(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】デュアルインターフェースカードおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G06K19/077 244
G06K19/077 196
G06K19/077 212
G06K19/077 268
(21)【出願番号】P 2021122051
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2024-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】尾島 崇弘
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016105(JP,A)
【文献】特開2003-152017(JP,A)
【文献】特開2004-171087(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0220919(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106670613(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/054709(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器との接触通信および非接触通信が可能なデュアルインターフェースカードであって、
カード基体と、
前記カード基体の内部に配置された、複数の端部を有するアンテナと、
ICチップおよび当該ICチップと電気的に接続された複数の端子を有するICモジュールと、を備え、
前記ICモジュールは、互いに対向する前記複数の端子および前記複数の端部が、それぞれ電気的に接続されるように前記カード基体に設けられた凹部に配置され、
前記複数の端部は、前記アンテナを構成するアンテナ線による、前記凹部の外周から中心に向けた繰り返しの折り返し構造によって構成され、かつ、その一部が前記凹部に露出しており、
前記凹部は、前記外周の一部を含み、互いに分離した第1凹部と、
前記外周の他の一部を含み、互いに分離した第2凹部と、
前記第1凹部および前記第2凹部のすべてと隣接し、かつこれらよりも中央側に形成された第3凹部と、から構成され、
前記第2凹部には、前記複数の端部の少なくとも一部が露出し、
前記第1凹部よりも前記第2凹部が深く形成され、かつ前記第2凹部よりも前記第3凹部が深く形成されている、デュアルインターフェースカード。
【請求項2】
前記第2凹部には、前記複数の端部の前記アンテナを構成するアンテナ線による、前記凹部の外周から中心に向けた繰り返しの折り返し構造が連続的に露出している、請求項1に記載のデュアルインターフェースカード。
【請求項3】
前記第1凹部には、前記複数の端部の前記アンテナを構成するアンテナ線による、前記凹部の外周から中心に向けた繰り返しの折り返し構造のうち、少なくとも前記アンテナの前記折り返し構造の屈曲部が露出せずに重畳しており、
前記第2凹部には、前記屈曲部以外の部分が露出している、請求項1に記載のデュアルインターフェースカード。
【請求項4】
前記ICモジュールは、互いに対向する前記複数の端子および前記複数の端部が、異方導電性フィルムを介してそれぞれ電気的に接続される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のデュアルインターフェースカード。
【請求項5】
前記異方導電性フィルムは、前記第1凹部および前記第2凹部と重畳するように配置される、請求項4に記載のデュアルインターフェースカード。
【請求項6】
前記外周は、前記カード基体の短辺および長辺と略平行な辺を有する略矩形であり、前記複数の端部は、前記アンテナを構成するアンテナ線による、前記凹部の前記カード基体の短辺と略平行な辺である前記外周から中心に向けた繰り返しの折り返し構造によって構成される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のデュアルインターフェースカード。
【請求項7】
前記アンテナの前記折り返し構造の屈曲部以外の部分が前記外周に沿う直線に対して傾斜している、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のデュアルインターフェースカード。
【請求項8】
前記凹部は、前記外周の一部を含み、前記第3凹部と隣接する第4凹部をさらに備え、
前記第4凹部は、前記第1凹部よりも深く、かつ前記第3凹部よりも浅く形成され、
前記ICモジュールの前記第4凹部と対向する面には、前記第4凹部よりも小さい領域の凸部が形成されている、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のデュアルインターフェースカード。
【請求項9】
外部機器との接触通信および非接触通信が可能なデュアルインターフェースカードの製造方法であって、
第1基材に対して、熱圧を掛けながらアンテナ線を埋め込み、前記第1基材の一方の面に複数の端部を有するアンテナを形成するアンテナ形成工程と、
アンテナが形成された前記第1基材に対して、前記アンテナを挟むように第2基材を積層する積層工程と、
前記第1基材と前記第2基材とが積層された積層体をカードサイズのカード基体に打ち抜く打抜工程と、
前記カード基体に、ICモジュールを埋設するための凹部を形成する凹部形成工程と、
ICチップおよび当該ICチップと電気的に接続された複数の端子を有するICモジュールを準備するICモジュール準備工程と、
互いに対向する前記複数の端子および前記複数の端部が、それぞれ電気的に接続されるように、導電接着層を介して前記ICモジュールを前記カード基体の前記凹部に接着するICモジュール接着工程と、を備え、
前記複数の端部は、前記アンテナを構成するアンテナ線による、前記凹部の外周から中心に向けた繰り返しの折り返し構造によって構成され、かつ、その一部が前記凹部に露出しており、
前記凹部は、前記外周の一部を含み、互いに分離した第1凹部と、
前記外周の他の一部を含み、互いに分離した第2凹部と、
前記第1凹部および前記第2凹部のすべてと隣接し、かつこれらよりも中央側に形成された第3凹部と、から構成され、
前記第2凹部には、前記複数の端部の少なくとも一部が露出し、
前記第1凹部よりも前記第2凹部が深く形成され、かつ前記第2凹部よりも前記第3凹部を深く形成する、デュアルインターフェースカードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部機器との接触通信および非接触通信が可能なデュアルインターフェースカードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICカードとして、カード表面の外部接続端子を通じて電気信号の入出力を行う接触ICカードや、アンテナを介して電磁誘導等により電気信号の入出力を行う非接触ICカードが用いられている。また、これらに加えて、カードが備える単一のICチップにより、接触ICカードの機能と非接触ICカードの機能とのいずれをも実現できる接触および非接触共用ICカード、すなわちデュアルインターフェースカードも用いられている。中でも、デュアルインターフェースカードは、金融決済時には入出力データの外部漏洩の抑制に効果的な接触ICカードとして使用でき、部屋への入退室時や駅の改札機等に対しては近接状態でデータのやり取りを行う利便性の高い非接触ICカードとして使用できる。このため、デュアルインターフェースカードについても、市場での普及が進んでいる。
【0003】
ところで、デュアルインターフェースカードの製造は以下のようにして行われる。まず、特許文献1に記載されるように、1または複数のコアシートを含むカード基材を形成し、当該カード基材の表面から、ICモジュールを埋め込む埋め込み予定領域を切削する。そして、当該ICモジュールを、埋め込み予定領域に埋め込む。ここで1または複数のコアシートのうちの1つに導線が配置されており、導線が、前記非接触通信機能を提供するための巻線アンテナ部、およびICモジュールの端子と電気的に接触している接触端子部を形成しており、その接触端子部は、例示的にはメアンダ型状に配置されている。
【0004】
ここで、埋め込み予定領域は、第1の凹部、第2の凹部、および第1の凹部に存在する接点開口部を含むように切削され、第1の凹部は、ICモジュールの基板部を収容するためのもので、カード基材内部の存在する導線の接触端子部を露出しない深さまで切削する。また、第2の凹部は、ICモジュールの封止部を収容するためのものであり、カード基材内部に存在する導線の接触端子部を貫通するまで切削する。一方、第1の凹部に存在する接点開口部は、接触端子部が露出するまで第1の凹部よりも深く切削される。接点開口部に導電性接着剤を充填することで、接触端子部と、ICモジュールの基板部の裏側の端子とが導電性接着剤を介して電気的に接触される。また、ICモジュールの基板部の裏側に接着テープを貼着することによって、ICモジュールが埋め込み予定領域の第1の凹部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デュアルインターフェースカードの製造の効率化を図るには、ICモジュールおよびアンテナの電気的接続と、ICモジュールおよびカード基体の機械的接続とのそれぞれを、同一材料の接着剤で行うことが望ましい。一方、接着層の材料や特性により、ICモジュールおよびアンテナの電気的接続を図る上で要求される接着条件と、ICモジュールおよびカード基体の機械的接続を図る上で要求される接着条件とは異なることが多く、特に、非接着体間の距離条件が接着力に及ぼす影響は大きいと考えられる。
【0007】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、ICモジュールおよびアンテナの電気的接続と、ICモジュールおよびカード基体の機械的接続との両方の信頼性を向上させ、製造の効率化が図れるデュアルインターフェースカードおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施の形態による、外部機器との接触通信および非接触通信が可能なデュアルインターフェースカードは、カード基体と、前記カード基体の内部に配置された、複数の端部を有するアンテナと、ICチップおよび当該ICチップと電気的に接続された複数の端子を有するICモジュールと、を備え、前記ICモジュールは、互いに対向する前記複数の端子および前記複数の端部が、それぞれ電気的に接続されるように前記カード基体に設けられた凹部に配置され、前記複数の端部は、前記アンテナを構成するアンテナ線による、前記凹部の外周から中心に向けた繰り返しの折り返し構造によって構成され、かつ、その一部が前記凹部に露出しており、前記凹部は、前記外周の一部を含み、互いに分離した第1凹部と、前記外周の他の一部を含み、互いに分離した第2凹部と、前記第1凹部および前記第2凹部のすべてと隣接し、かつこれらよりも中央側に形成された第3凹部と、から構成され、前記第2凹部には、前記複数の端部の少なくとも一部が露出し、前記第1凹部よりも前記第2凹部が深く形成され、かつ前記第2凹部よりも前記第3凹部が深く形成されている。
【0009】
また、本実施の別の形態によるデュアルインターフェースカードにおいて、前記第2凹部には、前記複数の端部の前記アンテナを構成するアンテナ線による、前記凹部の外周から中心に向けた繰り返しの折り返し構造が連続的に露出してもよい。
【0010】
また、本実施の別の形態によるデュアルインターフェースカードにおいて、前記第1凹部には、前記複数の端部の前記アンテナを構成するアンテナ線による、前記凹部の外周から中心に向けた繰り返しの折り返し構造のうち、少なくとも前記アンテナの前記折り返し構造の屈曲部が露出せずに重畳しており、前記第2凹部には、前記屈曲部以外の部分が露出してもよい。
【0011】
また、本実施の別の形態によるデュアルインターフェースカードにおいて、前記ICモジュールは、互いに対向する前記複数の端子および前記複数の端部が、異方導電性フィルムを介してそれぞれ電気的に接続されてもよい。
【0012】
また、本実施の別の形態によるデュアルインターフェースカードにおいて、前記異方導電性フィルムは、前記第1凹部および前記第2凹部と重畳するように配置されてもよい。
【0013】
また、本実施の別の形態によるデュアルインターフェースカードにおいて、前記外周は、前記カード基体の短辺および長辺と略平行な辺を有する略矩形であり、前記複数の端部は、前記アンテナを構成するアンテナ線による、前記凹部の前記カード基体の短辺と略平行な辺である前記外周から中心に向けた繰り返しの折り返し構造によって構成されてもよい。
【0014】
また、本実施の別の形態によるデュアルインターフェースカードにおいて、前記アンテナの前記折り返し構造の屈曲部以外の部分が前記外周に沿う直線に対して傾斜してもよい。
【0015】
また、本実施の別の形態によるデュアルインターフェースカードにおいて、前記凹部は、前記外周の一部を含み、前記第3凹部と隣接する第4凹部をさらに備え、前記第4凹部は、前記第1凹部よりも深く、かつ前記第3凹部よりも浅く形成され、前記ICモジュールの前記第4凹部と対向する面には、前記第4凹部よりも小さい領域の凸部が形成されてもよい。
【0016】
本実施の別の形態による、外部機器との接触通信および非接触通信が可能なデュアルインターフェースカードの製造方法は、第1基材に対して、熱圧を掛けながらアンテナ線を埋め込み、前記第1基材の一方の面に複数の端部を有するアンテナを形成するアンテナ形成工程と、アンテナが形成された前記第1基材に対して、前記アンテナを挟むように第2基材を積層する積層工程と、前記第1基材と前記第2基材とが積層された積層体をカードサイズのカード基体に打ち抜く打抜工程と、前記カード基体に、ICモジュールを埋設するための凹部を形成する凹部形成工程と、ICチップおよび当該ICチップと電気的に接続された複数の端子を有するICモジュールを準備するICモジュール準備工程と、互いに対向する前記複数の端子および前記複数の端部が、それぞれ電気的に接続されるように、導電接着層を介して前記ICモジュールを前記カード基体の前記凹部に接着するICモジュール接着工程と、を備え、前記複数の端部は、前記アンテナを構成するアンテナ線による、前記凹部の外周から中心に向けた繰り返しの折り返し構造によって構成され、かつ、その一部が前記凹部に露出しており、前記凹部は、前記外周の一部を含み、互いに分離した第1凹部と、前記外周の他の一部を含み、互いに分離した第2凹部と、前記第1凹部および前記第2凹部のすべてと隣接し、かつこれらよりも中央側に形成された第3凹部と、から構成され、前記第2凹部には、前記複数の端部の少なくとも一部が露出し、前記第1凹部よりも前記第2凹部が深く形成され、かつ前記第2凹部よりも前記第3凹部を深く形成する。
【発明の効果】
【0017】
本実施の形態によれば、ICモジュールおよびアンテナの電気的接続と、ICモジュールおよびカード基体の機械的接続との両方の信頼性を向上させ、製造の効率化が図れるデュアルインターフェースカードおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係るデュアルインターフェースカードの構造を説明する平面図である。
【
図2】
図1においてA-A線で切った断面を示す断面図である。
【
図3】
図1においてB-B線で切った断面を示す断面図である。
【
図4】ICモジュール並びにICモジュールおよびアンテナの接続を説明する図である。
【
図5】第2実施形態に係るデュアルインターフェースカードの構造を説明する
図1(b)に対応する平面図である。
【
図6】
図5においてD-D線で切った断面を示す
図3に対応する断面図である。
【
図7】第3実施形態に係るデュアルインターフェースカードの構造を説明する
図1(b)に対応する平面図である。
【
図8】第4実施形態に係るデュアルインターフェースカードの構造を説明する
図1(b)に対応する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面等を参照して、本開示のデュアルインターフェースカードの一例について説明する。ただし、本開示のデュアルインターフェースカードは、以下に説明する実施形態や実施例には限定されない。
【0020】
なお、以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略する。本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0021】
1.第1実施形態
本開示のデュアルインターフェースカードの第1実施形態の一例について説明する。ここで、説明の便宜上、デュアルインターフェースカード1についてXYZ座標系を設定する。まず、
図1(a)や
図2(b)等に示すように、デュアルインターフェースカード1の主面の法線方向にZ軸をとる。そして、ICモジュール7の外部接続端子71が配置されていない側の主面から、当該外部接続端子71が配置されている側の主面に向かう方向を+Z方向または厚さ方向の上方とし、その反対方向を-Z方向または厚さ方向の下方とする。
【0022】
また、デュアルインターフェースカード1を+Z方向から見たとき、デュアルインターフェースカード1の両短辺およびZ軸に垂直な直線をX軸とし、外部接続端子71に近い側の一の短辺から他の短辺に向かう方向を+X方向または右方向とし、その反対方向を-X方向または左方向とする。さらに、X軸およびZ軸に垂直な軸をY軸とし、外部接続端子71から遠い側の一の長辺から他の長辺に向かう方向を+Y方向または上方とし、その反対方向を-Y方向または下方とする。
【0023】
ここで、
図1(a)は、デュアルインターフェースカード1を+Z方向から見た平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のデュアルインターフェースカード1のうち、外部接続端子71付近を拡大したアンテナ8の配置を説明する図である。ただし、アンテナ8の構成をわかり易くするため、ICモジュール7を外した状態で表記している。一方、
図2(a)は、
図1(b)のデュアルインターフェースカード1をA-A線に沿った面で切った断面を-Y方向から見た図である。
図2(a)は、ICモジュール7を省略した図であり、
図2(b)は、
図2(a)において、ICモジュール7が搭載された状態の図である。また、
図3(a)は、
図1(b)のデュアルインターフェースカード1をB-B線に沿った面で切った断面を-X方向から見た図であり、
図3(a)は、ICモジュール7を省略した図を示し、
図3(b)は、
図3(a)において、ICモジュール7が搭載された状態の図である。
【0024】
図1(a)に示すように、デュアルインターフェースカード1は、+Z方向側からの平面視において、4隅に丸みを備えた略矩形状の薄板の形態を有する。また、デュアルインターフェースカードの+Z方向側の表面には、中心よりもやや左上、すなわち中心よりも-X方向寄りでありかつ+Y方向寄りに外部接続端子71を含むICモジュール7が視認できる。ICモジュール7は、
図2(a)や
図2(b)に示すように、カード基体2に形成された凹部9の中に埋設され、外部接続端子71の+Z方向側の表面がカード基体2の+Z方向側の表面と略同一面となるように配置されている。このようなデュアルインターフェースカード1の形態は、ICカードの国際規格であるISO/IEC7816に準拠している。
【0025】
図2(a)に示すように、デュアルインターフェースカード1のカード本体を構成するカード基体2は、-Z方向側から順に、オーバーシート層6、コア層5、コア層4およびオーバーシート層3が積層されて一体化したものである。典型的には、オーバーシート層6および3が透明色の基材であり、コア層5および4が白色の基材であるが、これには限定されない。また、コア層5および4の間には、アンテナ8を構成するアンテナ線83が両者に挟まれるように配置されている。
【0026】
このアンテナ8を構成するアンテナ線83は、凹部9のうち、比較的浅く形成されている第2凹部92aの底面92pの領域において、その一部が露出しており、当該領域以外では、カード基体2の内部に完全に埋設されている。言い換えると、アンテナ線83は、カード基体2の内部に埋設されているが、カード基体2を切削して凹部9を形成する工程で、アンテナ線83の一部が、断線しない程度に一緒に切削され、そのアンテナ線83の切削面が、第2凹部92aの底面92pに露出している。なお、凹部9は、外周97側に沿って形成された、第2凹部92aよりも浅い第1凹部91と、第2凹部92aよりも凹部9の中央側に形成され、当該第2凹部92aよりも深い第3凹部93をさらに備えている。
【0027】
ICモジュール7は、
図2(b)に示すように、外部接続端子71およびこれを支持する基板72が前述した凹部9の第2凹部92aの底面92pに載置されるように埋設され、基板72とカード基体2の第2凹部92aの底面92pとが、導電接着層11を介して機械的に接合される。ちなみに、第3凹部93には、ICモジュール7のうち、突起状部位であるICチップ体74が収納されている。また、基板72の外部接続端子71とは反対側の面には、ICモジュール7が内部に備えるICチップとの電気的接続がされた端子73aが設けられている。このとき、カード基体2の凹部9にICモジュール7を埋設する際の熱圧の作用により、底面92pに露出したアンテナ線83と端子73aとが、導電接着層11を介して電気的に接続する。
【0028】
ここで、大部分がカード基体2の内部に埋設され、その一部が第2凹部92aや92bから露出するように形成されているアンテナ8のアンテナ線83の両端部は、
図1(b)の第1端部81や第2端部82に示すような形態を備える。第1端部81や第2端部82は、凹部9の中央にある第3凹部93を挟んでX軸に沿った左右側に並列的に配置される。アンテナ8の両端部である第1端部81および第2端部82は、それぞれ、アンテナ線83が第2凹部92aおよび92bの外周97から凹部9の中心に向けた繰り返しの折り返し構造によって構成されている。言い換えると、第1端部81および第2端部82は、いわゆるジグザグ形状、メアンダ形状または蛇腹形状と称される構造を備えるように形成されている。このように、凹部9において露出している単位面積当たりのアンテナ線83の露出面積を広くすることで、ICモジュール7の端子73aとアンテナ8との電気的接続の信頼性を向上できる。
【0029】
また、第1端部81および第2端部82が配置される領域のうち、アンテナ線83が+Z方向側に向けて露出している領域である第1露出部86および第2露出部87は、凹部9のうちの第2凹部92aおよび92bの範囲内にそれぞれ形成されている。また、凹部9のうちの第3凹部93および第2凹部92a、92bを除く部分に+Y方向側および-Y方向側に分離した第1凹部91が形成されている。ここで、第2凹部92aおよび92bは略同一の深さであり、いずれも第1凹部91よりも深く形成される。なお、理解の容易化を図るため、
図1(b)では、第1凹部91の領域を横線模様で表示し、第2凹部92aおよび92bの領域を点状模様で表示している。なお、後述する
図5、
図7(a)および
図8(a)も同様である。
【0030】
図3(a)および
図3(b)に示すように、カード基体2の凹部9のうち、ICモジュール7の基板72が埋設される箇所には、第1凹部91および第2凹部92a、92bという2種類の深さの凹部が存在する。このため、場所によって基板72とカード基体2との隙間の距離が異なり、その結果、両者に挟まれた導電接着層11の接着後の厚さが異なる。すなわち、基板72のうち端子73aが形成された領域と、端子73aからX方向に沿って離間した領域とでは、これと対向するカード基体2の凹部9の深さが異なり、前者の領域には第2凹部92aが対向し、後者の領域には第2凹部92aよりも浅い第1凹部91が対向する。
【0031】
ここで、端子73aは所定の厚さの銅箔等により形成された層であるため、基板72の-Z方向側の面からさらに所定の厚さ分だけ同一方向に延在している。よって、ICモジュール7に熱圧を掛けてカード基体2の側に押し付けたとき、導電接着層11を介した端子73aと第2凹部92aの底面92pに露出したアンテナ線83との距離が適正範囲となるように、第2凹部92aの深さが定められる。すなわち、当該距離において、端子73aおよびアンテナ線83との良好な導通を得ることができる。
【0032】
しかし、端子73aからY軸方向に沿って離間した基板72の領域では、基板72とカード基体2との隙間が上述した当該距離であっても、ICモジュール7およびカード基体2を良好に機械的接続できるとは限らない。すなわち、端子73aおよびアンテナ線83が良好な電気的接続を行い得るための隙間の条件と、ICモジュール7およびカード基体2が良好な機械的接続を行い得るための隙間の条件とは、一般的に異なっている。
【0033】
これに対して、本実施形態では、端子73aからY軸方向に沿って離間した基板72の領域では、基板72とカード基体2との隙間が、ICモジュール7およびカード基体2の接着力を向上し、両者の機械的接続を良好とするべく、カード基体2の凹部9の深さを変更している。具体的には、当該領域の凹部9を、第2凹部92aよりも浅い第1凹部91としている。なぜならば、第2凹部92aの深さは、基板72から-Z方向に飛び出して延在する端子73aとアンテナ線83との電気的接続を考慮して定めたものである。したがって、端子73aが存在しない領域において、カード基体2の凹部9の深さを第2凹部92aと同一にすると、基板72とカード基体2との間隔が長すぎて導電接着層11が十分に圧縮されず、適正な接着力が得られないからである。
【0034】
よって、本実施形態のデュアルインターフェースカード1は、ICモジュール7およびアンテナ8の電気的接続と、ICモジュール7およびカード基体2の機械的接続との両方の信頼性を向上させることができる。具体的には、同一の導電接着層11に対して、ICモジュール7およびアンテナ8の電気的接続を良好とする第2凹部92a、92bの深さと、ICモジュール7およびカード基体2の機械的接続を良好とする第1凹部91の深さとを異なるようにしている。すなわち、第1凹部91よりも第2凹部92a、92bが深く形成されている。また、第1凹部91および第2凹部92a、92bをこのように構成することで、ICモジュール7およびアンテナ8の電気的接続と、ICモジュール7およびカード基体2の機械的接続とを同一の導電接着層11によって実現できる。このため、デュアルインターフェースカード1の製造の効率化が図れる。
【0035】
以下に、本実施形態のデュアルインターフェースカード1の構成およびその製造方法の詳細を説明する。
【0036】
(a)カード基体
カード基体2は、デュアルインターフェースカード1を構成する、ICモジュール7を除くカード本体を指す。カード基体2は、前述したとおり、典型的には厚さ方向の-Z方向側の一端からオーバーシート層6、コア層5、コア層4およびオーバーシート層3がこの順に積層された構成を有している。また、コア層5およびコア層4の間には、ループ形状に巻かれ、被覆導線等から形成されたアンテナ8が配置されている。カード基体2は、凹部9が形成される前のもの、および凹部9の形成後のものの両方を指すことがあり、アンテナ8を含まないもの、およびこれを含むものの両方を指す場合がある。また、アンテナ8の始点および終点のいずれか一方および他方となる第1端部81および第2端部82は、前述したようにアンテナ線83が所定の形状に加工されて構成されている。
【0037】
ただし、カード基体2の層構成は、これに限らず、オーバーシート層、コア層、オーバーシート層の3層構成、コア層、コア層の2層構成、または、オーバーシート層、コア層、アンテナが形成されたコア層、コア層、オーバーシート層の5層構成等であってもよい。また、カード基体2のオーバーシート層3または6のコア層4または5とは反対側の表面に印刷や磁気ストライプの埋め込みがされていてもよく、コア層4または5のオーバーシート層3または6との隣接表面に印刷がされていてもよい。
【0038】
カード基体2の厚さは、ISO/IEC7816等の規格に準拠する観点からは、0.76mm以上、0.84mm以下であることが好ましいが、この範囲外であってもよい。
【0039】
(i)コア層
コア層4および5としては、白色または着色された各種のプラスチックシートを幅広く使用することができ、以下にあげる単独のフィルムあるいはそれらの複合フィルムを使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET-G(テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、ABS、ポリアクリル酸エステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、等である。コアシートの厚さは、カードの全体厚さを勘案して適宜に選択することができるが、例えば、0.25mm以上、0.38mm以下程度とすることができる。なお、後述するように、コア層4または5のいずれかの表面上に、両コア層に挟まれる位置関係となるようにアンテナ8を配置する必要がある。
【0040】
(ii)オーバーシート層
オーバーシート層3および6としては、通常、コア層と同質の材料を使用するが、厚さが0.05mm以上、0.10mm以下程度の透明材料が使用されることが多い。コア層およびオーバーシート層の積層体を熱プレス等で一体化する際のカールの発生を防止する観点からは、オーバーシート層3および6の厚さが同一であることが好ましいが、必ずしも同一でなくてもよい。
【0041】
オーバーシート層の材料は、熱により接着性を有するものであればよいが、オーバーシート層自体が熱による接着性を有しない場合でも、熱等により接着力を発生させる公知の接着剤の層をコア層およびオーバーシート層の間に追加形成することで両者を一体化できる。また、デュアルインターフェースカード1を磁気カードとして使用する場合には、オーバーシート層3および6のいずれかまたは両方について、コア層4および5とは反対の主面側に磁気テープを熱転写等によりあらかじめ埋め込んでおいてもよい。
【0042】
(iii)アンテナシート
本実施形態では、後述するように、コア層5の一方の面に、アンテナ8が形成され、当該アンテナ8を構成するアンテナ線83の端部である第1端部81および第2端部82が、それぞれ所定の形状に加工されて配置されている。このようなコア層5へのアンテナ8の形成は、アンテナ線83に対して所定の熱圧を掛け、コア層5およびアンテナ線83の被覆物を溶融しながらアンテナ線83をコア層5に埋め込むことによって行う。アンテナ8がコア層5に埋め込まれた中間生成物を、アンテナシート12と称することがある。アンテナシート12は、それのみでデュアルインターフェースカード1を製造するための部品として市場に流通させることができ、あるいは、コア層5等のシート材を加工業者に供給し、これを当該加工業者がアンテナシート12に加工して供給元に納品する、という商形態が存在し得る。
【0043】
アンテナシート12の形成方法の詳細は後述するが、概略として以下のようになる。まず、コア層5の表面に、絶縁体部材で被覆された被覆導線を、第1端部81または第2端部82のいずれか一方を始点とし、他方を終点として、巻き線形成機により埋め込む。すなわち、コア層5に対して所定の熱圧を加えながら、
図1(a)に示すようなループ形状にアンテナ供給ヘッドを描画させ、当該アンテナ供給ヘッドから供給されたアンテナ線83をコア層5に順次、埋め込む。
【0044】
ここで、アンテナ線83の始点および終点のいずれかとなる第1端部81および第2端部82は、後述する所定の形状となるように、ICモジュール7の搭載予定位置の左右方向に並んで、その一部がICモジュール7の端子73aおよび73bと重畳するように配置される。そして、巻き線形成機は、アンテナ8の終点となる第1端部81または第2端部82のいずれかを形成後にアンテナ線83を切断する。このようにしてアンテナシート12が完成する。
【0045】
(iv)アンテナ
コア層5に形成されたアンテナ8は、その第1端部81および第2端部82に、ICモジュール7の端子73aおよび73bがそれぞれ電気的に接続することにより、ICモジュール7が備えるICチップおよびアンテナ8が非接触通信の通信回路を構成する。当該通信回路は、例えば、ISO/IEC18092やISO/IEC144443等で規定される13.56MHzのHF周波数帯域を用いて近接通信を行うものでもよい。または、それ以外の、例えば920MHzのUHF周波数帯域や125KHzのLF周波数帯域、マイクロ波の2.45GHzの周波数帯を用いて通信を行うものでもよい。
【0046】
外部機器であるリーダライタ等にデュアルインターフェースカード1をかざしたときに、当該通信回路にはリーダライタが形成する磁界等により電流が発生して、ICチップに電力を供給する。これにより、ICチップは駆動可能となり、リーダライタと非接触による情報の送受信が可能であり、メモリに対する情報の読み出しや書き換え等を行なう。
【0047】
アンテナ8を構成するアンテナ線83は、典型的には、銅線の周囲が絶縁体部材で被覆された被覆導線により形成される。なお、これ以外にも、Cu-Ni、Cu-Cr、Cu-Zn、Cu-Sn、Cu-Be等の銅合金線、または鉄、ステンレス、アルミ等の種々の金属線、金属合金線を選択することもできる。デュアルインターフェースカード1は、被覆導線を用いることにより、例えば銅箔エッチング方式等に比較して安価に製造できる。
【0048】
アンテナ線83の直径は、非接触の通信回路としての特性を確保できる限りにおいて、特段の制限はないが、例えば、0.03mm以上、0.30mm以下とすることができ、好ましくは、0.05mm以上、0.15mm以下とすることができる。後者の範囲とすることで、埋め込み加工による熱圧や切削加工による外力への耐久性が向上でき、良好な通信特性を確保できる。
【0049】
次に、第1端部81および第2端部82の構成の詳細を説明する。
図1(b)において-X方向側から+X方向に向けて延びているアンテナ線83の一端は、その後、凹部9の第3凹部93の-X方向側付近に外周97から中心に向けた繰り返しの折り返し構造である第1端部81を構成する。同様に、+X方向側から-X方向に向けて延びているアンテナ線83の一端は、その後、凹部9の+X方向側付近に外周97から中心に向けた繰り返しの折り返し構造である第2端部82を構成する。アンテナ線83は、折り返し構造が複数回連続するように延びている。
【0050】
当該折り返し構造は、+Y方向側および-Y方向側の端、すなわち上端および下端において略円弧状の屈曲部を有し、上端の屈曲部と下端の屈曲部とを結ぶ屈曲部以外の部分が略直線状または略曲線状である。ただし、屈曲部以外の部分は、アンテナ線83のコア層5への埋め込み加工の作業効率やアンテナ線83の材料節約の観点から、なるべく略直線状に形成することが好ましい。
【0051】
本実施形態では、外周97は、カード基体2の短辺および長辺と略平行な辺を有する略矩形である。また、第1端部81および第2端部82は、アンテナ8を構成するアンテナ線83による、凹部9のカード基体2の短辺と略平行な辺である外周97の辺97aおよび97bから、それぞれ中心に向けた繰り返しの折り返し構造によって構成される。
【0052】
また第1端部81の当該折り返し構造の屈曲部以外の部分は、凹部9の外周97の辺97aに沿うY軸に平行な直線に沿って延びており、隣り合う屈曲部以外の部分同士のジグザグ形状のアンテナ線83の中心間距離、すなわちピッチが略一定である。さらには、第1端部81の全体および第1露出部86におけるY軸に沿った方向の幅がW12であり、アンテナ線83が露出した部分のX軸に沿った方向の幅が第2凹部92aの幅と略同一となるような矩形の輪郭に沿うように配置されている。当該折り返し構造の+Y方向側の端から-Y方向側の端までの距離、すなわち上端から下端までの長さは、略同一長さとなる。
【0053】
また、本実施形態では、第1端部81のうち、アンテナ線83が実際にカード基体2から露出している領域である第1露出部86は、第2凹部92aの-X方向側の端から+X方向側の端に至るまでのアンテナ線83の連続した区間を含む。すなわち、アンテナ線83は、当該折り返し構造の屈曲部の部分と、屈曲部以外の部分とを含めた全体が第2凹部92aにおいて露出しており、カード基体2や被覆材による被覆がなく、導線が剥き出しになっている。このとき、第2凹部92aのY軸に沿った方向の幅W11は、第1端部81のY軸に沿った方向の幅W12よりも長い。なお、以上の第1端部について述べた内容は、凹部9の辺97aを97bに、第2凹部92aを92bに、第1露出部86を第2露出部87に、それぞれ置き換えることにより、第2端部82についても同様にあてはまる。
【0054】
上述のアンテナ線83のピッチは、巻き線形成機の能力や、コア層5へアンテナ線83を埋め込んだ後のアンテナシート12の品質等にも依存するが、0.50mm以下であることが好ましく、0.25mm以下であることがさらに好ましい。当該ピッチが前者の範囲であることにより、第1端部81における単位面積当たりのアンテナ線83の露出面積を向上でき、ICモジュール7の端子73aとの電気的接続の領域を拡張できる。これにより、電気的な接続信頼性が上がるとともに、アンテナ線83と端子73aとの接点部分の電気抵抗を下げることができる。また、当該ピッチが後者の範囲であることにより、上述の効果をさらに大きくできる。
【0055】
なお、本実施形態では、第1端部81のX軸に沿った領域のうち、+X方向側の端は第2凹部92aと第3凹部93との境界と略同一位置であり、-X方向側の端は凹部9の外周97である第2凹部92aの端よりも-X方向側にある。このように、第1端部81の+X方向側の端が第2凹部92aと第3凹部93との境界と略同一位置であるか、これよりも-X方向側にある場合は、第3凹部93の切削時にアンテナ線83を切削しないか、アンテナ線83の切削量を低減することができる。このため、切削する深さが深いほど生じやすくなるアンテナ線83の分岐、すなわちヒゲの発生を抑制できる。
【0056】
また、第1端部81のX方向に沿った領域のうち、-X方向側の端が凹部9の外周97である第2凹部92aの端よりも-X方向側にあることにより、アンテナ8のコア層5に対する配置ずれや凹部9の形成位置のずれがあっても、アンテナ線83の密集した領域が途切れずに存在する。このため、ICモジュール7の端子73aとの確実な電気的接続が図れる。ただし、第1端部81のX方向に沿った領域のうち、+X方向側の端が第2凹部92aと第3凹部93との境界よりも+X方向側にあってもよく、-X方向側の端が凹部9の外周97である第2凹部92aの端よりも+X方向側にあってもよい。
【0057】
上述の説明は、アンテナ8の第1端部81およびこれと電気的に接続するICモジュール7の端子73aとの関係についてのものであるが、同様の関係が第2端部82およびこれと電気的に接続する端子73bとの間にも成り立つ。また、当該実施形態では、ICモジュール7と電気的な接続を図るためのアンテナ8の端部として第1端部81および第2端部82の2箇所である前提で説明したが、アンテナ8の端部は3箇所以上設けてもよく、これに対応するICモジュール7の端子数もこれと同数設けてもよい。
【0058】
(b)ICモジュール
次に、ICモジュール7の主要な構成要素の各部について、主に
図2(b)や
図4に基づいて説明する。
図4(a)は、
図1(a)と同様に、+Z方向側からICモジュール7の外部接続端子71を見た図である。
図4(b)は、ICモジュール7を
図4(a)とは反対側の-Z方向側から見た図である。ここでは、内部を透視できるよう、ICチップ体74のモールド部74bの大半を省略して記載している。また、
図4(c)は、
図2(b)の端子73a付近のC部を拡大した断面図である。
【0059】
ICモジュール7は、カード基体2に対して形成された凹部9に埋設され、ICモジュール7の端子73aおよび73bがアンテナ8の第1端部81および第2端部82とそれぞれ電気的に接続することで、非接触通信の通信回路を形成できる。また、ICモジュール7が備える外部接続端子71を通じて、接触式リーダライタ等と接触通信を行うことができる。
【0060】
基板72はガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の可撓性を有する樹脂フィルムの表裏に銅箔が接着剤を介して貼り込まれ、当該樹脂フィルムの表裏面に貼り込まれた銅箔を、所定のパターンを形成するように残存させたものである。具体的には、当該樹脂フィルムの一方の銅箔面に外部接続端子71を、他方の銅箔面に端子73aおよび73bを形成するように、感光材の塗付、所定パターンが形成されたフィルム版の載置、露光、非感光部位のエッチング除去、を順次行う。これにより、当該樹脂フィルムの表裏面に所定のパターンの銅箔が一部残存した基板72が形成される。また、基板72にはあらかじめ、外部接続端子71へのワイヤボンディングのための貫通孔であるボンディングホール76が複数箇所設けられている。
【0061】
基板72の厚さに特に制限はないが、カード基体2の曲げにある程度、追従できることを考慮して、例えば、0.03mm以上、0.50mm以下とすることができ、好ましくは、0.07mm以上0.20mm以下とすることができる。
【0062】
外部接続端子71には、
図4(a)に示すように、ISO/IEC7816―2規格で定められた、外部端子の各区画が画定されている。これらの各区画とICチップ74aとは、
図4(b)に示すように、基板72に設けられた上述のボンディングホール76を通じて、金ワイヤ等のワイヤ75によって結線されている。また、端子73aおよび73bとICチップ74aとの間も同様に、ワイヤ75によって結線されている。これらのボンディングホール76やワイヤ75は、モールド部74bによって被覆保護されている。
【0063】
基板72の、外部接続端子71の形成面とは反対側の面に、ICチップ体74が配置されている。ICチップ体74は、基板72に接着剤を介して接着、固定されたICチップ74aと、結線のためのボンディング用のワイヤ75と、これらを保護するための封止樹脂であるモールド部74bとから構成される。ICチップ74aは、接触通信および非接触通信の両方の動作を制御するためのCPUと、RAMやROM、EEPROM、フラッシュメモリー等の記憶装置と、接触通信および非接触通信の入力信号解読と出力信号生成を行うインターフェース回路や電力発生回路等の各種回路と、を備えている。なお、各種回路はICチップ74aとは別個の素子として設けられていてもよい。
【0064】
モールド部74bは、ICチップ74aやワイヤ75を外力負荷や環境負荷から保護するために、これらを被覆する突起状部位として設けられる。モールド部74bとして、紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂等が使用される。
【0065】
ICチップ体74の厚さは、内部に備えるICチップ74aの厚さやボンディングされたワイヤの形状にもよるが、例えば、0.45mm以上、0.75mm以下とすることがでる。また、ICモジュール7の総厚は、例えば、0.35mm以上、1.0mm以下とすることができ、好ましくは、0.40mm以上、0.65mm以下とすることができる。後者の範囲であることにより、第3凹部93の深さを0.7mm以下にすることができ、デュアルインターフェースカード1の全体の厚さをISO/IEC7816規格に定められた0.84mm以下に抑えることができるからである。
【0066】
(c)導電接着層
カード基体2に対してICモジュール7を埋設するための凹部9を、エンドミルによる切削加工等によって形成した後、ICモジュール7を当該凹部9に埋設固定し、電気的、機械的に接続する導電接着層11について説明する。導電接着層11は、
図4(c)に示すように、アンテナ線83の一部が切削されて底面92pに露出している部分のコア層5と、その上方に埋設、配置されるICモジュール7の基板72および基板72に形成された端子73aとに挟まれるように配置される、液状またはテープ状の部材である。
【0067】
導電接着層11は、あらかじめ、ICモジュール7の基板72の外部接続端子71とは反対側の面に塗付、貼付されていてもよく、カード基体2の凹部9の切削後の底面92p上に塗付、貼付されていてもよい。
【0068】
典型的な導電接着層11は、ICモジュール7と切削済みのカード基体2との機械的接続を兼ねるため、基板72の裏面の全面または凹部9のうちの、凹部9の外周97に沿って配置される第1凹部91および第2凹部92a、92bに対応する部位に塗付、貼付されていてもよい。こうすることで、ICチップ74aおよびアンテナ8の電気的接続と、ICモジュール7およびカード基体2の機械的接続とを同一種類の導電接着層11で行うことができ、工程の簡略化に寄与する。
【0069】
しかし、導電接着層11が、基板72の裏面のうち、端子73aおよび73bの領域のみを覆うように塗付、貼付され、その他の基板72の裏面には、導電性を有しない別の接着剤が塗付、貼付されていてもよい。当該別の接着剤が導電性を考慮しなくてもよいことにより、より機械的接続に有利なものを選定し易くできるからである。
【0070】
電気的接続と機械的接続との兼用が図れる導電接着層11としては、ACF(Anisotropic Conductive Film)、すなわち、異方導電性フィルムや、ACP(異方導電性ペースト)を使用できる。また、その他、エポキシ樹脂中に銀粒子をフィラーとして分散した、いわゆる導電性ペースト等を使用できる。中でも、ACFを使用すれば、ICモジュール7の基板72の裏面全体にACFを熱ラミネートしておき、当該ICモジュール7を切削済みのカード基体2の凹部9に埋設後、これを所定温度、荷重でヒートプレスすることにより、ICチップ74aとアンテナ8との電気的接続が容易に図れる。さらには、ICモジュール7のカード基体2への機械的接続も同時に図れるため、ICモジュール7のカード基体2への実装工程を簡易化することができる。
【0071】
導電接着層11としてACFを使用した際の、ICチップ74aおよびアンテナ8の電気的接続と、ICモジュール7およびカード基体2の機械的接続とは、
図4(c)に基づいて以下のように説明できる。導電接着層11は、接着成分を含有するバインダーである接着剤11bの中に、球状樹脂または球状金属の周りに金属膜が形成された導電粒子11aが分散した構成を有している。ここで、アンテナ線83が一部、露出しているコア層5と、ICモジュール7の基板72および基板72に形成された端子73aと、に挟まれるように配置された導電接着層11が圧縮されるように、基板72に対して+Z方向から-Z方向に向かう熱圧を掛ける。
【0072】
その結果、導電接着層11のうち、特に間隔が狭い、コア層5と端子73aとに挟まれた部位に強い熱圧が掛かり、この部位の導電接着層11の導電粒子11aが、導電接着層11の厚さ方向に沿ってコア層5の露出したアンテナ線83および端子73aから押し付けられる。また、導電粒子11aが小さい場合は、導電粒子11aが導電接着層11の厚さ方向に沿ってアンテナ線83から端子73aまで数珠つなぎに重なる。すなわち、導電粒子11aを介して、露出したアンテナ線83と端子73aとが導通する。一方、コア層5と、端子73aの存在しない領域の基板72との間では、導電粒子11aが導電接着層11の厚さ方向に沿ってアンテナ線83および端子73aから押し付けられる程度、または、数珠つなぎに重なる程度にまでは圧縮されない。しかしながら、その熱圧によって生じた接着剤11bの接着力によって、コア層5と基板72とが機械的に接続される。
【0073】
上記より、ICモジュール7は、互いに対向する端子73aおよび73b並びに第1端部81および第2端部82が、例えばACFを介してそれぞれ電気的に接続される。ACFは、第1凹部91および第2凹部92a、92bとZ軸方向に沿った平面視において重畳するように凹部9の外周97に沿う領域に配置される。
【0074】
(d)凹部
カード基体2に対してICモジュール7を埋設するために形成される凹部9は、外周97の一部を含み、互いに分離した第1凹部91を有している。また、当該凹部9は、外周97の他の一部を含み、互いに分離した第2凹部92aおよび92bと、第1凹部91および第2凹部92a、92bのすべてと隣接し、かつこれらよりも中央側に形成された第3凹部93と、を有している。本実施形態では、
図1(b)に示すように、第2凹部92aおよび92bは、中央の第3凹部93を挟むX軸に沿った両側にそれぞれ配置される、Z軸に沿った平面視で略矩形の領域である。前述したように、アンテナ8の第1端部81および第2端部82が、当該第2凹部92aおよび92bとそれぞれ重畳し、その重畳した領域として、アンテナ線83の露出部分である第1露出部86および第2露出部87がそれぞれ構成されている。
【0075】
一方、第1凹部91は、第2凹部92aおよび92bのそれぞれと隣接し、中央の第3凹部93を挟むY軸に沿った両側に分割して配置される領域である。本実施形態では、平面視で第1凹部91と、第1端部81および第2端部82とは、Z軸に沿った平面視で互いに重畳していない。第2凹部92aおよび92bは略同一の深さであるものの、第1凹部91よりも深く形成され、かつ第3凹部93の方が、第2凹部92aおよび92bよりも深く形成されている。
【0076】
ここで、
図3(a)および
図3(b)に示すように、第1凹部91の深さd1および第2凹部92a、92bの深さd2は、それぞれ異なる目的のために、最適な深さとして独立に設定できる。すなわち、第1凹部91の深さd1は、ICモジュール7およびカード基体2を良好に機械的接続することを考慮して定めることができる。また、第2凹部92a、92bの深さd2は、ICモジュール7の端子73a、73bおよび露出したアンテナ線83を良好に電気的接続することを考慮して、第1凹部91の深さd1とは無関係に定めることができる。
【0077】
まず、第1凹部91の深さd1は、以下のように検討することができる。例えば、基板72の厚さをTp1とし、導電接着層11の厚さをTacf1とし、所定の熱圧を掛けた際の導電接着層11の厚さ方向の収縮量をΔacf1とし、カード基体2の厚さ方向の収縮量をΔcb1とする。このとき、ICモジュール7の外部接続端子71の表面がカード基体2の表面と略同一となるようにすると、第1凹部91の深さd1は、d1=Tp1+Tacf1-Δacf1-Δcb1となる。ここで、ICモジュール7およびカード基体2の接着力が最大となる、荷重、温度、時間等の条件である熱圧条件と、そのときのΔacf1およびΔcb1を求めることにより、最適なd1を定めることができる。
【0078】
次に、第2凹部92a、92bの深さd2は、以下のように検討することができる。例えば、基板72から-Z方向側に延在する端子73aの厚さをTp2とし、その他の寸法については上記の定義を流用する。このとき、第2凹部92aの深さd2は、d2=Tp1+Tp2+Tacf1-Δacf1-Δcb1となる。ここで、ICモジュール7の端子73aおよび露出したアンテナ線83の電気的接続がもっとも良好となる熱圧条件と、そのときのΔacf1およびΔcb1を求めることにより、最適なd2を定めることができる。
【0079】
ここで、同一の導電接着層11を、ICモジュール7およびカード基体2の機械的接続と、ICモジュール7の端子73aおよびアンテナ線83の電気的接続の両方に兼用することを考える。この場合は、上述したICモジュール7に掛ける熱圧条件は第1凹部91および第2凹部92a、92bとで同一となる。なお、導電接着層11がACFであり、その導電粒子の平均粒径がdc1である場合、一般的には、Tacf1>dc1であり、適切な電気的接続を図るためには、Tacf1-Δacf1=dc1またはTacf1-Δacf1<dc1であることが好ましい。
【0080】
このとき、端子73aおよびアンテナ線83の空隙を埋めるACFに含まれる導電粒子は、その状態のままあるいは圧縮されて端子73aおよびアンテナ線83の両方と当接するため、確実な電気的接続が図れる。ただし、Tacf1-Δacf1の値を極端に小さくしてしまうと、ACFの導電粒子が破壊されて良好な電気的接続が図れない可能性がある。このような導電粒子の破壊を抑制するため、例えば、Tacf1-Δacf1>dc1/2であることが好ましい。
【0081】
一方、導電接着層11がACFである場合のICモジュール7およびカード基体2の機械的接続を良好にするためのΔacf1の適切値は、上述の適切な電気的接続を図るための条件と同一か、これに近似する範囲であると考えられる。ACFが最適な電気的接続を図れる状態にあるとき、その状態において、端子73aとアンテナ線83とを機械的に固定、維持する接着力も強固であると考えられるからである。仮に、当該機械的接続を良好にする条件と当該電気的接続を良好にする条件が同一である場合、第2凹部92aの深さd2は、第1凹部91の深さd1よりも、端子73aの厚さTp2に近似する分だけ深くする必要がある。
【0082】
例示的には、第1凹部91の深さは、例えば、0.1mm以上、0.4mm以下程度であり、第2凹部92aおよび92bの深さは、例えば0.12mm以上、0.5mm以下程度である。端子73aや73bの厚さが0.015mm以上、0.15mm以下である場合、第2凹部92a、92bの深さと第1凹部91の深さとの差分は、0.005mm以上、0.2mm以下程度となることが好ましい。また、当該差分が、端子73aや73bの厚さTp2の40%以上、120%以下であることがさらに好ましい。特に後者の場合、導電接着層11がACFである場合に、ICモジュール7およびアンテナ8の電気的接続と、ICモジュール7とカード基体2との機械的接続との最適な条件が重なるように、導電接着層11の厚さを熱圧によって調整できるからである。
【0083】
このようにして、ICモジュール7をカード基体2の凹部9に搭載した後の断面は、
図3(a)および(b)に示すようになる。すなわち、第1凹部91における導電接着層11の厚さはd11となり、第2凹部92aおける導電接着層11の厚さは、端子73a以外の領域ではd22となり、端子73aの領域ではd3となる。上述した当該機械的接続を良好にする条件と当該電気的接続を良好にする条件が同一である場合は、d11=d3である。
【0084】
なお、このような凹部9をカード基体2に形成するための具体的な切削順番は、切削加工におけるミリング用プログラムに応じて任意に定めることができる。加工時間の効率化や切削品質の確保の観点から求まる例示的な加工順番は、例えば
図1(b)において、まず、外周97に沿って第1凹部91および第2凹部92a、92bに共通する領域を、第1凹部91の深さにて、左回りまたは右回りにミリングツールを移動させながら切削する。次にこれらの中央側の領域を、第1凹部91よりも深い第3凹部93の深さにて、同様に左回りまたは右回りにミリングツールを移動させながら切削する。
【0085】
そして、最後に、第2凹部92a、92bに共通する領域を、第1凹部91よりも深く、第3凹部93よりも浅い深さにて、ミリングツールを移動させながら切削する。第2凹部92a、92bの切削は、第2凹部92aのみを左回りまたは右回りにミリングツールを移動させながら切削してから、その後、第2凹部92bのみを同様に切削してもよい。あるいは、第2凹部92a、92bにまたがりながら、ミリングツールを左右方向に移動させて、これを順次上方から下方にずらしながら連続的に切削を行い、第2凹部92a、92bを同時に形成することとしてもよい。
【0086】
(e)デュアルインターフェースカードの製造方法
次に、上述したカード基体2、ICモジュール7および導電接着層11を用いた、デュアルインターフェースカード1の製造方法の一例を説明する。
【0087】
まず、オーバーシート層6または3とは隣接しない側の、コア層5または4のいずれかの表面に、絶縁体部材で被覆された被覆導線をアンテナ線83として、第1端部81または第2端部82のいずれか一方を始点とし、いずれか他方を終点として、巻き線形成機により埋め込む。具体的には、例えば、コア層5に対して所定の熱圧を加えながら、
図1(a)に示すようなループ形状にアンテナ供給ヘッドを描画させ、当該アンテナ供給ヘッドから供給されたアンテナ線83をコア層5に順次、埋め込む。
【0088】
ここで、ICモジュール7の搭載予定位置の左右の所定位置に、第1端部81および第2端部82が左右方向に並ぶようにアンテナ線83を配置し、その終点でアンテナ線83を切断する。第1端部81および第2端部82は、アンテナ8を構成するアンテナ線83による、凹部9の外周97から中心に向けた、繰り返しの折り返し構造によって構成されるように、巻き線形成機の動きを変更してアンテナ線83の配置位置を調整する。また、アンテナ線83の当該折り返し構造の屈曲部以外の部分が外周97に沿う直線であるY軸に沿う直線に沿い、かつ、第1端部81および第2端部82が、それぞれ矩形の輪郭に沿うようにアンテナ8がコア層5に埋め込み形成される。
【0089】
次に、アンテナ8が形成されたアンテナシート12であるコア層5を用いて、
図2(a)に示すとおり、厚さ方向の下側からオーバーシート層6、コア層5、コア層4およびオーバーシート層3をこの順に重ねる。その後、カードが縦横に多面付けで配置された大判シートの積層体の単位で、厚さ方向の上下からステンレス板で挟み込み、当該ステンレス板を介して、当該積層体に対して熱圧を加える。
【0090】
このような熱プレス工程を経ることにより、積層体の各層が一体化した大判シート単位のカード基体を得ることができる。また、オーバーシート層、コア層のいずれかが、所定温度で熱融着しない耐熱性を有する場合には、各層間に所定温度で熱融着する接着シートを挟み、あるいは、接着剤を塗付した上で、これらを熱プレス工程に掛けることにより、一体化した大判シート単位のカード基体を得る。
【0091】
上記により得られた、カードが縦横に多面付けで配置された大判シート単位のカード基体を、打ち抜き機により、ISO/IEC7816のカードサイズであるカード基体2として打ち抜く。また、当該カード基体2に、ICモジュール7を埋設するための凹部9を、エンドミルによる切削加工にて形成する。これにより、切削済みのカード基体2が得られる。凹部9は、ICモジュール7の平板状の基板72を収納するための第1凹部91および第2凹部92a、92bと、凸状のICチップ体74を収納するための第3凹部93と、の合計3段で構成されることは前述したとおりである。
【0092】
ここで、第1凹部91の深さは、ICモジュール7を埋設して、カード基体2に対して接着することと、外部接続端子71の表面が、カード基体2の非切削領域の表面と略同一面となることとを考慮して定められる。また、第2凹部92aや92bの深さは、アンテナ8の第1端部81および第2端部82の埋設深さと対応付けられている。すなわち、第2凹部92a、92bを切削加工により形成したとき、その底面92pには、第1端部81および第2端部82のアンテナ線83の一部が露出する。
【0093】
言い換えると、カード基体2の外部接続端子71の露出する側の表面から第2凹部92a、92bの底面92pまでの深さをd2とする。また、当該表面から第1端部81および第2端部82のいずれか一方のアンテナ線83の上端までの距離をd201とし、当該表面から当該一方のアンテナ線83の下端までの距離をd202とする。このとき、d2、d201およびd202の各値について、d201<d2<d202が成り立つ。これが満たされない場合、切削加工によってアンテナ線83が断線するか、底面92pから露出しない不具合が生じてしまうからである。
【0094】
一方、カード基体2の製造および凹部9を形成するための切削加工とは別に、ICモジュール7への導電接着層11の貼付を行う。ICモジュール7としては、通常、1列取りまたは2列取りで連続的に長尺のテープに当該ICモジュール7が形成されているモジュールテープを使用する。このモジュールテープの外部接続端子71の形成面とは反対側の基板72の面に、テープ状のACFを一定の熱圧を加えながら貼り込んでいく。その後、ACFが貼り込まれたモジュールテープを、角に丸みを有する略長方形状のICモジュール7として打ち抜き機で打ち抜くことで、導電接着層11の貼付がされた個片のICモジュール7を得る。
【0095】
その後、凹部9が形成されたカード基体2に対し、導電接着層11の貼付がされたICモジュール7を埋設し、外部接続端子71に所定のヒートブロックを押し当てて、カード基体2側に向けて所定時間、所定の熱圧を加える。これにより、ACFで構成された導電接着層11を溶融させることで、ICモジュール7の端子73aおよび73bとアンテナ8の第1端部81および第2端部82との電気的接続を図るとともに、ICモジュール7とカード基体2との機械的接続を図る。ACFは、その品種や組成により、熱圧条件に差異はあるが、一例としては、時間を0.5秒以上、10.0秒以下とし、温度を150℃以上、250℃以下とし、圧力を20MPa以上、100MPa以下とすることができる。
【0096】
(f)第1実施形態のデュアルインターフェースカードについて
以上をまとめると、第1実施形態のデュアルインターフェースカード1は、カード基体2と、当該カード基体2の内部に配置された、少なくとも複数の端部である第1端部81および第2端部82を有するアンテナ8と、を備える。さらに、デュアルインターフェースカード1は、ICチップ74a並びに当該ICチップ74aと電気的に接続された複数の端子73aおよび73bを有するICモジュール7を備える。ICモジュール7は、互いに対向する複数の端子73aおよび73b並びに複数の第1端部81および第2端部82が、それぞれ電気的に接続されるようにカード基体2に設けられた凹部9に配置される。
【0097】
複数の端部である第1端部81および第2端部82は、アンテナ8を構成するアンテナ線83による、凹部9の外周97から中心に向けた繰り返しの折り返し構造によって構成され、かつ、その一部が凹部9、すなわち第2凹部92aおよび92bに露出している。これにより、凹部9において露出している単位面積当たりのアンテナ線83の露出面積を高め、ICモジュール7の端子73aや73bとアンテナ8との電気的接続の信頼性を向上できる。
【0098】
また 第2凹部92a、92bは、第1凹部91よりも深く形成され、かつ第2凹部92a、92bよりも第3凹部93が深く形成されている。
【0099】
これにより、ICモジュール7に熱圧を掛けてカード基体2の側に押し付けたとき、第2凹部92aの深さを以下のように定めることができる。すなわち、導電接着層11を介した基板72から凸状に飛び出した構造の端子73aと第2凹部92aの底面92pに露出したアンテナ線83との距離が電気的接続のための適正範囲となるように上記深さを定める。また、端子73aからY軸方向に沿って離間した基板72の領域では、基板72とカード基体2との距離が機械的接続のための適正範囲となるように、第1凹部91の深さを、第2凹部92a、92bの深さとは無関係に定めることができる。ただし、第1凹部91の深さは、少なくとも端子73aの厚さ分を考慮して、第2凹部92a、92bの深さよりも浅くなるように調整され得る。
【0100】
よって、本実施形態のデュアルインターフェースカード1は、ICモジュール7およびアンテナ8の電気的接続と、ICモジュール7およびカード基体2の機械的接続との両方の信頼性を向上させることができる。また、同一の導電接着層11を用いた場合でも、ICモジュール7およびアンテナ8の電気的接続と、ICモジュール7およびカード基体2の機械的接続とを実現できる。したがって、本実施形態に係るデュアルインターフェースカード1によれば、ICモジュールおよびアンテナの電気的接続と、ICモジュールおよびカード基体の機械的接続との両方の信頼性を向上させ、製造の効率化が図れる。
【0101】
2.第2実施形態
次に、本開示の第2実施形態に係るデュアルインターフェースカードについて説明する。
【0102】
図5は、第2実施形態のデュアルインターフェースカード1aに関する、
図1(b)に対応するアンテナ8の第1端部81および第2端部82付近の構成を示す図である。本実施形態のデュアルインターフェースカード1aにおいて、第1端部81および第2端部82のうち、アンテナ線83が実際にカード基体2から露出している領域である第1露出部86aおよび87aは、アンテナ線83の複数の区間が非連続で露出するように配置された構成となる。
【0103】
すなわち、第1端部81および第2端部82を構成するアンテナ線83は、当該折り返し構造の屈曲部以外の部分が、第2凹部94aおよび94bにおいて露出している。しかし、その+Y方向側および-Y方向側の端である当該折り返し構造の屈曲部の部分は、Z軸に沿った平面視で第1凹部91と重畳しており、かつ、第1凹部91の底面よりも-Z方向側であるカード基体2に埋設されている。この点が、第1実施形態のデュアルインターフェースカード1とは異なる。
【0104】
第1凹部91には、第1端部81および第2端部82のアンテナ8を構成するアンテナ線83による、凹部9の外周97から中心に向けた繰り返しの折り返し構造のうち、少なくともアンテナ8の折り返し構造の屈曲部が露出せずに重畳している。また、第2凹部94aおよび94bには、当該屈曲部以外の部分が露出している。なお、各々の当該屈曲部以外の部分は、互いに断続的に並ぶように露出している。
【0105】
第1端部81のうち、アンテナ線83の折り返し構造の屈曲部が露出せずに第1凹部91と重畳している被覆領域84aは、第2凹部94aに形成された第1露出部86aの+Y方向側に形成される。また、第1露出部86aの-Y方向側には、当該屈曲部が露出せずに第1凹部91と重畳している被覆領域84bが形成される。同様に第2端部82における第2露出部87aの+Y方向側および-Y方向側にも、当該屈曲部が露出せずに第1凹部91と重畳している被覆領域85aおよび85bが形成される。
【0106】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、カード基体2に対してICモジュール7を埋設するために形成される凹部9を構成するものとして、第1凹部91、第2凹部94aおよび94b並びに第3凹部93を有する。ここで、
図6(a)は、
図5のデュアルインターフェースカード1aをD-D線に沿った面で切った断面を-X方向から見た図であり、
図6(a)は、ICモジュール7を省略した図を示し、
図6(b)は、
図6(a)において、ICモジュール7が搭載された状態の図を示す。
【0107】
図6(a)および
図6(b)に示すように、カード基体2の凹部9のうち、第1凹部91は、アンテナ線83の第1端部81の-Y方向側および+Y方向側の端の部分と、Z軸に沿った平面視で重畳するように形成されている。当該重畳部分は、アンテナ線83の折り返し構造の屈曲部がコア層5によって被覆された被覆領域84aおよび84bである。一方、凹部9のうち、第1凹部91よりも深い第2凹部94aにおいては、アンテナ線83の第1端部81の折り返し構造の当該屈曲部以外の部分が底面94pにおいて露出している。すなわち、コア層5や被覆導線の被覆がない、剥き出しの導線が露出している。
【0108】
また、
図5に示すように、第1端部81の当該折り返し構造の第1露出部86aに配置される屈曲部以外の露出部分は、凹部9の外周97の辺97aに沿うY軸に平行な直線に沿って延びている。また、隣り合う当該屈曲部の一部を除く部分同士のジグザグ形状のアンテナ線83の中心間距離すなわちピッチが略一定である。また、第1端部81の全体がY軸に沿った方向の幅をW22とし、第1端部81の一部がZ軸に沿った平面視で重畳する第2凹部92aのY軸に沿った方向の幅、すなわち第1露出部86aのY軸に沿った幅をW21とする。このとき、W22はW21よりも長い。言い換えると、第1端部81のうち、被覆領域84aおよび84bのY軸に沿った長さの合計の値の分だけ、W22の値はW21の値よりも大きい。なお、以上の内容は、第2端部82における第2露出部87aや被覆領域85a、85bについても同様にあてはまる。
【0109】
本実施形態では、第1実施形態と同様の手順でデュアルインターフェースカード1aを製造することができる。ここで、第2凹部94a、94bをミリングツールで切削加工により形成する際、第1端部81や第2端部82の全体を底面94pから露出させることなく、そのアンテナ線83の-Y方向側および+Y方向側の端に形成される折り返し構造の屈曲部がコア層5に被覆された状態となる。アンテナ線83は、第1実施形態で説明したように、巻き線形成機によって、熱圧が加えられながらコア層5に埋め込まれるが、アンテナ線83が露出した領域では、アンテナ線83は、その断面の約半分の領域だけがコア層5に埋め込まれている状態となる。このとき、アンテナ線83とコア層5との接着力は、アンテナ線83の全部がコア層5に埋め込まれている部分と比べて低下する。
【0110】
本実施形態のデュアルインターフェースカード1aは、凹部9の形成にあたり、第1端部81や第2端部82のアンテナ線83の全体を露出させず、少なくとも第1端部81や第2端部82のアンテナ線83の屈曲部がコア層5により被覆される構成をとる。このため、凹部9の形成時の切削加工において、アンテナ線83の露出部分がコア層5から剥離することが抑制できる。また、第1端部81や第2端部82のアンテナ線83がコア層5により被覆される被覆領域84a、84b、85aおよび85bを、第1端部81や第2端部82の屈曲部である狭い領域に限定している。このため、ICモジュール7の端子73aや73bとの電気的接続のための第1露出部86aや87aの領域を十分に確保でき、ICモジュール7およびアンテナ8の良好な電気的接続を図ることができる。
【0111】
ここで、第1端部81に対応する被覆領域84aおよび84bが互いに均等な大きさで設けられるとした場合、被覆領域84aおよび84bのそれぞれのY軸に沿った長さの値をWc2とすると、Wc2=(W22-W21)/2である。Wc2の値は、W22の値の2%以上、20%以下とすることが好ましく、5%以上、15%以下とすることがさらに好ましい。
【0112】
前者の範囲とすることにより、切削加工時の露出したアンテナ線83のコア層5からの剥離等を抑制しつつ、第2凹部94a、94bの切削位置やICモジュール7の搭載位置のずれに対しても、ICモジュール7およびアンテナ8の電気的接続を良好とすることができる。また、後者の範囲とすることにより、アンテナ線83のコア層5からの剥離等の一層の抑制と加工、搭載位置のずれの吸収効果の一層の向上が図れ、電気的接続に関与しないアンテナ線83の無駄な配線の抑制によるコストダウンが図れる。
【0113】
3.第3実施形態
次に、本開示の第3実施形態に係るデュアルインターフェースカードについて説明する。
【0114】
図7(a)は、第3実施形態のデュアルインターフェースカード1bに関する、
図1(b)に対応するアンテナ8の第1端部81aおよび第2端部82a付近の構成を示す図である。
図7(b)は、
図7(a)の第1端部81a付近のアンテナ線83の構成を抽出した図である。本実施形態のデュアルインターフェースカード1bにおいて、第1端部81aおよび第2端部82aは、アンテナ8を構成するアンテナ線83による、凹部9の外周97から中心に向けた繰り返しの折り返し構造によって構成される。さらに、その一部が凹部9に露出しており、アンテナ8の当該折り返し構造の屈曲部以外の部分が外周97に沿う直線に対して傾斜している。
【0115】
第1端部81aおよび第2端部82aのうち、アンテナ線83が露出している折り返し構造の屈曲部の領域は、Z軸方向に沿った平面視で第2凹部95aおよび95bと重畳する第1露出部86bおよび第2露出部87bである。一方、アンテナ線83がコア層5により被覆されている当該屈曲部以外の領域は、平面視で第1凹部91と重畳する被覆領域84c、84dおよび85c、85dである。被覆領域84cおよび84dは第1露出部86bの+Y方向側および-Y方向側に配置され、被覆領域85cおよび85dは第2露出部87bの+Y方向側および-Y方向側に配置される。すなわち、第1端部81aおよび第2端部82aが被覆領域84c、84dおよび85c、85dを備える点は、第2実施形態と類似する。
【0116】
アンテナ線83の第1端部81aおよび第2端部82aにおいて、折り返し構造の上端および下端の屈曲部以外の部分が、それぞれ第1凹部91および第2凹部95a、95bの外周97に沿う辺97aおよび97bに平行な直線m1およびm2、すなわちY軸と平行な直線に対して斜めに傾斜している。さらに、第1端部81aおよび第2端部82aが、X軸方向に沿った幅がW31であり、Y軸方向に沿った幅がW22である矩形の輪郭に沿うように形成されている。
【0117】
ここで、外周形状がICモジュール7のそれと略同一の略矩形である凹部9を切削加工で形成する場合において、アンテナ線83を露出させながら第2凹部95aおよび95bを切削して形成する方法は、前述したとおりとなる。すなわち、第2凹部95aのみを左回りまたは右回りにミリングツールを移動させながら切削してから、その後、第2凹部95bのみを同様に切削してもよい。あるいは、第2凹部95a、95bにまたがりながら、ミリングツールを左右方向に移動させて、これを順次上方から下方にずらしながら連続的に切削を行い、第2凹部95a、95bを同時に形成することとしてもよい。
【0118】
ここで、前者の方法をとる場合は、第2凹部92aまたは92bのいずれかについて、ミリングツールがX軸に沿った方向およびY軸に沿った方向のそれぞれに移動しながら切削することとなる。このとき、アンテナ線83の配線方向とミリングツールの移動方向とが略平行となると、アンテナ線83を途中の部分で切削することにより、アンテナ線83の一部が分岐しながら意図しない枝分かれを生じる、いわゆるヒゲの発生が懸念され得る。しかし、本実施形態では、第1端部81aおよび第2端部82aの折り返し構造の上端および下端の屈曲部以外の部分が傾斜していることにより、上述する不具合が抑制できる。
【0119】
また、第1端部81aにおいて、折り返し構造の屈曲部以外の部分は、凹部9の外周97の辺97aに沿う直線であるY軸に対して所定角度である角度θだけ、時計回りに傾斜している。ここで、傾斜角θは、2度以上、20度以下であることが好ましく、5度以上、15度以下であることがさらに好ましい。また、傾斜角θは、すべての当該折り返し構造の屈曲部以外の部分において、厳密に同じである必要はなく、上述の範囲でばらついてもよい。傾斜角θが前者の範囲であることにより、アンテナ線83が凹部9の切削加工時のエンドミルの移動方向であるX軸やY軸に沿う方向に対する傾斜を有するため、アンテナ線83が意図せず分岐される不具合を抑制できる。
【0120】
一方、傾斜角θが後者の範囲であることにより、アンテナ線83の分岐であるヒゲの発生の抑制を一層図ることができる。また、第1端部81aの+X方向側の端が第1凹部91および第2凹部95aと、第3凹部93との境界よりも+X方向側にある場合でも、第3凹部93の切削時にアンテナ線83を切削によるアンテナ線83の断線領域を一層低減できる。これにより、アンテナ8とICモジュール7の端子73aとの電気的接続の信頼性をさらに向上できる。
【0121】
なお、本実施形態では、第1端部81aのX軸方向に沿った領域のうち、+X方向側の端は第2凹部95aと第3凹部93との境界と略同一位置であり、-X方向側の端は凹部9の外周97である第2凹部95aの端よりも-X方向側にある。このように、第1端部81aの+X方向側の端が第2凹部95aと第3凹部93との境界と略同一位置であるか、これよりも-X方向側にある場合は、第3凹部93の切削時にアンテナ線83を切削しないか、アンテナ線83の切削量を低減することができる。このため、切削する深さが深いほど生じやすくなるアンテナ線83の分岐、すなわちヒゲの発生を抑制できる。
【0122】
また、第1端部81aの+X方向側の端が第1凹部91および第2凹部95aと、第3凹部93との境界よりも+X方向側にある場合は、第3凹部93の切削時にアンテナ線83を切削し、これが途中で断線する。しかし、傾斜角θが上述した範囲内であれば、アンテナ線83の断線領域を低減することができ、アンテナ8とICモジュール7の端子73aとの確実な電気的接続が図れる。さらに、第1端部81aの+X方向側の端が第1凹部91および第2凹部95aと、第3凹部93との境界よりも+X方向側にある場合は、この領域にはアンテナ線83のうち、折り返し構造の屈曲部を含み、当該屈曲部以外の部分を含まないように配置することが好ましい。このようにすることで、第3凹部93の切削時に、エンドミルの移動方向であるY軸に沿った方向から大きく角度がずれている屈曲部からのアンテナ線83の分岐は生じにくく、結果的に品質向上に寄与するからである。
【0123】
なお、第2端部82aにおいて、折り返し構造の屈曲部以外の部分は、凹部9の外周97の辺97bに沿う直線であるY軸に対して所定角度である角度θだけ、第1端部81aとは逆に反時計回りに傾斜している。ここで、傾斜角θの範囲は、向きが逆であることを除けば、第1端部81aの説明と共通である。第1端部81aにおける、屈曲部以外の部分の外周97に沿う直線に対する傾斜と、第2端部82aにおける、屈曲部以外の部分の外周97に沿う直線に対する傾斜とは、互いに線対称に形成される。すなわち、第1端部81aおよび第2端部82aは、そのアンテナ線83の屈曲部以外の部分の傾斜を含め、その構成の全体として、Y軸に沿った軸線に対して左右対称に配置されている。
【0124】
このように、第1端部81aにおける、屈曲部以外の部分の傾斜と、第2端部82aにおける、屈曲部以外の部分の傾斜とが互いに線対称な関係に配置される。このことにより、コア層5にアンテナ線83を埋め込んでアンテナシート12を形成する際の、コア層5のひずみや内部応力が互いに相殺および分散され、ひずみや内部応力の少ない均一化されたアンテナシート12を得ることが可能となる。
【0125】
また、凹部9にICモジュール7を埋設する際の、第1端部81aと端子73aとの間に加わる熱圧条件と、第2端部82aと端子73bとの間に加わる熱圧条件とが、互いに対称的となる。これにより、熱圧条件の偏りが回避され、ICモジュール7およびアンテナ8の電気的接続やICモジュール7およびカード基体2の機械的接続の安定化が図れる。
【0126】
ただし、第1端部81aにおける、屈曲部以外の部分の外周97に沿う直線に対する傾斜と、第2端部82aにおける、屈曲部以外の部分の外周97に沿う直線に対する傾斜とは、互いに線対称ではなく、同一であってもよい。すなわち、第2端部82aのアンテナ線83の構成は、第1端部81aのアンテナ線83の構成をそのまま、+X方向側に平行移動したものと略同一であってもよい。この場合、上述した第1端部81aの構成に関する作用効果がそのまま、第2端部82aにもあてはまる。
【0127】
4.第4実施形態
次に、本開示の第4実施形態に係るデュアルインターフェースカードについて説明する。
【0128】
図8(a)は、第4実施形態のデュアルインターフェースカード1cに関する、
図1(b)に対応するアンテナ8の第1端部81および第2端部82付近の構成を示す図である。
図8(b)は、
図8(a)のデュアルインターフェースカード1cをE-E線に沿った面で切った断面を-Y方向から見た図である。また、
図8(c)は、ICモジュール7aを外部接続端子71とは反対側の基板72の面から見た図である。
【0129】
本実施形態のデュアルインターフェースカード1cは、第1実施形態のデュアルインターフェースカード1の凹部9に対して、+Y方向側および-Y方向側に配置される第1凹部が、X軸方向側にも分割されている。また、凹部9は、X軸方向に沿った略中央に第1凹部よりも深い第4凹部96aおよび96bを新たに備えている。この点が第1実施形態とは異なる。
【0130】
凹部9は、外周97の一部を含み、+Y方向側かつ-X方向側、+Y方向側かつ+X方向側、-Y方向側かつ-X方向側、および-Y方向側かつ+X方向側の4箇所にそれぞれ分離して配置される、第1凹部91a、91b、91cおよび91dを有する。また、当該凹部9は、外周97の他の一部を含み、互いに分離した第2凹部92aおよび92bと、第1凹部91a、91b、91c、91dおよび第2凹部92a、92bのすべてと隣接し、かつこれらよりも中央側に形成された第3凹部93と、を有している。
【0131】
これらに加え、凹部9は、外周97の一部を含み、第3凹部93と隣接する+Y方向側および-Y方向側に分離配置される第4凹部96aおよび96bをさらに備える。第4凹部96aは、第1凹部91aおよび91bに挟まれた位置に形成され、第4凹部96bは、第1凹部91cおよび91dに挟まれた位置に形成される。第4凹部96aおよび96bは、第1凹部91a、91b、91cおよび91dよりも深く、かつ第3凹部93よりも浅く形成される。
【0132】
一方、ICモジュール7aの、搭載時に第4凹部96aおよび96bと対向する基板72の面の所定位置には、Z軸方向に沿って平面視した場合の第4凹部96aおよび96bの領域よりも小さい領域の凸部が形成されている。これは、
図8(b)および
図8(c)に示す、リード部77である。リード部77は、ICモジュール7aの外部接続端子71とは反対側の基板72の面に形成される端子73aや73b等の銅箔面上に、耐久性や耐環境性を向上させるためのニッケルメッキや金メッキを施したり、その検査をする際の電流を流すリード線として機能するものである。
【0133】
前述したように、ICモジュール7aは、通常、1列取りまたは2列取りの連続的な長尺のテープに当該ICモジュール7が多数個、形成されているモジュールテープを使用する。そこで、当該リード線は、各ICモジュール7aの端子73a同士および73b同士を電気的に接続するように、各ICモジュール7a間にまたがって配線される。したがって、個片に打ち抜かれた個々のICモジュール7aの+Y方向側および-Y方向側の端には当該リード線の痕跡としてリード部77が残存する。
【0134】
リード部77は、通常は銅箔等で形成されるため、端子73aや73bと同様に、ある程度の厚さを有する。よって、リード部77が存在する領域の基板72と対向する凹部9の深さが一律に同一深さである場合、導電接着層11は、リード部77およびカード基体2の隙間に応じて、熱圧により圧縮される。しかし、リード部77が存在しない領域の基板72およびカード基体2の隙間はリード部77が存在しない分だけ、大きくなりすぎるため、この領域ではICモジュール7aおよびカード基体2の良好な機械的接続が図れない可能性がある。
【0135】
そこで、本実施形態では、
図8(b)に示すように、リード部77と対向するカード基体2の領域には、その他の領域である第1凹部91a等よりも深い第4凹部96aをさらに形成しておく。これにより、リード部77が存在する領域でのICモジュール7およびカード基体2の隙間と、リード部77が存在しない領域でのICモジュール7およびカード基体2の隙間と、をそれぞれ最適化できる。その結果、ICモジュール7およびカード基体2について、特定の場所における接着力の低下を抑制しつつ、全体として安定した機械的接続を図ることができる。第4凹部96bについても同様である。
【0136】
リード部77の厚さが0.015mm以上、0.15mm以下である場合、第4凹部96a、96bの深さと第1凹部91a、91b、91c、91dの深さとの差分は、0.005mm以上、0.2mm以下程度となることが好ましい。また、当該差分が、リード部77の厚さの40%以上、120%以下であることがさらに好ましい。このような範囲であることにより、上述の効果を一層、向上させることができるからである。
【0137】
なお、本実施形態はリード部77が、ICモジュール7aの外部接続端子71とは反対側の基板72の面に上下方向、すなわちY軸に沿った2箇所に設けられたものとして説明した。しかし、リード部77の配置はこれに限らず、ICモジュール7aの外部接続端子71とは反対側の基板72の面の左右方向、すなわちX軸に沿った2箇所に設けられてもよい。さらには、ICモジュール7aの外周97に沿った任意の場所に任意の個数で設けることができる。これらのICモジュール7aに設けられたリード部77の配置や個数に応じて、必要な第4凹部をカード基体2に設ければ、上述した効果が得られるからである。
【0138】
以上、本開示において説明した各実施形態や各変形例は、矛盾が生じない限りにおいて、その一部または全部を互いに組み合わせて実施することが可能であり、その組み合わせた内容も当然に本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0139】
1、1a、1b、1c デュアルインターフェースカード
2 カード基体
3、6 オーバーシート層
4、5 コア層
7、7a ICモジュール
8 アンテナ
9 凹部
11 導電接着層
11a 導電粒子
11b 接着剤
12 アンテナシート
71 外部接続端子
72 基板
73a、73b 端子
74 ICチップ体
74a ICチップ
74b モールド部
74p パッド
75 ワイヤ
76 ボンディングホール
77 リード部
81、81a 第1端部
82、82a 第2端部
83 アンテナ線
84a、84b、84c、84d、85a、85b、85c、85d 被覆領域
86、86a、86b 第1露出部
87、87a、87b 第2露出部
91、91a、91b、91c、91d 第1凹部
92a、92b、94a、94b、95a、95b 第2凹部
92p、94p 底面
93 第3凹部
96a、96b 第4凹部
97 外周
97a、97b 辺