(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/023 20060101AFI20241210BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20241210BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20241210BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F01N3/023
F02D43/00 301H
F02D45/00 360A
F02D45/00 362
F02D45/00 364
F02D41/04
(21)【出願番号】P 2021196179
(22)【出願日】2021-12-02
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 暁光
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-148097(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132443(WO,A1)
【文献】特開2019-044692(JP,A)
【文献】特開2005-155532(JP,A)
【文献】特開2008-069745(JP,A)
【文献】特開2021-127730(JP,A)
【文献】特開2019-085965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0340414(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/023
F02D 43/00
F02D 45/00
F02D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒、前記気筒から排出される排気中の粒子状物質を捕集するフィルタ、及びクランク軸を備えた内燃機関と、
前記クランク軸に連結した入力軸、駆動輪に連結した出力軸、及び前記入力軸の回転を減速して前記出力軸に伝達する変速機構を備え、前記変速機構は、前記入力軸から前記出力軸へとトルクを伝達しないニュートラルレンジに切り替え可能である自動変速機と、
を有する車両に適用され、
「M」及び「N」を1以上の整数としたとき、燃焼行程を迎える前記気筒の順にM個連続して前記気筒への燃料供給を停止する停止パターン、及び、燃焼行程を迎える前記気筒の順にN個連続して前記気筒への燃料供給を行う燃焼パターン、を前記内燃機関の運転を継続させつつ交互に繰り返す燃料カット処理と、
前記フィルタに堆積している現状の前記粒子状物質の量を、前記燃料カット処理を実行することにより予め定められた終了堆積量にまで減少させたと仮定したときの前記フィルタの推定温度を、第1温度として算出する第1推定処理と、を実行可能であり、
前記燃料カット処理は、予め定められた第1開始条件が成立している場合に実行され、
前記第1開始条件は、
前記変速機構が前記ニュートラルレンジであること、
前記車両が降坂路を走行していること、
前記第1温度が予め定められた設定温度以下であること、
がすべて成立することを含む
車両の制御装置。
【請求項2】
予め定められた「M」及び「N」の値で実行する前記燃料カット処理を第1燃料カット処理とし、「M/N」の値が前記第1燃料カット処理の場合よりも大きい予め定められた「M」及び「N」の値で実行する前記燃料カット処理を第2燃料カット処理としたとき、
前記第1燃料カット処理の実行中に、前記フィルタに堆積している現状の前記粒子状物質の量を、前記第2燃料カット処理を実行することにより前記終了堆積量にまで減少させたと仮定したときの前記フィルタの推定温度を、第2温度として算出する第2推定処理、をさらに実行可能であり、
前記第2燃料カット処理は、予め定められた第2開始条件が成立している場合に実行され、
前記第2開始条件は、
前記第2温度が前記設定温度以下であること、
前記フィルタに堆積している現状の前記粒子状物質の量が予め定められた設定堆積量以下であること、
がすべて成立することを含む
請求項1に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された車両は、内燃機関と制御装置とを有する。内燃機関は、複数の気筒、排気通路、触媒、及びフィルタを有する。排気通路は、気筒に接続している。触媒は、排気通路の途中に位置している。触媒は、排気を浄化する。フィルタは、排気通路における触媒から視て下流側に位置している。フィルタは、排気中の粒子状物質を捕集する。
【0003】
制御装置は、フィルタにおける粒子状物質の堆積量が多くなると、フィルタ再生処理を行う。すなわち、制御装置は、複数の気筒のうちの一部の気筒の空燃比を理論空燃比よりもリーンにする一方、残りの気筒の空燃比を理論空燃比よりもリッチにする。この場合、前者の気筒が排出する酸素と、後者の気筒が排出する未燃燃料とは、触媒で燃焼する。この結果として高温になった排気がフィルタに至ると、フィルタに堆積している粒子状物質は燃焼する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような車両において、内燃機関が自動変速機に連結していることがある。そして、車両が降坂路を走行しているときに、自動変速機のシフトレンジがニュートラルレンジになっていることがある。このような、ニュートラルレンジで降坂路を走行する状況では、車両は内燃機関の出力を要すことなく走行できる。この場合、車両が走行する上で、内燃機関の出力の制約は少ない。したがって、制御装置は、気筒への燃料の供給量を増減させること、すなわち例えば上記のようなフィルタ再生処理を行うことが許容される。そこで、フィルタの再生機会を増やすべく、ニュートラルレンジで降坂路を走行する期間にフィルタの再生を行うことが考えられる。
【0006】
ここで、フィルタの再生を行うと、粒子状物質の燃焼に伴ってフィルタの温度が上昇する。このとき、フィルタの温度が過度に高くなると、フィルタが損傷するおそれがある。したがって、ニュートラルレンジで降坂路を走行する際に内燃機関の出力の制約が無いといはいえ、フィルタの状態を何ら考慮せずにフィルタの再生を優先させると、フィルタが損傷するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための車両の制御装置は、複数の気筒、前記気筒から排出される排気中の粒子状物質を捕集するフィルタ、及びクランク軸を備えた内燃機関と、前記クランク軸に連結した入力軸、駆動輪に連結した出力軸、及び前記入力軸の回転を減速して前記出力軸に伝達する変速機構を備え、前記変速機構は、前記入力軸から前記出力軸へとトルクを伝達しないニュートラルレンジに切り替え可能である自動変速機と、を有する車両に適用され、「M」及び「N」を1以上の整数としたとき、燃焼行程を迎える前記気筒の順にM個連続して前記気筒への燃料供給を停止する停止パターン、及び、燃焼行程を迎える前記気筒の順にN個連続して前記気筒への燃料供給を行う燃焼パターン、を前記内燃機関の運転を継続させつつ交互に繰り返す燃料カット処理と、前記フィルタに堆積している現状の前記粒子状物質の量を、前記燃料カット処理を実行することにより予め定められた終了堆積量にまで減少させたと仮定したときの前記フィルタの推定温度を、第1温度として算出する第1推定処理と、を実行可能であり、前記燃料カット処理は、予め定められた第1開始条件が成立している場合に実行され、前記第1開始条件は、前記変速機構が前記ニュートラルレンジであること、前記車両が降坂路を走行していること、前記第1温度が予め定められた設定温度以下であること、がすべて成立することを含む。
【0008】
上記構成において、制御装置は、フィルタに堆積している現状の粒子状物質の量に基づいて、仮に燃料カット処理を行ったとした場合のフィルタの将来の推定温度として第1温度を算出する。そして、制御装置は、第1温度が設定温度以下であることを条件に燃料カット処理を行う。このことにより、制御装置は、ニュートラルレンジで降坂路を走行する機会のうち、燃料カット処理を行ってもフィルタが過昇温しない状況に限ってフィルタの再生を行うことができる。したがって、制御装置は、ニュートラルレンジで降坂路を走行するにあたり、フィルタを損傷させることなく、フィルタを再生できる。
【0009】
車両の制御装置において、予め定められた「M」及び「N」の値で実行する前記燃料カット処理を第1燃料カット処理とし、「M/N」の値が前記第1燃料カット処理の場合よりも大きい予め定められた「M」及び「N」の値で実行する前記燃料カット処理を第2燃料カット処理としたとき、前記第1燃料カット処理の実行中に、前記フィルタに堆積している現状の前記粒子状物質の量を、前記第2燃料カット処理を実行することにより前記終了堆積量にまで減少させたと仮定したときの前記フィルタの推定温度を、第2温度として算出する第2推定処理、をさらに実行可能であり、前記第2燃料カット処理は、予め定められた第2開始条件が成立している場合に実行され、前記第2開始条件は、前記第2温度が前記設定温度以下であること、前記フィルタに堆積している現状の前記粒子状物質の量が予め定められた設定堆積量以下であること、がすべて成立することを含んでいてもよい。
【0010】
第2燃料カット処理を行う場合、第1燃料カット処理を行う場合に比べて、燃料供給を停止する気筒の割合が増えることから、フィルタに供給する酸素の量が多くなる。つまり、第2燃料カット処理は、第1燃料カット処理に比べて、フィルタの温度が上昇しやすい。ここで、フィルタには、粒子状物質が堆積し易い箇所がある。このような、粒子状物質が多く堆積している箇所に多くの酸素を供給すると、粒子状物質が多く堆積している箇所が局所的に高温になって、フィルタが異常に発熱する状態になり得る。この点を踏まえ、制御装置は、フィルタに堆積している現状の粒子状物質の量が設定堆積量以下であることを条件にフィルタの再生を行う。つまり、制御装置は、第2燃料カット処理を行うことによってフィルタに供給する酸素の量が多くなってもフィルタが異常に発熱する状態になり難い状況に限って第2燃料カット処理を行う。
【0011】
また、制御装置は、フィルタに堆積している現状の粒子状物質の量に基づいて、仮に第2燃料カット処理を行ったとした場合のフィルタの将来の推定温度として第2温度を算出する。そして、制御装置は、第2温度が設定温度以下であることを条件に第2燃料カット処理を行う。つまり、制御装置は、第2燃料カット処理を行ってもフィルタが過昇温しない状況に限って第2燃料カット処理を行う。
【0012】
こうした構成によれば、制御装置は、フィルタの再生を行う上でフィルタの損傷を防止できるとともに、フィルタが損傷しない状況下ではフィルタに酸素を多く供給することで、フィルタの再生を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図2は、第1判定処理の処理手順を表したフローチャートである。
【
図3】
図3は、第2判定処理の処理手順を表したフローチャートである。
【
図4】
図4は、終了判定処理の処理手順を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、車両の制御装置の一実施形態を、図面を参照して説明する。
<車両の概略構成>
図1に示すように、車両500は、内燃機関10を有する。内燃機関10は、車両500の駆動源である。
【0015】
内燃機関10は、機関本体10A及びクランク軸31を有する。機関本体10Aは、複数の気筒11を有する。各気筒11は、機関本体10Aに区画された空間である。図示は省略するが、各気筒11はピストンを収容している。各気筒11内において、ピストンは往復動可能である。ピストンは、コネクティングロッドを介してクランク軸31に連結している。ピストンの往復動に応じてクランク軸31は回転する。
【0016】
機関本体10Aは、ウォータージャケット18を有する。ウォータージャケット18は、冷却水が流通する通路である。ウォータージャケット18は、複数の気筒11の周囲に位置している。
【0017】
内燃機関10は、複数の点火プラグ19を有する。点火プラグ19は、気筒11毎に設けられている。点火プラグ19の先端は、気筒11内に位置している。点火プラグ19は、吸気と燃料との混合気に点火を行う。それに伴い、気筒11内で混合気が燃焼する。
【0018】
内燃機関10は、吸気通路15、スロットルバルブ16、及び複数の燃料噴射弁17を有する。吸気通路15は、各気筒11に吸気を導入するための通路である。吸気通路15は、各気筒11に接続している。スロットルバルブ16は、吸気通路15の途中に位置している。スロットルバルブ16は、吸気通路15に流入する吸気量GAを調節する。複数の燃料噴射弁17は、吸気通路15における、スロットルバルブ16から視て下流側に位置している。燃料噴射弁17は、気筒11毎に設けられている。燃料噴射弁17は、燃料を噴射して気筒11内へ燃料を供給する。
【0019】
内燃機関10は、排気通路21、三元触媒22、及びガソリンパティキュレートフィルタ(以下、GPFと記す。)23を有する。排気通路21は、各気筒11から排気を排出するための通路である。排気通路21は、各気筒11に接続している。三元触媒22は、排気通路21の途中に位置している。三元触媒22は、排気を浄化する。三元触媒22は、酸素吸蔵能力を有する。GPF23は、排気通路21における、三元触媒22から視て下流側に位置している。GPF23は、排気に含まれる粒子状物質(以下、PMと記す。)を捕集する。
【0020】
内燃機関10は、エアフロメータ61、第1温度センサ62、第2温度センサ63、及びクランク角センサ64を有する。エアフロメータ61は、吸気通路15における、スロットルバルブ16から視て上流側に位置している。エアフロメータ61は、吸気通路15に流入する吸気量GAを検出する。第1温度センサ62は、GPF23の近傍に位置している。第1温度センサ62は、GPF23の温度TFを検出する。第2温度センサ63は、ウォータージャケット18の出口に位置している。第2温度センサ63は、冷却水の温度TWを検出する。クランク角センサ64は、クランク軸31の近傍に位置している。クランク角センサ64は、クランク軸31の回転位置CRを検出する。
【0021】
車両500は、自動変速機50を有する。自動変速機50は、入力軸52、出力軸54、変速機構56、及び油圧回路55を有する。入力軸52は、上記クランク軸31に連結している。出力軸54は、ディファレンシャル等を介して駆動輪60に連結している。変速機構56は、入力軸52と出力軸54との間に介在している。変速機構56は、複数の係合要素58、複数の遊星歯車機構57、及びロック機構59を有する。なお、
図1では、複数の係合要素58の全体を1つの四角で示している。複数の遊星歯車機構57についても同様である。各係合要素58は、クラッチ及びブレーキのいずれかである。各係合要素58は、油圧回路55の油圧に応じて断接状態が切り替わる。各係合要素58の断接状態に応じて、変速機構56は複数の変速段を形成可能である。具体的には、変速機構56は、前進走行用の変速段、後進走行用の変速段を形成可能である。変速機構56は、これらの変速段を形成している場合、入力軸52の回転を減速して出力軸54に伝達する。変速機構56は、上記の変速段に加え、入力軸52と出力軸54との間の動力伝達を遮断する変速段(以下、遮断変速段と記す)を形成可能である。すなわち、変速機構56は、遮断変速段を形成している場合、入力軸52から出力軸54へとトルクを伝達しない。ロック機構59は、出力軸54を回転不能にロックしたり、出力軸54の回転を許容したりする。
【0022】
変速機構56は、上記した複数の変速段と、出力軸54のロックの有無との組み合わせに応じて4つのシフトレンジのいずれかに切り替わる。4つのシフトレンジは、ドライブレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、及びパーキングレンジである。ドライブレンジは、変速機構56が前進走行用の変速段を形成している場合であって且つ出力軸54の回転を許容しているときに成立する。リバースレンジは、変速機構56が後進走行用の変速段を形成している場合であって且つ出力軸54の回転を許容しているときに成立する。ニュートラルレンジは、変速機構56が遮断変速段を形成している場合であって且つ出力軸54の回転を許容しているときに成立する。パーキングレンジは、変速機構56が遮断変速段を形成している場合であって且つ出力軸54の回転をロックしているときに成立する。
【0023】
車両500は、シフトレバー82を有する。シフトレバー82は、車両500の車室内に位置している。シフトレバー82は、予め定められた4つの操作位置のいずれかに乗員が操作位置を切り替え可能なレバーである。各操作位置は、自動変速機50における別々のシフトレンジと対応している。
【0024】
車両500は、シフトポジションセンサ84、アクセルセンサ87、車速センサ88、及びGPS受信機89を有する。シフトポジションセンサ84は、シフトレバー82の操作位置をレバー位置LVとして検出する。アクセルセンサ87は、車両500におけるアクセルペダルの踏み込み量をアクセル操作量ACCとして検出する。車速センサ88は、車両500の走行速度を車速SPとして検出する。GPS受信機89は、車両500の現在の位置座標Uに関する信号をGPS衛星から受信する。位置座標Uは、詳細には、緯度及び経度の座標値である。
【0025】
<制御装置の概略構成>
車両500は、制御装置100を有する。制御装置100は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。なお、制御装置100は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、またはそれらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU102及び、RAM並びにROM104等のメモリを含む。メモリは、処理をCPU102に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。また、制御装置100は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである記憶装置106を有する。
【0026】
制御装置100は、車両500に取り付けられている各種センサからの検出信号を受信する。具体的には、制御装置100は、次の各パラメータについての検出信号を受信する。
【0027】
・エアフロメータ61が検出する吸気量GA
・第1温度センサ62が検出するGPF23の温度TF
・第2温度センサ63が検出する冷却水の温度TW
・クランク角センサ64が検出するクランク軸31の回転位置CR
・シフトポジションセンサ84が検出するレバー位置LV
・アクセルセンサ87が検出するアクセル操作量ACC
・車速センサ88が検出する車速SP
また、制御装置100は、GPS受信機89が受信した現在の位置座標Uに関する信号を受信する。
【0028】
制御装置100は、予め地図データを記憶している。地図データは、複数のノード及び複数のリンクを有する。各ノードは、位置座標を示している。各リンクは、隣り合うノード間を結ぶ線分として定められている。各リンクは、道路を示している。複数のノード及び複数のリンクは、道路マップを構成している。また、地図データは、ノード毎の標高の情報を含んでいる。
【0029】
制御装置100は、自動変速機50を制御対象とする。制御装置100は、レバー位置LVに応じて自動変速機50のシフトレンジを切り替える。
制御装置100は、内燃機関10を制御対象とする。制御装置100は、車速SP及びアクセル操作量ACCから把握される要求トルクに基づいて、内燃機関10の各種部位を制御する。制御装置100は、状況に応じて内燃機関10をアイドル運転状態に制御する。例えば、制御装置100は、自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジであり、且つアクセル操作量ACCがゼロの場合、クランク軸31の回転速度(以下、機関回転速度と記す。)NEが目標アイドル回転速度になるように内燃機関10を制御する。このとき、制御装置100は、スロットルバルブ16の開度をフィードバック制御したり、それに合わせて気筒11への燃料の供給量を調整したりする。制御装置100は、目標アイドル回転速度を予め記憶している。なお、制御装置100は、自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジであり、且つアクセル操作量ACCがゼロよりも大きい場合、アクセル操作量ACCに応じたトルクを出力するように内燃機関10を制御する。
【0030】
制御装置100は、各種センサからの受信した検出信号に基づいて、内燃機関10の運転状態を示す各種パラメータを随時算出する。具体的には、制御装置100は、クランク軸31の回転位置CRに基づいて、機関回転速度NEを算出する。また、制御装置100は、機関回転速度NE及び吸気量GAに基づいて、機関負荷KLを算出する。さらに、制御装置100は、機関負荷KL及び冷却水の温度TWに基づいて、GPF23に堆積しているPMの量(以下、PM堆積量と記す。)Zを算出する。
【0031】
<燃料カット処理>
制御装置100は、内燃機関10を制御する上での複数の処理の1つとして、燃料カット処理を実行可能である。燃料カット処理は、GPF23に堆積しているPMをGPF23から除去するための処理である。制御装置100は、燃料カット処理では、停止パターン及び燃焼パターンを、内燃機関10の運転を継続させつつ交互に繰り返す。停止パターンは、燃焼行程を迎える気筒11の順にM個連続して気筒11への燃料供給を停止するパターンである。燃料供給を停止する気筒11(以下、停止気筒と記す。)の個数Mについては後述する。燃焼パターンは、燃焼行程を迎える気筒11の順にN個連続して気筒11への燃料供給を行うパターンである。燃料供給を行う気筒11(以下、燃焼気筒と記す。)の個数Nについては後述する。なお、制御装置100は、燃料カット処理を実行する際、停止気筒については点火プラグ19による点火を停止し、燃焼気筒については点火プラグ19による点火を行う。
【0032】
本実施形態において、制御装置100は、2種類の燃料カット処理を実行可能である。一方の燃料カット処理である第1燃料カット処理は、停止気筒の個数Mを「1」、燃焼気筒の個数Nを「3」とするものである。すなわち、制御装置100は、第1燃料カット処理では、1燃焼サイクルの中で4つの気筒11のうちの1つに対しては燃料供給を停止する一方で残りの3つに対しては燃料供給を行う。1燃焼サイクルは、4つの気筒11が1度ずつ燃焼行程を迎える一連の過程、すなわちクランク軸31が2回転する期間のことである。他方の燃料カット処理である第2燃料カット処理は、停止気筒の個数Mを「2」、燃焼気筒の個数Nを「2」とするものである。すなわち、制御装置100は、第2燃料カット処理では、1燃焼サイクルの中で4つの気筒11のうちの2つに対しては燃料供給を停止する一方で残りの2つに対しては燃料供給を行う。なお、以下では、上記の2種類の燃料カット処理について、これらを個別に説明するときは第1燃料カット処理と第2燃料処理と呼称し、これらの2種類を総称して説明するときは燃料カット処理と呼称する。
【0033】
制御装置100は、第1燃料カット処理でも第2燃料カット処理でも、燃焼気筒に対して、当該燃焼気筒内の混合気の空燃比が理論空燃比になるように燃料供給を行う。ここで、燃料カット処理の実行を通じてGPF23からPMを除去するメカニズムを説明する。いま、燃焼気筒に対して燃料供給を行うとともに、点火プラグ19による点火を行ったとする。この場合、燃焼気筒では、混合気が燃焼する。すると、燃焼気筒は、高温な排気を排気通路21に排出する。一方、停止気筒は、酸素を排気通路21に排出する。燃焼気筒が排出した高温な排気と、停止気筒が排出した酸素がGPF23に至ると、GPF23に堆積しているPMが燃焼する。そして、PMは消失する。こうした過程を通じて、GPF23からPMを除去すること、すなわちGPF23の再生を実現できる。なお、第2燃料カット処理では第1燃料カットに比べて停止気筒の個数Mが増える。これに伴い、第2燃料カット処理では第1処理に比べて、1燃焼サイクル当たりにGPF23に供給する酸素の量が増える。
【0034】
<第1件判定処理の概要>
制御装置100は、第1判定処理を実行可能である。第1判定処理は、第1燃料カット処理の開始条件である第1開始条件の成立可否を判定するための処理である。
【0035】
第1開始条件は、次の5つの項目が全て成立していることである。
(1A)自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジである。
(1B)現状のアクセル操作量ACCがゼロである。
(1C)現状のPM堆積量Zが開始堆積量ZA以上である。
(1D)車両500が降坂路を走行している。
(1E)この後、降坂路が判定距離L以上続く。
(1F)第1温度T1が設定温度TA以下である。
【0036】
第1開始条件を規定している各変数の内容を説明する。
開始堆積量ZAは、GPF23におけるPM堆積量Zが相応に多く、GPF23からPMを除去することが望まれる値として、例えば実験又はシミュレーションで予め定められている。制御装置100は、開始堆積量ZAを予め記憶している。
【0037】
判定距離Lは、第1燃料カット処理を行ったときに、GPF23において相応の量のPMの除去を期待できる走行距離として、実験又はシミュレーションで定められている。制御装置100は、判定距離Lを予め記憶している。
【0038】
第1温度T1は、第1燃料カット処理を行うことによって現状のPM堆積量Zを終了堆積量ZBにまで減少させたと仮定したときのGPF23の推定温度である。設定温度TAは、GPF23の損傷を防止する上で許容されるGPF23の温度TFの最大値として、例えば実験又はシミュレーションで予め定められている。GPF23の損傷とは、例えばGPF23が溶解することである。制御装置100は、設定温度TAを予め記憶している。終了堆積量ZBは、PM堆積量Zが十分に小さくなり、PMの除去の処理を終了してもよい値として、例えば実験又はシミュレーションで予め定められている。終了堆積量ZBは、開始堆積量ZAよりも小さい。制御装置100は、終了堆積量ZBを予め記憶している。
【0039】
第1温度T1は、現状のPM堆積量Z及び現状のGPF23の温度TFに応じて変わる。例えば、現状のPM堆積量Zと終了堆積量ZBとの差が大きければ、その分、多くの量のPMを燃焼させることに伴ってGPF23の昇温量は大きくなる。また、昇温量が同じであっても、初期温度である現状のGPF23の温度TFが高ければ、その分、最終温度である上記の第1温度T1も高くなる。そこで、本実施形態において、制御装置100は、第1昇温量ΔT1と現状のGPF23の温度TFとに基づいて第1温度T1を算出する。第1昇温量ΔT1は、第1燃料カット処理を行うことによって現状のPM堆積量Zを終了堆積量ZBにまで減少させたと仮定したときのGPF23の昇温量である。制御装置100は、この第1昇温量ΔT1に現状のGPF23の温度TFを加算することで、第1温度T1を算出する。なお、第1温度T1を算出する処理は、第1推定処理である。
【0040】
制御装置100は、第1昇温量ΔT1を算出するための情報として、第1昇温マップを予め記憶している。第1昇温マップは、第1燃料カット処理を行った場合における、GPF23でのPMの減少量と、GPF23の昇温量との関係を表したものである。上記の第1昇温マップは、第1燃料カット処理を行ったときにGPF23に供給される全ガス中の酸素の量に応じたGPF23の昇温量を反映したものになっている。第1昇温マップは、例えば実験又はシミュレーションに基づいて作成されたものである。
【0041】
<第2件判定処理の概要>
制御装置100は、第2判定処理を実行可能である。第2判定処理は、第2燃料カット処理の開始条件である第2開始条件の成立可否を判定するための処理である。なお、制御装置100は、第1燃料カット処理の実行中に第2判定処理を行う。つまり、第2判定処理は、第1燃料カット処理から第2燃料カット処理への切り替の可否を判定するための処理である。
【0042】
第2開始条件は、次の2つの項目が全て成立していることである。
(2A)PM堆積量Zが設定堆積量ZC以下である。
(2B)第2温度T2が設定温度TA以下である。
【0043】
第2開始条件を規定している各変数の内容を説明する。
先ず、設定堆積量ZCについて説明する。前提として、GPF23は、全体として円柱状である。GPF23が排気通路21に配置された状態において、GPF23の中心軸線は、排気の流れる方向に概ね沿うように延びている。GPF23には、PMが堆積し易い箇所である堆積集中箇所23aが存在する。堆積集中箇所23aは、具体的には、GPF23における上流側の部分であって、且つ径方向の内側の部分である。なお、
図1では、GPF23におけるPMの堆積の様子をドットの密度の大小によって模式的に示している。
図1において、堆積集中箇所23aは、ドット密度の濃い領域である。GPF23においてPM堆積量Zの総量が多い場合、堆積集中箇所23aでのPM堆積量Zは相当に多くなる。上記のとおり、第2燃料カット処理では第1燃料カットに比べてGPF23に供給する酸素の量が多くなる。堆積集中箇所23aに多くのPMが多く堆積している状況下で当該堆積集中箇所23aに多くの酸素を供給すると、堆積集中箇所23aでのPMの燃焼に応じて当該堆積集中箇所23aが局所的に高温になる。そして、GPF23が異常な発熱状態になり得る。設定堆積量ZCは、第2燃料カットを行った場合でもGPF23が異常な発熱状態にならないPM堆積量Zの最大値として、例えば実験又はシミュレーションで予め定められている。設定堆積量ZCは、例えば、開始堆積量ZAの2割の値である。制御装置100は、設定堆積量ZCを予め記憶している。
【0044】
次に、第2温度T2について説明する。第2温度T2は、第2燃料カット処理を行うことによって現状のPM堆積量Zを終了堆積量ZBにまで減少させたと仮定したときのGPF23の推定温度である。第2温度T2は、上記の第1温度T1と同様、現状のPM堆積量Z及び現状のGPF23の温度TFに応じて変わる。そこで、制御装置100は、第2昇温量ΔT2と、現状のGPF23の温度TFとに基づいて第2温度T2を算出する。第2昇温量ΔT2は、第2燃料カット処理を行うことによって現状のPM堆積量Zを終了堆積量ZBにまで減少させたと仮定したときのGPF23の昇温量である。制御装置100は、この第2昇温量ΔT2を現状のGPF23の温度TFに加算することで、第2温度T2を算出する。第2温度T2を算出する処理は、第2推定処理である。
【0045】
制御装置100は、第2昇温量ΔT2を算出するための情報として、第2昇温マップを予め記憶している。第2昇温マップは、第2燃料カット処理を行った場合における、PM堆積量Zの減少量と、GPF23の昇温量との関係を表したものである。第2昇温マップは、第2燃料カット処理を行ったときにGPF23に供給される全ガス中の酸素の量に応じたGPF23の昇温量を反映したものになっている。ここで、GPF23に対する酸素の供給量が多い場合、少ない場合に比べて、GPF23はよりPMが燃焼し易い環境になる。したがって、前者の場合、後者の場合に比べて、GPF23におけるPMの燃焼が促進される。そして、PMがより多く燃焼する。この結果、前者の場合、後者の場合に比べて、GPF23の昇温量が大きくなる。このことを反映し、第2昇温マップと第1昇温マップとではつぎのような違いがある。すなわち、PM堆積量Zの減少量が第1値であるときの、第2昇温マップにおけるGPF23の昇温量は、第1昇温マップにおけるGPF23の昇温量よりも大きい。なお、第2昇温マップは、例えば実験又はシミュレーションに基づいて作成されたものである。
【0046】
<終了判定処理について>
制御装置100は、終了判定処理を実行可能である。終了判定処理は、現在実行中の燃料カット処理の終了条件の成立可否を判定するための処理である。現在実行中の燃料カット処理は、第1燃料カット処理であることも第2燃料カット処理であることもあり得る。本実施形態では、これら第1燃料カット処理及び第2燃料カット処理の双方について同一の終了条件を設定している。
【0047】
終了条件は、次の複数の項目の少なくとも1つが成立することである。
(3A)自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジ以外である。
(3B)現状のアクセル操作量ACCがゼロよりも大きい。
(3C)降坂路の終了地点に到達済みである。
(3D)現状のGPF23の温度TFが判定温度TBよりも大きい。
(3E)現状のPM堆積量Zが終了堆積量ZB以下である。
【0048】
終了条件を規定している各変数の内容を説明する。
終了堆積量ZBは、第1判定処理との関連で既に説明したとおりである。制御装置100は、終了堆積量ZBを予め記憶している。
【0049】
判定温度TBは、つぎのような値である。上記のとおり、第1開始条件の項目(1F)は、第1燃料カット処理を行ったと仮定したときのGPF23の温度TFの推定値に関するものである。この項目を含むことから、制御装置100は、第1燃料カット処理を行った場合でもGPF23が過昇温しないことが見込まれる状況で第1燃料カット処理を開始することになる。一方で、実際に燃料カット処理を行ってPMを燃焼させた際、例えばGPF23に供給される酸素量の誤差等に伴い、第1昇温マップで規定されるGPF23の昇温量を上回る昇温が生じることもあり得る。同様のことは、第2燃料カット処理についてもいえる。上記の項目(3D)は、このような、実際にPMの燃焼を行っている過程でのGPF23の過昇温を避けるため要件である。そして、判定温度TBは、実際に燃料カット処理を行っている状況下において、GPF23の損傷を防止する上で許容されるGPF23の温度TFの最大値として、例えば実験又はシミュレーションで予め定められている。制御装置100は、判定温度TBを予め記憶している。
【0050】
<第1判定処理の具体的な処理手順>
制御装置100は、内燃機関10の運転中であり、且つ、第1燃料カット処理及び第2燃料カット処理のいずれも実行していないときに、第1判定処理を繰り返し実行する。
【0051】
図2に示すように、制御装置100は、第1判定処理を開始すると、先ずステップS110の処理を実行する。ステップS110において、制御装置100は、自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジであるか否かを判定する。制御装置100は、自動変速機50に関する制御内容を参照してこの判定を行う。制御装置100は、自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジではない場合(ステップS110:NO)、第1判定処理の一連の処理を一旦終了する。この場合、制御装置100は、ステップS110の処理を再度実行する。
【0052】
一方、ステップS110において、制御装置100は、自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジである場合(ステップS110:YES)、処理をステップS120に進める。なお、ステップS110の処理は、第1開始条件の項目(1A)の成立可否を判定するための処理である。
【0053】
ステップS120において、制御装置100は、現状のアクセル操作量ACCがゼロであるか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、最新のアクセル操作量ACCを参照する。制御装置100は、最新のアクセル操作量ACCがゼロよりも大きい場合(ステップS120:NO)、第1判定処理の一連の処理を一旦終了する。そして、制御装置100は、ステップS110の処理を再度実行する。
【0054】
一方、ステップS120において、制御装置100は、最新のアクセル操作量ACCがゼロである場合(ステップS120:YES)、処理をステップS130に進める。なお、ステップS120の処理は、第1開始条件の項目(1B)の成立可否を判定するための処理である。
【0055】
ステップS130において、制御装置100は、現状のPM堆積量Zが開始堆積量ZA以上であるか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、最新のPM堆積量Zと、開始堆積量ZAとを参照する。そして、制御装置100は、これらの値の大小を比較する。制御装置100は、最新のPM堆積量Zが開始堆積量ZA未満の場合(ステップS130:NO)、第1判定処理の一連の処理を一旦終了する。そして、制御装置100は、ステップS130の処理を再度実行する。
【0056】
一方、ステップS130において、制御装置100は、最新のPM堆積量Zが開始堆積量ZA以上の場合(ステップS130:YES)、処理をステップS140に進める。なお、ステップS130の処理は、第1開始条件の項目(1C)の成立可否を判定するための処理である。
【0057】
ステップS140において、制御装置100は、車両500が走行中であるか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、最新の車速SPを参照する。そして、制御装置100は、車速SPがゼロである場合、車両500は停止中であると判定する(ステップS140:NO)。この場合、制御装置100は、第1判定処理の一連の処理を一旦終了する。そして、制御装置100は、ステップS110の処理を再度実行する。
【0058】
一方、ステップS140において、制御装置100は、車速SPがゼロよりも大きい場合、車両500は走行中であると判定する(ステップS140:YES)。この場合、制御装置100は、処理をステップS150に進める。なお、ステップS140及び後述のステップS150の処理は、第1開始条件の項目(1D)の成立可否を判定するための処理である。
【0059】
ステップS150において、制御装置100は、車両500が走行している道路が降坂路であるか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、地図データ、最新の位置座標U、及び1つ前のタイミングで受信した位置座標Uを参照する。そして、制御装置100は、最新の位置座標Uに基づいて、地図データにおける道路マップの中での車両500の現在位置を特定する。この後、制御装置100は、地図データに含まれる標高の情報に基づいて、車両500が現在位置しているリンクの路面勾配を把握する。なお、本実施形態の地図データは、例えば、登坂路と降坂路とが交互に続いている場合、登坂路の最下地点から最上地点までを1つのリンクで表しており、降坂路の最上地点から最下地点までを1つのリンクで表している。つまり、地図データは、一続きの坂路における最上地点から最下地点までを、1つのリンクで表している。そして、坂路を表しているリンクの両端のノードは、坂路の最上地点と最下地点となっている。
【0060】
さて、制御装置100は、車両500が現在位置しているリンクの路面勾配を把握するにあたり、リンクの両端のノードの標高の差を参照する。制御装置100は、車両500が現在位置しているリンクの路面勾配がゼロとみなせる範囲内の値である場合、車両500が走行しているリンクは坂路ではないと判定する(ステップS150:NO)。この場合、制御装置100は、第1判定処理の一連の処理を一旦終了する。この場合、制御装置100は、ステップS110の処理を再度実行する。
【0061】
一方、制御装置100は、車両500が現在位置しているリンクの路面勾配がゼロとみなせる値よりも大きい場合、車両500が走行しているリンクは坂路であると判定する。この場合、制御装置100は、最新の位置座標Uと一つ前のタイミングの位置座標Uとに基づいて、車両500の進行方向を特定する。そして、制御装置100は、車両500が標高の高い側から低い側に向けて走行しているか否かを判定する。制御装置100は、車両500が標高の低い側から高い側に向けて走行している場合、車両500が走行しているリンクは登坂路であると判定する(ステップS150:NO)。この場合、制御装置100は、第1判定処理の一連の処理を一旦終了する。そして、制御装置100は、ステップS110の処理を再度実行する。一方、制御装置100は、車両500が標高の高い側から低い側に向けて走行している場合、車両500が走行しているリンクは降坂路であると判定する(ステップS150:YES)。この場合、制御装置100は、ステップS160に処理を進める。
【0062】
ステップS160において、制御装置100は、この後降坂路が判定距離L以上続くか否かを判定する。制御装置100は、地図データ、及びステップS150で特定した情報を参照してステップS160の処理を行う。具体的には、制御装置100は、道路マップ上での車両500の現在位置、車両500が現在走行しているリンクを参照する。そして、制御装置100は、車両500の現在位置から、車両500が現在走行しているリンクにおける車両500の進行方向側のノードまでの経路の長さである推定距離を算出する。この後、制御装置100は、判定距離Lを参照する。そして、制御装置100は、推定距離と判定距離Lとの大小を比較する。制御装置100は、推定距離が判定距離L未満である場合、この後降坂路は判定距離L以上続かないと判定する(ステップS160:NO)。この場合、制御装置100は、第1判定処理の一連の処理を一旦終了する。この場合、制御装置100は、ステップS110の処理を再度実行する。
【0063】
一方、ステップS160において、制御装置100は、推定距離が判定距離L以上である場合、この後降坂路が判定距離L以上続くと判定する(ステップS160:YES)。この場合、制御装置100は、処理をステップS170に進める。なお、ステップS160の処理は、第1開始条件の項目(1E)の成立可否を判定するための処理ある。
【0064】
ステップS170において、制御装置100は、第1昇温量ΔT1を算出する。上記のとおり、第1昇温量ΔT1は、第1燃料カット処理を行うことによって現状のPM堆積量Zを終了堆積量ZBにまで減少させたと仮定したときのGPF23の昇温量である。ステップS170における具体的な処理として、制御装置100は、最新のPM堆積量Zと、終了堆積量ZBとを参照する。そして、制御装置100は、最新のPM堆積量Zから終了堆積量ZBを減算して得られる第1差分値ΔZ1を算出する。次に、制御装置100は、第1昇温マップを参照する。そして、制御装置100は、第1昇温マップに基づいて、第1差分値ΔZ1に対応するGPF23の昇温量を算出する。この後、制御装置100は、処理をステップS180に進める。
【0065】
ステップS180において、制御装置100は、第1温度T1を算出する。上記のとおり、第1温度T1は、第1燃料カット処理を行うことによって現状のPM堆積量Zを終了堆積量ZBにまで減少させたと仮定したときのGPF23の推定温度である。ステップS180における具体的な処理として、制御装置100は、最新のGPF23の温度TFと、ステップS170で算出した第1昇温量ΔT1とを参照する。そして、制御装置100は、これらの値を加算することで第1温度T1を算出する。この後、制御装置100は、処理をステップS190に進める。なお、ステップS170及びステップS180の処理は、第1推定処理である。
【0066】
ステップS190において、制御装置100は、第1温度T1が設定温度TA以下であるか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、ステップS180で算出した第1温度T1と設定温度TAとを参照する。そして、制御装置100は、これらの大小を比較する。制御装置100は、第1温度T1が設定温度TAよりも大きい場合(ステップS190:NO)、第1判定処理の一連の処理を一旦終了する。この場合、制御装置100は、ステップS110の処理を再度実行する。
【0067】
一方、ステップS190において、制御装置100は、第1温度T1が設定温度TA以下である場合(ステップS190:YES)、処理をステップS200に進める。なお、ステップS190の処理は、第1開始条件の項目(1F)の成立可否を判定するための処理である。
【0068】
ステップS200において、制御装置100は、第1燃料カット処理を開始する。この場合、制御装置100は、第1判定処理の一連の処理を終了する。なお、ステップS200の処理を経て第1判定処理を終了した場合、第1燃料カット処理及び第2燃料カット処理のいずれも実行していないという第1判定処理の実行条件を満たさない状況になる。したがって、この場合、制御装置100は、第1燃料カット処理及び第2燃料カット処理のいずれも実行していない状態となるまで、第1判定処理の実行を待機する。すなわち、制御装置100は、後述の終了判定処理のステップS480を実行することによって第1燃料カット処理又は第2燃料カット処理を終了するまで第1判定処理の実行を待機する。そして、制御装置100は、終了判定処理でステップS480を実行すると、第1判定処理を再開する。なお、制御装置100は、上記の第1判定処理の実行途中で車両500のイグニッションスイッチがオフになった場合、その時点で第1判定処理を終了する。
【0069】
<第2判定処理の具体的な処理手順>
制御装置100は、第1燃料カット処理を開始すると、第2判定処理を開始する。なお、制御装置100は、第1燃料カット処理の実行中に、繰り返し第2判定処理を実行する。
【0070】
図3に示すように、制御装置100は、第2判定処理を開始すると、先ずステップS310の処理を実行する。ステップS310において、制御装置100は、現状のPM堆積量Zが設定堆積量ZC以下であるか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、最新のPM堆積量Zと設定堆積量ZCとを参照する。そして、制御装置100は、これらの大小を比較する。制御装置100は、最新のPM堆積量Zが設定堆積量ZCよりも大きい場合(ステップS310:NO)、第2判定処理の一連の処理を一旦終了する。この場合、制御装置100は、ステップS310の処理を再度実行する。
【0071】
一方、ステップS310において、制御装置100は、PM堆積量Zが設定堆積量ZC以下である場合(ステップS310:YES)、処理をステップS320に進める。この状況は、後述の終了判定処理によって第1燃料カット処理を終了すると判定されるよりも前に、第1燃料カット処理に伴ってPM堆積量Zが設定堆積量ZC以下に減少した状況である。なお、上記ステップS310の処理は、第2開始条件の項目(2A)の成立可否を判定するための処理である。
【0072】
ステップS320において、制御装置100は、第2昇温量ΔT2を算出する。上記のとおり、第2昇温量ΔT2は、第2燃料カット処理を行うことによって現状のPM堆積量Zを終了堆積量ZBにまで減少させたと仮定したときのGPF23の昇温量である。ステップS320における具体的な処理として、制御装置100は、最新のPM堆積量Zと、終了堆積量ZBを参照する。そして、制御装置100は、最新のPM堆積量Zから終了堆積量ZBを減算して得られる第2差分値ΔZ2を算出する。次に、制御装置100は、第2昇温マップを参照する。そして、制御装置100は、第2昇温マップに基づいて、第2差分値ΔZ2に対応するGPF23の昇温量を算出する。この後、制御装置100は、処理をステップS330に進める。
【0073】
ステップS330において、制御装置100は、第2温度T2を算出する。上記のとおり、第2温度T2は、第2燃料カット処理を行うことによって現状のPM堆積量Zを終了堆積量ZBにまで減少させたと仮定したときのGPF23の推定温度である。ステップS330における具体的な処理として、制御装置100は、最新のGPF23の温度TFと、ステップS320で算出した第2昇温量ΔT2とを参照する。そして、制御装置100は、これらの値を加算することで第2温度T2を算出する。この後、制御装置100は、処理をステップS340に進める。なお、ステップS320及びステップS330の処理は、第2推定処理である。
【0074】
ステップS340において、制御装置100は、第2温度T2が設定温度TA以下であるか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、ステップS330で算出した第2温度T2と、設定温度TAとを参照する。そして、制御装置100は、これらの大小を比較する。制御装置100は、第2温度T2が設定温度TAよりも大きい場合(ステップS340:NO)、第2判定処理の一連の処理を一旦終了する。この場合、制御装置100は、ステップS310の処理を再度実行する。
【0075】
一方、ステップS340において、制御装置100は、第2温度T2が設定温度TAZC以下である場合(ステップS340:YES)、処理をステップS350に進める。この状況は、終了判定処理によって第1燃料カット処理を終了すると判定されるよりも前に、第1燃料カット処理に伴って第2温度T2が設定温度TA以下に減少した状況である。なお、ステップS340の処理は、第2開始条件の項目(2B)の成立可否を判定するための処理である。
【0076】
ステップS350において、制御装置100は、第1燃料カット処理を終了し、第2燃料カット処理を開始する。この後、制御装置100は、第2判定処理の一連の処理を終了する。なお、ステップS350の処理を経て第2判定処理を終了した場合、第1燃料カット処理を実行中であるという第2判定処理の実行条件を満たさない状況になる。したがって、この場合、制御装置100は、次に第1燃料カット処理を開始するまで、第2判定処理の実行を待機する。なお、第1判定処理の場合と同様、制御装置100は、第2判定処理の実行途中で車両500のイグニッションスイッチがオフになった場合、その時点で第2判定処理を終了する。
【0077】
<終了判定処理の具体的な処理手順>
制御装置100は、第1燃料カット処理又は第2燃料カット処理を実行している場合に、これら燃料カット処理と並行して、終了判定処理を繰り返し実行する。
【0078】
図4に示すように、制御装置100は、終了判定処理を開始すると、先ずステップS410の処理を実行する。ステップS410において、制御装置100は、自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジであるか否かを判定する。制御装置100は、第1判定処理のステップS110と同様、自動変速機50に関する制御内容を参照することでこの判定を行う。制御装置100は、自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジではない場合(ステップS410:NO)、処理をステップS480に進める。
【0079】
ステップS480において、制御装置100は、現在実行中の燃料カット処理を終了する。すなわち、制御装置100は、第1燃料カット処理を現在実行中である場合には、第1燃料カット処理を終了する。また、制御装置100は、第2燃料カット処理を現在実行中である場合には、第2燃料カット処理を終了する。この後、制御装置100は、終了判定処理の一連の処理を終了する。なお、ステップS480の処理を経て終了判定処理を終了した場合、第1燃料カット処理及び第2燃料カット処理のいずれの燃料カット処理も実行していない状況になる。この場合、第1燃料カット処理又は第2燃料カット処理を実行している、という終了判定処理の実行条件が満たされない状況になる。この場合、制御装置100は、次に第1燃料カット処理を開始するまで終了判定処理の実行を待機する。また、制御装置100は、ステップS480の処理を経て終了判定処理を終了した場合、第1判定処理の実行条件が満たされることから、第1判定処理を開始する。
【0080】
さて、ステップS410において、制御装置100は、自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジである場合(ステップS410:YES)、処理をステップS420に進める。なお、ステップS410の処理は、終了条件の項目(3A)の成立可否を判定するための処理である。
【0081】
ステップS420において、制御装置100は、現状のアクセル操作量ACCがゼロであるか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、最新のアクセル操作量ACCを参照する。そして、制御装置100は、最新のアクセル操作量ACCがゼロよりも大きい場合(ステップS420:NO)、ステップS480に処理を進める。そして、制御装置100は、現在実行中の燃料カット処理を終了する。
【0082】
一方、ステップS420において、制御装置100は、最新のアクセル操作量ACCがゼロである場合(ステップS420:YES)、処理をステップS430に進める。なお、ステップS420の処理は、終了条件の項目(3B)の成立可否を判定するための処理である。
【0083】
ステップS430において、制御装置100は、車両500が降坂路の終了地点に未到達であるか否かを判定する。ステップS430の具体的な処理として、制御装置100は、地図データ、ステップS150で特定した情報、及び最新の位置座標Uを参照する。そして、制御装置100は、最新の位置座標Uに基づいて、地図データにおける道路マップの中での車両500の現在位置を特定する。この後、制御装置100は、最新の位置座標Uが、ステップS150で特定したリンクの進行方向側のノードの位置座標と一致するか否かを判定する。制御装置100は、上記判定が肯定である場合、車両500は降坂路の終了地点に到達済みであると判定する(ステップS430:NO)。また、制御装置100は、最新の位置座標Uが、ステップS150で特定したリンク上にない場合も、車両500は降坂路の終了地点に到達済みであると判定する(ステップS430:NO)。これらの場合、制御装置100は、ステップS480に処理を進める。そして、制御装置100は、現在実行中の燃料カット処理を終了する。
【0084】
一方、ステップS430において、制御装置100は、次の場合には、車両500は降坂路の終了地点に未到達であると判定する。すなわち、最新の位置座標Uが、ステップS150で特定したリンクの進行方向側のノードの位置座標と一致せず、且つ最新の位置座標Uが当該リンク上にある場合である。この場合(ステップS430:NO)、制御装置100は、処理をステップS440に進める。なお、ステップS430の処理は、終了条件の項目(3C)の成立可否を判定するための処理である。
【0085】
ステップS440において、制御装置100は、現状のGPF23の温度TFが判定温度TB以下であるか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、最新のGPF23の温度TFと判定温度TBとを参照する。そして、制御装置100は、これらの大小を比較する。制御装置100は、最新のGPF23の温度TFが判定温度TBよりも大きい場合(ステップS440:NO)、ステップS480に処理を進める。そして、制御装置100は、現在実行中の燃料カット処理を終了する。
【0086】
一方、制御装置100は、最新のGPF23の温度TFが判定温度TB以下である場合(ステップS440:YES)、処理をステップS450に進める。なお、ステップS440の処理は、終了条件の項目(3D)の成立可否を判定するための処理である。
【0087】
ステップS450において、制御装置100は、現状のPM堆積量Zが終了堆積量ZBよりも大きいか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、最新のPM堆積量Zと終了堆積量ZBとを参照する。そして、制御装置100は、これらの大小を比較する。制御装置100は、最新のPM堆積量Zが終了堆積量ZB以下の場合(ステップS450:NO)、ステップS480に処理を進める。そして、制御装置100は、現在実行中の燃料カット処理を終了する。
【0088】
一方、制御装置100は、最新のPM堆積量Zが終了堆積量ZBよりも大きい場合(ステップS450:YES)、終了判定処理の一連の処理を一旦終了する。この場合、制御装置100は、ステップS410の処理を再度実行する。なお、ステップS450の処理は、終了条件の項目(3E)の成立可否を判定するための処理である。
【0089】
以上が終了判定処理の処理内容である。制御装置100は、終了判定処理の実行途中で車両500のイグニッションスイッチがオフになった場合、その時点で終了判定処理を終了する。
【0090】
<実施形態の作用>
(イ)各処理の開始及び終了の全体的な流れについて
いま、車両500のイグニッションスイッチがオンに操作されて、内燃機関10が始動したとする。すると、制御装置100は、第1判定処理を開始する。そして、制御装置100は、第1判定処理を繰り返す。すなわち、制御装置100は、第1開始条件の成立可否の判定を繰り返す。内燃機関10が始動した後、車両500が走行を開始し、車両500が相応に距離の長い降坂路に差し掛かったものとする。そして、乗員が自動変速機50のシフトレンジをニュートラルレンジとし、且つアクセルペダルを解放したものとする。このとき、第1温度T1が設定温度TA以下であると、第1開始条件が成立する(ステップS110~ステップS160:YES、ステップS190:YES)。第1開始条件が成立すると、制御装置100は、第1燃料カット処理を開始する(ステップS200)。それとともに、制御装置100は、第1判定処理を繰り返し実行することを終了する。なお、制御装置100が燃料カット処理を開始すると、GPF23に酸素が供給される。このことにより、GPF23ではPMが燃焼する。そして、PM堆積量Zは徐々に減少していく。
【0091】
制御装置100は、第1燃料カット処理を開始すると、第2判定処理及び終了判定処理を開始する。そして、制御装置100は、これらの処理を繰り返す。すなわち、制御装置100は、第2開始条件及び終了判定条件の双方について成立可否の判定を繰り返す。この後の処理の流れは、以下の2つケースで異なる。
【0092】
第1のケースは、第1燃料カット処理の開始後、第2開始条件が成立するよりも前に終了条件が成立するケースである。第1のケースは、例えば、第1燃料カット処理の開始後に比較的早い段階で乗員が自動変速機50のシフトレンジをニュートラルレンジ以外に切り替える(ステップS410:NO)といったケースである。第1のケースの場合、制御装置100は、その時点で第1燃料カット処理を終了し(ステップS480)、終了判定処理を繰り返し実行するのを終了する。この場合、制御装置100は、第2判定処理を繰り返し実行するのを終了する。また、制御装置100は、第1判定処理を再開する。
【0093】
第2のケースは、第1燃料カット処理の開始後、終了条件が成立するよりも前に第2開始条件が成立するケースである。第2のケースは、例えば、乗員がシフトレンジをニュートラルレンジのまま長期に亘って切り替えず、終了条件が成立しない期間が相応に長く継続するケースである。終了条件が成立しない期間において、第1燃料カット処理に伴ってPM堆積量Zが設定堆積量ZC以下になり(ステップS310:YES)、且つ、第2温度T2が設定温度TA以下になる(ステップS340:YES)と、第2条件が成立する。すると、制御装置100は、第1燃料カット処理を終了し、第2燃料カット処理を開始する(ステップS350)。それとともに、制御装置100は、第2判定処理を繰り返し実行するのを終了する。制御装置100は、この後も終了判定処理を繰り返す。この後、制御装置100は、終了条件が成立するまで第2燃料カット処理を継続する。それに伴い、PM堆積量Zは徐々に減少する。この後、例えば車両500が降坂路を走行し終えたり(ステップS430:NO)PM堆積量Zが終了堆積量ZB以下(ステップS450:NO)なったりして終了条件が成立すると、制御装置100は、第2燃料カット処理を終了する(ステップS480)。それとともに、制御装置100は、終了判定処理を繰り返し実行するのを終了する。そして、制御装置100は、第1判定処理を再開する。
【0094】
(ロ)燃料カット処理を2段階で行うことについて
上記第2のケースでは、制御装置100は、一続きの燃料カット処理の途中で、当該燃料カット処理の種類を第1燃料カット処理から第2燃料カット処理へと切り替える。この場合、GPF23に対する酸素の供給量を変える形で、2段階でGPF23からPMを除去することになる。第1燃料カット処理を行っている期間では、GPF23に対する酸素の供給量は相応に少ない。この場合、酸素の供給量が少ない分、GPF23全体としては、PMの燃焼は進行し難い。一方、酸素の供給量が少ないことで、堆積集中箇所23aでは適度にPMが燃焼する。すなわち、堆積集中箇所23aでは、一旦PMが燃焼を開始すると、ある程度の酸素の供給があれば、燃焼域が広がっていく。このとき、酸素の供給量がさほど多くないことで、堆積集中箇所23aでは、異常な発熱状態を招くことなくPMの燃焼が進む。
【0095】
堆積集中箇所23aのPM堆積量Zが徐々に減少していくと、やがて第2開始条件が成立する。そして、制御装置100は、2段階目となる第2燃料カット処理を開始する。第2燃料カット処理を行っている期間では、GPF23に対する酸素の供給量が多くなる。この場合、GPF23全体でPMの燃焼が進行する。すなわち、堆積集中箇所23a以外の部分である、GPF23における径方向の外寄りの部分、及びGPF23における下流側の部分でもPMが燃焼する。この結果として、GPF23全体で速やかにPMが消失していく。
【0096】
<実施形態の効果>
(1)降坂路の走行中において、自動変速機50がニュートラルレンジであり、且つ内燃機関10がアイドル運転状態である状況下では、車両500が走行する上での内燃機関10に対する出力の制約は少ない。制御装置100は、このような、内燃機関10の制御に相応の自由度がある状況下を狙って燃料カット処理を行う。その際、制御装置100は、現状のPM堆積量Zと現状のGPF23の温度TFとに基づいて、仮に第1燃料カット処理を行ったとした場合のGPF23の温度TFの将来の推定温度として第1温度T1を算出する。そして、制御装置100は、第1温度T1が設定温度TA以下であることを条件に第1燃料カット処理を行う。このことにより、制御装置100は、内燃機関10の制御に相応の自由度がある状況下のうち、第1燃料カット処理を行ってもGPF23が過昇温しないときに限って第1燃料カット処理を行う。このことにより、GPF23を損傷させることなく、GPF23からPMを除去できる。
【0097】
(2)第2燃料カット処理を行う場合、第1燃料カット処理を行う場合に比べて、GPF23に供給する酸素の量が多くなる。したがって、GPF23でのPMの燃焼を促進する上では、第1燃料カット処理よりも第2燃料カット処理のほうが有利である。一方で、GPF23に酸素を多く供給することは、次のような問題を生じ得る。すなわち、PM堆積量Zの総量が多く、それに付随して堆積集中箇所23aに多量のPMが堆積していることがある。この状況でGPF23に酸素を多く供給すると、GPF23が異常な発熱状態になり得る。
【0098】
そこで、制御装置100は、PM堆積量Zが設定堆積量ZC以下であることを条件に第2燃料カット処理を行う。つまり、制御装置100は、第2燃料カット処理を行ってもGPF23が異常な発熱状態に陥らないときに限って第2燃料カット処理を行う。
【0099】
また、制御装置100は、現状のPM堆積量Zと現状のGPF23の温度TFとに基づいて、仮に第2燃料カット処理を行ったとした場合のGPF23の温度TFの将来の推定温度として第2温度T2を算出する。そして、制御装置100は、第2温度T2が設定温度TA以下であることを条件に第2燃料カット処理を行う。つまり、制御装置100は、第2燃料カット処理を行ってもGPF23が過昇温しないときに限って第2燃料カット処理を行う。
【0100】
これらのようにして、GPF23が異常発熱したり過昇温したりしない状況下でのみ第2燃料カット処理を行ってGPF23への酸素の供給量を増やすことにより、GPF23の損傷させることなく、PMの除去を促進できる。
【0101】
(3)本実施形態において、制御装置100は、一続きの燃料カット処理中に、当該燃料カット処理における停止気筒の個数Mを切り替える。このことによって、制御装置100は、一続きの燃料カット処理中に、GPF23への酸素の供給量を変える。すなわち、制御装置100は、GPF23の除去を開始した初期では、停止気筒の数を最小限に留める。このことによって、制御装置100は、GPF23への酸素の供給量は少くする。この少ない酸素の供給により、堆積集中箇所23aのPMは適度に燃焼する。一方、制御装置100は、堆積集中箇所23aのPMがある程度減ると停止気筒の数を増やす。このことによって、GPF23への酸素の供給量が増える。それに伴い、GPF23全体でのPMの燃焼が促進される。このような態様でPMの燃焼を進行させていけば、一続きの燃料カット処理中の開始から終了まで、GPF23が異常な発熱状態になることはない。その上、堆積集中箇所23aのPMがある程度減った後は、酸素の増量に応じてGPF23全体からPMを速やかに除去できる。したがって、本実施形態では、GPF23を損傷させることなく、且つ効率よくGPF23からPMを除去できる。
【0102】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0103】
・第1開始条件は、上記実施形態の例に限定されない。第1開始条件は、項目(1A)(1D)及び(1F)が全て成立しているという内容を含んでいればよい。この内容を含んでいるのであれば、第1開始条件を規定する項目の数、及び項目の内容は上記実施形態のものから変更してよい。上記3つの項目以外の項目を第1開始条件に含める場合、その項目の内容は、第1燃料カット処理を開始する上で適切なものであればよい。
【0104】
・第1開始条件に関して、例えば、上記実施形態の項目(1B)を省略してもよい。自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジである場合、クランク軸31と駆動輪60とは互いに切り離された状態にある。この場合、内燃機関10の出力は、車両500を走行させる駆動力にはならない。したがって、自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジである場合には、車両500を走行させる観点では、アクセル操作量ACCの大小に拘わらず内燃機関10の出力に関する制約は少ない。つまり、アクセル操作量ACCがゼロであるときのみならず、アクセル操作量ACCがゼロよりも大きいときも、自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジであれば、内燃機関10の制御に相応の自由度がある。こうした状況下であれば、第1燃料カット処理を行うことが許容される。
【0105】
・第1開始条件に関して、例えば、上記実施形態の項目(1C)を省略してもよい。つまり、PM堆積量Zがさほど多くない時に第1燃料カット処理を行ってPMを除去してもよい。PM堆積量Zがさほど多くないときにPMを除去すれば、PM堆積量Zが少ない状況を維持できる。
【0106】
・第1開始条件に関して、例えば、上記実施形態の項目(1E)を省略してもよい。ここで、車両500が降坂路に差し掛かったときに乗員が自動変速機50のシフトレンジをニュートラルレンジに切り替える場合、乗員は、この後相応に長い降坂路が続くことを事前に把握している可能性が高い。したがって、項目(1A)及び(1D)が成立すれば、必然的に項目(1E)が成立する可能性が高い。
【0107】
・上記実施形態の項目(1E)に関して、判定距離Lの定め方は、上記実施形態の例に限定されない。判定距離Lが相当に短い場合でも、第1燃料カット処理を行えば、少なからずPMを除去できる。
【0108】
・第2開始条件は、上記実施形態の例に限定されない。第2開始条件は、上記実施形態で説明した項目(2A)及び(2B)の双方が成立しているという内容を含んでいればよい。この内容を含んでいるのであれば、第2開始条件を規定する項目の数、及び項目の内容は上記実施形態のものから変更してよい。上記2つの項目以外の項目を第2開始条件に含める場合、その項目の内容は、第2燃料カット処理を開始する上で適切なものであればよい。
【0109】
・上記実施形態の項目(2A)に関して、設定堆積量ZCの定め方は、上記実施形態の例に限定されない。設定堆積量ZCは、GPF23の異常な発熱を抑える観点で定めたものであればよい。例えば、設定堆積量ZCは、GPF23が異常な発熱状態にならないPM堆積量Zの最大値より小さくてもよい。
【0110】
・終了条件は、上記実施形態の例に限定されない。終了条件は、車両500の走行状態を良好に維持することを前提に、適切なタイミングで燃料カット処理を終了させることができるものであればよい。例えば、上記項目(1B)の変更例と同様の観点において、終了条件から項目(3B)を省略してもよい。つまり、アクセル操作量ACCがゼロよりも大きいときに燃料カット処理を継続してもよい。また、終了条件から項目(3C)を省略してもよい。つまり、降坂路の終了地点に到達した後に、さらに燃料カット処理を継続してもよい。自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジである限り、クランク軸31と駆動輪60とは切り離された状態にある。そして、このときは内燃機関10の制御に相応の自由度がある。したがって、降坂路の終了地点に到達した後であっても、例えば自動変速機50のシフトレンジがニュートラルレンジであれば、燃料カット処理を継続することが許容される。
【0111】
・第1燃料カット処理と第2燃料カット処理とで終了条件を変更してもよい。
・第1温度T1の算出の仕方は、上記実施形態の例に限定されない。第1燃料カット処理を行うことによって現状のPM堆積量Zを終了堆積量ZBにまで減少させたと仮定したときのGPF23の推定温度を算出できるのであれば、第1温度T1の算出方法は問わない。第1温度T1を算出する上で、例えば、PM堆積量Zと第1温度T1との関係を表したマップを予め作成しておいてもよい。そして、そのマップに基づいて、現状のPM堆積量Zに応じた第1温度T1を算出してもよい。例えば、第1燃料カット処理の開始前におけるGPF23の温度TFをある程度把握できれば、上記のようなマップを作成することも可能である。
【0112】
・第2温度T2の算出の仕方は、上記実施形態の例に限定されない。第2燃料カット処理を行うことによって現状のPM堆積量Zを終了堆積量ZBにまで減少させたと仮定したときのGPF23の推定温度を算出できるのであれば、第2温度T2の算出方法は問わない。上記第1温度T1の変更例と同様、PM堆積量Zと第2温度T2との関係性を表したマップを予め作成しておいてもよい。
【0113】
・一続きの燃料カット中に停止気筒の個数Mを複数回切り替えてもよい。そして、そうした切り替えに応じて停止気筒の個数Mを3つ以上に増やしてもよい。すなわち、燃料カット処理の種類を3つ以上にしてもよい。停止気筒の個数Mを切り替えるにあたり、切り替え前と切り替え後の停止気筒の個数Mが連続していなくてもよい。停止気筒の個数Mを増やすことに応じてGPF23に供給する酸素の量が増えてもGPF23が損傷しないのであれば、このようにして停止気筒の個数Mを複数回切り替える態様も可能である。上記実施形態と同様、停止気筒の個数Mを増やしたときのGPF23の将来温度を事前に推定すれば、GPF23が損傷しない状況下に限って停止気筒の個数Mを増やすことができる。
【0114】
・第1燃料カット処理で設定する停止気筒の個数M及び燃焼気筒の個数Nは、上記実施形態の例に限定されない。同様に第2燃料カット処理で設定する停止気筒の個数M及び燃焼気筒の個数Nは、上記実施形態の例に限定されない。次の関係が成立するように各燃料カット処理の停止気筒の個数M及び燃焼気筒の個数Nが設定してあればよい。すなわち、第2燃料カット処理における「M/N」の値が、第1燃料カット処理における「M/N」の値よりも大きいという関係が成立していればよい。この関係が成立しているのであれば、例えば、第1燃料カット処理の停止気筒の個数Mと第2燃料カット処理の停止気筒の個数Mとが連続していなくてもよい。すなわち、第1燃料カット処理の停止気筒の個数Mを「1」、第2燃料カット処理の停止気筒の個数Mを「3」としてもよい。また、「M」及び「N」の合計値は、気筒11の総数と一致している必要はない。「M」及び「N」の合計値が気筒11の総数と一致していない場合、燃焼サイクル毎に、停止気筒及び燃焼気筒が変更されたり、一部の燃焼サイクルにおいて燃焼気筒が存在しなくなったりすることもある。停止気筒の個数M及び燃焼気筒の個数Nを上記実施形態の例から変更する場合でも、「M」及び「N」は1以上の整数とすればよい。
【0115】
・第2燃料カットを行うことは必須ではない。すなわち、上記構成において、第2燃料カット処理、及び第2判定処理を省略してもよい。そして、GPF23からPMを除去するための処理として第1燃料カット処理のみを実行可能にしてもよい。この場合でも、第1燃料カット処理を実行することで、GPF23からPMを除去できる。
【0116】
・燃焼気筒における混合気を空燃比とすることは必須ではない。例えば、燃焼気筒の空燃比を理論空燃比よりもリッチにしてもよい。この場合、燃焼気筒は排気通路21に未燃燃料を排出する。この未燃燃料が三元触媒22で燃焼することで、排気の温度が上昇する。この排気がGPF23に至ることで、GPF23の温度が上昇する。GPF23の温度が高くなれば、PMが燃焼し易くなる。
【0117】
・内燃機関10の構成は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、気筒の数を変更してもよい。内燃機関は、複数の気筒と、気筒から排出される排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、クランク軸とを有していればよい。
【0118】
・PM堆積量Zの算出方法は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、GPF23の上流側と下流側との圧力差を検出する差圧センサを設けてもよい。そして、差圧センサの検出値を利用してPM堆積量Zを算出してもよい。
【0119】
・GPF23の温度TFの算出手法は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、機関回転速度NE、機関負荷KL、燃料噴射量等に基づいてGPF23の温度TFを算出してもよい。この場合、これらのパラメータとGPF23の温度TFとの関係性を表したマップ等を事前に作成しておけばよい。この変更例の態様を採用する場合、第1温度センサ62を省略できる。
【0120】
・自動変速機50の構成は、上記実施形態の例に限定されない。自動変速機50は、入力軸、駆動輪に連結した出力軸、及び入力軸の回転を減速して出力軸に伝達する変速機構を備えていればよい。そして、変速機構は、入力軸から出力軸へとトルクを伝達しないニュートラルレンジに切り替えることがでればよい。
【0121】
・車両500の全体構成は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、車両は、当該車両の駆動源として内燃機関とモータジェネレータとを有するハイブリッド車両として構成されていてもよい。ここで、燃料カット処理における停止気筒の個数を増やした場合、内燃機関がアイドル回転速度を維持しきれなくなることもあり得る。この場合、車両の駆動源としてモータジェネレータを有していれば、モータジェネレータのトルクを内燃機関に付与して内燃機関の駆動を補助することも可能である。
【0122】
・降坂路の判定手法は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、車両500に加速度センサを設けてもよい。そして、加速度センサの検出値に基づいて基両500が走行している道路の路面勾配を算出してもよい。そして、その路面勾配を基に、降坂路であるか否かの判定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0123】
10…内燃機関
11…気筒
23…GPF
31…クランク軸
50…自動変速機
52…入力軸
54…出力軸
56…変速機構
60…駆動輪
100…制御装置
500…車両