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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241210BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241210BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20241210BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20241210BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241210BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241210BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 311Q
H01L23/36 A
H01L29/78 658J
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021107963
(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公開番号】P2023005784
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】川原 英樹
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-086958(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092791(WO,A1)
【文献】特開2014-116473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 21/60
H01L 23/29
H01L 21/336
H01L 29/78
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面(200a)に形成された第1主電極(210)、板厚方向で前記第1主面の裏側の第2主面(200b)に形成された第2主電極(220)、および、前記第1主面に設けられるとともに前記第1主電極を複数の領域に区画する区画部(241)を含む保護膜(240)、を備える半導体素子(200)と、
前記第1主電極と前記板厚方向で対向する複数の対向部(261、262)、および、複数の前記対向部の並ぶ並び方向で複数の前記対向部の間に設けられる介在部(263)、を前記板厚方向で前記第1主面に対向する対向面(400b)に備える導電部材(400)と、
前記第1主電極と複数の前記対向部との間に設けられるとともに前記区画部と前記介在部とによって複数の領域に区画されるはんだ部材(310)と、を有し、
前記区画部が前記第1主電極よりも前記はんだ部材に濡れにくく、
前記介在部が前記対向部よりも前記はんだ部材に濡れにくくなっており、
前記対向面において、前記介在部及び複数の前記対向部を環状に囲み、前記対向部よりも前記はんだ部材に濡れにくい、前記板厚方向に凹凸する凹凸部(264a)が形成されている半導体装置。
【請求項2】
前記介在部の前記並び方向の長さが前記区画部の前記並び方向の長さよりも長く、
前記介在部の前記板厚方向の投影領域に前記区画部が含まれている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
複数の前記対向部の前記並び方向の長さの和が、前記介在部の前記並び方向の長さよりも長くなっている請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記介在部の前記並び方向の長さが、前記板厚方向における前記介在部と前記区画部の間の離間距離の2倍と前記区画部の前記並び方向の長さの和以上になっている請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記介在部の前記第1主面側の部位に前記板厚方向に凹凸する凹凸形状(263a)が形成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体素子に、信号を伝達し、前記第1主面に沿って延びる信号配線(230)が設けられ、
前記信号配線の一部が前記区画部に被覆されている請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、半導体素子と導電部材とはんだを備える半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つのエミッタ電極の形成された半導体基板と、2つのエミッタ電極それぞれにはんだを介して固着されたヒートスプレッダと、を備える半導体装置が記載されている。2つのエミッタ電極の間に、ポリイミド膜が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-48889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリイミド膜ははんだに濡れにくくなっている。はんだがヒートスプレッダ側に濡れ拡がり、はんだが半導体基板とヒートスプレッダの間で架橋されやすくなっている。
【0005】
そこで本開示の目的は、半導体素子と導電部材の間ではんだ部材が架橋されにくくなった半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による半導体装置は、
第1主面(200a)に形成された第1主電極(210)、板厚方向で第1主面の裏側の第2主面(200b)に形成された第2主電極(220)、および、第1主面に設けられるとともに第1主電極を複数の領域に区画する区画部(241)を含む保護膜(240)、を備える半導体素子(200)と、
第1主電極と板厚方向で対向する複数の対向部(261、262)、および、複数の対向部の並ぶ並び方向で複数の対向部の間に設けられる介在部(263)、を板厚方向で第1主面に対向する対向面(400b)に備える導電部材(400)と、
第1主電極と複数の対向部との間に設けられるとともに区画部と介在部とによって複数の領域に区画されるはんだ部材(310)と、を有し、
区画部が第1主電極よりもはんだ部材に濡れにくく、
介在部が対向部よりもはんだ部材に濡れにくくなっており、
対向面において、介在部及び複数の対向部を環状に囲み、対向部よりもはんだ部材に濡れにくい、板厚方向に凹凸する凹凸部(264a)が形成されている。
【0007】
これによればはんだ部材(310)が半導体素子(200)と導電部材(400)の間で架橋されにくくなっている。
【0008】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】半導体装置を説明する模式図である。
図2図1に示すII-II線に沿う半導体装置の断面図である。
図3】半導体素子の上面図である。
図4】ターミナルの三面図である。
図5】半導体素子に第2ターミナル面を重ねた上面図である。
図6図5に示すVI-VI線に沿う半導体装置の断面図である。
図7】半導体素子の変形例を説明する上面図である。
図8】半導体素子に第2ターミナル面を重ねた変形例の上面図である。
図9】半導体素子の変形例を説明する上面図である。
図10】半導体素子に第2ターミナル面を重ねた変形例の上面図である。
図11】半導体装置の変形例を説明する断面図である。
図12】ターミナルの変形例を説明する上面図である。
図13】半導体装置の変形例を説明する断面図である。
図14】はんだの接触角と半導体素子の寿命の相関を説明する相関図である。
図15】半導体装置の変形例を説明する断面図である。
図16】半導体装置の変形例を説明する断面図である。
図17】半導体装置の変形例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0011】
また、各実施形態で組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
以下に、半導体装置100の機械的構成を説明する。それに当たって互いに直交の関係にある3方向をx方向、y方向、および、z方向とする。なお図面においては「方向」の記載を省略して示している。なお、板厚方向はz方向に相当する。並び方向はx方向に相当する。
【0013】
図1および図2に示すように、半導体装置100は、半導体素子200、はんだ300、ターミナル400、第1ヒートシンク500、第2ヒートシンク600、複数の端子700、および、これらを被覆する被覆樹脂800を有する。複数の端子700としては具体的に第1主端子710、第2主端子720、および、信号端子730を有する。なお、図2においては被覆樹脂800の記載を省略している。ターミナル400が導電部材に相当する。
【0014】
半導体装置100は、三相インバータを構成する複数のアームのうちの1つを構成する所謂1in1パッケージとして知られている。半導体装置100は例えば車両のインバータ回路に組み入れられる。なお、半導体装置100は図1に示すような1in1パッケージに限定されない。半導体装置100は2in1パッケージであってもよい。
【0015】
半導体素子200は、シリコン、シリコンカーバイドなどの半導体部材に、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのパワートランジスタが形成されて成る。パワートランジスタは、z方向に電流が流れるように所謂縦型構造を成している。
【0016】
半導体素子200は、z方向に厚さの薄い扁平形状を成している。半導体素子200はz方向に離間して並ぶ第1主面200aと第2主面200bを有している。第2主面200bは第1主面200aの板厚方向の裏側に設けられている。
【0017】
また図2に示すように第1主面200aにエミッタ電極210、ゲートライナ230、および、保護膜240が設けられている。エミッタ電極210は保護膜240によって第1エミッタ電極211と第2エミッタ電極212に区画されている。第1エミッタ電極211と第2エミッタ電極212は図示しない下地電極を介して電気的に接続されていてもよい。第2主面200bに一面にコレクタ電極220が設けられている。
【0018】
なお、エミッタ電極210が第1主電極に相当する。コレクタ電極220が第2主電極に相当する。なお、ゲートライナ230が信号配線に相当する。
【0019】
以下説明を簡便とするために、図3に示すように第1主面200aを第1領域281、第2領域282、第3領域283、および、第1周辺領域287に分けて説明する。以下に第1領域281~第1周辺領域287について具体的に説明する。
【0020】
図3に示すように第1領域281~第3領域283は第1主面200aの中央に配置されている。第1領域281と第2領域282はx方向に離間して並んでいる。第3領域283は第1領域281と第2領域282の間に設けられている。そして第1周辺領域287が第1領域281~第3領域283をz方向周りの周方向で環状に囲む態様で、第1主面200aに設けられている。
【0021】
図3に示すように第1領域281に第1エミッタ電極211が形成されている。第2領域282に第2エミッタ電極212が形成されている。第3領域283にゲートライナ230の一部と保護膜240の一部が設けられている。
【0022】
以下、第3領域283に設けられたゲートライナ230の一部を第1ゲートライナ231と示す。第3領域283に設けられた保護膜240の一部を第1保護部241と示す。第1ゲートライナ231が第1保護部241に被覆保護されている。なお、第1保護部241が区画部に相当する。
【0023】
また第1周辺領域287には、ゲートライナ230の残りと保護膜240の残りと複数のパッド740が設けられている。以下、第1周辺領域287に設けられたゲートライナ230の残りを第2ゲートライナ232と示す。第1周辺領域287に設けられた保護膜240の残りを第2保護部242と示す。第2ゲートライナ232が第2保護部242に被覆保護されている。
【0024】
なお、図3においてはゲートライナ230の位置を明瞭とするためにゲートライナ230を破線で示している。
【0025】
ゲートライナ230とは半導体素子200に形成されたパワートランジスタのゲート電極に遅延なくオンオフ信号を伝達するために抵抗を低抵抗化した配線のことである。
【0026】
保護膜240とはポリイミドを含む部材から成るゲートライナ230を保護するための保護部材のことである。保護膜240はエミッタ電極210よりもはんだ300に濡れにくくなっている。より具体的に言えば、第1保護部241と第2保護部242それぞれが第1エミッタ電極211と第2エミッタ電極212よりもはんだ300に濡れにくくなっている。
【0027】
複数のパッド740とは、信号用の電極のことである。複数のパッド740は、例えば半導体素子200のy方向の端側に設けられている。複数のパッド740は第2保護部242から露出されている。
【0028】
複数のパッド740それぞれは、例えば、ゲート電極用、ケルビンエミッタ用、電流センス用、温度センサのアノード電位用、同じく温度センサのカソード電位用などに用いられる。複数のパッド740は、図示しないボンディングワイヤを介して、複数の信号端子730に電気的に接続されている。
【0029】
ターミナル400は略直方体形状を成す導電性のブロック体である。ターミナル400は熱伝導性および電気伝導性に優れる例えば銅などの金属部材を用いて形成されている。
【0030】
図2に示すように、ターミナル400はz方向に離間して並ぶ第1ターミナル面400aとその裏側の第2ターミナル面400bと第1ターミナル面400aと第2ターミナル面400bを連結する4つの連結ターミナル面400cを有する。第2ターミナル面400bが第1ターミナル面400aよりもz方向で第1主面200a側に設けられている。なお、第2ターミナル面400bが対向面に相当する。
【0031】
また第1ターミナル面400aに第1めっき250が設けられている。第2ターミナル面400bに第2めっき260が設けられている。連結ターミナル面400cに第3めっき270が設けられている。
【0032】
以下、第2ターミナル面400bを具体的に説明するために、第2ターミナル面400bを第4領域284、第5領域285、および、第6領域286に分けて説明する。以下に第4領域284~第6領域286について具体的に説明する。
【0033】
図4に示すように第4領域284と第5領域285はx方向に離間して並んでいる。第6領域286は第4領域284と第5領域285の間に設けられている。
【0034】
そして第4領域284~第6領域286それぞれに第2めっき260が設けられている。以下説明を簡便とするために第4領域284に設けられる第2めっき260を第1対向めっき261と示す。第5領域285に設けられる第2めっき260を第2対向めっき262と示す。第6領域286に設けられる第2めっき260を第3対向めっき263と示す。なお、図4の正面図はターミナル400を第2ターミナル面400b側から見た時の正面図である。
【0035】
なお第1対向めっき261と第2対向めっき262が対向部に相当する。第3対向めっき263は介在部に相当する。
【0036】
図3図5に示すように第4領域284はz方向で第1領域281の一部と対向している。第5領域285はz方向で第2領域282の一部と対向している。第6領域286は第1領域281の一部と第2領域282の一部と第3領域283それぞれとz方向で対向している。なお、図5においては後述の第1凹凸部263aと第1保護部241との位置関係を明瞭にするために、半導体素子200に第2ターミナル面400bを重ねた図を示している。
【0037】
それに伴って第1対向めっき261はz方向で第1エミッタ電極211の一部と対向している。第2対向めっき262はz方向で第2エミッタ電極212の一部と対向している。第3対向めっき263は第1エミッタ電極211と第2エミッタ電極212と第1保護部241と第1ゲートライナ231それぞれの一部とz方向で重なる態様で対向している。
【0038】
また第3対向めっき263の第1保護部241側の表面には、図6に示すようにz方向に凹凸する第1凹凸部263aが形成されている。第1凹凸部263aは第3対向めっき263の第1保護部241側の表面に連続して形成されている。なお、第1凹凸部263aは凹凸形状に相当する。
【0039】
第1凹凸部263aは第3対向めっき263の第1保護部241側の表面にレーザーを照射することで作成される。第3対向めっき263の第1保護部241側の表面はレーザーが照射されると溶融し、気化する。そしてその部位が凹になることで表面に第1凹凸部263aが形成される。なお、第3対向めっき263はターミナル400よりも融点が低くなっている。レーザーによって第3対向めっき263の融点を越える温度が印加される。これによって第3対向めっき263が溶融される。
【0040】
第3対向めっき263は表面に第1凹凸部263aが形成されることによって濡れ性が低くなっている。そのために第1凹凸部263aは第1対向めっき261と第2対向めっき262それぞれよりもはんだ300に濡れにくくなっている。より具体的に言えば、第1凹凸部263aは、第1対向めっき261と第2対向めっき262それぞれよりも後述の第1接合はんだ311と後述の第2接合はんだ312それぞれに濡れにくくなっている。
【0041】
また上記した第3めっき270にも第3対向めっき263と同様に連結ターミナル面400cに直交する方向に凹凸する第2凹凸部270aが形成されている。第2凹凸部270aは第3めっき270の連結ターミナル面400cから離間した側の表面に連続して形成されている。
【0042】
第3めっき270は表面に第2凹凸部270aが形成されることによって濡れ性が低くなっている。そのために第2凹凸部270aは、第1めっき250と第1対向めっき261と第2対向めっき262とそれぞれよりもはんだ300に濡れにくくなっている。より具体的に言えば、第2凹凸部270aは、第1めっき250と第1対向めっき261と第2対向めっき262それぞれよりも第2はんだ320と後述の第1接合はんだ311と後述の第2接合はんだ312それぞれに濡れにくくなっている。はんだ300の詳細については後で説明する。
【0043】
次にヒートシンクについて説明する。図2に示すように第1ヒートシンク500はz方向に厚さの薄い扁平形状を成している。第1ヒートシンク500は半導体素子200の第2主面200b側に設けられている。
【0044】
第1ヒートシンク500には、図1に示す第1主端子710が連なっている。第1主端子710とは半導体素子200のコレクタ電極220に電気的に接続される端子700のことである。
【0045】
第1ヒートシンク500は、半導体素子200に形成されたトランジスタの熱を半導体素子200の外部に放熱する放熱機能と、コレクタ電極220と第1主端子710とを電気的に中継する機能を有している。第1ヒートシンク500は、ターミナル400同様、熱伝導性および電気伝導性に優れる例えば銅などの金属部材を用いて形成されている。
【0046】
第2ヒートシンク600も同様にz方向に厚さの薄い扁平形状を成している。図2に示すように第2ヒートシンク600は半導体素子200の第1主面200a側に設けられている。
【0047】
第2ヒートシンク600には、第2主端子720が連なっている。第2主端子720とは半導体素子200のエミッタ電極210に電気的に接続される端子700のことである。
【0048】
第2ヒートシンク600は、半導体素子200に形成されたトランジスタの熱を半導体素子200の外部に放熱する放熱機能と、エミッタ電極210と第2主端子720とを電気的に中継する機能を有している。第2ヒートシンク600は、ターミナル400および第1ヒートシンク500同様、熱伝導性および電気伝導性に優れる例えば銅などの金属部材を用いて形成されている。
【0049】
次にはんだ300について説明する。はんだ300は第1はんだ310と第2はんだ320と第3はんだ330を有している。なお、第1はんだ310ははんだ部材に相当する。
【0050】
第1はんだ310がエミッタ電極210と第2めっき260の間に設けられている。より具体的に言えば第1はんだ310は、第1エミッタ電極211と第1対向めっき261の間に設けられる第1接合はんだ311と、第2エミッタ電極212と第2対向めっき262の間に設けられる第2接合はんだ312に区画される。
【0051】
第1エミッタ電極211と第1対向めっき261が第1接合はんだ311を介して電気的および機械的に接合されている。第2エミッタ電極212と第2対向めっき262が第2接合はんだ312を介して電気的および機械的に接合されている。
【0052】
第2はんだ320が第1めっき250と第2ヒートシンク600の間に設けられている。第1めっき250と第2ヒートシンク600が第2はんだ320を介して電気的および機械的に接合されている。
【0053】
第3はんだ330がコレクタ電極220と第1ヒートシンク500の間に設けられている。コレクタ電極220と第1ヒートシンク500が第3はんだ330を介して電気的および機械的に接合されている。
【0054】
<第1はんだの接触角>
図5および図6に示すように、第1凹凸部263aの第1エミッタ電極211側の端が、第1保護部241の第1エミッタ電極211側の端よりもx方向で第1エミッタ電極211側に位置している。
【0055】
第1凹凸部263aの第2エミッタ電極212側の端が、第1保護部241の第2エミッタ電極212側の端よりもx方向で第2エミッタ電極212側に位置している。
【0056】
第1凹凸部263aのx方向の長さL1が、第1保護部241のx方向の長さL2よりも長くなっている。
【0057】
さらに言えば、第1凹凸部263aのz方向の投影領域内に第1保護部241のターミナル400とz方向で対向する部位のすべてが含まれている。
【0058】
上記したように第1凹凸部263aと第1保護部241が、第1接合はんだ311と第2接合はんだ312それぞれに濡れにくくなっている。
【0059】
そのために図6に示すように第1接合はんだ311の第1保護部241側の部位と第1エミッタ電極211との接触角が鋭角になっている。第2接合はんだ312の第1保護部241側の部位と第2エミッタ電極212との接触角が鋭角になっている。
【0060】
また図5および図6に示すように半導体素子200のz方向の投影領域内にターミナル400のすべてが含まれている。さらに言えば、半導体素子200における第1エミッタ電極211と第2エミッタ電極212と第1保護部241を併せた領域のz方向の投影領域内にターミナル400のすべてが含まれている。
【0061】
上記したように第1ターミナル面400aと第2ターミナル面400bを連結する4つの連結ターミナル面400cそれぞれには、第1接合はんだ311と第2接合はんだ312と第2はんだ320それぞれに濡れにくい第2凹凸部270aが形成されている。
【0062】
そのために図6に示すように第1接合はんだ311の第2保護部242側の部位と第1エミッタ電極211との接触角が鋭角になっている。第2接合はんだ312の第2保護部242側の部位と第2エミッタ電極212との接触角が鋭角になっている。
【0063】
第1接合はんだ311と第2接合はんだ312それぞれが略四角錘台を成している。すなわち第1保護部241と第1凹凸部263aによって第1はんだ310が第1接合はんだ311と第2接合はんだ312が区画されている。
【0064】
そのために第1接合はんだ311と第2接合はんだ312とが架橋されにくくなっている。第1接合はんだ311と第2接合はんだ312が電気的および機械的に接合されにくくなっている
【0065】
<第1ヒートシンクと第2ヒートシンクの間の導電経路の電気抵抗>
図2に示すように第1ヒートシンク500と第2ヒートシンク600は、第1はんだ310、半導体素子200、第2はんだ320、ターミナル400、および、第3はんだ330を介して電気的に接続されている。
【0066】
またこれまでに説明したように第1凹凸部263aは第1接合はんだ311と第2接合はんだ312それぞれに濡れにくくなっている。ターミナルにおける第1凹凸部263aの設けられた部位に第1接合はんだ311と第2接合はんだ312が電気的および機械的に接合されにくくなっている
そのためにターミナル400の第1凹凸部263aの設けられる部位で、第1ターミナル面400aと第2ターミナル面400b間に流れる電流が流れにくくなっている。第1ターミナル面400aと第2ターミナル面400b間の電気抵抗が高くなっている。
【0067】
そのための工夫として図6に示すように第1対向めっき261のx方向の長さL3と第2対向めっき262のx方向の長さL4の和が、第1凹凸部263aのx方向の長さL1よりも長くなっている。これによれば第1ターミナル面400aと第2ターミナル面400b間の電気抵抗が高くなりすぎることが抑制されやすくなっている。
【0068】
さらに第1対向めっき261のx方向の長さL3と第2対向めっき262のx方向の長さL4それぞれよりも、第1凹凸部263aのx方向の長さL1が短くなっていてもよい。
【0069】
(第2実施形態)
第1実施形態ではエミッタ電極210が第1保護部241によって2つに区画された形態について説明したが、エミッタ電極210がy方向に延びる複数の第1保護部241によって2つ以上に区画されていてもよい。それに伴って複数の第1保護部241それぞれに第1ゲートライナ231が被覆保護されていてもよい。
【0070】
図7および図8に示すように、第2実施形態では、複数の第1保護部241のうちの1つによって第1エミッタ電極211と第2エミッタ電極212それぞれがx方向にさらに2つに区画されている。
【0071】
x方向に2つに区画されたうちの1つの第1エミッタ電極211と、もう1つの第1エミッタ電極211の間の第1保護部241に、第1ゲートライナ231が配策されている。
【0072】
同様にx方向に2つに区画されたうちの1つの第2エミッタ電極212と、もう1つの第2エミッタ電極212の間の第1保護部241に、第1ゲートライナ231が配策されている。
【0073】
さらに図8に示すように第2ターミナル面400bにおける複数の第1保護部241それぞれにz方向で対向する部位に、z方向に凹凸するとともに連続する複数の第1凹凸部263aが形成されている。なお、図8においては第1凹凸部263aと第1保護部241との位置関係を明瞭にするために、半導体素子200に第2ターミナル面400bを重ねた図を示している。
【0074】
複数の第1凹凸部263aそれぞれのx方向の長さL1が、複数の第1保護部241それぞれのx方向の長さL2よりも長くなっている。そのために第2実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0075】
なお、第2実施形態においては複数の第1保護部241によってエミッタ電極210がx方向で4つに区画された例について具体的に説明したが、エミッタ電極210の区画される個数は4つに限定されない。エミッタ電極210がx方向で4つ以上に区画されていてもよい。
【0076】
(第3実施形態)
また図9および図10に示す第3実施形態のようにy方向に連続する第1保護部241の他にx方向に連続する第1保護部241を有していてもよい。x方向に連続する第1保護部241によって第1エミッタ電極211と第2エミッタ電極212それぞれがy方向にさらに2つに区画されていてもよい。それに伴ってx方向に連続する第1保護部241に第1ゲートライナ231が被覆保護されていてもよい。
【0077】
また図10に示すように第2ターミナル面400bのx方向に連続する第1保護部241とy方向に連続する第1保護部241それぞれのz方向で対向する部位に、x方向に連続する第1凹凸部263aとy方向に連続する第1凹凸部263aが形成されている。なお、図10においては第1凹凸部263aと第1保護部241との位置関係を明瞭にするために、半導体素子200に第2ターミナル面400bを重ねた図を示している。
【0078】
y方向に連続する第1凹凸部263aのx方向の長さL1が、y方向に連続する第1保護部241のうちのy方向に連続する第1保護部241のx方向の長さL2よりも長くなっている。x方向に連続する第1凹凸部263aのy方向の長さL5が、x方向に連続する第1保護部241のy方向の両端の長さL6よりも長くなっている。そのために第3実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0079】
(第4実施形態)
第1実施形態~第3実施形態においては第1凹凸部263aのz方向の投影領域内に第1保護部241のターミナル400に対向する部位のすべてが含まれる形態について説明した。しかしながら図11および図12に示す第4実施形態に示すように、第1凹凸部263aのz方向の投影領域内に第1保護部241のすべてが含まれていてもよい。なお、図12においては第2ターミナル面400bに第1エミッタ電極211と第2エミッタ電極212の輪郭を重ねた図を示している。
【0080】
その場合、ターミナル400のz方向の投影領域に半導体素子200のすべてが含まれている。さらに第1対向めっき261と第2対向めっき262と第3対向めっき263を併せた部位を環状に囲む第4対向めっき264が第2ターミナル面400bに設けられている。
【0081】
第4対向めっき264にはz方向に凹凸する第3凹凸部264aが形成されている。第3凹凸部264aは第4対向めっき264の第2保護部242側の表面に連続して形成されている。第3凹凸部264aが、第1対向めっき261と第2対向めっき262それぞれよりも第1接合はんだ311と第2接合はんだ312それぞれに濡れにくくなっている。
【0082】
そのために第1接合はんだ311の連結ターミナル面400c側と第1エミッタ電極211の接触角が鋭角になるようになっている。第2接合はんだ312の連結ターミナル面400c側と第2エミッタ電極212の接触角が鋭角になるようになっている。連結ターミナル面400cに第2凹凸部270aが形成されていなくとも第1接合はんだ311と第2接合はんだ312それぞれが略四角錘台を成すようになっている。第4実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0083】
<作用効果>
これまでに説明したように第1凹凸部263aと第1保護部241が、第1接合はんだ311と第2接合はんだ312それぞれに濡れにくく、第1はんだ310が第1接合はんだ311と第2接合はんだ312に区画されている。
【0084】
そのために第1接合はんだ311と第2接合はんだ312が半導体素子200とターミナル400の間で架橋されにくくなっている。それに伴って第1はんだ310のz方向の厚さが局所的に薄くなることが抑制されやすくなっている。
【0085】
これによれば第1はんだ310に応力集中することが抑制されやすくなっている。第1はんだ310にクラックが生じることが抑制されやすくなっている
【0086】
これまでに説明したように第1凹凸部263aのz方向の投影領域内に第1保護部241のターミナル400とz方向で対向する部位のすべてが含まれている。
【0087】
第1凹凸部263aのx方向の長さL1が、第1保護部241のx方向の長さL2よりも長くなっている。
【0088】
そのために第1接合はんだ311の第1保護部241側の部位と第1エミッタ電極211との接触角と、第2接合はんだ312の第1保護部241側の部位と第2エミッタ電極212との接触角それぞれが鋭角になっている。
【0089】
また半導体素子200と半導体素子200に設けられたはんだ300の接触角が鋭角であるとき、接触角が鈍角であるときよりも、半導体素子200にかかる応力が小さくなりやすくなる。
【0090】
これによれば、第1接合はんだ311から第1エミッタ電極211にかかる応力が小さくなりやすくなっている。第1エミッタ電極211にクラックが生じることが抑制されやすくなっている。
【0091】
同様に第2接合はんだ312から第2エミッタ電極212にかかる応力が小さくなりやすくなっている。第2エミッタ電極212にクラックが生じることが抑制されやすくなっている。
【0092】
まとめて言えば、第1はんだ310からエミッタ電極210にかかる応力が小さくなりやすくなっている。エミッタ電極210にクラックが生じることが抑制されやすくなっている。
【0093】
これまでに説明したように第1凹凸部263aは第1接合はんだ311と第2接合はんだ312それぞれに濡れにくくなっている。第1凹凸部263aのように第1はんだ310に濡れない領域があると、第1ターミナル面400aと第2ターミナル面400b間の電気抵抗および熱抵抗が高くなる。
【0094】
そのための工夫として、第1対向めっき261のx方向の長さL3と第2対向めっき262のx方向の長さL4の和が、第1凹凸部263aのx方向の長さL1よりも長くなっている。これによれば第1ターミナル面400aと第2ターミナル面400b間の電気抵抗および熱抵抗が高くなりすぎることが抑制されやすくなっている。
【0095】
これまでに説明したように、第3めっき270の連結ターミナル面400cから離間した側の表面には、第1はんだ310と第2はんだ320それぞれに濡れにくい第2凹凸部270aが形成されている。
【0096】
そのために第1はんだ310と第2はんだ320それぞれが一方から他方に向かって連結ターミナル面400cを濡れ拡がりにくくなっている。
【0097】
それに伴って例えば第2はんだ320が第1はんだ310側に流れ込み、第1はんだ310の量が増えることで、応力によってエミッタ電極210にクラックが生じることが抑制されやすくなっている。
【0098】
(第1変形例)
これまでの実施形態においては第1凹凸部263aのx方向の長さL1と第1保護部241のx方向の長さL2の長さ関係に着目して、第1接合はんだ311と第2接合はんだ312それぞれのエミッタ電極210との接触角について説明した。
【0099】
しかしながら他にも図13に示すように、第1凹凸部263aのx方向の長さL1が、第1凹凸部263aと第1保護部241のz方向の離間距離L7の2倍と第1保護部241のx方向の長さL2の和以上になっていてもよい。
【0100】
これによれば第1接合はんだ311の第1保護部241側の部位と第1エミッタ電極211との接触角が45度以下になりやすくなっている。第2接合はんだ312の第1保護部241側の部位と第2エミッタ電極212との接触角が45度以下になりやすくなっている。
【0101】
また図14に示すように半導体素子200と半導体素子200に設けられたはんだ300の接触角が小さくなるに伴い、半導体素子200の寿命が延長されやすくなる。
【0102】
これによれば、第1接合はんだ311と第1エミッタ電極211との接触角と第2接合はんだ312と第2エミッタ電極212との接触角が45度以下の時、半導体素子200の寿命が一桁程度延長されやすくなっている。
【0103】
(第2変形例)
これまでに説明した実施形態においては第1凹凸部263aのz方向の投影領域内に第1保護部241のターミナル400に対向する部位が含まれる形態について説明した。しかしながら図15に示すように第1凹凸部263aのz方向の投影領域内に第1保護部241が含まれていなくてもよい。図15に示すように第3対向めっき263の第1対向めっき261側の一端と第2対向めっき262側に他端それぞれに部分的に第1凹凸部263aが形成されていてもよい。
【0104】
第1保護部241と第1凹凸部263aによって図15に示すように第1はんだ310が第1接合はんだ311と第2接合はんだ312に区画されていればよい。第1接合はんだ311と第2接合はんだ312が区画されていれば、第1はんだ310の厚さがz方向で局所的に薄くなることが抑制されやすくなっている。
【0105】
(第3変形例)
これまでに説明した実施形態においては第1凹凸部263aのx方向の長さL1が、第1保護部241のx方向の長さL2よりも長くなっている形態について説明した。しかしながら図16に示すように第1凹凸部263aのx方向の長さが、第1保護部241のx方向の長さと同じになっていてもよい。
【0106】
その場合、第1接合はんだ311の第1保護部241側の部位と第1エミッタ電極211との接触角が直角になっている。第2接合はんだ312の第1保護部241側の部位と第2エミッタ電極212との接触角が直角になっている。第1接合はんだ311と第2接合はんだ312が半導体素子200とターミナル400の間で架橋されにくくなっている。第1はんだ310の厚さがz方向で局所的に薄くなることが抑制されやすくなっている。
【0107】
(第4変形例)
また図17に示すように第1凹凸部263aのx方向の長さL1が、第1保護部241のx方向の長さL2よりも短くなっていてもよい。その場合においても第1接合はんだ311と第2接合はんだ312が半導体素子200とターミナル400の間で架橋されにくくなっている。第1はんだ310の厚さがz方向で局所的に薄くなることが抑制されやすくなっている。
【0108】
(第5変形例)
図示しないが、第1凹凸部263aのz方向の投影領域内に第1保護部241の一部が含まれていても良い。それに伴って例えば、第1接合はんだ311の第1保護部241側の部位と第1エミッタ電極211との接触角が鋭角で、第2接合はんだ312の第1保護部241側の部位と第2エミッタ電極212との接触角が鈍角になっていてもよい。
【0109】
(第6変形例)
図示しないが、第2ターミナル面400bに第3対向めっき263に代わりにはんだ300濡れにくいポリイミドなどを含む被覆膜が設けられていてもよい。被覆膜と第1保護部241によって第1はんだ310が第1接合はんだ311と第2接合はんだ312に区画されていればよい。
【0110】
(その他の変形例)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範ちゅうや思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0111】
200…半導体素子、200a…第1主面、200b…第2主面、210…エミッタ電極、220…コレクタ電極、230…ゲートライナ、240…保護膜、241…第1保護部、261…第1対向めっき、262…第2対向めっき、263…第3対向めっき、263a…第1凹凸部、310…第1はんだ、400…ターミナル、400b…第2ターミナル面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17