(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F02D 9/02 20060101AFI20241210BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20241210BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20241210BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20241210BHJP
F02D 41/18 20060101ALI20241210BHJP
F02M 27/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F02D9/02 U
F02M21/02 G
F02M21/02 K
F02M21/02 S
F02D19/02 B
F02D19/02 C
F02D41/04
F02D41/18
F02M27/02 Z
F02D9/02 301Z
(21)【出願番号】P 2021171507
(22)【出願日】2021-10-20
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】松本 祥平
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/209021(WO,A1)
【文献】特開2009-162053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/02
F02D 19/02
F02M 21/02
F02M 25/00
F02M 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンシステムにおいて、
エンジンと、
前記エンジンに供給される空気が流れる吸気通路と、
前記吸気通路に配設され、前記エンジンに供給される空気の流量を制御する第1スロットル弁と、
前記エンジンに燃料を供給する第1燃料供給弁と、
燃料を水素に分解する触媒を有し、燃料を改質して水素を含有した改質ガスを生成する改質部と、
前記吸気通路と接続され、前記改質部に供給される空気が流れる空気流路と、
前記空気流路に配設され、前記改質部に供給される空気の流量を制御する第2スロットル弁と、
前記改質部に燃料を供給する第2燃料供給弁と、
前記改質部により生成された前記改質ガスが前記エンジンに向けて流れる改質ガス流路と、
前記車両のアクセルの状態を検知するアクセル状態検知部と、
前記アクセル状態検知部により前記アクセルがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、
前記第2燃料供給弁が全閉となる状態において、前記空気流路よりも前記吸気通路に優先して空気が流れるように前記第1スロットル弁及び前記第2スロットル弁を含む制御対象を制御する空気流制御部とを備えるエンジンシステム。
【請求項2】
前記制御対象は、前記第1スロットル弁及び前記第2スロットル弁であり、
前記空気流制御部は、前記アクセル状態検知部により前記アクセルがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、
前記第2燃料供給弁が全閉となる状態において、前記第2スロットル弁を閉じるように制御すると共に、前記第1スロットル弁を開くように制御する請求項1記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記アクセルがオン状態からオフ状態になるときの前記第1スロットル弁の開度データを記憶する記憶部を更に備え、
前記空気流制御部は、前記記憶部に記憶された前記第1スロットル弁の開度データに応じて前記第1スロットル弁の開度を制御する請求項2記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記吸気通路における前記第1スロットル弁よりも下流側の空気の流量を検出する第1流量検出部と、
前記空気流路における前記第2スロットル弁よりも下流側の空気の流量を検出する第2流量検出部とを更に備え、
前記空気流制御部は、前記吸気通路における前記第1スロットル弁よりも下流側の空気の流量が前記空気流路における前記第2スロットル弁よりも下流側の空気の流量に比べて多くなるように前記第1スロットル弁の開度を制御する請求項2記載のエンジンシステム。
【請求項5】
前記吸気通路における前記第1スロットル弁よりも下流側の圧力を検出する第1圧力検出部と、
前記空気流路における前記第2スロットル弁よりも下流側の圧力を検出する第2圧力検出部とを更に備え、
前記空気流制御部は、前記空気流路における前記第2スロットル弁よりも下流側の圧力が前記吸気通路における前記第1スロットル弁よりも下流側の圧力に比べて高くなるように前記第1スロットル弁の開度を制御する請求項2記載のエンジンシステム。
【請求項6】
前記改質部の温度を検出する温度検出部を更に備え、
前記空気流制御部は、前記改質部の温度が所定時間内において前記触媒の劣化温度に達しないように前記第1スロットル弁の開度を制御する請求項2記載のエンジンシステム。
【請求項7】
前記空気流制御部は、前記温度検出部により時系列に検出された前記改質部の温度に基づいて前記改質部の温度上昇の傾きを求め、前記改質部の温度上昇の傾きが閾値以下となるように前記第1スロットル弁の開度を制御し、
前記閾値は、前記改質部の温度が前記所定時間内において前記触媒の劣化温度に達しないような傾き値である請求項6記載のエンジンシステム。
【請求項8】
前記空気流路に配設された開閉弁を更に備え、
前記制御対象は、前記第1スロットル弁、前記第2スロットル弁及び前記開閉弁であり、
前記空気流制御部は、前記アクセル状態検知部により前記アクセルがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、
前記第2燃料供給弁が全閉となる状態において、前記第1スロットル弁及び前記第2スロットル弁を閉じるように制御すると共に、前記開閉弁を閉じるように制御する請求項1記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンジンシステムとしては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載のエンジンシステムは、エンジンブロックと、このエンジンブロックの燃焼室にサージタンクを介して接続された給気管と、この給気管の中途に組み込まれた電子スロットルと、給気管から分岐されたバイパス管と、このバイパス管の先端に接続され、改質触媒を有する改質器と、バイパス管の中途に設けられた流量調整弁と、改質器とサージタンクとを接続する接続管と、燃焼室及び改質器に燃料を供給する燃料供給装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両が急な下り坂等のようにアクセルオフの状態で走行する際には、燃焼室への燃料の供給が停止すると共に、電子スロットル及び流量調整弁が閉弁するが、エンジンピストンは往復動したままである。電子スロットル及び流量調整弁として、全閉時に完全に密閉しないバタフライ弁等が使用される場合は、電子スロットル及び流量調整弁の隙間から少量の空気が漏れるため、エンジン及び改質器に少量の空気が流れる。このとき、エンジンピストンが往復動することで、燃焼室に空気が吸い込まれる。一方、改質器は還元雰囲気で動作するため、改質触媒は還元状態となっている。このため、改質触媒に少量の空気が流れ込むと、改質触媒と空気とが酸化反応する。その結果、改質触媒が高温になって劣化するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、改質部の触媒の酸化劣化を防止することができるエンジンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車両に搭載されたエンジンシステムにおいて、エンジンと、エンジンに供給される空気が流れる吸気通路と、吸気通路に配設され、エンジンに供給される空気の流量を制御する第1スロットル弁と、エンジンに燃料を供給する第1燃料供給弁と、燃料を水素に分解する触媒を有し、燃料を改質して水素を含有した改質ガスを生成する改質部と、吸気通路と接続され、改質部に供給される空気が流れる空気流路と、空気流路に配設され、改質部に供給される空気の流量を制御する第2スロットル弁と、改質部に燃料を供給する第2燃料供給弁と、改質部により生成された改質ガスがエンジンに向けて流れる改質ガス流路と、車両のアクセルの状態を検知するアクセル状態検知部と、アクセル状態検知部によりアクセルがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、空気流路よりも吸気通路に優先して空気が流れるように第1スロットル弁及び第2スロットル弁を含む制御対象を制御する空気流制御部とを備える。
【0007】
このようなエンジンシステムにおいては、車両のアクセルがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、空気流路よりも吸気通路に優先して空気が流れるように第1スロットル弁及び第2スロットル弁を含む制御対象が制御される。このため、改質部に向かって空気が流れにくくなる。従って、第2スロットル弁として、全閉時に完全に密閉しないバタフライ弁等が使用される場合でも、改質部の触媒に空気が流れ込みにくくなる。これにより、改質部の触媒の酸化劣化が防止される。
【0008】
制御対象は、第1スロットル弁及び第2スロットル弁であり、空気流制御部は、アクセル状態検知部によりアクセルがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、第2スロットル弁を閉じるように制御すると共に、第1スロットル弁を開くように制御してもよい。このような構成では、アクセルがオン状態からオフ状態になっても、空気が吸気通路をエンジンに向かって流れることとなる。従って、特に新たなバルブを追加しなくても、空気流路よりも吸気通路に優先して空気が流れる。
【0009】
エンジンシステムは、アクセルがオン状態からオフ状態になるときの第1スロットル弁の開度データを記憶する記憶部を更に備え、空気流制御部は、記憶部に記憶された第1スロットル弁の開度データに応じて第1スロットル弁の開度を制御してもよい。このような構成では、アクセルがオン状態からオフ状態になるときの第1スロットル弁の開度データを予め取得して記憶部に保存すればよいため、第1スロットル弁の開度制御においてセンサを使用しなくて済み、制御処理の簡素化を図ることができる。
【0010】
エンジンシステムは、吸気通路における第1スロットル弁よりも下流側の空気の流量を検出する第1流量検出部と、空気流路における第2スロットル弁よりも下流側の空気の流量を検出する第2流量検出部とを更に備え、空気流制御部は、吸気通路における第1スロットル弁よりも下流側の空気の流量が空気流路における第2スロットル弁よりも下流側の空気の流量に比べて多くなるように第1スロットル弁の開度を制御してもよい。このような構成では、第1スロットル弁の開度制御を容易に行いつつ、改質部に供給される空気の流量をゼロに近づけることができる。
【0011】
エンジンシステムは、吸気通路における第1スロットル弁よりも下流側の圧力を検出する第1圧力検出部と、空気流路における第2スロットル弁よりも下流側の圧力を検出する第2圧力検出部とを更に備え、空気流制御部は、空気流路における第2スロットル弁よりも下流側の圧力が吸気通路における第1スロットル弁よりも下流側の圧力に比べて高くなるように第1スロットル弁の開度を制御してもよい。このような構成では、空気流路側から吸気通路側に空気が流れるため、改質部に向かって空気が流れにくくなる。
【0012】
エンジンシステムは、改質部の温度を検出する温度検出部を更に備え、空気流制御部は、改質部の温度が所定時間内において触媒の劣化温度に達しないように第1スロットル弁の開度を制御してもよい。このような構成では、所定時間内において、改質部の温度が触媒の劣化温度に達することがないため、触媒の酸化劣化が防止される。
【0013】
空気流制御部は、温度検出部により時系列に検出された改質部の温度に基づいて改質部の温度上昇の傾きを求め、改質部の温度上昇の傾きが閾値以下となるように第1スロットル弁の開度を制御し、閾値は、改質部の温度が所定時間内において触媒の劣化温度に達しないような傾き値であってもよい。このような構成では、改質部の温度上昇の傾きを求めることにより、改質部の温度が所定時間内において触媒の劣化温度に達しないような第1スロットル弁の開度制御を容易に実現することができる。
【0014】
エンジンシステムは、空気流路に配設された開閉弁を更に備え、制御対象は、第1スロットル弁、第2スロットル弁及び開閉弁であり、空気流制御部は、アクセル状態検知部によりアクセルがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、第1スロットル弁及び第2スロットル弁を閉じるように制御すると共に、開閉弁を閉じるように制御してもよい。このような構成では、アクセルがオン状態からオフ状態になると、開閉弁が閉弁することで、空気が空気流路を改質部に向かって流れにくくなるため、空気流路よりも吸気通路に優先して空気が流れる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、改質部の触媒の酸化劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
【
図2】車両が上り坂及び下り坂を走行する様子を示す図である。
【
図3】アクセルの開度とメインスロットルバルブの開度との関係の一例を示すグラフである。
【
図4】
図1に示された空気流制御部により実行される空気流制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
【
図6】
図5に示された空気流制御部により実行される空気流制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第3実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
【
図8】
図7に示された空気流制御部により実行される空気流制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第4実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
【
図10】
図9に示された空気流制御部により実行される空気流制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】改質触媒の温度上昇の傾きの一例を比較して示すグラフである。
【
図12】本発明の第5実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
【
図13】
図12に示された空気流制御部により実行される空気流制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図1において、本実施形態のエンジンシステム1は、車両2(
図2参照)に搭載されている。エンジンシステム1は、アンモニアエンジン3と、吸気通路4と、排気通路5と、メインインジェクタ6と、メインスロットルバルブ7とを備えている。
【0019】
アンモニアエンジン3は、アンモニアガス(NH3ガス)を燃料として使用するエンジンである。アンモニアエンジン3では、難燃性のアンモニアガスを燃焼しやすくするため、助燃材としての水素(H2)がアンモニアガスに混合される。アンモニアエンジン3は、アンモニアガスが水素と共に燃焼して排気ガスが発生する燃焼室(図示せず)を有している。
【0020】
吸気通路4及び排気通路5は、アンモニアエンジン3の燃焼室と接続されている。吸気通路4は、アンモニアエンジン3に供給される空気が流れる通路である。排気通路5は、アンモニアエンジン3で発生した排気ガスが流れる通路である。
【0021】
メインインジェクタ6は、アンモニアエンジン3に向けてアンモニアガスを噴射する電磁式の燃料噴射弁である。メインインジェクタ6は、アンモニアエンジン3にアンモニアガスを供給する第1燃料供給弁を構成している。
【0022】
メインスロットルバルブ7は、吸気通路4に配設されている。メインスロットルバルブ7は、アンモニアエンジン3に供給される空気の流量を制御する電磁式の第1スロットル弁である。メインスロットルバルブ7は、バタフライ弁で構成されている。なお、吸気通路4におけるメインスロットルバルブ7よりも上流側には、空気に含まれる塵や埃等の異物を除去するエアクリーナ8が配設されている。
【0023】
また、エンジンシステム1は、アンモニアボンベ10と、気化器11と、改質器12と、空気流路13と、サブスロットルバルブ14と、サブインジェクタ15と、改質ガス流路16と、クーラ17とを備えている。
【0024】
アンモニアボンベ10は、アンモニアを液体状態で貯蔵する容器である。つまり、アンモニアボンベ10は、液体アンモニアを貯蔵する。
【0025】
気化器11は、アンモニアボンベ10に貯蔵された液体アンモニアを気化させてアンモニアガスを生成する。気化器11で発生したアンモニアガスは、アンモニア流路18を流れてメインインジェクタ6に供給されると共に、アンモニア流路19を流れてサブインジェクタ15に供給される。
【0026】
改質器12は、円筒状の筐体20と、この筐体20内に収容された改質部21及び電気ヒータ22とを有している。筐体20は、アンモニアガスに対して耐腐食性を有するステンレス鋼等の金属材料で形成されている。
【0027】
改質部21は、アンモニアガスを燃焼させて発生した熱を利用してアンモニアガスを改質することにより、水素を含有した改質ガスを生成する。改質部21は、例えばハニカム構造の改質触媒21aを有している。改質触媒21aは、アンモニアガスを燃焼させると共に、アンモニアガスを水素に分解する触媒である。改質触媒21aは、例えばATR(Autothermal Reformer)式アンモニア改質触媒である。改質触媒21aとしては、例えばコバルト系触媒、ロジウム系触媒、ルテニウム系触媒またはパラジウム系触媒等が使用される。
【0028】
電気ヒータ22は、筐体20内における改質部21よりも上流側に配置されている。電気ヒータ22は、電力が与えられると発熱し、その熱によって改質部21を加熱する。具体的には、電気ヒータ22で発生した熱は、筐体20自体を通じて改質部21に伝わると共に、筐体20内を流れるアンモニアガス及び空気を通じて改質部21に伝わる。
【0029】
空気流路13は、吸気通路4と改質器12とを接続している。空気流路13の一端は、吸気通路4におけるエアクリーナ8とメインスロットルバルブ7との間に接続されている。空気流路13の他端は、改質器12の筐体20の入口部20aに接続されている。空気流路13は、改質部21に供給される空気が流れる流路である。
【0030】
サブスロットルバルブ14は、空気流路13に配設されている。サブスロットルバルブ14は、改質部21に供給される空気の流量を制御する電磁式の第2スロットル弁である。サブスロットルバルブ14も、メインスロットルバルブ7と同様に、バタフライ弁で構成されている。
【0031】
サブインジェクタ15は、空気流路13にアンモニアガスを噴射する電磁式の燃料噴射弁である。サブインジェクタ15は、空気流路13におけるサブスロットルバルブ14と改質器12との間にアンモニアガスを噴射する。サブインジェクタ15は、改質部21にアンモニアガスを供給する第2燃料供給弁を構成している。
【0032】
改質ガス流路16は、改質器12と吸気通路4とを接続している。改質ガス流路16の一端は、改質器12の筐体20の出口部20bに接続されている。改質ガス流路16の他端は、吸気通路4におけるメインスロットルバルブ7とアンモニアエンジン3との間に接続されている。改質ガス流路16は、改質部21により生成された改質ガスがアンモニアエンジン3に向けて流れる流路である。
【0033】
クーラ17は、改質ガス流路16に配設されている。クーラ17は、例えばアンモニアエンジン3を冷却するエンジン冷却水を用いて、改質ガス流路16を流れる改質ガスを冷却する。
【0034】
また、エンジンシステム1は、アクセル開度センサ24と、コントローラ25とを備えている。
【0035】
アクセル開度センサ24は、車両2(
図2参照)のアクセル24aの開度を検出するセンサである。アクセル24aの開度は、アクセルペダルの踏込量に相当する。アクセル開度センサ24は、アクセル24aの開度をアクセル24aの状態として検出する。
【0036】
コントローラ25は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ25は、アクセルオフ判定部26と、記憶部27と、空気流制御部28とを有している。
【0037】
アクセルオフ判定部26は、アクセル開度センサ24により検出されたアクセル24aの開度に基づいて、アクセル24aがオン状態からオフ状態になったかどうかを判定する。アクセル24aがオンである(以下、アクセルオンということがある)状態は、アクセルペダルが踏み込まれた状態である。アクセル24aがオフである(以下、アクセルオフということがある)状態は、アクセルペダルが踏み込まれていない状態である。アクセルオフ判定部26は、アクセル開度センサ24と協働して、アクセル24aがオン状態からオフ状態になったかどうかを検知するアクセル状態検知部を構成している。
【0038】
例えば
図2に示されるように、車両2が急な上り坂Raを走行するときは、アクセルペダルが踏み込まれるため、アクセルオン状態となっている。その後、車両2が上り坂Raを上り切ってから急な下り坂Rbを走行するときは、アクセルペダルが踏み込まれないため、アクセルオフ状態となる。
【0039】
記憶部27には、
図3に示されるように、アクセル24aの開度に応じたメインスロットルバルブ7の開度データが記憶されている。つまり、記憶部27は、アクセル24aがオン状態からオフ状態になるときのメインスロットルバルブ7の開度データを記憶している。
【0040】
図3に示される開度データでは、アクセル24aの開度が規定値以上であるときは、メインスロットルバルブ7の開度はアクセル24aの開度に比例して増加する。アクセル24aの開度が規定値以下であるときは、メインスロットルバルブ7の開度はアクセル24aの開度に関わらず一定値Aである。従って、アクセル24aの開度が0(アクセルオフ)であっても、メインスロットルバルブ7が少し開くようにメインスロットルバルブ7の開度が設定されている。このような開度データは、実験等により予め決められている。
【0041】
空気流制御部28は、アクセルオフ判定部26によりアクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、空気流路13よりも吸気通路4に優先して空気が流れるようにメインスロットルバルブ7及びサブスロットルバルブ14を制御する。メインスロットルバルブ7及びサブスロットルバルブ14は、制御対象である。
【0042】
空気流制御部28は、アクセルオフ判定部26によりアクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、サブスロットルバルブ14を閉じるように制御すると共に、メインスロットルバルブ7を開くように制御する。このとき、空気流制御部28は、記憶部27に記憶されたメインスロットルバルブ7の開度データに応じてメインスロットルバルブ7の開度を制御する。
【0043】
図4は、空気流制御部28により実行される空気流制御処理の手順を示すフローチャートである。本処理は、車両2のイグニッションスイッチ(図示せず)がON操作されると、実行される。
【0044】
図4において、空気流制御部28は、まずアクセルオフ判定部26によりアクセルオン状態からアクセルオフ状態になったと判定されたかどうかを判断する(手順S101)。空気流制御部28は、アクセルオン状態からアクセルオフ状態になったと判定されたときは、記憶部27に記憶されたメインスロットルバルブ7の開度データを読み込む(手順S102)。
【0045】
そして、空気流制御部28は、読み込んだ開度データに応じてメインスロットルバルブ7の開度を制御すると共に、サブスロットルバルブ14を全閉とするように制御する(手順S103)。
【0046】
以上のようなエンジンシステム1において、車両2のイグニッションスイッチ(図示せず)がON操作されると、電気ヒータ22が通電されることで、改質部21が加熱されるため、改質部21の温度が上昇する。
【0047】
そして、メインスロットルバルブ7が開弁することで、アンモニアエンジン3に空気が供給される。また、サブインジェクタ15及びサブスロットルバルブ14が開弁することで、改質部21にアンモニアガス及び空気が供給される。
【0048】
そして、改質部21の温度が活性化温度に達すると、改質触媒21aによりアンモニアガスが燃焼する。具体的には、下記式のように、アンモニアと空気中の酸素とが化学反応する(発熱反応)。
NH3+3/4O2→1/2N2+3/2H2O …(A)
【0049】
すると、アンモニアガスの燃焼熱によって改質部21の温度が更に上昇する。そして、改質部21の温度が反応温度に達すると、改質触媒21aによりアンモニアガスが改質される。具体的には、下記式のように、アンモニアの分解反応が起こり(吸熱反応)、水素を含む改質ガスが生成される。
NH3→3/2H2+1/2N2 …(B)
【0050】
改質ガスは、改質ガス流路16及び吸気通路4を流れてアンモニアエンジン3に供給される。また、メインインジェクタ6が開弁することで、アンモニアエンジン3にアンモニアガスが供給される。そして、アンモニアエンジン3において、アンモニアガスが改質ガス中の水素と共に燃焼する定常状態に移行する。
【0051】
定常状態では、アンモニアエンジン3の回転数及び負荷に応じて、メインインジェクタ6及びサブインジェクタ15の開度が制御されると共に、メインスロットルバルブ7及びサブスロットルバルブ14の開度が制御される。
【0052】
例えば
図2に示されるように、車両2が急な上り坂Raを走行するときは、アクセルペダルの踏込量が多くなり、アクセルオン状態である。このため、メインインジェクタ6及びサブインジェクタ15の開度が大きくなり、アンモニアエンジン3及び改質部21へのアンモニアガスの供給量が増加すると共に、メインスロットルバルブ7及びサブスロットルバルブ14の開度が大きくなり、アンモニアエンジン3及び改質部21への空気の供給量が増加する。
【0053】
その後、車両2が急な下り坂Rbを走行するときは、アクセルペダルが踏まれず、アクセルオフ状態となる。このとき、メインインジェクタ6及びサブインジェクタ15が全閉状態となり、アンモニアエンジン3及び改質部21にアンモニアガスが供給されなくなる。また、サブスロットルバルブ14は全閉状態となるが、メインスロットルバルブ7は少しだけ開く。
【0054】
ところで、従来一般では、アクセル24aの開度が0になると、メインスロットルバルブ7の開度が0となるため(
図3中の破線参照)、メインスロットルバルブ7もサブスロットルバルブ14と同様に全閉状態となる。
【0055】
ただし、メインスロットルバルブ7及びサブスロットルバルブ14は、安価なバタフライ弁で構成されており、全閉時でも完全密閉ではないため、徐々に空気が漏れる。このため、サブスロットルバルブ14が全閉状態であっても、改質部21に少量の空気が流れてしまう。改質部21は還元雰囲気で動作するため、改質触媒21aは還元状態となっている。そのような改質触媒21aに少量の空気が流れ込むと、改質触媒21aと空気との酸化反応が起こるため、改質触媒21aの温度が上昇する。その結果、改質触媒21aの酸化劣化につながってしまう。
【0056】
そのような課題に対し、本実施形態では、
図3に示されるように、アクセル24aの開度が0(アクセルオフ)になっても、吸気通路4をアンモニアエンジン3に向かって少量の空気が流れるようにメインスロットルバルブ7の開度が制御されるため、改質部21に空気が流れにくい。
【0057】
以上のように本実施形態によれば、車両2のアクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、空気流路13よりも吸気通路4に優先して空気が流れるようにメインスロットルバルブ7及びサブスロットルバルブ14が制御される。このため、改質部21に向かって空気が流れにくくなる。従って、サブスロットルバルブ14として、全閉時に完全に密閉しないバタフライ弁が使用される場合でも、改質部21の改質触媒21aに空気が流れ込みにくくなる。これにより、改質触媒21aの酸化劣化が防止される。
【0058】
また、本実施形態では、アクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、サブスロットルバルブ14が閉じるように制御されると共に、メインスロットルバルブ7が開くように制御される。このため、アクセル24aがオン状態からオフ状態になっても、空気が吸気通路4をアンモニアエンジン3に向かって流れることとなる。従って、特に新たなバルブを追加しなくても、空気流路13よりも吸気通路4に優先して空気が流れる。
【0059】
また、本実施形態では、アクセル24aがオン状態からオフ状態になるときのメインスロットルバルブ7の開度データを予め取得して記憶部27に保存すればよいため、メインスロットルバルブ7の開度制御においてセンサを使用しなくて済み、制御処理の簡素化を図ることができる。
【0060】
図5は、本発明の第2実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図5において、本実施形態のエンジンシステム1Aは、上記の第1実施形態における構成に加え、流量センサ31,32を備えている。
【0061】
流量センサ31は、吸気通路4におけるメインスロットルバルブ7とアンモニアエンジン3との間に接続されている。流量センサ31は、吸気通路4におけるメインスロットルバルブ7よりも下流側の空気の流量を検出するセンサ(第1流量検出部)である。
【0062】
流量センサ32は、空気流路13におけるサブスロットルバルブ14と改質器12との間に接続されている。流量センサ32は、空気流路13におけるサブスロットルバルブ14よりも下流側の空気の流量を検出するセンサ(第2流量検出部)である。
【0063】
また、エンジンシステム1Aは、上記の第1実施形態におけるコントローラ25に代えて、コントローラ25Aを備えている。コントローラ25Aは、上記のアクセルオフ判定部26と、空気流制御部28Aとを有している。
【0064】
空気流制御部28Aは、アクセルオフ判定部26によりアクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、サブスロットルバルブ14を閉じるように制御すると共に、流量センサ31,32の検出値に基づいてメインスロットルバルブ7を開くように制御する。
【0065】
このとき、空気流制御部28Aは、吸気通路4におけるメインスロットルバルブ7よりも下流側の空気の流量が空気流路13におけるサブスロットルバルブ14よりも下流側の空気の流量に比べて多くなるようにメインスロットルバルブ7の開度を制御する。
【0066】
図6は、空気流制御部28Aにより実行される空気流制御処理の手順を示すフローチャートであり、
図4に対応している。
【0067】
図6において、空気流制御部28Aは、上記の手順S101でアクセルオン状態からアクセルオフ状態になったと判定されたときは、流量センサ31,32の検出値を取得する(手順S112)。
【0068】
そして、空気流制御部28Aは、吸気通路4におけるメインスロットルバルブ7よりも下流側の空気の流量(メイン側の空気流量)が空気流路13におけるサブスロットルバルブ14よりも下流側の空気の流量(サブ側の空気流量)よりも多くなるようなメインスロットルバルブ7の開度を設定する(手順S113)。このとき、アンモニアエンジン3に向かって所望量の空気が流れることで、改質部21に向かう空気の流量がほぼ0となるように、メインスロットルバルブ7の開度が設定される。
【0069】
続いて、空気流制御部28Aは、手順S113で設定された開度に応じてメインスロットルバルブ7の開度を制御すると共に、サブスロットルバルブ14を全閉とするように制御する(手順S114)。
【0070】
以上のような本実施形態では、アクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、吸気通路4におけるメインスロットルバルブ7よりも下流側の空気の流量が空気流路13におけるサブスロットルバルブ14よりも下流側の空気の流量に比べて多くなるようにメインスロットルバルブ7の開度が制御される。従って、メインスロットルバルブ7の開度制御を容易に行いつつ、改質部21に供給される空気の流量をゼロに近づけることができる。
【0071】
図7は、本発明の第3実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図7において、本実施形態のエンジンシステム1Bは、上記の第1実施形態における構成に加え、圧力センサ35,36を備えている。
【0072】
圧力センサ35は、吸気通路4におけるメインスロットルバルブ7とアンモニアエンジン3との間に接続されている。圧力センサ35は、吸気通路4におけるメインスロットルバルブ7よりも下流側の圧力を検出する第1圧力検出部である。
【0073】
圧力センサ36は、空気流路13におけるサブスロットルバルブ14と改質器12との間に接続されている。圧力センサ36は、空気流路13におけるサブスロットルバルブ14よりも下流側の圧力を検出する第2圧力検出部である。
【0074】
また、エンジンシステム1Bは、上記の第1実施形態におけるコントローラ25に代えて、コントローラ25Bを備えている。コントローラ25Bは、上記のアクセルオフ判定部26と、空気流制御部28Bとを有している。
【0075】
空気流制御部28Bは、アクセルオフ判定部26によりアクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、サブスロットルバルブ14を閉じるように制御すると共に、圧力センサ35,36の検出値に基づいてメインスロットルバルブ7を開くように制御する。
【0076】
このとき、空気流制御部28Bは、空気流路13におけるサブスロットルバルブ14よりも下流側の圧力が吸気通路4におけるメインスロットルバルブ7よりも下流側の圧力に比べて高くなるようにメインスロットルバルブ7の開度を制御する。
【0077】
図8は、空気流制御部28Bにより実行される空気流制御処理の手順を示すフローチャートであり、
図4に対応している。
【0078】
図8において、空気流制御部28Bは、上記の手順S101でアクセルオン状態からアクセルオフ状態になったと判定されたときは、圧力センサ35,36の検出値を取得する(手順S122)。
【0079】
そして、空気流制御部28Bは、空気流路13におけるサブスロットルバルブ14よりも下流側の圧力(サブ側の圧力)が吸気通路4におけるメインスロットルバルブ7よりも下流側の圧力(メイン側の圧力)よりも高くなるようなメインスロットルバルブ7の開度を設定する(手順S123)。
【0080】
続いて、空気流制御部28Bは、手順S123で設定された開度に応じてメインスロットルバルブ7の開度を制御すると共に、サブスロットルバルブ14を全閉とするように制御する(手順S124)。
【0081】
以上のような本実施形態では、アクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、空気流路13におけるサブスロットルバルブ14よりも下流側の圧力が吸気通路4におけるメインスロットルバルブ7よりも下流側の圧力に比べて高くなるようにメインスロットルバルブ7の開度が制御される。従って、空気流路13側から吸気通路4側に空気が流れるため、改質部21に向かって空気が流れにくくなる。
【0082】
図9は、本発明の第4実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図9において、本実施形態のエンジンシステム1Cは、上記の第1実施形態における構成に加え、温度センサ38を備えている。
【0083】
温度センサ38は、改質部21に接続されている。温度センサ38は、改質部21の温度を検出する温度検出部である。温度センサ38は、例えば改質触媒21aの温度を検出する。
【0084】
また、エンジンシステム1Cは、上記の第1実施形態におけるコントローラ25に代えて、コントローラ25Cを備えている。コントローラ25Cは、上記のアクセルオフ判定部26と、空気流制御部28Cとを有している。
【0085】
空気流制御部28Cは、アクセルオフ判定部26によりアクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、サブスロットルバルブ14を閉じるように制御すると共に、温度センサ38の検出値に基づいてメインスロットルバルブ7を開くように制御する。
【0086】
このとき、空気流制御部28Cは、改質部21の温度が所定時間内において改質触媒21aの劣化温度に達しないようにメインスロットルバルブ7の開度を制御する。具体的には、空気流制御部28Cは、温度センサ38により時系列に検出された改質部21の温度に基づいて改質部21の温度上昇の傾きを求め、改質部21の温度上昇の傾きが閾値以下となるようにメインスロットルバルブ7の開度を制御する。
【0087】
図10は、空気流制御部28Cにより実行される空気流制御処理の手順を示すフローチャートであり、
図4に対応している。
【0088】
図10において、空気流制御部28Cは、上記の手順S101でアクセルオン状態からアクセルオフ状態になったと判定されたときは、温度センサ38の検出値を時系列に取得する(手順S132)。
【0089】
そして、空気流制御部28Cは、温度センサ38の時系列の検出値に基づいて、改質部21の温度上昇の傾きを算出する(手順S133)。続いて、空気流制御部28Cは、改質部21の温度上昇の傾きが閾値以下となるようなメインスロットルバルブ7の開度を設定する(手順S134)。
【0090】
例えば
図11(a)に示されるように、車両2が定常運転で走行しているときにアクセルオン状態からアクセルオフ状態に切り換わると、改質触媒21aの温度が定常運転温度T0(例えば600℃程度)から上昇し、改質触媒21aの温度が劣化温度Txを超えることがある。劣化温度Txは、改質触媒21aが酸化劣化する温度である。
【0091】
閾値は、
図11(b)に示されるように、車両2が下り坂Rb(
図2参照)を走行する際に想定される所定時間において改質触媒21aの温度が劣化温度Txに達しないような傾き値Sである。
【0092】
続いて、空気流制御部28Cは、手順S134で設定された開度に応じてメインスロットルバルブ7の開度を制御すると共に、サブスロットルバルブ14を全閉とするように制御する(手順S135)。
【0093】
以上のような本実施形態では、アクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、改質部21の温度が所定時間内において改質触媒21aの劣化温度に達しないようにメインスロットルバルブ7の開度が制御される。従って、所定時間内において、改質部21の温度が改質触媒21aの劣化温度に達することがないため、改質触媒21aの酸化劣化が防止される。
【0094】
また、本実施形態では、時系列に検出された改質部21の温度に基づいて改質部21の温度上昇の傾きが求められ、改質部21の温度上昇の傾きが閾値以下となるようにメインスロットルバルブ7の開度が制御される。このように改質部21の温度上昇の傾きを求めることにより、改質部21の温度が所定時間内において改質触媒21aの劣化温度に達しないようなメインスロットルバルブ7の開度制御を容易に実現することができる。
【0095】
図12は、本発明の第5実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図12において、本実施形態のエンジンシステム1Dは、上記の第1実施形態における構成に加え、空気流路13に配設された開閉弁40を備えている。
【0096】
開閉弁40は、空気流路13におけるサブスロットルバルブ14よりも上流側に配設されている。開閉弁40は、空気流路13における空気の流れを許容または遮断する電磁式のON/OFF弁である。開閉弁40は、サブスロットルバルブ14に比べて、閉状態において空気が漏れにくい。なお、開閉弁40は、空気流路13におけるサブスロットルバルブ14よりも下流側に配設されていてもよい。
【0097】
また、エンジンシステム1Dは、上記の第1実施形態におけるコントローラ25に代えて、コントローラ25Dを備えている。コントローラ25Dは、上記のアクセルオフ判定部26と、空気流制御部28Dとを有している。
【0098】
空気流制御部28Dは、アクセルオフ判定部26によりアクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、空気流路13よりも吸気通路4に優先して空気が流れるようにメインスロットルバルブ7、サブスロットルバルブ14及び開閉弁40を制御する。開閉弁40は、メインスロットルバルブ7及びサブスロットルバルブ14と共に制御対象である。
【0099】
空気流制御部28Dは、通常は開閉弁40を開くように制御する。空気流制御部28Dは、アクセルオフ判定部26によりアクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、メインスロットルバルブ7及びサブスロットルバルブ14を閉じるように制御すると共に、開閉弁40を閉じるように制御する。
【0100】
図13は、空気流制御部28Dにより実行される空気流制御処理の手順を示すフローチャートであり、
図4に対応している。
【0101】
図13において、空気流制御部28Dは、上記の手順S101でアクセルオン状態からアクセルオフ状態になったと判定されたときは、メインスロットルバルブ7及びサブスロットルバルブ14を全閉とするように制御する(手順S142)。また、空気流制御部28Dは、開閉弁40を閉じるように制御する(手順S143)。
【0102】
以上のような本実施形態では、アクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されると、メインスロットルバルブ7及びサブスロットルバルブ14が閉じるように制御されると共に、開閉弁40が閉じるように制御される。従って、アクセル24aがオン状態からオフ状態になると、開閉弁40が閉弁することで、空気が空気流路13を改質部21に向かって流れにくくなるため、空気流路13よりも吸気通路4に優先して空気が流れる。
【0103】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、アクセル開度センサ24によりアクセル24aの開度(アクセルペダルの踏込量)がアクセル24aの状態として検出されているが、特にその形態には限られず、アクセルペダルの踏込位置等をアクセル24aの状態として検出してもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、改質部21は、アンモニアガスを燃焼させる機能とアンモニアガスを水素に分解する機能とを併せ持った改質触媒21aを有しているが、特にそのような形態には限られない。改質部21は、アンモニアガスを燃焼させる燃焼触媒と、アンモニアガスを水素に分解する改質触媒とを別々に有していてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、燃料としてアンモニアが使用されているが、本発明は、燃料として炭化水素等を使用するエンジンシステムにも適用可能である。
【0106】
また、上記実施形態では、車両2が急な下り坂Rbを走行することで、アクセル24aがオン状態からオフ状態になったことが検知されているが、本発明は、特に下り坂の走行だけではなく、例えば平坦な道路を走行中にエンジンブレーキをかける場合や、エンジンの停止直後に惰性でエンジンのクランクが回転する場合などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1,1A,1B,1C,1D…エンジンシステム、2…車両、3…アンモニアエンジン(エンジン)、4…吸気通路、6…メインインジェクタ(第1燃料供給弁)、7…メインスロットルバルブ(第1スロットル弁、制御対象)、13…空気流路、14…サブスロットルバルブ(第2スロットル弁、制御対象)、15…サブインジェクタ(第2燃料供給弁)、16…改質ガス流路、21…改質部、21a…改質触媒(触媒)、24…アクセル開度センサ(アクセル状態検知部)、24a…アクセル、26…アクセルオフ判定部(アクセル状態検知部)、27…記憶部、28,28A,28B,28C,28D…空気流制御部、31…流量センサ(第1流量検出部)、32…流量センサ(第2流量検出部)、35…圧力センサ(第1圧力検出部)、36…圧力センサ(第2圧力検出部)、38…温度センサ(温度検出部)、40…開閉弁(制御対象)。