(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
G08C 15/06 20060101AFI20241210BHJP
G08C 25/00 20060101ALI20241210BHJP
B62D 6/10 20060101ALI20241210BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G08C15/06 H
G08C25/00 E
B62D6/10
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2021128131
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 毅
(72)【発明者】
【氏名】永東 丈寛
(72)【発明者】
【氏名】滝 雅也
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-007975(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0086368(US,A1)
【文献】特開2019-101528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00-25/04
B62D 5/04, 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある物理量についてのセンサ値を同一の検出対象から検出する複数のセンサ素子(31A、31B、32A、32B)を有する一つ以上のセンサ装置(301、302)と、
前記センサ装置に対応して設けられ、前記センサ装置の複数の前記センサ素子から送信された前記センサ値を含む信号を受信する一つ以上の受信部(501、502)、複数の前記センサ値に基づいて前記物理量を演算する物理量演算部(77、771、772)、及び、前記物理量を用いて所定の制御量を演算する制御量演算部(78、781、782)を有する一つ以上のマイコン(70、701、702)と、
を備え、
一つの前記受信部は、
対応する前記センサ装置の前記センサ素子と個別の通信路(41A、41B、42A、42B)を介して接続されており、前記通信路が伝送可能な状態になったとき、前記通信路を経由して送信された前記センサ値を取得する複数の信号取得部(61A、61B、62A、62B)と、
複数の前記通信路を同時に伝送可能な状態にするように共通の伝送トリガ信号を生成する一つの伝送トリガ信号生成部(63B、64B)と、
を有し、
一つの前記受信部において、複数の前記信号取得部は、共通の前記伝送トリガ信号により、複数の前記センサ値を同時に取得可能であ
り、
前記信号取得部は、トリガ信号を生成するトリガ信号生成部とセットでモジュールとして構成されており、
一つの前記受信部に含まれる複数の前記モジュールのうち一つの前記モジュールである代表モジュール(51B、52B)の前記トリガ信号生成部(63B、64B)が前記伝送トリガ信号生成部として機能する通信システム。
【請求項2】
一つの前記受信部に含まれる複数の前記モジュールのうち前記代表モジュール以外の前記モジュールである一般モジュール(51A、52A)において、前記トリガ信号生成部(63A、64A)が生成したトリガ信号は、自モジュール内の前記信号取得部を受信可能状態に遷移させるモジュール内トリガ信号として用いられ、
前記代表モジュールにおいて、前記トリガ信号生成部が生成したトリガ信号は、前記モジュール内トリガ信号を兼ねた前記伝送トリガ信号として用いられる請求項
1に記載の通信システム。
【請求項3】
複数系統の前記センサ装置を備え、且つ、前記マイコンは、複数系統の前記センサ装置に対応する複数系統の前記受信部を有し、
複数系統の前記受信部の各前記伝送トリガ信号生成部は、前記伝送トリガ信号を互いに同期して生成するように構成されている請求項1
または2に記載の通信システム。
【請求項4】
ある物理量についてのセンサ値を同一の検出対象から検出する複数のセンサ素子(31A、31B、32A、32B)を有する
複数のセンサ装置(301、302)と、
複数系統の前記センサ装置に対応して設けられ、前記センサ装置の複数の前記センサ素子から送信された前記センサ値を含む信号を受信する
複数系統の受信部(501、502)、複数の前記センサ値に基づいて前記物理量を演算する物理量演算部(77、771、772)、及び、前記物理量を用いて所定の制御量を演算する制御量演算部(78、781、782)を有する一つ以上のマイコン(70、701、702)と、
を備え、
一つの前記受信部は、
対応する前記センサ装置の前記センサ素子と個別の通信路(41A、41B、42A、42B)を介して接続されており、前記通信路が伝送可能な状態になったとき、前記通信路を経由して送信された前記センサ値を取得する複数の信号取得部(61A、61B、62A、62B)と、
複数の前記通信路を同時に伝送可能な状態にするように共通の伝送トリガ信号を生成する一つの伝送トリガ信号生成部(63B、64B)と、
を有し、
一つの前記受信部において、複数の前記信号取得部は、共通の前記伝送トリガ信号により、複数の前記センサ値を同時に取得可能であ
り、
複数系統の前記受信部の各前記伝送トリガ信号生成部は、前記伝送トリガ信号を互いに同期して生成するように構成されている通信システム。
【請求項5】
前記マイコンは、複数の前記センサ素子から送信された複数の前記センサ値の異常を判定する異常判定部(761、762)をさらに有する請求項1~
4のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記複数のセンサ素子による複数の前記センサ値は、実際の物理量に対して正の相関の線形出力特性を有する正特性センサ値(S1B、S2A)と、実際の物理量に対して前記正特性センサ値と傾きの絶対値が等しい負の相関の線形出力特性を有する負特性センサ値(S1A、S2B)とを含み、
前記正特性センサ値と前記負特性センサ値との和が所定範囲から外れた場合、前記異常判定部は、少なくとも一つの前記センサ値が異常であると判定する請求項
5に記載の通信システム。
【請求項7】
複数系統の前記センサ装置を備え、且つ、前記マイコンは、複数系統の前記センサ装置に対応する複数系統の前記受信部を有し、
前記異常判定部により、いずれかの前記センサ値が異常と判定されたとき、
前記マイコンは、正常系統の前記センサ装置のセンサ値のみを使用して演算を継続する請求項
5または
6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記センサ装置は、複数の前記センサ値を米国自動車技術会規格SAE-J2716に準拠したSENT方式の信号として送信する請求項1~7のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項9】
車両の電動パワーステアリング装置(90)に適用され、前記センサ装置は、運転者の操舵トルクを検出し、前記マイコンは、前記センサ装置が検出した操舵トルクに基づいてモータ(80)が出力するアシスト量を演算する請求項1~8のいずれか一項に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のセンサにより冗長的に検出されたセンサ値を受信したマイコンが、複数のセンサ値に基づいて制御演算を行う通信システムが知られている。
【0003】
例えば電動パワーステアリング装置に適用される通信システムにおいて、マイコンは、トルクセンサから送信される複数のセンサ値からトルク値を算出し、そのトルク値に基づいてアシスト量を演算する。このような通信システムでは、それぞれのセンサ値の同時性が保たれていないと、マイコンが誤ったトルクを演算したり、センサ値の異常を誤検出したりするおそれがある。
【0004】
例えば特許文献1に開示された検出装置は、二つのマイコンがそれぞれセンサ値の送信を要求するトリガ信号を生成する。しかし、各マイコンの演算タイミングのずれ等によりトリガ信号のタイミングがずれ、異なるタイミングのセンサ値を取得する可能性がある。そこでこの検出装置は、一方のマイコンが他方のマイコンのトリガ信号を監視し、二つのマイコンのトリガ信号の送信タイミングが一致するように、自身のトリガ信号の送信タイミングを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の従来技術ではマイコン間でトリガ信号の送信タイミングを調整するため、演算能力が余分に必要となる。また、例えばトルクセンサから送信される複数のセンサ値に対応する複数の通信モジュールが一つのマイコン内に設けられる構成を想定する。この構成において、各通信モジュールのトリガ信号生成部から、各センサ値が送信される通信路に個別にトリガ信号を出力する場合、マイコンの信号出力端子や配線工数が増加するという課題がある。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、複数の通信路を経由して送信される複数のセンサ値の同時性を簡易な構成で確保する通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の通信システムは、一つ以上のセンサ装置(301、302)と、一つ以上のマイコン(70、701、702)と、を備える。センサ装置は、ある物理量についてのセンサ値を同一の検出対象から検出する複数のセンサ素子(31A、31B、32A、32B)を有する。
【0009】
マイコンは、一つ以上の受信部(501、502)、物理量演算部(77、771、772)及び制御量演算部(78、781、782)を有する。受信部は、センサ装置に対応して設けられ、センサ装置の複数のセンサ素子から送信されたセンサ値を含む信号を受信する。
【0010】
物理量演算部は、複数のセンサ値に基づいて物理量を演算する。制御量演算部は、物理量を用いて所定の制御量を演算する。例えば電動パワーステアリング装置に適用される通信システムの場合、物理量は操舵トルクであり、制御量はアシスト量である。
【0011】
一つの受信部は、複数の信号取得部(61A、61B、62A、62B)と、一つの伝送トリガ信号生成部(63B、64B)と、を有する。
【0012】
複数の信号取得部は、対応するセンサ装置のセンサ素子と個別の通信路(41A、41B、42A、42B)を介して接続されており、通信路が伝送可能な状態になったとき、通信路を経由して送信されたセンサ値を取得する。一つの伝送トリガ信号生成部は、複数の通信路を同時に伝送可能な状態にするように共通の伝送トリガ信号を生成する。一つの受信部において、複数の信号取得部は、共通の伝送トリガ信号により、複数のセンサ値を同時に取得可能である。
【0013】
本発明の一態様では、信号取得部は、トリガ信号を生成するトリガ信号生成部とセットでモジュールとして構成されている。一つの受信部に含まれる複数のモジュールのうち一つのモジュールである代表モジュール(51B、52B)のトリガ信号生成部(63B、64B)が伝送トリガ信号生成部として機能する。本発明の別の態様の通信システムは、複数系統のセンサ装置を備え、且つ、マイコンは、複数系統のセンサ装置に対応する複数系統の受信部を有する。複数系統の受信部の各伝送トリガ信号生成部は、伝送トリガ信号を互いに同期して生成するように構成されている。
【0014】
これにより本発明では、マイコンがセンサ装置から取得する複数のセンサ値の同時性を確保することができる。よって、異なるタイミングで取得したセンサ値に基づいてマイコンが誤った物理量を演算したり、センサ値の異常を誤検出したりすることが防止される。また、一つの受信部につき一つの伝送トリガ信号を出力するため、マイコンの信号出力端子や配線工数を低減することができ、簡易な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態による通信システムの概略ブロック図。
【
図2】第1実施形態による通信システムのマイコンのブロック図。
【
図3】通信システムが適用される電動パワーステアリング装置の概略構成図。
【
図4】トリガ信号とセンサ値の伝送との関係を説明するタイミングチャート。
【
図5】(a)第1センサ装置、(b)第2センサ装置のセンサ特性図。
【
図6】第1異常判定部による処理を示すフローチャート。
【
図7】第2異常判定部による処理を示すフローチャート。
【
図8】トルク演算部による処理を示すフローチャート。
【
図9】第2実施形態による通信システムの概略ブロック図。
【
図10】第2実施形態による通信システムのマイコンのブロック図。
【
図12】特許文献1相当の参考比較例による同期処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の通信システムの複数の実施形態を、図面に基づいて説明する。第1、第2実施形態において実質的に同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。以下の第1、第2実施形態を包括して「本実施形態」という。本実施形態の通信システムは、電動パワーステアリング装置に適用され、センサ装置が検出した運転者の操舵トルクに基づいてアシスト量を演算する。
【0017】
(第1実施形態)
図1~
図8を参照し、第1実施形態の通信システム100について説明する。最初に
図1、
図2を参照し、システム構成について説明する。第1実施形態の通信システム100は、冗長的に設けられる二つのセンサ装置301、302と、一つのマイコン70と、を備える。以下、一つのセンサ装置に対応する構成要素の単位を「系統」という。本実施形態の通信システムは二系統構成である。
図1には、主にセンサ装置301、302とマイコン70との間の通信構成を示し、
図2には、主にマイコン70の構成を示す。
【0018】
第1系統のセンサ装置301を「第1センサ装置301」と記し、第2系統のセンサ装置302を「第2センサ装置302」と記す。また、マイコン70において、第1センサ装置301に対応する構成要素に「第1」を付し、第2センサ装置302に対応する構成要素に「第2」を付して区別する。第1系統及び第2系統の構成は同様であるため、主に第1系統について説明し、第2系統についての説明を適宜省略する。第2系統について省略した部分は、第1系統の説明における符号の「1」を「2」に置き換えて解釈される。
【0019】
第1センサ装置301は、「ある物理量」として運転者の操舵トルクについてのセンサ値を同一の検出対象から検出する複数のセンサ素子31A、31Bを有する。本実施形態では、第1センサ装置301は、二つのセンサ素子31A、31Bを有する。
図1にて、符号31Aが指すセンサ素子を「センサ素子1A」と記し、符号31Bが指すセンサ素子を「センサ素子1B」と記す。また、センサ素子31A、31Bが検出する操舵トルクのセンサ値をそれぞれS1A、S1Bと記す。
【0020】
例えばセンサ素子31A、31Bとして磁気検出素子であるホール素子が用いられる場合、ホール素子を含むパッケージであるホールICがセンサ装置301に相当する。センサ素子31A、31Bは、
図3に示す操舵トルクセンサ93内において、トーションバーの捩じれ角に基づく集磁リングの磁気変位を検出し電圧信号に変換して出力する。この例では集磁リングが「検出対象」に相当する。なお、ホール素子以外の磁気検出素子や磁気以外の変化を検出する素子がセンサ素子31A、31Bとして用いられてもよい。
【0021】
本実施形態のセンサ装置301は、センサ素子31A、31Bが検出したセンサ値S1A、S1Bの情報を含むセンサ信号を、デジタル信号として、一定の送信周期で通信路41A、41Bを経由して送信する。詳しくは、センサ信号として、米国自動車技術会規格SAE-J2716に準拠したニブル信号、いわゆるSENT(シングルエッジニブル伝送)方式の信号が用いられる。センサ装置301は、SENT通信方式を応用したSPC(Short PWM Code)モードで駆動し、マイコン70からのトリガ信号により通信を開始する。なお、
図1には、送信回路や動作電源供給線、基準電位線等の図示を省略する。
【0022】
マイコン70は、センサ装置301、302に対応して設けられた二系統の受信部501、502及び異常判定部761、762と、二系統共通に設けられたトルク演算部77及びアシスト量演算部78とを備える。トルク演算部77は「物理量演算部」に相当し、アシスト量演算部78は「制御量演算部」に相当する。
【0023】
マイコン70内の構成についても第1系統及び第2系統の構成は同様であるため、主に第1系統について説明し、第2系統についての説明を適宜省略する。なお、トリガ信号生成部については、第1系統のトリガ信号生成部の符号を「63A、63B」、第2系統のトリガ信号生成部の符号を「64A、64B」とする。一つのマイコン70内のタイマにより、二系統の受信部501、502の各トリガ信号生成部は、後述のトリガ信号を互いに同期して生成するように構成されている。
【0024】
第1受信部501は、第1センサ装置301のセンサ素子31A、31Bから送信されたセンサ値S1A、S1Bを含む信号を受信する。第1受信部501は、二つの信号取得部61A、61Bと二つのトリガ信号生成部63A、63Bとを有する。特に本実施形態では、信号取得部61A、61Bは、トリガ信号生成部63A、63BとセットでSENTモジュールとして構成されている。
【0025】
センサ素子31Aに対応するSENTモジュール51Aは信号取得部61A及びトリガ信号生成部63Aを有する。センサ素子31Bに対応するSENTモジュール51Bは信号取得部61B及びトリガ信号生成部63Bを有する。
図1、
図2にて、符号51Aが指すSENTモジュールを「SENTモジュール1A」と記し、符号51Bが指すSENTモジュールを「SENTモジュール1B」と記す。
【0026】
信号取得部61A、61Bは、対応するセンサ装置301のセンサ素子31A、31Bと個別の通信路41A、41Bを介して接続されている。通信路41A、41Bが伝送可能な状態になったとき、信号取得部61A、61Bは、通信路41A、41Bを経由して送信されたセンサ値SiA、S1Bを取得する。トリガ信号生成部63A、63Bは、いずれもトリガ信号を生成する。ただし以下に説明するように、トリガ信号生成部63Aとトリガ信号生成部63Bとでは、生成したトリガ信号の用いられ方が異なる。
【0027】
ここで、第1受信部501に含まれる二つのSENTモジュール51A、51Bのうち、一つのSENTモジュール51Bを「代表モジュール」と定義し、代表モジュール以外のSENTモジュール51Aを「一般モジュール」と定義する。
【0028】
代表モジュールであるSENTモジュール51Bのトリガ信号生成部63Bが生成したトリガ信号は、第1系統に共通の「伝送トリガ信号Trc1」として通信路41A、41Bに出力される。共通の伝送トリガ信号Trc1は、二つの通信路41A、41Bを同時に伝送可能な状態にする。つまり、代表モジュールのトリガ信号生成部63Bは、第1受信部501に一つの「伝送トリガ信号生成部」として機能する。第1受信部501において、二つの信号取得部61A、61Bは、共通の伝送トリガ信号Trc1により、センサ値S1A、S1Bを同時に取得可能である。
【0029】
また、トリガ信号生成部63Bが生成したトリガ信号は、自モジュール51B内の信号取得部61Bを受信可能状態に遷移させる「モジュール内トリガ信号」としても用いられる。つまり、代表モジュール51Bのトリガ信号生成部63Bが生成したトリガ信号は、「モジュール内トリガ信号を兼ねた伝送トリガ信号」として用いられる。
【0030】
一方、一般モジュールであるSENTモジュール51Aのトリガ信号生成部63Aが生成したトリガ信号は、自モジュール51A内の信号取得部61Aを受信可能状態に遷移させる「モジュール内トリガ信号」としてのみ用いられる。生成したトリガ信号が、対応する通信路41Aの伝送トリガ信号として用いられないため、一般モジュールのトリガ信号生成部63Aによる動作は、SPCモードでのトリガ信号を生成しながら通信路41Aに出力しない動作であるため、通称「空打ち」と表現される。この構成による効果については、比較例と対比しつつ後述する。
【0031】
次に第1異常判定部761は、第1センサ装置301のセンサ素子31A、31Bから送信されたセンサ値S1A、S1Bの異常を判定する。同様に第2異常判定部762は、第2センサ装置302のセンサ素子32A、32Bから送信されたセンサ値S2A、S2Bの異常を判定する。第1、第2異常判定部761、762による処理については、
図5~
図7を参照して後述する。
【0032】
トルク演算部77は、二系統の受信部501、502が受信した複数のセンサ値S1A、S1B、S2A、S2B、及び、異常判定部761、762が判定した異常情報に基づいて操舵トルクを演算する。トルク演算部77による処理については、
図8を参照して後述する。アシスト量演算部78は、トルク演算部77が演算した操舵トルクに基づいて、モータ80が出力するアシスト量を、「所定の制御量」として演算する。
【0033】
ここで
図3を参照し、通信システム100が適用される電動パワーステアリング装置の概略構成を説明する。
図3に示す電動パワーステアリング装置90はコラムアシスト式であるが、ラックアシスト式の電動パワーステアリング装置にも同様に適用可能である。ハンドル91にはステアリングシャフト92が接続されている。ステアリングシャフト92の先端に設けられたピニオンギア96は、ラック軸97に噛み合っている。ラック軸97の両端にはタイロッド等を介して一対の車輪98が設けられる。運転者がハンドル91を回転させると、ハンドル91に接続されたステアリングシャフト92が回転する。ステアリングシャフト92の回転運動は、ピニオンギア96によりラック軸97の直線運動に変換され、ラック軸97の変位量に応じた角度に一対の車輪98が操舵される。
【0034】
電動パワーステアリング装置90は、操舵トルクセンサ93、ECU(制御装置)700、モータ80及び減速ギア94等を含む。操舵トルクセンサ93はステアリングシャフト92の途中に設けられており、運転者の操舵トルクを検出する。本実施形態の操舵トルクセンサ93は、二つのセンサ装置301、302を冗長的に含む。また、操舵トルクセンサ93は、センサ装置301、302の他、トーションバー、多極磁石、磁気ヨーク、集磁リング等を含んで構成される。これらの構成は周知であるため、図示を省略する。
【0035】
ECU700は、マイコン70をはじめ図示しないプリドライバ等で構成され、CPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。ECU700は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理による制御を実行する。
【0036】
マイコン70のアシスト量演算部78は、操舵トルクセンサ93から取得したセンサ値に基づいて、モータ80が出力するアシスト量(アシストトルク指令)を演算し、それに応じてモータ80の通電を制御する。モータ80は、例えば三相ブラシレスモータで構成される。モータ80が出力したアシストトルクは、減速ギア94を介してステアリングシャフト92に伝達される。モータ80はECU700と一体に構成されてもよい。
【0037】
以上のような通信システムの技術分野における従来技術として、特許文献1(特開2018-106513号公報)には、SENT通信のトリガ信号の送信タイミングを二つのマイコンで同期させる検出装置が開示されている。
図12のフローチャートに、特許文献1相当の参考比較例による同期処理を示す。以下のフローチャートの説明で記号「S」はステップを意味する。
図12の左列に第1マイコンの処理を示し、右列に第2マイコンの処理を示す。
【0038】
第1マイコンはS911でセンサS1#Nにトリガ信号を送信し、S921でセンサS1#Nからセンサ値(測定データ)を受信する。第2マイコンはS912でセンサS2#Nにトリガ信号を送信し、S922でセンサS2#Nからセンサ値(測定データ)を受信する。ここで、センサS1#N及びセンサS2#Nの測定対象は同一であり、センサ値の同時性が求められる。しかし、S911、S912の送信タイミングは各マイコンの演算タイミングに基づくため、送信タイミングにずれが発生し得る。
【0039】
そこで第2マイコンは、S93で第1マイコンのトリガ信号送信タイミングを監視し、S94で両マイコンのトリガ信号送信タイミングが一致するように、第2マイコンのトリガ信号送信タイミングを調整する。これにより、センサS1#N及びセンサS2#Nからのセンサ値の同時性が確保される。
【0040】
ただし特許文献1において、例えば第1マイコンに対応する複数のセンサS1#1~#Nの測定対象は同一ではない。つまり、本実施形態のように、同一の測定対象についての複数のセンサ値が一つのマイコン内の異なる信号取得部に取得される構成は開示されていない。仮に本実施形態の第1受信部501における複数のSENTモジュール51A、S52A間のトリガ信号送信タイミングについて特許文献1の思想を適用すると、マイコンの演算能力が余分に必要となる。それに対し本実施形態では、演算能力を増大させることなくセンサ値の同時性の確保を図る。
【0041】
次に
図4のタイミングチャートを参照し、センサ素子31A、31Bからの信号が通信路41A、41Bに伝送される信号のタイミングについて説明する。文中では第1系統の符号を記載する。第2系統のセンサ素子32A、32Bから通信路42A、42Bに伝送される信号のタイミングについても同様である。
【0042】
例えば通信路41A、41Bの途中には、グランドとの間にスイッチング素子が設けられている。トリガ信号がONしてスイッチング素子のゲートに入力されるとスイッチング素子が導通し、通信路41A、41Bを通る電流がグランドに流れて伝送が断絶される。トリガ信号がOFFするとスイッチング素子が遮断し、通信路41A、41Bが伝送可能な状態となる。つまり、各通信路41A、41Bに設けられたスイッチング素子のゲートに入力されるトリガ信号が一旦ONした後にOFFしたタイミングに、各通信路41A、41Bは伝送可能な状態になる。この構成例において本実施形態では、スイッチング素子のゲートに入力されるトリガ信号が「伝送トリガ信号」と定義される。
【0043】
ところで、一つの受信部501における二つのSENTモジュール51A、51Bで生成されるトリガ信号のタイミングがずれる場合がある。
図4に示す例では、SENTモジュール51Aのトリガ信号がON後OFFするタイミングtaと、SENTモジュール51Bのトリガ信号がON後OFFするタイミングtbとは時間δずれている。
【0044】
ここで
図11を参照し、比較例の通信システム109の構成について説明する。比較例の通信システム109では、第1受信部501の各SENTモジュール51A、51Bのトリガ信号生成部63A、63Bから対応する通信路41A、41Bに、伝送トリガ信号Tr1A、Tr1Bが個別に出力される。同様に第2受信部502の各SENTモジュール52A、52Bのトリガ信号生成部64A、64Bから対応する通信路42A、42Bに、伝送トリガ信号Tr2A、Tr2Bが個別に出力される。
【0045】
そのため、例えば第1系統において伝送トリガ信号Tr1A、Tr1Bのタイミングがずれると、各信号取得部61A、61Bが各センサ素子31A、31Bから異なるタイミングのセンサ値を取得する可能性がある。すると、マイコン70が誤ったトルクを演算したり、センサ値の異常を誤検出したりするおそれがある。
【0046】
また比較例では、各センサ値S1A、S1Bが送信される通信路41A、S1Bに個別に伝送トリガ信号Tr1A、Tr1Bを出力する必要があり、マイコン70の信号出力端子や接続工数が増加するという課題がある。
図11に示す比較例では、第1受信部501から伝送トリガ信号Tr1A、Tr1Bを出力する端子が二つ必要である。
【0047】
それに対し本実施形態では、一般モジュールであるSENTモジュール51Aのトリガ信号は、信号取得部61Aを受信可能状態に遷移させるモジュール内トリガ信号としてのみ用いられ、通信路41Aを伝送可能な状態にする伝送トリガ信号としては機能しない。一方、代表モジュールであるSENTモジュール51Bのトリガ信号は、信号取得部61Bを受信可能状態に遷移させるモジュール内トリガ信号として用いられると共に、両方の通信路41A、41Bを伝送可能な状態にする伝送トリガ信号として用いられる。したがって、タイミングtaは無視され、共通の伝送トリガ信号がON後OFFしたタイミングtbをきっかけとして、センサ素子31A、31Bから信号取得部61A、61Bへの信号伝送が同時に開始される。
【0048】
センサ素子31A、31Bからの信号は、一つのフレームで、計算及び同期(Cal & Sync)信号、ステータス(Status)信号、センサデータ(Sensor Data)信号、CRC信号及びエンド(End)信号からなる一連の信号として出力される。SENT方式は、4ビットのニブル信号を用いた双方向通信可能な伝送方式である。操舵トルクのセンサ値S1A、S1Bが含まれるセンサデータ信号の大きさは3ニブル(12ビット)であり、最大で「000」~「FFF」の212通り(4096通り)のデータ値が送信可能である。信号取得部61A、61Bは、SENT方式の信号を受信し、信号に含まれるセンサ値S1A、S1Bを取得する。
【0049】
このように本実施形態では、一つの受信部501において、二つの信号取得部61A、61Bは、共通の伝送トリガ信号Trc1により二つのセンサ値S1A、S1Bを同時に取得可能である。したがって、マイコン70がセンサ装置301から取得する複数のセンサ値の同時性S1A、S1Bを確保することができる。よって、異なるタイミングで取得したセンサ値に基づいてマイコン70が誤ったトルクを演算したり、センサ値の異常を誤検出したりすることが防止される。
【0050】
また本実施形態では、一つの受信部501につき一つの伝送トリガ信号Trc1を出力するため、マイコン70の信号出力端子や配線工数を低減することができる。つまり、
図1、
図2に示すように、第1受信部501から伝送トリガ信号Trc1を出力する端子は一つでよい。したがって、簡易な構成とすることができる。
【0051】
次に
図5~
図7を参照し、第1、第2異常判定部761、762による処理について説明する。
図5(a)、(b)に示すように、正常なセンサ値S1A、S1B、S2A、S2Bは、0~4095の値のうち、0付近の下限範囲と4095付近の上限範囲とを除く規定範囲内の値を取る。ここで除かれる下限範囲及び上限範囲は「規定範囲外」となる。センサ値S1A、S1B、S2A、S2Bが規定範囲外にある場合、異常と判定される。
【0052】
また本実施形態では、各系統の二つのセンサ素子による二つのセンサ値はクロス特性を有する。クロス特性における一方のセンサ値は、実際のトルクに対して正の相関の線形出力特性を有する正特性センサ値である。クロス特性における他方のセンサ値は、実際のトルクに対して正特性センサ値と傾きの絶対値が等しい負の相関の線形出力特性を有する負特性センサ値である。
【0053】
例えば第1センサ装置301では、センサ値S1Bが正特性センサ値に相当し、センサ値S1Aが負特性センサ値に相当する。第2センサ装置302では、センサ値S2Aが正特性センサ値に相当し、センサ値S2Bが負特性センサ値に相当する。正特性センサ値と負特性センサ値とは2048を中心とした対称値を取り、正特性センサ値と負特性センサ値との和は4096となる。仮に正特性センサ値と負特性センサ値との和が4096前後の所定範囲から外れた場合、異常判定部761、762は、少なくとも一つのセンサ値が異常であると判定する。
【0054】
図6のS51で第1異常判定部761は、センサ値S1A、S1Bを取得する。S52では、センサ値S1A、S1Bが
図5(a)に示す規定範囲外にあるか、又は、センサ値S1A、S1Bの和と4096との差分の絶対値が乖離閾値以上であるか判断される。S52でYESの場合、S53で第1異常判定部761は、少なくとも一つの異常なセンサ値を出力する第1センサ装置301が異常と判定する。S52でNOの場合、S54で第1異常判定部761は、第1センサ装置301が正常と判定する。
【0055】
図6と同様に、
図7のS61で第2異常判定部762は、センサ値S2A、S2Bを取得する。S62では、センサ値S2A、S2Bが
図5(b)に示す規定範囲外にあるか、又は、センサ値S2A、S2Bの和と4096との差分の絶対値が乖離閾値以上であるか判断される。S62でYESの場合、S63で第2異常判定部762は、少なくとも一つの異常なセンサ値を出力する第2センサ装置302が異常と判定する。S62でNOの場合、S64で第2異常判定部762は、第2センサ装置302が正常と判定する。
【0056】
例えば、クロス特性のセンサ値の和による異常判定において、センサ値の同時性が確保されない場合、異常を誤検出する可能性がある。本実施形態では、共通の伝送送トリガ信号Trc1、Trc2を用いてセンサ値の同時性を確保することで、異常を誤検出することが防止される。
【0057】
続いて
図8を参照し、トルク演算部77による処理について説明する。S71でトルク演算部77は、四つのセンサ値S1A、S1B、S2A、S2Bを取得する。S72でトルク演算部77は、式(1)、(2)により、0~4095までの無次元数であるセンサ値を各系統のトルク値T1、T2[Nm]に変換する。Ktは変換ゲインである。トルク値やセンサ値の正負の定義に応じて、変換ゲインKtの符号は適宜決定される。本実施形態では、T1とT2とは逆符号の値となる。
【0058】
T1=(S1A-S1B)×Kt ・・・(1)
T2=(S2A-S2B)×Kt ・・・(2)
【0059】
S73、S74ではセンサ装置301、302の異常の有無が判断される。異常判定部761、762によりいずれかのセンサ装置が異常と判定されたとき、マイコン70は、正常系統のセンサ装置のセンサ値のみを使用して演算を継続する。なお、
図8ではセンサ装置301、302が両方とも故障する二重故障は発生しないことを前提とする。
【0060】
異常判定部761により第1センサ装置301が異常と判定された場合、S73でYESと判断され、S75に移行する。S75では、第2系統のトルク値(-T2)が操舵トルクとして採用される。異常判定部762により第2センサ装置302が異常と判定された場合、S73でNO、S74でYESと判断され、S76に移行する。S76では、第1系統のトルク値T1が操舵トルクとして採用される。
【0061】
センサ装置301、302がいずれも正常の場合、S73でNO、S74でYESと判断され、S77に移行する。S77では、二系統のトルク値の平均値((T1-T2)/2)が操舵トルクとして採用される。
【0062】
式(1)、(2)ではセンサ値の差に基づいてトルク値を演算するため、センサ値の同時性が確保されない場合、誤ったトルク値T1、T2が演算される可能性がある。本実施形態では、共通の伝送送トリガ信号Trc1、Trc2を用いてセンサ値の同時性を確保することで、誤ったトルク値が演算されることが防止される。
【0063】
(第2実施形態)
図9、
図10を参照し、第2実施形態の通信システム200について説明する。
図9、
図10は、それぞれ第1実施形態の
図1、
図2に対応する。第2実施形態の通信システム200は、二系統のセンサ装置301、302に対応して、系統毎に二つのマイコン701、702を備える。二系統のマイコン701、702は、それぞれ受信部501、502、異常判定部761、762、トルク演算部771、772及びアシスト量演算部781、782を有する。
【0064】
第1マイコン701は、第1センサ装置301の二つのセンサ素子31A、31Bから取得したセンサ値S1A、S1Bに基づき、トルク演算部771で操舵トルクT1を演算し、アシスト量演算部781でアシスト量を演算する。第2マイコン702は、第2センサ装置302の二つのセンサ素子32A、32Bから取得したセンサ値S2A、S2Bに基づき、トルク演算部772で操舵トルクT2を演算し、アシスト量演算部782でアシスト量を演算する。
【0065】
マイコン701、702は、マイコン間通信により互いの情報を通信する。これにより、二系統の受信部501、502の各トリガ信号生成部63B、64Bは伝送トリガ信号Trc1、Trc2を互いに同期して生成する。また、トルク演算部771、772は、自系統及び他系統の異常判定部761、762が判定した異常情報に基づいて、操舵トルクを演算する。各トルク演算部771、772及び各アシスト量演算部781、782の演算結果は必要に応じて調停される。
【0066】
第2実施形態の通信システム200では、マイコン701、702が冗長的に設けられるため、いずれか一方のマイコンの異常時にも、正常なマイコンの演算結果を用いてアシスト量の演算を継続することができる。
【0067】
(その他の実施形態)
(a)一つのセンサ装置が三つ以上の複数のセンサ素子を有し、それに対応して、マイコンの一つの受信部が三つ以上の複数の信号取得部を有してもよい。例えば三つのセンサ素子に対応する一つの受信部は、一つの代表モジュールと、二つの一般モジュールとから構成される。代表モジュールのトリガ信号生成部が生成した伝送トリガ信号は三つの通信路に分配されて、三つの通信路を同時に伝送可能な状態とする。
【0068】
(b)通信システムは、二系統に限らず、一系統、又は、三系統以上のセンサ装置及び受信部を備えてもよい。一系統構成の通信システムでは、一つのセンサ装置と一つの受信部との間で、共通の伝送トリガ信号により、複数の信号取得部が複数のセンサ値を同時に取得可能になればよい。また、三系統以上の系統毎にマイコンを備える場合、三つ以上のマイコン間の通信により、各マイコンの伝送トリガ信号を互いに同期して生成するように構成してもよい。
【0069】
(c)例えば第1受信部501の信号取得部61A、61Bは、トリガ信号生成部63A、63Bとセットでモジュールとして構成されていなくてもよい。また、信号取得部61A、61Bを受信可能状態にする手段は、トリガ信号生成部63A、63Bからのモジュール内トリガ信号に限らない。信号取得部61A、61Bがモジュール内トリガ信号を必要としない構成の場合、伝送トリガ信号生成部として機能しない側のトリガ信号生成部63Aは無くてもよい。
【0070】
(d)センサ値の異常が発生する可能性が実質的にゼロに等しい場合や異常が発生しても影響が無い場合等は、マイコンは異常判定部を備えなくてもよい。また、二つのセンサ値の特性はクロス特性に限らず、実際の物理量に対して共に正の相関を有する特性や共に負の相関を有する特性であってもよい。
【0071】
(e)センサ素子が検出し、マイコンの物理量演算部が演算する物理量は、トルクに限らず、回転角、ストローク、速度、荷重、圧力等、どのような物理量でもよい。それに応じて、マイコンの制御量演算部が物理量を用いて演算する制御量は、アシスト量に限らず、電流指令値、回転数指令値等、適宜設定される。
【0072】
(f)通信システムのデジタル通信の方式(プロトコル)は、SENT方式に限らず、他のプロトコルを採用してもよい。センサ信号は、4ビットのニブル信号に限らず、8ビットのオクテット信号等を用いてもよい。また、センサ装置は、マイコンの受信部にアナログ信号でセンサ値を送信してもよい。
【0073】
(g)本発明の通信システムは、電動パワーステアリング装置の他、検出したセンサ値に基づいて制御量の演算を行うどのような装置に適用されてもよい。
【0074】
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【0075】
本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
100、200・・・通信システム、
301、302・・・センサ装置、
31A、31B、32A、32B・・・センサ素子、
41A、41B、42A、42B・・・通信路、
501、502・・・受信部、
61A、61B、62A、62B・・・信号取得部、
63B、64B・・・トリガ信号生成部(伝送トリガ信号生成部)、
70、701、702・・・マイコン、
77、771、772・・・トルク演算部(物理量演算部)、
78、781、782・・・アシスト量演算部(制御量演算部)。