(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両用音出力装置及び車両用音伝搬装置
(51)【国際特許分類】
G10K 11/02 20060101AFI20241210BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20241210BHJP
G10K 11/24 20060101ALI20241210BHJP
G10K 11/22 20060101ALI20241210BHJP
B60Q 5/00 20060101ALI20241210BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G10K11/02 140
H04R1/02 102B
G10K11/24
G10K11/22 100
B60Q5/00 680D
B60R11/02 S
(21)【出願番号】P 2021157154
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 光恵
(72)【発明者】
【氏名】石井 琢己
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-228612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/02
H04R 1/02
G10K 11/24
G10K 11/22
B60Q 5/00
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の音を発する発音部と、
前記発音部よりも車両外方側に
前記発音部から離れて配置され、互いに車両内外方向に離れた内壁部及び外壁部からなる二重壁と、
前記内壁部と前記外壁部との間の密閉された空間に形成され、前記音が透過する中間層と、
を備える、車両用音出力装置。
【請求項2】
前記発音部側から前記内壁部の車両内面側まで筒状に延び、前記音を前記二重壁に導く誘導路を形成する誘導壁を備える、請求項1に記載された車両用音出力装置。
【請求項3】
前記誘導壁は、一方の筒端を閉じる底壁部と、他方の筒端を開口する開口部と、を有し、
前記発音部は、前記誘導壁の前記底壁部側に、前記誘導壁の前記開口部側に向けて前記音を発するように取り付けられ、
前記誘導路は、前記内壁部と前記誘導壁とにより密閉されている、請求項2に記載された車両用音出力装置。
【請求項4】
前記中間層は、前記内壁部から前記外壁部にかけての前記音の共鳴透過現象が生じる厚み、密度、又は体積を有している、請求項1乃至3の何れか一項に記載された車両用音出力装置。
【請求項5】
前記中間層は、空気層である、請求項1乃至4の何れか一項に記載された車両用音出力装置。
【請求項6】
前記所定周波数は、互いに異なる複数の周波数を含み、
前記二重壁と前記中間層とは、複数セット設けられており、
各前記中間層はそれぞれ、前記複数の周波数のうち対応する周波数の前記音を透過する、請求項1乃至5の何れか一項に記載された車両用音出力装置。
【請求項7】
前記所定周波数は、270Hz~600Hzの間で定められた基本周波数を含む、請求項1乃至6の何れか一項に記載された車両用音出力装置。
【請求項8】
所定周波数の音を発する発音部よりも車両外方側に
前記発音部から離れて配置され、互いに車両内外方向に離れた内壁部及び外壁部からなる二重壁と、
前記内壁部と前記外壁部との間の密閉された空間に形成され、前記音が透過する中間層と、
を備える、車両用音伝搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用音出力装置及び車両用音伝搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などに搭載される車両用音出力装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載の車両用音出力装置は、ホーンやスピーカ等の発音部を備え、発音部の発した音を車両周囲の人に聞かせる装置である。発音部は、車両の外装パネルとしてのラジエータグリルや前部バンパなどよりも車両内方側(すなわち、車両後方側)に配置されている。
【0003】
上記の音出力装置において、発音部の発した音は、外装パネルやカバー部品に設けられた開口部を通して車両外方に放出される。特に発音部が外装パネル等の開口部近傍の車両内方側に配置されていれば、発音部の発した音がその開口部を通して車両外方へ放出され易くなるので、小さい出力でも広範囲に亘って音が伝搬され易くなる。この点、上記の如く外装パネル等に開口部が設けられていれば、発音部の発する音を車両外方の人に聞かせ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年は、車両のEV化の進展や燃費向上の要請に伴って外装パネル等の開口部が縮小傾向にある。このように外装パネル等の開口部が縮小した或いは無くなった構造では、大きな開口部がある構造に比べて、発音部の発した音が外装パネル等の裏面で反射し易くなり、その開口部を車両内方側から車両外方側へ透過する音が減少するので、発音部の発した音を車両外方の人に聞かせ難くなるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、車両内方側に配置された発音部の発する音をパネル開口部を通過させることなく車両内方側から車両外方側へ適切に伝搬させることが可能な車両用音出力装置及び車両用音伝搬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、所定周波数の音を発する発音部と、前記発音部よりも車両外方側に配置され、互いに車両内外方向に離れた内壁部及び外壁部からなる二重壁と、前記内壁部と前記外壁部との間の密閉された空間に形成され、前記音が透過する中間層と、を備える、車両用音出力装置である。
【0008】
この構成によれば、発音部の発する所定周波数の音を、二重壁の内壁部から中間層を介して外壁部にかけて共鳴透過させて、外壁部よりも車両外方に伝搬させることができる。従って、発音部の発する音を、壁に設けたパネル開口部を通過させることなく車両内方側から車両外方側へ適切に伝搬させることができる。
【0009】
本発明の一態様は、所定周波数の音を発する発音部よりも車両外方側に配置され、互いに車両内外方向に離れた内壁部及び外壁部からなる二重壁と、前記内壁部と前記外壁部との間の密閉された空間に形成され、前記音が透過する中間層と、を備える、車両用音伝搬装置である。
【0010】
この構成によれば、発音部の発する所定周波数の音を、二重壁の内壁部から中間層を介して外壁部にかけて共鳴透過させて、外壁部よりも車両外方に伝搬させることができる。従って、発音部の発する音を、壁に設けたパネル開口部を通過させることなく車両内方側から車両外方側へ適切に伝搬させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る車両用音出力装置及び車両用音伝搬装置が搭載される車両の斜視図である。
【
図2】第一実施形態の車両用音伝搬装置を含む車両用音出力装置の構成図である。
【
図3】音の周波数と透過損失との関係を二重壁(実線で示す)と一重壁(破線で示す)とで比較した図である。
【
図4】第二実施形態の車両用音伝搬装置を含む車両用音出力装置の構成図である。
【
図5】第三実施形態の車両用音伝搬装置を含む車両用音出力装置の構成図である。
【
図6】第一変形形態に係る車両用音伝搬装置を含む車両用音出力装置の構成図である。
【
図7】第二変形形態に係る車両用音伝搬装置を含む車両用音出力装置の構成図である。
【
図8】
図7に示す車両用音伝搬装置を含む車両用音出力装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両用音出力装置及び車両用音伝搬装置の具体的な実施形態について説明する。
【0013】
[第一実施形態]
本実施形態の車両用音出力装置1は、車両3に搭載され、発音部の発生した音を車両周囲の人に聞かせる装置である。また、車両用音伝搬装置2は、発音部の発生した音を車両周囲の人に向けて伝搬させる装置である。尚、車両用音出力装置1が搭載される車両3は、外装パネルにエンジンルーム内に空気を取り入れるための開口部が設けられた車両であってもよいが、特に、外装パネルに上記の開口部が設けられない或いは上記の開口部が設けられていてもその開口面積が比較的小さい電気自動車などであってよい(
図1参照)。
【0014】
車両用音出力装置1は、
図2に示す如く、発音部10と、二重壁20と、中間層30と、を備えている。また、車両用音伝搬装置2は、車両用音出力装置1から発音部10が除かれた装置のことであって、二重壁20と、中間層30と、を備えている。
【0015】
発音部10は、車両外側に所定周波数の音を発する装置である。発音部10は、自車両3周囲の人に向けて警告音を発するホーン、自車両3に接近した人にその接近を通報する接近通報装置、人の声や楽器音などを音として発するスピーカなどである。発音部10は、車両3の外装パネルよりも内側に配置されている。発音部10は、法規などに合致した音圧レベルの音を発することが可能である。また、発音部10は、予め定められた所定周波数の音を発する。
【0016】
発音部10が発する音の所定周波数は、可聴音領域である例えば20Hz~20000Hzの間の周波数である。尚、発音部10が発する音の所定周波数には、発音部10が発する音の基本となる周波数(基本周波数)だけでなく、その基本周波数に対して二以上の正数倍となる周波数も含まれる。発音部10がホーンである場合は、音の基本周波数は、例えば270Hz~600Hzの間で定められており、370Hz、400Hz、480Hz、500Hzなどである。また、発音部10が接近通報音を発する場合は、音の基本周波数は、例えば20Hz~5000Hzの間で定められている。
【0017】
発音部10は、筐体11に取り付けられている。筐体11は、発音部10を収容可能に箱状(例えば直方体形状)に形成されている。筐体11は、車両3に、発音部10の発する音が車両外方に向けて進行し易くなるように配置されている。発音部10は、筐体11が車両3に配置された状態で、発する音が車両外方に向けて進行し易くなるように指向されている。
【0018】
二重壁20は、発音部10を車両外側から隔てる壁である。二重壁20は、発音部10よりも車両外方側に配置されている。二重壁20は、内壁部21及び外壁部22からなる。内壁部21と外壁部22とは、互いに車両内外方向に離れて配置されている。すなわち、内壁部21は、外壁部22よりも発音部10に近い側に配置されており、外壁部22は、内壁部21よりも発音部10から遠い側に配置されている。内壁部21と外壁部22との間には、中空空間23が形成されている。二重壁20は、内壁部21と外壁部22との共鳴により発音部10の音を車両内方側から車両外方側へ透過させる。
【0019】
外壁部22は、車両3の最外殻であって車外に臨む外装パネル又はカバー部品である。外壁部22は、開口部が無い又はほとんど無い板状に形成されている。外壁部22は、例えば、グリル、バンパ、フェンダ、ボンネット、ヘッドライトカバー、ピラー、ルーフ、サイドミラーカバーなどである。外壁部22は、樹脂材料や金属材料により形成されている。外壁部22は、車両3に設けられたフレームや外装パネル,カバーなどの構造物3aに取り付け固定されている。外壁部22は、構造物3aに設けられた開口4を塞ぐように配置されている。
【0020】
内壁部21は、板状部材である。内壁部21は、外壁部22よりも車両内方側に配置されており、外壁部22との間に後に詳述する中間層30を挟んで外壁部22に対向している。内壁部21は、発音部10の発した所定周波数の音により振動することができる。この内壁部21の音による振動は、中間層30をバネとして外壁部22に伝達される。外壁部22は、内壁部21の振動に共鳴して振動することができる。
【0021】
内壁部21は、ブラケット40に設けられている。ブラケット40は、外壁部22の裏面(内面)に取り付けられる。ブラケット40は、樹脂材料や金属材料により形成されている。ブラケット40の材料は、外壁部22の材料と同じであってよい。内壁部21は、発音部10の音により振動可能な厚さ及び材質により形成されている。内壁部21の厚さは、例えば2mm~5mmである。また、外壁部22は、内壁部21の振動により共鳴して振動可能な厚さ及び材質により形成されている。外壁部22の厚さは、内壁部21の厚さと同じであってよく、例えば2mm~5mmである。尚、本実施形態では、内壁部21が、ブラケット40の一部として後述の囲覆部42に一体化されているが、ブラケット40とは別で設けられて、ブラケット40としての囲覆部42に取り付けられて一体化されていてもよい。
【0022】
ブラケット40は、内壁部21と、取付部41と、囲覆部42と、を有している。取付部41は、ブラケット40を外壁部22の裏面に取り付けるためのボルトやビスなどの取付具50が貫通する貫通孔である。取付部41は、板状の内壁部21の周縁部に複数箇所設けられている。
【0023】
外壁部22は、取付具50が固定される固定部22aを有している。固定部22aは、外壁部22の裏面側に形成されている。固定部22aは、外壁部22の裏面から車両内方に突出した突出部22bに形成された取付孔である。ブラケット40は、取付具50が取付部41を貫通して外壁部22の固定部22aに固定されることにより、外壁部22に取り付けられる。
【0024】
突出部22bは、内壁部21の周縁に沿うように環状に形成されている。ブラケット40が外壁部22に取り付けられた状態では、内壁部21と外壁部22との間の中空空間23は、全周に亘って環状の突出部22bにより囲まれる。すなわち、中空空間23は、内壁部21の表面と外壁部22の裏面と突出部22bの内側面とにより密閉される。
【0025】
囲覆部42は、上記の筐体11(特に、発音部10)の全周を囲う部位である。囲覆部42は、発音部10側から内壁部21の車両内面側まで筒状に延びている。囲覆部42は、発音部10側の筒端が閉じる底壁部と、内壁部21側の筒端を開口する開口部と、を有している。筐体11は、その全周が囲覆部42の筒壁により囲まれるように囲覆部42の車両内端の底部に取り付け固定される。
【0026】
筐体11は、外周面から径方向外方に向けて延びるフランジ部11aを有している。フランジ部11aは、取付部11bを有している。取付部11bは、筐体11を囲覆部42に取り付けるためのボルトやビスなどの取付具51が貫通する貫通孔である。フランジ部11a及び取付部11bは、筐体11の全周において複数箇所設けられている。
【0027】
囲覆部42は、取付具51が固定される固定部42aを有している。固定部42aは、囲覆部42の表面側に形成されている。固定部42aは、囲覆部42の表面から車両外方に突出した突出部42bに形成された取付孔である。筐体11は、取付具51が取付部11bを貫通して囲覆部42の固定部42aに固定されることにより、囲覆部42に取り付けられる。固定部42a及び突出部42bは、筐体11のフランジ部11a及び取付部11bに対応して、囲覆部42に複数箇所設けられている。
【0028】
囲覆部42は、内壁部21に取り付け固定されて一体化されている。囲覆部42は、筐体11が取り付け固定された状態で、内壁部21に着脱可能に係合している。囲覆部42に筐体11が取り付け固定された状態で囲覆部42が内壁部21に取り付けられると、筐体11ひいては筐体11に取り付けられている発音部10が、内壁部21と囲覆部42とにより密閉された空間49内に配置されることとなる。この密閉された空間49は、発音部10の発する音を二重壁20に導く誘導路となる。
【0029】
囲覆部42及び内壁部21は、互いに係合する係合部43,44を有している。囲覆部42の係合部43は、囲覆部42を内壁部21の係合部44に係合するための係合突起である。係合部43は、囲覆部42の筒側壁にその外周面から径方向外方へ突出するように形成されている。内壁部21の係合部44は、係合部43が係合する係合孔である。係合部44は、内壁部21の裏面側に形成されている。係合部44は、内壁部21の裏面から車両内方に突出した突出部45に径方向に貫通するように形成されている。囲覆部42の係合部43及び内壁部21の係合部44は、互いに対応して複数箇所設けられている。
【0030】
尚、ブラケット40を外壁部22に取り付ける方法として、ボルトやビスなどの取付具50が用いられる。しかし、ブラケット40が外壁部22に密着して中空空間23が密閉されるのであれば、上記の取り付け方法に代えて、両面テープ止めや熱溶着或いは超音波溶着などが用いられてもよい。また、筐体11をブラケット40の囲覆部42に取り付ける方法として、ボルトやビスなどの取付具51が用いられるが、この取り付け方法に代えて、両面テープ止めや熱溶着或いは超音波溶着などが用いられてもよい。更に、ブラケット40の内壁部21に囲覆部42を取り付ける方法として、互いに係合する係合部43,44が用いられるが、この取り付け方法に代えて、着脱可能なねじ止めなどが用いられてもよい。
【0031】
中間層30は、二重壁20における内壁部21と外壁部22との間の空気層である。すなわち、中間層30は、中空空間23自体である。中間層30の厚み(すなわち、車両内外方向の幅)又は体積は、発音部10の発する音の周波数に合わせて、その音を内壁部21から外壁部22にかけて透過させる共鳴透過現象(
図3参照)が生じるように設定されている。具体的には、中間層30は、下記の式(1)に従って定められている。
【0032】
【0033】
但し、frmdは発音部10の発する音の周波数[Hz]であり、dは中間層30の厚み[mm]であり、ρは中間層30に封入されるガスの密度[kg/m3]であり、cは中間層30内のガスの音速[m/s]であり、m1は内壁部21の面密度[kg/m2]であり、m2は外壁部22の面密度[kg/m2]である。尚、中間層30は空気層であるので、ρは1.2[kg/m3]であり、cは343.7[m/s]である。
【0034】
次に、車両用音伝搬装置2を含む車両用音出力装置1の動作について説明する。
発音部10は、所定周波数の音を発する。発音部10が発した所定周波数の音は、ブラケット40内の空間49を伝搬して内壁部21に達する。内壁部21に達した音は、内壁部21から中間層30を介して外壁部22にかけて共鳴透過して、外壁部22よりも車両外方に伝搬される。このため、車両3周囲の人に、車両3の発音部10の発した音を聞かせ易くすることができ、発音部10の発する音を用いて注意喚起することができる。
【0035】
上記の車両用音出力装置1及び車両用音伝搬装置2の構成においては、車両内方側に配置された発音部10の発する音が二重壁20を共鳴透過して車両外方側へ伝搬される。この際、二重壁20での遮音性能は、大きく低下する。従って、発音部10の発する所定周波数の音を、音を通し易くする開口部を通過させることなく車両内方側から車両外方側へ適切に伝搬させることができる。
【0036】
このため、車両3の外装パネルやカバー部品(すなわち、外壁部22)に開口部が設けられていない或いはその開口部は設けられていてもその開口面積が小さい電気自動車などにおいても、発音部10を車両内方側に配置してその発音部10が発した所定周波数の音を車両3周囲の人に聞かせることができるので、音を通し易くする開口部を確保する必要が無く、音の伝搬と発音部10の搭載自由度とを両立させることができる。
【0037】
また、発音部10は、囲覆部42により全周に亘って囲まれており、内壁部21と囲覆部42とにより密閉された空間49内に配置されている。この構造においては、発音部10の発した音を空間49に閉じ込めてその空間49から漏れ難くすることができ、その音の大部分を内壁部21に到達させることができる。このため、発音部10の発する音を効率的に二重壁20に伝搬させて、二重壁20及び中間層30での共鳴透過現象を生じさせることができる。
【0038】
また、発音部10は、筐体11に取り付けられており、この筐体11は、二重壁20を構成する外壁部22に取り付けられたブラケット40に取り付け固定されている。すなわち、発音部10は、二重壁20の裏面に固定されている。この構成においては、発音部10を二重壁20に近接させて配置することができる。
【0039】
[第二実施形態]
上記の第一実施形態の車両用音出力装置1では、ブラケット40の内壁部21と囲覆部42とが互いに係合して一体化され、発音部10がそのブラケット40の囲覆部42に取り付けられた状態で内壁部21よりも車両内方側においてその内壁部21に対向するように配置される。また、発音部10が筐体11に収容されて取り付けられており、ひいては、発音部10が二重壁20側に固定されている。
【0040】
これに対して、本実施形態の車両用音出力装置100においては、
図4に示す如く、発音部10が、内壁部21よりも車両内方側に配置されるが、その内壁部21から比較的遠く離れて配置されており、その発音部10と内壁部21との間に発音部10の発する音を二重壁20に導く誘導路が形成される。また、発音部10が、二重壁20側ではなく、車両3の内側にある構造物3bに固定されている。尚、
図4において、
図2に示す構成部品と同一の部品については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0041】
車両用音出力装置100は、誘導壁110を備えている。誘導壁110は、発音部10の発する所定周波数の音を二重壁20に導く誘導路111を形成するガイド壁である。誘導壁110は、発音部10側から内壁部21の車両内面側まで筒状に延びている。
図4に示す如く発音部10が内壁部21に対向していない場合、誘導壁110及び誘導路111は、発音部10から内壁部21まで湾曲して形成される。
【0042】
誘導壁110は、内壁部21の裏面に取り付けられ、内壁部21に一体化されている。誘導壁110は、爪嵌合やボルト締結などにより内壁部21に取り付けられる。また、発音部10は、誘導壁110に取り付けられることなく、ボルト締結などにより取付ブラケット120を介して車両3の内側の構造物3bに取り付けられている。尚、発音部10は、発する音が有効に誘導路111を伝搬するものであれば、
図4に示す如く、誘導壁110の音入口端よりも誘導路111の内側に進入して被るように配置されてもよいし、或いは、誘導壁110の音入口端よりも誘導路111の外側に外れて配置されてもよい。
【0043】
この車両用音出力装置100において、発音部10が発した所定周波数の音は、誘導壁110内の誘導路111を伝搬して内壁部21に達する。内壁部21に達した音は、内壁部21から中間層30を介して外壁部22にかけて共鳴透過して、外壁部22よりも車両外方に伝搬される。このため、車両用音出力装置100においても、車両3周囲の人に、車両3の発音部10の発した音を聞かせ易くすることができ、発音部10の発する音を用いて注意喚起することができる。従って、発音部10の発する所定周波数の音を、音を通し易くする開口部を通過させることなく車両内方側から車両外方側へ適切に伝搬させることができ、上記の第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
また、発音部10は、二重壁20の内壁部21から比較的遠く離れて配置されており、発音部10の発した音は、誘導壁110による誘導路111を伝搬して二重壁20に導かれる。従って、発音部10を二重壁20から離して配置せざるを得ないときにも、発音部10の発した音を誘導路111を通じて二重壁20に導いて共鳴透過させることができる。
【0045】
尚、上記の第二実施形態では、誘導壁110が、内壁部21とは別体であり、その内壁部21の裏面に取り付けられて一体化される。しかし、本開示は、これに限定されるものではなく、誘導壁110と内壁部21とが一体形成されたものであってもよい。
【0046】
[第三実施形態]
上記の第二実施形態では、誘導壁110が内壁部21の裏面に隙間なく取り付けられ、誘導路111の音出口端が内壁部21の裏面に接している。
【0047】
これに対して、本実施形態の車両用音出力装置200においては、
図5に示す如く、誘導壁210が内壁部21の裏面から離れて配置され、誘導路211の音出口端と内壁部21の裏面との間に隙間が形成される。尚、
図5において、
図2及び
図4に示す構成部品と同一の部品については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0048】
車両用音出力装置100は、誘導壁210を備えている。誘導壁210は、発音部10の発する所定周波数の音を二重壁20に導く誘導路211を形成するガイド壁である。誘導壁210は、発音部10側から内壁部21の車両内面側まで筒状に延びている。
図5に示す如く発音部10が内壁部21に対向していない場合、誘導壁210及び誘導路211は、発音部10から内壁部21まで湾曲して形成される。
【0049】
誘導壁210は、内壁部21の裏面から車両内方に離れて配置されている。誘導壁210は、ボルト締結などにより取付ブラケット220を介して車両3の内側の構造物3cに取り付けられている。尚、誘導壁210が内壁部21の裏面から離れる隙間距離は、発音部10が発して誘導路211を伝搬した音が有効に内壁部21に達して二重壁20で共鳴透過するものであればよい。また、発音部10は、誘導壁210に取り付けられることなく、取付ブラケット120を介して車両3の内側の構造物3bに取り付けられている。尚、発音部10は、発する音が有効に誘導路211を伝搬するものであれば、誘導壁210の音入口端よりも誘導路211の内側に進入して被るように配置されてもよいし、或いは、
図5に示す如く、誘導壁210の音入口端よりも誘導路211の外側に外れて配置されてもよい。
【0050】
この車両用音出力装置200において、発音部10が発した所定周波数の音は、誘導壁210内の誘導路211を伝搬して内壁部21に達する。内壁部21に達した音は、内壁部21から中間層30を介して外壁部22にかけて共鳴透過して、外壁部22よりも車両外方に伝搬される。このため、車両用音出力装置200においても、車両3周囲の人に、車両3の発音部10の発した音を聞かせ易くすることができ、発音部10の発する音を用いて注意喚起することができる。従って、発音部10の発する所定周波数の音を、音を通し易くする開口部を通過させることなく車両内方側から車両外方側へ適切に伝搬させることができ、上記の第一実施形態及び第二実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
ところで、上記の第一乃至第三実施形態においては、発音部10が発する音の周波数が所定範囲内の周波数に設定されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、発音部10が発する音が、所定範囲内における複数の周波数(例えば、400Hzと480Hzとの二つの周波数)が混合され得るものであってもよい。この場合、複数の周波数それぞれの音は、一の発音部10から同時に或いは時間的に分けて発せられるものであってもよいし、或いは、
図6に示す如く互いに別体の発音部10から発せられるものであってもよい。
【0052】
また、上記の如く複数の周波数が発音部10から発せられる場合、二重壁20と中間層30とが複数セット設けられるものであるのが好適である。例えば、
図6に示す如く、二重壁20Aと中間層30Aとの第一セットAと、二重壁20Bと中間層30Bとの第二セットBと、が設けられる。セットAでは、二重壁20A及び中間層30Aは、割り当てられた周波数の音だけを共鳴透過するように構成されている。セットBでは、二重壁20B及び中間層30Bは、割り当てられた周波数の音だけを共鳴透過するように構成されている。具体的には、セットAとセットBとでは、例えば中間層30Aの厚みと中間層30Bの厚みとが、発生する音の周波数に合わせて互いに異なるように構成されている。
【0053】
尚、
図6においては、発音部10として、第一セットA側の発音部10Aと、第二セットB側の発音部10Bと、が別体で設けられたものが示されている。また、
図6においては、第一セットAの二重壁20Aの外壁部22と第二セットBの二重壁20Bの外壁部22とが共通化されたものが示されている。
【0054】
図6に示す構成においては、第一セットA側と第二セットB側とでそれぞれ、発音部10A,10Bがそれぞれ対応の周波数の音を発し、二重壁20A及び中間層30Aが複数の周波数のうち対応の周波数の音だけを共鳴透過し、二重壁20B及び中間層30Bが複数の周波数のうち対応の周波数の音だけを共鳴透過する。かかる構成においては、第一セットA側と第二セットB側とでそれぞれ、互いに異なる周波数の音を車両内方側から車両外方側へ伝搬させることができる。
【0055】
また、上記の第一乃至第三実施形態においては、内壁部21と外壁部22との間の中空空間23(ひいては、中間層30)が、外壁部22の裏面側に環状に形成された突出部22bにより全周に亘って囲まれている。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、
図7及び
図8に示す如く、中空空間23ひいては中間層30が、内壁部21の表面側に環状に形成された突出部21aにより全周に亘って囲まれることとしてもよい。
【0056】
内壁部21の突出部21aは、内壁部21の表面の周縁部から外壁部22の裏面に向けて環状に突出している。これにより、中空空間23ひいては中間層30が全周に亘って囲まれている。尚、中空空間23ひいては中間層30の密閉性を確保するため、内壁部21の突出部21aの先端と外壁部22の裏面との間にクッション性のある部材(クッション材)60を配置することが好適である。この構成によれば、発音部10の発した音を中空空間23から漏れ難くして効率的に二重壁20に伝搬させることが可能となる。
【0057】
また、上記の変形形態においては、内壁部21、及び、発音部10の発する音を内壁部21に導く中空筒状のダクト70が、外壁部22の裏面側に設けられた構造物(いわゆる矢倉など)22dに取り付け固定されてよい。また、この取り付け方法としては、ボルトやビスなどの取付具52が用いられてよい。この構造において、取付具52は、内壁部21に設けられたフランジ部21bが有する取付孔21c、ダクト70に設けられたフランジ部70aが有する取付孔70b、及び、外壁部22の構造物22dが有する取付孔22eを貫通してスプリングナット53に締結される。
【0058】
また、上記の取付具52を用いた取付構造においては、内壁部21とダクト70との間に伝達される振動(特に、内壁部21からダクト70への振動)を吸収するために、その内壁部21のフランジ部21bとダクト70のフランジ部70aとの間にクッション性のある部材(クッション材)61を配置することとしてもよい。この構成によれば、内壁部21とダクト70との間で振動を伝達し難くして、その振動が発音部10の発する音の共鳴透過に影響を及ぼすのを回避することが可能となる。
【0059】
更に、上記の如く中空のダクト70が発音部10の発する音を内壁部21に導く構造においては、ダクト70が発音部10の発する音によって振動するのを抑えるために、ダクト70の内面(例えば
図7及び
図8に示す例では四つの筒内面のうち一面のみ;但し、四つの筒内面すべてを対象とすることが好ましい。)にクッション性のある部材(クッション材)62を配置することとしてもよい。この構成によれば、発音部10の発する音によるダクト70の振動を生じ難くして、効率的にその音を二重壁20に導くことが可能となる。
【0060】
また、上記の第一乃至第三実施形態においては、二重壁20の内壁部21と外壁部22との間の密閉された中空空間23に形成された中間層30が空気層である。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、中間層30が発音部10の発する音を透過させるものであれば、中間層30が、中空空間23にアルゴンガスや液体などが封入された層であってもよいし、また、アルゴンガスや液体などが袋状に封入された中間層30が、中空空間23に挿入配置されるものであってもよい。
【0061】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,100,200:車両用音出力装置、2:車両用音伝搬装置、3:車両、10:発音部、11:筐体、20:二重壁、21:内壁部、22:外壁部、23:中空空間、30:中間層、40:ブラケット、42:囲覆部、110,210:誘導壁、111,211:誘導路。