(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】回転ツール、接合装置及び接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B23K20/12 344
B23K20/12 340
(21)【出願番号】P 2021181166
(22)【出願日】2021-11-05
【審査請求日】2024-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 伸城
(72)【発明者】
【氏名】小泉 慎吾
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-202647(JP,A)
【文献】特開2006-26731(JP,A)
【文献】特開2004-114138(JP,A)
【文献】特開2003-260572(JP,A)
【文献】特開2004-98172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合部材の摩擦攪拌接合を行う接合装置に用いられる回転ツールであって、
前記接合装置に取り付けて固定される固定部と、前記接合装置からの回転力を伝達する回転軸とを有する本体部、
前記被接合部材に挿入されて前記被接合部材に対する摩擦攪拌を行う攪拌ピンを有し、前記回転軸からの回転力を受けて回転可能に設けられるとともに、前記回転軸の軸方向に対して移動可能に前記本体部に設けられる攪拌部材、
前記回転軸の軸方向に対して、前記攪拌部材を先端側に向けて付勢する弾性部材、及び
前記攪拌部材が前記回転軸の軸方向の基端側へ移動することを規制する規制部材、を備え、
前記規制部材は、前記攪拌部材の移動に伴って前記弾性部材に生じる変形量が、前記弾性部材の最大許容量を超えないように、前記攪拌部材の移動を規制する、
ことを特徴とする回転ツール。
【請求項2】
前記本体部は、前記回転軸に取り付けられた中空筒状のホルダと、前記ホルダの中心部に回転軸方向にスライド可能に収容されるとともに前記ホルダと同期回転するスライド軸とをさらに有し、
前記攪拌部材は、前記スライド軸の先端に設けられ、
前記スライド軸は、前記弾性部材を介して前記攪拌部材の先端側に向けて付勢されており、
前記規制部材は、前記スライド軸が前記回転軸の軸方向の基端側へ移動することを規制する、
請求項1に記載の回転ツール。
【請求項3】
前記規制部材は、前記ホルダ内に設けられており、
前記スライド軸の移動に伴い、前記スライド軸の基端部及び前記ホルダの基端側の底部と前記規制部材とが接触することで、前記スライド軸の移動が規制される、
請求項2に記載の回転ツール。
【請求項4】
前記規制部材は、前記ホルダの基端側の底部に設けられており、
前記スライド軸の移動に伴い、前記スライド軸の基端部と前記規制部材とが接触することで、前記スライド軸の移動が規制される、
請求項2に記載の回転ツール。
【請求項5】
前記規制部材は、前記スライド軸の基端部に設けられており、
前記スライド軸の移動に伴い、前記ホルダの基端側の底部と前記規制部材とが接触することで、前記スライド軸の移動が規制される、
請求項2に記載の回転ツール。
【請求項6】
前記規制部材は、前記スライド軸の外周面に設けられており、
前記スライド軸の移動に伴い、前記規制部材と前記ホルダの中間部が接触することで、前記スライド軸の移動が規制される、
請求項2に記載の回転ツール。
【請求項7】
前記規制部材は、前記スライド軸の外周面に設けられており、
前記スライド軸の移動に伴い、前記規制部材と前記ホルダの先端部とが接触することで、前記スライド軸の移動が規制される、
請求項2に記載の回転ツール。
【請求項8】
前記規制部材は、前記スライド軸の先端部に設けられており、
前記スライド軸の移動に伴い、前記規制部材と前記ホルダの先端部とが接触することで、前記スライド軸の移動が規制される、
請求項2に記載の回転ツール。
【請求項9】
前記攪拌部材が、前記規制部材であり、
前記スライド軸の移動に伴い、前記攪拌部材と前記ホルダの先端部とが接触することで、前記スライド軸の移動が規制される、
請求項2に記載の回転ツール。
【請求項10】
前記攪拌部材は、前記スライド軸に連結して、柱状又は錐台状を呈するとともに、平面状又はすり鉢状の下端面を有し、前記下端面が前記被接合部材に当接するショルダをさらに有し、
前記攪拌ピンは、前記ショルダの前記下端面から垂下している、
請求項2乃至請求項9のいずれか1項に記載の回転ツール。
【請求項11】
前記攪拌部材は、前記スライド軸に連結して、柱状又は錐台状を呈する連結部をさらに有し、
前記攪拌ピンは、前記連結部の下端面から垂下している、
請求項2乃至請求項9のいずれか1項に記載の回転ツール。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の回転ツールを備える接合装置であって、
前記回転ツールの前記回転軸に伝達する回転力を出力する動力手段、及び
前記回転ツールの前記固定部を保持して、前記回転ツールの位置制御を行う位置制御手段を備え、
前記位置制御手段によって前記回転ツールを前記被接合部材に対して所定の高さ位置となるように移動させて、前記被接合部材に前記攪拌ピンを挿入して、前記被接合部材に対する摩擦攪拌接合を行う、
ことを特徴とする接合装置。
【請求項13】
前記回転ツールは、請求項10に記載の回転ツールであって、
前記攪拌ピンと、前記攪拌ピンと共に回転する前記ショルダとを、前記被接合部材に挿入して、前記被接合部材に対する摩擦攪拌接合を行う、
請求項12に記載の接合装置。
【請求項14】
前記回転ツールは、請求項11に記載の回転ツールであって、
前記被接合部材に対して前記連結部を離間させた状態で、前記被接合部材に回転する前記攪拌ピンのみを挿入して、前記被接合部材に対する摩擦攪拌接合を行う、
請求項12に記載の接合装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の回転ツールを、前記被接合部材に対して所定の高さ位置となるように移動させて、前記被接合部材に前記攪拌ピンを挿入して、前記被接合部材に対する摩擦攪拌接合を行う、
ことを特徴とする接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌接合に用いられる回転ツール、接合装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦攪拌接合を行うための接合装置として、被接合部材に対して回転ツールの押込み量を制御するために、荷重制御を行うものと、位置制御を行うものが知られている。荷重制御は、主として、ロボット(ロボットアーム)による接合装置で用いられ、位置制御は、主として、マシニングセンタ(MC)による接合装置で用いられていた。
【0003】
荷重制御を行う接合装置としては、例えば特許文献1に開示されたものがあった。特許文献1の接合装置は、接合条件に応じて好適な精度で良好な接合品質を得るために、ショルダ部材またはピン部材の被接合物への圧入深さを制御するものである。かかる接合装置は、圧入深さの制御を行うために、圧入基準点設定部で設定された圧入基準点に基づいて、ショルダ部材に対するピン部材の相対位置を制御する。接合装置は、前記制御を行うために、加圧力検出部、圧力基準点設定部や工具駆動制御部等を備えている。また、工具駆動部は、回転駆動部、ピン駆動部、ショルダ駆動部及びクランプ駆動部(弾性部材:コイルスプリング)等を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の接合装置は、荷重制御を行うため、構造が複雑で高価である。そのため、近年では、位置制御のみを行える比較的安価なMCに装着可能で且つ荷重制御を行える回転ツールが求められている。
【0006】
このような観点から、本発明は、マシニングセンタに装着した状態で荷重制御を行える回転ツール、接合装置及び接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明は、被接合部材の摩擦攪拌接合を行う接合装置に用いられる回転ツールであって、前記接合装置に取り付けて固定される固定部と、前記接合装置からの回転力を伝達する回転軸とを有する本体部、前記被接合部材に挿入されて前記被接合部材に対する摩擦攪拌を行う攪拌ピンを有し、前記回転軸からの回転力を受けて回転可能に設けられるともに、前記回転軸の軸方向に対して移動可能に前記本体部に設けられる攪拌部材、前記回転軸の軸方向に対して、前記攪拌部材を先端側に向けて付勢する弾性部材、及び前記攪拌部材が前記回転軸の軸方向の基端側へ移動することを規制する規制部材、を備え、前記規制部材は、前記攪拌部材の移動に伴って前記弾性部材に生じる変形量が、前記弾性部材の最大許容量を超えないように、前記攪拌部材の移動を規制する、
ことを特徴とする。
【0008】
また、前記本体部は、前記回転軸に取り付けられた中空筒状のホルダと、前記ホルダの中心部に回転軸方向にスライド可能に収容されるとともに前記ホルダと同期回転するスライド軸とをさらに有し、前記攪拌部材は、前記スライド軸の先端に設けられ、前記スライド軸は、前記弾性部材を介して前記攪拌部材の先端側に向けて付勢されており、前記規制部材は、前記スライド軸が前記回転軸の軸方向の基端側へ移動することが好ましい。
【0009】
また、前記規制部材は、前記ホルダ内に設けられており、前記スライド軸の移動に伴い、前記スライド軸の基端部及び前記ホルダの基端側の底部と前記規制部材とが接触することで、前記スライド軸の移動が規制されることが好ましい。
【0010】
また、前記規制部材は、前記ホルダの基端側の底部に設けられており、前記スライド軸の移動に伴い、前記スライド軸の基端部と前記規制部材とが接触することで、前記スライド軸の移動が規制されることが好ましい。
【0011】
また、前記規制部材は、前記スライド軸の基端部に設けられており、前記スライド軸の移動に伴い、前記ホルダの基端側の底部と前記規制部材とが接触することで、前記スライド軸の移動が規制されることが好ましい。
【0012】
また、前記規制部材は、前記スライド軸の外周面に設けられており、前記スライド軸の移動に伴い、前記規制部材と前記ホルダの中間部が接触することで、前記スライド軸の移動が規制されることが好ましい。
【0013】
また、前記規制部材は、前記スライド軸の外周面に設けられており、前記スライド軸の移動に伴い、前記規制部材と前記ホルダの先端部とが接触することで、前記スライド軸の移動が規制されることが好ましい。
【0014】
また、前記規制部材は、前記スライド軸の先端部に設けられており、前記スライド軸の移動に伴い、前記規制部材と前記ホルダの先端部とが接触することで、前記スライド軸の移動が規制されることが好ましい。
【0015】
また、前記攪拌部材が、前記規制部材であり、前記スライド軸の移動に伴い、前記攪拌部材と前記ホルダの先端部とが接触することで、前記スライド軸の移動が規制されることが好ましい。
【0016】
また、前記攪拌部材は、前記スライド軸に連結して、柱状又は錐台状を呈するとともに、平面状又はすり鉢状の下端面を有し、前記下端面が前記被接合部材に当接するショルダをさらに有し、前記攪拌ピンは、前記ショルダの前記下端面から垂下していることが好ましい。
【0017】
また、前記攪拌部材は、前記スライド軸に連結して、柱状又は錐台状を呈する連結部をさらに有し、前記攪拌ピンは、前記連結部の下端面から垂下していることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の回転ツールを備える接合装置であって、前記回転ツールの前記回転軸に伝達する回転力を出力する動力手段、及び前記回転ツールの前記固定部を保持して、前記回転ツールの位置制御を行う位置制御手段を備え、前記位置制御手段によって前記回転ツールを前記被接合部材に対して所定の高さ位置となるように移動させて、前記被接合部材に前記攪拌ピンを挿入して、前記被接合部材に対する摩擦攪拌接合を行う、ことを特徴とする。
【0019】
また、前記回転ツールは、請求項10に記載の回転ツールであって、前記攪拌ピンと、前記攪拌ピンと共に回転する前記ショルダとを、前記被接合部材に挿入して、前記被接合部材に対する摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。
【0020】
また、前記回転ツールは、請求項11に記載の回転ツールであって、前記被接合部材に対して前記連結部を離間させた状態で、前記被接合部材に回転する前記攪拌ピンのみを挿入して、前記被接合部材に対する摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。
【0021】
また、本発明は、請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の回転ツールを、前記被接合部材に対して所定の高さ位置となるように移動させて、前記被接合部材に前記攪拌ピンを挿入して、前記被接合部材に対する摩擦攪拌接合を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る回転ツール、接合装置及び接合方法によれば、弾性部材を利用した荷重制御を行うことができる。また、本発明に係る回転ツール、接合装置及び接合方法によれば、比較的硬い被接合部材に対しても、弾性部材を利用しながら攪拌ピンを挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る回転ツールを示す一部断面側面図である。
【
図2】第一実施形態に係る回転ツールが最も収縮した状態を示す縦断面図である。
【
図3】第一実施形態に係る回転ツールを示す平断面図である。
【
図4】第一実施形態に係る回転ツールを示す斜視図である。
【
図5】第一実施形態に係る回転ツールを示す分解斜視図である。
【
図6】第一実施形態に係る回転ツールの摩擦攪拌接合時の状態を示す断面図である。
【
図7】第一実施形態に係る回転ツールの摩擦攪拌接合時の時間と発生反力を示すグラフである。
【
図8】本発明の第一実施形態の第一変形例に係る回転ツールを示す一部破断斜視図である。
【
図9】本発明の第一実施形態の第二変形例に係る回転ツールを示す縦断面図である。
【
図10】本発明の第一実施形態の第二変形例に係る回転ツールを示す斜視図である。
【
図11】本発明の第二実施形態に係る回転ツールを示す模式図である。
【
図12】第二実施形態に係る回転ツールが最も収縮した状態を示す模式図である。
【
図13】本発明の第三実施形態に係る回転ツールを示す模式図である。
【
図14】第三実施形態に係る回転ツールが最も収縮した状態を示す模式図である。
【
図15】本発明の第四実施形態に係る回転ツールを示す模式図である。
【
図16】第四実施形態に係る回転ツールが最も収縮した状態を示す模式図である。
【
図17】本発明の第五実施形態に係る回転ツールを示す模式図である。
【
図18】第五実施形態に係る回転ツールが最も収縮した状態を示す模式図である。
【
図19】本発明の第六実施形態に係る回転ツールを示す模式図である。
【
図20】第六実施形態に係る回転ツールが最も収縮した状態を示す模式図である。
【
図21】本発明の第七実施形態に係る回転ツールを示す模式図である。
【
図22】第七実施形態に係る回転ツールが最も収縮した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。また、実施形態における構成要素は、一部又は全部を適宜組み合わせることができる。さらに、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであり、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0025】
[1.第一実施形態]
[1―1.回転ツール]
まず、第一実施形態に係る回転ツールの構成を説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る回転ツール1は、被接合部材2(
図6参照)の摩擦攪拌接合を行う接合装置3に用いられるものであって、被接合部材2の突合せ部に回転しながら挿入される。かかる回転ツール1は、本体部10、攪拌部材50、弾性部材70、及び規制部材100を備えている。
【0026】
<本体部>
本体部10は、例えばマシニングセンタ等の接合装置3に固定される部分であって、固定部11と、回転軸12とを備えている。固定部11は、接合装置3に取り付けられて固定される部位であり、円筒形状を呈している。固定部11はチャック機構であり、接合装置3に設けられた対となるチャック機構と協働することで、固定部11を接合装置3に対して着脱可能に固定することができる。チャック機構としては、例えば、固定部11に設けられた溝と、接合装置3に設けられて、固定部11側の溝に嵌合して挟み付ける爪とが挙げられる。固定部11の接合装置3に取り付けられる側とは他端側(
図1中、下側)に、回転軸12が連結して設けられている。回転軸12は、円柱形状を呈している。回転軸12は、接合装置3からの回転力を攪拌部材50に伝達する部位であり、固定部11を介して接合装置3の回転軸(図示せず)に連結されている。
【0027】
図3乃至
図5にも示すように、本体部10は、ホルダ21と、スライド軸31とをさらに備えている。
【0028】
<ホルダ>
ホルダ21は、回転軸12に取り付けられ、回転軸12と同期回転し、スライド軸31及び攪拌部材50を支持する部位である。ホルダ21は、基端部(接合装置3側端部:
図1中、上端部)に底部24を有する有底円筒形状(中空筒状)を呈しており、内部の中空部が、スライド軸31が挿入される収納凹部22となっている。収納凹部22は、円柱形状を呈しており、回転軸12の軸方向の先端側(
図1中、下端部)が開口している。ホルダ21の円筒胴部には、キー溝23が形成されている。キー溝23は、回転軸12の軸方向(
図1中、上下方向)に沿って長尺の長円形に形成されており、ホルダ21の外周面から内周面まで貫通している。なお、キー溝23は、円筒胴部を貫通していなくてもよく、円筒胴部の内周面に溝状に形成されていてもよい。キー溝23は、円筒胴部の円周方向に180°間隔で配置され、互いに対向して2か所に形成されている。なお、キー溝23の個数は、2個に限定されるものではなく、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。
【0029】
<スライド軸>
スライド軸31は、ホルダ21の収納凹部22に、回転軸方向(
図1中、上下方向)にスライド可能に収納されるとともに、ホルダ21と同期回転(共回り)する部位である。スライド軸31は、円柱形状を呈しており、収納凹部22に収納可能な外径を有している。スライド軸31の外周面には、外側に突出するキー32が設けられている。キー32は、キー溝23に相当する位置に固定されており、キー溝23に挿入されている。キー32は、回転軸方向に長い長円形状を呈しており、キー溝23と同等の幅寸法を備えるとともに、キー溝23の長手方向寸法よりも短い長さ寸法を備えている。つまり、キー32は、キー溝23の幅方向に嵌合するとともに長手方向に移動可能である。なお、キー32の形状は、長円形状に限定されるものではなく、キー溝23と同等の幅寸法を備えていれば、円形や楕円形、長楕円、長方形等の他の形状であってもよい。スライド軸31の先端部(接合装置3から離間する側の端部:
図1中、下端部)には、攪拌部材50が一体的に設けられている。したがって、攪拌部材50は、弾性部材70によって先端側に付勢されることによって、スライド軸31の先端側(接合装置3から離間する側:
図1中、下側)に付勢される。
【0030】
<攪拌部材>
攪拌部材50は、本体部10からの回転力を受けて回転可能に設けられるとともに、回転軸12の軸方向に対して移動可能に本体部10に設けられる部位である。攪拌部材50は、攪拌ピン51とショルダ61とを備えている。攪拌部材50は、例えば工具鋼にて構成されている。本実施形態では、攪拌ピン51とショルダ61とが一体形成されており、コンベンショナル型の攪拌部材50となっている。攪拌部材50は、スライド軸31と一体形成されている。よって、攪拌部材50は、スライド軸31と同期回転するとともに、スライド軸31のスライド移動によって、回転軸12の軸方向に移動する。
【0031】
攪拌ピン51は、被接合部材に回転しつつ挿入されて被接合部材に対する摩擦攪拌を行う部位である。攪拌ピン51の先端部52(
図1中、下端部)は、先端に向かうにつれて先細りになっている。攪拌ピンの先端部52の先端は、軸方向に直交する平坦面状となっている。攪拌ピン51の基端部には、ショルダ61が一体形成されている。攪拌ピン51の外周面に螺旋溝を設けてもよい。
【0032】
ショルダ61は、下端面が被接合部材2に当接した状態で被接合部材2を押圧する部位である。ショルダ61は、攪拌ピン51の基端部から拡径する円柱状に形成されており、平面状且つリング状の先端面(下端面)を備えている。つまり、ショルダ61の先端面から攪拌ピン51の先端部52が先端側に向かって突出している。言い換えれば、攪拌ピン51がショルダ61の下端面から垂下している。ショルダ61の形状は、円柱状に限定されるものではなく、錐台状であってもよい。また、ショルダ61の下端面は、平面状であってもよく、すり鉢状であってもよい。さらに、ショルダ61の下端面は、凹凸構造を有していてもよい。ショルダ61の基端部は、スライド軸31に一体的に連結されている。ショルダ61は、スライド軸31よりも大径であり、ショルダ61とスライド軸31との連結部(ショルダ61のスライド軸31側の基端部)には、平面視でリング状の段部が形成されている。
【0033】
<弾性部材>
弾性部材70は、回転軸12の軸方向に対して攪拌ピン51とショルダ61とを備えた攪拌部材50を先端側に向けて付勢する部位である。弾性部材70は、例えばコイルばねにて構成されている。弾性部材70は、ホルダ21の内部に収容され、スライド軸31の基端部31bと、ホルダ21の基端側の底部24との間に装着されている。弾性部材70は、攪拌部材50側から受ける力に対して、攪拌部材50を先端側に向けて付勢できるようになっている。
【0034】
弾性部材70の弾性は、アルミニウム、銅、マグネシウム、及びこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一つの材料からなる被接合部材2に対して、攪拌ピン51を、所定の押し込み荷重で挿入する場合に、攪拌ピン51の全可動範囲内の所定の範囲で、攪拌ピン51が変位して被接合部材2に挿入されるように設定されている。
【0035】
例えば、弾性部材70がコイルネばねの場合であって、弾性部材70に加わる荷重を100kg~5tで挿入する場合に、弾性部材70の自由長に対して、弾性部材70のたわみ量が0~30%の範囲で変形した状態で、攪拌ピン51及びショルダ61が被接合部材2に挿入されるように設定されている。これにより、被接合部材2に対して一定の高さで攪拌ピン51を押し込んだ場合に、被接合部材2の高さが変化した場合にも、被接合部材2の変化に合わせて弾性部材70が変形することで、攪拌ピン51の挿入量を一定に保ちやすくなる。
【0036】
なお、弾性部材70は、コイルばねに限定されるものではなく、板ばね、皿ばね等の金属ばねや、ゴム、高分子樹脂、スポンジ状樹脂等の高分子弾性体(エラストマー)であってもよい。さらに弾性部材70は、空気圧、ガス圧や油圧を用いた流体ばねや、磁力や電磁力を用いた磁性ばねであってもよい。
【0037】
弾性部材70は、接合条件を考慮して、攪拌ピン51が所定の深さにまで挿入される変形量と弾性率との関係を満たすように設定すればよい。また、弾性部材70は、接合条件を考慮して、ショルダ61が被接合部材2の表面に接触して、わずかに挿入される変形量と弾性率との関係を満たすように設定すればよい。弾性部材70の設定に影響を与える接合条件としては、例えば、被接合部材2の材質や接合部の形状といった接合部材の条件や、攪拌ピン51の挿入深さ、ショルダ61の接触状態、回転ツール1の形状、回転速度、移動速度といった接合態様が挙げられる。
【0038】
<規制部材>
規制部材(遊嵌規制部材)100は、
図1等に示すように、攪拌部材50が、所定の範囲を超えて回転軸12の基端側へ移動することを規制する部材である。規制部材100は、本実施形態では、ホルダ21の内部において、弾性部材70の中空部に遊嵌状態で配置されている。規制部材100は、摩擦攪拌接合時の反力に耐え得るように、金属、樹脂、ゴム等であって比較的硬質の材料で形成されている。規制部材100は、本実施形態では、円柱状を呈するが、配置場所の形状に合わせて適宜形成すればよい。規制部材100は、攪拌部材50の移動に伴って弾性部材70に生じる変形量が、弾性部材70の最大たわみ量(最大許容量)を超えないように攪拌部材50の移動を規制する。
【0039】
例えば、本実施形態に係る弾性部材70の最大たわみ量は、弾性部材70の自由長に対して30%変形したときに設定している。最大たわみ量とは、弾性部材70の弾性力を発現する際に最も圧縮した量を意味する。最大たわみ量を超えると、弾性部材70の弾性力が性能通りに発揮しなかったり、想定よりも早期に破損したりする。
【0040】
図2に示すように、規制部材100は、本実施形態では、弾性部材70の自由長に対して、弾性部材70のたわみ量が30%となった場合に、規制部材100の先端部(先端面)100aがスライド軸31の基端部31bに当接するとともに、基端部(基端面)100bが底部24に当接する。これにより、弾性部材70が最大たわみ量を超えて変形することを防ぐことができる。弾性部材70の最大たわみ量は、弾性部材70及び規制部材100に応じて適宜設定することができる。弾性部材70の最大たわみ量は、例えば、25%としてもよく、20%としてもよく、15%としてもよく、10%としてもよく、5%としてもよい。
【0041】
なお、本実施形態では、弾性部材70を用いているため、「最大たわみ量」とした。また、前記したように、例えば、弾性部材を他の部材(空気圧、ガス圧や油圧を用いた流体ばねや、磁力や電磁力を用いた磁性ばね)を用いた場合は、その量を超えると、弾性力が発現しなかったり、弾性部材が破損したりする量を「最大許容量」と定義する。
【0042】
また、規制部材100は、本実施形態では、金属等の固体とし、接触させることで攪拌部材50の移動を規制したが、例えば、空気圧、ガス圧や油圧を用いた流体ばねや、磁力や電磁力を用いた磁性ばねで非接触により攪拌部材50の移動を規制してもよい。
【0043】
また、規制部材100は、攪拌部材50の移動を規制するものであれば、その形状や配置は限定されない。例えば、規制部材100は、本体部10や攪拌部材50の一部が規制部材100として機能するものであってもよく、規制部材100が本体部10や攪拌部材50と一体として形成されることで設けられるものであってもよく、規制部材100が本体部10や攪拌部材50に対して別個の部材を取り付ける形で設けられるものであってもよい。
【0044】
[1-2.接合装置]
次に、前記構成の回転ツール1を備えた接合装置3の構成を説明する。かかる接合装置3は、回転ツール1の回転軸12に伝達する回転力を出力する動力手段(図示せず)と、回転ツール1の固定部11を保持して回転ツールの位置制御を行う位置制御手段(図示せず)と、を備えている。接合装置3は、例えば位置制御を行うマシニングセンタにて構成されており、位置制御装置は、CPU等にて構成され、予め入力された位置情報に基づいて、動力手段を作動させて回転ツール1を移動させる。動力手段は、回転ツール1をXYZの3軸方向に移動させる。
【0045】
[1-3.接合方法]
次に、本発明に係る接合方法を、
図6を参照して説明する。かかる接合方法では、本実施形態の回転ツール1を、被接合部材2に対して予め設定された所定の高さ位置となるように移動させて、被接合部材2に攪拌ピン51とショルダ61とを所定深さで挿入して、被接合部材2に対する摩擦攪拌接合を行う。
【0046】
攪拌ピン51の挿入時には、回転ツール1を被接合部材2に向けて挿入方向に近づけるにつれて、まずは攪拌ピン51の先端が被接合部材2に接触する。回転ツール1をさらに被接合部材2に近づけると、弾性部材70が圧縮を受けることで、被接合部材2に向けて攪拌部材50を付勢する弾性部材70による弾性力が強まりながら、攪拌ピン51が被接合部材2に挿入される。回転ツール1をさらに被接合部材2に近づけると、ショルダ61が被接合部材2に接触する。弾性部材70が圧縮を受けることで、被接合部材2に向けて攪拌部材50を付勢する弾性部材70による弾性力がより強まりながら、ショルダ61が被接合部材2に押し付けられる。このとき、弾性部材70のたわみ量が最大たわみ量を超えないように、弾性部材70の変形による余力を残した状態で、攪拌ピン51が被接合部材2に挿入されるとともに、ショルダ61を被接合部材2にわずかに挿入することができるように弾性部材70及び接合条件が設定されている。あるいは、弾性部材70のたわみ量が最大たわみ量を超えないように、規制部材100によって攪拌部材50の移動が規制された状態で、攪拌部材50が被接合部材2に押圧されることによって、攪拌ピン51が被接合部材2に挿入される。
【0047】
回転ツール1による接合中は、攪拌ピン51とショルダ61が弾性部材70によって先端側に向けて付勢されている。
図6中、左側に示すように、被接合部材2の高さが設定値に対して誤差が無い場合は、攪拌ピン51の先端部52が、所望の深さで被接合部材2に挿入される。ショルダ61は、被接合部材2に対して接触した状態で、被接合部材2にわずかに挿入されるようになっている。
【0048】
次に、
図6中、中央部に示すように、摩擦攪拌接合を行ううちに被接合部材2の高さが誤差によって設定値より少し高くなった場合について説明する。ここで、仮に、弾性部材70が存在せずに攪拌ピン51をそのまま被接合部材2に押し込んでいた場合には、被接合部材2の高さが設定値に対して誤差が無い場合と比べて、被接合部材2の高さが高くなった分だけ攪拌ピン51及びショルダ61の挿入量が大きくなる。
【0049】
これに対して、本実施形態の回転ツール1により接合を行った場合には、被接合部材2の高さが高くなったことで攪拌部材50が被接合部材2からの上向きの反力を受けて押し上げられるとともに、この押し上げによって弾性部材70が圧縮されて、攪拌部材50が弾性部材70から下向きの弾性力を受けて押し下げられる。このような被接合部材2の高さの変化に伴う上向きの反力と下向きの弾性力との釣り合う位置に、攪拌部材50の位置が変更される。このときの攪拌ピン51及びショルダ61の挿入量が、被接合部材2の高さが設定値に対して誤差が無い場合の挿入量と比べて同程度となるように、弾性部材70が設定されている。仮に、弾性部材70の弾性力が弱すぎると、被接合部材2の高さの変化に伴う上向きの反力の方が大きくなり、挿入量が小さくなってしまう。一方、弾性部材70の弾性力が強すぎると、被接合部材2の高さの変化に伴う下向きの弾性力の方が大きくなり、挿入量が大きくなってしまう。すなわち、被接合部材2の高さが変動して高くなった場合であっても、回転ツール1では、被接合部材2の設定値の高さに合わせて設定した所望の深さで攪拌ピン51が被接合部材2に挿入されて、ショルダ61が被接合部材2にわずかに挿入されるように、弾性部材70が設定されている。
【0050】
さらに、被接合部材2の高さが設定値より低くなると、
図6中、右側に示すように、弾性部材70が伸張して、攪拌部材50が下降する。このように、被接合部材2の高さが変動して低くなった場合であっても、回転ツール1では、被接合部材2の設定値の高さに合わせて設定した所望の深さで攪拌ピン51が被接合部材2に挿入されて、ショルダ61が被接合部材2にわずかに挿入されるように、弾性部材70が設定されている。
【0051】
以上のように、回転ツール1では、弾性部材70の作用によって、攪拌ピン51及びショルダ61が被接合部材2に対して一定の深さで挿入されるので、塑性化領域が一定の深さで形成される。したがって、安定した接合品質を得ることができる。
【0052】
[1-4.作用・効果]
本実施形態に係る回転ツール1、接合装置3及び接合方法によれば、回転軸12の軸方向に対して移動可能に設けられた攪拌部材50が、弾性部材70によって先端側に向けて付勢されていることによって、攪拌ピン51を被接合部材2に挿入している間に、弾性部材70の弾性に応じて、攪拌ピン51が所定の深さにまで挿入される。接合部材や接合態様といった接合条件を考慮して、弾性部材70を設定することで、攪拌ピン51を所望の深さに挿入させることができる。つまり、回転ツール1は、弾性部材70を用いた疑似的な荷重制御を行うことができる。
【0053】
位置制御のみを行える、例えばマシニングセンタ等の接合装置に弾性部材が無い回転ツールを装着した場合には、マシニングセンタによる設定値に基づいて回転ツール1の支持高さが一定となり、攪拌部材50の挿入位置が略一定になる。これに対して、本実施形態の回転ツール1を用いると、マシニングセンタによる回転ツール1の支持高さが一定であっても、被接合部材2の高さの変動に応じて、弾性部材70が適宜伸縮して、攪拌部材50が軸方向に移動する。このように、弾性部材70の弾性を利用することで、攪拌ピン51の被接合部材2への挿入深さを制御できるという荷重制御が可能となる。
【0054】
ここで、荷重制御に関して、弾性部材として例えば、圧縮コイルばねを用いて摩擦攪拌行うと、1000系の比較的に柔らかいアルミニウム合金に対しては攪拌ピンを挿入することができたが、硬いアルミニウム合金に対しては攪拌ピンを挿入することができないというケースがあった。
【0055】
これは、圧縮コイルばねが、最大許容量(最大たわみ量)を超えて圧縮されるのを避ける必要があることによる。言い換えれば、圧縮コイルばねの最大たわみ量を超える程に回転ツールに荷重を加えることは困難である。すなわち、圧縮コイルばねの限度を超えるほどに圧縮することが必要となるような硬質な被接合部材に対して、簡易荷重制御を施しながら攪拌ピンを挿入することは困難である。仮に、圧縮コイルばねの最大たわみ量を超えると、ばねが早期に破損するおそれもある。
【0056】
ところで、例えば、摩擦攪拌接合の開始位置のように、被接合部材2に対して攪拌ピン51を接触させて、回転ツール1に加える荷重を増しながら挿入を進める際には、時間が経過して挿入量が増えるにつれて、発生する反力(発生反力)と摩擦熱による発熱が増加する。通常、摩擦攪拌接合では、攪拌ピン51の挿入に対して攪拌ピン51の発熱による材料の軟化が追い付かず、攪拌ピン51を所定の深さまで押込んでいる時が最も発生反力が高くなる。被接合部材2に所定の深さまで攪拌ピン51が挿入され回転ツール1の押込みが止まると、回転ツール1の挿入量に対して攪拌ピン51の発熱による材料の軟化が追い付き、回転ツール1に加える荷重を軽減することができ、発生反力を低下させることができる。このような状態は「定常状態」と称されている。
【0057】
図7は、第一実施形態に係る回転ツールの摩擦攪拌接合時の時間と発生反力を示すグラフである。点P1は、摩擦攪拌接合の開始位置において攪拌ピン51を被接合部材2に最も押し込んだ位置を示している。点P2は、摩擦攪拌接合の定常状態の開始位置を示している。点P1に至るまでは右肩上がりの直線となっており、攪拌ピン51を被接合部材2に押し込んでいる状態を示している。摩擦攪拌接合時には、攪拌ピン51を押し込むときに発生反力が徐々に大きくなってピークを向かえ(点P1)、攪拌ピン51の進行に応じて発生反力が少し低下した後、定常状態(点P2)となって発生反力は概ね一定となる。
【0058】
本実施形態に係る回転ツール1は、攪拌部材50の軸方向の基端側への移動を規制する規制部材100を備えている。これにより、発生反力(荷重)が最大となる回転ツール1の挿入時や、被接合部材2の形状が大きく変化する位置においては、弾性部材70に生じるたわみ量が、弾性部材70の最大たわみ量を超えない範囲で、規制部材100によって攪拌部材50の移動が規制される。したがって、被接合部材2が比較的に硬く、大きな荷重を要する場合であっても、弾性部材70が限度を超えて変形するのを避けることができる。これにより、比較的硬い被接合部材2に対しても、弾性部材70を利用しながら攪拌ピン51を挿入することができ、かつ、弾性部材70及び回転ツール1の破損を防ぐことができる。
【0059】
また、規制部材100によって規制される攪拌部材50が規制部材100によって支持された状態(規制部材100がスライド軸31と底部24とに当接し挟持された状態)で攪拌部材50が被接合部材2に押圧されるとともに、接合装置によって加えられる荷重は、規制部材100を介して攪拌部材50に加えられることで、被接合部材2に攪拌部材50を挿入することができる。
【0060】
その後、定常状態では、発生反力(荷重)が軽減され、規制部材100による攪拌部材50の支持が解除されて、規制部材100により規制されなくなった攪拌部材50は回転軸12の軸方向への移動を行うことができるようになる。
【0061】
また、回転ツール1の大型化を防ぐために、弾性部材70の外径や自由長は極力小さい(短い)方が好ましい。一定の外径で、弾性部材70の自由長を短くすればするほど、ばね定数が大きくなるため、比較的硬い被接合部材2にも挿入しやすくなる。しかし、ばね定数を大きくすると、変化量に対する発生反力(荷重)が大きくなる傾向にあるため、ロバスト性が低くなる。つまり、ばね定数を大きくすると、弾性部材70によって攪拌ピン51が影響を受けやすくなるため、定常状態において攪拌ピン51の動作が安定しない(制御しづらい)という問題がある。
【0062】
この点、本実施形態によれば、弾性部材70のばね定数を大きくしなくても、規制部材100がスライド軸31の移動を規制するため、規制部材100を介して攪拌部材50に応力を加えることができる。これにより、比較的硬い被接合部材2にも攪拌部材50を挿入することができる。また、規制部材100を設ける分、弾性部材70のばね定数を大きくしなくてよいため、弾性部材70の設計の自由度が増すとともに、定常状態におけるロバスト性を高めることができ、攪拌ピン51を安定して制御することができる。
【0063】
また、本体部10は、円筒状のホルダ21と、ホルダ21の中心部に回転軸方向にスライド可能に収容されるとともにホルダ21と同期回転するスライド軸31とをさらに有し、攪拌部材50は、スライド軸31の先端に設けられている。これにより、本体部10からの回転力を攪拌部材50に伝達しつつ、攪拌部材50を回転軸方向にスライドすることができる。
【0064】
弾性部材70は、ホルダ21の内部に収容され、スライド軸31の基端部とホルダ21の基端側の底部24との間に配置されている。これにより、弾性部材70が攪拌ピン51側から受ける力をホルダ21の底部24によって受けることができる。したがって、スライド軸31が移動しても、弾性部材70が攪拌ピン51を先端側に向けて安定に付勢するため、攪拌ピン51の荷重制御の精度を高めることができる。
【0065】
また、ホルダ21にキー溝23が形成され、スライド軸31にキー32が形成されている。これにより、スライド軸31及び攪拌部材50が、回転軸及びホルダ21の回転に伴って同期回転しつつ、軸方向への移動を安定した状態で許容する。したがって、攪拌部材50の動作がより一層安定する。
【0066】
弾性部材70は、固体ばね、流体ばね、磁力、及び電磁力から選ばれる少なくとも一つによって弾性力を付与するものである。このような構成によれば、弾性部材70の弾性を調整し易い。
【0067】
攪拌部材50は、スライド軸31に連結して、柱状又は錐台状を呈するとともに、平面状又はすり鉢状の下端面を有し、下端面が被接合部材2に当接するショルダ61を備えている。さらに、攪拌ピン51は、ショルダ61の下端面から垂下している。このような構成によれば、弾性部材70の弾性を利用することで、攪拌ピン51及びショルダ61の被接合部材2への挿入深さを制御できる。また、ショルダ61が被接合部材2の表面を押さえるので、摩擦攪拌接合後の表面の仕上がりが良好になる。
【0068】
接合装置3は、回転ツール1、動力手段、及び位置制御手段を備えている。そして、位置制御手段によって回転ツール1を被接合部材2に対して所定の高さ位置となるように移動させて、被接合部材2に攪拌ピン51を挿入して摩擦攪拌接合を行う。このような接合装置3によれば、弾性部材70の弾性を利用することで、攪拌ピン51の被接合部材2への挿入深さを制御する荷重制御を行いながら摩擦攪拌接合を行うことができる。
【0069】
接合装置3は、回転ツール1が、攪拌ピン51とショルダ61を備えたコンベンショナル型の回転ツール1であって、攪拌ピン51と、攪拌ピン51と共に回転するショルダ61とを、被接合部材2に挿入して、被接合部材2に対する摩擦攪拌接合を行うものである。これにより、ショルダ61が被接合部材2の表面を押さえるので、摩擦攪拌接合後の表面の仕上がりが良好になる。
【0070】
本接合方法は、回転ツール1を、被接合部材2に対して所定の高さ位置となるように移動させて、被接合部材2に攪拌ピン51を挿入して、被接合部材2に対する摩擦攪拌接合を行う。本接合方法によれば、弾性部材70の弾性を利用することで、攪拌ピン51の被接合部材2への挿入深さを制御する荷重制御を行いながら摩擦攪拌接合を行うことができる。
【0071】
本接合方法は、回転ツール1が、攪拌ピン51とショルダ61を備えたコンベンショナル型の回転ツール1であって、攪拌ピン51と、攪拌ピン51と共に回転するショルダ61とを、被接合部材2に挿入して、摩擦攪拌接合を行う方法である。これにより、ショルダ61が被接合部材2の表面を押さえるので、摩擦攪拌接合後の表面の仕上がりが良好になる。
【0072】
以上説明したように、回転ツール1、接合装置3、及び接合方法によれば、位置制御のみを行うマシニングセンタに装着した状態であっても、弾性部材70を利用して荷重制御を行いながら摩擦攪拌接合を行うことができる。また、回転ツール1、接合装置3、及び接合方法によれば、規制部材100を利用することで、比較的硬い被接合部材に対しても弾性部材70の破損を防いで攪拌ピンを挿入するとともに、荷重制御を行いながら摩擦攪拌接合を行うことができる。
【0073】
[2.第一変形例]
次に、
図8及び
図9を参照しながら、第一変形例に係る回転ツール1Aについて説明する。
図8及び
図9に示すように、第一変形例に係る回転ツール1Aは、ホルダ21の内部に、スライド手段80が設けられている。スライド手段80は、ホルダ21の内周面に設けられている。スライド手段80は、ホルダ21の内周面に形成されたベアリング溝81と、ベアリング溝81内を摺動する複数のボール82,82・・とで構成されている。ベアリング溝81は、側面視で軸方向に長い長円状に形成されている。ベアリング溝81の深さは、ボール82の直径よりも小さくなっている。ボール82は、ベアリング溝81の内部に複数個配設される。ボール82の一部がスライド軸31の外周面に摺接するとともに他の部分がベアリング溝81の内面に摺接する。なお、その他の構成については、前記実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。このような構成の回転ツール1Aによれば、ホルダ21に対してスライド軸31を軸方向にスムーズに移動させることができる。
【0074】
[3.第二変形例]
次に、
図10を参照しながら、第二変形例に係る回転ツール1Bについて説明する。第一実施形態では、攪拌部材50は攪拌ピン51とショルダ61とを備えたコンベンショナル型であるが、これに限定されるものではない。第二変形例の攪拌部材50aは、
図10に示すように、ショルダのないショルダレス型となっている。その他の構成は前記実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0075】
ショルダレス型の攪拌部材50aは、スライド軸31に連結される円柱状の連結部41と、連結部41の先端部41aに一体的に形成される攪拌ピン53とを有している。連結部41は、その径がスライド軸31よりも小さくなっており、スライド軸31の先端部(先端面)31aに設けられた円柱状の凹部31c内に連結部41が挿入されている。この状態で、攪拌部材50aがスライド軸31と固定されていることで、攪拌部材50aがスライド軸31の先端に設けられている。よって、攪拌部材50aは、スライド軸31と同期回転するとともに、スライド軸31のスライド移動によって、回転軸12の軸方向に移動する。
【0076】
攪拌ピン53は、その基端部54において連結部41の先端部(先端面)41aと一体形成されており、連結部41の先端部(下端面)41aから先端側へ突出(垂下)している。また、攪拌ピン53は、その先端部55が基端部54側から先端に向かうにつれて先細りになっている。攪拌ピン53は、基端部54の径が、連結部41の先端部41aの径よりも大きくなっており、スライド軸31の径よりも小さくなっている。攪拌ピン51aの外周面に螺旋溝を設けてもよい。
【0077】
なお、本変形例では、攪拌ピン53の基端部54と連結部41の先端部41aとは径が異なり、両者の外周面に段差を有しているが、攪拌ピン53の基端部54と連結部41の先端部41aとは径が同じであり、両者の外周面が連続して形成されていてもよい。また、本変形例では、攪拌ピン53の基端部54とスライド軸31の先端部31aとは径が異なり、両者の外周面に段差を有しているが、攪拌ピン53の基端部54とスライド軸31の先端部31aとは径が同じであり、両者の外周面が連続して形成されていてもよい。また、本変形例では、攪拌部材50aがスライド軸31と別体として設けられ、両者が連結される場合を例示したが、攪拌部材50aとスライド軸31とが一体として形成されていてもよい。また、連結部41の形状は、円柱状に限定されるものではなく、錐台状であってもよい。
【0078】
本実施形態に係る回転ツール1Bによれば、第一実施形態に係る回転ツール1と同様に、弾性部材70の弾性を利用することで、攪拌ピン53の被接合部材2への挿入深さを制御できるという荷重制御が可能となる。また、本実施形態のショルダレス型の攪拌部材を備えた回転ツール1Bによれば、摩擦攪拌接合時の回転ツール1Bの押圧力を低減することができる。
【0079】
また、このようなショルダレス型の攪拌部材を備えた回転ツール1Bを備えた接合装置及び接合方法では、位置制御手段によって、回転ツール1Bを被接合部材に対して所定の高さ位置となるように移動させて、被接合部材に対してスライド軸31及び連結部41を離間させた状態で、被接合部材2に攪拌ピン53のみを挿入して、被接合部材2に対する摩擦攪拌接合を行う。以上のような、接合装置及び接合方法によれば、回転ツール1Bのショルダ部を押し込む場合に比べて塑性化領域の幅を小さくすることができるとともに、回転ツール1Bの押圧力を低減することができる。また、回転ツール1のショルダ部を押し込む場合に比べて摩擦攪拌装置にかかる負荷を軽減することができる。また、摩擦攪拌装置に大きな負荷がかからない状態で、突合せ部の深い位置を接合することができる。また、連結部41を設けることで、連結部41に一体的に形成される攪拌ピン53とスライド軸31との着脱を容易に行うことができる。
【0080】
[4.第二実施形態]
次に、
図11及び
図12を参照しながら、第二実施形態に係る回転ツール1Cについて説明する。第二実施形態に係る回転ツール1Cは、ホルダ21とスライド軸31とを有する本体部10、連結部41と攪拌ピン53とを有する攪拌部材50a、弾性部材70、及び規制部材100Cを備えている。基本的な構成は、前記した実施形態及び変形例と同じであるため、同じ符号を付して説明を省略する。
【0081】
本実施形態に係る規制部材(基端側固定規制部材)100Cは、ホルダ21の底部24に固定されて設けられている。つまり、規制部材100Cの基端部100Cbと底部24とが常に接続されている。
図12に示すように、弾性部材70が最大たわみ量に達するまでに、規制部材100Cの先端部100Caとスライド軸31の基端部31bとが当接し、スライド軸31及び攪拌ピン53(攪拌部材50a)の基端側への移動を規制することができる。
【0082】
本実施形態によっても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。さらに、本実施形態によれば、規制部材100Cがホルダ21の底部24に設けられていることにより、規制部材がホルダ21の内部を遊動することによって規制部材と弾性部材70とが接触することを避けることができる。また、規制部材100Cを定位置に固定することができるため、規制部材100Cの先端部100Caとスライド軸31の基端部31bとを一定の位置で当接させることができ、回転ツール1Cの挿入に伴い発生する反力を所定の位置で受け止めて安定的な動作を行わせることができる。
【0083】
[5.第三実施形態]
次に、
図13及び
図14を参照しながら、第三実施形態に係る回転ツール1Dについて説明する。第三実施形態に係る回転ツール1Dは、ホルダ21とスライド軸31とを有する本体部10、連結部41と攪拌ピン53を有する攪拌部材50a、弾性部材70、及び規制部材100Dを備えている。基本的な構成は、前記した実施形態及び変形例と同じであるため、同じ符号を付して説明を省略する。
【0084】
本実施形態に係る規制部材(先端側固定規制部材)100Dは、スライド軸31に固定されて設けられている。つまり、規制部材100Dの先端部100Daとスライド軸31の基端部31bとが常に接続されている。
図14に示すように、弾性部材70が最大たわみ量に達するまでに、規制部材100Dの基端部100Dbとホルダ21の底部24とが当接し、スライド軸31及び攪拌ピン53(攪拌部材50a)の基端側への移動を規制することができる。
【0085】
本実施形態によっても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。さらに、本実施形態によれば、規制部材100Dがスライド軸31に設けられていることにより、規制部材がホルダ21の内部を遊動することによって規制部材と弾性部材70とが接触することを避けることができる。また、規制部材100Dを定位置に固定することができるため、規制部材100Dの基端部100Dbとホルダ21の底部24とを一定の位置で当接させることができ、回転ツール1Dの挿入に伴い発生する反力を所定の位置で受け止めて安定的な動作を行わせることができる。
【0086】
[6.第四実施形態]
次に、
図15及び
図16を参照しながら、第四実施形態に係る回転ツール1Eについて説明する。第四実施形態に係る回転ツール1Eは、ホルダ21とスライド軸31とを有する本体部10、連結部41と攪拌ピン53とを有する攪拌部材50a、弾性部材70、及び規制部材100Eを備えている。基本的な構成は、前記した実施形態及び変形例と同じであるため、同じ符号を付して説明を省略する。
【0087】
本実施形態に係る規制部材(中間規制部材)100Eは、スライド軸31の外周面(側面部)に固定されて設けられている。特には、規制部材100Eは、スライド軸31の軸方向中央の外周面に設けられている。規制部材100Eは、スライド軸31の外周面から垂直に径外方向に張り出す板状部材である。規制部材100Eは単数でもよいし複数個形成されていてもよい。規制部材100Eは、ホルダ21に径外方向に貫通する貫通孔M内を、スライド軸31の移動に伴い軸方向に移動するように形成されている。
図16に示すように、弾性部材70が最大たわみ量に達するまでに、規制部材100Eと貫通孔Mの基端側の孔壁(ホルダの中間部)Maとが当接し、スライド軸31及び攪拌ピン53(攪拌部材50a)の基端側への移動を規制することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、ホルダ21の貫通孔Mを「中間部」としたが、ホルダ21の他の部位を「中間部」に設定し、当該中間部と規制部材100Eとを当接させてもよい。また、キー溝23とキー32とによって、貫通孔Mと規制部材100Eとを実現してもよい。
【0089】
本実施形態によっても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。さらに、本実施形態によれば、規制部材100Eがスライド軸31の外周面に設けられていることにより、ホルダ21の内部に収容される弾性部材70との干渉を避けることができる。このため、例えば弾性部材の構造、形状、動作、又は機能の影響により、規制部材を弾性部材とともにホルダ21の内部に収納することができない場合であっても、外周面に設けられた規制部材100Eによって、攪拌部材50aの移動を規制することができる。したがって、設計の自由度を増すことができる。
【0090】
[7.第五実施形態]
次に、
図17及び
図18を参照しながら、第五実施形態に係る回転ツール1Fについて説明する。第五実施形態に係る回転ツール1Fは、ホルダ21とスライド軸31とを有する本体部10、連結部41と攪拌ピン51B53とを有する攪拌部材50a、弾性部材70、及び規制部材100Fを備えている。基本的な構成は、前記した実施形態及び変形例と同じであるため、同じ符号を付して説明を省略する。
【0091】
本実施形態に係る規制部材(先端側規制部材)100Fは、スライド軸31の外周面(側面部)に固定されて設けられている。特には、規制部材100Fは、スライド軸31の先端側の外周面に設けられている。規制部材100Fは、スライド軸31の外周面から垂直に径外方向に張り出す板状部材である。規制部材100Fは単数でもよいし複数個形成されていてもよい。
図18に示すように、弾性部材70が最大たわみ量に達するまでに、規制部材100Fとホルダ21の先端部21aとが当接し、スライド軸31及び攪拌ピン53(攪拌部材50a)の基端側への移動を規制することができる。
【0092】
本実施形態によっても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。さらに、本実施形態によれば、規制部材100Fがスライド軸31の外周面に設けられていることにより、ホルダ21の内部に収容される弾性部材70との干渉を避けることができる。このため、例えば弾性部材の構造、形状、動作、又は機能の影響により、規制部材を弾性部材とともにホルダ21の内部に収納することができない場合であっても、外周面に設けられた規制部材100Fによって、攪拌部材50aの移動を規制することができる。したがって、設計の自由度を増すことができる。また、キー溝23とキー32とによって貫通孔Mと規制部材100Eを実現して、規制部材100Eとキー溝23とが当接する場合と比べて、本実施形態によれば、規制部材100Fとホルダ21の先端部21aとが当接するため、キー溝23に負荷が加わることを避けることができる。
【0093】
[8.第六実施形態]
次に、
図19及び
図20を参照しながら、第六実施形態に係る回転ツール1Gについて説明する。第六実施形態に係る回転ツール1Gは、ホルダ21とスライド軸31とを有する本体部10、連結部41と攪拌ピン53とを有する攪拌部材50a、弾性部材70、及び規制部材100Gを備えている。基本的な構成は、前記した実施形態及び変形例と同じであるため、同じ符号を付して説明を省略する。
【0094】
本実施形態に係る規制部材(先端面規制部材)100Gは、スライド軸31の先端部(先端面)31aに固定されて設けられている。規制部材100Gは、スライド軸31の先端部(先端面)31aから垂直に径外方向に張り出す板状部材である。規制部材100Gは、スライド軸31の外周面よりも外側に張り出している。規制部材100Gは単数でもよいし複数個形成されていてもよい。
図20に示すように、弾性部材70が最大たわみ量に達するまでに、規制部材100Gとホルダ21の先端部21aとが当接し、スライド軸31及び攪拌ピン53(攪拌部材50a)の基端側への移動を規制することができる。
【0095】
本実施形態によっても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。さらに、本実施形態によれば、規制部材100Gがスライド軸31の先端部に設けられていることにより、ホルダ21の内部に収容される弾性部材70との干渉を避けることができる。このため、例えば弾性部材の構造、形状、動作、又は機能の影響により、規制部材を弾性部材とともにホルダ21の内部に収納することができない場合であっても、先端部に設けられた規制部材100Gによって、攪拌部材50aの移動を規制することができる。したがって、設計の自由度を増すことができる。また、キー溝23とキー32とによって貫通孔Mと規制部材100Eを実現して、規制部材100Eとキー溝23とが当接する場合と比べて、本実施形態によれば、規制部材100Gとホルダ21の先端部21aとが当接するため、キー溝23に負荷が加わることを避けることができる。
【0096】
[9.第七実施形態]
次に、
図21及び
図22を参照しながら、第七実施形態に係る回転ツール1Hについて説明する。第七実施形態に係る回転ツール1Hは、ホルダ21とスライド軸31とを有する本体部10、連結部41と攪拌ピン53hとを有する攪拌部材50h、及び弾性部材70を備えている。基本的な構成は、前記した実施形態及び変形例と同じであるため、同じ符号を付して説明を省略する。
【0097】
本実施形態に係る攪拌部材50hは、第二変形例と同じように、ショルダレス型の攪拌部材となっている。攪拌部材50hの基端部54hの外径は、スライド軸31の外径よりも大きくなっている。また、攪拌部材50hの基端部54hの外径は、ホルダ21の収納凹部22の内径よりも大きくなっている。また、攪拌ピン53hは、その先端部55hが基端部54h側から先端に向かうにつれて先細りになっている。
図22に示すように、弾性部材70が最大たわみ量に達するまでに、攪拌ピン53hの基端部54hとホルダ21の先端部21aとが当接し、スライド軸31及び攪拌部材50hの基端側への移動を規制することができる。つまり、本実施形態では、攪拌部材50hそのものが、規制部材となっている。
【0098】
本実施形態によっても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。さらに、本実施形態によれば、攪拌部材50hが規制部材として機能することにより、ホルダ21の内部に収容される弾性部材70との干渉を避けることができる。このため、例えば弾性部材の構造、形状、動作、又は機能の影響により、規制部材を弾性部材とともにホルダ21の内部に収納することができない場合であっても、攪拌部材50hによって、攪拌部材50hそれ自体の移動を規制することができる。したがって、設計の自由度を増すことができる。
【0099】
[10.その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。前記実施形態では、ホルダ21にキー溝23が形成され、スライド軸31にキー32が形成されているが、これに限定されるものではない。ホルダ21にキーを形成し、スライド軸31にキー溝を形成してもよい。
【0100】
また、前記実施形態では、弾性部材70は、ホルダ21の内部に収容され、スライド軸31の基端部とホルダ21の基端側の底部24との間に配置されているがこれに限定されるものではない。弾性部材70は、攪拌部材50を先端側に付勢する位置であればどこに配置してもよい。また、弾性部材70の配置に合わせて規制部材の配置を変更してもよい。例えば、スライド軸の下部を囲うように配置してもよい。この場合、弾性部材70がスライド軸31と攪拌部材50との中間部付近に位置するとともに、弾性部材70がスライド軸31の周方向に均等に作用する。したがって、スライド軸31が移動しても、弾性部材70が攪拌部材50を先端側に向けて安定に付勢する。したがって、攪拌部材50の荷重制御の精度を高めることができる。また、スライド軸31の上端部において、上端部側に向けて柱状形状に伸長された伸長部が形成されており、このスライド軸31の伸長部を囲うとともに、ホルダ21の基端側の底部24との間に弾性部材70を装着してもよい。このとき、ホルダ21の内径に合わせて伸長部をスライド軸31よりも小さい径に形成してもよい。このような場合も攪拌部材50の荷重制御の精度を高めることができる。
【0101】
また、前記実施形態では、規制部材100が円柱状であって、規制部材100が弾性部材70の中空部に配置されている場合を例示して説明した。規制部材は、内径が弾性部材70の外径よりも大きい筒状であってもよい。この場合、規制部材の内側に弾性部材70が配置されて、規制部材が弾性部材70の外側を覆うように配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 回転ツール
2 被接合部材
3 接合装置
10 本体部
11 固定部
12 回転軸
21 ホルダ
23 キー溝
31 スライド軸
32 キー
50 攪拌部材
51 攪拌ピン
61 ショルダ
70 弾性部材
100 規制部材