(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】プルハンドルキャップ取付構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20241210BHJP
E05B 79/06 20140101ALI20241210BHJP
【FI】
B60J5/04 H
E05B79/06 A
(21)【出願番号】P 2021112847
(22)【出願日】2021-07-07
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 将之
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-007872(JP,A)
【文献】特開2019-172161(JP,A)
【文献】特開2020-032795(JP,A)
【文献】特開2017-218812(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0288674(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0111018(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
E05B 79/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアトリムにおいて上方に開口するように形成されたプルハンドルボックスに対して、前記プルハンドルボックスの車室外側に位置する外側壁を覆う板状のプルハンドルキャップを取り付けるためのプルハンドルキャップ取付構造であって、
前記プルハンドルボックスの開口は、車両前後方向における一方側の端部が、上方からの視点において先細りする形状となっており、
前記プルハンドルキャップは、
前記外側壁を覆うキャップ本体部と、前記キャップ本体部における前記一方側の側端部である一側端部から突出して前記プルハンドルボックスに係合する係合部と、を備え、
前記係合部が前記開口の先細り側に差し込まれた状態で、前記一側端部を軸として、他方側の側端部である他側端部が車室外側方向へ回動させられて、前記外側壁に取り付けられる構成とされ、
前記プルハンドルボックスには、前記一方側の部分に、前記係合部を係合させるともに、前記係合部を自身の延びる方向に沿って案内するガイド溝が形成されており、
前記プルハンドルキャップは、前記係合部が前記ガイド溝に沿って移動させられることによって、前記キャップ本体部が前記プルハンドルボックス内に入り込むとともに、前記係合部が前記開口の先細り側に差し込まれた状態とな
り、
前記ガイド溝は、上下方向に直線的に延びる上下ガイド部を有し、
前記係合部が前記上下ガイド部に沿って下降させられることによって、前記キャップ本体部が前記プルハンドルボックス内に入り込むように構成されたプルハンドルキャップ取付構造。
【請求項2】
前記係合部が前記上下ガイド部に係合している場合に、前記キャップ本体部は、上方からの視点において、前記他方側の部分が、前記開口内で前記一方側の端部から最も距離が遠い箇所に向かって延びる姿勢を取るように構成された請求項1に記載のプルハンドルキャップ取付構造。
【請求項3】
前記ガイド溝は、前記上下ガイド部の下端から連続して形成され、前記一側端部を軸とする前記係合部の車室内側方向への回動を案内する回動案内部を有する請求項1または請求項2に記載のプルハンドルキャップ取付構造。
【請求項4】
前記外側壁には、車両前後方向における他方側から直線状に延びて前記上下ガイド部の上端に連続するように形成された前後方向延設溝が形成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプルハンドルキャップ取付構造。
【請求項5】
車両用ドアトリムにおいて上方に開口するように形成されたプルハンドルボックスに対して、前記プルハンドルボックスの車室外側に位置する外側壁を覆う板状のプルハンドルキャップを取り付けるためのプルハンドルキャップ取付構造であって、
前記プルハンドルボックスの開口は、車両前後方向における一方側の端部が、上方からの視点において先細りする形状となっており、
前記プルハンドルキャップは、
前記外側壁を覆うキャップ本体部と、前記キャップ本体部における前記一方側の側端部である一側端部から突出して前記プルハンドルボックスに係合する係合部と、を備え、
前記係合部が前記開口の先細り側に差し込まれた状態で、前記一側端部を軸として、他方側の側端部である他側端部が車室外側方向へ回動させられて、前記外側壁に取り付けられる構成とされ、
前記プルハンドルボックスには、前記一方側の部分に、前記係合部を係合させるともに、前記係合部を自身の延びる方向に沿って案内するガイド溝が形成されており、
前記プルハンドルキャップは、前記係合部が前記ガイド溝に沿って移動させられることによって、前記キャップ本体部が前記プルハンドルボックス内に入り込むとともに、前記係合部が前記開口の先細り側に差し込まれた状態とな
り、
前記プルハンドルボックスは、前記外側壁を含む車室外側部材と、前記車室外側部材の車室内側から取り付けられて前記プルハンドルボックスの車室内側に位置する内側壁を有して前記車室外側部材の車室内側から取り付けられる車室内側部材と、によって形成されており、
前記車室内側部材は、前記一方側の端部に向かうほど前記外側壁との距離が小さくなる形状とされ、
前記車室内側部材の前記一方側の端部と、前記車室外側部材との間に、前記ガイド溝が形成されているプルハンドルキャップ取付構造。
【請求項6】
前記係合部は、前記一側端部から延び出した係合部本体と、前記係合部本体から該係合部本体に対して交差する方向に突出した突出部と、を有し、
前記車室内側部材の前記一方側の端部における車室外側面と、前記車室外側部材の車室内側面との間には隙間が形成されて、前記隙間の間隔は、前記係合部本体の車室内外方向の寸法より僅かに大きくされ、
前記車室内側部材の前記一方側の端部における車室外側面には縦溝が形成されて、前記縦溝の幅は、前記突出部の車両前後方向の寸法より僅かに大きな幅とされ、
前記ガイド溝は、前記隙間と前記縦溝とによって形成されて上下方向に直線的に延びる上下ガイド部を有するものされ、
前記係合部本体が前記隙間に入り込むとともに、前記突出部が前記縦溝に入り込むことで、前記係合部は、前記上下ガイド部に沿って下降させられるように案内され、前記キャップ本体部が前記プルハンドルボックス内に入り込むように構成された請求項5に記載のプルハンドルキャップ取付構造。
【請求項7】
前記係合部本体が前記隙間に入り込むとともに、前記突出部が前記縦溝に入り込んだ状態において、前記キャップ本体部は、上方からの視点において、前記他方側の部分が、前記内側壁の前記他方側の端部に向かって延びる姿勢を取るように構成された請求項6に記載のプルハンドルキャップ取付構造。
【請求項8】
車両用ドアトリムにおいて上方に開口するように形成されたプルハンドルボックスに対して、前記プルハンドルボックスの車室外側に位置する外側壁を覆う板状のプルハンドルキャップを取り付けるためのプルハンドルキャップ取付構造であって、
前記プルハンドルボックスの開口は、車両前後方向における一方側の端部が、上方からの視点において先細りする形状となっており、
前記プルハンドルキャップは、
前記外側壁を覆うキャップ本体部と、前記キャップ本体部における前記一方側の側端部である一側端部から突出して前記プルハンドルボックスに係合する係合部と、を備え、
前記係合部が前記開口の先細り側に差し込まれた状態で、前記一側端部を軸として、他方側の側端部である他側端部が車室外側方向へ回動させられて、前記外側壁に取り付けられる構成とされ、
前記プルハンドルボックスには、前記一方側の部分に、前記係合部を係合させるともに、前記係合部を自身の延びる方向に沿って案内するガイド溝が形成されており、
前記プルハンドルキャップは、前記係合部が前記ガイド溝に沿って移動させられることによって、前記キャップ本体部が前記プルハンドルボックス内に入り込むとともに、前記係合部が前記開口の先細り側に差し込まれた状態とな
り、
前記プルハンドルキャップは、前記キャップ本体部の前記一側端部における上方と下方の各々から突出する上側係合部および下側係合部を備え、
前記下側係合部は、前記上側係合部より長くされて、前記ガイド溝によって案内されるものとされたプルハンドルキャップ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プルハンドルキャップを取り付けるための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗員がドアを開閉する際に把持可能なプルハンドルを形成するために、車両のドアトリムにおけるアームレスト部分には、上方に開口するプルハンドルボックスが設けられる。そのプルハンドルボックスの車室外側に位置する外側壁には、当該プルハンドルボックスをブラケットやドアインナパネル等の他部材に対して締結するための締結箇所が設けられている。プルハンドルボックスをその他部材に対してねじ等で締結した後に、その締結箇所を露出させないように、その締結箇所が設けられたプルハンドルボックスの外側壁にプルハンドルキャップを取り付ける構成とされている。
【0003】
そのプルハンドルボックスに対してプルハンドルキャップを取り付けるための構造として、例えば、下記特許文献1に記載された取付構造が開示されている。この下記特許文献1に記載のプルハンドルキャップの取付構造は、プルハンドルボックスの開口が、車両前後方向における一端が、上方から見て先細りする形状となっている場合であってもプルハンドルキャップ(カバー)を取り付け可能とする構造であり、プルハンドルキャップは、一側端部が開口の先細り側に差し込まれた状態で、その一側端部を軸として、他側端部が車室外側方向へ回動させられて外側壁に取り付けられるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プルハンドルボックスの開口の一端側が先細りして狭い箇所が存在する場合には、開口の車両前後方向の寸法と同じ程度の寸法のプルハンドルキャップを取り付けるため、作業に慣れていない作業者が取り付ける場合には、プルハンドルキャップをプルハンドルボックス周辺に接触させ、製品を傷つけてしまう虞がある。そこで、上記特許文献1に記載のプルハンドルキャップ取付構造は、プルハンドルキャップの一側端部の上方側に設けられた係止部をプルハンドルボックスの被係止部に差し込んで、その係止部を中心として縦方向に回動させて、プルハンドルキャップ全体をプルハンドルボックス内に挿入するように構成されている。しかしながら、プルハンドルキャップをプルハンドルボックス周辺に接触させない構成としては、十分とは言い難く、改良の余地が残されている。
【0006】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、プルハンドルキャップをプルハンドルボックス周辺に接触させることなく、プルハンドルボックスに対してプルハンドルキャップを容易に取り付けることが可能なプルハンドルキャップ取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のプルハンドルキャップ取付構造は、
車両用ドアトリムにおいて上方に開口するように形成されたプルハンドルボックスに対して、前記プルハンドルボックスの車室外側に位置する外側壁を覆う板状のプルハンドルキャップを取り付けるためのプルハンドルキャップ取付構造であって、
前記プルハンドルボックスの開口は、車両前後方向における一方側の端部が、上方からの視点において先細りする形状となっており、
前記プルハンドルキャップは、
前記外側壁を覆うキャップ本体部と、前記キャップ本体部における前記一方側の側端部である一側端部から突出して前記プルハンドルボックスに係合する係合部と、を備え、
前記係合部が前記開口の先細り側に差し込まれた状態で、前記一側端部を軸として、他方側の側端部である他側端部が車室外側方向へ回動させられて、前記外側壁に取り付けられる構成とされ、
前記プルハンドルボックスには、前記一方側の部分に、前記係合部を係合させるともに、前記係合部を自身の延びる方向に沿って案内するガイド溝が形成されており、
前記プルハンドルキャップは、前記係合部が前記ガイド溝に沿って移動させられることによって、前記キャップ本体部が前記プルハンドルボックス内に入り込むとともに、前記係合部が前記開口の先細り側に差し込まれた状態となることを特徴とする。
【0008】
この構成のプルハンドルキャップ取付構造は、プルハンドルキャップ(以下、単に「キャップ」という場合がある)の係合部がプルハンドルボックス(以下、単に「ボックス」という場合がある)の開口の先細り側に差し込まれた状態で、一側端部を軸として、他方側の側端部を外側壁に向かって回動させる構成を前提としている。この構成であったとしても、ボックスの開口は、一方側の端部が先細りして狭く形成されるとともに、開口の車両前後方向の寸法と同じ程度の寸法のキャップを取り付けるため、キャップの係合部がボックスの開口の先細り側に差し込まれた状態とすべく、キャップ全体をボックスに挿入する際にキャップをボックス周辺に接触させてしまう虞がある。
【0009】
しかしながら、この構成のプルハンドルキャップ取付構造は、キャップの係合部をガイド溝に沿って移動させるのみで、キャップ全体がボックス内に入り込んで、係合部が開口の先細り側に差し込まれた状態となる。つまり、この構成のプルハンドルキャップ取付構造は、キャップをボックス周辺に接触させることなく、容易に取り付けることが可能となる。なお、この構成の取付構造における「ガイド溝」は、換言すれば、自身が案内する方向以外への係合部の移動は規制するものとすれば、キャップのボックス周辺への接触を確実に防止することが可能である。
【0010】
上記構成において、前記ガイド溝は、上下方向に直線的に延びる上下ガイド部を有し、前記係合部が前記上下ガイド部に沿って下降させられることによって、前記キャップ本体部が前記プルハンドルボックス内に入り込むように構成することができる。
【0011】
この構成の取付構造は、ボックスに対してキャップを挿入する際に、ガイド溝の上下ガイド部によって、キャップがボックス内に垂直に案内されるため、キャップのボックス周辺への接触を確実に防止することが可能である。
【0012】
上記構成において、前記係合部が前記上下ガイド部に係合している場合に、前記キャップ本体部は、上方からの視点において、前記他方側の部分が、前記開口内で前記一方側の端部から最も距離が遠い箇所に向かって延びる姿勢を取るように構成することができる。
【0013】
この構成の取付構造によれば、キャップ本体部の他側端部が、ボックスの内面から最も離間した姿勢となるため、キャップのボックス周辺への接触をより確実に防止することが可能である。
【0014】
上記構成において、前記ガイド溝は、前記上下ガイド部の下端から連続して形成され、前記一側端部を軸とする前記係合部の車室内側方向への回動を案内する回動案内部を有する構成とすることができる。
【0015】
この構成の取付構造によれば、キャップ本体部を外側壁に対して取り付ける位置まで案内されるため、ボックスに対するキャップの取り付け作業がより容易なものとなる。なお、この取付構造における「回動案内部」の構造としては、例えば、係合部の先端の、キャップ本体部の一側端部を軸として車室内側へ向かう回動のみを許容するような形状を採用することができる。
【0016】
上記構成において、前記外側壁には、車両前後方向における他方側から直線状に延びて前記上下ガイド部の上端に連続するように形成された前後方向延設溝が形成されている構成とすることができる。
【0017】
この構成の取付構造によれば、作業者が係合部を前後方向延設溝に沿って移動させることで、ガイド溝の上端に位置を合わせることができるため、キャップの係合部をガイド溝に合わせる場合においても、作業者がキャップをドアトリムに接触させる可能性を軽減することができるとともに、ボックスに対するキャップの取り付け作業がより容易なものとなる。
【0018】
上記構成において、前記プルハンドルボックスは、前記外側壁を含む車室外側部材と、前記車室外側部材の車室内側から取り付けられて前記プルハンドルボックスの車室内側に位置する内側壁を有して前記車室外側部材の車室内側から取り付けられる車室内側部材と、によって形成されており、前記車室内側部材は、前記一方側の端部に向かうほど前記外側壁との距離が小さくなる形状とされ、前記車室内側部材の前記一方側の端部と、前記車室外側部材との間に、前記ガイド溝が形成されている構成とすることができる。
【0019】
この構成の取付構造は、ガイド溝を形成する構造が具体化されており、車室内側部材および車室外側部材に凹凸を設け、それらを組み付けることでガイド溝を形成することが可能となり、複雑な形状のガイド溝を比較的容易に形成することが可能となる。
【0020】
上記構成において、前記係合部は、前記一側端部から延び出した係合部本体と、前記係合部本体から該係合部本体に対して交差する方向に突出した突出部と、を有し、
前記車室内側部材の前記一方側の端部における車室外側面と、前記車室外側部材の車室内側面との間には隙間が形成されて、前記隙間の間隔は、前記係合部本体の車室内外方向の寸法より僅かに大きくされ、
前記車室内側部材の前記一方側の端部における車室外側面には縦溝が形成されて、前記縦溝の幅は、前記突出部の車両前後方向の寸法より僅かに大きな幅とされ、
前記ガイド溝は、前記隙間と前記縦溝とによって形成されて上下方向に直線的に延びる上下ガイド部を有するものされ、
前記係合部本体が前記隙間に入り込むとともに、前記突出部が前記縦溝に入り込むことで、前記係合部は、前記上下ガイド部に沿って下降させられるように案内され、前記キャップ本体部が前記プルハンドルボックス内に入り込むように構成することができる。
【0021】
この構成の取付構造は、先に述べた上下ガイド部を形成するための構造が具体化されるとともに、係合部が上下ガイド部に沿う方向以外の移動が規制される構造となっている。つまり、この構成の取付構造によれば、キャップのボックス周辺への接触をより確実に防止することが可能となる。
【0022】
上記構成において、前記係合部本体が前記隙間に入り込むとともに、前記突出部が前記縦溝に入り込んだ状態において、前記キャップ本体部は、上方からの視点において、前記他方側の部分が、前記内側壁の前記他方側の端部に向かって延びる姿勢を取るように構成することができる。この構成において、「僅かに大きい」とは、隙間の間隔および縦溝の幅が、係合している部分の幅方向への変位は許容させない程度に大きいことを意味している。
【0023】
この構成の取付構造は、キャップ本体部がボックス内に挿入される際に、上方からの視点において、キャップ本体部がボックス内の開口を対角線で結ぶような姿勢をとるように構成されている。したがって、この構成の取付構造によれば、先に述べたように、キャップ本体部の他側端部がボックスの内面から最も離間した姿勢となるため、キャップのボックス周辺への接触をより確実に防止することが可能である。
【0024】
上記構成において、前記プルハンドルキャップは、前記キャップ本体部の前記一側端部における上方と下方の各々から突出する上側係合部および下側係合部を備え、前記下側係合部は、前記上側係合部より長くされて、前記ガイド溝によって案内されるものとすることができる。
【0025】
この構成によれば、キャップ本体部の下側に設けられた下側係合部を基準として、ボックスに対するキャップの移動が行なわれるため、キャップ本体部の下側がボックス周辺に接触するような事態を軽減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、プルハンドルキャップをプルハンドルボックス周辺に接触させることなく、プルハンドルボックスに対してプルハンドルキャップを容易に取り付けることが可能なプルハンドルキャップ取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施例であるプルハンドルキャップ取付構造が採用された車両用ドアトリムの正面図
【
図2】
図1に示す車両用ドアトリムのプルハンドルを上方からの視点において示す図
【
図3】
図1に示す車両用ドアトリムのプルハンドルを拡大して示す斜視図
【
図4】
図3において、プルハンドルキャップを取り外した状態を示す図
【
図5】
図4に示すプルハンドルボックスの外側壁周辺を車室内側からの視点において示す図
【
図8】プルハンドルキャップの取り付け方法における第1過程を説明するための正面図
【
図9】プルハンドルキャップの取り付け方法における第1過程を説明するための上方からの斜視図
【
図12】第2過程における下側係合部周辺を拡大して示す図
【
図14】第3過程における下側係合部周辺を拡大して示す図
【
図16】第4過程における下側係合部周辺を拡大して示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0029】
本発明の実施例であるプルハンドルキャップ取付構造が採用された車両用ドアトリム10は、
図1に示すように、複数のボード部材が互いに組み付けられたトリムボード12を主体として構成されている。トリムボード12は、上方側の部分を構成するアッパボード14と、下方側の部分を構成するロアボード15と、トリムボード12の上下方向における略中央に車室内側に膨出するように設けられるアームレストボード16を含んで構成されている。このアームレストボード16には、車両前後方向に延在する肘掛け面17Aを有するアームレスト本体17が取り付けられるとともに、その肘掛け面17Aの前方には、各種の操作スイッチが並置されたスイッチベース18が設けられている。そして、アームレストの肘掛け面17Aとスイッチベース18の間には、上方に開口し、乗員が車両用ドアを開閉する際に手を挿入可能なプルハンドル20が設けられている。
【0030】
プルハンドル20は、複数の部材が組み付けられることで、上方に開口するプルハンドルボックス22が形成されている。具体的には、
図4に示すように、ロアボード15には、プルハンドルボックス22の車室外側の壁である外側壁22Aと、プルハンドルボックス22の底壁22Bとが形成されている。また、アームレストボード16における前方側には、スイッチベース18が取付られる台座部材24が取り付けられており、その台座部材24の後端が、プルハンドルボックス22の車室前方に位置する前側壁22Cとされている。また、アームレストボード16には、台座部材24の後方に、プルハンドルボックス22の車室内側の壁である内側壁22Dを形成するボックス本体部材26が取り付けられている。つまり、プルハンドルボックス22は、ロアボード15と、台座部材24と、ボックス本体部材26によって構成されており、ロアボード15が車室外側部材として機能するとともに、ボックス本体部材26が、車室内側部材として機能するものとなっている。
【0031】
ボックス本体部材26は、上方からの視点において、車両後方に向かうほどロアボード15との距離が小さくなるように湾曲した形状とされている(詳細は、
図11参照)。つまり、プルハンドルボックス22は、
図2および
図3に示すように、開口の車両後方側(一方側)の端部が先細りする形状となっている。さらに言えば、プルハンドルボックス22は、深さ方向においても、開口とほぼ同一の断面形状とされている。したがって、プルハンドルボックス22は、開口から底壁22Bにかけて、車両後方側の端部が上方からの視点において先細りする形状を有する有底筒状をなしている。なお、プルハンドルボックス22の前側壁22Cは、上方からの視点において、車室外側に向かうほど車両前方側に位置するように、車幅方向に対して僅かに傾斜した形状となっている。
【0032】
また、乗員がプルハンドル20を利用して車両用ドアを閉じる場合には、ドアトリム10に大きな力が加わるため、ドアトリム10のプルハンドル20近傍を、ドアインナパネル(あるいは、ドアインナパネルとの間に介装されるブラケット)に対して締結される。そのため、ロアボード15におけるプルハンドルボックス22の外側壁22Aを形成する部分には、
図4および
図5に示すように、外側壁22Aのほぼ中央に、取付ねじ28Aによってドアインナパネルに対して締結するための被締結部28が設けられている。そして、この被締結部28が形成された外側壁22Aを覆うべく、
図2および
図3に示すように、プルハンドルキャップ30が、外側壁22Aに取り付けられるのである。
【0033】
次に、プルハンドルキャップ30(以下、単に「キャップ30」と呼ぶ場合がある。)について、詳しく説明する。キャップ30は、
図6に示すように、プルハンドルボックス22の外側壁22Aを覆う概して長方形の板状のキャップ本体部32と、ブルハンドルボックス22に対して取り付けられた状態における車両後方側(
図6における右側)の側端部(一側端部)32Aから突出する2つの係合部34,36とを、備えるものとされている。2つの係合部のうち下側に位置する下側係合部36は、上側に位置する上側係合部34より長くされている。また、下側係合部36は、
図7に示すように、上方からの視点において、複数回にわたって屈折した形状とされている。詳しく言えば、下側係合部36は、キャップ本体部32からそのキャップ本体部32と同方向に延び出した第1延設部41と、その第1延設部41から車室外側に折れて延びる第2延設部42と、その第2延設部42から車室内側(車両後方側)に折れて延びる第3延設部43と、その第3延設部43から概して直交して車室外側に突出した突出部44と、からなる。なお、これら第1延設部41と第2延設部42とのなす角度と、第2延設部42と第3延設部43とのなす角度は、キャップ30をプルハンドルボックス22に取り付ける際に効果的な角度となっているが、ここでの説明は留保し、後に詳しく説明するものとする。また、本実施例においては、第1延設部41,第2延設部42,第3延設部43を含んで係合部本体が構成されていると考えることができる。
【0034】
また、キャップ30の裏面には、キャップ本体部32の車両前方側の部分を外側壁22Aに固定するための2つの係止爪45,46が設けられるとともに、外側壁22Aに対する位置を規定するための2本のガイドピン47,48が設けられている(
図7および
図9を参照)。外側壁22Aには、
図5に示すように、上記2つの係止爪45,46が掛かり止まる2つの係止孔50,51と、ガイドピン47,48が嵌まり込むガイド孔52,53が設けられている。
【0035】
また、本実施例のプルハンドルキャップ取付構造は、上述したキャップ30のプルハンドルボックス22に対する取り付け作業を容易にするための構成を有している。具体的には、プルハンドルボックス22には、キャップ30の下側係合部36を係合させて、その下側係合部36の移動を案内するガイド溝60が設けられている。そのガイド溝60は、車室外側部材であるロアボード15と、車室内側部材であるボックス本体部材26の車両後方側の端部との間に、形成されている。詳しく言えば、ロアボード15は、外側壁22Aを含み、壁面が車室内側を向く外側壁面部15Aを有し(
図5,
図13,
図15参照)、ボックス本体部材26の車両後方側の端部が、車室外側を向く内側壁面部26Aを有しており(
図13,15参照)、ロアボード15に対してボックス本体部材26が組み付けられた状態において、
図4に示すように、ロアボード15の外側壁面部15Aとボックス本体部材26の内側壁面部26Aとの間に形成される隙間が、ガイド溝60となっている。
【0036】
ガイド溝60は、主にロアボード15の外側壁面部15Aに凹部62が設けられることで、外側壁面部15Aと内側壁面部26Aとの間に形成される隙間によって構成される。凹部62は、
図4および
図5に示すように、主に、上下方向に延びる縦溝部64と、その縦溝部64の下端から連続して車両後方側に延びるとともに深さ(車室内外方向の寸法)が縦溝部64の深さより大きくされた横溝部66と、からなる。また、外側壁面部15Aには、車両前方側から直線状に延びて凹部62の縦溝部64の上端に連続するように形成された前後方向延設溝70が形成されている。一方、内側壁面部26Aは、
図4に示すように下端側が車室外側に向かって膨出する膨出部68を有しており、その膨出部68が外側壁面部15Aに当接し、その膨出部68の上方にガイド溝60が形成されている。なお、ガイド溝60のより詳細な形状については、後述する取り付け方法において説明することとする。
【0037】
次に、プルハンドルキャップ30のプルハンドルボックス22に対する取り付け方法について説明する。まず、
図8および
図9に示すように、作業者は、キャップ30の下側係合部36の先端、つまり、突出部44を、前後方向延設溝70に挿入させ、車両後方側に移動させる。なお、プルハンドル20に上方側は、車室内側に向かって膨出するような形状となっているため、キャップ本体部32の上端を車室内側に傾倒させるような姿勢としなければならないが、キャップ30における下側係合部36の突出部44を、前後方向延設溝70の下面上に載せ置くようにすることができるため、キャップ本体部32を容易に傾倒させることが可能である。そして、キャップ30の下側係合部36を、前後方向延設溝70に沿って移動させることで、容易にガイド溝60への挿入位置(
図8および
図9における実線の位置30C)に位置させることができる。
【0038】
なお、
図8および
図9において、キャップ30を移動させる過程における位置を断続的に示し、移動させる順に、30A,30B,30Cを付している。以下の説明や、
図10以降において、同じ位置である場合には同じ符号を付すとともに、それ以降の位置にあるキャップ30には、30D,30E,・・・の順で符号を付すこととする。
【0039】
次いで、
図10に示すように、キャップ30を下側係合部36の先端を中心にキャップ本体部32が車両前後方向においてほぼ水平となる位置まで、図においては30Cから30Dの位置まで、回動させる。また、この時点で、
図11に示すように、傾倒したキャップ本体部32を、底壁22Bに対して直交する姿勢まで起立させる。それにより、以下に詳しく説明するが、キャップ30の下側係合部36の向きを、ガイド溝60に容易に合わせることができる。
【0040】
そのガイド溝60は、
図12に示すように、外側壁面部15Aと内側壁面部26Aとの間に形成されている。詳しく言えば、外側壁面部15Aの車室内側を向く壁面15A1と、内側壁面部26Aの車室外側を向く壁面26A1との間には、隙間Sが形成されており、その隙間Sは、車両前方側に開口し、
図4に示すように、上下方向に延びている。また、外側壁面部15Aには、先に述べた凹部62の縦溝部64が形成されていることで、概してT字形状断面で上下方向に直線的に延びる溝、つまり、上下ガイド部72が形成されている。また、隙間Sの幅(車室内外方向の寸法)は、下側係合部36の第3延設部43の車室内外方向の寸法より僅かに大きくされるともに、縦溝部64の幅(車両前後方向の寸法)は、下側係合部36の突出部44の車両前後方向の寸法より僅かに大きくされている。つまり、上下ガイド部72は、下側係合部36の第3延設部43と突出部44とが係合可能な形状となっており、それらが係合した状態において、下側係合部36の下方への移動、つまり、キャップ30の下方への移動を案内させるものとなっている。
【0041】
図5に示すように、上述した前後方向延設溝70の車両後方側の壁70Aと、縦溝部64の車両後方側の壁64Aとが連なるように形成されている。そのため、下側係合部36の突出部44が前後方向延設溝70の車両後方側の壁70Aに当接した後、キャップ30を、突出部44を基準として上下方向および車室内外方向に回動させ、
図10および
図11に示した30Dの位置に合わせることで、下側係合部36の第3延設部43と突出部44とが上下ガイド部72に入り込むようになっている。
【0042】
そして、キャップ30は、上下ガイド部72によって、その上下ガイド部72に沿った下方への移動が案内される。
図11および
図12に示したように、下側係合部36の第3延設部43と突出部44が上下ガイド部72に係合した状態においては、下側係合部36の第2延設部42の延びる方向が、内側壁22Dの延びる方向と一致するようになっている。つまり、第2延設部42と第3延設部43のなす角度は、ボックス本体部材26の内側壁22Dを形成している部分と、車両後方側端部の内側壁面部26Aとのなす角度と一致するように形成されている。以上のような構成から、キャップ30は、下側係合部36の第3延設部43と突出部44が上下ガイド部72に係合した状態においては、車両前後方向,車室内外方向、下側係合部36を基準とする回動等、上下方向の移動以外は規制された状態となる。
【0043】
そして、上記の状態においては、キャップ30は、
図11に示すように、車両後方側から、下側係合部36の第1延設部41およびキャップ本体部32は、上方からの視点において、前方側(他方側)の端部が、内側壁22Dの前方側の端部と、前側壁22Cの車室内側の端部とが合わさる箇所に向かって延びる姿勢をとるようになっている。つまり、下側係合部36における第1延設部41と第2延設部42とのなす角度は、第2延設部42が内側壁22Dに沿った状態となっている場合に、キャップ本体部32が上記の姿勢を取るような角度に設定されている。そして、上述したように、キャップ30を上下ガイド部72に沿って下降させる際に、キャップ30は、上下方向の移動以外は規制されているため、プルハンドルボックス22へ接触させることなく、キャップ本体部32をプルハンドルボックス22の内部に挿入することができる。なお、下側係合部36の上下ガイド部72に沿った下方への移動は、内側壁面部26Aの膨出部68における上面によって止められ、キャップ30は
図10において30Eに示した位置に位置する。なお、この位置において、キャップ本体部32の下縁が、外側壁22Aの下縁とほぼ一致する高さ位置となる。
【0044】
次いで、キャップ30は、
図13に示すように、車室外側へ向かう方向の移動が可能となる。詳しく言えば、外側壁面部15Aに形成された凹部62の横溝部66は、溝の深さ(車室内外方向の寸法)が縦溝部64の深さより大きくされており、下側係合部36がその横溝部66に入り込むようにして、キャップ30の車室外側に向かう移動が許容される。さらに詳しく言えば、この時、下側係合部36の第2延設部42が内側壁22Dに沿って移動させられる。また、凹部62の横溝部66は、
図14に示すように、車両前方側が溝の深さ(車室内外方向の寸法)が徐々に大きくなる傾斜部66Aを有しており、第2延設部42と第3延設部43との接続部が、この傾斜部66Aによって案内される。したがって、キャップ30は、車室外側かつ車両後方に向かって移動させられ、
図13および
図14における30Fに示した位置に位置するようになっている。
【0045】
続いて、キャップ30は、
図15に示すように、車両後方側に移動させられつつ、キャップ本体部32の前方側の側端部を軸として回動させられて、外側壁22Aに取り付けられる。凹部62の横溝部66は、傾斜部66Aの後方側の部分がほぼ一定の深さとされているため、作業者がキャップ30を車室外側に向かって押し込んでも、下側係合部36の突出部44が横溝部66に当接して、車両後方側に向かって案内され、それにより、キャップ本体部32の前端側は、車室外側に向かって回動させられることになる。つまり、凹部62の横溝部66と内側壁面部26Aとの間に形成されている空間が、下側係合部36の車室内側方向への回動を案内する回動案内部74として機能するようになっている。
【0046】
また、内側壁面部26Aに形成された膨出部68は、車両後方側の端部が、前方側に比較して上方側の部分まで膨出しており、車両前方かつ車室外側を向く傾斜面68Aを有している。この傾斜面68Aには、下側係合部36における第2延設部42の車室内側面が当接するようになっており下側係合部36の車両後方側への移動を規制するともに、キャップ30を取り付け位置である30Iにおいて保持させるためのものとなっている。なお、上側係合部34は、
図15および16に示した動作の際に、前後方向延設溝70と内側壁面部26Aとによって形成された隙間に入り込むようになっている。
【0047】
以上のように、本実施例のプルハンドルキャップ取付構造によれば、キャップ30の位置合わせから始まって、プルハンドルボックス22内への挿入、そして、キャップ本体部32を回動させて外側壁22Aに対して取り付けるまでの移動が、つまり、キャップ30を取り付けるための動作のすべてが、前後方向延設溝70とガイド溝60によって案内されるように構成されているため、キャップ30のプルハンドルボックス22に対する取り付けを容易に行うことが可能とされている。また、ガイド溝60は、取り付けるための動作以外は規制されるようになっているため、プルハンドルボックス22周辺への接触を防止することができる。
【0048】
<他の実施形態>
上記実施例のプルハンドルキャップ取付構造は、車両後方側が先細りするようなプルハンドルボックスの開口形状に採用されていたが、車両前方側が先細りするような開口形状であっても採用することが可能である。また、上記実施例のプルハンドルキャップ取付構造において、ガイド溝60は、上下ガイド部72と回転案内部74とから構成されていたが、その構成に限定されず、上下方向に加えて車両前後方向あるいは車室内外方向を組み合わせた傾斜方向に案内するものであってもよい。そして、ガイド溝の延設方向は、キャップの形状,プルハンドルボックスの形状およびプルハンドル周辺のドアトリムの形状に基づいて定めることができる。
【符号の説明】
【0049】
10…車両用ドアトリム、15…ロアボード〔車室外側部材〕、15A…外側壁面部、20…プルハンドル、22…プルハンドルボックス、22A…外側壁、22D…内側壁、26…ボックス本体部材〔車室内側部材〕、26A…内側壁面部、28…被締結部、30…プルハンドルキャップ、32…キャップ本体部、32A…車両後方側の側端部〔一側端部〕、34…上側係合部、36…下側係合部、41…第1延設部、42…第2延設部、43…第3延設部、44…突出部、60…ガイド溝、62…凹部、64…縦溝部、66…横溝部、72…上下ガイド部、74…回転案内部