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特許7600940電動アクチュエータ、電動アクチュエータの推力導出方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ、電動アクチュエータの推力導出方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/40 20160101AFI20241210BHJP
   G05D 15/01 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02P29/40
G05D15/01
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021152530
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2022132038
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2024-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2021030811
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 岳
(72)【発明者】
【氏名】三浦 祥太
(72)【発明者】
【氏名】和田 利昌
(72)【発明者】
【氏名】小林 英樹
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-050122(JP,A)
【文献】特開2020-003034(JP,A)
【文献】特開2012-237498(JP,A)
【文献】特開2020-078873(JP,A)
【文献】特開2009-197880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/40
G05D 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間内の圧力を検出する圧力センサと、
前記モータの動作を制御する制御部と、
前記圧力センサにて検出された圧力と、前記制御部による前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出する導出部と
を備えることを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記制御部は、動作指示に基づく前記出力軸による推力と、前記導出部にて導出した推力とが等しくなるように、前記モータの制御量を調整することを特徴とする請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記密封空間内の圧力は、前記出力軸が直線移動することに応じて変動することを特徴とする請求項1または2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間の温度を検出する温度センサと、
前記モータの動作を制御する制御部と、
前記温度センサにて検出された温度と、前記制御部による前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出する導出部と
を備えることを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記制御部は、
前記温度センサにて検出された温度と、前記モータの制御量から導出される前記密封空間の容積とに基づいて、前記密封空間内の圧力を導出し、
当該圧力と前記制御部による前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出することを特徴とする請求項4に記載の電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記制御部は、動作指示に基づく前記出力軸による推力と、前記導出部にて導出した推力とが等しくなるように、前記モータの制御量を調整することを特徴とする請求項4または5に記載の電動アクチュエータ。
【請求項7】
前記温度センサは、前記密封空間内に設置されることを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項8】
前記温度センサは、前記密封空間を構成する前記ハウジングまたは前記出力軸の外周部に接触して設置されることを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項9】
前記温度センサは、前記密封空間を構成する前記ハウジングまたは前記出力軸に非接触にて温度を検出するように構成されることを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項10】
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間内の圧力を検出する圧力センサと
を備える電動アクチュエータの推力導出方法であって、
前記圧力センサにて検出された圧力と、前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出することを特徴とする電動アクチュエータの推力導出方法。
【請求項11】
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間の温度を検出する温度センサと
を備える電動アクチュエータの推力導出方法であって、
前記温度センサにて検出された温度と、前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出することを特徴とする電動アクチュエータの推力導出方法。
【請求項12】
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間内の圧力を検出する圧力センサと
を備える電動アクチュエータの制御装置に、
前記圧力センサにて検出された圧力と、前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出させるためのプログラム。
【請求項13】
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間の温度を検出する温度センサと
を備える電動アクチュエータの制御装置に、
前記温度センサにて検出された温度と、前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電動アクチュエータ、電動アクチュエータの推力導出方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、モータの回転力を直動の推力に変換して動作させる構成を備えた電動アクチュエータが普及している。
【0003】
電動アクチュエータは、入力に基づいて制御量が決定されるが、同じ入力であっても、動作環境等に応じた影響を考慮して、制御量を調整する技術が開示されている。例えば、特許文献1では、電動ブレーキ制御において、入力された踏力に応じて、制御する際の閾値を切り替えることが記載されている。また、特許文献2では、電動式アクチュエータにおいて、温度に応じて、制御する際の閾値を切り替えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-11703号公報
【文献】特開2013-154843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上述したような電動アクチュエータでは、使用する環境を考慮し、防水や防塵などの構成を有する場合がある。例えば、鉄道で用いられる制御用の電動アクチュエータなどは屋外で使用されるため、雨水や塵埃の電動アクチュエータ内部への侵入を防ぐ必要がある。このような環境下での使用を想定し、電動アクチュエータのハウジング部材と、出力軸の部分が連結部材を介してピストン動作を行うように構成されている場合に、この連結部材周辺に水の侵入を防止するための防水構成が挙げられる。このような構成では、連結部材周辺に密封空間が構成される。密封空間は、電動アクチュエータの動作に伴って、その容積が変動する。これにより、密封空間内の圧力が変動し、電動アクチュエータの動作に影響を与えてしまう。つまり、上記のような防水や防塵の構造とした場合、内外の空気の交換が難しくなることから、電動アクチュエータの動作によって内部の空気が圧縮され、動作を阻害する負荷となりうる。その結果、同じ制御量であっても、電動アクチュエータによる出力は異なってしまう。このように同じ制御量であっても異なる出力となる場合を想定し、電動アクチュエータの実際の出力を把握することは、電動アクチュエータを精度良く動作させるために重要となる。
【0006】
上記課題を鑑み、本願発明は、電動アクチュエータの動作に伴う内部の圧力変化を考慮して、内圧による負荷の影響を抑制した電動アクチュエータの出力を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本願発明は以下の構成を有する。すなわち、
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間内の圧力を検出する圧力センサと、
前記モータの動作を制御する制御部と、
前記圧力センサにて検出された圧力と、前記制御部による前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出する導出部と
を備えることを特徴とする電動アクチュエータ。
【0008】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間の温度を検出する温度センサと、
前記モータの動作を制御する制御部と、
前記温度センサにて検出された温度と、前記制御部による前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出する導出部と
を備えることを特徴とする電動アクチュエータ。
【0009】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間内の圧力を検出する圧力センサと
を備える電動アクチュエータの推力導出方法であって、
前記圧力センサにて検出された圧力と、前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出することを特徴とする電動アクチュエータの推力導出方法。
【0010】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間の温度を検出する温度センサと
を備える電動アクチュエータの推力導出方法であって、
前記温度センサにて検出された温度と、前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出することを特徴とする電動アクチュエータの推力導出方法。
【0011】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間内の圧力を検出する圧力センサと
を備える電動アクチュエータの制御装置に、
前記圧力センサにて検出された圧力と、前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出させるためのプログラム。
【0012】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間の温度を検出する温度センサと
を備える電動アクチュエータの制御装置に、
前記温度センサにて検出された温度と、前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0013】
本願発明により、電動アクチュエータの動作に伴う内部の圧力変化を考慮して、内圧による負荷の影響を抑制した電動アクチュエータの出力が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る装置構成の例を示す概略図。
図2】本願発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ内部の圧力を説明するための図。
図3】本願発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ内部の圧力を説明するための図。
図4】本願発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ内部の移動を説明するための図。
図5】本願発明の一実施形態に係る密封空間の容積、内圧、およびストローク距離の関係を説明するためのグラフ図。
図6】本願発明の一実施形態に係る電動アクチュエータのストローク距離の変化による推力への影響を説明するためのグラフ図。
図7】本願発明の一実施形態に係る電動アクチュエータのストローク距離の変化による推力への影響を説明するためのグラフ図。
図8】第1の実施形態に係る電動アクチュエータの制御処理のフローチャート。
図9】第2の実施形態に係る装置構成の例を示す概略図。
図10】第2の実施形態に係る電動アクチュエータの制御処理のフローチャート。
図11】第3の実施形態に係る装置構成の例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本願発明を説明するための一実施形態であり、本願発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本願発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0016】
<第1の実施形態>
以下、本願発明の第1の実施形態について説明を行う。
【0017】
[装置構成]
図1は、本実施形態に係る装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。図1には、本実施形態に係る電動アクチュエータ10は、駆動部100、および制御装置200を含んで構成される。また、制御装置200は、電動アクチュエータ10の上位に位置する上位装置20に通信可能に接続される。電動アクチュエータ10は、上位装置20からの指示に基づいて動作する。
【0018】
駆動部100は、制御装置200の制御に基づいて、所定の推力を出力する。モータ102は、制御装置200から入力される電流に基づいて回転動作を行う。モータ102は、回転位置センサ103を備える。回転位置センサ103は、エンコーダ(不図示)などを用いてモータ102の回転動作に伴う回転位置を検出し、制御装置200へ送信する。ハウジング101内には、モータ102の回転力を伝達するための減速機104が設けられる。減速機104は、直動機構108に接続され、減速機104からの回転力が直動機構108に伝達される。出力軸105と直動機構108とは連結機構107を介して連結される。直動機構108が回転することにより連結機構107が直動機構108の軸方向(図1の矢印Aにて示す方向)に沿って移動し、これに伴って出力軸105も移動(ピストン動作)することで、電動アクチュエータ10による推力が出力される。モータ102の回転方向に応じて、出力軸105および連結機構107の移動方向が規定される。
【0019】
直動機構108の外周面にらせん状のねじ溝が設けられたねじ軸にて構成される。連結機構107は、ねじ溝に嵌合されて配置される。このとき、連結機構107が備える転動体(不図示)が直動機構108のねじ溝を転動自在に構成され、直動機構108が回転することで、連結機構107が所定方向に移動する。転動体とねじ溝の周囲には、任意の潤滑方式により潤滑剤(潤滑油やグリースなど)が供給され、これらの摩擦が軽減されるように構成されてよい。
【0020】
ハウジング101と出力軸105とにより、連結機構107および直動機構108を含んで密封空間109が構成される。つまり、本実施形態では、ハウジング101と出力軸105とから構成される密封空間109への液体等の流入が防止されるように構成されていることを想定して説明する。密封空間が設けられることにより、防塵や防水を実現することができる一方、外部との空気の交換が困難となる。密封空間109には、密封空間109内の圧力を検出するための圧力センサ106が設けられる。図1において、連結機構107の両側に密封空間109が示されているが、これらは繋がっており、1つの密封空間109が構成されている。なお、ここでは、圧力センサ106により気圧を検出するものとして説明するが、電動アクチュエータ10の構成に応じて、液圧(例えば、油圧)を検出するようなセンサが用いられてもよい。圧力センサ106は、検出した圧力の情報を制御装置200へ送信する。
【0021】
制御装置200は、上位装置20と通信可能に接続される。制御装置200は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Single Processor)、または専用回路などから構成されてよい。また、図1には示していないが、制御装置200は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の揮発性および不揮発性の記憶媒体を含んで構成される。なお、図1では、1の上位装置20と、1の電動アクチュエータ10が示されているが、これに限定するものではなく、1の上位装置20が複数の電動アクチュエータ10を制御、管理するような構成であってもよい。
【0022】
モータ制動部201は、上位装置20からの指示に従って、モータ102を制御するための信号をインバータ202に出力する。インバータ202は、モータ制動部201からの信号に基づいて、電源203から供給される電力を、モータ102を動作させるための電流に変換しモータ102に供給する。この供給された電流に基づいて、モータ102が回転動作を行う。なお、インバータ202や電源203は、制御装置200が備える構成として示したが、これらは制御装置200の外部に設けられてもよい。
【0023】
推力導出部204は、モータ102を動作させた結果として電動アクチュエータ10から出力される推力を導出する。本実施形態に係る推力の導出方法については後述する。モータ角度導出部205は、モータ102に備えられた回転位置センサ103から取得した位置情報に基づいて、モータ102の回転角度を導出する。ここでは、モータ102の回転数なども併せて導出されるような構成であってよい。電流センサ206は、インバータ202によりモータ102に供給される電流を検出する。状態監視部207は、各種センサや部位から各種情報を収集し、駆動部100や制御装置200の状態を監視する。また、状態監視部207は、監視結果(異常の有無や動作状況など)を状態出力部208へ送信する。状態出力部208は、状態監視部207から取得した情報を上位装置20へ出力する。
【0024】
上位装置20は、例えば、不図示の制御部、記憶部、および入出力部を含んで構成される情報処理装置にて実現されてよい。制御部は、CPU、MPU、DSP、ECU(Electronic Control Unit)、または専用回路などから構成されてよい。記憶部は、HDD、ROMやRAM等の揮発性および不揮発性の記憶媒体により構成され、制御部からの指示により各種情報の入出力が可能である。入出力部は、各種インターフェースから構成されてよく、少なくとも、制御装置200と通信可能に接続される。
【0025】
[密封空間における圧力の変化]
図2図3は、本実施形態に係る電動アクチュエータ10内に構成される密封空間109内の圧力の変化およびその影響を説明するための図である。図2(a)は、駆動部100において、出力軸105が最も縮んだ状態から伸び方向に動作する場合を示している。このとき、制御装置200が駆動部100による推力を伸び方向の推力P1aとして、上位装置20からの指示を受け付けたとする。図2(a)の状態では、駆動部100の密封空間109は圧縮されており、結果として、密封空間109の内圧が上昇する。そのため、密封空間109内の内圧による伸び方向の力P2aが、指示に基づいて制御される駆動部100の推力P1aに合成される。その結果、駆動部100により出力される推力はP3a(=P1a+P2a)となる。
【0026】
図2(b)は、駆動部100において、一定程度、出力軸105が伸びた状態から伸び方向に動作する場合を示している。このとき、制御装置200が駆動部100による推力を伸び方向の推力P1bとして、上位装置20からの指示を受け付けたとする。図2(b)の状態では、図2(a)の状態と比較すると、駆動部100の密封空間109は容積が拡大しており、結果として、密封空間109の内圧が低下する。そのため、密封空間109内の内圧による力P2bが、指示に基づいて制御される駆動部100の推力P1bに合成される。ここでは、一例として、内圧による力P2bは、駆動部100の推力の向きとは逆(-)の方向(すなわち、縮み方向)である場合を示している。その結果、駆動部100により出力される推力はP3b(=P1b-P2b)となる。
【0027】
つまり、図2(b)の状態では、図2(a)の状態に比べると密封空間109の容積が大きくなり、これに伴って密封空間109の内圧が変動し、駆動部100にて出力する推力に対する影響度合いが変化することとなる。なお、図2(b)の力P2bに示すように、出力軸105が伸びる方向とは逆方向に力が発生するか否かは、密封空間109の容積や、電動アクチュエータ10の構成などに応じて変化する。
【0028】
図3(a)は、駆動部100において、出力軸105が一定程度、縮んだ状態から縮み方向に動作する場合を示している。このとき、制御装置200が駆動部100による推力を縮み方向の推力P1cとして、上位装置20からの指示を受け付けたとする。図3(a)の状態では、駆動部100の密封空間109は圧縮されており、結果として、密封空間109の内圧が上昇する。そのため、密封空間109内の内圧による力P2cが、指示に基づいて制御される駆動部100の推力P1cに合成される。ここでは、一例として、内圧による力P2cは、駆動部100の推力の向きとは逆(-)の方向(すなわち、伸び方向)である場合を示している。その結果、駆動部100により出力される推力はP3c(=P1c-P2c)となる。
【0029】
図3(b)は、駆動部100において、一定程度、出力軸105が伸びた状態から縮み動作する場合を示している。このとき、制御装置200が駆動部100による推力を縮み方向の推力P1dとして、上位装置20からの指示を受け付けたとする。図3(b)の状態では、図3(a)の状態と比較すると、駆動部100の密封空間109は容積が拡大しており、結果として、密封空間109の内圧が低下する。そのため、密封空間109内の内圧による縮み方向の力P2dが、指示に基づいて制御される駆動部100の推力P1dに合成される。その結果、駆動部100により出力される推力はP3d(=P1d+P2d)となる。
【0030】
つまり、図3(b)の状態では、図3(a)の状態に比べると密封空間109の容積が大きくなり、これに伴って密封空間109の内圧が変動し、駆動部100にて出力する推力に対する影響度合いが変化することとなる。なお、図3(b)の力P2dに示すように、出力軸105が縮み方向と同じ方向に力が発生するか否かは、密封空間109の容積や、電動アクチュエータ10の構成などに応じて変化する。
【0031】
図4は、駆動部100の出力軸105周りにおける動作を説明するための図である。連結機構107は、直動機構108に沿って密封空間109内にて、図4に示す移動可能範囲にて移動が可能なように構成される。図4に示す縮み方向に連結機構107が移動した場合、密封空間109の容積は縮小する。一方、伸び方向に連結機構107が移動した場合、密封空間109の容積は拡大する。ここでは、圧力センサ106を省略している。圧力センサ106の配置等に応じて移動可能範囲は変動し得る。
【0032】
図4において、連結機構107の移動方向において、移動可能範囲の中心を基準位置Pとする。また、連結機構107の移動方向において、連結機構107の中央を中央位置Pとする。そして、基準位置Pと中央位置Pとの距離をストローク距離(=P-P)とする。本例では、中央位置Pが基準位置Pより縮小方向側に位置する場合、ストローク距離はマイナスの値を示し、中央位置Pが基準位置Pより拡大方向側に位置する場合、ストローク距離はプラスの値を示す。なお、ストローク距離を算出する方法は、これに限定するものではない。例えば、基準位置Pは移動可能範囲の端部に設定してもよいし、中央位置Pcに代えて連結機構107の端部を用いてもよい。
【0033】
図5は、本実施形態に係る駆動部100の密封空間109の容積、ストローク距離、および内圧の関係を説明するための図である。図5(a)において、横軸はストローク距離を示し、縦軸は密封空間109の容積を示す。出力軸105が最も縮んだ状態であるストローク距離Lminでは、密封空間109の容積は最小の容積Vminとなる。また、出力軸105が最も伸びた状態であるストローク距離Lmaxでは、密封空間109の容積は最大の容積Vmaxとなる。図5に示すように、ストローク距離が大きくなるに従って、密封空間109の容積も増加する。ストローク距離が0の場合、すなわち、図4に示す中央位置Pと基準位置Pとが一致する場合の容積を容積Vとする。
【0034】
図5(b)において、横軸は密封空間109の容積を示し、縦軸は密封空間109の内圧を示す。図5(b)は、密封空間109の容積が最大の容積Vmaxの場合、密封空間109の内圧は最小の内圧Pminとなる。また、密封空間109の容積が最小の容積Vminの場合、密封空間109の内圧は最大の内圧Pmaxとなる。図5(b)に示す関係性は、電動アクチュエータ10の構成と、ボイル=シャルルの法則などから導出することができる。
【0035】
図6図7は、駆動部100の密封空間109の内圧による推力への影響と、ストローク距離との関係を説明するための図である。図6において、縦軸は伸び方向時の内圧による推力の変化量(力)を示し、横軸はストローク距離を示す。つまり、図6は、図2を用いて説明した伸び動作時の推力とストローク距離との関係を示す。ストローク距離Lminでは、変化量が最大の変化量ΔFmaxとなる。また、ストローク距離Lmaxでは、変化量が最小の変化量ΔFminとなる。本例では、ストローク距離が0の場合、変化量は0になり、電動アクチュエータ10が出力したい推力に対する影響は生じない。変化量がマイナスの値を示す場合は、図2(b)に示したように、電動アクチュエータ10が出力したい推力の方向に対して、逆方向の力が働く。一方、変化量がプラスの値を示す場合は、図2(a)に示したように、電動アクチュエータ10が出力したい推力の方向と同じ方向の力が働く。
【0036】
図7において、縦軸は縮み方向時の内圧による推力の変化量(力)を示し、横軸はストローク距離を示す。つまり、図7は、図3を用いて説明した縮み動作時の推力とストローク距離との関係を示す。ストローク距離Lminでは、変化量が最小の変化量ΔFminとなる。また、ストローク距離Lmaxでは、変化量が最大の変化量ΔFmaxとなる。本例では、ストローク距離が0の場合、変化量は0になり、電動アクチュエータ10が出力したい推力に対する影響は生じない。変化量がマイナスの値を示す場合は、図3(a)に示したように、電動アクチュエータ10が出力したい推力の方向に対して、逆方向の力が働く。一方、変化量がプラスの値を示す場合は、図3(b)に示したように、電動アクチュエータ10が出力したい推力の方向と同じ方向の力が働く。
【0037】
なお、図5図7に示す各パラメータの関係性は一例であり、これに限定するものではない。例えば、電動アクチュエータ10の構成や周辺温度などによって、図5図7に示す直線の傾きや曲線の曲率などは変動し得る。
【0038】
[処理フロー]
図8は、本実施形態に係る電動アクチュエータ10の制御処理のフローチャートである。本処理は、制御装置200により実行され、例えば、図1に示した各部位を実現するためのプログラムを記憶装置(不図示)から読み出して実行することにより実現される。
【0039】
S801にて、制御装置200は、上位装置20から電動アクチュエータ10に対する動作指示を受け付ける。ここでの動作指示は、例えば、電動アクチュエータ10にて出力したい推力値であってもよいし、出力軸105の移動量であってもよい。
【0040】
S802にて、制御装置200は、S801にて受け付けた動作指示に基づいて、モータ102を動作させるための電流を出力する。ここでの電流は、モータ制動部201から指示される信号に基づいて、電源203からの電力をインバータ202にて変換した上でモータ102に供給される。
【0041】
S803にて、制御装置200は、モータ102に供給されている電流の値を電流センサ206により取得する。
【0042】
S804にて、制御装置200は、S803にて取得した電流の値からモータ102によるトルクを導出する。ここでの導出方法は特に限定するものでは無いが、例えば、電流とトルクを対応付けたテーブル(不図示)を参照して導出してもよいし、予め定義された算出式を用いて導出してもよい。
【0043】
S805にて、制御装置200は、圧力センサ106により密封空間109の内圧を取得する。
【0044】
S806にて、制御装置200は、S804にて導出したトルクと、S805にて取得した内圧とに基づいて、推力導出部204により出力軸105の推力を導出する。まず、推力導出部204は、S804にて導出したトルクから推力を導出する。ここでは、トルクと推力とを対応付けたテーブル(不図示)を参照して導出してもよいし、予め定義された算出式を用いて導出してもよい。次に、推力導出部204は、図6図7で説明したような関係性に基づいて、S805にて取得した内圧から推力に対する変化量ΔFを導出する。そして、推力導出部204は、トルクに基づく推力と変化量とを合成することで、出力軸105による推力を導出する。そして、本処理フローを終了する。
【0045】
なお、制御装置200は、図8のS806にて導出した推力に基づいて、モータ102の回転動作を調整するような構成であってもよい。また、導出した推力の情報などを、状態出力部208を介して上位装置20へ出力するような構成であってもよい。
【0046】
例えば、動作指示に基づく推力と、内圧の変化の影響により出力される推力とに差分が生じる場合に、その差分を相殺するようにモータ102のトルクが調整される。このようなフィードバック機能により、密封空間の内圧の変化に拘わらず、動作指示に基づく推力と、実際に出力される推力とが等しくなるように制御される。言い換えると、密封空間を設けたことによる電動アクチュエータ10の動作を阻害する負荷が生じる場合でも、その影響を低減させ、動作指示に基づく推力を出力することが可能となる。
【0047】
以上、本実施形態により、電動アクチュエータの動作に伴う内部の圧力変化を考慮して、内圧による負荷の影響を抑制した電動アクチュエータの出力が可能となる。
【0048】
<第2の実施形態>
以下、本願発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、電動アクチュエータ10の密封空間109の状態を検出するために圧力センサ106を用いていた。本実施形態では、圧力センサ106に代えて、温度センサ901を用いる構成について説明する。なお、第1の実施形態と重複する箇所については説明を省略し、差分に着目して説明を行う。
【0049】
[装置構成]
図9は、本実施形態に係る装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。図1に示した構成との差異として、電動アクチュエータ10の密封空間109内に、圧力センサ106に代えて温度センサ901が備えられる。また、制御装置200は更に、圧力導出部902を備える。
【0050】
温度センサ901は、密封空間109内の温度を検出し、制御装置200に送信する。圧力導出部902は、密封空間109の温度および密封空間の容積に基づいて圧力を導出する。導出方法の例については後述する。
【0051】
[処理フロー]
図10は、本実施形態に係る電動アクチュエータ10の制御処理のフローチャートである。本処理は、制御装置200により実行され、例えば、図9に示した各部位を実現するためのプログラムを記憶装置(不図示)から読み出して実行することにより実現される。
【0052】
S1001にて、制御装置200は、上位装置20から電動アクチュエータ10の動作指示を受け付ける。ここでの動作指示は、例えば、電動アクチュエータ10にて出力したい推力値であってもよいし、出力軸105の移動量であってもよい。
【0053】
S1002にて、制御装置200は、S1001にて受け付けた動作指示に基づいて、モータ102を動作させるための電流を出力する。ここでの電流は、モータ制動部201から指示される信号に基づいて、電源203からの電力をインバータ202にて変換した上でモータ102に供給される。
【0054】
S1003にて、制御装置200は、モータ102に供給されている電流の値を電流センサ206により取得する。
【0055】
S1004にて、制御装置200は、S1003にて取得した電流の値からモータ102によるトルクを導出する。ここでの導出方法は特に限定するものでは無いが、例えば、電流とトルクを対応付けたテーブル(不図示)を参照して導出してもよいし、予め定義された算出式を用いて導出してもよい。
【0056】
S1005にて、制御装置200は、温度センサ901により密封空間109内の温度を取得する。
【0057】
S1006にて、制御装置200は、回転位置センサ103によりモータ102の回転動作に伴う位置情報を取得する。
【0058】
S1007にて、制御装置200は、S1006にて取得した位置情報に基づき、その時点の密封空間109の容積を導出する。上述したように、回転位置センサ103から取得された位置情報に基づいて、モータ102の回転角度や回転数を導出することができるため、これを用いて出力軸105の伸縮状態(すなわち、図4に示したストローク距離)を導出することができる。そして、図5(a)にて示したように、ストローク距離と密封空間109の容積との関係から、容積を特定する。図5に示すような関係性を示す情報は予め規定され、記憶部(不図示)に保持される。
【0059】
S1008にて、制御装置200は、S1007にて導出した密封空間109の容積と、S1005にて取得した温度とに基づいて、密封空間109内の圧力を導出する。ここでの導出方法は特に限定するものでは無いが、例えば、温度および容積と、圧力との対応関係を規定したテーブル(不図示)を用いて導出してもよいし、ボイル=シャルルの法則等に基づいて予め規定された算出式を用いて導出してもよい。
【0060】
S1009にて、制御装置200は、S1004にて導出したトルクと、S1008にて導出した内圧とに基づいて、推力導出部204により出力軸105の推力を導出する。まず、推力導出部204は、S1004にて導出したトルクから推力を導出する。ここでは、トルクと推力とを対応付けたテーブル(不図示)を参照して導出してもよいし、予め定義された算出式を用いて導出してもよい。次に、推力導出部204は、図6図7で説明したような関係性に基づいて、S1008にて導出した内圧から推力に対する変化量を導出する。そして、推力導出部204は、トルクに基づく推力と変化量とを合成することで、出力軸105による推力を導出する。そして、本処理フローを終了する。
【0061】
その後、動作指示に基づく推力と、内圧の変化の影響により出力される推力とに差分が生じる場合に、その差分を相殺するようにモータ102のトルクが調整される。このようなフィードバック機能により、密封空間の内圧の変化に拘わらず、動作指示に基づく推力と、実際に出力される推力とが等しくなるように制御される。言い換えると、密封空間を設けたことによる電動アクチュエータ10の動作を阻害する負荷が生じる場合でも、その影響を低減させ、動作指示に基づく推力を出力することが可能となる。
【0062】
以上、本実施形態により、圧力センサに代えて温度センサを用いた場合でも、電動アクチュエータの動作に伴う内部の圧力変化を考慮して、内圧による負荷の影響を抑制した電動アクチュエータの出力が可能となる。
【0063】
<第3の実施形態>
以下、本願発明の第3の実施形態について説明する。第2の実施形態では、温度センサ901を密封空間109内部に設けていた。本実施形態では、温度センサ901を密封空間109の外部に設ける形態について説明する。なお、第2の実施形態と重複する箇所については説明を省略し、差分に着目して説明を行う。
【0064】
[装置構成]
図11は、本実施形態に係る装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。図9に示した構成との差異として、温度センサ901が密封空間109の外部に設けられている。温度センサ901が密封空間109の外部に設けられていることに伴い、本実施形態に係る圧力導出部902は、密封空間109内の圧力を導出する際にハウジング101の熱伝導率などを考慮する。処理フローは、第2の実施形態にて示した図10と同等である。
【0065】
なお、図11では、温度センサ901をハウジング101の外周部に設置した構成を示したが、これに限定するものではない。例えば、出力軸105側の外周部に設置されてもよい。または、温度センサ901は、赤外線センサやサーモグラフィなどにより構成され、ハウジング101から離間して設置されてもよい。
【0066】
本実施形態により、第2の実施形態と同様に温度センサ901を用いて、電動アクチュエータの動作に伴う内部の圧力変化を考慮して、内圧による負荷の影響を抑制した電動アクチュエータの出力が可能となる。また、本実施形態では、出力軸105周辺に温度センサ901を設置するための空間を設ける必要が無いため、設計の自由度を向上させることができる。
【0067】
<その他の実施形態>
また、本願発明において、上述した1以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0068】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0069】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0070】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 電動アクチュエータであって、
ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間内の圧力を検出する圧力センサと、
前記モータの動作を制御する制御部と、
前記圧力センサにて検出された圧力と、前記制御部による前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出する導出部と
を備える。
この構成によれば、電動アクチュエータの動作に伴う内部の圧力変化を考慮して、内圧による負荷の影響を抑制した電動アクチュエータの出力を可能とすることが可能となる。特に、内圧の変化に影響されて出力される実際の推力を導出することができるため、この導出された値に基づいて、更に電動アクチュエータの制御を行うことが可能となる。
【0071】
(2) 前記制御部は、動作指示に基づく前記出力軸による推力と、前記導出部にて導出した推力とが等しくなるように、前記モータの制御量を調整することを特徴とする(1)に記載の電動アクチュエータ。
この構成により、密封空間を設けたことによる電動アクチュエータの動作を阻害する負荷が生じる場合でも、その影響を低減させ、動作指示に基づく推力を出力するように制御ことが可能となる。
【0072】
(3) 前記密封空間内の圧力は、前記出力軸が直線移動することに応じて変動することを特徴とする(1)または(2)に記載の電動アクチュエータ。
この構成によれば、電動アクチュエータの出力軸の直線動作に伴う密封空間の圧力変化を考慮して、電動アクチュエータの実際の出力を導出することが可能となる。
【0073】
(4) ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間の温度を検出する温度センサと、
前記モータの動作を制御する制御部と、
前記温度センサにて検出された温度と、前記制御部による前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出する導出部と
を備えることを特徴とする電動アクチュエータ。
この構成によれば、電動アクチュエータの動作に伴う内部の温度変化と容積の変化に伴う圧力変化を考慮して、内圧による負荷の影響を抑制した電動アクチュエータの出力が可能となる。特に、内圧の変化に影響されて出力される実際の推力を導出することができるため、この導出された値に基づいて、更に電動アクチュエータの制御を行うことが可能となる。
【0074】
(5) 前記制御部は、
前記温度センサにて検出された温度と、前記モータの制御量から導出される前記密封空間の容積とに基づいて、前記密封空間内の圧力を導出し、
当該圧力と前記制御部による前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出することを特徴とする(4)に記載の電動アクチュエータ。
この構成によれば、電動アクチュエータの動作に伴う内部の温度変化と容積の変化に伴う圧力変化を考慮して、電動アクチュエータの実際の出力を導出することが可能となる。
【0075】
(6) 前記制御部は、動作指示に基づく前記出力軸による推力と、前記導出部にて導出した推力とが等しくなるように、前記モータの制御量を調整することを特徴とする(5)に記載の電動アクチュエータ。
この構成により、密封空間を設けたことによる電動アクチュエータの動作を阻害する負荷が生じる場合でも、その影響を低減させ、動作指示に基づく推力を出力するように制御ことが可能となる。
【0076】
(7) 前記温度センサは、前記密封空間内に設置されることを特徴とする(4)~(6)のいずれかに記載の電動アクチュエータ。
この構成によれば、密封空間内の温度を直接測定し、その温度に基づいて精度良く電動アクチュエータの実際の推力を導出することが可能となる。
【0077】
(8) 前記温度センサは、前記密封空間を構成する前記ハウジングまたは前記出力軸の外周部に接触して設置されることを特徴とする(4)~(6)のいずれかに記載の電動アクチュエータ。
この構成によれば、出力軸周りの設計の自由度を向上させつつ、電動アクチュエータの実際の推力を導出することが可能となる。
【0078】
(9) 前記温度センサは、前記密封空間を構成する前記ハウジングまたは前記出力軸に非接触にて温度を検出するように構成されることを特徴とする(4)~(6)のいずれかに記載の電動アクチュエータ。
この構成によれば、出力軸周りの設計の自由度を向上させつつ、電動アクチュエータの実際の推力を導出することが可能となる。
【0079】
(10) ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間内の圧力を検出する圧力センサと
を備える電動アクチュエータの推力導出方法であって、
前記圧力センサにて検出された圧力と、前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出する。
この構成によれば、電動アクチュエータの動作に伴う内部の圧力変化を考慮して、内圧による負荷の影響を抑制した電動アクチュエータの出力が可能となる。特に、内圧の変化に影響されて出力される実際の推力を導出することができるため、この導出された値に基づいて、更に電動アクチュエータの制御を行うことが可能となる。
【0080】
(11) ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間の温度を検出する温度センサと
を備える電動アクチュエータの推力導出方法であって、
前記温度センサにて検出された温度と、前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出することを特徴とする電動アクチュエータの推力導出方法。
この構成によれば、電動アクチュエータの動作に伴う内部の温度変化と容積の変化に伴う圧力変化を考慮して、内圧による負荷の影響を抑制した電動アクチュエータの出力が可能となる。特に、内圧の変化に影響されて出力される実際の推力を導出することができるため、この導出された値に基づいて、更に電動アクチュエータの制御を行うことが可能となる。
【0081】
(12) ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間内の圧力を検出する圧力センサと
を備える電動アクチュエータの制御装置に、
前記圧力センサにて検出された圧力と、前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出させるためのプログラム。
この構成によれば、電動アクチュエータの動作に伴う内部の圧力変化を考慮して、内圧による負荷の影響を抑制した電動アクチュエータの出力ことが可能となる。特に、内圧の変化に影響されて出力される実際の推力を導出することができるため、この導出された値に基づいて、更に電動アクチュエータの制御を行うことが可能となる。
【0082】
(13) ハウジングと、
モータと、
前記モータによる回転力が入力されるねじ軸と、
前記回転力により前記ねじ軸が回転することに伴って前記ねじ軸に沿って直線移動するように構成された連結機構と、
前記連結機構に連結され、前記連結機構とともに直線移動して推力を出力する中空状の出力軸と、
前記出力軸と前記ハウジングとから構成され、前記連結機構が配された密封空間の温度を検出する温度センサと
を備える電動アクチュエータの制御装置に、
前記温度センサにて検出された温度と、前記モータの制御量とに基づいて、前記出力軸による推力を導出させるためのプログラム。
この構成によれば、電動アクチュエータの動作に伴う内部の温度変化と容積の変化に伴う圧力変化を考慮して、内圧による負荷の影響を抑制した電動アクチュエータの出力が可能となる。特に、内圧の変化に影響されて出力される実際の推力を導出することができるため、この導出された値に基づいて、更に電動アクチュエータの制御を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0083】
10…電動アクチュエータ
20…上位装置
100…駆動部
101…ハウジング
102…モータ
103…回転位置センサ
104…減速機
105…出力軸
106…圧力センサ
107…連結機構
108…直動機構
109…密封空間
200…制御装置
201…モータ制動部
202…インバータ
203…電源
204…推力導出部
205…モータ角度導出部
206…電流センサ
207…状態監視部
208…状態出力部
901…温度センサ
902…圧力導出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11