IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電磁波透過カバー 図1
  • 特許-電磁波透過カバー 図2
  • 特許-電磁波透過カバー 図3
  • 特許-電磁波透過カバー 図4
  • 特許-電磁波透過カバー 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電磁波透過カバー
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20241210BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20241210BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20241210BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20241210BHJP
【FI】
G01S7/03 246
G01S7/481 Z
G01S17/931
G01S13/931
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021136717
(22)【出願日】2021-08-24
(65)【公開番号】P2023031168
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2023-08-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 里彩
(72)【発明者】
【氏名】深川 鋼司
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/028733(WO,A1)
【文献】特開2016-206034(JP,A)
【文献】特開2017-215242(JP,A)
【文献】特開2021-178440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0377064(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
H01Q 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電磁波装置の表側に配置され車両室外に露出する意匠部と、前記意匠部に一体化され前記意匠部の裏側に配置される筐体と、前記意匠部に一体に設けられている発熱体と、を具備し、
前記筐体の熱伝導率は、前記意匠部の熱伝導率よりも低く、
前記発熱体は、前記意匠部の中央部から上部にかけて配線されている、電磁波透過カバー。
【請求項2】
前記筐体の熱伝導率と前記意匠部の熱伝導率との差は0.01W/(m・K)以上である、請求項1に記載の電磁波透過カバー。
【請求項3】
車両用電磁波装置の表側に配置され車両室外に露出する意匠部と、前記意匠部の裏側に配置される筐体と、前記意匠部および前記筐体に一体化され前記意匠部と前記筐体との間に介在する中間部材と、前記意匠部に一体に設けられている発熱体と、を具備し、
前記中間部材の熱伝導率は、前記意匠部の熱伝導率よりも低く、
前記発熱体は、前記意匠部の中央部から上部にかけて配線されている、電磁波透過カバー。
【請求項4】
前記中間部材の熱伝導率と前記筐体の熱伝導率との差は0.01W/(m・K)以上である、請求項3に記載の電磁波透過カバー。
【請求項5】
前記中間部材の厚さは20μm以上である、請求項3または請求項4に記載の電磁波透過カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電磁波装置の表側に配置される意匠部を含む、電磁波透過カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転支援システムの開発が活発に行われており、車両には当該運転システムに用いる種々の車両用電磁波装置が取り付けられている。
【0003】
上記の車両用電磁波装置の一種であるLiDAR(Light Detection and Ranging)は、光を用いたリモートセンシング技術であり、運転支援システムに利用されている。
LiDARでは、レーザーを用いて比較的短波長の光を対象物に向けて出射し、かつ、対象物に当たって反射した当該光を検知する。LiDARのなかでも、近赤外線を用いたセンシングを行うものは、比較的近距離の障害物を検知するのに有利である。
【0004】
また、その他の車両用電磁波装置として、ミリ波レーダやレーザレーダ等の電磁波レーダ装置も知られている。当該電磁波レーダ装置は、車両のA.C.C(Adaptive Cruise control)に用いられる。
A.C.C.は、車両前側に搭載されているセンサによって前方車両と自車との車間距離や相対速度等の走行情報を測定し、この走行情報を基にスロットルやブレーキを制御して自車を加減速し、車間距離をコントロールする技術である。A.C.C.は、近年、渋滞緩和や事故減少を目指す高度道路交通システム(ITS)の中核技術の一つとして注目されている。電磁波レーダ装置の一種であるミリ波レーダは、周波数30GHz~300GHz、波長1~10mmのミリ波を送信し、かつ、対象物にあたって反射したミリ波を受信する。この送信波と受信波との差から前方車両と自車との車間距離や相対速度を算出できる。
【0005】
上記した各種の車両用電磁波装置における出射部や検知部は、車両の最外側(つまり、車両の前端側、側端側、後端側等)に搭載される。当該出射部や検知部が車外から視認されると車両の意匠性が損なわれるため、出射部や検知部の更に外側には、これらを覆う意匠部を設けるのが一般的である。
【0006】
上記の意匠部は、車両室外に露出する部分であり、車両用電磁波装置の電磁波経路上に配置され、当該電磁波の透過を許容する。
ここで、当該意匠部は、車両室外に露出する部分であるために、寒冷時に霜がついたり、降雪時に雪が積もったりする場合がある。意匠部が霜雪で覆われると、その裏側、すなわち奥側に配置される車両用電磁波装置のセンシング機能や当該車両用電磁波装置における通信機の通信機能等が阻害される虞がある。
【0007】
特許文献1には、車両用電磁波装置の一種である赤外線センサを覆うための、電磁波透過カバーに関する発明が紹介されている。当該特許文献1に紹介されている電磁波透過カバーは、赤外線センサ用カバー4であり、赤外線センサ3によって送受信される赤外線の経路上に設けられるカバー基材5と、そのカバー基材5の表面に設けられて通電によって発熱するヒータ線8と、を備える。このうちカバー基材5は、上記した意匠部に該当すると考えられる。この種の電磁波透過カバーによると、ヒータ線8すなわち発熱体が発熱してカバー基材5すなわち意匠部が温められることで、当該意匠部を覆う霜雪を溶かすことが可能である。また、これにより、霜雪に因る車両用電磁波装置のセンシング機能や通信機能等の阻害を抑制できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2020-165943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既述したように、特許文献1に紹介されている電磁波透過カバーでは、意匠部に一体に設けられている発熱体が熱を生じ、発熱体からの熱伝導によって直接意匠部を温める。これにより、当該意匠部を覆う霜雪を溶かすことが可能であり、当該霜雪に起因する各種の弊害を抑制することが可能である。
【0010】
ここで、近年、車両には各種の車両搭載機器が搭載されており、各車両搭載機器で消費する電力量を低減することが要求されている。近年台頭している電気自動車やハイブリッド車においては、特に、充電後の走行距離を十分に確保するために、車両搭載機器での電力消費量を低減することが望まれている。
本発明の発明者は、車両搭載機器の省エネルギ化を実現すべく鋭意研究を重ね、その過程で、特許文献1に紹介されているような発熱体を一体に有する電磁波透過カバーにおいては、発熱体が生じた熱の一部が損失し、電磁波透過カバーの加熱に充てられていない場合があることに気づいた。
つまり、特許文献1に紹介されている電磁波透過カバーでは、発熱体から意匠部に伝導した熱は、更に筐体、具体的には特許文献1の実施例に記載のあるような、赤外線センサを収容するためのケースにまで伝導する。これにより、意匠部を充分な温度にまで加熱するのに要する時間や、意匠部を充分な温度にまで加熱するのに要する熱量が、必要以上に増大する虞がある。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、意匠部、意匠部に一体に設けられている発熱体、および筐体を具備する電磁波透過カバーにおいて、意匠部を効率よく加熱し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の第1態様の電磁波透過カバーは、
車両用電磁波装置の表側に配置され車両室外に露出する意匠部と、前記意匠部に一体化され前記意匠部の裏側に配置される筐体と、前記意匠部に一体に設けられている発熱体と、を具備し、
前記筐体の熱伝導率は、前記意匠部の熱伝導率よりも低い、電磁波透過カバーである。
【0013】
また、上記課題を解決する本発明の第2態様の電磁波透過カバーは、
車両用電磁波装置の表側に配置され車両室外に露出する意匠部と、前記意匠部の裏側に配置される筐体と、前記意匠部および前記筐体に一体化され前記意匠部と前記筐体との間に介在する中間部材と、前記意匠部に一体に設けられている発熱体と、を具備し、
前記中間部材の熱伝導率は、前記筐体の熱伝導率よりも低い、電磁波透過カバーである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電磁波透過カバーは、意匠部、意匠部に一体に設けられている発熱体、および筐体を具備する電磁波透過カバーであって、意匠部を効率よく加熱することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1の電磁波透過カバーを模式的に表す説明図である。
図2】実施例1の電磁波透過カバーを切断した様子を模式的に表す説明図である。
図3】実施例2の電磁波透過カバーを切断した様子を模式的に表す説明図である。
図4】実施例3の電磁波透過カバーを切断した様子を模式的に表す説明図である。
図5】実施例4の電磁波透過カバーを切断した様子を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
【0017】
本発明の第1態様の電磁波透過カバーでは、筐体が意匠部に一体化されかつ当該意匠部の裏側に配置されている。つまり、当該第1態様の電磁波透過カバーにおいては、発熱体が生じ意匠部に伝導した熱は、当該意匠部を経て、当該意匠部に一体化されている筐体にも伝導し得る。しかし、第1態様の電磁波透過カバーでは、筐体の熱伝導率は意匠部の熱伝導率よりも低いため、意匠部から筐体への熱伝導は阻害される。これにより、第1態様の電磁波透過カバーによると、発熱体が生じた熱により意匠部を効率良く温めることができる。
【0018】
また、上記課題を解決する本発明の第2態様の電磁波透過カバーでは、意匠部と筐体との間に中間部材が介在する。したがって、当該第2態様の電磁波透過カバーにおいては、発熱体が生じ意匠部に伝導した熱は、筐体に先駆けて中間部材に伝導し得る。ここで、第2態様の電磁波透過カバーでは、中間部材の熱伝導率は筐体の熱伝導率よりも低いため、意匠部から中間部材を介在した筐体への熱伝導は阻害される。これにより、第2態様の電磁波透過カバーによっても、発熱体が生じた熱により意匠部を効率良く温めることができる。
【0019】
以下、本発明の電磁波透過カバーをその構成要素毎に詳説する。なお、本明細書において、特に説明なく本発明の電磁波透過カバーと称する場合は、第1態様の電磁波透過カバーと第2態様の電磁波透過カバーとを総称するものとする。
【0020】
本発明の電磁波透過カバーにおける意匠部は、車両用電磁波装置の表側に配置され車両室外に露出する。当該意匠部は、車両用電磁波装置の電磁波経路上にあるといい得る。
当該車両用電磁波装置は、電磁波を出射するための出射部および/または電磁波を受信するための検知部を有するものであれば良く、特に限定しない。電磁波の種類もまた特に限定しない。
【0021】
車両用電磁波装置として、具体的には、上記したLiDARやミリ波レーダ、レーザレーダ等のレーダ装置、デジタルカメラや光学カメラ等のカメラ装置、ドア開閉のためのフットセンサ等を例示することができる。
【0022】
電磁波は、上記した各種の車両用電磁波装置が出射および/または受信するものであれば良く、当該電磁波として、赤外線、ミリ波、レーザー波、種々の波長の可視光線等を例示できる。
【0023】
本発明の電磁波透過カバーにおける意匠部は、車両用電磁波装置に由来する電磁波を透過可能であれば良く、その材料は特に問わないが、電磁波を透過できる材料を選択すれば良い。
【0024】
本発明の電磁波透過カバーが車両に搭載されることを考慮すると、意匠部の材料としては、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、ポリプロピレン(PP)等の樹脂を選択するのが好適である。意匠部は、一層構造であっても良いが、塗装、印刷、金属蒸着等により各種の意匠を表示し得る意匠層や、当該意匠層や意匠部自体をコートするコート層等が基層上に形成された多層構造であっても良い。
【0025】
意匠部には発熱体が一体に設けられている。発熱体としては、ヒータ線等の一般的なものを用いれば良い。本発明の電磁波透過カバーにおいては、発熱体が発熱する作用機序は特に問わないが、本発明の車両用外装部品は車両に搭載されるものであることから、当該発熱体は、シンプルな構造であるのが好ましく、給電を受けて発熱するものが特に好適である。
【0026】
発熱体は、接着や溶着等の方法で意匠部に一体化されても良いし、インサート成形等の方法により意匠部を成形する際に当該意匠部に一体化されても良い。また、発熱体は、意匠部の如何なる部分に一体化されても良く、例えば、意匠部の裏面に一体化されても良いし、意匠部の側面に一体化されても良い。場合によっては、意匠部の表面に一体化されても良い。
【0027】
筐体は、本発明の電磁波透過カバーのうち意匠部の裏側に配置される部分である。
本発明の電磁波透過カバーにおいて、筐体の形状は特に限定されない。例えば筐体は、車両用電磁波装置を収容し得る箱状をなしても良いし、車両用電磁波装置の少なくとも一部を覆う枠状をなしても良い。
【0028】
本発明の第1態様の電波透過カバーにおいては、筐体は意匠部に一体化される。
【0029】
当該第1態様の電波透過カバーにおいて、筐体の熱伝導率は意匠部の熱伝導率よりも低い。筐体の熱伝導率を意匠部の熱伝導率よりも低くする方法としては、如何なる方法を用いても良い。例えば、筐体の材料として、意匠部の材料よりも熱伝導率の低いものを用いても良い。または、筐体の材料として意匠部の材料とを同じものを用い、かつ、このうち筐体にのみ気泡や空気層等の断熱部を設けても良い。
【0030】
第1態様の電波透過カバーにおいて、意匠部と筐体との熱伝導率の差は特に限定しない。第1態様の電波透過カバーにおける意匠部と筐体との好ましい熱伝導率の差の例として、0.01W/(m・K)以上、0.03W/(m・K)以上、0.05W/(m・K)以上、0.75W/(m・K)以上、または0.1W/(m・K)以上の各範囲を例示できる。意匠部と筐体との熱伝導率の差に上限はなく、強いていえば100W/(m・K)以下を例示できる。
【0031】
第1態様の電波透過カバーにおける意匠部の材料と筐体の材料との好適な組み合わせとして、例えば、意匠部の材料としてポリカーボネートを選択する場合には、筐体の材料としてポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、ABS樹脂、またはブチルゴムを選択するのが好適である。
【0032】
これに対して、本発明の第2態様の電波透過カバーにおいては、筐体は中間部材に一体化され、当該中間部材を介して意匠部に一体化される。
【0033】
第2態様の電波透過カバーにおいて、中間部材の熱伝導率は筐体の熱伝導率よりも低い。中間部材の熱伝導率を筐体の熱伝導率よりも低くする方法としてもまた、如何なる方法を用いても良い。第1態様の電波透過カバーと同様に、中間部材の材料として、筐体の材料よりも熱伝導率の低いものを用いても良い。または、中間部材の材料として筐体の材料とを同じものを用い、かつ、このうち中間部材にのみ気泡や空気層等の断熱部を設けても良い。また、中間部材として、接着剤や両面テープ等の接着機能を有するものを選択しても良い。
【0034】
第2態様の電波透過カバーにおいて、中間部材と筐体との熱伝導率の差は特に限定しない。第2態様の電波透過カバーにおける中間部材と筐体との好ましい熱伝導率の差の例として、0.01W/(m・K)以上、0.03W/(m・K)以上、0.05W/(m・K)以上、0.75W/(m・K)以上、または0.1W/(m・K)以上の各範囲を例示できる。筐体と意匠部との熱伝導率の差に上限はなく、強いていえば300W/(m・K)以下を例示できる。
【0035】
なお、第2態様の電波透過カバーにおいて、中間部材の熱伝導率は意匠部の熱伝導率よりも低くても良いし、意匠部の熱伝導率より高くても良い。何れの場合にも、中間部材の熱伝導率が筐体の熱伝導率よりも低ければ、中間部材から筐体への熱の伝導を抑制できる。なお、中間部材の熱伝導率は意匠部の熱伝導率よりも低いのが好ましい。こうすることで、中間部材から筐体への熱伝導だけでなく、意匠部から中間部材への熱伝導をも抑制でき、意匠部をより効率よく温めることが可能である。
【0036】
さらに中間部材の厚さ、すなわち、意匠部と筐体との間における中間部材の長さが大きいほど、意匠部から筐体への熱伝導を中間部材により効果的に遮断または抑制でき、上記した中間部材による効果が顕著になるといい得る。中間部材の厚さの好ましい範囲として、20μm以上、50μm以上、1mm以上、5mm以上、10mm以上または12mm以上の各範囲を例示し得る。
中間部材の好ましい厚さに上限値はないが、100mm以下とするのが実用的である。
【0037】
第2態様の電波透過カバーにおける筐体の材料と中間部材の材料との好適な組み合わせとして、例えば、筐体の材料としてアルミニウムを選択する場合には、中間部材の材料としてポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、ABS樹脂、またはブチルゴムを選択するのが好適である。
【0038】
熱伝導率の測定方法としては、既知の方法を採用すれば良い。但し、同じ電磁波透過カバーにおける各部分の熱伝導率を測定する方法としては、同じ方法を採用する必要がある。
【0039】
本発明の電磁波透過カバーは、車両用電磁波装置を具備しても良いし、具備していなくても良い。例えば、車両用電磁波装置が筐体の内部に配置される場合、本発明の電磁波透過カバーは、車両用電磁波装置を具備するのが好適である。
【0040】
以下、具体例を挙げて本発明の電磁波透過カバーを説明する。
【0041】
(実施例1)
実施例1の電磁波透過カバーは、車両用電磁波装置としてのLiDARを具備するものであり、本発明の第1態様の電磁波透過カバーである。
図1は実施例1の電磁波透過カバーを模式的に表す説明図である。図2は実施例1の電磁波透過カバーを切断した様子を模式的に表す説明図である。
以下、表、裏、上、下、左、右とは、各図に示す表、裏、上、下、左、右を意味する。参考までに、表側は車両進行方向における先側に相当し、裏側は車両進行方向における後側に相当する。
【0042】
図1に示すように、実施例1の電磁波透過カバー1は、意匠部2、発熱体3、筐体4および車両用電磁波装置8を具備する。
【0043】
意匠部2は、樹脂製であり、略板状をなす。意匠部2はPCを材料とする基体(図略)と、その表面に形成されているハードコート層(図略)とを有する。
【0044】
図2に示すように、意匠部2には発熱体3が一体化されている。発熱体3は、ヒータ線からなり、意匠部2の裏側に配置されている。発熱体3は図略の電源に接続され、当該電源からの給電を受けて発熱する。
【0045】
意匠部2の裏側には、箱状をなす筐体4が配置されている。筐体4は開口を表側に向けつつ意匠部2に一体化されている。筐体4は、意匠部2よりも熱伝導率の低いPPを材料としている。意匠部2と筐体4との熱伝導率の差は0.07W/(m・K)程度である。
【0046】
筐体4の内部には、車両用電磁波装置8としてのLiDARが収容されている。当該車両用電磁波装置8は電磁波としての赤外線を表側に向けて出射し、また表側から入射した赤外線を受信する。
【0047】
なお、意匠部2は車両用電磁波装置8の表側に配置される。したがって、意匠部2は車両用電磁波装置8の電磁波経路上にある。また、意匠部2は電磁波としての赤外線を透過可能である。
【0048】
発熱体3が生じた熱は、先ず、当該発熱体3と一体化されている意匠部2に伝導する。当該熱は、次いで、意匠部2に一体化されている筐体4にも伝導する。
【0049】
ここで、実施例1の電磁波透過カバー1によると、筐体4の熱伝導率が意匠部2の熱伝導率よりも低い。このため、例えば、筐体4の熱伝導率が意匠部2の熱伝導率よりも高い場合や、筐体4の熱伝導率が意匠部2の熱伝導率と同じである場合に比べて、意匠部2から筐体4に熱が伝導する速度は遅い。これにより、意匠部2から筐体4への熱伝導が抑制される。したがって、実施例1の電磁波透過カバー1によると、熱の損失を抑制しつつ、意匠部2を効率良く加熱することが可能である。
【0050】
(実施例2)
実施例2の電磁波透過カバーは、本発明の第2態様の電磁波透過カバーであり、意匠部と筐体との間に中間部材が介在していること、および、筐体の材料以外は、実施例1の電磁波透過カバーと概略同じものである。したがって、以下、実施例1の電磁波透過カバーとの相違点を中心に、実施例2の電磁波透過カバーを説明する。
図3は実施例2の電磁波透過カバーを切断した様子を模式的に表す説明図である。
【0051】
図3に示すように、実施例2の電磁波透過カバーでは、意匠部2と筐体4との間に中間部材5が介在している。実施例2の電波透過カバーにおいて、当該中間部材5は、ゴム系の接着剤であり、意匠部2および筐体4に一体化されている。当該中間部材5の熱伝導率は、意匠部2の熱伝導率よりも低い。
【0052】
実施例2の電波透過カバーにおいて、中間部材5の厚さ、すなわち、意匠部2と筐体4との間における中間部材5の長さは5mm程度である。
【0053】
実施例2の電波透過カバーにおいて、筐体4は、意匠部2および中間部材5よりも熱伝導率の高いアルミニウムを材料とする。
【0054】
発熱体3が生じた熱は、先ず、当該発熱体3と一体化されている意匠部2に伝導する。実施例2の電磁波透過カバー1においては、意匠部2に伝導した熱は、先ず、意匠部2と筐体4との間に介在する中間部材5に伝導する。中間部材5に伝導した熱は、筐体4に伝導する。
【0055】
中間部材5の熱伝導率は筐体4の熱伝導率よりも低い。このため、中間部材5から筐体4への熱伝導は抑制される。また、実施例2の電波透過カバーにおいて、中間部材5の熱伝導率は、意匠部2の熱伝導率よりも低い。このため、実施例2の電波透過カバーでは、意匠部2から中間部材5への熱伝導も抑制される。
これにより、実施例2の電磁波透過カバー1によっても、熱の損失を抑制しつつ、意匠部2を効率良く加熱することが可能である。
【0056】
(実施例3)
実施例3の電磁波透過カバーは、本発明の第2態様の電磁波透過カバーであり、筐体の材料以外は、実施例2の電磁波透過カバーと概略同じものである。したがって、以下、実施例2の電磁波透過カバーとの相違点を中心に、実施例3の電磁波透過カバーを説明する。
図4は実施例3の電磁波透過カバーを切断した様子を模式的に表す説明図である。
【0057】
図4に示すように、実施例3の電磁波透過カバー1では、筐体4のうち表側すなわち中間部材5側の部分は、筐体4のうち裏側の部分とは異なる材料で構成されている。具体的には、筐体4のうち表側の部分は、意匠部2と同じPC製であり、筐体4のうち裏側の部分は実施例2の筐体4と同様にアルミニウム製である。筐体4のうち表側の部分を筐体周縁部41と称し、筐体4のうち裏側の部分を筐体一般部42と称する。
【0058】
筐体周縁部41の熱伝導率は、意匠部2の熱伝導率と同じであるが、筐体周縁部41と筐体一般部42とを合わせた筐体4全体の熱伝導率は、意匠部2の熱伝導率よりも遙かに高い。
【0059】
中間部材5の熱伝導率は、筐体周縁部41の熱伝導率、筐体一般部42の熱伝導率、及び筐体4全体の熱伝導率よりも低い。さらに、中間部材5の熱伝導率は、意匠部2の熱伝導率よりも低い。
実施例3の電磁波透過カバー1において、中間部材5の厚さは5mm程度である。
【0060】
実施例3の電磁波透過カバー1においても、中間部材5の熱伝導率は筐体4の熱伝導率よりも低い。このため、中間部材5から筐体4への熱伝導は抑制される。また、実施例3の電波透過カバーにおいても、中間部材5の熱伝導率は、意匠部2の熱伝導率よりも低い。このため、実施例3の電波透過カバーにおいても、意匠部2から中間部材5への熱伝導が抑制される。
したがって、実施例3の電磁波透過カバー1によっても、熱の損失を抑制しつつ、意匠部2を効率良く加熱することが可能である。
【0061】
(実施例4)
実施例4の電磁波透過カバーは、本発明の第2態様の電磁波透過カバーであり、筐体の材料以外は、実施例2の電磁波透過カバーと概略同じものである。したがって、以下、実施例2の電磁波透過カバーとの相違点を中心に、実施例4の電磁波透過カバーを説明する。
図5は実施例4の電磁波透過カバーを切断した様子を模式的に表す説明図である。
【0062】
図5に示すように、実施例4の電磁波透過カバー1では、中間部材5として枠状または短筒状の部材を採用している。中間部材5は開口を表-裏方向に向けている。当該中間部材5は、筐体4および意匠部2よりも熱伝導率の低いPPを材料としている。
実施例4の電磁波透過カバー1において、中間部材5の厚さ、すなわち、意匠部2と筐体4との間における中間部材5の長さ30mm程度である。
【0063】
実施例4の電磁波透過カバー1においても、中間部材5の熱伝導率は筐体4の熱伝導率よりも低い。このため、中間部材5から筐体4への熱伝導は抑制される。また、実施例4の電波透過カバーにおいても、中間部材5の熱伝導率は、意匠部2の熱伝導率よりも低い。このため、実施例4の電波透過カバーにおいても、意匠部2から中間部材5への熱伝導が抑制される。
したがって、実施例4の電磁波透過カバー1によっても、熱の損失を抑制しつつ、意匠部2を効率良く加熱することが可能である。
【0064】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0065】
1:電磁波透過カバー
2:意匠部
3:発熱体
4:筐体
5:中間部材
8:車両用電磁波装置
図1
図2
図3
図4
図5