(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/54 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
H01T13/54
(21)【出願番号】P 2021125910
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-194762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの間に放電ギャップ(G)を形成する中心電極(4)及び接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、
少なくとも一つの上記噴孔は、
内壁面に、親水性を向上させる親水膜(11)を設けてあり、また、当該噴孔の内径をD、当該噴孔の噴孔軸に沿った長さをL、当該噴孔の内壁面と水との接触角をθとしたとき、下記式(1)を満たす、内燃機関用のスパークプラグ。
(L/2)×tan(θ/2)<D (1)
【請求項2】
少なくとも一つの上記噴孔は、下記式(2)を満たす、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
L×tan(θ/2)<D (2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
副燃焼室を備えたスパークプラグが、例えば特許文献1に開示されている。かかるスパークプラグにおいては、噴孔を介して副燃焼室に混合気が導入される。そして、副燃焼室において混合気に着火するとともに、噴孔から主燃焼室に火炎ジェットを噴射させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、副燃焼室を備えたスパークプラグにおいては、氷結によって噴孔が塞がると、正常な着火が困難となるという課題がある。
すなわち、内燃機関の燃焼反応によって、水が生成されるが、運転条件によっては、燃焼室内に水分が残留することが考えられる。そして、その水分がスパークプラグの噴孔に付着することがあり得る。この状況において、例えば、内燃機関が極低温状態に放置されることで、噴孔に付着していた水分が凍結すると、その氷によって噴孔が塞がれてしまうおそれがある。そうすると、内燃機関の始動時において、混合気が噴孔を介して副燃焼室へ導入されることを阻害することとなる。その結果、失火を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、内燃機関の始動時における失火を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、互いの間に放電ギャップ(G)を形成する中心電極(4)及び接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、
少なくとも一つの上記噴孔は、内壁面に、親水性を向上させる親水膜(11)を設けてあり、また、当該噴孔の内径をD、当該噴孔の噴孔軸に沿った長さをL、当該噴孔の内壁面と水との接触角をθとしたとき、下記式(1)を満たす、内燃機関用のスパークプラグにある。
(L/2)×tan(θ/2)<D (1)
【発明の効果】
【0007】
上記内燃機関用のスパークプラグにおいて、少なくとも一つの上記噴孔は、上記式(1)を満たす。これにより、当該噴孔の内壁面に水が付着して凍結したとしても、噴孔が塞がれることを防ぐことができる。それゆえ、内燃機関の始動時において、混合気が噴孔を介して副燃焼室へ導入されることを阻害されるという事態を防ぐことができる。その結果、内燃機関の始動時における失火を抑制することができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、内燃機関の始動時における失火を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
参考形態1における、スパークプラグの先端部付近のプラグ中心軸に沿った断面図であって、
図2のI-I線矢視断面図。
【
図4】
参考形態1における、水滴が付着した噴孔の拡大断面図。
【
図6】比較形態における、水滴が付着した噴孔の拡大断面図。
【
図7】比較形態における、氷結した噴孔の拡大断面図。
【
図10】実施形態3における、水滴が付着した噴孔の拡大断面図。
【
図11】
参考形態4における、スパークプラグの先端部付近のプラグ中心軸に沿った断面図。
【
図12】
参考形態4における、水滴が付着した噴孔の拡大断面図。
【
図13】
参考形態5における、プラズマ点火プラグの先端部付近のプラグ中心軸に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(
参考形態1)
内燃機関用のスパークプラグに係る実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。
本形態のスパークプラグ1は、
図1、
図2に示すごとく、中心電極4及び接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。中心電極4及び接地電極6は、互いの間に放電ギャップGを形成している。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うよう先端部に設けられている。
【0011】
プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる噴孔51が形成されている。
少なくとも一つの噴孔51は、下記式(1)を満たす。
(L/2)×tan(θ/2)<D (1)
ここで、
図3、
図4に示すごとく、当該噴孔51の内径をD、当該噴孔51の噴孔軸に沿った長さをL、当該噴孔51の内壁面と水との接触角をθとする。
【0012】
図1、
図2に示すごとく、スパークプラグ1は、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持している。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。
【0013】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車、コージェネレーション等の内燃機関における着火手段として用いることができる。スパークプラグ1のプラグ軸方向Zの一端が、内燃機関の主燃焼室に配置される。プラグ軸方向Zにおいて、主燃焼室に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、プラグ中心軸を中心とした円周に沿った方向をプラグ周方向というものとする。
【0014】
本形態において、噴孔51は4個形成されている。
図2に示すごとく、4個の噴孔51は、プラグ周方向において等間隔に配設されている。また、
図1に示すごとく、噴孔51の噴孔軸は、副燃焼室50に向かうほど基端側へ向かうように傾斜している。
【0015】
プラグカバー5は、副燃焼室50の先端側に配される先端壁部52と、副燃焼室50の外周に配される側壁部53とを有する。先端壁部52と側壁部53との間は、湾曲した角部によってつながっている。本形態においては、この角部に、噴孔51が形成されている。
【0016】
プラグカバー5は、側壁部53の基端部が、ハウジング2の先端部に溶接等にて接合されることで、固定されている。また、接地電極6も、ハウジング2の先端部に溶接等にて接合されている。
【0017】
本形態において、プラグカバー5は、ニッケル合金からなる。噴孔51は、プラグカバー5に対して、ドリル加工、パンチング加工、或いは放電加工等によって、穿設されている。
また、本形態において、噴孔51は、略円柱形状を有する。
【0018】
上述のように、少なくとも一つの噴孔51は、式(1)を満たす。すなわち、4個の噴孔51のうちの少なくとも一つが、式(1)を満たすような寸法関係を有する。本形態においては、特に、4個の噴孔51のいずれもが、式(1)を満たす。
【0019】
各噴孔51は、D/L≦1.5を満たす。D/Lが大きすぎると、噴孔51から主燃焼室側へ噴出する火炎ジェットを充分に強くし難くなる。そこで、すべての噴孔51が、D/L≦1.5を満たすことが好ましい。さらには、複数の噴孔51のDの平均値をDave、Lの平均値をLaveとしたとき、Dave/Lave≦1とすることが好ましい。本形態においては、4個の噴孔51のD、Lは、それぞれ同等であり、D/L≦1を満たす。
【0020】
なお、長さLは、噴孔51の噴孔軸に沿った長さであるが、同じ噴孔51内において、測定する位置によってLが異なる場合があり得る。かかる場合においては、噴孔51の内壁面のうち、噴孔軸に沿った方向の長さが最も長い位置の内壁面の長さを、Lとする。
【0021】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
上記内燃機関用のスパークプラグ1において、少なくとも一つの噴孔41は、上記式(1)を満たす。これにより、当該噴孔51の内壁面に水が付着して凍結したとしても、噴孔51が塞がれることを防ぐことができる。それゆえ、内燃機関の始動時において、混合気が噴孔51を介して副燃焼室50へ導入されることを阻害されるという事態を防ぐことができる。その結果、内燃機関の始動時における失火を抑制することができる。
【0022】
上述のように、内燃機関の運転に伴う燃焼反応によって、水が生成される。この水分は、運転状態によっては、燃焼室内に残留することがある。この状態において、内燃機関を停止し、極低温環境下(例えば氷点下の環境下)に放置されると、水分が凍結する。噴孔に水滴が付着した状態で、その水滴が凍結することも考えられる。水滴が噴孔を塞ぐように付着した状態で、水滴が凍結すると、内燃機関の始動時において、噴孔から副燃焼室内に混合気を導入できなくなるおそれがある。特に、すべての噴孔が氷結によって塞がれた状態においては、混合気が副燃焼室に入らず、失火の原因となるおそれがある。
【0023】
噴孔の内壁面に付着した水滴が噴孔51を塞ぐ状況は、例えば、
図6に示すように、付着した水滴Wの頂点が噴孔51の反対側の内壁面に達するような状況であると考えられる。このような状況は、噴孔51の内壁面と水Wとの接触角θと、噴孔51の長さLと、噴孔51の内径Dとの関係が、以下の式(3)を満たす状況であると考えられる。
(L/2)×tan(θ/2)≧D (3)
【0024】
つまり、
図6のように、噴孔51の内壁面に付着した水滴Wの頂点が、噴孔51における反対側の内壁面に接触すると、
図7に示すごとく、水Wは、表面張力によって噴孔51内に留まる。そして、この水Wが噴孔51全体を塞ぐこととなる。この状態で、極低温環境に放置されることで、水Wが凍結して氷の状態となって、噴孔51を塞いでしまう。
【0025】
本形態のスパークプラグ1においては、かかる事態を避けるべく、少なくとも一つの噴孔51が、式(1)を満たすように形成されている。これにより、
図4、
図5に示すごとく、当該噴孔51の内壁面に付着した水滴Wは、当該噴孔51の反対側の内壁面に接しない。なお、ここで想定される水滴Wは、例えば、0.15nL以下程度であり、重力の影響を実質的に無視できる。それゆえ、仮にこの水Wが凍結しても、当該噴孔51の全体を塞ぐことは避けられる。
【0026】
つまり、水滴Wが噴孔51の内壁面において、噴孔軸方向の全体に付着した場合、水滴Wの高さhは、(L/2)×tan(θ/2)となる。この高さhが噴孔51の内径Dよりも小さければ、水滴Wが、当該噴孔51の反対側の内壁面に接しないこととなる。式(1)は、この「高さhが噴孔51の内径Dよりも小さい」という条件を表すものである。それゆえ、式(1)を満たす噴孔51においては、仮に当該噴孔51に付着した水が凍結しても、その全体が塞がれることが避けられる。
【0027】
したがって、本形態のスパークプラグ1において、少なくとも一つの噴孔51は、混合気を通過させることができ、失火を抑制することができる。また、当該噴孔51に水分が付着して凍結したとしても、噴孔51が塞がれることは回避できる。それゆえ、当該噴孔51を混合気が通過することができ、また、火炎ジェットの噴射も可能となる。この火炎ジェットの熱によって、噴孔51内の氷が溶けると共に蒸発する。それゆえ、即座に正常な状態に戻すことが可能となる。
【0028】
特に、本形態においては、すべての噴孔51が、式(1)を満たすため、いずれの噴孔51も、氷結によって塞がれることを防ぐことができる。それゆえ、始動時における失火のおそれを、より確実に抑制することができる。
【0029】
以上のごとく、本形態によれば、内燃機関の始動時における失火を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
【0030】
(
参考形態2)
本形態のスパークプラグ1は、
図6に示すごとく、少なくとも一つの噴孔51が、下記式(2)を満たす。
L×tan(θ/2)<D (2)
【0031】
上記式(2)を満たす条件は、式(1)を満たす条件よりも厳しい。式(2)を満たすためには、例えば、参考形態1のスパークプラグ1に比べて、噴孔51の内径Dを大きくする、噴孔51の長さLを短くする、接触角θを小さくする、といった手段が考えられる。これらの組み合わせによって、上記式(2)を満たすよう構成することもできる。
その他は、参考形態1と同様である。なお、参考形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0032】
本形態においては、より確実に、氷結による噴孔51の閉塞を防ぐことができる。例えば、
図8に示すごとく、同じ噴孔51において、互いに対向する内壁面の双方に水滴Wが付着した場合にも、噴孔51が塞がれることを防ぐことができる。つまり、式(2)を満たすことは、噴孔51の内径Dを、付着する水滴Wの高さのうち最も高い高さhの2倍以上にすることとなる。それゆえ、仮に、同じ噴孔51において、互いに対向する内壁面の双方に水滴Wが付着し、それらが凍結したとしても、噴孔51が塞がれることを防ぐことができる。
その他、
参考形態1と同様の作用効果を有する。
【0033】
(実施形態3)
本形態のスパークプラグ1においては、
図9、
図10に示すごとく、少なくとも一つの噴孔51が、内壁面に、親水膜11を設けてある。
親水膜11は、親水性を向上させる膜である。つまり、親水膜11を形成しない状態の表面よりも、親水膜11を形成した後の表面の方が、親水性が高い状態となるような膜である。親水性が高い状態は、水との接触角θが小さい状態である。
【0034】
親水膜11は水との接触角θが、30°以下である。さらに好ましくは、親水膜11は、水との接触角θが10°以下である。すなわち、親水膜11は、超親水性を有することがより好ましい。
【0035】
親水膜11は、少なくとも一つの噴孔51において、その内壁面の全面に形成されている。
本形態においては、すべての噴孔51の内壁面に親水膜11が形成されている。
【0036】
親水膜11は、例えば、シリカ(SiO
2
)を含む材料にて構成することができる。一例としては、下記の主剤と硬化剤とを、重量比で1対1の割合にて混合して形成されたものを、親水膜11の材料として用いることができる。
【0037】
ここで、上記主剤は、4~6wt%のリン酸アルミニウム(AlPO4)と、90~95wt%のシリカ(SiO2)と、1.0~1.5wt%のアルミナ(Al2O3)と、0.3から0.7wt%の酸化亜鉛(ZnO)とからなる。上記硬化剤は、2.0wt%の酸化ナトリウム(Na2O)と82.2wt%の酸化カリウム(K2O)と15.8wt%のシリコーン(nSiO2)とからなる。
その他は、参考形態1と同様である。
【0038】
本形態においては、噴孔51の内壁面と水との接触角θを小さくすることができる。例えば、親水膜を形成しない場合の噴孔51の内壁面の水との接触角θが約90°であっても、親水膜を形成することで、例えば、水との接触角θを30°以下、或いは10°以下とすることができる。それゆえ、噴孔51の長さL及び内径Dを調整することなく、式(1)を満たすようにすることができる。噴孔51の長さL及び内径Dは、スパークプラグ1の機能に影響し得るパラメータである。かかるパラメータを変更することなく、式(1)を満たすようにすることで、スパークプラグ1の他の諸機能に影響を与えることなく、容易に、始動時における失火を抑制することができる。
その他、参考形態1と同様の作用効果を有する。
【0039】
(
参考形態4)
本形態のスパークプラグ1は、
図11、
図12に示すごとく、プラグカバー5の先端壁部52に噴孔51を設けた形態である。
先端壁部52に設けた噴孔51を、以下、先端噴孔510という。
【0040】
そして、本形態においては、少なくともこの先端噴孔510が、式(1)を満たすよう構成されている。
図12に示すごとく、先端噴孔510が形成される先端壁部52は、略平板状となっている。それゆえ、先端噴孔510の長さLは、先端壁部52の厚みtと同等である。
【0041】
この先端噴孔510も、式(1)を満たすことで、上述と同様に、氷結による閉塞を防ぐことができる。また、先端噴孔510が、更に式(2)を満たすことで、より確実に、氷結による閉塞を防ぐことができる。
また、先端噴孔510以外の噴孔51も、式(1)を満たすことが好ましい。さらに、先端噴孔510以外の噴孔51も、式(2)を満たすことがより好ましい。
その他、参考形態1と同様の構成及び作用効果を有する。
【0042】
上記式(1)あるいは式(2)を満たすための手段としては、上述の実施形態3に示したような親水膜11を利用する手段以外にも、種々の手段があり得る。すなわち、噴孔51の内径Dを大きくする、噴孔51の長さLを短くする、といった手段が考えられる。ただし、噴孔51の内径D、長さLは、上述のようにスパークプラグの諸機能に影響を与える可能性がある。そのため、噴孔51の氷結による閉塞を防ぐためだけに、これらのパラメータを大きく変動させにくい場合もある。かかる観点からは、実施形態3のような親水膜11を利用することは有効である。その一方で、親水膜11を形成する場合には、材料費が高くなりやすいという懸念もある。そこで、親水膜11を設けずに、接触角θを小さくする手段として、例えば、噴孔51の内壁面を粗面化あるいは鏡面化することで、親水性を向上させることが考えられる。あるいは、噴孔51の内壁面にメッキを施すことで、親水性を向上させることも考えられる。
【0043】
(
参考形態5)
本形態は、
図13に示すごとく、透過流路951が穿設された突起部95を備えたプラズマ点火プラグ9の形態である。
このプラズマ点火プラグ9における透過流路951において、
参考形態1のスパークプラグ1における噴孔51と同様の構成を適用することができる。
【0044】
図13に示すごとく、プラズマ点火プラグ9は、ハウジング12の内側に、絶縁体93を介して保持された中心電極94を有する。中心電極94の先端側には、絶縁体93の内側の放電空間940が形成されており、中心電極94と接地電極96との間において放電可能となっている。放電空間940は、先端側へ開口している。ハウジング12には、先端側へ突出した板状の突起部95が形成されている。そして、この突起部95に、板厚方向に貫通する透過流路951が形成されている。
【0045】
かかる構成のプラズマ点火プラグ9を、内燃機関に取り付けて運転した場合、プラズマ点火プラグ9における放電空間940から先端側にプラズマ状態の気体が噴射される。このプラズマ状態の気体によって、燃焼室内の混合気に着火して、プラズマ火炎核が形成される。
【0046】
このプラズマ火炎核が、燃焼室内の気流によって吹き飛ばされることを防ぐべく、突起部95が設けてある。その一方で、プラズマ火炎核に混合気が供給されるように、突起部95に透過流路951が形成されている。したがって、透過流路951が塞がれてしまうと、プラズマ火炎核への混合気の供給が不足するおそれが懸念される。
【0047】
そこで、この透過流路951についても、下記式(1a)が満たされるようにすることが考えられる。下記式(1a)において、Daは透過流路951の内径、Laは透過流路951の長さ、θaは透過流路951の内壁面と水との接触角を表す。
(La/2)×tan(θa/2)<Da (1a)
さらに好ましくは、下記式(2a)を満たす。
La×tan(θa/2)<Da (2a)
【0048】
本形態のプラズマ点火プラグ9の基本構成は、特開2010-3605号公報に開示されたものと同様とすることができる。
【0049】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 スパークプラグ
4 中心電極
5 プラグカバー
50 副燃焼室
51 噴孔
6 接地電極
G 放電ギャップ