(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】内視鏡手術システム、画像処理装置、および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/045 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A61B1/045 610
A61B1/045 618
(21)【出願番号】P 2021536920
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2020027510
(87)【国際公開番号】W WO2021020132
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2019138534
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸弘
【審査官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168261(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/013217(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/077253(WO,A1)
【文献】特開2016-000065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G06T 7/00 - 7/90
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡により撮像された画像に基づいて撮像時の動き成分を推定して、前記動き成分が前記画像の全体に対する動き成分であることの度合いを示す信頼度を設定する動き推定部と、
前記画像に対してブレを補正する補正処理を行う際に用いられる補正量を、前記信頼度に従って制御する補正量制御部と
、
前記画像の局所の動きを示すローカル動きベクトルに基づいて、複数の前記ローカル動きベクトルのノルムおよび角度を算出し、前記ローカル動きベクトル群のノルム標準偏差、および、前記ローカル動きベクトル群の角度標準偏差を算出する演算部と
を備え
、
前記動き推定部は、
前記ノルム標準偏差を縦軸とし、前記角度標準偏差を横軸として、所定の閾値により表される閾値曲線を参照し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線未満となる領域にある場合には、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第1の値を設定し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線以上となる領域にある場合には、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第2の値を設定する
、または、
前記ノルム標準偏差を縦軸とし、前記角度標準偏差を横軸として、前記閾値により表される第1の閾値曲線および第2の閾値曲線を参照し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第1の閾値曲線未満となる領域にある場合には、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第1の値を設定し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第1の閾値曲線以上となり、かつ、前記第2の閾値曲線以下となる領域にある場合には、前記信頼度として前記第1の値から第2の値までの値を設定し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第2の閾値曲線より大きくなる領域にある場合には、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として前記第2の値を設定する
内視鏡手術システム。
【請求項2】
前記動き推定部は、前記動き成分が単一の大きさおよび方向で多く占められている単一動き成分、または、前記動き成分が複数の異なる大きさおよび方向で多く占められている複数動き成分のどちらが前記画像に含まれているかを推定する
請求項1に記載の内視鏡手術システム。
【請求項3】
前記動き推定部は、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定した場合には、前記信頼度として第1の値を設定し、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定した場合には、前記信頼度として第2の値を設定する
請求項2に記載の内視鏡手術システム。
【請求項4】
前記第1の値は1.0であり、
前記第2の値は0.0である
請求項3に記載の内視鏡手術システム。
【請求項5】
前記補正量制御部は、前記動き推定部から順次供給される前記信頼度を蓄積して、時間方向に平滑化された前記信頼度を用いて前記補正量を制御する
請求項1に記載の内視鏡手術システム。
【請求項6】
前記画像において特徴となる個所を示す点となる特徴点を抽出する特徴点抽出部と、
前記特徴点抽出部により検出された複数の前記特徴点の動きに基づいて、前記ローカル動きベクトルを検出するローカル動きベクトル検出部と
をさらに備える
請求項1に記載の内視鏡手術システム。
【請求項7】
複数の前記ローカル動きベクトルに基づいて、前記画像の全体の動きを示すグローバル動き量を推定するグローバル動き量推定部
をさらに備え、
前記補正量制御部は、前記グローバル動き量に基づいて前記補正量を求める
請求項6に記載の内視鏡手術システム。
【請求項8】
前記補正量制御部により制御された前記補正量に従って、前記画像に対する前記補正処理を施す補正処理部
をさらに備える請求項1に記載の内視鏡手術システム。
【請求項9】
内視鏡により撮像された画像に基づいて撮像時の動き成分を推定して、前記動き成分が前記画像の全体に対する動き成分であることの度合いを示す信頼度を設定する動き推定部と、
前記画像に対してブレを補正する補正処理を行う際に用いられる補正量を、前記信頼度に従って制御する補正量制御部と
、
前記画像の局所の動きを示すローカル動きベクトルに基づいて、複数の前記ローカル動きベクトルのノルムおよび角度を算出し、前記ローカル動きベクトル群のノルム標準偏差、および、前記ローカル動きベクトル群の角度標準偏差を算出する演算部と
を備え
、
前記動き推定部は、
前記ノルム標準偏差を縦軸とし、前記角度標準偏差を横軸として、所定の閾値により表される閾値曲線を参照し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線未満となる領域にある場合には、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第1の値を設定し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線以上となる領域にある場合には、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第2の値を設定する
、または、
前記ノルム標準偏差を縦軸とし、前記角度標準偏差を横軸として、前記閾値により表される第1の閾値曲線および第2の閾値曲線を参照し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第1の閾値曲線未満となる領域にある場合には、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第1の値を設定し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第1の閾値曲線以上となり、かつ、前記第2の閾値曲線以下となる領域にある場合には、前記信頼度として前記第1の値から第2の値までの値を設定し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第2の閾値曲線より大きくなる領域にある場合には、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として前記第2の値を設定する
画像処理装置。
【請求項10】
画像処理装置が、
内視鏡により撮像された画像に基づいて撮像時の動き成分を推定して、前記動き成分が前記画像の全体に対する動き成分であることの度合いを示す信頼度を設定することと、
前記画像に対してブレを補正する補正処理を行う際に用いられる補正量を、前記信頼度に従って制御することと
、
前記画像の局所の動きを示すローカル動きベクトルに基づいて、複数の前記ローカル動きベクトルのノルムおよび角度を算出し、前記ローカル動きベクトル群のノルム標準偏差、および、前記ローカル動きベクトル群の角度標準偏差を算出することと
を含
み、
前記ノルム標準偏差を縦軸とし、前記角度標準偏差を横軸として、所定の閾値により表される閾値曲線を参照し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線未満となる領域にある場合には、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第1の値を設定し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線以上となる領域にある場合には、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第2の値を設定する
、または、
前記ノルム標準偏差を縦軸とし、前記角度標準偏差を横軸として、前記閾値により表される第1の閾値曲線および第2の閾値曲線を参照し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第1の閾値曲線未満となる領域にある場合には、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第1の値を設定し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第1の閾値曲線以上となり、かつ、前記第2の閾値曲線以下となる領域にある場合には、前記信頼度として前記第1の値から第2の値までの値を設定し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第2の閾値曲線より大きくなる領域にある場合には、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として前記第2の値を設定する
画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡手術システム、画像処理装置、および画像処理方法に関し、特に、より良好に内視鏡による観察ができるようにした内視鏡手術システム、画像処理装置、および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場においては、従来の開腹手術に代わって、内視鏡により患部を観察しながら外科手術を行うことができる内視鏡手術システムが利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、撮像部の撮像視野を動かす操作に応じた撮像視野の動き情報と、時系列に取得された複数の画像間の動きとに応じたブレ補正処理を行う内視鏡装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1で開示されている内視鏡装置では、例えば、撮像部の動き成分と、撮像部以外の医療器具などの動き成分との比率が近い場合には、画像に含まれる動き成分を正しく推定することは困難であった。そのため、誤って推定された動きに基づいてブレ補正処理が行われてしまう結果、ブレ補正処理後の画像に歪みが発生することが懸念され、そのような画像では、良好な観察ができないと想定される。
【0006】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より良好に内視鏡による観察ができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面の内視鏡手術システムおよび画像処理装置は、内視鏡により撮像された画像に基づいて撮像時の動き成分を推定して、前記動き成分が前記画像の全体に対する動き成分であることの度合いを示す信頼度を設定する動き推定部と、前記画像に対してブレを補正する補正処理を行う際に用いられる補正量を、前記信頼度に従って制御する補正量制御部と、前記画像の局所の動きを示すローカル動きベクトルに基づいて、複数の前記ローカル動きベクトルのノルムおよび角度を算出し、前記ローカル動きベクトル群のノルム標準偏差、および、前記ローカル動きベクトル群の角度標準偏差を算出する演算部とを備える。そして、前記動き推定部は、前記ノルム標準偏差を縦軸とし、前記角度標準偏差を横軸として、所定の閾値により表される閾値曲線を参照し、前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線未満となる領域にある場合には、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第1の値を設定し、前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線以上となる領域にある場合には、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第2の値を設定する。または、前記ノルム標準偏差を縦軸とし、前記角度標準偏差を横軸として、前記閾値により表される第1の閾値曲線および第2の閾値曲線を参照し、前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第1の閾値曲線未満となる領域にある場合には、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第1の値を設定し、前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第1の閾値曲線以上となり、かつ、前記第2の閾値曲線以下となる領域にある場合には、前記信頼度として前記第1の値から第2の値までの値を設定し、前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第2の閾値曲線より大きくなる領域にある場合には、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として前記第2の値を設定する。
【0008】
本開示の一側面の画像処理方法は、画像処理装置が、内視鏡により撮像された画像に基づいて撮像時の動き成分を推定して、前記動き成分が前記画像の全体に対する動き成分であることの度合いを示す信頼度を設定することと、前記画像に対してブレを補正する補正処理を行う際に用いられる補正量を、前記信頼度に従って制御することと、前記画像の局所の動きを示すローカル動きベクトルに基づいて、複数の前記ローカル動きベクトルのノルムおよび角度を算出し、前記ローカル動きベクトル群のノルム標準偏差、および、前記ローカル動きベクトル群の角度標準偏差を算出することとを含む。そして、前記ノルム標準偏差を縦軸とし、前記角度標準偏差を横軸として、所定の閾値により表される閾値曲線を参照し、前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線未満となる領域にある場合には、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第1の値を設定し、前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線以上となる領域にある場合には、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第2の値を設定する。または、前記ノルム標準偏差を縦軸とし、前記角度標準偏差を横軸として、前記閾値により表される第1の閾値曲線および第2の閾値曲線を参照し、前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第1の閾値曲線未満となる領域にある場合には、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として第1の値を設定し、前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第1の閾値曲線以上となり、かつ、前記第2の閾値曲線以下となる領域にある場合には、前記信頼度として前記第1の値から第2の値までの値を設定し、前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第2の閾値曲線より大きくなる領域にある場合には、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として前記第2の値を設定する。
【0009】
本開示の一側面においては、内視鏡により撮像された画像に基づいて撮像時の動き成分が推定されて、その動き成分が画像の全体に対する動き成分であることの度合いを示す信頼度が設定され、画像に対して補正処理を行う際に用いられる補正量が、信頼度に従って制御され、画像の局所の動きを示すローカル動きベクトルに基づいて、複数のローカル動きベクトルのノルムおよび角度が算出され、ローカル動きベクトル群のノルム標準偏差、および、ローカル動きベクトル群の角度標準偏差が算出される。そして、ノルム標準偏差を縦軸とし、角度標準偏差を横軸として、所定の閾値により表される閾値曲線が参照され、画像から求められたノルム標準偏差および角度標準偏差が、閾値曲線未満となる領域にある場合には、画像に単一動き成分が含まれていると推定して、信頼度として第1の値が設定され、画像から求められたノルム標準偏差および角度標準偏差が、閾値曲線以上となる領域にある場合には、画像に複数動き成分が含まれていると推定して、信頼度として第2の値が設定される。または、ノルム標準偏差を縦軸とし、角度標準偏差を横軸として、閾値により表される第1の閾値曲線および第2の閾値曲線が参照され、画像から求められたノルム標準偏差および角度標準偏差が、第1の閾値曲線未満となる領域にある場合には、画像に単一動き成分が含まれていると推定して、信頼度として第1の値が設定され、画像から求められたノルム標準偏差および角度標準偏差が、第1の閾値曲線以上となり、かつ、第2の閾値曲線以下となる領域にある場合には、信頼度として第1の値から第2の値までの値が設定され、画像から求められたノルム標準偏差および角度標準偏差が、第2の閾値曲線より大きくなる領域にある場合には、画像に複数動き成分が含まれていると推定して、信頼度として第2の値が設定される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本技術を適用した内視鏡手術システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【
図2】画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】動き成分の推定で参照される閾値曲線の第1の例を示す図である。
【
図4】画像処理の第1の処理例を説明するフローチャートである。
【
図5】動き成分の推定で参照される閾値曲線の第2の例を示す図である。
【
図6】遷移帯において求められる信頼度について説明する図である。
【
図7】画像処理の第2の処理例を説明するフローチャートである。
【
図8】本技術を適用したコンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【
図9】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図10】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
<内視鏡手術システムの構成例>
図1は、本技術を適用した内視鏡手術システムの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0013】
図1に示す内視鏡手術システム11は、内視鏡12、エネルギー処置具13、表示装置14、および装置ユニット15を備えて構成される。
【0014】
例えば、内視鏡手術システム11を利用した手術では、内視鏡12およびエネルギー処置具13が患者の体内に挿入されるとともに、鉗子16が患者の体内に挿入される。そして、内視鏡手術システム11では、内視鏡12によって撮像された腫瘍などの患部の画像が表示装置14にリアルタイムで表示され、医者は、その画像を見ながらエネルギー処置具13および鉗子16を使用して患部に対する処置を行うことができる。
【0015】
内視鏡12は、例えば、対物レンズなどの光学系が組み込まれた筒状の鏡筒部が、撮像素子などを備えたカメラヘッドに装着されて構成される。
【0016】
エネルギー処置具13は、例えば、高周波の電流により発生する熱によって、患部を切除したり、血管を封止したりする内視鏡下外科手術で用いられる医療器具である。
【0017】
表示装置14は、内視鏡12により撮像された画像に対して、装置ユニット15において画像処理が施された画像を表示する。
【0018】
装置ユニット15は、内視鏡12により撮像された画像に対して画像処理を施す画像処理装置21(
図2)を有する他、内視鏡手術システム11を利用した手術を行うのに必要となる各種の装置を有して構成される。例えば、装置ユニット15には、内視鏡12による撮像を制御するCCU(Camera Control Unit)や、内視鏡12が撮像を行う際に患部に対して照射される光を供給する光源装置、エネルギー処置具13による患部に対する処置に必要となる高周波の電流を供給する処置具用装置などが組み込まれる。
【0019】
このように構成される内視鏡手術システム11では、装置ユニット15において、例えば、内視鏡12により撮像された画像に生じているブレを適切に補正する画像処理が施され、表示装置14にはブレが適切に補正された画像が表示される。従って、内視鏡手術システム11を利用した手術において、医者などは、ブレが適切に補正された画像によって観察しながら患部に対する処置を行うことができる。
【0020】
<画像処理装置の構成例>
図2は、装置ユニット15が有する画像処理装置21の構成例を示すブロック図である。
【0021】
図2に示すように、画像処理装置21は、特徴点抽出部22、ローカル動きベクトル検出部23、グローバル動き量推定部24、演算部25、動き推定部26、補正量制御部27、および補正処理部28を備えて構成される。
【0022】
そして、画像処理装置21には、
図1の内視鏡12により撮像された画像が入力される。この画像には、内視鏡12が動くことによる全体的な動き(全体ブレ)が生じることがある他、内視鏡12によりエネルギー処置具13や鉗子16などが撮像されている場合には、エネルギー処置具13や鉗子16などが動くことによる局所的な動き(局所ブレ)が生じることがある。
【0023】
特徴点抽出部22は、内視鏡12により撮像された画像において特徴となる箇所を示す点となる特徴点を抽出し、画像から抽出した複数の抽出点を、ローカル動きベクトル検出部23に供給する。
【0024】
ローカル動きベクトル検出部23は、特徴点抽出部22から供給される複数の特徴点それぞれの動きに基づいて、画像の局所的な部分において生じている動きを示すローカル動きベクトルを検出する。そして、ローカル動きベクトル検出部23は、
図1の内視鏡12により撮像された画像から検出される複数のローカル動きベクトルを、グローバル動き量推定部24および演算部25に供給する。
【0025】
グローバル動き量推定部24は、ローカル動きベクトル検出部23から供給される複数のローカル動きベクトルに基づいて、画像の全体的な動きの大きさを表すグローバル動き量を推定し、補正量制御部27に供給する。
【0026】
演算部25は、ローカル動きベクトル検出部23から供給される複数のローカル動きベクトルに基づいた演算を行う。例えば、演算部25は、個々のローカル動きベクトルのノルムおよび角度を求める演算を行う。そして、演算部25は、個々のローカル動きベクトルのノルムの散らばりの度合いを示す標準偏差(以下、ローカル動きベクトル群のノルム標準偏差と称する)を算出し、動き推定部26に供給する。また、演算部25は、個々のローカル動きベクトルの角度の散らばりの度合いを示す標準偏差(以下、ローカル動きベクトル群の角度標準偏差と称する)を算出し、動き推定部26に供給する。
【0027】
動き推定部26は、演算部25により算出されたローカル動きベクトル群のノルム標準偏差および角度標準偏差に従って、後述する
図3に示す閾値曲線thを参照し、画像処理の処理対象となっている画像に基づいて撮像時の動き成分を推定する。即ち、動き推定部26は、単一動き成分と複数動き成分とのどちらが画像に含まれているかを推定する。例えば、処理対象の画像に含まれている動き成分が単一の大きさおよび方向で多く占められている場合、その画像に単一動き成分が含まれていると推定される。一方、処理対象の画像に含まれている動き成分が複数の異なる大きさおよび方向で多く占められている場合、その画像に複数動き成分が含まれていると推定される。そして、動き推定部26は、動き成分の推定結果に従って、その画像に含まれている動き成分が、内視鏡12が動いたことによる結果、画像の全体に対して動きが生じたことによるものであると信頼される度合いを示す信頼度を設定して、補正量制御部27に供給する。
【0028】
例えば、動き推定部26は、動き成分の推定結果に従って、処理対象の画像に単一動き成分が含まれている場合には、その画像に含まれている動き成分が、画像の全体に対して動きが生じたことによるものである度合いが大きいとして信頼度に1.0を設定する。一方、動き推定部26は、動き成分の推定結果に従って、処理対象の画像に複数動き成分が含まれている場合には、その画像に含まれている動き成分が、画像の全体に対して動きが生じたことによるものである度合いが低く、例えば、エネルギー処置具13や鉗子16などの動きによるものとして信頼度に0.0を設定する。なお、それぞれの信頼度は、0.0または1.0に限られることなく、例えば、0.0から1.0までの間の任意の値を用いてもよい。
【0029】
補正量制御部27は、グローバル動き量推定部24から供給されるグローバル動き量を、動き推定部26から供給される信頼度に従って制御し、処理対象の画像に対して補正処理部28においてブレを補正する補正処理を行う際に用いる補正量を求める。例えば、補正量制御部27は、動き推定部26から供給される信頼度が1.0である場合、グローバル動き量を、そのまま補正量として用いることとし、補正処理部28に供給する。一方、補正量制御部27は、一方、補正量制御部27は、動き推定部26から供給される信頼度が0.0である場合、グローバル動き量を補正量として用いないこととし、補正量を0として補正処理部28に供給する。
【0030】
補正処理部28は、補正量制御部27による制御に従った補正量で、画像処理装置21に入力された処理対象の画像に生じているブレを補正する補正処理を施し、表示装置14に出力する。例えば、補正処理部28は、グローバル動き量を信頼度に従って制御した補正量が補正量制御部27から供給されると、その補正量に従って時間方向のフィルタをかけるように平滑化を行うことで、画像のブレを補正する。従って、補正処理部28は、例えば、補正量制御部27から供給された補正量が0である場合には、処理対象の画像に対する補正処理を行わずに、そのまま画像を出力することになる。
【0031】
即ち、補正処理部28は、処理対象の画像に対して単一動き成分が含まれている場合には、グローバル動き量に応じてブレを補正する補正処理を施すこととし、処理対象の画像に対して複数動き成分が含まれている場合には、補正処理をオフすることとする。
【0032】
以上のように構成される画像処理装置21は、処理対象の画像に含まれている動き成分が単一動き成分か複数動き成分かによって適切に補正処理を施すことができる。例えば、画像処理装置21は、処理対象の画像に含まれている動き成分が、画像の全体に対して動きが生じたことによるものである度合いが大きい場合には、内視鏡12の動きにより画像に発生している全体ブレを補正した画像を出力することができる。
【0033】
また、画像処理装置21は、処理対象の画像に含まれている動き成分が、画像の全体に対して動きが生じたことによるものである度合いが低く、画像中で局所ブレの度合いが大きい場合には、適切ではない補正処理を行ってしまうことを回避することができる。例えば、エネルギー処置具13や鉗子16などの動きによる局所的なものである度合いが大きい場合には、グローバル動き量の推定時に局所ブレの影響を強く受けてしまう。このとき、推定されたグローバル動き量が、全体ブレを正しく反映できていないことにより、局所ブレの領域だけでなく全体として補正結果に歪みが生じることになる。
【0034】
そこで、画像処理装置21は、処理対象の画像に含まれている動き成分が、複数の動きが生じたことによるものである度合いが大きい場合には、局所ブレの領域だけでなく全体として補正結果に歪みが生じてしまうのを回避することができる。即ち、画像に複数の動き成分が含まれている場合に、グローバル動き量に応じてブレを補正する補正処理が施されることがなく、これにより、適切ではない補正処理が行われてしまうことを回避することができる。
【0035】
従って、手術を行う医者は、内視鏡12そのものが動くことにより生じる全体ブレを補正した画像による観察を行うことができるとともに、エネルギー処置具13や鉗子16などの動きにより生じる局所ブレを補正した際に発生するような歪みのある画像による観察を回避することができ、違和感のない良好な画質によって、より良好に内視鏡による観察を行うことができる。
【0036】
ここで、
図3を参照して、動き推定部26による動き成分の推定について説明する。
【0037】
上述したように、動き推定部26には、演算部25により算出されたローカル動きベクトル群のノルム標準偏差および角度標準偏差が供給される。そして、動き推定部26には、処理対象の画像に単一動き成分と複数動き成分とのどちらが含まれているかを推定するための閾値を示す閾値曲線thが設定されている。
【0038】
図3において、縦軸は、ローカル動きベクトル群のノルム標準偏差を示し、横軸は、ローカル動きベクトル群の角度標準偏差を示しており、図示するような閾値曲線thが設定される。例えば、閾値曲線thは、ノルム標準偏差が大きくなるのに従い角度標準偏差が小さくなり、かつ、ノルム標準偏差が小さくなるのに従い角度標準偏差が大きくなるとともに、ノルム標準偏差および角度標準偏差が小さくなる方向に凸となるような曲線で表される。
【0039】
即ち、画像内に単一動き成分が含まれているときには、ローカル動きベクトル群が一定の大きさおよび方向に揃う傾向があるためノルム標準偏差および角度標準偏差が小さくなる。一方、画像内に複数動き成分が含まれているときには、ローカル動きベクトルは異なる方向を示す複数の群に分かれるため、ノルム標準偏差および角度標準偏差が大きくなる。
【0040】
このことより、動き推定部26は、処理対象の画像から求められたローカル動きベクトル群のノルム標準偏差および角度標準偏差が、
図3に示す閾値曲線th未満の領域(即ち、閾値曲線thよりも原点側の領域)にある場合には、その画像には単一動き成分が含まれていると推定することができる。一方、動き推定部26は、処理対象の画像から求められたローカル動きベクトル群のノルム標準偏差および角度標準偏差が、
図3に示す閾値曲線th以上の領域にある場合には、その画像には複数動き成分が含まれていると推定することができる。
【0041】
従って、処理対象の画像から求められる複数のローカル動きベクトルについて、ノルムの散らばりの度合いが小さく、かつ、角度の散らばりの度合いが小さい場合には、処理対象の画像には単一動き成分が含まれていると推定され、信頼度が1.0に設定される。一方、処理対象の画像から求められる複数のローカル動きベクトルについて、ノルムの散らばりの度合いが大きく、かつ、角度の散らばりの度合いが大きい場合には、処理対象の画像には複数動き成分が含まれていると推定され、信頼度が0.0に設定される。
【0042】
<画像処理の第1の処理例>
図4は、画像処理装置21において実行される画像処理の第1の処理例を説明するフローチャートである。
【0043】
例えば、内視鏡12により撮像された画像が画像処理装置21に入力されると、その画像を処理対象として画像処理が開始され、ステップS11において、特徴点抽出部22は、処理対象の画像から複数の特徴点を抽出する。
【0044】
ステップS12において、ローカル動きベクトル検出部23は、ステップS11で特徴点抽出部22により抽出された複数の特徴点に従って、処理対象の画像から複数のローカル動きベクトルを検出する。
【0045】
ステップS13において、グローバル動き量推定部24は、ステップS12でローカル動きベクトル検出部23により検出された複数のローカル動きベクトルに従って、処理対象の画像からグローバル動き量を推定する。
【0046】
ステップS14において、演算部25は、ステップS12でローカル動きベクトル検出部23により検出された複数のローカル動きベクトルについて、個々のローカル動きベクトルのノルムおよび角度を算出する。
【0047】
ステップS15において、演算部25は、個々のローカル動きベクトルのノルムに基づいてローカル動きベクトル群のノルム標準偏差を算出し、個々のローカル動きベクトルの角度に基づいてローカル動きベクトル群の角度標準偏差を算出する。
【0048】
ステップS16において、動き推定部26は、ステップS15で演算部25により算出されたローカル動きベクトル群のノルム標準偏差および角度標準偏差に従って、上述の
図3に示した閾値曲線thを参照し、処理対象の画像に含まれている動き成分を推定する。
【0049】
ステップS17において、動き推定部26は、ステップS16での動き成分の推定結果が、単一動き成分と複数動き成分とのどちらであるかを判定する。
【0050】
ステップS17において、動き推定部26が、動き成分の推定結果が単一動き成分であると判定した場合、処理はステップS18に進む。そして、ステップS18において、動き推定部26は、信頼度に1.0を設定する。
【0051】
一方、ステップS17において、動き推定部26が、動き成分の推定結果が複数動き成分であると判定した場合、処理はステップS19に進む。そして、ステップS19において、動き推定部26は、信頼度に0.0を設定する。
【0052】
ステップS18またはS19の処理後、処理はステップS20に進み、補正量制御部27は、ステップS13でグローバル動き量推定部24によって推定されたグローバル動き量に基づく補正量を、動き推定部26によって設定された信頼度に従って制御する。
【0053】
ステップS21において、補正処理部28は、ステップS20で補正量制御部27によって制御された補正量で、処理対象の画像に対してブレを補正する補正処理を施す。即ち、動き推定部26によって設定された信頼度が1.0である場合には、グローバル動き量に基づく補正量でブレを補正する補正処理を行い、動き推定部26によって設定された信頼度が0.0である場合には補正処理をオフする。そして、補正処理部28が、補正処理を行って得られる画像、または、補正処理をオフした画像を表示装置14に出力した後、処理は終了される。
【0054】
以上のように、画像処理装置21は、処理対象の画像に単一動き成分および複数動き成分のどちらが含まれているかを判定することで、画像のブレを補正する補正処理を適切に行う(オン/オフを切り替える)ことができる。これにより、処理対象の画像に単一動き成分が含まれている場合にはブレを補正した画像を出力し、処理対象の画像に複数動き成分が含まれている場合にはブレを補正しない(適切ではない補正処理が行われてしまうことを回避した)画像を出力することができる。
【0055】
<画像処理の第2の処理例>
図5乃至
図7を参照して、画像処理装置21において実行される画像処理の第2の処理例について説明する。
【0056】
上述した画像処理の第1の処理例では、画像処理装置21は、
図3に示した閾値曲線thに従って信頼度に0.0または1.0が設定され、ブレを補正する画像処理のオン/オフの切り替えが行われる。これに対し、画像処理の第2の処理例では、信頼度を0.0から1.0までの間で遷移させる遷移帯を設けて、ブレを補正する強度を調整することができる。
【0057】
即ち、
図5に示すように、第1の閾値曲線th1および第2の閾値曲線th2が設定される。第1の閾値曲線th1は、処理対象の画像に単一動き成分が含まれているか否かを推定するための閾値を示し、第2の閾値曲線th2は、処理対象の画像に複数動き成分が含まれているか否かを推定するための閾値を示す。
【0058】
従って、動き推定部26は、処理対象の画像から求められたローカル動きベクトル群のノルム標準偏差および角度標準偏差が、第1の閾値曲線th1未満の領域にある場合には、その画像には単一動き成分が含まれていると推定して、信頼度を1.0に設定する。一方、動き推定部26は、処理対象の画像から求められたローカル動きベクトル群のノルム標準偏差および角度標準偏差が、第2の閾値曲線th2より大きい領域にある場合には、その画像には複数動き成分が含まれていると推定して、信頼度を0.0に設定する。
【0059】
そして、動き推定部26は、処理対象の画像から求められたローカル動きベクトル群のノルム標準偏差および角度標準偏差が、第1の閾値曲線th1以上、かつ、第2の閾値曲線th2以下となる領域にある場合には、単一動き成分と複数動き成分との間の遷移帯であるとして、信頼度を0.0から1.0の間に設定する。
【0060】
例えば、
図6に示すように、動き推定部26は、第1の閾値曲線th1であるときの信頼度1.0から、第2の閾値曲線th2であるときの信頼度0.0までに向かって、ローカル動きベクトル群のノルム標準偏差および角度標準偏差の値に応じて線形に減少するように、遷移帯における信頼度を求めるこができる。
【0061】
そして、補正量制御部27は、動き推定部26により設定された信頼度に従って補正量を制御することができる。例えば、補正量制御部27は、信頼度が0.0および1.0に設定されているときには、上述した画像処理の第1の処理例と同様に補正量を制御する。そして、補正量制御部27は、信頼度が0.0から1.0までの間に設定されているときには、その信頼度を用いて、補正処理がオンであるときとオフであるときとの間を補間するような補正量を算出する。例えば、補正量制御部27は、単純に、補正量に信頼度を掛け合わせた値を、動き成分に応じた補正量として算出してもよい。
【0062】
このような画像処理の第2の処理例を用いることにより、画像処理装置21は、より違和感のない画像を出力することができる。
【0063】
例えば、画像処理の第1の処理例のように、信頼度に1.0または0.0が設定されて、補正処理のオン/オフが切り替えられるような制御が行われる場合、補正処理のオン/オフの切り替わりの頻度が高くなることがある。即ち、フレームの推移とともに変化する信頼度が閾値曲線th(
図3)の近傍に存在し、フレームごと、または、数フレームごとに、単一動き成分と複数動き成分とで推定結果が変化する場合には、補正処理のオン/オフの切り替わりの頻度が高くなる。このような場合、時間の経過に伴って画像がカクつくことによって違和感が生じるような悪影響を及ぼすことが想定される。
【0064】
これに対し、画像処理の第2の処理例では、遷移帯において信頼度に0.0から1.0までの値が設定されるので、補正処理のオン/オフの切り替わりの頻度が高くなるのを回避することができ、このような悪影響を緩和して、違和感を軽減することができる。
【0065】
図7は、画像処理装置21において実行される画像処理の第2の処理例を説明するフローチャートである。
【0066】
ステップS31乃至S35では、
図4のステップS11乃至15と同様の処理が行われる。そして、ステップS36において、動き推定部26は、ステップS35で演算部25により算出されたローカル動きベクトル群のノルム標準偏差および角度標準偏差に従って、上述の
図5に示した第1の閾値曲線th1および第2の閾値曲線th2を参照し、処理対象の画像に含まれている動き成分を推定する。
【0067】
ステップS37において、動き推定部26は、ステップS36での動き成分の推定結果が、単一動き成分、複数動き成分、および遷移帯のいずれであるかを判定する。
【0068】
ステップS37において、動き推定部26が、動き成分の推定結果が単一動き成分であると判定した場合、処理はステップS38に進む。そして、ステップS38において、動き推定部26は、信頼度に1.0を設定する。
【0069】
一方、ステップS37において、動き推定部26が、動き成分の推定結果が複数動き成分であると判定した場合、処理はステップS39に進む。そして、ステップS39において、動き推定部26は、信頼度に0.0を設定する。
【0070】
一方、ステップS37において、動き推定部26が、動き成分の推定結果が遷移帯であると判定した場合、処理はステップS40に進む。そして、ステップS40において、動き推定部26は、上述の
図6に示したように、信頼度に0.0から1.0までの値を設定する。
【0071】
ステップS38、ステップS39、またはステップS40の処理後、処理はステップS41に進み、補正量制御部27は、ステップS33でグローバル動き量推定部24によって推定されたグローバル動き量に基づく補正量を、動き推定部26によって設定された信頼度に従って制御する。
【0072】
ステップS42において、補正処理部28は、ステップS41で補正量制御部27によって制御された補正量で、処理対象の画像に対してブレを補正する補正処理を施す。即ち、動き推定部26によって設定された信頼度が1.0である場合には、グローバル動き量に基づく補正量でブレを補正する補正処理を行い、動き推定部26によって設定された信頼度が0.0である場合には補正処理をオフする。また、動き推定部26によって設定された信頼度が1.0から0.0の間の値である場合には、信頼度に応じた補正量でブレを補正する補正処理を行う。そして、補正処理部28が、補正処理を行って得られる画像、または、補正処理をオフした画像を表示装置14に出力した後、処理は終了される。
【0073】
以上のように、画像処理装置21は、処理対象の画像に単一動き成分または複数動き成分が含まれているか、或いは、単一動き成分と複数動き成分との間の遷移帯であるかを判定することで、画像のブレを補正する補正処理を適切に行うことができる。従って、画像処理装置21は、上述したようなフレーム間での単一動き成分と複数動き成分との切り替わりによる悪影響を緩和し、違和感の軽減された画像を出力することができる。
【0074】
なお、画像処理装置21では、補正量制御部27が、動き推定部26から順次供給される信頼度を蓄積し、それらの信頼度を時間方向に平滑化してもよい。そして、補正量制御部27は、時間方向に平滑化された信頼度を用いて、滑らかに変化するように補正量を制御することができる。これにより、画像処理装置21は、上述したようなフレーム間での単一動き成分と複数動き成分との切り替わりによる悪影響を緩和し、より違和感の軽減された画像を出力することができる。
【0075】
また、画像処理装置21では、
図3に示した閾値曲線th、或いは、
図5に示した第1の閾値曲線th1または第2の閾値曲線th2は、図示したような形状に限定されることなく、画像に含まれる動き成分を適切に推定できるように調整してもよい。例えば、閾値曲線は、内視鏡12の特性(ズーム倍率や絞りなど)に応じて調整することができ、内視鏡12が使用される手術の種類や状況などに従って調整することができる。さらに、画像処理装置21は、内視鏡12を用いない手術システムの画像、例えば、手術用の顕微鏡により撮像された画像に対する画像処理に用いることができる。
【0076】
以上のように、内視鏡手術システム11は、処理対象の画像に基づいて撮像時の動き成分を推定することで、ブレを補正する補正処理が適切に施された画像を表示装置14に表示することができる。例えば、内視鏡手術システム11は、内視鏡12の動きが画面内で大きな比重を占めている場合には、全体的なブレを補正することができる。また、内視鏡手術システム11は、例えば、エネルギー処置具13や鉗子16、ガーゼなどの動き、または、拍動や呼吸動などの生体内の動きが画面内で大きな比重を占めている場合には、それらの動きに引かれて補正処理が行われてしまうことによる歪みの発生を防止することができる。
【0077】
従って、内視鏡手術システム11では、ブレが適切に補正された画像が表示装置14に表示され、医者は、内視鏡12により撮像された画像による患部の観察を良好に行うことができる。
【0078】
<コンピュータの構成例>
次に、上述した一連の処理(画像処理方法)は、ハードウェアにより行うこともできるし、ソフトウェアにより行うこともできる。一連の処理をソフトウェアによって行う場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、汎用のコンピュータ等にインストールされる。
【0079】
図8は、上述した一連の処理を実行するプログラムがインストールされるコンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0080】
プログラムは、コンピュータに内蔵されている記録媒体としてのハードディスク105やROM103に予め記録しておくことができる。
【0081】
あるいはまた、プログラムは、ドライブ109によって駆動されるリムーバブル記録媒体111に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体111は、いわゆるパッケージソフトウェアとして提供することができる。ここで、リムーバブル記録媒体111としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory),MO(Magneto Optical)ディスク,DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリ等がある。
【0082】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体111からコンピュータにインストールする他、通信網や放送網を介して、コンピュータにダウンロードし、内蔵するハードディスク105にインストールすることができる。すなわち、プログラムは、例えば、ダウンロードサイトから、ディジタル衛星放送用の人工衛星を介して、コンピュータに無線で転送したり、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送することができる。
【0083】
コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)102を内蔵しており、CPU102には、バス101を介して、入出力インタフェース110が接続されている。
【0084】
CPU102は、入出力インタフェース110を介して、ユーザによって、入力部107が操作等されることにより指令が入力されると、それに従って、ROM(Read Only Memory)103に格納されているプログラムを実行する。あるいは、CPU102は、ハードディスク105に格納されたプログラムを、RAM(Random Access Memory)104にロードして実行する。
【0085】
これにより、CPU102は、上述したフローチャートにしたがった処理、あるいは上述したブロック図の構成により行われる処理を行う。そして、CPU102は、その処理結果を、必要に応じて、例えば、入出力インタフェース110を介して、出力部106から出力、あるいは、通信部108から送信、さらには、ハードディスク105に記録等させる。
【0086】
なお、入力部107は、キーボードや、マウス、マイク等で構成される。また、出力部106は、LCD(Liquid Crystal Display)やスピーカ等で構成される。
【0087】
ここで、本明細書において、コンピュータがプログラムに従って行う処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に行われる必要はない。すなわち、コンピュータがプログラムに従って行う処理は、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含む。
【0088】
また、プログラムは、1のコンピュータ(プロセッサ)により処理されるものであっても良いし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであっても良い。さらに、プログラムは、遠方のコンピュータに転送されて実行されるものであっても良い。
【0089】
さらに、本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0090】
また、例えば、1つの装置(または処理部)として説明した構成を分割し、複数の装置(または処理部)として構成するようにしてもよい。逆に、以上において複数の装置(または処理部)として説明した構成をまとめて1つの装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。また、各装置(または各処理部)の構成に上述した以外の構成を付加するようにしてももちろんよい。さらに、システム全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置(または処理部)の構成の一部を他の装置(または他の処理部)の構成に含めるようにしてもよい。
【0091】
また、例えば、本技術は、1つの機能を、ネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成をとることができる。
【0092】
また、例えば、上述したプログラムは、任意の装置において実行することができる。その場合、その装置が、必要な機能(機能ブロック等)を有し、必要な情報を得ることができるようにすればよい。
【0093】
また、例えば、上述のフローチャートで説明した各ステップは、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。換言するに、1つのステップに含まれる複数の処理を、複数のステップの処理として実行することもできる。逆に、複数のステップとして説明した処理を1つのステップとしてまとめて実行することもできる。
【0094】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、プログラムを記述するステップの処理が、本明細書で説明する順序に沿って時系列に実行されるようにしても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで個別に実行されるようにしても良い。つまり、矛盾が生じない限り、各ステップの処理が上述した順序と異なる順序で実行されるようにしてもよい。さらに、このプログラムを記述するステップの処理が、他のプログラムの処理と並列に実行されるようにしても良いし、他のプログラムの処理と組み合わせて実行されるようにしても良い。
【0095】
なお、本明細書において複数説明した本技術は、矛盾が生じない限り、それぞれ独立に単体で実施することができる。もちろん、任意の複数の本技術を併用して実施することもできる。例えば、いずれかの実施の形態において説明した本技術の一部または全部を、他の実施の形態において説明した本技術の一部または全部と組み合わせて実施することもできる。また、上述した任意の本技術の一部または全部を、上述していない他の技術と併用して実施することもできる。
【0096】
<内視鏡手術システムへの応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0097】
図9は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0098】
図9では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0099】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0100】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0101】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0102】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0103】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0104】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0105】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0106】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0107】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0108】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0109】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0110】
図10は、
図9に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0111】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0112】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0113】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0114】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0115】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0116】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0117】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0118】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0119】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0120】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0121】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0122】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0123】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0124】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0125】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0126】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0127】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、CCU11201の画像処理部11412に適用され得る。そして、CCU11201の画像処理部11412に本開示に係る技術を適用することにより、適切にブレが補正された画像を出力することができるため、術者が術部を確実に確認することが可能になる。
【0128】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0129】
<構成の組み合わせ例>
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
内視鏡により撮像された画像に基づいて撮像時の動き成分を推定して、前記動き成分が前記画像の全体に対する動き成分であることの度合いを示す信頼度を設定する動き推定部と、
前記画像に対してブレを補正する補正処理を行う際に用いられる補正量を、前記信頼度に従って制御する補正量制御部と
を備える内視鏡手術システム。
(2)
前記動き推定部は、前記動き成分が単一の大きさおよび方向で多く占められている単一動き成分、または、前記動き成分が複数の異なる大きさおよび方向で多く占められている複数動き成分のどちらが前記画像に含まれているかを推定する
上記(1)に記載の内視鏡手術システム。
(3)
前記動き推定部は、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定した場合には、前記信頼度として第1の値を設定し、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定した場合には、前記信頼度として第2の値を設定する
上記(2)に記載の内視鏡手術システム。
(4)
前記第1の値は1.0であり、
前記第2の値は0.0である
上記(3)に記載の内視鏡手術システム。
(5)
前記画像の局所の動きを示すローカル動きベクトルに基づいて、複数の前記ローカル動きベクトルのノルムおよび角度を算出し、前記ローカル動きベクトル群のノルム標準偏差、および、前記ローカル動きベクトル群の角度標準偏差を算出する演算部をさらに備え、
前記動き推定部は、所定の閾値を参照し、前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差に基づいて、前記画像に含まれている前記動き成分を推定する
上記(3)に記載の内視鏡手術システム。
(6)
前記動き推定部は、
前記ノルム標準偏差を縦軸とし、前記角度標準偏差を横軸として、前記閾値により表される閾値曲線を参照し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線未満となる領域にある場合には、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として前記第1の値を設定し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線以上となる領域にある場合には、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として前記第2の値を設定する
上記(5)に記載の内視鏡手術システム。
(7)
前記動き推定部は、
前記ノルム標準偏差を縦軸とし、前記角度標準偏差を横軸として、前記閾値により表される第1の閾値曲線および第2の閾値曲線を参照し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線未満となる領域にある場合には、前記画像に単一動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として前記第1の値を設定し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記第1の閾値曲線以上となり、かつ、前記第2の閾値曲線以下となる領域にある場合には、前記信頼度として前記第1の値から前記第2の値までの値を設定し、
前記画像から求められた前記ノルム標準偏差および前記角度標準偏差が、前記閾値曲線より大きくなる領域にある場合には、前記画像に複数動き成分が含まれていると推定して、前記信頼度として前記第2の値を設定する
上記(5)に記載の内視鏡手術システム。
(8)
前記補正量制御部は、前記動き推定部から順次供給される前記信頼度を蓄積して、時間方向に平滑化された前記信頼度を用いて前記補正量を制御する
上記(1)から(7)までのいずれかに記載の内視鏡手術システム。
(9)
前記画像において特徴となる個所を示す点となる特徴点を抽出する特徴点抽出部と、
前記特徴点抽出部により検出された複数の前記特徴点の動きに基づいて、前記ローカル動きベクトルを検出するローカル動きベクトル検出部と
をさらに備える上記(5)に記載の内視鏡手術システム。
(10)
複数の前記ローカル動きベクトルに基づいて、前記画像の全体の動きを示すグローバル動き量を推定するグローバル動き量推定部
をさらに備え、
前記補正量制御部は、前記グローバル動き量に基づいて前記補正量を求める
上記(9)に記載の内視鏡手術システム。
(11)
前記補正量制御部により制御された前記補正量に従って、前記画像に対する前記補正処理を施す補正処理部
をさらに備える上記(1)から(10)までのいずれかに記載の内視鏡手術システム。
(12)
内視鏡により撮像された画像に基づいて撮像時の動き成分を推定して、前記動き成分が前記画像の全体に対する動き成分であることの度合いを示す信頼度を設定する動き推定部と、
前記画像に対してブレを補正する補正処理を行う際に用いられる補正量を、前記信頼度に従って制御する補正量制御部と
を備える画像処理装置。
(13)
画像処理装置が、
内視鏡により撮像された画像に基づいて撮像時の動き成分を推定して、前記動き成分が前記画像の全体に対する動き成分であることの度合いを示す信頼度を設定することと、
前記画像に対してブレを補正する補正処理を行う際に用いられる補正量を、前記信頼度に従って制御することと
を含む画像処理方法。
【0130】
なお、本実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0131】
11 内視鏡手術システム, 12 内視鏡, 13 エネルギー処置具, 14 表示装置, 15 装置ユニット, 16 鉗子, 21 画像処理部, 22 特徴点抽出部, 23 ローカル動きベクトル検出部, 24 グローバル動き量推定部, 25 演算部, 26 動き推定部, 27 補正量制御部, 28 補正処理部