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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/533 20210101AFI20241210BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20241210BHJP
   H01M 50/471 20210101ALI20241210BHJP
   H01M 50/54 20210101ALI20241210BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M10/04 Z
H01M50/471
H01M50/54
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021215155
(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公開番号】P2023098417
(43)【公開日】2023-07-10
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】各務 僚
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-325945(JP,A)
【文献】特開2003-109557(JP,A)
【文献】特開2002-175790(JP,A)
【文献】特開2010-157510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/533
H01M 10/04
H01M 50/471
H01M 50/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質層及び集電体層を有する発電要素が外装体に収容され、前記発電要素と前記外装体との間に充填剤が配置された電池であって、
前記集電体層は、前記活物質層に接触して積層される平板部及び前記平板部から前記外装体の外側に向けて延出する集電タブを有しており、
前記集電タブは少なくとも1つの凹部を有しており、
前記凹部の少なくとも一部は前記集電タブの延出方向における前記集電タブの長さの中央よりも内側に配置されており
前記集電タブの延出方向において、前記平板部と前記集電タブとの接続部位から前記凹部の前記平板部に近い側の端部との距離が0.5mm以上5mm以下である、
電池。
【請求項2】
前記集電タブは前記凹部を複数有している、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
複数の前記凹部は前記集電タブの幅方向に並んで配置されている請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記発電要素は厚さ方向に並ぶ複数の前記集電タブを有しており、
厚さ方向に隣接する一方の前記集電タブの前記凹部の位置が他方の前記集電タブの前記凹部の位置と異なる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発電要素を外装体に収容し、発電要素と外装体との間に充填剤を配置した電池が知られている。このような電池は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、負極集電タブを有する負極集電体層、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層、及び正極集電タブを有する正極集電体層がこの順に積層された単位電池を1個以上有する全固体電池積層体、並びに充填材がラミネートフィルムから成る外装体内に収容され、全固体電池積層体の面方向端部とラミネートフィルムとの間には充填材が存在し、且つ全固体電池積層体が、積層方向で前記ラミネートフィルムと接している、ラミネート全固体電池を開示している。ここで、特許文献1における「面方向端部」とは負極集電タブ及び正極集電タブの近傍領域である。特許文献1によれば、このようなラミネート全固体電池は、面方向端部の変形をきたさず、且つ体積当たりの電池性能に優れていると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-133175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、発電要素を外装体に収容した後、発電要素と外装体との間に充填剤を注入する際、集電タブの剛性が弱いため、集電タブが変形する問題があることを知見した。また、集電タブの変形により、集電タブが隣接する対極に接触し、短絡を引き起こす問題があることを知見した。
【0006】
そこで、本願の目的は、上記実情を鑑み、集電タブの変形による短絡を抑制することができる電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、上記課題を解決するための一つの態様として、発電要素が外装体に収容され、発電要素と外装体との間に充填剤が配置された電池であって、発電要素は外側に延出する集電タブを有しており、集電タブは少なくとも1つの凹部を有しており、凹部は集電タブの延出方向の長さの中央よりも内側に配置されている、電池を提供する。
【0008】
上記電池において、集電タブは凹部を複数有していてもよく、複数の凹部は集電タブの幅方向に並んで配置されていてもよい。また、発電要素は厚さ方向に並ぶ複数の集電タブを有しており、厚さ方向に隣接する一方の集電タブの凹部の位置が他方の集電タブの凹部の位置と異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の電池が備える集電タブは、所定の凹部を有している。集電タブは凹部を有することにより剛性が向上するため、充填剤による集電タブの変形を抑制することができる。従って、本開示の電池によれば、集電タブの変形による短絡を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電池100の平面図である。
図2図1のII-IIで切断した断面図である。
図3】発電要素10の平面図である。
図4図3のIV-IVで切断した断面図である。
図5】1つの負極集電体層11の負極集電タブ11bに着目した平面図である。
図6】(A)図5のA-Aで切断した断面図である。(B)図5のB-Bで切断した断面図である。
図7】厚さ方向に隣接する一方の集電タブ11bの凹部11cの底部11d全体が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの内部に含まれている積層形態の幅方向断面図の一例である。
図8】隣接する一方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置を他方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置から幅方向に離した(オフセットした)積層形態の幅方向断面図の一例である。
図9】隣接する一方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置を他方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置から幅方向に離した(オフセットした)積層形態の幅方向断面図の一例である。
図10】隣接する一方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置を他方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置から延出方向に離した(オフセットした)積層形態の幅方向断面図の一例である。
図11】一実施形態の電池の製造方法の各工程の様子を表す概略図を示した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[電池]
本開示の電池について、一実施形態である電池100を参照しつつ説明する。図1に電池100の平面図を示した。図2図1のII-IIで切断した断面図を示した。図3に発電要素10の平面図を示した。図4図3のIV-IVで切断した断面図を示した。
【0012】
電池100は発電要素10が外装体20に収容され、発電要素10と外装体20との間に充填剤30が配置されている。発電要素10は外側に延出する集電タブ(負極集電タブ11b及び正極集電タブ15b)を有しており、集電タブは外部部材と接続するための端子(負極端子40a及び正極端子40b)にそれぞれ接続されている。なお、図3において、各集電タブは発電要素10の同じ面に配置されているが、これに限定されるものではなく、異なる発電要素10面に各集電タブが配置されていてもよい。端子の配置位置についても同様である。
【0013】
<発電要素10>
発電要素10は電池の発電成分であり、電極が積層された積層体であってもよく、電極が捲回された捲回体であってもよい。発電要素10の種類は特に限定されず、液系電池用の発電要素であってもよく、全固体電池用の発電要素であってもよい。また、発電要素10の形状は特に限定されないが、例えば平面視において矩形形状としてよい。図1図4では、全固体電池用の電極が積層された積層体である発電要素10を含む電池100を例示している。以下に、全固体電池用の電極が積層された積層体である発電要素10について説明する。ただし、発電要素10の構成はこれに限定されるものではない。
【0014】
発電要素10は、負極集電体層11、負極活物質層12、固体電解質層13、正極活物質層14、及び正極集電体層15を厚さ方向にこの順で備えている。発電要素10は、負極集電体層11、負極活物質層12、固体電解質層13、正極活物質層14、及び正極集電体層15を1つの繰り返し単位(電極体16)として、複数の電極体16を厚さ方向に複数備えていてもよい。複数の電極体16の積層方式は直列であっても並列であってもよい。発電要素10が複数の電極体16を備える場合、隣接する電極体16は正極集電体層11又は負極集電体層15を共有してもよい。図3では、複数の電極体16を備える発電要素10を示している。
【0015】
(負極集電体層11)
負極集電体層11はシート状の金属箔である。負極集電体層11は負極活物質層12に接触する負極平板部11aと、該負極平板部11aから外側に延出する負極集電タブ11bとを備えている。負極集電タブ11bは負極平板部11aと負極端子40aとを接続するための部材である。負極平板部11aと負極集電タブ11bとは1つの部材からなっていてもよく、別々の部材からなっていてもよい。発電要素10が電極体16を複数有している場合、負極集電タブ11bは厚さ方向に直線的に並ぶように配置されていてよい。
【0016】
負極集電体層11を構成する金属は特に限定されないが、例えばCu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。好ましくはCuである。負極集電体層11は、その表面に抵抗を調整するための何らかのコート層(例えば、カーボンコート層)を有していてもよい。負極集電体層11の厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下でとしてよい。
【0017】
(負極活物質層12)
負極活物質層は、負極活物質を含むシート状の層である。負極活物質の種類は特に限定されない。例えば、Si及びSi合金や、酸化ケイ素等のシリコン系活物質、グラファイトやハードカーボン等の炭素系活物質、チタン酸リチウム等の各種酸化物系活物質、金属リチウム及びリチウム合金等が挙げられる。
【0018】
負極活物質層12は任意に導電助剤やバインダ、固体電解質を含んでもよい。導電助剤の種類は特に限定されない。例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラック等の炭素材料やニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。バインダの種類は特に限定されない。例えば、ブタジエンゴム(BR)、ブチレンゴム(IIR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等が挙げられる。固体電解質の種類は特に限定されない。例えば、有機ポリマー電解質であってもよく、無機固体電解質であってもよい。好ましくは無機固体電解質である。有機ポリマー電解質と比較してイオン伝導度が高く、耐熱性に優れるためである。無機固体電解質は、酸化物固体電解質であってもよく、硫化物固体電解質であってもよい。好ましくは硫化物固体電解質である。酸化物固体電解質としては、例えばランタンジルコン酸リチウム、LiPON、Li1+XAlGe2-X(PO、Li-SiO系ガラス、Li-Al-S-O系ガラス等が挙げられる。硫化物固体電解質としては、例えばLiS-P、LiS-SiS、LiI-LiS-SiS、LiI-SiS-P、LiS-P-LiI-LiBr、LiI-LiS-P、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P、LiS-P-GeS等が挙げられる。
【0019】
負極活物質層12における各成分の含有量は目的に応じて適宜設定すればよい。負極活物質層の厚みは、例えば0.1μm以上1mm以下でとしてよい。
【0020】
(固体電解質層13)
固体電解質層13は固体電解質を含むシート状の層である。固体電解質の種類は特に限定されず、負極活物質層に用いることができる固体電解質から適宜選択することができる。
【0021】
固体電解質層13は任意にバインダを含んでもよい。バインダの種類は特に限定されず、負極活物質層に用いることができるバインダから適宜選択することができる。
【0022】
固体電解質層13における各成分の含有量は目的に応じて適宜設定すればよい。固体電解質層13の厚みは、例えば0.1μm以上1mm以下でとしてよい。
【0023】
(正極活物質層14)
正極活物質層14は正極活物質を含むシート状の層である。正極活物質の種類は特に限定されない。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、スピネル系リチウム化合物等の各種のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
【0024】
正極活物質層は任意に導電助剤やバインダ、固体電解質を含んでもよい。導電助剤、バインダ、及び固体電解質の種類は特に限定されず、負極活物質層に用いることができる導電助剤、バインダ、及び固体電解質から適宜選択することができる。
【0025】
正極活物質層14における各成分の含有量は目的に応じて適宜設定すればよい。また、正極活物質の表面はニオブ酸リチウム層やチタン酸リチウム層、リン酸リチウム層等の酸化物層で被覆されていてもよい。正極活物質層14の厚みは、例えば0.1μm以上1mm以下でとしてよい。
【0026】
(正極集電体層15)
正極集電体層15はシート状の金属箔である。正極集電体層15は正極活物質層14に接触する正極平板部15aと、該正極平板部15aから外側に延出する正極集電タブ15bとを備えている。正極集電タブ15bは正極平板部15aと正極端子40bとを接続するための部材である。正極平板部15aと正極集電タブ15bとは1つの部材からなっていてもよく、別々の部材からなっていてもよい。発電要素10が電極体16を複数有している場合、正極集電タブ15bは厚さ方向に直線的に並ぶように配置されていてよい。
【0027】
正極集電体層15を構成する金属は特に限定されないが、例えばCu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。好ましくはAlである。正極集電体層15は、その表面に抵抗を調整するための何らかのコート層(例えば、カーボンコート層)を有していてもよい。正極集電体層15の厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下でとしてよい。
【0028】
(凹部の形態)
電池100の集電タブは所定の凹部を有している。以下に、凹部について、負極集電タブ11bに着目して説明する。ただし、凹部は正極集電タブ15bに配置されていてもよい。従って、以下の説明は、正極集電タブ15bにも適用することができる。
【0029】
図5に1つの負極集電体層11の負極集電タブ11bに着目した平面図を示した。図6(A)に図5のA-Aで切断した断面図、図6(B)に図5のB-Bで切断した断面図を示した。ここで、図5の紙面上下方向を延出方向(負極集電タブ11bが延出する方向)とし、紙面左右方向を幅方向(負極集電タブ11bの幅方向)とする。
【0030】
図5に示した通り、負極集電タブ11bは凹部11cを備えている。図6(A)(B)に示した通り、凹部11cは底部11dと底部の外周から立設する側壁11eから構成される。底部11dとは、凹部11cの最も深い部分である。図6(A)(B)に示した通り、凹部11cの断面形状が矩形である場合、最も深い部分を構成する辺が底部となる。凹部の断面形状が三角形状等の多角形状や円形状、楕円形状等の丸みを帯びた形状である場合、最も深い部分(点)が底部となる。また、負極集電タブ11bにおいて、凹部11c以外の部分を平面部11fとする。
【0031】
負極集電タブ11bは凹部11cを備えることにより、負極集電タブ11bの剛性が向上する。また、凹部11cの少なくとも一部が負極集電タブ11bの延出方向の長さの中央よりも内側(負極平板部11a側)に配置される。これにより、負極集電タブ11bの負極平板部11a側の部分(根元部分)の剛性を向上することができる。負極集電タブ11bと電極端子40bとの接合領域を確保する観点から、凹部11c全体が負極集電タブ11bの延出方向の長さの中央よりも内側に配置されていてもよい。充填剤30を注入する際、負極集電タブ11bの根元部分が変形することにより短絡が生じやすいため、根元部分の変形を抑制することにより、さらに短絡抑制効果が向上する。
【0032】
負極集電タブ11bにおける凹部11cの数は特に限定されず、少なくとも1つでよい。ただし、負極集電タブ11bの根元部分の剛性を向上させる観点から、図5に示した通り、複数の凹部11cを備えていてよい。凹部11cの配置形態も特に限定されず、いずれの配置形態も許容される。好ましは、図5に示した通り、凹部11cが幅方向に並んで配置されている形態である。
【0033】
凹部11cの外形形状は特に限定されず、平面視(厚さ方向視)において矩形状であってもよく、多角形状であってもよく、円形状であってもよく、楕円形状であってもよい。図5では、平面視において矩形状を有する凹部11cを示している。凹部11cの断面形状は特に限定されるものではない。図6(A)(B)では、矩形状の断面形状を有する凹部11cを示している。
【0034】
凹部11cの延出方向の長さX1は特に限定されず、例えば3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよく、10mm以下であってもよく、8mm以下であってもよい。凹部11cの幅方向の長さY1は特に限定されず、例えば2mm以上であってもよく、4mm以上であってもよく、10mm以下であってもよく、8mm以下であってもよい。凹部11cのアスペクト比(延出方向の長さX1/幅方向の長さY1)は特に限定されず、0.5以上であってもよく、1以上であってもよく、2以上であってもよく、5以下であってもよく、3以下であってもよい。負極平板部11aから凹部11cの延出方向の内側の端部までの長さWは特に限定されないが、短ければ短いほど根元部分の強度が向上する。ただし、当該距離が短すぎると、凹部11cを付する際に負極活物質層12の割れや滑落等が生じる虞がある。従って、当該距離は0.5mm以上としてよく、1mm以上としてよく、5mm以下としてよく、3mm以下としてよい。各凹部11c間の長さPは特に限定されないが、5mm以上としてよく、8mm以上としてよく、15mm以下としてよく、12mm以下としてよい。
【0035】
ここで、凹部11cの延出方向の長さとは、凹部11cの延出方向の最も内側の点から最も外側の点までの延出方向成分の長さである。凹部11cの幅方向の長さとは、凹部11cの幅方向の最も一方側の点から最も他方側の点までの幅方向成分の長さである。
【0036】
凹部11cの深さZは特に限定されない。1つの電極体16から発電要素10が構成される場合、凹部11cの深さZは電極体16の厚さ以下としてよい。複数の電極体16から発電要素が構成される場合、凹部11cの深さZは、隣接する一方の負極集電タブ11bから他方の負極集電タブ11bまでの長さ以下としてよい。具体的には、凹部11cの深さZは0.1μm以上としてよく、5mm以下としてよい。ただし、後述の図7に示した形態の場合、凹部11cの深さZを負極集電タブ11bから厚さ方向に隣接する他の負極集電タブ11bまでの長さ以上とすることができる。
【0037】
凹部11cの底部11dの大きさは特に限定されない。底部11dの延出方向の長さX2は、例えば凹部11cの延出方向の長さX1の0.5倍以上としてよく、0.7倍以上としてよく、1倍以下としてよく、0.9倍以下としてよい。底部11dの幅方向の長さY2は、例えば凹部11cの幅方向の長さY2の0.5倍以上としてよく、0.7倍以上としてよく、1倍以下としてよく、0.9倍以下としてよい。凹部11cの側壁11eの断面形状は特に限定されず、直線状でもよく、テーパ形状でもよい。
【0038】
続いて、凹部11cの積層形態について説明する。発電要素10が複数の電極体16を備える場合、負極集電タブ11bは厚さ方向に並んで配置される。このような場合において、厚さ方向に隣接する一方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置と同じであってもよく、異なっていてもよい。いずれの積層形態も、充填剤30を注入の際に負極集電タブ11bが変形したとしても、一方の負極集電タブ11bの凹部11cが他方の負極集電タブ11bに接触することで、隣接する負極集電タブ11b間の長さを一定の長さに保ち、負極集電タブ11bと正極活物質層14又は正極集電体層15との接触による短絡を抑制することができる。また、隣接する負極集電タブ11b間の長さを一定の長さに保つことができるため、製造時において充填剤が入り込みやすいという利点も有する。好ましくは、厚さ方向に隣接する一方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置と異なっている積層形態である。ここで、凹部11cの位置とは延出方向及び幅方向の位置、すなわち負極集電タブ11bの平面方向に位置を意味する。
【0039】
厚さ方向に隣接する負極集電タブ11bにおいて、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置と同じである積層形態には、厚さ方向視において、一方の負極集電タブ11bの凹部11cが他方の負極集電タブ11bの凹部11cと完全に重なっている積層形態の他に、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11d全体が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの内部に含まれている積層形態も含まれる。
【0040】
図7に、厚さ方向に隣接する負極集電タブ11bにおいて、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置と同じである積層形態の一例を示した。
【0041】
図7は、複数の凹部11cが幅方向に並んだ負極集電タブ11bを厚さ方向に3枚並べて配置した場合であって、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11d全体が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの内部に含まれている積層形態の幅方向断面図である。図7に示した通り、厚さ方向に隣接する負極集電タブ11bにおいて、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11dが他方の負極集電タブ11bの凹部11cの内部に入り込み、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの側壁11eが、他方の負極集電タブ11bの側壁11eに接触することで、隣接する負極集電タブ11b間の長さを一定の長さに保持することができる。また、このような積層態様とすることにより、凹部11cの深さZ1を負極集電タブ11bから厚さ方向に隣接する他の負極集電タブ11bまでの長さ以上に設定することができる。これにより、負極集電タブ11bが変形していない状態であっても、隣接する負極集電タブ11bが接触し得るため、負極集電タブ11b間の長さを一定の長さに保持する効果が高まる。
【0042】
厚さ方向に隣接する負極集電タブ11bにおいて、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置と異なっている積層形態には、厚さ方向視において、一方の負極集電タブ11bの凹部11cが他方の負極集電タブ11bの凹部11cと完全に重なっていない積層形態の他に、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11dの一部が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの内部に含まれている積層形態及び一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11d全体が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの内部に含まれず、かつ、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの側面11eの少なくとも一部が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの内部に含まれている積層形態も含まれる。
【0043】
これらの積層形態は、換言すると、厚さ方向視において、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11dの少なくとも一部が他方の負極集電タブ11bの平面部11fに含まれている積層形態である。このような積層形態とすることにより、一方の負極集電タブ11bが変形したとしても、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11dが他方の負極集電タブ11bの平面部11fに接触し得るため、隣接する負極集電タブ11b間の長さを一定の長さに保つことができ、これにより負極集電タブ11bと正極活物質層14又は正極集電体層15との接触による短絡を抑制することができる。この効果をより発揮できる形態は、厚さ方向視において、一方の負極集電タブ11bの凹部11cが他方の負極集電タブ11bの凹部11cと完全に重なっていない積層形態、及び厚さ方向視において、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11d全体が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの内部に含まれず、かつ、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの側面11eの少なくとも一部が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの内部に含まれている積層形態である。さらに効果を発揮できる形態は、厚さ方向視において、一方の負極集電タブ11bの凹部11cが他方の負極集電タブ11bの凹部11cと完全に重なっていない積層形態である。
【0044】
図8図10に、厚さ方向に隣接する負極集電タブ11bにおいて、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置と異なっている積層形態の一例をそれぞれ示した。図8図9は、複数の凹部11cが幅方向に並んだ負極集電タブ11bを厚さ方向に3枚並べて配置した場合であって、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置を他方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置から幅方向に離した(オフセットした)積層形態の幅方向断面図である。図10は、複数の凹部11cが幅方向に並んだ負極集電タブ11bを厚さ方向に3枚並べて配置した場合であって、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置を他方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置から延出方向に離した(オフセットした)積層形態の幅方向断面図である。
【0045】
図8に示した形態は、厚さ方向視において、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11dの一部が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの内部に含まれている積層形態である。従って、厚さ方向視において、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11dの残りの部分が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの平面部11fに含まれている。一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11dの残りの部分が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの平面部11fに含まれているほど、上述した効果は強まる。具体的には、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11dの面積の50%以上が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの平面部11fに含まれていることが好ましく、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11dの面積の80%以上が他方の負極集電タブ11bの凹部11cの平面部11fに含まれていることがより好ましい。
【0046】
図9に示した形態は、厚さ方向視において、一方の負極集電タブ11bの凹部11cが他方の負極集電タブ11bの凹部11cと重なっていない積層形態である。このような積層形態は、厚さ方向視において、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの底部11d全体が他方の負極集電タブ11bの平面部11fに含まれているため、上述した効果を最も得られやすい。
【0047】
図10に示した形態は、厚さ方向視において、一方の負極集電タブ11bの凹部11cが他方の負極集電タブ11bの凹部11cと重なっていない積層形態である。図9の形態との違いは、一方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置を他方の負極集電タブ11bの凹部11cの位置から延出方向に離した(オフセットした)点で異なる。このように、隣接する負極集電タブ11bにおける凹部11cの位置は、幅方向に離してもよく、延出方向に離してもよい。
【0048】
このような集電タブは、例えばエンボス加工により凹部を付与することで製造することができる。発電要素10が積層体である場合、各電極層を積層する前に集電タブに凹部を付与してもよく、積層した後に集電タブに凹部を付与してもよい。発電要素10が捲回体である場合、電極を捲回する前に集電タブに凹部を付与してもよい。
【0049】
<外装体20>
外装体20は発電要素10を内部に収容するための部材である。外装体20は特に限定されず、公知の外装体を用いることができる。例えば、Alラミネート等の金属ラミネートや、金属缶等の金属製の筐体を挙げることができる。外装体20の形状も特に限定されず、角型であってもよく、円筒型であってもよい。電池100では2枚の金属ラミネート組み合わせて外装体20としている。金属ラミネートを用いる場合、発電要素10を封止する際、外装体20の周囲に熱溶着部Sを形成する。
【0050】
<充填剤30>
充填剤30は発電要素10と外装体20との間に配置され、発電要素10を保護するための樹脂である。充填剤30は発電要素10と外装体20との間の少なくとも一部に配置されていればよいが、特に発電要素10の集電タブが配置されている面と外装体20との間に配置されていることが好ましい。また、発電要素10全体を保護する観点から、発電要素10と外装体20との間の全体に配置されていてよい。
【0051】
充填剤30の材料は樹脂であれば特に限定されず、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。
【0052】
<端子>
端子は発電要素10と外部部材とを接続するための部材である。負極端子40aは負極集電タブ11bと接続されており、正極端子40bは正極集電タブ15bと接続されている。端子の材料は特に限定されず、負極端子40a又は正極端子40bに用いることができる金属材料から適宜選択することができる。集電タブと端子とを接合する方法は特に限定されない。例えば、レーザー溶接や超音波接合、はんだ付け等が挙げられる。
【0053】
[電池の製造方法]
次に本開示の電池の製造方法について説明する。本開示の電池の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造可能である。以下に、全固体電池用の電極が積層された積層体である発電要素を備えた電池の製造方法の一実施形態を説明する。
【0054】
一実施形態の電池の製造方法は、電極作製工程S1、エンボス加工工程S2、電極積層工程S3、端子接合工程S4、外装体収容工程S5、充填剤注入工程S6、及び封止工程S7を備えている。図11に各工程の様子を表す概略図を示した。
【0055】
<電極作製工程S1>
電極作製工程S1は、負極電極及び正極電極を作製する工程である。負極電極及び正極電極は公知の方法により作製することができる。例えば、負極活物質層を構成する材料を有機溶媒に分散し、得られたスラリーを負極集電体層に塗布して乾燥して負極電極を得ることができる。同様の方法を用いて正極電極を得ることができる。
【0056】
固体電解質層は負極電極又は正極電極のいずれか一方に積層されて作製されてもよく、これらの電極とは別に作製されてもよい。例えば、固体電解質層を構成する材料を有機溶媒に分散し、負極電極の負極活物質層の表面に塗布して、乾燥させることにより、負極電極に固体電解質層を積層してもよい。或いは、別途、固体電解質層を作製し、電極積層工程S3において、正極電極及び負極電極の間に配置してもよい。
【0057】
ここで、積層体の内部に用いられる負極電極及び正極電極は両面に電極層を形成してもよい。
【0058】
<エンボス加工工程S2>
エンボス加工工程S2は各集電タブに凹部を付与する工程である。エンボス加工は公知の方法を適宜適用することができる。
【0059】
<電極積層工程S3>
電極積層工程S3は、負極電極及び正極電極を積層し、積層体を作製する工程である。各電極の積層方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、積層体作製後、積層体を加圧して、各電極の接着を強めてもよい。
【0060】
<端子接合工程S4>
端子接合工程S4は、各集電タブと各端子とを接合する工程である。接合方法は特に限定されず、例えばレーザー溶接や超音波接合、はんだ付け等を挙げることができる。
【0061】
<外装体収容工程S5>
外装体収容工程S5は、端子を接合した発電要素を外装体に収容する工程である。一実施形態では、凸部を設けた金属ラミネートを2枚組み合わせた外装体を用いて、発電要素を外装体の内部に収容している。
【0062】
<充填剤注入工程S6>
充填剤注入工程S6は、発電要素を収容した外装体の内部に充填剤Fを注入する工程である。充填剤の注入方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。一実施形態の発電要素の各集電タブには所定の凹部が形成されているため、集電タブの剛性が向上している。従って、充填剤が注入されたとしても、集電タブの変形が抑制され、集電タブが対極に接触することによって生じる短絡も抑制される。
【0063】
<封止工程S7>
封止工程S7は、外装体を封止する工程である。一実施形態では外装体に金属ラミネートを用いているため、外周に熱溶部Sを形成することにより、発電要素を外装体の内部に封止することができる。なお、外装体に金属筐体を用いた場合は、例えばレーザー溶接により、外装体を封止することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 発電要素
11 負極集電体層
11a 負極平板部
11b 負極集電タブ
11c 凹部
11d 底部
11e 側壁
11f 平面部
12 負極活物質層
13 固体電解質層
14 正極活物質層
15 正極集電体層
15a 正極平板部
15b 正極集電タブ
16 電極体
20 外装体
30 充填剤
40a 負極端子
40b 正極端子
100 電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11