(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電磁波透過カバー
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20241210BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20241210BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20241210BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G01S7/03 246
G01S17/931
G01S13/931
G01S7/481
(21)【出願番号】P 2021136509
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2023-08-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 里彩
(72)【発明者】
【氏名】深川 鋼司
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-085840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0034231(US,A1)
【文献】特開2019-066231(JP,A)
【文献】特開2004-020514(JP,A)
【文献】特開2016-173350(JP,A)
【文献】特開2019-161528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
H01Q 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電磁波装置の表側に配置される電磁波透過カバーであって、
車両用電磁波装置の電磁波経路上において車両室外に露出する意匠部を有する基体と、
前記基体よりも熱伝導率が高く、前記意匠部の裏側に配置されている熱源と前記意匠部とを熱的に連絡する熱伝導部と、
前記基体よりも熱伝導率が高く、前記意匠部における一端部に一体化されている第1境界部材と、
前記基体よりも熱伝導率が高く、前記意匠部において前記一端部に対向する他端部に一体化されている第2境界部材と、を具備し、
前記第1境界部材および前記第2境界部材は、各々、細長い棒状をなし、その長手方向に沿って前記意匠部に一体化され、
前記熱伝導部は前記意匠部側の端部である伝導端部を複数有し、
複数の前記伝導端部の各々が前記第1境界部材または前記第2境界部材と接触することで、各々の前記伝導端部は、前記意匠部に対して異なる位置で接続されている、電磁波透過カバー。
【請求項2】
前記熱源は、前記車両用電磁波装置に含まれる素子である、請求項1に記載の電磁波透過カバー。
【請求項3】
隣り合う前記伝導端部は、互いに5mm以上離れている、
請求項1に記載の電磁波透過カバー。
【請求項4】
隣り合う前記伝導端部は、互いに5mm以上離れている、
請求項2に記載の電磁波透過カバー。
【請求項5】
車両用電磁波装置の表側に配置される電磁波透過カバーであって、
車両用電磁波装置の電磁波経路上において車両室外に露出する意匠部を有する基体と、
前記基体よりも熱伝導率が高く、前記意匠部の裏側に配置されている熱源と前記意匠部とを熱的に連絡する熱伝導部と、を具備し、
前記熱伝導部は前記意匠部側の端部である伝導端部を複数有し、
各々の前記伝導端部は、前記意匠部に対して異なる位置で接続され、
隣り合う前記伝導端部は、互いに5mm以上離れている、電磁波透過カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電磁波装置の表側に配置される電磁波透過カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転支援システムの開発が活発に行われており、車両には当該運転システムに用いる種々の車両用電磁波装置が取り付けられている。
【0003】
上記の車両用電磁波装置の一種であるLiDAR(Light Detection and Ranging)は、光を用いたリモートセンシング技術であり、運転支援システムに利用されている。
LIDARでは、レーザーを用いて比較的短波長の光を対象物に向けて出射し、かつ、対象物に当たって反射した当該光を検知する。LiDARのなかでも、近赤外線を用いたセンシングを行うものは、比較的近距離の障害物を検知するのに有利である。
【0004】
また、その他の車両用電磁波装置として、ミリ波レーダやレーザレーダ等の電磁波レーダ装置も知られている。当該電磁波レーダ装置は、車両のA.C.C(Adaptive Cruise control)に用いられる。
A.C.C.は、車両前側に搭載されているセンサによって前方車両と自車との車間距離や相対速度等の走行情報を測定し、この走行情報を基にスロットルやブレーキを制御して自車を加減速し、車間距離をコントロールする技術である。A.C.C.は、近年、渋滞緩和や事故減少を目指す高度道路交通システム(ITS)の中核技術の一つとして注目されている。電磁波レーダ装置の一種であるミリ波レーダは、周波数30GHz~300GHz、波長1~10mmのミリ波を送信し、かつ、対象物にあたって反射したミリ波を受信する。この送信波と受信波との差から前方車両と自車との車間距離や相対速度を算出できる。
【0005】
上記した各種の車両用電磁波装置における出射部や検知部は、車両の最外側(つまり、車両の前端側、側端側、後端側等)に搭載される。当該出射部や検知部が車外から視認されると車両の意匠性が損なわれるため、出射部や検知部の更に外側には、これらを覆う電磁波透過カバーを設けるのが一般的である。
【0006】
上記の電磁波透過カバーは、車両室外に露出する部分である意匠部を有する。当該意匠部は、車両用電磁波装置の電磁波経路上に配置される。
ここで、当該意匠部は、車両室外に露出する部分であるために、寒冷時に霜がついたり、降雪時に雪が積もったりする場合がある。意匠部が霜雪で覆われると、その奥側に配置される車両用電磁波装置のセンシング機能や当該車両用電磁波装置における通信機の通信機能等が阻害される虞がある。
【0007】
特許文献1には、車両用電波装置の一種である車載用レーダ装置に関する発明が紹介されている。当該特許文献1に紹介されている車載用レーダ装置は、発熱源3a,3bが生じる輻射熱を、反射体4a,4bを介して、電磁波透過カバーの一種であるエンブレム1に伝えて、当該エンブレム1を加熱する。この種の車両用電波装置によると、電磁波透過カバーの霜雪を加熱し溶かすことが可能であるために、霜雪に因るセンシング機能や通信機能等の阻害を抑制できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した特許文献1に紹介されている車両用電波装置は、発熱源が生じる赤外線を反射体により反射させ、当該赤外線に因る輻射熱を用いて電磁波透過カバーを加熱する。この種の加熱機構は、発熱源が生じる熱を直接的に電波透過カバーに供給する場合に比べて、比較的熱効率に劣る問題があり、かつ、電力等、発熱源のための動力が別途必要になる問題もある。さらに、発熱源と反射体との間、および、反射体と電磁波透過カバーとの間に、赤外線を遮る他の部材を配置できないために、電磁波透過カバーの形状の自由度が損なわれる問題もある。加えて、例えば車両用電磁波装置がLiDAR等の赤外線を用いたセンシングを行うものであれば、発熱源が生じた赤外線が当該車両用電磁波装置によるセンシングに干渉する虞もある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、形状の自由度を確保しつつ、かつ、効率よく電磁波透過カバーを加熱し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の電磁波透過カバーは、
車両用電磁波装置の表側に配置される電磁波透過カバーであって、
車両用電磁波装置の電磁波経路上において車両室外に露出する意匠部を有する基体と、
前記基体よりも熱電伝導率が高く、前記意匠部の裏側に配置されている熱源と前記基体とを熱的に連絡する熱伝導部と、を具備し、
前記熱伝導部は、前記熱源側の部分である伝導基部と、前記意匠部側の部分であり前記伝導基部に連絡する伝導端部と、を含む熱伝導経路を複数有し、
各々の前記伝導端部は、前記意匠部に対して異なる位置で接続されている、電磁波透過カバーである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電磁波透過カバーによると、形状の自由度を確保しつつ、電磁波透過カバーにおける意匠部を効率よく加熱し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1の電磁波透過カバーを模式的に表す説明図である。
【
図2】実施例1の電磁波透過カバーを切断した様子を模式的に表す説明図である。
【
図3】実施例1の電磁波透過カバーを表側から見た様子を模式的に表す説明図である。
【
図4】実施例1の電磁波透過カバーを上側から見た様子を模式的に表す説明図である。
【
図5】実施例2の電磁波透過カバーを模式的に表す説明図である。
【
図6】
図6は実施例2の電磁波透過カバーを表側から見た様子を模式的に表す説明図である。
【
図7】実施例2の電磁波透過カバーを上側から見た様子を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
【0015】
本発明の電磁波透過カバーは、車両用電磁波装置の電磁波経路上において車両室外に露出する意匠部を有する基体を具備する。
本発明の電磁波透過カバーにおいて、基体に設けられている意匠部は、車両用電磁波装置の電磁波経路上において車両室外に露出する部分である。つまり意匠部は、霜雪で覆われる可能性があり、かつ、霜雪に因るセンシング機能や通信機能等の阻害を生じ得る部分である。
【0016】
本発明の電磁波透過カバーは、上記した基体に加えて、当該基体よりも熱電伝導率が高い熱伝導部を具備する。当該熱伝導部は、基体と、当該基体における意匠部の裏側に配置されている熱源と、を熱的に連絡する。つまり、本発明の電磁波透過カバーにおける基体の意匠部は、熱伝導部を介して、意匠部の裏側に配置されている熱源によって間接的に加熱される。このため、本発明の電磁波透過カバーによると、熱源の熱を比較的熱効率よく意匠部に伝導でき、意匠部に付着した霜雪を効率よく溶かすことが可能である。
【0017】
ここで、熱伝導部は、熱源側の部分である伝導基部と、意匠部側の部分であり当該伝導基部に連絡する伝導端部と、を含む熱伝導経路を複数有する。そして、各々の伝導端部は、意匠部に対して異なる位置で接続されている。このため、本発明の電磁波透過カバーによると、意匠部に対して複数の位置に別々に熱伝導することができ、意匠部を効率よく加熱することが可能である。
【0018】
また、本発明の電磁波透過カバーは、意匠部を熱伝導により加熱するために、熱源と意匠部との位置関係や、熱伝導部と意匠部との位置関係には特に制限はない。このため本発明の電磁波透過カバーは形状の自由度にも優れる。
以上のように、本発明の電磁波透過カバーによると、形状の自由度を確保しつつ、電磁波透過カバーにおける意匠部を効率よく加熱し得るといい得る。
【0019】
以下、本発明の車両用外装部品をその構成要素毎に説明する。
【0020】
本発明の電磁波透過カバーは、車両用電磁波装置の表側に配置される。当該車両用電磁波装置は、電磁波を出射するための出射部および/または電磁波を受信するための検知部を有するものであれば良く、特に限定しない。電磁波の種類もまた特に限定しない。
【0021】
車両用電磁波装置として、具体的には、上記したLiDARやミリ波レーダ、レーザレーダ等のレーダ装置、デジタルカメラや光学カメラ等のカメラ装置、ドア開閉のためのフットセンサ等を例示することができる。
【0022】
電磁波は、上記した各種の車両用電磁波装置が出射および/または受信するものであれば良く、当該電磁波として、赤外線、ミリ波、レーザー波、種々の波長の可視光線等を例示できる。
【0023】
本発明の電磁波透過カバーは、基体および熱伝導部を具備する。
このうち基体は、意匠部を有する。意匠部は、既述した通り電磁波透過カバーのうち車両室外に露出する部分であり、かつ、車両用電磁波装置の電磁波経路上に配置される部分である。換言すると、基体は、意匠部によって車両用電磁波装置の表側を覆う。
【0024】
基体は意匠部のみからなっても良いし、意匠部以外の部分を備えても良い。
例えば、基体は、略板状の意匠部のみからなる板状をなしても良い。または、基体は、略板状の意匠部と、当該意匠部の周縁に一体化された周壁とを有する略箱状をなしても良い。さらには、基体は、略板状の意匠部と、当該意匠部に連続し車両用電磁波装置の電磁波経路外に配置される一般部と、を有する略板状または略箱状をなしても良い。
【0025】
何れの場合にも、意匠部は、電磁波透過カバーの基体のうち車両室外に露出する部分であるために、霜雪が付着する虞のある部分である。また、意匠部は、電磁波経路上に配置される部分であるために、霜雪により電磁波透過性能を阻害される虞のある部分である。
【0026】
基体の材料は特に問わないが、基体のうち意匠部については、電磁波を透過できる材料を選択すれば良い。
【0027】
本発明の電磁波透過カバーが車両に搭載されることを考慮すると、基体の材料としては、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、ポリプロピレン(PP)等の樹脂を選択するのが好適である。意匠部を含む基体には、塗装、印刷、金属蒸着等により各種の意匠を表示し得る意匠層を形成しても良い。
【0028】
熱伝導部は、上記した基体よりも熱電伝導率が高く、熱源と意匠部とを熱的に連絡する。
【0029】
熱伝導部の材料は、基体との熱伝導率の関係を考慮して適宜選択すれば良い。熱伝導部の好適な材料としては、アルミニウム等の金属や、アルミニウムや銅等の熱伝導性に優れる材料の粉末がフィラーとして樹脂に配合された複合材料を例示できる。
【0030】
熱伝導部は、中空であり、内部に作動液を保持するヒートパイプであっても良い。この場合、作動液の組成および熱伝導部の内部構造は、ヒートパイプとして一般に知られているものを適宜選択すれば良い。また、この場合にも、熱伝導部すなわちヒートパイプのパイプ部分は、基体よりも熱伝導率の高いものであれば良い。
【0031】
熱伝導部は、熱源と意匠部とを熱的に連絡すれば良く、熱源および/または意匠部に接触していても良いし、熱源および意匠部のどちらにも接触していなくても良い。
熱損失を低減することを考慮すると、熱伝導部は、熱源および意匠部の一方に接触しているのが好ましく、熱源および意匠部の両方に接触しているのがより好ましい。
【0032】
熱伝導部は、基体と別体であっても良いし、基体に一体化されていても良い。二色成形やインサート成形等の方法で基体と一体に成形されていても良い。さらに、熱伝導部は、例えば基体上に塗布、印刷または接着等された層状をなしても良い。
【0033】
本発明の電磁波透過カバーにおいて、熱伝導部は、熱源側の部分である伝導基部と、意匠部側の端部であり当該伝導基部に連絡する伝導端部と、を含む熱伝導経路を複数有する。そして、各々の当該伝導端部は、意匠部に対して異なる位置で接続されている。
【0034】
換言すると、本発明の電磁波透過カバーにおける熱伝導部は、熱源が発した熱を複数の経路を介して意匠部に伝導する。このとき熱伝導部における意匠部側の端部、すなわち伝導端部が、意匠部に対して異なる位置で接続されていることにより、意匠部は複数の位置から加熱される。これにより、本発明の電磁波透過カバーによると、意匠部の全体を効率よく加熱することが可能である。
【0035】
意匠部の全体をより効率よく加熱することを考慮すると、伝導端部は、意匠部の対向する両端部に接続されるのが好ましい。
当該両端部は、意匠部における長手方向の両端部であっても良いし、短手方向の両端部であっても良い。何れの場合にも、伝導端部が意匠部の対向する両端部に接続されることで、意匠部を両側から加熱することができ、意匠部の全体を効率よく加熱できる。
【0036】
また、熱伝導経路の少なくとも一つは、複数に分岐しているのが好ましい。この場合、一つの熱伝導経路が複数の伝導端部を有する。
こうすることで、意匠部のうち比較的広い範囲を伝導端部により加熱することができ、意匠部をより効率よく加熱することが可能である。
【0037】
特に、意匠部における短手方向の両端部に伝導端部が接続される場合、熱伝導経路の少なくとも一方が複数に分岐するのが好ましい。この場合には、意匠部のうち伝導端部が接続されて当該伝導端部から直接熱伝導される部分が、意匠部の長手方向においても充分に広い範囲にわたる。これにより、意匠部全体が充分に加熱されるまでに要する時間が短縮され、意匠部がより効率よく加熱される。
【0038】
意匠部の全体をさらに効率よく加熱することを考慮すると、隣り合う伝導端部同士は離れている方が好適である。
隣り合う伝導端部同士の距離は、意匠部の大きさや形状、伝導端部の数等に応じて適宜適切に設定すれば良いが、具体例を挙げると、各々の伝導端部は、5mm以上離れているのが好ましく、10mm以上離れているのがより好ましく、30mm以上離れているのが特に好ましい。
【0039】
本発明の電磁波透過カバーは、車両用電磁波装置を具備しても良いし、具備していなくても良い。車両用電磁波装置は、例えば、箱状をなす基体の内部に配置されても良いし、板状をなす基体の裏側に配置されるだけであっても良い。
【0040】
本発明の電磁波透過カバーは熱源として車両用電磁波装置に含まれる素子を用いても良い。車両用電磁波装置は、ダイオードやECU等、発熱する素子を具備する。当該素子を熱源として利用することで、電磁波透過カバーの加熱を省エネルギで行うことが可能である。
【0041】
また、これらの素子は熱を生じるために、当該熱により車両用電磁波装置が過熱されることを抑制する目的で、車両用電磁波装置にはヒートシンクが設けられる場合がある。
本発明の電磁波透過カバーにおける熱源として、これらの素子を用いる場合には、素子の熱を意匠部に伝導させることで、当該素子を冷却するためのヒートシンク等を省き得る利点もある。
【0042】
なお、熱源が車両用電磁波装置の素子である場合、車両用電磁波装置は箱状をなす基体の内部に配置されるのが好ましい。そして、当該車両用電磁波装置の熱源は、基体に一体化されている熱伝導部に接触または近接しているのが好ましい。こうすることで、エネルギ損失を抑制しつつ、熱伝導部により熱源が生じた熱を効率的に回収することが可能である。
【0043】
本発明の電磁波透過カバーに用いる熱源は、上記した車両用電磁波装置の素子に限定されない。例えば、車両に搭載されているエンジンやモータ等、排熱を生じるものを熱源として利用するのも好ましい。このような車両用電磁波装置の素子以外の熱源を、車両用電磁波装置の素子である熱源と併用するのも好ましい。
【0044】
以下、具体例を挙げて本発明の電磁波透過カバーを説明する。
【0045】
(実施例1)
実施例1の電磁波透過カバーは、車両用電磁波装置としてのRiDARを具備するものである。
図1は実施例1の電磁波透過カバーを模式的に表す説明図である。
図2は実施例1の電磁波透過カバーを切断した様子を模式的に表す説明図である。
図3は実施例1の電磁波透過カバーを表側から見た様子を模式的に表す説明図である。
図4は実施例1の電磁波透過カバーを上側から見た様子を模式的に表す説明図である。
以下、表、裏、上、下、左、右とは、各図に示す表、裏、上、下、左、右を意味する。参考までに、表側は車両進行方向における先側に相当し、裏側は車両進行方向における後側に相当する。
【0046】
図1に示すように、実施例1の電磁波透過カバー1は、基体2、熱伝導部5および車両用電磁波装置8を具備する。
【0047】
基体2は、樹脂製であり、箱状をなす。基体2は、表側の部分である第1分体21と、裏側の部分である第2分体22とに二分割された状態で成形され、組み立てられたものである。
【0048】
実施例1の電磁波透過カバー1において、意匠部25は、第1分体21のうち表側に位置し板状をなす部分である。第1分体21は、意匠部25および意匠部25以外の一般部26を有し、第2分体22は一般部26からなる、ともいい得る。
【0049】
基体2を構成する第1分体21および第2分体22はPC製であり、このうち意匠部25を構成する部分にはさらに上層にハードコートが施されている。
【0050】
基体2の内部には車両用電磁波装置8としてのLiDARが収容されている。当該車両用電磁波装置8は電磁波としての赤外線を表側に向けて出射し、また表側から入射した赤外線を受信する。
基体2の意匠部25は車両用電磁波装置8の表側に配置される。したがって、意匠部25は車両用電磁波装置8の電磁波経路上にある。また、意匠部25は電磁波としての赤外線を透過可能である。
【0051】
図2に示すように、熱伝導部5は、基体2に一体化されている。具体的には、熱伝導部5は銅製のパイプ内に作動液が保持された2つのヒートパイプからなり、基体2の中空内部に固定されている。実施例1の電磁波透過カバー1では、この2つのヒートパイプが、別々の熱伝導経路を構成する。すなわち、実施例1の電磁波透過カバー1は2つの熱伝導経路を有する。
以下、一方のヒートパイプを第1熱伝導経路50と称し、他方のヒートパイプを第2熱伝導経路60と称する。
【0052】
第1熱伝導経路50の一端部である第1受熱端部51は、車両用電磁波装置8の内部に導入され、車両用電磁波装置8における素子、具体的には図略のダイオードおよびECUの下側近傍に配置されている。これらの素子が、実施例1の電磁波透過カバー1における熱源85となる。第1熱伝導経路50は、基体2の内部かつ下側部分を、裏側から表側に向けて延び、第1熱伝導経路50の他端部である第1伝導端部52は、意匠部25の裏面に下側から接触している。
【0053】
第2熱伝導経路60の一端部である第2受熱端部61は、車両用電磁波装置8の内部に導入され、熱源85であるダイオードおよびECUの上側近傍に配置されている。第2熱伝導経路60は、基体2の内部かつ上側部分を、裏側から表側に向けて延び、第2熱伝導経路60の他端部である第2伝導端部62は、意匠部25の裏面に上側から接触している。
【0054】
図3に示すように、意匠部25の裏面上端および下端には、各々、左右方向すなわち意匠部25の長手方向に延びる細長い棒状の部材が取り付けられている。意匠部25の裏面下端に取り付けられている当該棒状の部材を、第1境界部材28と称する。また、意匠部25の裏面上端に取り付けられている当該棒状の部材を、第2境界部材29と称する。第1境界部材28および第2境界部材29は、基体2よりも熱伝導性が高い。第1境界部材28は第1伝導端部52に接触し、第2境界部材29は第2伝導端部62に接触している。
【0055】
第1境界部材28は第1分体21の意匠部25に一体化され、第1伝導端部52を含む第1熱伝導経路50は第2分体22に一体化されている。同様に、第2境界部材29は第1分体21の意匠部25に一体化され、第2伝導端部62を含む第2熱伝導経路60は第2分体22に一体化されている。そして、第1分体21と第2分体22とを組み合わせる際に、第1境界部材28と第1熱伝導経路50の第1伝導端部52とが接触し、第2境界部材29と第2熱伝導経路60の第2伝導端部62とが接触する。
【0056】
図4に示すように、第2熱伝導経路60は3つに分岐している。したがって、第2熱伝導経路60は3つの第2伝導端部62を有する。各第2伝導端部62は、意匠部25に対して左右方向の異なる位置で接続されている。隣り合う第2伝導端部62の距離は3cm程度である。なお、第1伝導端部52と第2伝導端部62との距離は、10cm程度である。
【0057】
熱源85から第2熱伝導経路60に伝導した熱は、3方向に分かれて各第2伝導端部62に伝導し、さらに、第2境界部材29に伝達して、当該第2境界部材29によって左右方向すなわち意匠部の長手方向に沿って拡散され、意匠部25に伝導される。
【0058】
実施例1の電磁波透過カバー1においては、熱伝導部5が第1熱伝導経路50および第2熱伝導経路60の2経路で、熱源85の熱を意匠部25に伝導する。これにより、実施例1の電波透過カバーは、意匠部25を効率よく加熱することが可能である。
【0059】
(実施例2)
実施例2の電磁波透過カバーは、意匠部の形状、基体と車両用電磁波装置との位置関係、および、第2熱伝導経路の形状以外は、実施例1と概略同じものである。したがって、以下、実施例1の電磁波透過カバーとの相違点を中心に、実施例2の電磁波透過カバーを説明する。
図5は実施例2の電磁波透過カバーを模式的に表す説明図である。
図6は実施例2の電磁波透過カバーを表側から見た様子を模式的に表す説明図である。
図7は実施例2の電磁波透過カバーを上側から見た様子を模式的に表す説明図である。
【0060】
図5に示すように、実施例2の電磁波透過カバー1における意匠部25は、基体2の第1分体21における表側に位置する部分の一部のみであり、その周囲を一般部26で囲まれている。
車両用電磁波装置8は、意匠部25の裏側に配置され、当該意匠部25に対面する。
【0061】
図6に示すように、第1境界部材28および第2境界部材29の左右方向の長さは、意匠部25の左右方向の長さよりも長く、第1分体21および第2分体22の左右方向の長さよりも短い。
【0062】
図7に示すように、第2熱伝導経路60は、分岐せず、裏側から表側に向けて直状に延びている。したがって、実施例2の電磁波透過カバー1では、第2熱伝導経路60は一つのみの第2伝導端部62を有する。
【0063】
実施例2の電磁波透過カバー1においても、熱伝導部5が第1熱伝導経路50〈図略〉および第2熱伝導経路60の2経路で、熱源85の熱を意匠部25に伝導する。これにより、実施例2の電波透過カバーもまた、意匠部25を効率よく加熱することが可能である。
【0064】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0065】
1:電磁波透過カバー
2:基体
25:意匠部
5:熱伝導部
52:第1伝導端部(伝導端部)
62:第2伝導端部(伝導端部)
8:車両用電磁波装置
85:熱源