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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/16 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021149077
(22)【出願日】2021-09-14
(65)【公開番号】P2023042023
(43)【公開日】2023-03-27
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 啓貴
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-047565(JP,A)
【文献】特開2016-134034(JP,A)
【文献】特開2018-112998(JP,A)
【文献】特開2013-171489(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0130199(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方を撮影するカメラ装置が取得したカメラ画像に基いて検出された信号機に関する注意喚起を前記車両の運転者に対して行う運転支援装置において、
前記車両の前方に位置する先行車が存在しない場合において、
前記信号機の主灯器が前記車両の停止を指示する停止信号を表示しており、且つ、前記主灯器の下方に矢灯器を検出していないとの第1条件、及び、
前記主灯器が前記停止信号を表示しており、前記矢灯器を検出しており、且つ、前記矢灯器が前記車両の進行を許可している許可方向と前記車両の将来の進行方向である将来進行方向とが一致しないとの第2条件、
の何れかが成立しているとき、前記注意喚起を行い、
前記先行車が存在する場合、前記注意喚起を禁止する、
ように構成された、
運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記車両と前記車両の前方に位置する他車両との間の車間距離が所定の閾値距離よりも長い場合、前記先行車が存在しないと判定し、
前記車間距離が前記閾値距離以下である場合、前記先行車が存在すると判定する、
ように構成された、
運転支援装置。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載の運転支援装置において、
前記車両が現在走行している走行車線が前記車両の進行を許可している方向、及び、前記車両のウィンカーの指示方向に基いて前記将来進行方向を決定するように構成された、
運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機に関する注意喚起を車両の運転者に対して行う運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上記注意喚起を行う運転支援装置が知られている。このような運転支援装置は、カメラ装置が車両の前方を撮影することにより取得したカメラ画像に基いて車両の前方に存在する信号機を検出している。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された運転支援装置(以下、「従来装置」)は、信号機の矢灯器を検出していない場合、信号機の主灯器が車両の停止を指示する停止信号(黄信号又は赤信号)を表示していれば、注意喚起を行う。従来装置は、矢灯器を検出している場合、主灯器が停止信号を表示し、且つ、許可方向と将来進行方向とが一致しなければ、注意喚起を行う。
【0004】
許可方向は、矢灯器が車両の進行を許可している方向であり、矢灯器が表示している矢印信号が指し示す方向である。
将来進行方向は、車両の将来の進行方向であり、例えば、車両が走行する走行車線に示された方向路面標示の方向に基いて特定される。方向路面標示は、車線が車両の進行を許可する方向を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-047565号公報
【発明の概要】
【0006】
車両の前方に位置する先行車が存在する場合、カメラ装置が先行車に遮られて信号機の矢灯器を撮影できないために、従来装置は、信号機が矢灯器を備えているにもかかわらず矢灯器を検出できない可能性がある。この場合、従来装置は、主灯器が停止信号を表示していれば、注意喚起を行ってしまう。このため、許可方向と将来進行方向とが一致している場合であっても(本来、注意喚起が行われない場合であっても)、従来装置は、注意喚起を行ってしまう可能性がある。誤って行われた注意喚起は、運転者に煩わしいと感じさせる可能性がある。
【0007】
本発明は前述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、注意喚起を誤って行われる可能性を低減することにより、運転者が注意喚起を煩わしいと感じる可能性を低減できる運転支援装置を提供することにある。
【0008】
本発明の運転支援装置(以下、「本発明装置」とも称呼する。)は、車両(VA)の前方を撮影するカメラ装置(21)が取得したカメラ画像に基いて検出された信号機(TL)に関する注意喚起を前記車両の運転者に対して行う。
本発明装置は、
前記車両の前方に位置する先行車(VB)が存在しない場合において(ステップ430「No」、ステップ465「No」)、
前記信号機の主灯器が前記車両の停止を指示する停止信号を表示しており(ステップ425「Yes」)、且つ、前記主灯器の下方に矢灯器を検出していない(ステップ435「No」)との第1条件、及び、
前記主灯器が前記停止信号を表示しており(ステップ425「Yes」)、前記矢灯器を検出しており(ステップ435「Yes」)、且つ、前記矢灯器が前記車両の進行を許可している許可方向と前記車両が将来走行すると推定される方向である将来進行方向とが一致しない(ステップ455「No」)との第2条件、
の何れかが成立しているとき、前記注意喚起を行い(ステップ440、ステップ515)、
前記先行車が存在する場合(ステップ430「Yes」、ステップ465「Yes」)、前記注意喚起を禁止する、
ように構成されている。
【0009】
本発明装置によれば、先行車が存在する場合には注意喚起を禁止する。これにより、信号機が矢灯器を備えているにもかかわらず、先行車に遮られて信号機の矢灯器が検出されないことに起因して注意喚起が誤って行われることを防止できる。これにより、運転者が注意喚起を煩わしいと感じる可能性を低減できる。
【0010】
本発明装置の一態様において、
前記車両と前記車両の前方に位置する他車両との間の車間距離(Dv)が所定の閾値距離(Dvth)よりも長い場合(ステップ465「No」)、前記先行車が存在しないと判定し、
前記車間距離が前記閾値距離以下である場合(ステップ465「Yes」)、前記先行車が存在すると判定する、
ように構成されている。
【0011】
車間距離が閾値距離よりも長ければ、カメラ装置が当該先行車に遮られずに矢灯器を撮影でき、矢灯器が検出される可能性が高い。本態様によれば、車両の前方に他車両が存在してもその車間距離が閾値距離よりも長い場合には、その他車両は先行車として検出されず、第1条件及び第2条件の何れかが成立すれば注意喚起が行われる。これによって、他車両が存在する場合であっても、注意喚起が行われるべき状況で注意喚起が行われる可能性を高めることができる。
【0012】
本発明装置の一態様において、
前記先行車が存在し(図7に示したステップ430「Yes」、図7に示したステップ465「Yes」)、且つ、前記先行車の上端(UE)と前記主灯器の下端(BE)との間の長さ(H)が所定の閾値長さ(Hth)以上である場合(ステップ720「No」)、前記第1条件及び前記第2条件の何れかが成立しているとき、前記注意喚起を行い、
前記先行車が存在し(図7に示したステップ430「Yes」、図7に示したステップ465「Yes」)、且つ、前記長さが前記閾値長さ未満である場合(ステップ720「Yes」)、前記注意喚起を禁止する、
ように構成されている。
【0013】
先行車の上端と主灯器の下端との間の長さが閾値長さ以上である場合、信号機が矢灯器を備えていればその矢灯器が検出される可能性が高い。本態様によれば、先行車が存在する場合であっても、上記長さが閾値長さ以上であれば、第1条件及び第2条件の何れかが成立しているとき注意喚起が行われ、上記長さが閾値長さ未満であれば、注意喚起が禁止される。これにより、先行車が存在する場合であっても、注意喚起が行われるべき状況で注意喚起が行われる可能性を高めることができる。
【0014】
本発明装置の一態様において、
前記車両が現在走行している車線が前記車両の進行を許可している方向、及び、前記車両のウィンカー(33L、33R)の指示方向に基いて前記将来進行方向を決定するように構成されている。
【0015】
本態様によれば、将来進行方向を正確に決定できるので、注意喚起が誤って行われる可能性を低減できる。
【0016】
なお、上記説明においては、発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る運転支援装置の概略システム構成図である。
図2図2は、交差点の手前付近における道路の平面図である。
図3図3は、本発明の実施形態の概要の説明図である。
図4図4は、図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する注意喚起開始判定ルーチンを示したフローチャートである。
図5図5は、図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する注意喚起ルーチンを示したフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施形態の第1変形例の概要の説明図である。
図7図7は、本発明の実施形態の第1変形例の運転支援ECUのCPUが実行する注意喚起開始判定ルーチンの一部を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<構成>
図1に示すように、本発明の実施形態に係る運転支援装置(以下、「本支援装置」と称呼される。)10は、車両VAに搭載される。
【0019】
本支援装置10は、運転支援ECU20(以下、「DSECU20」と称呼する。)を備える。
【0020】
ECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える制御ユニット(Electronic Control Unit)であり、「コントローラ」と称呼する場合がある。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、及びインターフェース(I/F)等を含む。これらのECUは、CAN(Controller Area Network)を介して相互にデータ交換可能に接続されている。CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。このECUの機能は、複数のECUに分散されてもよい。
【0021】
本支援装置10は、車輪速センサ21、カメラ装置22、ミリ波レーダ装置23、ブレーキ操作量センサ24、ヨーレートセンサ25、ウィンカーレバー26、スピーカ31、ディスプレイ32、左ウィンカー33L及び右ウィンカー33Rを備える。これらは、DSECU20とデータ交換可能に接続されている。
【0022】
車輪速センサ21は、車両VAの車輪毎に設けられている。各車輪速センサ21は、対応する車輪が所定角度回転する毎に一つの車輪パルス信号を発生させる。DSECU20は、各車輪速センサ21から受け取った車輪パルス信号の単位時間におけるパルス数をカウントし、そのパルス数に基いて各車輪の回転速度を取得する。そして、DSECU20は、各車輪の車輪速度に基いて車両VAの速度を示す車速Vsを取得する。一例として、DSECU20は、四つの車輪の車輪速度の平均値を車速Vsとして取得する。
【0023】
カメラ装置22は、車両VAの車室内のフロントウィンドウの中央上部に配設される。カメラ装置22は、所定時間が経過する毎に車両VAの前方の所定領域を撮影した画像(以下、「カメラ画像」とも称呼される。)を取得し、カメラ画像を運転支援ECU20に送信する。
【0024】
ミリ波レーダ装置23は、ミリ波を車両VAの前方に送信する。ミリ波レーダ装置23は、物体に反射されたミリ波(反射波)を受信することによって物体を検出する周知のセンサである。ミリ波レーダ装置23は、受信した反射波に基いて、物体までの距離(物体距離)、物体の車両VAに対する相対速度(物体相対速度)Vr及び物体の方向を取得する。そして、ミリ波レーダ装置23は、所定時間が経過する毎に、「物体距離、物体相対速度Vr、及び物体の方向を含むレーダ物体情報」をDSECU20に送信する。
【0025】
ブレーキ操作量センサ24は、車両VAのブレーキペダル(不図示)の操作量(即ち、ブレーキペダル操作量BP)を検出し、ブレーキペダル操作量BPを表す検出信号を発生させる。なお、本支援装置10は、ブレーキ操作量センサ24に代えて、ブレーキペダルの操作の有無を検出するブレーキスイッチを備えてもよい。
【0026】
ヨーレートセンサ25は、車両VAのヨーレートを検出し、ヨーレートを表す検出信号を発生させる。ヨーレートは、その符号によって左右の方向が判別される。
【0027】
ウィンカーレバー26は、図示しないステアリングホイール付近に配設される。運転者がウィンカーレバー26を左点滅方向(例えば上方向)に操作すると左ウィンカー33Lが点滅する。運転者がウィンカーレバー26を右点滅方向(例えば下方向)に操作すると右ウィンカー33Rが点滅する。
【0028】
スピーカ31は、車両VAの車室内に配設され、運転支援ECU20からの注意喚起指令に応じてブザー音を発音する。
ディスプレイ32は、車両VAの車室内の「運転席に着座した運転者が視認可能な」位置に配設される。
【0029】
図2を参照しながら、運転支援ECU20が行うカメラ画像に基く検出処理を説明する。検出処理では、DSECU20は、信号機TL、白線WL及び他車両を検出する。
【0030】
<信号機TLの検出>
DSECU20は、カメラ画像に基いて車両VAの前方に存在する信号機TLを検出する。より詳細には、DSECU20は、車両VAが進入しようとしている交差点CPに車両VAと対向するように配置されている信号機TLの主灯器MLを検出する。
【0031】
DSECU20は、カメラ画像に基いて、信号機TLの主灯器MLが青信号B、黄信号Y及び赤信号Rの何れを表示しているかを特定(検出)する。主灯器MLが黄信号Y及び赤信号Rの何れかを表示していれば、主灯器MLは車両VAの停止を指示している。黄信号Y及び赤信号Rを「停止信号」と称呼する場合がある。青信号Bを「許可信号」と称呼する場合がある。
【0032】
DSECU20は、カメラ画像に基いて信号機TLの矢灯器ALを検出した場合、矢灯器ALが表示する矢印信号の方向(左矢印信号LL、直進矢印信号SL、右矢印信号RL)を検出する。この矢印信号の方向は、車両VAの進行が許可された方向である。
【0033】
更に、DSECU20は、カメラ画像に基いて、車両VAに対する信号機TLの相対位置(方向、及び距離)を検出する。
【0034】
<白線WLの認識>
DSECU20は、カメラ画像に基いて道路の白線WL(レーン仕切り線)を検出し、その白線WLの車両VAに対する相対位置を特定する。
DSECU20は、白線WLの相対位置に基いて、車両VAの左側に位置し且つ最も車両VAに近い白線WLを左白線LWLとして特定する。同様に、DSECU20は、白線WLの相対位置に基いて、車両VAの右側に位置し且つ最も車両VAに近い白線WLを右白線RWLとして特定する。そして、DSECU20は、左白線LWL及び右白線RWRで仕切られる車線を、車両VAが現在走行している走行車線LAとして特定する。
【0035】
更に、DSECU20は、カメラ画像に基いて路面標示Dを検出する。路面標示Dは、交差点CPの手前に設けられる停止線SD、及び、車両VAが進行可能な方向(車両VAの進行が許可されている方向)を矢印で表した方向路面標示ADを含む。なお、方向路面標示ADが表す矢印は、一方向だけでなく二方向を示してもよい。
【0036】
更に、DSECU20は、車両VAから走行車線LAの停止線SDまでの距離を特定する。更に、DSECU20は、走行車線LAの方向路面標示ADに基いて走行車線LAが許可している方向を特定する。車両VAは方向路面標示ADの方向に進行する可能性が高いので、方向路面標示ADの方向は「車両VAの将来の進行方向である将来進行方向」とも表現される。
【0037】
また、DSECU20は、カメラ画像に基いて他車両を検出し、他車両の車両VAに対する相対位置(他車両までの距離、及び他車両の方向)を特定する。そして、DSECU20は、特定した相対位置及びレーダ物体情報に基いて、他車両の車両VAに対する相対位置を確定する。
【0038】
<注意喚起>
DSECU20は、以下の第1条件及び第2条件のいずれかが成立した場合、開始条件が成立したと判定し、注意喚起を行う。詳細には、DSECU20は、注意喚起指令をスピーカ31に送信することによりスピーカ31にブザー音を発音させる。
【0039】
第1条件:主灯器MLが停止信号を表示し、且つ、DSECU20が矢灯器ALを検出していないとの条件。
第2条件:主灯器MLが停止信号を表示し、DSECU20が矢灯器ALを検出しており、且つ、矢灯器ALに表示されている矢印信号の方向(許可方向)と方向路面標示ADの方向(将来進行方向)とが一致しないとの条件。
【0040】
矢灯器ALが複数の矢印信号を表示している場合、将来進行方向がこれらの矢印信号の方向(許可方向)の何れにも一致しなければ、DSECU20は、許可方向と将来進行方向とが一致しないと判定する。方向路面標示ADが複数の矢印を表す場合、許可方向がこれらの矢印の方向(将来進行方向)の何れにも一致しなければ、DSECU20は、許可方向と将来進行方向とが一致しないと判定する。
【0041】
図2に示した例において、DSECU20は、主灯器MLが赤信号Rを表示し、DSECU20が矢灯器ALを検出している。更に、矢灯器ALは左矢印信号LLを表示し(即ち、許可方向は左方向であり)、走行車線LAの方向路面標示ADは直進方向であるので(将来進行方向は直進方向であるので)、許可方向と将来進行方向とは一致しない。このため、DSECU20は、第2条件が成立するので、注意喚起を行う。
【0042】
<作動の概要>
図4を参照しながら、本発明装置10のDSECU20の作動の概要を説明する。
車両VAの前方に先行車VBが存在する場合、カメラ装置22は、先行車VBに遮られて主灯器MLの下方に配設されている矢灯器ALを撮影できない可能性がある。この場合、カメラ画像は矢灯器ALの画像を含まないため、DSECU20は矢灯器ALを検出することができない。このため、DSECU20は、主灯器MLが停止信号を表示していれば、第1条件が成立して注意喚起を行う。
【0043】
DSECU20が検出していない矢灯器ALが表示する矢印信号の方向(つまり、許可方向)と将来進行方向とが一致している場合であっても、DSECU20は注意喚起を誤って行ってしまう可能性がある。
【0044】
そこで、本実施形態では、DSECU20は、車両VAの前方に先行車VBが存在する場合には、注意喚起を禁止する。これにより、先行車VBが存在することにより注意喚起が誤って行われやすい状況下であっても、注意喚起が誤って行われる可能性を低減できる。
【0045】
(具体的作動)
<注意喚起開始判定ルーチン>
DSECU20のCPU(以下、「CPU」と表記した場合、特に断りがない限り、DSECU20のCPUを指す。)は、所定時間が経過する毎に図4にフローチャートにより示した注意喚起開始判定ルーチンを実行する。
【0046】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図4のステップ400から処理を開始し、ステップ405に進む。ステップ405にて、CPUは、実行フラグXexeの値が「0」であるか否かを判定する。
【0047】
実行フラグXexeの値は、上記第1条件及び上記第2条件の何れかが成立したとき(即ち、開始条件が成立したとき)に「1」に設定され、後述する終了条件が成立したときに「0」に設定される。なお、実行フラグXexeの値は、イニシャルルーチンにおいても「0」に設定される。イニシャルルーチンは、車両VAの図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からオン位置へと変更されたときにCPUによって実行されるルーチンである。
【0048】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ405にて「Yes」と判定し、ステップ410乃至ステップ420を順に実行する。
ステップ410:CPUは、カメラ装置22からカメラ画像を取得する。
ステップ415:CPUは、ミリ波レーダ装置23からレーダ物体情報を取得する。
ステップ420:CPUは、カメラ画像に基いて信号機TLが存在するか否かを判定する。
信号機TLが存在しない場合、CPUは、ステップ420にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0049】
一方、CPUがステップ420に進んだときに信号機TLが存在する場合、CPUは、ステップ420にて「Yes」と判定し、ステップ425に進む。ステップ425にて、CPUは、信号機TLの主灯器MLが停止信号を表示しているか否かを判定する。
主灯器MLが停止信号を表示していない場合、CPUは、ステップ425にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0050】
一方、CPUがステップ425に進んだときに主灯器MLが停止信号を表示している場合、CPUは、ステップ425にて「Yes」と判定し、ステップ430に進む。ステップ430にて、CPUは、車両VAの前方に他車両が存在するか否かを判定する。
【0051】
車両VAの前方に他車両が存在しない場合、CPUは、ステップ430にて「No」と判定し、ステップ435に進む。ステップ435にて、CPUは、カメラ画像において主灯器MLの下方に矢灯器ALを検出しているか否かを判定する。
【0052】
矢灯器ALを検出していない場合、CPUは、ステップ435にて「No」と判定し、ステップ440に進む。ステップ440にて、CPUは、ブレーキペダル操作量BPが所定の閾値操作量BPth以下であるか否かを判定する。
【0053】
ブレーキペダル操作量BPが閾値操作量BPth以下である場合、CPUは、運転者が信号機TLの手前で車両VAを停止させるためにブレーキペダルを踏み込んでいないと判定する。換言すれば、CPUは、運転者が信号機TLの手前で車両VAを停止するための減速の意図を有していないと判定する。この場合、CPUは、第1条件が成立したと判定する。そして、CPUは、ステップ440にて「Yes」と判定してステップ445に進み、実行フラグXexeの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
なお、本ルーチンにおいては、第1条件及び第2条件は、それぞれ、ブレーキペダル操作量BPが閾値操作量BPth以下であるとの条件を更に含んでいる。
【0054】
一方、ブレーキペダルペダル操作量BPが閾値操作量BPthよりも大きい場合、CPUは、運転者が上記減速の意図を有していると判定する。この場合、CPUは、ステップ440にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0055】
一方、CPUがステップ435に進んだときに矢灯器ALを検出している場合、CPUは、ステップ435にて「Yes」と判定し、ステップ450乃至ステップ460を順に実行する。
ステップ450:CPUは、矢灯器ALが表示している矢印信号に基いて許可方向を特定する。
ステップ455:CPUは、方向路面標示ADに基いて将来進行方向を特定する。
ステップ460:CPUは、許可方向と将来進行方向とが一致しているか否かを判定する。
【0056】
許可方向と将来進行方向とが一致しない場合、CPUは、ステップ460にて「No」と判定し、ステップ440に進む。ブレーキペダル操作量BPが閾値操作量BPth以下である場合、CPUは、第2条件が成立したと判定する。そして、CPUは、ステップ440にて「Yes」と判定し、ステップ445にて実行フラグXexeの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0057】
CPUがステップ460に進んだときに許可方向と将来進行方向とが一致する場合、CPUは、ステップ460にて「Yes」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0058】
CPUがステップ430に進んだときに車両VAの前方に他車両が存在する場合、CPUは、ステップ430にて「Yes」と判定し、ステップ465に進む。ステップ435にて、CPUは、車両VAと他車両との間の車間距離Dvを特定し、車間距離Dvが所定の閾値距離Dvth以下であるか否かを判定する。
【0059】
車間距離Dvが閾値距離Dvthよりも長い場合、CPUは、車両VAの前方に存在する他車両を先行車VBとして検出しない(即ち、先行車VBが存在しないと判定する。)。この場合、CPUは、ステップ465にて「No」と判定し、ステップ435以降の処理を実行する。従って、第1条件及び第2条件の何れかが成立すれば、実行フラグXexeの値が「1」に設定される。
【0060】
一方、車間距離Dvが閾値距離Dvth以下である場合、CPUは、車両VAの前方に存在する他車両を先行車VBとして検出する(即ち、先行車VBが存在すると判定する。)。この場合、CPUは、ステップ465にて「Yes」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。よって、先行車VBが検出される場合には、実行フラグXexeの値が「1」に設定されることはないため、CPUは、第1条件及び第2条件の何れか成立したとしても、注意喚起を行わない(即ち、注意喚起を禁止する)。
【0061】
CPUがステップ405に進んだときに実行フラグXexeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ405にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0062】
<注意喚起ルーチン>
CPUは、所定時間が経過する毎に図5にフローチャートにより示した注意喚起ルーチンを実行する。
【0063】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図5のステップ500から処理を開始し、ステップ505に進む。ステップ505にて、CPUは、実行フラグXexeの値が「1」であるか否かを判定する。
【0064】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ505にて「No」と判定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0065】
実行フラグXexeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ505にて「Yes」と判定し、ステップ510に進む。ステップ510にて、CPUは、以下の条件1乃至条件5の少なくとも一つが成立することにより所定の終了条件が成立したか否かを判定する。
【0066】
条件1:CPUが、第1条件及び第2条件の何れかがが成立したときに検出していた信号機TLを検出しなくなったこと。
条件2:注意喚起を開始した時点からの車両VAの走行距離が所定距離以上となったこと。
条件3:車両VAが右折又は左折(以下、「右左折」と称呼する。)を行ったこと。
条件4:車両VAが停止したこと。
条件5:主灯器MLが青信号Bを表示するようになったこと。
【0067】
・条件1
CPUは、カメラ画像を新たに取得し、カメラ画像に上記信号機TLの画像が含まれない場合、条件1が成立したと判定する。
・条件2
CPUは、注意喚起を開始した時点から車輪速センサ21が発生させた車輪パルス信号の数に基き車両VAの走行距離を特定し、その走行距離が所定距離以上となったか否かを判定する。
・条件3
CPUは、ヨーレートセンサ25からの検出信号に基いてヨーレートを特定し、ヨーレートの大きさが所定値以上である場合、車両VAが右左折を行ったと判定する。
【0068】
・条件4
CPUは、車輪速センサ21からの車輪パルス信号に基いて特定される車速Vsに基いて、車両VAが停止したか否かを判定する。
・条件5
CPUは、新たに取得したカメラ画像に基いて主灯器MLが青信号Bを表示するか否かを判定する。
【0069】
上記条件1乃至条件5の何れも成立しない場合(即ち、終了条件が成立しない場合)、CPUは、ステップ510にて「No」と判定し、ステップ515に進む。ステップ515にて、CPUは、注意喚起指令をスピーカ31に送信し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。スピーカ31は、注意喚起指令を受信した場合、ブザー音を発音する。
【0070】
一方、上記条件1乃至条件5の少なくとも一つが成立した場合(即ち、終了条件が成立した場合)、CPUは、ステップ510にて「Yes」と判定し、ステップ520に進む。ステップ520にて、CPUは、実行フラグXexeの値を「0」に設定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0071】
以上説明したように、本発明装置は、先行車VBが存在する場合には実行フラグXexeの値を「1」に設定しない(即ち、注意喚起を禁止する)。信号機TLが矢灯器ALを備え、許可方向と将来進行方向とが一致している場合にもかかわらず、先行車VBに遮られて矢灯器ALが検出されないために、注意喚起が誤って行われる可能性を低減できる。
【0072】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。
【0073】
(第1変形例)
図6を参照しながら、第1変形例に係る車両制御装置10のDSECU20の作動の概要を説明する。
DSECU20は、先行車VBを検出している場合であっても、先行車VBの上端UEと主灯器MLの下端BEとの間の上下方向の長さHが所定の閾値長さHth以上であるとき、第1条件及び第2条件の何れかが成立していれば、注意喚起を行う。なお、長さHが閾値長さHth未満であれば、DSECU20は、注意喚起を禁止する。
【0074】
DSECU20は、「主灯器MLの上端UE’と下端BEとの間の上下方向の長さを表す主灯器長さHml」と所定長さHdとを加算することにより閾値長さHthを取得する。なお、本変形例で用いる長さは、カメラ画像における長さであればよい。
【0075】
長さHが閾値長さHth以上である場合には、カメラ装置22は、先行車VBに遮られることなく信号機TLに備わる矢灯器ALを撮影することができる。このため、DSECU20は、信号機TLが矢灯器ALを備える場合にはその矢灯器ALを確実に検出することができる。第1変形例によれば、先行車VBが検出されている場合であっても、長さHが閾値長さHth以上であるとき、第1条件及び第2条件の何れかが成立していれば、注意喚起が行われる。これにより、注意喚起が行われるべき状況で注意喚起が行われる可能性を高めつつ、注意喚起が誤って行われる可能性を低減できる。
【0076】
第1変形例のDSECU20のCPUは、図4に示した注意喚起開始判定ルーチンの代わりに図7に示したルーチンを所定時間が経過する毎に実行し、図5に示したルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。図8乃至図10に示したルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
なお、図7では、図4に示したステップと同じ処理を行うステップには、図7にて使用した符号と同じ符号を付与して説明を省略する。
【0077】
<注意喚起開始判定ルーチン>
CPUは、所定のタイミングになると、ステップ700から処理を開始し、実行フラグXexeの値が「0」である場合には図7に示したステップ405にて「Yes」と判定する。その後、CPUは、図7に示したステップ410乃至ステップ420を実行する。
【0078】
信号機TLが検出され且つ信号機TLが停止信号を表示している場合、CPUは、図7に示したステップ420及びステップ425にてそれぞれ「Yes」と判定し、図7に示したステップ430に進む。
【0079】
車両VAの前方に他車両が存在し且つ車間距離Dvが閾値距離Dvth以下である場合、CPUは、図7に示したステップ430及びステップ465にてそれぞれ「Yes」と判定し、ステップ705乃至ステップ720を順に実行する。
【0080】
ステップ705:CPUは、カメラ画像に基いて主灯器MLの上端UE’及び下端BEを特定し、上端UE’と下端BEとの間の上下方向の主灯器長さHmlを特定する。
ステップ710:CPUは、主灯器長さHmlと所定長さHdとを加算することにより閾値長さHthを取得する。
ステップ715:CPUは、カメラ画像に基いて上記長さHを特定する。
ステップ720:CPUは、長さHが閾値長さHth未満であるか否かを判定する。
【0081】
長さHが閾値長さHth以上である場合、CPUは、ステップ720にて「No」と判定し、図7に示したステップ435以降の処理に進み、第1条件及び第2条件の何れかが成立すれば実行フラグXexeの値を「1」に設定する。
【0082】
一方、長さHが閾値長さHth未満である場合、CPUは、ステップ720にて「Yes」と判定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。このため、長さHが閾値長さHth未満である場合、CPUは、第1条件及び第2条件の何れかが成立していようとも、実行フラグXexeの値を「1」に設定することはない(即ち、注意喚起を禁止する)。
【0083】
(第2変形例)
上記実施形態では、DSECU20は、方向路面標示ADに基いて将来進行方向を特定した。第2変形例では、DSECU20は、ウィンカー33L、33Rの指示方向に基いて将来進行方向を特定する。
【0084】
ウィンカーレバー26が左点滅方向(例えば上方向)に操作された場合には左ウィンカー33Lが点滅する。この場合、運転者は車両VAを左側へ進行させる可能性が高いので、DSECU20は将来進行方向が左方向であると判定する。
ウィンカーレバー26が右点滅方向(例えば下方向)に操作された場合には右ウィンカースイッチ26Rが運転者の操作を検出した場合には右ウィンカー33Rが点滅する。この場合、運転者は車両VAを右側へ進行させる可能性が高いので、DSECU20は将来進行方向が右方向であると判定する。
ウィンカーレバー26が操作されない場合には、運転者は車両VAを直進させる可能性が高いので、DSECU20は将来進行方向が直進方向であると判定する。
【0085】
DSECU20は、車線が車両VAの進行を許可する方向を示す道路標識に基いて将来進行方向を特定してもよい。
【0086】
(第3変形例)
第1条件及び第2条件は、車両VAから信号機TLまでの距離Dtが所定の閾値距離Dtthであるとの条件を更に含んでもよい。
DSECU20は、現時点の車速Vsに基いて以下のように閾値距離Dtthを取得してもよい。
DSECU20は、車両VAが所定の減速度で減速したとの仮定下で車両VAが信号機TLよりも所定距離Ddだけ手前の位置で停止するまでに走行する停止必要距離Dnを現時点の車速Vsに基いて求める。そして、DSECU20は、停止必要距離Dnと所定距離Ddとを加算した値を閾値距離Dtthとして取得する。
【0087】
(第4変形例)
上記実施形態では、CPUは、注意喚起として、スピーカ31からブザー音を発音させる。第3変形例では、CPUは、注意喚起として、ディスプレイ32に「信号機TLを表す信号機アイコン」を点滅表示させる。なお、CPUは、スピーカ31からブザー音を発生させつつ、ディスプレイ32に上記信号機アイコンを点滅表示させてもよい。
【0088】
(第5変形例)
ミリ波レーダ装置23は、ミリ波の代わりに無線媒体を送信し、反射された無線媒体を受信することによって物体を検出できるリモートセンシング装置であればよい。更に、車両制御装置10は、ミリ波レーダ装置23を備えなくてもよい。
【0089】
(第6変形例)
本支援装置10は、上記エンジン自動車だけでなく、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)及び電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)に適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
10…運転支援装置、20…運転支援ECU、22…カメラ装置、31…スピーカ、32…ディスプレイ、TL…信号機、ML…主灯器、AL…矢灯器、AD…方向路面標示、VB…先行車。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7