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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/27 20190101AFI20241210BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241210BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20241210BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20241210BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241210BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20241210BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20241210BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B60L58/27
B60L3/00 S
B60L58/12
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/6571
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021152292
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2023044323
(43)【公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】鯉江 亮輔
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-119694(JP,A)
【文献】特開2003-229110(JP,A)
【文献】特開2021-126037(JP,A)
【文献】特開2020-137380(JP,A)
【文献】特開2003-223938(JP,A)
【文献】特開2013-018419(JP,A)
【文献】特開2019-221025(JP,A)
【文献】特開2015-168345(JP,A)
【文献】特開2005-176484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/27
B60L 3/00
B60L 58/12
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/633
H01M 10/6571
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリの温度を検出する温度センサと、
前記バッテリの近傍に設けられ、前記バッテリを加熱するヒータと、
前記バッテリの充電状態を検出すると共に、前記ヒータの動作状態を制御するバッテリ制御部と、
前記バッテリから供給される電力で動作する駆動装置を制御すると共に、前記バッテリ制御部に対して前記ヒータの動作状態に係わる指示を与える制御部と、を備え、
前記バッテリの温度が所定の温度閾値より低く、且つ、前記バッテリの充電状態が第1の充電レベルより高いときは、前記制御部は、前記駆動装置の電力消費を制限することなく、前記ヒータを発熱させることを表す発熱指示を前記バッテリ制御部に与え、
前記バッテリの温度が前記温度閾値より低く、且つ、前記バッテリの充電状態が前記第1の充電レベル以下であり且つ前記第1の充電レベルよりも低い第2の充電レベルより高いときは、前記制御部は、前記発熱指示を前記バッテリ制御部に与えながら前記駆動装置の電力消費を制限し、
前記バッテリの温度が前記温度閾値より低く、且つ、前記バッテリの充電状態が前記第2の充電レベル以下であるときは、前記制御部は、前記駆動装置の電力消費を制限しながら、前記ヒータを停止することを表す停止指示または前記ヒータの発熱量を抑制することを表す抑制指示を前記バッテリ制御部に与える
ことを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記バッテリの温度が前記温度閾値より低く、且つ、前記バッテリの充電状態が前記第1の充電レベル以下であるときは、前記制御部は、前記バッテリの温度と前記温度閾値との差分が大きいほど前記駆動装置の電力消費を強く制限する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記駆動装置は、前記車両に搭載されるモータを含み、
前記制御部は、前記モータの回転数を制限することで前記駆動装置の電力消費を制限する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
バッテリと、
前記バッテリから供給される電力で動作する駆動装置と、
前記バッテリの温度を検出する温度センサと、
前記バッテリの近傍に設けられ、前記バッテリを加熱するヒータと、
前記バッテリの充電状態を検出すると共に、前記ヒータの動作状態を制御するバッテリ制御部と、
前記駆動装置を制御すると共に、前記バッテリ制御部に対して前記ヒータの動作状態に係わる指示を与える制御部と、を備え、
前記バッテリの温度が所定の温度閾値より低く、且つ、前記バッテリの充電状態が第1の充電レベルより高いときは、前記制御部は、前記駆動装置の電力消費を制限することなく、前記ヒータを発熱させることを表す発熱指示を前記バッテリ制御部に与え、
前記バッテリの温度が前記温度閾値より低く、且つ、前記バッテリの充電状態が前記第1の充電レベル以下であり且つ前記第1の充電レベルよりも低い第2の充電レベルより高いときは、前記制御部は、前記発熱指示を前記バッテリ制御部に与えながら前記駆動装置の電力消費を制限し、
前記バッテリの温度が前記温度閾値より低く、且つ、前記バッテリの充電状態が前記第2の充電レベル以下であるときは、前記制御部は、前記駆動装置の電力消費を制限しながら、前記ヒータを停止することを表す停止指示または前記ヒータの発熱量を抑制することを表す抑制指示を前記バッテリ制御部に与える
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリを制御するシステムおよび方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、バッテリから供給される電力でモータを駆動する電動車両が広く普及してきている。例えば、フォークリフト等の産業車両の電動化が進められている。
【0003】
バッテリは、一般に、所定の温度領域で動作することが好ましい。このため、温度調節機能を備える蓄電システムが知られている。他方、電動車両においては、航続可能距離を大きくすることが要求される。このため、バッテリ劣化指標(充電率、温度など)に基づいてバッテリの温度を調節する機会を制限する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。一例としては、バッテリの温度が所定の温度領域から外れた場合であっても、充電率が危険領域に入ったときには、温度調節を実行しない。そうすると、消費電力が抑制されるので、電動車両の航続距離が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-119694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、電動車両においてバッテリ劣化指標に基づいてバッテリの温度を調節する機会を制限することで、航続可能距離を大きくする方法が提案されている。しかし、この方法では、バッテリの温度を調節する機会が制限されるので、バッテリの内部抵抗が大きくなることがある。そして、バッテリの内部抵抗が大きくなると、バッテリから負荷に電力を供給する際に、バッテリ電圧が低下することがある。
【0006】
本発明の1つの側面に係わる目的は、車両に搭載されるバッテリの温度の低下を抑制しながらバッテリ電圧の低下を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様に係わる制御システムは、車両に搭載されるバッテリの温度を検出する温度センサと、前記バッテリを加熱するヒータと、前記バッテリの充電状態を検出すると共に、前記ヒータの動作状態を制御するバッテリ制御部と、前記バッテリから供給される電力で動作する駆動装置を制御すると共に、前記バッテリ制御部に対して前記ヒータの動作状態に係わる指示を与える制御部と、を備える。前記バッテリの温度が所定の温度閾値より低く、且つ、前記バッテリの充電状態が所定の充電レベルより高いときは、前記制御部は、前記ヒータを発熱させることを表す発熱指示を前記バッテリ制御部に与える。前記バッテリの温度が前記温度閾値より低く、且つ、前記バッテリの充電状態が前記充電レベル以下であるときは、前記制御部は、前記ヒータを停止することを表す停止指示または前記ヒータの発熱量を抑制することを表す抑制指示を前記バッテリ制御部に与えると共に、前記駆動装置の電力消費を制限する。
【0008】
このように、本発明の実施形態に係わる制御システムにおいては、バッテリの温度が温度閾値より低いときは、ヒータを発熱させることで、バッテリの温度を上昇させる。ただし、バッテリの温度が温度閾値より低いときであっても、バッテリの充電状態が充電レベル(例えば、所定のSOC閾値)以下であるときは、ヒータを停止するとともに、駆動装置の電力消費を制限する。これにより、バッテリから駆動装置に供給する電流が抑制されるので、バッテリの内部抵抗が増大する場合であっても、電圧降下は大きくならず、バッテリ電圧の低下幅を抑えることができる。
【0009】
上記構成において、バッテリの温度が温度閾値より低く、且つ、バッテリの充電状態が充電レベル以下であるときは、制御部は、バッテリの温度と温度閾値との差分が大きいほど駆動装置の電力消費を強く制限してもよい。また、駆動装置が車両に搭載されるモータを含むケースでは、制御部は、モータの回転数を制限することで駆動装置の電力消費を制限してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両に搭載されるバッテリの温度の低下を抑制しながらバッテリ電圧の低下を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係わる車両に搭載される制御システムの一例を示す図である。
図2】バッテリ制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
図3】制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
図4】制御部の処理のバリエーションを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係わる車両に搭載される制御システムの一例を示す。本発明の実施形態に係わる車両100は、特に限定されるものではないが、例えば、モータで走行する電動車両である。但し、車両100は、電動車両に限定されるものではなく、ハイブリッド車等であってもよい。また、車両100は、特に限定されるものではないが、例えば、フォークリフト等の産業車両である。但し、車両100は、産業車両に限定されるものではなく、乗用車等であってもよい。
【0013】
車両100は、機台10および蓄電システム20を備える。なお、図1には、主に、本発明の実施形態に係わる制御システムが描かれており、車両100は他の装置および機能を実装してもよい。
【0014】
機台10は、駆動装置11および制御部14を備える。駆動装置11は、インバータ12およびモータ13を備える。インバータ12は、蓄電システム20から供給される電力を利用してモータ13を回転させる。このとき、インバータ12は、制御部14から与えられる駆動制御信号に従ってモータ13を回転させる。駆動制御信号は、この例では、目標回転数を表す制御信号を含む。この場合、インバータ12は、目標回転数に応じてモータ13の回転数を制御する。モータ13は、例えば、車両100の走行用モータである。或いは、車両100がフォークリフトである場合、モータ13は、フォークリフトの荷役用モータであってもよい。なお、駆動装置11は、モータ13の実際の回転数を検出してもよい。この場合、モータ13の実際の回転数を表す実回転数を制御部14に通知する。
【0015】
制御部14は、車両100のユーザからの指示に応じて駆動装置11を制御する。ユーザからの指示は、例えば、車両100のアクセルの踏込み角度(又は、アクセル開度)に相当する。このとき、制御部14は、ユーザからの指示に応じてモータ13の目標回転数を計算する。或いは、制御部14は、ユーザからの指示および駆動装置11から通知される実回転数に基づいて目標回転数を計算してもよい。
【0016】
なお、後で詳しく説明するが、制御部14は、蓄電システム20から通知されるバッテリ21の温度および充電状態に基づいて、駆動装置11への電力供給を制限することがある。また、制御部14は、蓄電システム20が備えるヒータ22の動作状態を制御することができる。
【0017】
蓄電システム20は、バッテリ21、ヒータ22、電圧センサV、電流センサI、温度センサT、リレーRL、バッテリ制御部23を備える。なお、蓄電システム20は、図1に示してない他の回路またはデバイスを備えてもよい。
【0018】
バッテリ21は、特に限定されるものではないが、この実施例では、リチウムイオン電池である。また、バッテリ21は、特に限定されるものではないが、直列/並列に接続される複数の電池パックから構成される。この場合、各電池パックは、直列に接続される複数の電池セルから構成されるようにしてもよい。
【0019】
ヒータ22は、バッテリ21の近傍に設けられ、バッテリ制御部23からの指示に応じて発熱する。すなわち、ヒータ22は、バッテリ制御部23からの指示に応じてバッテリ21を加熱することができる。ヒータ22は、たとえば、抵抗線により実現される。この場合、この抵抗線に電流を流すことでヒータ22が発熱する。また、バッテリ制御部23は、抵抗線を流れる電流を制御することでヒータ22のオン状態/オフ状態を制御する。
【0020】
電圧センサVは、バッテリ21の電圧を検出する。なお、電圧センサVは、バッテリ21の正極端子と負極端子との間の電圧を検出してもよいし、各電池パックの電圧を検出してもよいし、各電池セルの電圧を検出してもよい。電流センサIは、バッテリ21を流れる電流を検出する。なお、電流センサIは、バッテリ21を充電する際の充電電流、バッテリ21から負荷に供給される電流、負荷からバッテリ21に回生される電流を検出できる。温度センサTは、バッテリ21の近傍に設けられ、バッテリ21の温度を検出する。リレーRLは、バッテリ制御部23からの指示に応じて、バッテリ21に接続する電力線を導通/遮断する。例えば、バッテリ21がリチウムイオン電池である場合、バッテリ電圧が所定の閾値より低下すると、バッテリ21を保護するためにリレーRLが電力線を遮断することがある。
【0021】
バッテリ制御部23は、バッテリ21の充電動作を制御する。このとき、バッテリ制御部23は、不図示の充電器との間で制御信号を交換しながらバッテリ21の充電電流および充電電圧を制御してもよい。また、バッテリ制御部23は、バッテリ21の充電状態を検出する。充電状態として、例えば、バッテリ21のSOC(State of Charge)が計算される。SOCは、充電率を表す指標であり、100パーセントおよび0パーセントがそれぞれ満充電状態および完全放電状態を表す。
【0022】
SOCは、公知の技術で計算または推定することができる。例えば、バッテリ制御部23は、電流センサIにより検出される電流の積算値に基づいてSOCを計算することができる。ただし、この方法は、誤差が蓄積することがある。よって、電流の積算値に基づいてSOCを計算する場合、所定の契機に応じてSOCをリセットすることが好ましい。例えば、バッテリ21が満充電状態とみなせるときにSOCを「100パーセント」にリセットしてもよいし、或いは、バッテリ21が完全放電状態とみなせるときにSOCを「0パーセント」にリセットしてもよい。また、バッテリ制御部23は、他の方法でSOCを推定してもよい。例えば、バッテリ制御部23は、バッテリ21の電圧に基づいてSOCを推定してもよい。
【0023】
バッテリ制御部23は、バッテリ21のSOCを制御部14に通知する。このとき、バッテリ制御部23は、温度センサTにより検出されるバッテリ21の温度も制御部14に通知する。なお、バッテリ制御部23は、例えば、所定の時間間隔でバッテリ21のSOCおよび温度を制御部14に通知することが好ましい。或いは、バッテリ制御部23は、制御部14からの要求に応じてバッテリ21のSOCおよび温度を制御部14に通知してもよい。
【0024】
さらに、バッテリ制御部23は、ヒータ22を制御することでバッテリ21の温度を調節することができる。ここで、一般に、バッテリは、所定の温度領域で動作することが好ましい。例えば、バッテリ21がリチウムイオン電池である場合、低温時にバッテリ21の内部抵抗(又は、電池抵抗)が大きくなる。ここで、内部抵抗が大きくなると、バッテリ21から負荷に電力が供給される際に、バッテリ21の電圧が低下することがある。或いは、バッテリ21の充電効率が低下することがある。
【0025】
そこで、バッテリ制御部23は、温度センサTを利用して測定されるバッテリ21の温度を制御部14に通知する。そうすると、制御部14は、バッテリ21の温度に基づいてヒータ22を発熱させるか否かを決定する。具体的には、バッテリ21の温度が所定の温度閾値より低くなると、制御部14は、ヒータ22を発熱させる必要があると判定する。この場合、バッテリ制御部23は、ヒータ22を発熱させてバッテリ21の温度を上昇させる。ただし、後で詳しく説明するが、制御部14は、バッテリ21の温度が所定の温度閾値より低い場合であっても、ヒータ22の温度調節能力を停止または抑制することがある。
【0026】
図2は、バッテリ制御部23の処理の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは、バッテリ21の温度調節に係わる手順を表しており、他の手順については省略されている。また、このフローチャートの処理は、例えば、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0027】
S1において、バッテリ制御部23は、温度センサTの出力信号を利用してバッテリ21の温度を検出する。以下の記載では、バッテリ21の温度を「バッテリ温度」と呼ぶことがある。S2において、バッテリ制御部23は、バッテリ21のSOCを計算する。S3において、バッテリ制御部23は、S1で検出したバッテリ温度およびS2で計算したSOCを制御部14に通知する。
【0028】
S4~S5において、バッテリ制御部23は、制御部14からヒータ動作制御指示を受信する。ヒータ動作制御指示は、この実施例では、発熱指示または停止指示を表す。尚、ヒータ動作制御指示については後で説明する。そして、発熱指示を受信したときは、バッテリ制御部23は、S6において、ヒータ22を発熱させる。これにより、バッテリ21の温度が上昇する。一方、停止指示を受信したときは、バッテリ制御部23は、S7において、ヒータ22の発熱を停止する。
【0029】
図3は、制御部14の処理の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは、バッテリ21の温度調節に係わる手順を表しており、他の手順については省略されている。また、このフローチャートの処理は、例えば、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0030】
S11において、制御部14は、バッテリ制御部23からバッテリ21の温度を表す情報およびSOCを表す情報を取得する。S12において、制御部14は、バッテリ温度と所定の温度閾値とを比較する。温度閾値は、例えば、常温時を基準とするバッテリ21の内部抵抗の増加量を考慮して決定してもよい。この実施例では、温度閾値は、特に限定されるものではないが、例えば「5℃」である。そして、バッテリ温度が温度閾値以上であれば、制御部14は、S13において、ヒータ動作制御指示としてヒータ22を停止することを表す停止指示を生成し、その停止指示をバッテリ制御部23に送信する。
【0031】
バッテリ温度が温度閾値より低いときは、制御部14は、S14において、バッテリ21のSOCと所定のSOC閾値(所定の充電レベル)とを比較する。SOC閾値は、例えば、車両100がバッテリ21の電力を利用して走行可能な距離を考慮して決定してもよい。例えば、車両100が工場内で使用される産業車両である場合、SOC閾値は、その産業車両が工場内の任意の位置から充電ステーションまで走行可能な充電量であってもよい。また、SOC閾値は、特に限定されるものではないが、例えば「15パーセント」である。そして、バッテリ21のSOCがSOC閾値より高いときには、制御部14は、S15において、ヒータ動作制御指示としてヒータ22を発熱させることを表す発熱指示を生成し、その発熱指示をバッテリ制御部23に送信する。
【0032】
バッテリ温度が温度閾値より低く、且つ、バッテリ21のSOCがSOC閾値以下であるときは、制御部14は、S16において、駆動装置11の電力消費を制限する。この実施例では、制御部14は、モータ13の目標回転数を制限することで駆動装置11の電力消費を制限する。例えば、制御部14は、モータ13の目標回転数の最大値を通常時よりも小さくする。また、制御部14は、バッテリ温度と温度閾値との差分が大きいほど駆動装置11の電力消費を強く制限することが好ましい。この場合、駆動装置11の電力消費は、段階的に制限される。たとえば、バッテリ温度と温度閾値との差分が2℃以下のときは、モータ13の目標回転数の最大値を通常時の80パーセントに制限し、その差分が2℃を超えるときは、モータ13の目標回転数の最大値を通常時の50パーセントに制限する。或いは、モータ13の目標回転数の最大値の制限幅を、バッテリ温度と温度閾値との差分に比例させてもよい。この後、制御部14は、S17において、ヒータ動作制御指示として上述の停止指示を生成してバッテリ制御部23に送信する。
【0033】
なお、バッテリ制御部23は、図2を参照して説明したように、ヒータ動作制御指示に従ってヒータ22の動作状態を制御する。したがって、S15において発熱指示が生成されたときは、バッテリ制御部23はヒータ22を発熱させる。一方、S13またはS17において停止指示が生成されたときは、バッテリ制御部23はヒータ22を停止する。
【0034】
このように、本発明の実施形態に係わる制御システムにおいては、バッテリ温度が温度閾値より低いときは、ヒータ22を発熱させることで、バッテリ温度を上昇させる。これにより、バッテリ21の内部抵抗の増大が抑制され、バッテリ電圧の低下を回避できる。ただし、バッテリ温度が温度閾値より低い場合であっても、バッテリ21のSOCがSOC閾値より低いときは、ヒータ22を停止する。これにより、バッテリ消費が抑制され、バッテリ駆動時間が長くなる。ところが、ヒータ22を停止すると、バッテリ21の温度が低いままであり、バッテリ21の内部抵抗の増大に起因してバッテリ電圧が低下するおそれがある。そこで、制御部14は、ヒータ22を停止するとともに、駆動装置11の電力消費を制限する。これにより、バッテリ21から機台10の負荷(すなわち、駆動装置11)に供給する電流が抑制されるので、バッテリ21の内部抵抗が増大する場合であっても、電圧降下は大きくならず、バッテリ電圧の低下幅を抑えることができる。換言すると、駆動装置11の電力消費を制限しないケースと比較して、バッテリ電圧の低下が発生しない動作領域(バッテリ21の温度および/またはSOC)が広くなる。
【0035】
<バリエーション>
図3に示す手順では、バッテリ21のSOCと1つのSOC閾値との比較に基づいてヒータ制御およびモータ制御が行われるが、本発明はこの方式に限定されるものではない。すなわち、2つの異なる閾値を用いてヒータ制御およびモータ制御をそれぞれ行ってもよい。
【0036】
図4は、制御部14の処理のバリエーションを示すフローチャートである。なお、S11~S13、S15~S17は、図3および図4において実質的に同じである。即ち、バッテリ温度が温度閾値以上であれば、S13において、バッテリ制御部23に停止指示が送信される。一方、バッテリ温度が温度閾値より低いときは、制御部14の処理はS21に進む。
【0037】
S21において、制御部14は、バッテリ21のSOCと第1のSOC閾値(第1の充電レベル)とを比較する。第1のSOC閾値は、特に限定されるものではないが、図3に示す手順で使用するSOC閾値と同じであってもよい。そして、バッテリ21のSOCが第1のSOC閾値より高いときは、制御部14は、S15において、発熱指示をバッテリ制御部23に送信する。一方、バッテリ21のSOCが第1のSOC閾値以下であるときは、制御部14は、S16において、駆動装置11に電力消費を制限する。
【0038】
S22において、制御部14は、バッテリ21のSOCと第2のSOC閾値(第2の充電レベル)とを比較する。第2のSOC閾値は、この実施例では、第1のSOC閾値より低いものとする。そして、バッテリ21のSOCが第2のSOC閾値より高いときは、制御部14は、S15において、発熱指示をバッテリ制御部23に送信する。一方、バッテリ21のSOCが第2のSOC閾値以下であるときは、制御部14は、S17において、停止指示をバッテリ制御部23に送信する。
【0039】
このように、図4に示す手順では、バッテリ温度が温度閾値より低く、且つ、バッテリ21のSOCが第1のSOC閾値より小さく第2の閾値より大きいときには、制御部14は、モータ13の目標回転数を制限するが、ヒータ22は発熱させる。そして、バッテリ21のSOCが第2の閾値より低下すると、制御部14は、モータ13の目標回転数を制限し、且つ、ヒータ22を停止する。すなわち、バッテリ21のSOCが低下していく過程で、先にモータ13の消費電力を制限し、その後にヒータ22の発熱を制限する。この手順によれば、図3に示す手順と比較すると、バッテリ21を低温状態で使用する期間が短くなる。ただし、本発明の実施形態のバリエーションは、この手順に限定されるものではなく、先にヒータ22の発熱を制限し、その後にモータ13の消費電力を制限してもよい。
【0040】
上記2つのSOC閾値は、バッテリ劣化と車両100の稼働時間のトレードオフ関係を考慮して決定することが好ましい。尚、上記2つのSOC閾値が互いに同じである場合、図4に示す手順は図3に示す手順と同じになる。
【0041】
<他のバリエーション>
バッテリ21は、リチウムイオン電池に限定されるものではなく、他の材料を利用する電池であってもよい。たとえば、バッテリ電圧が低下したときに、そのバッテリを保護する必要がある電池に対して本発明は有効である。また、SOC閾値は、機台10に実装されるインタフェースを利用して、車両100のユーザが任意に設定できるようにしてもよい。
【0042】
上述の実施例では、バッテリ21の充電状態としてSOCを使用するが、本発明はこの方式に限定されるものではない。例えば、制御部14は、SOCの代わりに、バッテリ21の電圧、電池パックの電圧、または電池セルの電圧に基づいてヒータ22およびモータ13の動作を制御してもよい。
【0043】
上述の実施例では、ヒータ22をオン状態またはオフ状態に制御するが、本発明はこの方式に限定されるものではない。例えば、制御部14は、バッテリ21の温度に応じてヒータ22の温度調節能力を制御してもよい。この場合、制御部14は、ヒータ22の発熱量を抑制することを表す抑制指示をバッテリ制御部23に与える。そうすると、バッテリ制御部23は、抑制指示に基づいてヒータ22に流す電流を調整する。
【0044】
上述の実施例では、モータ13の目標回転数を制限することで駆動装置11の消費電力が制限されるが、本発明はこの方式に限定されるものではない。例えば、制御部14は、バッテリ温度が温度閾値より低く、且つ、バッテリ21のSOCがSOC閾値以下であるときに、車両100のアクセル開度を制限してもよいし、アクセル開度とモータ13の目標回転数との対応関係を変更してもよい。
【0045】
上述の実施例では、制御部14がヒータ22の動作状態を決定し、バッテリ制御部23が制御部14から与えられる指示に応じてヒータ22を制御するが、本発明はこの方式に限定されるものではない。例えば、バッテリ制御部23がバッテリ温度に基づいてヒータ22の動作状態を制御すると共に、バッテリ21のSOCがSOC閾値より低下したときに制御部14からバッテリ制御部23に停止指示を与えるようにしてもよい。この場合、バッテリ制御部23は、バッテリ温度が温度閾値以下であっても、停止指示が与えられたときには、ヒータ22を停止する。
【符号の説明】
【0046】
10 機台
11 駆動装置
12 インバータ
13 モータ
14 制御部
20 蓄電システム
21 バッテリ
22 ヒータ
23 バッテリ制御部
100 車両
図1
図2
図3
図4