(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20241210BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M10/04 Z
(21)【出願番号】P 2021215157
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】各務 僚
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-243083(JP,A)
【文献】特開2021-026982(JP,A)
【文献】特開2000-235852(JP,A)
【文献】特開2014-022116(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163294(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/533
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に並ぶ複数の集電タブを備えた発電要素と、
前記集電タブに接合された集電端子と、を備え、
それぞれの前記集電タブは前記集電タブの端部を幅方向に分割するスリットを少なくとも1つ有しており、
前記スリットを挟んで分割された前記集電タブの前記端部のそれぞれの部分は、厚さ方向に隣接する他の前記集電タブ
の前記端部のそれぞれの前記部分に電気的に接続されて
おり、
前記集電タブの前記端部の前記部分と他の前記集電タブの前記端部の前記部分とは、内側に折り曲げ合って接触することにより電気的に接続されている、
電池。
【請求項2】
前記スリットを挟んで分割された前記集電タブの前記端部の前記部分は、互いに厚さ方向の異なる位置に配置されている他の前記集電タブに電気的に接続されている、請求項1に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の金属箔と複数の絶縁膜とを積層した積層構造物と、積層構造物の端部に設置した金属板とを接合する接合方法であって、端部に切り込みが形成された金属箔と絶縁膜とを交互に積層して、積層構造物を作製する第1の工程と、金属板を積層構造物の切り込みが形成された端部に接触させ、金属板に接触している金属箔の端部を積層方向に揃って曲げる第2の工程と、金属板に接触している金属箔の端部が積層方向に揃って曲がった状態で、金属箔の端部と金属板とを溶接する第3の工程とを含むことを特徴とする接合方法を開示している。
【0003】
特許文献1に記載された接合方法によれば、次のような効果が期待できると記載されている。金属箔の端部が金属板によって所定の方向に揃って曲げられる。さらに、金属箔の端部が揃って曲がっている方向にレーザ光を移動させる。これによって、その方向に金属箔の端部が熱膨張で延びることが促進される。これに伴い、金属板が溶融するときの衝撃で、金属箔の端部が金属板から離れようとしても、金属箔の端部が金属板に押し付けられる。このことから、金属箔の端部と金属板との間に隙間が生じ難くなり、溶接不良が少なく安定した溶接結果で金属箔と金属板とを溶接することができる。結果として、金属箔と金属板との溶接強度を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電池では集電タブが単独で集電端子と接合されているため、溶接不良が生じた場合に一部の電極から電力を取り出せない問題があった。これは、発電要素に電極積層体を用いた場合に特に問題であった。したがって、このような問題が起こらないように、構造信頼性が向上した電池が望まれていた。
【0006】
そこで、本開示の目的は、上記実情を鑑み、構造信頼性を向上することができる電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、上記課題を解決するための一つの態様として、厚さ方向に並ぶ複数の集電タブを備えた発電要素と、集電タブに接合された集電端子と、を備え、少なくとも1つの集電タブは集電タブの端部を幅方向に分割するスリットを少なくとも1つ有しており、スリットを挟んで分割された集電タブの端部のそれぞれの部分は、厚さ方向に隣接する他の集電タブに電気的に接続されている、電池を提供する。
【0008】
上記電池において、スリットを挟んで分割された集電タブの端部の部分は、互いに厚さ方向の異なる位置に配置されている他の集電タブに電気的に接続されていてもよい。また、それぞれの集電タブがスリットを少なくとも1つ有しており、スリットを挟んで分割された集電タブの端部のぞれぞれの部分は、厚さ方向に隣接する他の集電タブの端部のそれぞれの部分に電気的に接続されていてもよい。さらに、集電タブの端部の部分と他の集電タブの端部の部分とは、内側に折り曲げ合って接触することにより電気的に接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の電池は、スリットを挟んで分割された集電タブのそれぞれの部分が、厚さ方向に隣接する他の集電タブに電気的に接続されている。そして、この状態で集電タブは集電端子に接合されている。そのため、電気的に接続されているこれらの集電タブと集電端子との接合部分の一部に接合不良が生じたとしても、他の接合部分を介してこれらの集電タブと集電端子とは電気的に接続している。すなわち、溶接不良が生じた集電タブを有する発電要素を電気的に孤立させることなく、発電要素から電力を取り出すことができる。したがって、本開示の電池によれば、構造信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(A)電池100の斜視図である。(B)電池100の分解斜視図である
【
図2】
図1(B)のII-IIで切断した断面の概略図である。
【
図4】(A)
図3のIVAから観察した正面図である。(B)
図3のIVB-IVBで切断した断面図である。(C)
図3のIVC-IVCで切断した断面図である。
【
図5】
図4(B)(C)にそれぞれ対応する断面図であって、負極集電タブ11bに負極集電端子20bに接合したときの断面図である。
【
図6】(A)負極集電タブ11bの他の形態の正面図である。(B)
図6(A)のVIB-VIBで切断した断面図である。(C)
図6(A)のVIC-VICで切断した断面図である。
【
図7】(A)負極集電タブ11bの別の他の形態の正面図である。(B)に
図7(A)のVIIB-VIIBで切断した断面図である。(C)に
図7(A)のVIIC-VIICで切断した断面図である。
【
図8】一実施形態の電池の製造方法の各工程の様子を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[電池]
本開示の電池について、一実施形態である電池100を参照しつつ説明する。
図1(A)に電池100の斜視図、
図1(B)に電池100の分解斜視図を示した。
図2に
図1(B)のII-IIで切断した断面の概略図を示した。
【0012】
図1(A)(B)に示した通り、電池100は厚さ方向に並ぶ複数の集電タブ(負極集電タブ11b及び正極集電タブ15b)を備えた発電要素10と、集電タブに接合された集電端子(負極集電端子20a及び正極集電端子20b)と、を備えている。なお、
図1(A)(B)において、各集電タブは発電要素10の同じ面に配置されているが、これに限定されるものではなく、異なる発電要素10の面に各集電タブが配置されていてもよい。集電端子の配置位置についても同様である。
【0013】
<発電要素10>
発電要素10は電池の発電成分であり、電極が積層された積層体であってもよく、電極が捲回された捲回体であってもよい。発電要素10の種類は特に限定されず、液系電池用の発電要素であってもよく、全固体電池用の発電要素であってもよい。また、発電要素10の形状は特に限定されないが、例えば平面視において矩形形状としてよい。
図1では、全固体電池用の電極が積層された積層体である発電要素10を含む電池100を例示している。以下に、全固体電池用の電極が積層された積層体である発電要素10について説明する。ただし、発電要素10の構成はこれに限定されるものではない。
【0014】
発電要素10は、負極集電体層11、負極活物質層12、固体電解質層13、正極活物質層14、及び正極集電体層15を厚さ方向にこの順で備えている。発電要素10は、負極集電体層11、負極活物質層12、固体電解質層13、正極活物質層14、及び正極集電体層15を1つの繰り返し単位(電極体16)として、複数の電極体16を厚さ方向に複数備えていてもよい。電極体16の積層方式は直列であっても並列であってもよい。また、発電要素10が複数の電極体16を備える場合、隣接する電極体16は正極集電体層11又は負極集電体層15を共有してもよい。
図1では、複数の電極体16を備える発電要素10を示している。
【0015】
(負極集電体層11)
負極集電体層11はシート状の金属箔である。負極集電体層11は負極活物質層12に接触する負極平板部11aと、該負極平板部11aから外側に延出する負極集電タブ11bとを備えている。負極集電タブ11bは負極平板部11aと負極集電端子40aとを接続するための部材である。負極平板部11aと負極集電タブ11bとは1つの部材からなっていてもよく、別々の部材からなっていてもよい。発電要素10が電極体16を複数有している場合、負極集電タブ11bは厚さ方向に直線的に並ぶように配置されていてよい。
【0016】
負極集電体層11を構成する金属は特に限定されないが、例えばCu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。好ましくはCuである。負極集電体層11は、その表面に抵抗を調整するための何らかのコート層(例えば、カーボンコート層)を有していてもよい。負極集電体層11の厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下でとしてよい。
【0017】
(負極活物質層12)
負極活物質層は、負極活物質を含むシート状の層である。負極活物質の種類は特に限定されない。例えば、Si及びSi合金や、酸化ケイ素等のシリコン系活物質、グラファイトやハードカーボン等の炭素系活物質、チタン酸リチウム等の各種酸化物系活物質、金属リチウム及びリチウム合金等が挙げられる。
【0018】
負極活物質層12は任意に導電助剤やバインダ、固体電解質を含んでもよい。導電助剤の種類は特に限定されない。例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラック等の炭素材料やニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。バインダの種類は特に限定されない。例えば、ブタジエンゴム(BR)、ブチレンゴム(IIR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等が挙げられる。固体電解質の種類は特に限定されない。例えば、有機ポリマー電解質であってもよく、無機固体電解質であってもよい。好ましくは無機固体電解質である。有機ポリマー電解質と比較してイオン伝導度が高く、耐熱性に優れるためである。無機固体電解質は、酸化物固体電解質であってもよく、硫化物固体電解質であってもよい。好ましくは硫化物固体電解質である。酸化物固体電解質としては、例えばランタンジルコン酸リチウム、LiPON、Li1+XAlXGe2-X(PO4)3、Li-SiO系ガラス、Li-Al-S-O系ガラス等が挙げられる。硫化物固体電解質としては、例えばLi2S-P2S5、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Si2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI-LiBr、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5-GeS2等が挙げられる。
【0019】
負極活物質層12における各成分の含有量は目的に応じて適宜設定すればよい。負極活物質層の厚みは、例えば0.1μm以上1mm以下でとしてよい。
【0020】
(固体電解質層13)
固体電解質層13は固体電解質を含むシート状の層である。固体電解質の種類は特に限定されず、負極活物質層に用いることができる固体電解質から適宜選択することができる。
【0021】
固体電解質層13は任意にバインダを含んでもよい。バインダの種類は特に限定されず、負極活物質層に用いることができるバインダから適宜選択することができる。
【0022】
固体電解質層13における各成分の含有量は目的に応じて適宜設定すればよい。固体電解質層13の厚みは、例えば0.1μm以上1mm以下でとしてよい。
【0023】
(正極活物質層14)
正極活物質層14は正極活物質を含むシート状の層である。正極活物質の種類は特に限定されない。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、スピネル系リチウム化合物等の各種のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
【0024】
正極活物質層は任意に導電助剤やバインダ、固体電解質を含んでもよい。導電助剤、バインダ、及び固体電解質の種類は特に限定されず、負極活物質層に用いることができる導電助剤、バインダ、及び固体電解質から適宜選択することができる。
【0025】
正極活物質層14における各成分の含有量は目的に応じて適宜設定すればよい。また、正極活物質の表面はニオブ酸リチウム層やチタン酸リチウム層、リン酸リチウム層等の酸化物層で被覆されていてもよい。正極活物質層14の厚みは、例えば0.1μm以上1mm以下でとしてよい。
【0026】
(正極集電体層15)
正極集電体層15はシート状の金属箔である。正極集電体層15は正極活物質層14に接触する正極平板部15aと、該正極平板部15aから外側に延出する正極集電タブ15bとを備えている。正極集電タブ15bは正極平板部15aと正極集電端子40bとを接続するための部材である。正極平板部15aと正極集電タブ15bとは1つの部材からなっていてもよく、別々の部材からなっていてもよい。発電要素10が電極体16を複数有している場合、正極集電タブ15bは厚さ方向に直線的に並ぶように配置されていてよい。
【0027】
正極集電体層15を構成する金属は特に限定されないが、例えばCu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。好ましくはAlである。正極集電体層15は、その表面に抵抗を調整するための何らかのコート層(例えば、カーボンコート層)を有していてもよい。正極集電体層15の厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下でとしてよい。
【0028】
(集電タブの形態)
電池100は集電タブに特徴的な形態を有している。以下に、集電タブの特徴的な形態について、負極集電タブ11bに着目して説明する。ただし、集電タブの特徴的な形態は正極集電タブ15bに適用されていてもよい。従って、以下の説明は、正極集電タブ15bにも適用することができる。
【0029】
図3に負極集電タブ11bの斜視図を示した。
図4(A)に
図3のIVAから観察した正面図、
図4(B)に
図3のIVB-IVBで切断した断面図、
図4(C)に
図3のIVC-IVCで切断した断面図を示した。また、
図5(A)(B)に負極集電タブ11bに負極集電端子20bに接合したときの
図4(B)(C)にそれぞれ対応する断面図を示した。ここで、
図3において、X方向を延出方向(集電タブが延出する方向)、Y方向を幅方向(集電タブの幅方向)、Z方向を厚さ方向(集電タブの厚さ方向)とし、これらはそれぞれ直交する関係にある。
【0030】
図3、
図4(A)~(C)に示した通り、複数の負極集電タブ11bが厚さ方向に並んで配置されている。また、それぞれの負極集電タブ11bは、負極集電タブ11bの端部(延出方向外側の端部)を幅方向に分割するスリット11cを3つ有している。これにより、それぞれの負極集電タブ11bの端部は4つの部分11dに分割されている。
【0031】
スリットにより分割された負極集電タブ11bの端部のそれぞれの部分11dは、厚さ方向に隣接する他の負極集電タブ11bの端部のスリット11cにより分割された部分11dに電気的に接続されている。このとき、スリット11cを挟んで分割された負極集電体11bの端部の部分11dは、互いに厚さ方向の異なる位置に配置されている他の負極集電タブ11bに電気的に接続されている。また、隣接する一方の負極集電タブ11bの部分11dと他の負極集電タブ11bの部分11dとは、互いの端部(特に先端部)が内側に折り曲げ合って接続されている。
【0032】
このように、電池100は各端部11dが織り込まれた形態の負極集電タブ11bを有しており、
図4(A)の矢印で示したように、各負極集電タブ11bがそれぞれ電気的に接続されている。そして、
図5(A)(B)に示した通り、負極集電タブ11bの各部分11dを負極集電端子20aと接合している。
図5(A)(B)において、接合部分をBで示している。
【0033】
電池100はこのような特徴的な形態の負極集電タブ11bを有することにより、各負極集電タブ11bがそれぞれ電気的に接続されているため、負極集電タブ11bと負極集電端子20aとの接合部分の一部に接合不良が生じたとしても、他の接合部分を介して負極集電タブ11bと負極集電端子20aとが電気的に接続している。すなわち、溶接不良が生じた負極集電タブ11bを有する電極体16を電気的に孤立させることなく、各電極体16から電力を取り出すことができる。したがって、電池100によれば、構造信頼性を向上することができる。
【0034】
負極集電タブ1ができる形状1bのスリット11cの形状は特に限定されず、負極集電タブ11bの端部を分割することであればよい。
図3では、スリット11cは延出方向に沿った直線形状を有する切れ込みである。スリット11cの延出方向の長さは特に限定されず、スリット11cにより分割された負極集電タブ11bの各部分11dが他の負極集電タブ11bに接続することができる長さであればよい。また、各スリット11cの長さは同じであってもよく、異なっていてもよい。負極集電タブ11bにおけるスリット11cの本数は特に限定されず、少なくとも1本あればよい。
図3ではスリット11cを3本有する負極集電タブ11bを示している。また、それぞれの負極集電タブ11bが有するスリット11cの本数は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0035】
厚さ方向に隣接する負極集電タブ11b同士の電気的な接続方法は特に限定されない。
図3では、負極集電タブ11bの各部分11dが直接接触することによって電気的に接続されているが、例えば導電性部材を介して電気的に接続されていてもよい。電気的に接続する負極集電タブ11bの部分11dの枚数は特に限定されない。3枚以上の負極集電タブ11bの部分11d(特に先端部)が折り曲げられ合って、電気的に接続されていてもよい。
図3は、2枚の負極集電タブ11bの部分11dが折り曲げられ合って、電気的に接続されている形態を示している。また、
図3では、それぞれの部分11dが内側に折り曲げ合って接触することにより電気的に接続しているが、接続方法はこれに限定されるものではない。例えば、各部分を折り曲げず、単に接触させるだけでもよい。また、端部11dを折り曲げ合う方向も特に限定されず、厚さ方向の一方側であっても、他方側であってもよく、これらが混在する形態であってもよい。さらに
図3に示した通り、隣接する負極集電タブ11bと接続しない負極集電タブ11bが存在してもよい。この場合、負極集電端子20aとの接続を容易にするために、隣接する負極集電タブ11bと接続しない負極集電タブ11bも折り曲げてもよい。
【0036】
負極集電タブ11bと負極集電端子20aとの接合方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、はんだ付けや超音波接合、レーザ溶接等による接合方法が挙げられる。また、
図5(A)(B)では、端部11d同士が重なっている箇所を接合しているが、これに限定されない。接合箇所の数も特に限定されず、少なくとも1箇所でよい。上述した通り、織り込まれた各負極集電タブ11bはそれぞれ電気的に接続されているためである。
【0037】
続いて、負極集電タブ11bの他の形態について説明する。
図3では、各負極集電タブ11bがスリット11cを有しているが、本開示の電池はこれに限定されず、少なくとも1つの負極集電タブ11bがスリットを有していればよい。例えば、厚さ方向に5枚並ぶ負極集電タブ11bにおいて、上から3番目の負極集電タブ11bのみがスリット11cを有している形態を説明する。
図6(A)にこの形態の正面図、
図6(B)に
図6(A)のVIB-VIBで切断した断面図、
図6(C)に
図6(A)のVIC-VICで切断した断面図を示した。
【0038】
図6(A)~(C)に示した通り、スリット11cを挟んで分割された負極集電タブ11bの端部の一方の部分11dは、厚さ方向の上側に隣接する他の負極集電タブ11bに電気的に接続されており、他方の部分11dは厚さ方向の下側に隣接する他の負極集電タブ11bに電気的に接続されている。このように、スリット11cを有する負極集電タブ11bの各端部11dが隣接する各負極集電タブ11bに織り込まれており、
図6(A)の矢印で示したように、スリット11cを有する負極集電タブ11bと隣接する各負極集電タブ11bとは、各端部11dを介して、それぞれ電気的に接続されている。
【0039】
従って、電気的に接続されているこれらの負極集電タブ11b(1組の負極集電タブ)と負極集電端子20aとの接合部分の一部に接合不良が生じたとしても、他の接合部分を介して1組の負極集電タブ11bと負極集電端子20aとが電気的に接続している。すなわち、1組の負極集電タブ11bにおいて、溶接不良が生じた負極集電タブ11bを有する電極体を電気的に孤立させることなく、全ての電極体16から電力を取り出すことができる。したがって、このような負極集電タブ11bの形態を有する電池100によれば、構造信頼性を向上することができる。
【0040】
さらに、負極集電タブ11bの別の他の形態について説明する。
図3では、スリット11cを挟んで分割された負極集電タブ11bの端部のそれぞれの部分11dが、厚さ方向の異なる位置に配置されているに他の負極集電タブ11bの端部のそれぞれの部分11dに電気的に接続されていたが、本開示の電池はこれに限定されず、それぞれの部分11dが同一の他の負極集電タブ11bに電気的に接続されていてもよい。例えば、厚さ方向に4枚並ぶ負極集電タブ11bにおいて、上から2、3番目の負極集電タブ11bがスリット11cを有している形態を説明する。
図7(A)にこの形態の正面図、
図7(B)に
図7(A)のVIIB-VIIBで切断した断面図、
図7(C)に
図7(A)のVIIC-VIICで切断した断面図を示した。
【0041】
図7(A)~(C)に示した通り、スリット11cを挟んで分割された負極集電タブ11bの端部のそれぞれの部分11dが、同一の他の負極集電タブ11bの端部の各部分11dに電気的に接続されている。従って、電気的に接続されているこれらの負極集電タブ11b(1組の負極集電タブ)と負極集電端子20aとの接合部分の一部に接合不良が生じたとしても、他の接合部分を介して1組の負極集電タブ11bと負極集電端子20aとが電気的に接続している。すなわち、1組の負極集電タブ11bにおいて、溶接不良が生じた負極集電タブ11bを有する電極体を電気的に孤立させることなく、全ての電極体16から電力を取り出すことができる。したがって、このような負極集電タブ11bの形態を有する電池100によれば、構造信頼性を向上することができる。
<集電端子>
集電端子は発電要素10と外部部材とを接続するための部材である。負極集電端子40aは負極集電タブ11bと接続されており、正極集電端子40bは正極集電タブ15bと接続されている。端子の材料は特に限定されず、負極集電端子40a又は正極集電端子40bに用いることができる金属材料から適宜選択することができる。
【0042】
<その他の部材>
電池100は外装体に収容されていてもよい。外装体の種類は特に限定されず、例えばAlラミネート等の金属ラミネートや金属缶等の金属製の筐体を挙げることができる。
【0043】
[電池の製造方法]
次に本開示の電池の製造方法について説明する。本開示の電池の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造可能である。以下に、全固体電池用の電極が積層された積層体である発電要素を備えた電池の製造方法の一実施形態を説明する。
【0044】
一実施形態の電池の製造方法は、電極作製工程S1、スリット付与工程S2、電極積層工程S3、集電タブ織り込み工程S4、及び集電端子接合工程S5を備えている。
図8に各工程の様子を表す概略図を示した。
【0045】
<電極作製工程S1>
電極作製工程S1は、負極電極及び正極電極を作製する工程である。負極電極及び正極電極は公知の方法により作製することができる。例えば、負極活物質層を構成する材料を有機溶媒に分散し、得られたスラリーを負極集電体層に塗布して乾燥して負極電極を得ることができる。同様の方法を用いて正極電極を得ることができる。
【0046】
固体電解質層は負極電極又は正極電極のいずれか一方に積層されて作製されてもよく、これらの電極とは別に作製されてもよい。例えば、固体電解質層を構成する材料を有機溶媒に分散し、負極電極の負極活物質層の表面に塗布して、乾燥させることにより、負極電極に固体電解質層を積層してもよい。或いは、別途固体電解質層を作製し、電極積層工程S3において、正極電極及び負極電極の間に配置してもよい。
【0047】
ここで、積層体の内部に用いられる負極電極及び正極電極は両面に電極層を形成してもよい。
【0048】
<スリット付与工程S2>
スリット付与工程S2は各集電タブにスリットを付与する工程である。スリット付与方法は公知の方法を適宜適用することができる。例えば、スリットを有するように、集電タブを切断するだけでよい。
【0049】
<電極積層工程S3>
電極積層工程S3は、負極電極及び正極電極を積層し、積層体を作製する工程である。各電極の積層方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、積層体作製後、積層体を加圧して、各電極の接着を強めてもよい。
【0050】
<織り込み工程S4>
織り込み工程S4は、スリットにより分割された各集電タブの端部の部分を織り込む工程である。織り込み工程S4は電極積層工程S3と並行して行ってもよい。すなわち、負極電極及び正極電極を積層しつつ、各集電タブの織り込みを実施してもよい。
【0051】
<集電端子接合工程S5>
集電端子接合工程S5は、織り込まれた各集電タブと各集電端子とを接合する工程である。接合方法は特に限定されず、例えばレーザ溶接や超音波接合、はんだ付け等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 発電要素
11 負極集電体層
11a 負極平板部
11b 負極集電タブ
11c スリット
11d 部分
12 負極活物質層
13 固体電解質層
14 正極活物質層
15 正極集電体層
15a 正極平板部
15b 正極集電タブ
16 電極体
20a 負極集電端子
20b 正極集電端子
100 電池