(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】埋設物探査装置
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G01V3/08 D
(21)【出願番号】P 2021110606
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 亮志
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 康平
(72)【発明者】
【氏名】澤江 流弥
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-337337(JP,A)
【文献】特開2020-134492(JP,A)
【文献】特開2001-054084(JP,A)
【文献】特開2009-170963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物内に含まれる埋設物を検出する埋設物探査装置であって、
本体部と、
前記本体部に対して着脱可能な状態で取り付けられ、前記埋設物を検出する検出部を有するアタッチメント部と、
前記本体部に設けられ、前記検出部における検出結果を探査画像に変換する探査画像変換処理部と、
前記本体部に設けられ、各種情報を表示する第1表示画面を有する第1表示部と、
前記アタッチメント部に設けられ、各種情報を表示する第2表示画面を有する第2表示部と、
前記第1表示部および前記第2表示部の表示を制御する表示制御部と、
を備えている埋設物探査装置。
【請求項2】
前記第1表示画面と前記第2表示画面とは、前記本体部に前記アタッチメント部が装着された状態において、前記本体部および前記アタッチメント部の同じ側の面に設けられている、
請求項1に記載の埋設物探査装置。
【請求項3】
前記第1表示画面と前記第2表示画面とは、前記本体部に前記アタッチメント部が装着された状態において、隣接配置されている、
請求項2に記載の埋設物探査装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記第1表示画面と前記第2表示画面とを合わせた大型表示画面に各種情報を表示するように、前記第1表示部および前記第2表示部を制御する、
請求項3に記載の埋設物探査装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記大型表示画面に前記探査画像を表示するように、前記第1表示部および前記第2表示部を制御する、
請求項4に記載の埋設物探査装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記第1表示画面と前記第2表示画面とに互いに異なる情報を表示させる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の埋設物探査装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記第1表示画面あるいは前記第2表示画面に前記探査画像の全体を表示し、前記第2表示画面あるいは前記第1表示画面に前記探査画像の一部を拡大した拡大画像を表示するように、前記第1表示部および前記第2表示部を制御する、
請求項6に記載の埋設物探査装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記第1表示画面あるいは前記第2表示画面に前記探査画像を表示し、前記第2表示画面あるいは前記第1表示画面に各種設定を行うメニュー画面を表示するように、前記第1表示部および前記第2表示部を制御する、
請求項6に記載の埋設物探査装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記本体部および前記アタッチメント部のいずれか一方に設けられている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の埋設物探査装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記本体部および前記アタッチメント部の双方に設けられている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の埋設物探査装置。
【請求項11】
前記本体部あるいは前記アタッチメント部の姿勢を検出する姿勢検出部を、さらに備え、
前記表示制御部は、前記姿勢検出部において検出された前記姿勢に応じて、前記第1表示画面および前記第2表示画面に表示させる表示向きを変化させる、
請求項1から10のいずれか1項に記載の埋設物探査装置。
【請求項12】
前記本体部に対して前記アタッチメント部が着脱可能な状態で取り付けられる着脱機構を、さらに備えている、
請求項1から11のいずれか1項に記載の埋設物探査装置。
【請求項13】
前記着脱機構は、前記アタッチメント部が有する前記検出部と前記本体部とが互いに接続される接続位置において、前記本体部に対して前記アタッチメント部を吸着する吸着部を含む、
請求項12に記載の埋設物探査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、壁やコンクリート等に含まれる金属や木材等の埋設物を検出する埋設物探査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、コンクリート内に含まれる鉄筋等の埋設物を検出する装置として、コンクリートの表面を移動させながら、コンクリートの表面に向かって放射した電磁波の反射波の変化に基づいて、埋設物を検出する装置が用いられている。
例えば、特許文献1には、電磁波が埋設物で反射した反射波の信号値を側線に沿って取得したデータを入力する入力部と、電磁波の伝播深さに応じた反射波形の広がりを有する仮想波形テンプレートを生成する生成部と、データの信号値と伝搬深さに応じた形状の仮想波形テンプレートとを共に表示する表示部と、を備えた埋設物探査装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の埋設物探査装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された埋設物探査装置では、位置情報に基づいて検出された埋設物の位置や大きさ等を示す探査画像を2次元で表示する表示部を備えているものの、表示画面の面積が小さいために、使い勝手が悪いという課題があった。
【0005】
また、例えば、各種設定等を行うメニュー画面と埋設物の探査画像とを表示するためには、その都度、表示画面を切り替える必要があり、使い勝手が悪いという課題があった。
本発明の課題は、検出された埋設物等の各種情報を適切に表示することで、使い勝手を向上させることが可能な埋設物探査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る埋設物探査装置は、対象物内に含まれる埋設物を検出する埋設物探査装置であって、本体部と、アタッチメント部と、探査画像変換処理部と、第1表示部と、第2表示部と、表示制御部と、を備えている。アタッチメント部は、本体部に対して着脱可能な状態で取り付けられ、埋設物を検出する検出部を有する。探査画像変換処理部は、本体部に設けられ、検出部における検出結果を探査画像に変換する。第1表示部は、本体部に設けられ、各種情報を表示する第1表示画面を有する。第2表示部は、アタッチメント部に設けられ、各種情報を表示する第2表示画面を有する。表示制御部は、第1表示部および第2表示部の表示を制御する。
【0007】
ここでは、本体部と、本体部に対して着脱可能な状態で取り付けられるアタッチメント部とに、それぞれ別々の表示画面(第1表示画面および第2表示画面)を持つ表示部(第1表示部および第2表示部)が設けられている。
ここで、本発明の埋設物探査装置は、検出部として、例えば、静電容量の変化を検出して埋設物の検出を行う静電容量センサを用いた静電容量式、対象物に対して照射された電磁波を受信して埋設物の検出を行う電磁波式等、様々な方式を採用してもよい。
【0008】
表示制御部は、第1表示部および第2表示部の表示を制御するものであって、本体部およびアタッチメント部のいずれか一方に設けられていてもよいし、本体部およびアタッチメント部の双方にそれぞれ設けられていてもよい。
これにより、例えば、本体部側の第1表示部の第1表示画面と、アタッチメント部側の第2表示部の第2表示画面とを組み合わせて大型画面を形成して表示する、あるいは、第1表示画面と第2表示画面とにそれぞれ別の情報を表示する等、2つの表示画面を必要に応じて適切に切り替えて表示することができる。
この結果、検出された埋設物等の各種情報を適切に表示することで、使い勝手を向上させることができる。
【0009】
第2の発明に係る埋設物探査装置は、第1の発明に係る埋設物探査装置であって、第1表示画面と第2表示画面とは、本体部にアタッチメント部が装着された状態において、本体部およびアタッチメント部の同じ側の面に設けられている。
これにより、本体部およびアタッチメント部にそれぞれ設けられた表示画面(第1表示画面および第2表示画面)が、本体部にアタッチメント部が装着された状態において同じ側の面に設けられているため、2つの表示画面を組み合わせて大型画面化する、2つの表示画面に別々の情報を表示する等の表示制御を実施することができる。
【0010】
第3の発明に係る埋設物探査装置は、第2の発明に係る埋設物探査装置であって、第1表示画面と第2表示画面とは、本体部にアタッチメント部が装着された状態において、隣接配置されている。
これにより、互いに隣接配置された2つの表示画面を組み合わせて大型画面を形成することができる。
【0011】
第4の発明に係る埋設物探査装置は、第3の発明に係る埋設物探査装置であって、表示制御部は、第1表示画面と第2表示画面とを合わせた大型表示画面に各種情報を表示するように、第1表示部および第2表示部を制御する。
これにより、第1表示画面と第2表示画面とを組み合わせて1つの大型画面を形成することで、使用者にとって、例えば、埋設物の位置等を示す探査画像を見やすく表示することができる。
【0012】
第5の発明に係る埋設物探査装置は、第4の発明に係る埋設物探査装置であって、表示制御部は、大型表示画面に探査画像を表示するように、第1表示部および第2表示部を制御する。
これにより、使用者にとって、探査画像に含まれる埋設物の位置や大きさを認識しやすい状態で、探査画像を表示することができる。
【0013】
第6の発明に係る埋設物探査装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る埋設物探査装置であって、表示制御部は、第1表示画面と第2表示画面とに互いに異なる情報を表示させる。
これにより、例えば、第1表示画面に探査画像を表示し、第2表示画面にメニュー画面あるいは探査画像の拡大画像を表示する等、適宜2つの表示画面を切り替えながら表示することができる。
【0014】
第7の発明に係る埋設物探査装置は、第6の発明に係る埋設物探査装置であって、表示制御部は、第1表示画面あるいは第2表示画面に探査画像の全体を表示し、第2表示画面あるいは第1表示画面に探査画像の一部を拡大した拡大画像を表示するように、第1表示部および第2表示部を制御する。
これにより、2つの表示画面の一方に探査画像の全体を表示し、他方にその一部を拡大した拡大画像を表示することで、使用者は、埋設物の位置や大きさ等を容易に認識することができる。
【0015】
第8の発明に係る埋設物探査装置は、第6の発明に係る埋設物探査装置であって、表示制御部は、第1表示画面あるいは第2表示画面に探査画像を表示し、第2表示画面あるいは第1表示画面に各種設定を行うメニュー画面を表示するように、第1表示部および第2表示部を制御する。
これにより、2つの表示画面の一方に探査画像を表示し、他方に各種設定を行うメニュー画面を表示することで、使用者は、探査画像を確認しながら、メニュー画面を介して各種設定を行うことができる。
【0016】
第9の発明に係る埋設物探査装置は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る埋設物探査装置であって、表示制御部は、本体部およびアタッチメント部のいずれか一方に設けられている。
これにより、本体部あるいはアタッチメント部に設けられた表示制御部によって、本体部側の第1表示部と、アタッチメント部側の第2表示部とをそれぞれ制御することができる。
【0017】
第10の発明に係る埋設物探査装置は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る埋設物探査装置であって、表示制御部は、本体部およびアタッチメント部の双方に設けられている。
これにより、本体部およびアタッチメント部にそれぞれ設けられた表示制御部によって、本体部側の第1表示部と、アタッチメント部側の第2表示部とを別々に制御することができる。
【0018】
よって、例えば、アタッチメント部だけを用いて埋設物を探査する操作を実施する際に、本体部に装着することなく、アタッチメント部の第2表示画面を介して、探査画像を表示することができる。
【0019】
第11の発明に係る埋設物探査装置は、第1から第10の発明のいずれか1つに係る埋設物探査装置であって、本体部あるいはアタッチメント部の姿勢を検出する姿勢検出部を、さらに備えている。表示制御部は、姿勢検出部において検出された姿勢に応じて、第1表示画面および第2表示画面に表示させる表示向きを変化させる。
これにより、例えば、姿勢検出部によって本体部とアタッチメント部とが縦向きの姿勢になったことが検出された場合には、第1表示画面および第2表示画面に表示させる表示の向きも縦向きに切り替えることができる。
よって、表示の向きが装置の姿勢に応じて適切に切り替えられるため、使用者の使い勝手をより向上させることができる。
【0020】
第12の発明に係る埋設物探査装置は、第1から第11の発明のいずれか1つに係る埋設物探査装置であって、本体部に対してアタッチメント部が着脱可能な状態で取り付けられる着脱機構を、さらに備えている。
これにより、着脱機構を介して、本体部に対してアタッチメント部を着脱可能な状態で取り付けることができる。
【0021】
第13の発明に係る埋設物探査装置は、第12の発明に係る埋設物探査装置であって、着脱機構は、アタッチメント部が有する検出部と本体部とが互いに接続される接続位置において、本体部に対してアタッチメント部を吸着する吸着部を含む。
【0022】
これにより、例えば、磁石等の磁力を利用した吸着部を用いることで、本体部に対してアタッチメント部を着脱可能な状態で取り付けることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る埋設物探査装置によれば、検出された埋設物等の各種情報を適切に表示することで、使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る埋設物探査装置を用いて壁面内の埋設物を検出するために、壁面に沿って埋設物探査装置を走査する際の状態を示す説明図。
【
図3】(a)は、
図2の埋設物探査装置の斜視図。(b)は、(a)の本体部からアタッチメント部を取り外した状態を示す分解図。
【
図4】
図3(b)の埋設物探査装置の内部構成を示す透視図。
【
図5】
図2の埋設物探査装置の内部構成を示す制御ブロック図。
【
図6】(a)および(b)は、
図2の埋設物探査装置の姿勢に応じた表示例を示す図。
【
図10】
図2の埋設物探査装置のアタッチメント部を単体で用いた場合の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係る埋設物探査装置について、
図1~
図10を用いて説明すれば以下の通りである。
(1)埋設物探査装置10の構成
本実施形態に係る埋設物探査装置10は、
図1に示すように、壁面(対象物)90に沿って移動させながら、後述する静電容量センサ13(
図5参照)によって静電容量の値の変化を検出することで、壁面90内に含まれる木材(管柱91a、間柱91b)や金属等の埋設物91を検出する。
【0026】
本実施形態の埋設物探査装置10は、
図2から
図4に示すように、静電容量式の検出部(静電容量センサ13)を含むアタッチメント部20が、本体部11に対して着脱可能な状態で取り付けられる。
アタッチメント部20は、静電容量センサ13(
図5参照)を含んでおり、埋設物探査装置10を壁面90に沿って移動させながら静電容量の変化を検出して、例えば、石膏ボード裏の木材等の埋設物91を検出する。
【0027】
埋設物探査装置10は、
図2から
図4に示すように、本体部11(表示部12、光学センサ14(
図5参照)および操作入力部15)と、本体部11に対して着脱可能な複数のアタッチメント部20とを備えている。
なお、壁面90には、例えば、石膏ボードや木製合板の表面に壁紙等の内装材が貼り付けられたものが含まれる。また、埋設物91には、例えば、柱、梁、筋交い等の木材や金属製のフレーム等が含まれる。
【0028】
本体部11は、
図3(a)および
図3(b)に示すように、略直方体形状を有する樹脂製の部材であって、使用時における使用者側の面(表面)に、表示部(第1表示部)12および操作入力部15が設けられており、使用者とは反対側の壁面90側の面(裏面)に、光学センサ14が設けられている。また、本体部11の上端部には、
図4に示すように、例えば、検出方式等が異なる複数種類の検出部(センサ)を含むアタッチメント部20が、着脱可能な状態で取り付けられる。
【0029】
表示部12は、例えば、液晶表示装置であって、
図2等に示すように、本体部11の表面に配置された表示画面(第1表示画面)12aを有している。表示部12は、例えば、埋設物探査装置10の設定、埋設物91の検出結果を示す探査画像等を表示する(
図6(a)等参照)とともに、操作入力部15に入力された操作内容に応じて表示内容が切り替えられる。
【0030】
静電容量センサ13は、アタッチメント部20の裏面側に配置されており、壁面90内に存在する埋設物91を検出するために、壁面90に沿って埋設物探査装置10を移動させた際に静電容量の変化を検出する。
光学センサ14は、本体部11の裏面側に配置されており、壁面90に対して照射された、例えば、赤外線の反射光を受光して、埋設物探査装置10の位置情報を取得する。
【0031】
操作入力部15は、
図2から
図4に示すように、本体部11の表面に配置されている。操作入力部15は、電源ボタン15a、サーチボタン15bを含む。
電源ボタン15aは、操作入力部15における右側に配置されており、例えば、長押し操作されることで、埋設物探査装置10の電源がオンまたはオフされる。
サーチボタン15bは、操作入力部15における左側に配置されており、例えば、埋設物探査装置10を壁面90に対して当接させた状態で、埋設物91の探査を実行する際に押下される。
【0032】
また、埋設物探査装置10は、
図5に示すように、本体部11の内部に、静電容量取得部30、位置情報取得部31、記憶部32、埋設物有無判定部33、寸法算出処理部34、探査画像変換処理部35、埋設物推定部36、入力受付部37、探査画像呼出部38、データ転送部39、表示制御部40および姿勢検出部41を備えている。
これらの埋設物探査装置10内に生成される静電容量取得部30、位置情報取得部31、記憶部32、埋設物有無判定部33、寸法算出処理部34、探査画像変換処理部35、埋設物推定部36、入力受付部37、探査画像呼出部38、データ転送部39、表示制御部40および姿勢検出部41は、CPUが、メモリに保存された各種制御プログラムを読み込んで制御ブロックとして生成される。
【0033】
静電容量取得部30は、例えば、アタッチメント部20の裏面側に配置された静電容量センサ13から出力された静電容量の値を取得して、記憶部32へ送信する。
より詳細には、静電容量取得部30は、位置情報取得部31において取得された位置情報を用いて埋設物探査装置10が壁面90に沿って所定の移動量に達するごとに、その移動した範囲における埋設物91の有無を判定するために、静電容量の値の変化を検出する。これにより、後述する探査画像変換処理部35では、静電容量センサ13からの出力結果を用いて、所定の移動量ごとにその移動エリアにおける探査画像を生成することができる。
【0034】
位置情報取得部31は、本体部11の裏面側に配置された光学センサ14からの出力を取得して、記憶部32へ送信する。これにより、位置情報取得部31において取得された位置情報により、埋設物探査装置10が壁面90における位置およびその移動量、移動方向を検出することができる。
記憶部32は、静電容量取得部30から受信した静電容量の値のデータおよび位置情報のデータ、埋設物探査装置10の走査方向における埋設物91の寸法情報を含む埋設物テーブル、探査画像変換処理部35において静電容量データから変換された探査画像、探査画像と重ねて表示されるグリッド層、基準点表示層等を保存している。そして、記憶部32は、探査画像呼出部38によって呼び出された探査画像等を、データ転送部39、表示制御部40へと送信する。
【0035】
なお、記憶部32に保存される探査画像は、1回の走査単位でグループ化された状態で、壁面90を走査した時間情報とともに保存される。そして、本実施形態では、複数回分の走査に対応する探査画像が、記憶部32に保存されている。
また、所定の移動量ごとに変換された探査画像は、例えば、埋設物探査装置10の電源がオンされてから累積して記憶され、1回分の走査単位で複数の探査画像がグループ化された状態で保存される。
【0036】
埋設物有無判定部33は、検出された静電容量の値が、所定の閾値を超えたか否かに応じて、壁面90内の埋設物91の有無を判定する(エッジ判定処理)。これにより、静電容量センサ13における出力結果に基づいて、埋設物91の有無の判定を実施することができる。
寸法算出処理部34は、静電容量センサ13で検出された静電容量の値に基づいて、壁面90内の埋設物91の寸法(幅等)の推定値を算出する。具体的には、寸法算出処理部34は、静電容量センサ13の出力信号が変化した両端のエッジ部分を検出し、その間を埋設物91として寸法の推定値を算出する。
【0037】
探査画像変換処理部35は、静電容量センサ13で検出された静電容量の値を、埋設物91の有無を示す探査画像に変換する。より詳細には、探査画像変換処理部35は、上述した位置情報取得部31において検出される埋設物探査装置10の位置情報に基づいて、埋設物探査装置10の壁面90に沿った移動量が所定の距離に達するごとに取得された静電容量の値を用いて、探査画像を生成する。
【0038】
埋設物推定部36は、寸法算出処理部34において算出された埋設物91の走査方向における寸法(幅)の推定値と、記憶部32に保存された埋設物テーブルに含まれる埋設物91の種類ごとの幅寸法とを比較して、対応する埋設物91の種類を推定する。
入力受付部37は、上述した電源ボタン15a、サーチボタン15b等を含む操作入力部15に入力されたユーザからの操作内容を受け付ける。
【0039】
探査画像呼出部38は、例えば、操作入力部15を介して入力されたユーザからの操作内容に基づいて、記憶部32に保存された探査画像を呼び出し、データ転送部39や表示制御部40へ送信する。
なお、探査画像は、記憶部32に保存された後、操作入力部15に入力されるユーザからの操作内容とは関係なく、埋設物探査装置10の走査中にリアルタイムで表示されるように、表示制御部40が表示部12を制御してもよい。
【0040】
データ転送部39は、外部機器やサーバ等に対して、探査画像や埋設物91の検出結果等を送信する。
表示制御部40は、上述した探査画像変換処理部35において生成された埋設物91の有無を示す探査画像を、本体部11側の表示部12の表示画面12aに表示させる。さらに、表示制御部40は、探査画像と、記憶部32に保存されたグリッド層および基準点表示層と、を重ねて表示部12の表示画面12aに表示させる。
【0041】
また、表示制御部40は、後述する姿勢検出部41において検出された本体部11の姿勢に応じて、表示部12の表示画面12aに表示させる情報の表示向きを切り替える。
探査画像では、壁面90に沿って走査された埋設物探査装置10の軌跡に沿って取得された静電容量の値から生成された複数の探査画像を組み合わせて、埋設物91が表示される。また、探査画像では、例えば、埋設物91のある位置を黒、埋設物91がない位置を白という互いに異なる色あるいは異なる階調によって表示する。
【0042】
姿勢検出部41は、本体部11の姿勢を検出するために設けられており、例えば、
図6(a)に示す縦向き、
図6(b)に示す横向きの姿勢を検出する。これにより、姿勢検出部41において検出された本体部11の姿勢に応じて、
図6(a)に示す縦向きの姿勢の場合には、表示画面12aにも縦向きで探査画像等を表示するとともに、
図6(b)に示す横向きの姿勢の場合には、表示画面12aにも横向きで探査画像等を表示することができる。
【0043】
本実施形態の埋設物探査装置10では、
図5に示すように、アタッチメント部20側に、表示制御部(第2表示制御部)21および表示部(第2表示部)22が設けられている。
表示制御部21は、上述した本体部11側の表示制御部40と同様に、探査画像変換処理部35において生成された埋設物91の有無を示す探査画像を、アタッチメント部20側の表示部22の表示画面22aに表示させる。さらに、表示制御部21は、探査画像と、記憶部32に保存されたグリッド層および基準点表示層と、を重ねて表示部22の表示画面22aに表示させる。
【0044】
また、表示制御部21は、上述した本体部11側の姿勢検出部41において検出された本体部11の姿勢に応じて、表示部22の表示画面22aに表示させる情報の表示向きを切り替える。
表示部22は、例えば、液晶表示装置であって、
図2等に示すように、アタッチメント部20の表面に配置された表示画面22aを有している。表示部22は、例えば、埋設物探査装置10の設定、埋設物91の検出結果を示す探査画像等を表示する(
図6(a)等参照)とともに、操作入力部15に入力された操作内容に応じて表示内容が切り替えられる。
【0045】
表示画面22aは、
図2から
図4に示すように、本体部11側の表示画面12aと同じ側の面における互いに隣接する位置に設けられている。すなわち、アタッチメント部20が本体部11に対して装着された状態では、2つの表示画面12a,22aは、互いに隣接する位置に配置されており、2つの表示画面12a,22aを組み合わせて大型画面を形成する。
なお、本実施形態の埋設物探査装置10に含まれる2つの表示画面12a,22aにおける表示制御については、後段にて詳述する。
【0046】
<着脱機構50>
本実施形態の埋設物探査装置10は、
図4等に示すように、着脱機構50を介して、アタッチメント部20が、本体部11に対して装着される。
【0047】
着脱機構50は、
図4に示すように、一対のマグネット51a,51bを有している。
マグネット51aは、本体部11側におけるアタッチメント部20との接続側に配置されている。
マグネット51bは、アタッチメント部20側における本体部11側のマグネット51aに対向する位置に配置されている。
【0048】
これにより、本体部11に対してアタッチメント部20を取り付けた状態では、マグネット51a,51bの磁力によって互いに吸着し合う力が働くことで、アタッチメント部20が本体部11に対して保持された状態を維持するとともに、容易に着脱することができる。
本体部11の筐体部分における両側面の内側には、アタッチメント部20の装着方向に略平行に形成されたガイドリブ(ガイド機構)54aが設けられている。
【0049】
ガイドリブ54aは、本体部11の筐体部分における両側面から、内側に向かって突出するように形成された凸状の部分であって、後述するアタッチメント部20側のガイド溝53cに係合する。
本体部11は、表示部12(表示画面12a)と、アタッチメント部20側の静電容量センサ13と電気的に接続されるコネクタ52aと、後述するアタッチメント部20側のガイドピン53bが挿入されるガイド穴52bと、を含んでいる。
【0050】
コネクタ52aは、アタッチメント部20側のフローティング基板53のコネクタ53aと接続されることで、アタッチメント部20側において検出された静電容量の値等を取得する。
ガイド穴52bは、コネクタ52aの両サイドに設けられており、アタッチメント部20の装着方向に略平行に形成された穴である。ガイド穴52bには、後述するアタッチメント部20側のガイドピン53bが挿入される。
【0051】
アタッチメント部20は、
図4に示すように、フローティング基板53を有している。
また、アタッチメント部20は、筐体部分における両側面の外側に、ガイド溝(ガイド機構)53cを有している。
ガイド溝(ガイド機構)53cは、上述した本体部11側のガイドリブ54aが係合し、アタッチメント部20を本体部11に対する装着方向において誘導する。また、ガイド溝53cは、アタッチメント部20の筐体部分の両側面の外側において、本体部11に対するアタッチメント部20の装着方向に略平行に形成されている。
【0052】
フローティング基板53は、
図4に示すように、コネクタ53aおよびガイドピン53bを有している。
コネクタ53aは、アタッチメント部20が本体部11に対して装着されると、本体部11側のコネクタ52aに接続される。これにより、静電容量のデータ等が、本体部11側へ送信される。
【0053】
ガイドピン53bは、フローティング基板53の本体部11への装着側の面から突出するように設けられた棒状の部材であって、アタッチメント部20の本体部11への装着時には、コネクタ53aよりも先に本体部11側に達するように配置されている。
これにより、アタッチメント部20が本体部11に対して装着される際に、フローティング基板53のコネクタ53aは、ガイドピン53bの先端が本体部11側のガイド穴52b内に挿入されることにより、位置合わせされた状態で、本体部11側のコネクタ52aに接続される。
【0054】
本実施形態の埋設物探査装置10では、上述したように、本体部11と、本体部11に対して着脱可能な状態で取り付けられるアタッチメント部20と、の間に着脱機構50が設けられている。そして、着脱機構50は、本体部11側に設けられたマグネット51aと、アタッチメント部20側に設けられたマグネット51bとを有している。
これにより、アタッチメント部20が本体部11に対して装着された状態において、マグネット51a,51bの磁力によってアタッチメント部20が本体部11側に吸着される。よって、アタッチメント部20を本体部11に対して着脱可能な状態で、かつ装着状態を保持することができる。
【0055】
また、着脱機構50は、本体部11に対するアタッチメント部20の装着方向に沿って形成されたガイドピン53bを含むフローティング基板53と、本体部11に設けられガイドピン53bが挿入されるガイド穴52bとを含む。
これにより、本体部11側に設けられたガイド穴52bに対して、ガイドピン53bが挿入されるようにアタッチメント部20側のフローティング基板53を挿入していくことで、アタッチメント部20が本体部11に対して位置決めされる。よって、アタッチメント部20が本体部11に対して装着された状態において、本体部11側のコネクタ52aに、アタッチメント部20側のフローティング基板53のコネクタ53aを容易に接続することができる。
【0056】
さらに、着脱機構50は、アタッチメント部20が有する静電容量センサ13と本体部11とが互いに接続される接続位置まで、アタッチメント部20を誘導するガイド機構を含む。
ガイド機構は、本体部11側の筐体部分の両側面の内側に設けられたガイドリブ54aと、アタッチメント部20側の筐体部分の両側面の外側に設けられガイドリブ54aが係合するガイド溝53cとを含む。
【0057】
これにより、アタッチメント部20は、ガイドリブ54aおよびガイド溝53cとの係合によってアタッチメント部20側の静電容量センサ13と本体部11とが互いに接続される位置まで誘導されるため、本体部11に対してアタッチメント部20を所定の位置に装着することができる。
また、ガイドリブ54aおよびガイド溝53cは、本体部11に対するアタッチメント部20の装着方向に略平行に設けられている。
これにより、ガイドリブ54aをガイド溝53cに沿って移動させることで、アタッチメント部20を本体部11に対して装着される方向に沿って誘導することができる。
【0058】
<表示画面12a,22aを用いた表示制御>
本実施形態の埋設物探査装置10では、以上のように、本体部11側に設けられた表示部12(表示画面12a)と、本体部11に対して着脱可能な状態で取り付けられるアタッチメント部20側に設けられた表示部22(表示画面22a)とを備えている。
【0059】
これらの2つの表示画面12a,22aは、それぞれの表示部12,22の表示制御を行う表示制御部40,21によって表示内容が制御される。
具体的には、2つの表示画面12a,22aは、
図6(a)に示すように、組み合わせて形成される1つの大型画面に、探査画像全体を表示するように、表示制御される。
ここで、本体部11が、
図6(a)に示す縦向きの姿勢から、
図6(b)に示す本体部11の横向きの姿勢へと変化したことが、姿勢検出部41において検出されると、表示制御部40,21によって、大型画面に表示される探査画像は、縦向きから横向きに切り替えられる。
【0060】
また、2つの表示画面12a,22aは、それぞれ別々の表示を行うように、表示制御部40,21によって制御されてもよい。
具体的には、
図7に示すように、アタッチメント部20側の表示画面22aに、1回の走査分に相当する探査画像の全体を表示するとともに、本体部11側の表示画面12aに、その一部を拡大した探査画像を表示するように、表示制御部40,21によって表示内容が制御されてもよい。
【0061】
これにより、例えば、探査画像における埋設物91が含まれる部分を拡大して、表示画面12aに表示することで、使用者は、埋設物91の位置や大きさ等を容易に把握することができる。
また、
図8に示すように、アタッチメント部20側の表示画面22aに、各種設定を行うメニュー画面を表示するとともに、本体部11側の表示画面12aに、埋設物91を含む探査画像を表示するように、表示制御部40,21によって表示内容が制御されてもよい。
【0062】
これにより、埋設物91を含む探査画像を表示しながら、メニュー画面を介して各種設定を行うことができる。
さらに、
図9に示すように、アタッチメント部20側の表示画面22aに、埋設物91を含む探査画像を表示するとともに、本体部11側の表示画面12aに、埋設物探査装置10を操作した壁面90の設計図面を表示するように、表示制御部40,21によって表示内容が制御されてもよい。
【0063】
これにより、設計図面を表示しながら、探査画像に含まれる埋設物91の位置や大きさ等を確認することができる。
なお、本実施形態の埋設物探査装置10では、
図10に示すように、アタッチメント部20が本体部11から取り外された状態で壁面90に沿って走査することで、静電容量センサ13によって検出される静電容量の変化を検出して、埋設物91を含む探査画像を表示してもよい。
【0064】
この場合には、アタッチメント部20側に設けられた表示制御部21が、本体部11側から探査画像を受信して、表示部22の表示画面22aの表示内容を制御することで、アタッチメント部20を単体で使用することも可能である。
【0065】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、静電容量式の検出部を含むアタッチメント部20を備えた埋設物探査装置10を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、静電容量式の検出部の代わりに、電磁誘導式等の他の方式の検出部を含むアタッチメント部を備えた埋設物探査装置であってもよい。
【0066】
(B)
上記実施形態では、本体部11側の表示部12と、アタッチメント部20側の表示部22とが、それぞれ、別々の表示制御部40,21によって表示制御される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本体部側のみに設けられた単一の表示制御部によって、本体部側の表示部とアタッチメント部側の表示部の双方の表示制御を実施してもよい。
あるいは、アタッチメント部側のみに設けられた単一の表示制御部によって、本体部側の表示部とアタッチメント部側の表示部の双方の表示制御を実施してもよい。
【0067】
(C)
上記実施形態では、本体部11側の表示画面12aとアタッチメント部20側の表示画面22aとが、それぞれ埋設物探査装置10における同じ側の面に配置された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本体部側の表示画面とアタッチメント部側の表示画面とが、埋設物探査装置における異なる面に配置された構成であってもよい。
【0068】
(D)
上記実施形態では、本体部11側の表示画面12aとアタッチメント部20側の表示画面22aとが、それぞれ埋設物探査装置10における同じ側の面に互いに隣接して配置された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本体部側の表示画面とアタッチメント部側の表示画面とが、埋設物探査装置の同じ側の面における互いに離間した位置に配置された構成であってもよい。
【0069】
(E)
上記実施形態では、本体部11に対してアタッチメント部20を着脱可能な状態で取り付ける着脱機構として、マグネットの磁力による吸着を利用した機構を採用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、マグネットの磁力による吸着の代わりに、係止爪と被係止部との組み合わせによる機械的機構によって、本体部に対するアタッチメント部の装着状態を保持する着脱機構であってもよい。
【0070】
(F)
上記実施形態では、姿勢検出部41において検出される本体部11の姿勢に応じて、表示画面12a,22aにおける表示向きを切り替えるように表示制御を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、姿勢検出部は、本体部ではなく、アタッチメント部側に配置されていてもよい。
【0071】
また、姿勢検出部が、本体部およびアタッチメント部の双方に設けられており、本体部およびアタッチメント部の双方の姿勢を検出する構成であってもよい。
さらに、姿勢検出部を持たず、埋設物探査装置の姿勢(向き)が変化しても表示向きを切り替えることなく一定の向きで表示を行う構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の埋設物探査装置は、検出された埋設物等の各種情報を適切に表示することで、使い勝手を向上させることができるという効果を奏することから、様々な埋設物を検出する埋設物探査装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 埋設物探査装置
11 本体部
12 表示部(第1表示部)
12a 表示画面(第1表示画面)
13 静電容量センサ
14 光学センサ
15 操作入力部
15a 電源ボタン
15b サーチボタン
20 アタッチメント部
21 表示制御部
22 表示部(第2表示部)
22a 表示画面(第2表示画面)
30 静電容量取得部
31 位置情報取得部
32 記憶部
33 埋設物有無判定部
34 寸法算出処理部
35 探査画像変換処理部
36 埋設物推定部
37 入力受付部
38 探査画像呼出部
39 データ転送部
40 表示制御部
41 姿勢検出部
50 着脱機構
51a,51b マグネット(吸着部)
52a コネクタ
52b ガイド穴
53 フローティング基板
53a コネクタ
53b ガイドピン
53c ガイド溝
54a ガイドリブ
90 壁面(対象物)
91 埋設物
91a 管柱
91b 間柱