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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 59/042 20060101AFI20241210BHJP
   A01B 59/043 20060101ALI20241210BHJP
   B60K 17/28 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A01B59/042 J
A01B59/043 Z
A01B59/042 Z
B60K17/28 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021108967
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006392
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 大輔
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-187023(JP,A)
【文献】特開平11-253006(JP,A)
【文献】特開2017-212916(JP,A)
【文献】特開平11-346501(JP,A)
【文献】実開昭60-051920(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 71/00-71/08
A01B 59/00-59/06
A01B 35/00-35/32
B60K 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車輪(2)に駆動力を伝達するトランスミッションケース(5)から外部に動力を取り出すPTO軸(6)を設け、走行車体(1)後部に作業機(4)を上下作動する昇降リンク機構(L)を設けた走行車両において、該昇降リンク機構(L)と作業機(4)の間にPTO軸(6)から入力された動力を入力された位置よりも上方で出力する動力移設機構(50)を設け、
昇降リンク機構(L)に連結機構(3)を装着し、該連結機構(3)に作業機(4)を着脱自在に装着すると共に、連結機構(3)に動力移設機構(50)を設け、
連結機構(3)を走行車体(1)側に連結される前方取付ヒッチ(30)と作業機(4)側に連結される後方取付ヒッチ(40)で構成し、後方取付ヒッチ(40)の後方ヒッチ部(44,45)を前方取付ヒッチ(30)の前方ヒッチ部(36,37)よりも上方に設けたことを特徴とする業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後部に作業機を装着する作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果樹園などで樹木の下を走行するため、立設したテールパイプが作業時に樹木の枝に接触しないよう、テールパイプの上端を走行車体よりも低くし、タイヤ径の小さい車輪を装着して車体を低くした作業車両がある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6531692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車体を低くした作業車両にも、通常の作業車両と同様にPTOと作業機連結リンクが備えられ、種々の作業機を装着できるが、取り付け位置が通常よりも低いため、接地したときの角度などが異なり、専用の作業機が必要であった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、地上高を低く設定した作業車両において、通常の作業車両に用いられる作業機を装着して作業可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、走行車輪(2)に駆動力を伝達するトランスミッションケース(5)から外部に動力を取り出すPTO軸(6)を設け、走行車体(1)後部に作業機(4)を上下作動する昇降リンク機構(L)を設けた走行車両において、該昇降リンク機構(L)と作業機(4)の間にPTO軸(6)から入力された動力を入力された位置よりも上方で出力する動力移設機構(50)を設け、
昇降リンク機構(L)に連結機構(3)を装着し、該連結機構(3)に作業機(4)を着脱自在に装着すると共に、連結機構(3)に動力移設機構(50)を設け、
連結機構(3)を走行車体(1)側に連結される前方取付ヒッチ(30)と作業機(4)側に連結される後方取付ヒッチ(40)で構成し、後方取付ヒッチ(40)の後方ヒッチ部(44,45)を前方取付ヒッチ(30)の前方ヒッチ部(36,37)よりも上方に設けたことを特徴とする作業車両である。
本発明に関連する第1の発明は、走行車輪2に駆動力を伝達するトランスミッションケース5から外部に動力を取り出すPTO軸6を設け、走行車体1後部に作業機4を上下作動する昇降リンク機構Lを設けた走行車両において、該昇降リンク機構Lと作業機4の間にPTO軸6から入力された動力を入力された位置よりも上方で出力する動力移設機構50を設けた作業車両である。
【0007】
本発明に関連する第1の発明によれば、昇降リンク機構Lと作業機4の間にPTO軸6から入力された動力を入力された位置よりも上方で出力する動力移設機構50を設けたので、地上高の低い作業車両に専用品でない一般的な作業機4を装着できる。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、昇降リンク機構Lに連結機構3を装着し、該連結機構3に作業機4を着脱自在に装着すると共に、連結機構3に動力移設機構50を設けた本発明に関連する第1の発明の作業車両である。
【0009】
本発明に関連する第2の発明によれば、昇降リンク機構Lに連結機構3を装着し、該連結機構3に作業機4を着脱自在に装着すると共に、連結機構3に動力移設機構50を設けたので、地上高の低い作業車両に専用品でない一般的な作業機4を簡単に装着できる。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、連結機構3を走行車体1側に連結される前方取付ヒッチ30と作業機4側に連結される後方取付ヒッチ40で構成し、後方取付ヒッチ40の後方ヒッチ部44,45を前方取付ヒッチ30の前方ヒッチ部36,37よりも上方に設けた本発明に関連する第2の発明の作業車両である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明における実施の形態のトラクタ後部に作業機が装着された状態を示す側面図である。
図2】本発明における実施の形態のトラクタ後部に作業機を装着する作用説明用側面図である。
図3】本発明における実施の形態のトラクタ後部に作業機を装着する作用説明用斜視図である。
図4】本発明における実施の形態のトラクタの要部の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態の一実施例として示す作業車両の一種である低床仕様のトラクタ(果樹園などで樹木の下を走行するため、タイヤ径の小さい車輪を装着して車体を低くして地上高を低く設定したトラクタ)を説明する。以下においては、機体の前進方向を基準に、前後、左右と謂う。
【0013】
トラクタは、走行車輪としての左右前輪及び左右後輪2にて進行し、後部に連結機構3を介して作業機としてのロータリ耕耘機4を着脱自在に装着する。
【0014】
トラクタの走行車体1は、前部に搭載したエンジンの駆動力をトランスミッションケース5にて変速して左右前輪及び左右後輪2に伝達して駆動回転し進行すると共に、トランスミッションケース5にて駆動力を分岐して外部に駆動力を取り出すPTO軸6に伝達する。
【0015】
走行車体1の後部には、トランスミッションケース5上に左右のリフトアーム7を有する油圧装置(作業機昇降装置)8を備えると共に、左右後輪2を覆う左右フェンダ9を備え、左右フェンダ9間に運転席10が備えられ、トランスミッションケース5の後端からPTO軸6が後方突出されている。PTO軸6には、両端にユニバーサルジョイントを設けたドライブシャフト6aの基端側ユニバーサルジョイントが連結されている。
【0016】
そして、走行車体1の後端上部には、機体左右方向中央位置にアッパーリンクベース11を固定し、該アッパーリンクベース11の後端部にアッパーリンク12の基部を上下回動自在に枢支し、アッパーリンク12の先端に球接手12aを設けている。
【0017】
また、走行車体1の後端下部には、左右ロワーリンク13の基部を上下回動自在に枢支し、左右ロワーリンク13の先端に各々球接手13aを設けている。
【0018】
そして、左右ロワーリンク13の中途部と上記左右リフトアーム7を各々左右リフトロッド14にて連結し、油圧装置8による左右リフトアーム7の上下作動にて左右ロワーリンク13が上下作動し、連結機構3を介して装着しているロータリ耕耘機4を上下作動する。なお、上記アッパーリンク12と左右ロワーリンク13にて昇降リンク機構Lが構成される。
【0019】
ロータリ耕耘機4は、軸先端部にスプラインを形成した入力軸15を前方突出したギヤケース16から左右にサポートアーム17が突出され、左右サポートアーム17の外端に伝動ケース18及びサイドフレーム19が固定されてロータリ機枠20が構成されている。伝動ケース18及びサイドフレーム19の下部に爪軸が回転自在に支持され、この爪軸に多数本の耕耘爪が取り付けられて、ロータリ耕耘部21が構成されている。ロータリ耕耘部21の上部、両側部及び後部を覆う耕耘カバー22が設けられている。
【0020】
そして、ギヤケース16に上部マスト23が固着され、左右サポートアーム17には、前方に突出した左右連結ブラケット24が左右一対設けられている。
【0021】
上部マスト23の上端部には、左右方向のピンにより構成された上係合部25が設けられている。左右一対の左右連結ブラケット24には、左右方向にピンにより構成した左右下係合部26が左右一対設けられている。
【0022】
連結機構3は、前方取付ヒッチとしての標準仕様の作業機を装着する標準取付ヒッチ30と後方取付ヒッチとしての変換取付ヒッチ40にて構成される。
【0023】
標準取付ヒッチ30は、逆U字状の標準ヒッチフレーム31中央上部に設けた走行車体1側上部装着ステー32の係合孔32aにアッパーリンク12先端の球接手12aをアッパーリンクピン33にて連結し、標準ヒッチフレーム31下部の左右に設けた左右ロワーリンクピン34に左右ロワーリンク13の先端の球接手13aを各々ロワーリンクピン35で連結して走行車体1に装着している。
【0024】
そして、標準取付ヒッチ30には、標準ヒッチフレーム31中央上部に前方ヒッチ部を構成する上向き凹状の標準上連結部36を設け、標準ヒッチフレーム31下部の左右に前方ヒッチ部を構成する左右下部連結部37を設けて、一般的なクイックヒッチ(ワンタッチヒッチ)を構成している。
【0025】
なお、左右下部連結部37は、標準ヒッチフレーム31に固定された下向きフック状の上係合体37aと基部が枢支軸にて枢支されて先端側が上下回動する上向きフック状の下係合体37bで構成されている。下係合体37bは、付勢部材にて先端側が上方に回動する方向に付勢され、先端側端面に誘導カム面が形成されており、左右下部連結部37に後方からピン体(本実施形態では、後述の変換取付ヒッチ40の左右係合ピン43))が接当してくると該誘導カム面にて下係合体37bが下方に回動し、ピン体を上係合体37aと下係合体37bが保持する状態となる。そして、該保持状態は、解除レバー38を操作して下係合体37bを下方に回動させると解除される。
【0026】
また、標準ヒッチフレーム31下部中央には、ドライブシャフト6a先端側のユニバーサルジョイントを保持する保持部39が設けられている。
【0027】
変換取付ヒッチ40は、逆U字状の変換ヒッチフレーム41中央上部に設けた上部装着ステー42の装着ピン42aを標準取付ヒッチ30の標準上連結部36の凹部に上から係合させ、変換ヒッチフレーム41下部の左右に設けた左右係合ピン43を標準取付ヒッチ30の左右下部連結部37に係合させて標準取付ヒッチ30の後部に装着している。
【0028】
そして、変換取付ヒッチ40には、変換ヒッチフレーム41中央上部に後方ヒッチ部を構成する上向き凹状の変換上連結部44を設け、変換ヒッチフレーム41下部の左右に後方ヒッチ部を構成する左右下部連結部45を設けて、一般的なクイックヒッチ(ワンタッチヒッチ)を構成している。
【0029】
なお、左右下部連結部45は、変換ヒッチフレーム41に固定された下向きフック状の上係合体46aと基部が枢支軸にて枢支されて先端側が上下回動する上向きフック状の下係合体46bで構成されている。下係合体46bは、付勢部材にて先端側が上方に回動する方向に付勢され、先端側端面に誘導カム面が形成されており、左右下部連結部45に後方からピン体であるロータリ耕耘機4の左右下係合部26が接当してくると該誘導カム面にて下係合体46bが下方に回動し、左右下係合部26を上係合体46aと下係合体46bが保持する状態となる。そして、該保持状態は、解除レバー47を操作して下係合体46bを下方に回動させると解除される。
【0030】
また、変換ヒッチフレーム41中央には、動力移設機構50が設けられている。
【0031】
動力移設機構50は、変換ヒッチフレーム41に固定された伝動ケース51と、伝動ケース51の下部にベアリングにより回転自在に支持されて伝動ケース51の前方に向けて延びる軸先端部にスプラインを形成した入力軸52aを有する入力ベベルギア52と、伝動ケース51の上部にベアリングにより回転自在に支持されて入力ベベルギア52と噛合する出力ベベルギア53から構成される。
【0032】
また、出力ベベルギア53の軸心には、スプライン係合孔53aを形成し、該スプライン係合孔53aに伝動ケース51後壁に設けた孔からロータリ耕耘機4の入力軸15をスプライン係合できるように構成している。
【0033】
そして、標準取付ヒッチ30に変換取付ヒッチ40を装着した状態では、変換取付ヒッチ40の変換上連結部44及び左右下部連結部45よりなる後方ヒッチ部が標準取付ヒッチ30の標準上連結部36及び左右下部連結部37よりなる前方ヒッチ部よりも高い位置になるように構成しており、変換取付ヒッチ40の後方ヒッチ部の地上高が標準的な標準のトラクタに標準取付ヒッチ30を装着した場合のヒッチ部と同じ高さになる。
【0034】
また、動力移設機構50は、入力軸52aをドライブシャフト6aの先端側ユニバーサルジョイントにスプライン係合することにより、低い位置のドライブシャフト6aの駆動力を入力ベベルギア52及び出力ベベルギア53を介して高い位置のロータリ耕耘機4の入力軸15に伝達することができる。
【0035】
ロータリ耕耘機4は、その上係合部25を変換取付ヒッチ40の変換上連結部44の凹部に上から係合させ、左右下係合部26を各々左右下部連結部45に係合させて変換取付ヒッチ40の後部に装着し、入力軸15を動力移設機構50の出力ベベルギア53のスプライン係合孔53aにスプライン係合させてPTO軸6からの駆動力を入力する。
【0036】
以上要するに、低床仕様のトラクタに標準取付ヒッチ30及び変換取付ヒッチ40よりなる連結機構3を装着すると、連結機構3の変換取付ヒッチ40の変換上連結部44及び左右下部連結部45よりなる後方ヒッチ部が地上高が標準的な標準のトラクタに標準取付ヒッチ30を装着した場合のヒッチ部と同じ高さになり、且つ、動力移設機構50により低い位置のドライブシャフト6aの駆動力を地上高が標準的な標準のトラクタに標準取付ヒッチ30を装着した場合の高い位置になるので、低床仕様のトラクタに標準仕様のロータリ耕耘機4を装着して適正な耕耘作業が行える。
【0037】
よって、水田や畑で用いる標準仕様のトラクタに装着する標準仕様のロータリ耕耘機4を低床仕様のトラクタに装着できて適正な耕耘作業が行えるので、低床仕様用の専用の作業機を必要とせず、安価な農作業形態を実現できる。
【0038】
なお、上記実施形態では、作業機としてロータリ耕耘機4を用いた例を示したが、他の草刈り作業機等の如何なる作業機でも良い。
【0039】
また、作業機によっては低床仕様用の作業機しかない場合もあるので、低床仕様用の作業機をトラクタに装着する場合は、低床仕様のトラクタに標準取付ヒッチ30のみを装着して、標準取付ヒッチ30に低床仕様用の作業機を装着して作業を行えばよい。
【符号の説明】
【0040】
1 走行車体
2 走行車輪(後輪)
3 連結機構
4 作業機(ロータリ耕耘機)
5 トランスミッションケース
6 PTO軸
30 前方取付ヒッチ(標準取付ヒッチ)
36 前方ヒッチ部(標準上連結部)
37 前方ヒッチ部(左右下部連結部)
40 後方取付ヒッチ(変換取付ヒッチ)
44 後方ヒッチ部(変換上連結部)
45 後方ヒッチ部(左右下部連結部)
50 動力移設機構
L 昇降リンク機構
図1
図2
図3
図4