。
図8図8は、第1実施形態の第1変形例のスパークプラグにおける接地電極周辺の断面構造を示す断面図である。
図9図9は、第1実施形態の第2変形例のスパークプラグにおける接地電極周辺の斜視構造を示す斜視図である。
図10図10は、第2実施形態のスパークプラグの接地電極周辺の斜視構造を示す斜視図である。
図11図11は、第2実施形態のスパークプラグの接地電極周辺の断面構造を示す断面図である。
図12図12は、第2実施形態の変形例のスパークプラグにおける接地電極周辺の断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、スパークプラグの一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、図1に示される第1実施形態のスパークプラグ10の概略構成について説明する。このスパークプラグ10は例えばエンジンヘッドに設けられる。スパークプラグ10は、電圧の印加に基づき火花放電を形成することによりエンジンの気筒内の混合気を着火する。スパークプラグ10は、ハウジング11と、絶縁碍子12と、中心電極13と、接地電極14とを備えている。
【0012】
ハウジング11はスパークプラグ10の中心軸m10を中心に円筒状に形成されている。ハウジング11は例えば炭素鋼等の金属材料により形成されている。ハウジング11の内部には絶縁碍子12の下端部が同軸上に挿入されている。ハウジング11の下部の外周面には、ねじ部114が形成されている。ハウジング11のねじ部114を、エンジンヘッドブロックに形成されるねじ穴にねじ込むことにより、スパークプラグ10をエンジンヘッドブロックに締結して固定することが可能である。なお、以下では、中心軸m10を「プラグ中心軸m10」と称し、プラグ中心軸m10に沿った方向を「プラグ軸方向Da」と称し、プラグ中心軸m10を中心とする周方向を「プラグ周方向Dc」と称する。本実施形態では、プラグ中心軸m10が所定の中心軸に相当する。
【0013】
絶縁碍子12はプラグ中心軸m10を中心に円筒状に形成されている。絶縁碍子12はアルミナ等の絶縁材料により形成されている。絶縁碍子12の外周にはハウジング11が一体的に組み付けられている。絶縁碍子12の内部には軸孔120が形成されている。軸孔120はプラグ中心軸m10に沿って絶縁碍子12の先端部から基端部まで貫通するように形成されている。軸孔120には、その先端部の側から中心電極13、第1シール体15、抵抗体16、第2シール体17、及び端子金具18が順に挿入されている。中心電極13は、絶縁碍子12の先端部から露出するように絶縁碍子12に挿入されている。
【0014】
中心電極13は電極母材30と電極チップ40とを有している。中心電極母材30はプラグ中心軸m10を中心に円柱状に形成されている。中心電極母材30は、耐熱性に優れるニッケル(Ni)合金等により形成されている。中心電極チップ40は中心電極母材30の先端部に接合されている。中心電極チップ40はプラグ中心軸m10を中心に円柱状に形成されている。中心電極チップ40はイリジウム合金等により形成されている。中心電極13の基端部と端子金具18の先端部との間には第1シール体15、抵抗体16、及び第2シール体17が挟み込まれている。
【0015】
端子金具18はプラグ中心軸m10を中心に略円柱状に形成されている。端子金具18は鋼材等により形成されている。端子金具18の基端部には端子部180が設けられている。端子部180は絶縁碍子12の基端部から外部に露出している。
接地電極14は電極母材50と電極チップ60とを有している。接地電極母材50はニッケル合金等により形成されている。接地電極母材50は、ハウジング11の先端面に接合されている。接地電極母材50は、ハウジング11の先端面から中心電極チップ40に対向する位置まで延びるように形成されている。接地電極チップ60は接地電極母材50の先端部に接合されている。接地電極チップ60は、イリジウム合金や白金合金等の貴金属合金により形成されている。接地電極チップ60は、所定の隙間19を有して中心電極チップ40に対向するように配置されている。以下では、中心電極チップ40と接地電極チップ60との間に形成される隙間19を「火花ギャップ19」と称する。
【0016】
このスパークプラグ10では、高電圧を印加することが可能な外部回路が端子金具18の端子部180に接続される。外部回路により端子部180に高電圧が印加されると、中心電極13の電極チップ40と接地電極14の電極チップ60との間に火花放電が形成される。この火花放電によりエンジンの気筒内の混合気が着火して火炎が形成されることにより混合気が燃焼する。
【0017】
次に、ハウジング11及び接地電極14のそれぞれの構造について詳しく説明する。
図2に示されるように、接地電極母材50は、立設部51と、延伸部52とを有している。立設部51はハウジング11の先端面110に接合されている。立設部51は、ハウジング11の先端面110からプラグ軸方向Daに延びるように形成されている。延伸部52は、立設部51の先端部から中心電極13の電極チップ40に対向する位置まで延びるように形成されている。接地電極母材50は、これらの立設部51及び延伸部52により構成されることで、全体として略L字状に形成されている。
【0018】
図3に示されるように、接地電極母材50は、外層50a及び内層50bを有する2層構造により構成されている。外層50aはニッケル合金等により構成されている。内層50bは、ニッケル合金よりも伝熱性の高い金属、例えば銅により構成されている。
以下では、図2に示されるように、立設部51においてプラグ周方向Dcに設けられる一方の外面を一側面511と称し、他方の外面を他側面512と称する。
【0019】
ハウジング11の先端面110には、接地電極母材50の立設部51に隣り合うように第1外側壁71及び第2外側壁72が設けられている。図4に示されるように、第1外側壁71は、接地電極母材50の一側面511に対してプラグ周方向Dcに所定の隙間を有して配置されている。第2外側壁72は、接地電極母材50の他側面512に対してプラグ周方向Dcに所定の隙間を有して配置されている。第1外側壁71及び第2外側壁72は、ハウジング11とは別体からなり、ハウジング11の先端面110に接合されている。
【0020】
第1外側壁71は、一対の長手側面710,711及び一対の短手側面712,713を有する矩形状の部材からなる。一対の長手側面710,711のうち、一方の長手側面710は、プラグ中心軸m10に対向するように配置されている。また、長手側面710及び短手側面712、並びにそれらの間に位置する角部714は、立設部51の一側面511に対向するように配置されている。長手側面710は、プラグ中心軸m10に近い部分ほど立設部51の一側面511から離間するように形成されている。短手側面712は、プラグ中心軸m10から遠い部分ほど立設部51の一側面511から離間するように形成されている。これにより、図5に示されるように、プラグ中心軸m10を中心とする径方向を「プラグ径方向Dr」とすると、立設部51の一側面511と第1外側壁71との間に形成される隙間W11は、立設部51の内面513からプラグ径方向Drの外側に向かうほど狭くなって第1外側壁71の角部714で最も狭くなるとともに、角部714からプラグ径方向Drの外側に向かうほど広がる。したがって、隙間W11では、立設部51の一側面511と第1外側壁71の角部714とが対向する部分において絞り部P11が形成されている。絞り部P11の幅H30は第1外側壁71の長手側面710,711の幅H10よりも狭い。以下では、隙間W11を「流路W11」と称する。
【0021】
第2外側壁72も、第1外側壁71と同様に、一対の長手側面720,721及び一対の短手側面722,723を有する矩形状の部材からなる。一対の長手側面720,721のうち、プラグ中心軸m10に対向するように配置される長手側面720は、プラグ中心軸m10に近い部分ほど立設部51の他側面512から離間するように形成されている。立設部51の他側面512と第2外側壁72との間に形成される流路W12でも、立設部51の他側面512と第2外側壁72の角部724とが対向する部分において絞り部P12が形成されている。
【0022】
接地電極14の立設部51に対して第1外側壁71及び第2外側壁72が図4及び図5に示されるように配置されることにより、ハウジング11の外側からスパークプラグ10の先端部を見たときに、第1外側壁71及び第2外側壁72が略V字状になるように配置されている。
【0023】
図6に示されるように、プラグ周方向Dcにおける接地電極14の立設部51の幅の中央C10とプラグ中心軸m10とを結ぶ線を基準線m20とするとき、基準線m20に平行な線を投影線として絶縁碍子12及び外側壁71,72を平行投影したとき、投影面Dにおいて絶縁碍子12の投影領域D11よりも外側壁71,72のそれぞれの投影領域D21,D22の方が外側に位置している。
【0024】
次に、本実施形態のスパークプラグ10の動作例について説明する。
スパークプラグ10では、図5に矢印で示されるような気流、すなわち中心電極13から接地電極14に向かう方向の気流が形成されることがある。このとき、気流は、絶縁碍子12の外周に沿って流れた後、第1外側壁71及び第2外側壁72に向かって流れて、第1外側壁71及び第2外側壁72にそれぞれ衝突する。これにより、第1外側壁71に衝突した気流は、接地電極14の一側面511と第1外側壁71との間に形成される流路W11に流れ込む。また、第2外側壁72に衝突した気流は、接地電極14の他側面512と第2外側壁72との間に形成される流路W12に流れ込む。
【0025】
各流路W11,W12に流れ込んだ気流は絞り部P11,P12で一旦絞り込まれた後、開放空間S11,S12にそれぞれ抜けることになる。絞り部P11,P12から開放空間S11,S12に気流が抜ける際、気流の流速が増加する。したがって、より温度の低い新規の気体が接地電極14の側面511,512に順次送り込まれる。結果的に、外側壁71,72が設けられていない場合と比較すると、より多くの熱を接地電極14から奪うことができるため、接地電極14の放熱性を向上させることができる。
【0026】
次に、絞り部P11,P12の幅と接地電極14の先端部の温度との関係について説明する。
発明者は、接地電極14の先端部、より詳細には接地電極14の延伸部52の先端部に熱電対を埋め込んだ測温プラグを作成した上で、絞り部P11,P12の幅H30を変化させつつ熱電対の温度を測定する実験を行った。
【0027】
なお、この実験では、図5に示される外側壁71,72の長手側面710,711,720,721の幅H10を「2.2[mm]」に設定し、短手側面712,713,722,723の幅H11を「1.1[mm]」に設定した。また、接地電極14の立設部51の長手方向の幅H20を「1.2[mm]」に設定し、且つ立設部51の短手方向の幅H21を「1.0[mm]」に設定した。
【0028】
さらに、図6に示されるように、外側壁71,72のそれぞれの中央を通る線を中央線m31,m32とするとき、接地電極14の基準線m20に対して中央線m31,m32がそれぞれなす角度である交差角θ11,θ12を「45[°]」に設定した。また、図1に示されるハウジング11のねじ部114の形状を「M12」に設定した。さらに、エンジンの稼働条件を、WOT(Wide Open Throttle)の状態で、すなわちスロットルバルブが全開の状態で回転速度を「6000[rpm]」とする一定の条件に設定することにより、基本の流速及び流量が同等となるように設定した。
【0029】
図7は、上記のような条件で行われた実験の結果を示したグラフである。図7に示されるように、絞り部P11,P12の幅H30が「0.2[mm]≦H30<0.5[mm]」を満たしている場合には、絞り部P11,P12の幅H30が広くなるほど、接地電極14の先端部の温度は低下する。そして、絞り部P11,P12の幅H30が「0.5[mm]」であるときに、接地電極14の先端部の温度は最小値となる。また、絞り部P11,P12の幅H30が「0.5[mm]<H30」を満たしている場合には、絞り部P11,P12の幅H30が広くなるほど、接地電極14の先端部の温度は上昇するとともに、一定値に収束する。
【0030】
一般的に、絞り部が設けられる流路を気流が流れる際には、その流路の任意の2カ所の流路面積を「A1」及び「A2」とし、それらの箇所のそれぞれの気流の流速を「V1」及び「V2」とすると、「A1×V1=A2×V2」の関係が成立する。この関係式を踏まえつつ図7の実験結果を考察すると、絞り部P11,P12の幅H30が「1.5[mm]」を超えると、接地電極14の立設部51と外側壁71,72との間を流れる気流の流速が増加し難くなることにより、接地電極14の先端部の温度が低下し難くなっているものと考えられる。その一方、絞り部P11,P12の幅H30が「0.5[mm]」よりも狭くなると、接地電極14の立設部51と外側壁71,72との間を流れる気流の流量が減少する結果、接地電極14の先端部の温度が上昇するような現象が発生しているものと考えられる。
【0031】
以上説明した本実施形態のスパークプラグ10によれば、以下の(1)~(7)に示されるような作用及び効果を得ることができる。
(1)図5に示されるように絞り部P11,P12から開放空間S11,S12に気流が抜ける際、気流の流速が増加する。したがって、より温度の低い新規の気体が接地電極14の側面511,512に順次送り込まれる。結果的に、外側壁71,72が設けられていない場合と比較すると、より多くの熱を接地電極14から奪うことができるため、接地電極14の放熱性を向上させることができる。
【0032】
(2)第1外側壁71の一対の長手側面710,711のうち、プラグ中心軸m10に対向するように配置される一方の長手側面710は、プラグ中心軸m10に近い部分ほど接地電極14の一側面511から離間するように形成されている。第2外側壁72も同様である。この構成によれば、図5に示されるような絞り部P11,P12を有する流路W11,W12を容易に形成することができる。
【0033】
(3)流路W11,W12のそれぞれの絞り部P11,P12の幅H30は外側壁71,72の長手側面710,711,720,721の幅H10よりも狭くなっている。この構成によれば、気流の流速を増加させることが可能な流路W11,W12を形成することができるため、接地電極14の放熱性を更に向上させることができる。
【0034】
(4)外側壁71,72の角部714,724は、プラグ周方向Dcにおいて接地電極14の立設部51の側面511,512に対向するように配置されている。この構成によれば、図5に示されるような絞り部P11,P12を有する流路W11,W12を容易に形成することができる。
【0035】
(5)図6に示されるように、基準線m20に平行な線を投影線として絶縁碍子12及び外側壁71,72を平行投影したとき、投影面Dにおいて絶縁碍子12の投影領域D11よりも外側壁71,72の投影領域の方が外側に位置している。この構成によれば、絶縁碍子12の外周に沿って流れた気流を外側壁71,72により受け止め易くなるため、より的確に接地電極14に気流を導くことができる。よって、接地電極14の放熱性を更に向上させることができる。
【0036】
(6)図2に示されるように、外側壁71,72のそれぞれの先端部715,725は、接地電極14の延伸部52において中心電極に対向する面520の位置よりもハウジング11の先端面110の近くに位置している。この構成によれば、外側壁71,72が長くなり過ぎることを回避できるため、外側壁71,72に熱がこもり難くなる。結果的に、プレイグニッションの発生等を抑制できる。
【0037】
(7)接地電極14の内部には銅芯が設けられている。この構成によれば、接地電極14の熱引き性能を向上させることができるため、接地電極14の放熱性を更に向上させることができる。
(第1変形例)
次に、第1実施形態のスパークプラグ10の第1変形例について説明する。
【0038】
図8に示されるように、本変形例のスパークプラグ10では、外側壁71,72が接地電極14の立設部51よりもプラグ中心軸m10寄りに配置されている。具体的には、外側壁71,72の角部714,724が、プラグ周方向Dcにおいて接地電極14の立設部51の側面511,512よりもプラグ中心軸m10の近くに配置されている。このような構成であっても、第1実施形態のスパークプラグ10と類似の作用及び効果を得ることが可能である。
【0039】
(第2変形例)
次に、第1実施形態のスパークプラグ10の第2変形例について説明する。
図9に示されるように、本変形例のスパークプラグ10では、外側壁71,72が接地電極母材50に一体的に形成されている。このような構成であっても、第1実施形態のスパークプラグ10と類似の作用及び効果を得ることが可能である。
【0040】
<第2実施形態>
次に、スパークプラグ10の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態のスパークプラグ10との相違点を中心に説明する。
図10に示されるように、本実施形態のスパークプラグ10では、ハウジング11の先端面110に、外側壁71,72に代えて、円弧部80が一体的に形成されている。円弧部80は、ハウジング11の先端面110に沿って半円弧状に形成されている。円弧部80の略中央部には切り欠き部81が形成されている。切り欠き部81には接地電極14の立設部51が配置されている。
【0041】
図11に示されるように、切り欠き部81において接地電極14の立設部51の一側面511に対向する第1内面811は、プラグ中心軸m10に対向するように形成され、且つプラグ中心軸m10に近い部分ほど立設部51の一側面511から離間するように形成されている。切り欠き部81において接地電極14の立設部51の他側面512に対向する第2内面812は、プラグ中心軸m10に対向するように形成され、且つプラグ中心軸m10に近い部分ほど立設部51の他側面512から離間するように形成されている。切り欠き部81の第1内面811と立設部51の一側面511との間、並びに切り欠き部81の第2内面812と立設部51の他側面512との間には隙間がそれぞれ形成されている。本実施形態では、切り欠き部81の内面811,812が対向面に相当する。
【0042】
このような構成を有するスパークプラグ10であっても、第1実施形態のスパークプラグ10と類似の作用及び効果を得ることが可能である。
(変形例)
次に、第2実施形態のスパークプラグ10の変形例について説明する。
【0043】
図12に示されるように、本変形例のスパークプラグ10では、切り欠き部81の第1内面811に対向面811aと平行面811bとが形成されている。対向面811aは、プラグ中心軸m10に対向するように形成され、且つプラグ中心軸m10に近い部分ほど立設部51の一側面511から離間するように形成されている。平行面811bは、対向面811aに対してプラグ径方向Drの外側に連続するように設けられて立設部51の一側面511に平行に形成されている。
【0044】
切り欠き部81の第2内面812にも同様に対向面812aと平行面812bとが形成されている。
このような構成を有するスパークプラグ10であっても、第1実施形態のスパークプラグ10と類似の作用及び効果を得ることが可能である。
【0045】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・第1実施形態のスパークプラグ10では、外側壁71,72のいずれか一方のみが形成されていてもよい。
【0046】
・第2実施形態のスパークプラグ10では、円弧部80が、半円弧状に限らず、任意の弧状に形成されていてもよい。また、円弧部80は、接地電極14の立設部51の側面511,512のいずれか一方にのみ隣り合うように配置されていてもよい。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0047】
P11,P12:絞り部
10:スパークプラグ
11:ハウジング
12:絶縁碍子
13:中心電極
14:接地電極
51:立設部
52:延伸部
71,72:外側壁
80:円弧部(外側壁)
81:切り欠き部
511,512:側面
710,720:長手側面(対向面)
711,721:長手側面
712,713,722,723:短手側面
714,724:角部
811,812:内面(対向面)
811a,812a:対向面
811b,812b:平行面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12