(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ペプチド内包フェリチン
(51)【国際特許分類】
C07K 14/00 20060101AFI20241210BHJP
C07K 4/00 20060101ALI20241210BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241210BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20241210BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20241210BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20241210BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20241210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C07K14/00 ZNA
C07K4/00
A61K47/42
A61K38/06
A61K38/07
A61K38/08
A61K38/10
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021544062
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2020033658
(87)【国際公開番号】W WO2021045210
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2019162119
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井之上 一平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】徳山 真由美
【審査官】三谷 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0006001(US,A1)
【文献】国際公開第2015/135597(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106110333(CN,A)
【文献】国際公開第2019/163871(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/067075(WO,A1)
【文献】特表2009-506107(JP,A)
【文献】Jae-A HAN et al.,Nanomedicine: Nanotechnology, Biology and Medicine,2014年,Vol. 10,pp. 561-569
【文献】KANG, Young Ji, et al.,Biomacromolecules,2012年,Vol. 13,pp. 4057-4064
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドが、3~19個のアミノ酸残基から構成され、かつ
下記条件:
3.7≦X≦5.9、かつ445≦Y≦2524;
(ここで、XはpH9でのペプチドの電荷を示し、Yはペプチドの化学式量を示す)
を満た
し、
ペプチドは、フェリチンを構成するフェリチン単量体のC末端に融合されていないペプチドである、
ペプチド内包フェリチン。
【請求項2】
ペプチドが4~16個のアミノ酸残基から構成される、請求項1記載のペプチド内包フェリチン。
【請求項3】
ペプチドの細胞内送達剤であって、
ペプチド内包フェリチンを含み、
ペプチドが、3~19個のアミノ酸残基から構成され、かつ
下記条件:
3.7≦X≦5.9、かつ445≦Y≦2524;
(ここで、XはpH9でのペプチドの電荷を示し、Yはペプチドの化学式量を示す)
を満た
し、
ペプチドは、フェリチンを構成するフェリチン単量体のC末端に融合されていないペプチドである、
ペプチドの細胞内送達剤。
【請求項4】
ペプチドがヒト細胞の細胞内に送達される、請求項
3記載の剤。
【請求項5】
ペプチドが癌細胞の細胞内に送達される、請求項
3または
4記載の剤。
【請求項6】
ペプチド内包フェリチンの製造方法であって、
1)ペプチドの存在下または不在下において、フェリチンをpH3.0以下の緩衝液中で放置して、フェリチンを解離させること;および
2)解離したフェリチンおよびペプチドをpH5.0以上10.0以下の緩衝液中に共存させて、ペプチド内包フェリチンを生成すること;
を含み、
ペプチドが、3~19個のアミノ酸残基から構成され、かつ
下記条件:
3.7≦X≦5.9、かつ445≦Y≦2524;
(ここで、XはpH9でのペプチドの電荷を示し、Yはペプチドの化学式量を示す)
を満た
し、
ペプチドは、フェリチンを構成するフェリチン単量体のC末端に融合されていないペプチドである、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド内包フェリチンなどに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞内の蛋白質や核酸を標的とし、生理活性を有するペプチドは医薬品としての応用が期待されている(非特許文献1)。しかし、それらのペプチドの多くは細胞膜透過性に課題を抱えており、様々な細胞内への送達技術が検討されている。
【0003】
リポソームに代表されるナノ粒子・マイクロ粒子に、目的ペプチドを内包させ、リポソームと細胞膜を融合させることで、目的ペプチドを細胞内に送達するアプローチが報告されている(特許文献1)。また、細胞膜透過性を持つ分子やペプチドと融合させ、細胞膜を透過あるいはエンドソームにより細胞に取り込みませ、目的ペプチドを細胞内に送達するアプローチも報告されている(非特許文献2)。
【0004】
ところで、フェリチンは、動植物から微生物まで普遍的に存在する、複数の単量体から構成される内腔を有する球状タンパク質である。ヒト等の動物では、フェリチンを構成する単量体としてH鎖およびL鎖の2種の単量体が存在すること、ならびにフェリチンは24個の単量体から構成される多量体(多くの場合、H鎖およびL鎖の混合物)であって、外径12nmのカゴ状の形態および内径7nmの内腔を有することが知られている。フェリチンは、生体あるいは細胞中の鉄元素のホメオスタシスに深く関わっており、その内腔中に鉄を保持できるため、鉄の輸送・貯蔵等の生理学的機能の役割を担うことが知られている。また、フェリチンは、トランスフェリン受容体提示細胞に取り込まれることが知られている(非特許文献3)。
【0005】
フェリチンはまた、その内腔中に低分子有機化合物を封入するDDS担体(特許文献2)としての応用が検討されており、また、電子デバイスの作製にも利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,515,736号
【文献】中国特許出願公開第106110333号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Y. Hayashi et al. ACS Chem. Biol. 2012;7(3):607-613
【文献】Z. Guo et al. Biomed Rep. 2016; 4(5): 528-534
【文献】L. Li et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107(8):3505-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、目的ペプチドを細胞内に送達するアプローチとしては、リポソームまたは細胞透過性ペプチドの使用が報告されている。しかしながら、リポソームおよび細胞透過性ペプチドは通常、中性のpH領域では、正に荷電しているため、細胞膜との相互作用により細胞膜を破壊するという課題がある。また、リポソームについては、リポソームが免疫原性を示し得ること、およびリポソームの代謝物が毒性を示し得るという課題もある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、上記のような細胞膜の破壊、免疫原性および毒性を回避できる、ペプチドの送達手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、所定のペプチドをフェリチンに内包できること、このような所定のペプチドの使用によりペプチド内包フェリチンを作製できること、およびこのようなペプチド内包フェリチンの使用により所定のペプチドを特定の細胞の細胞内に送達できることを見出した。
【0011】
フェリチンは、中性のpH領域では負に帯電しており、また、トランスフェリン受容体を介して特定の細胞に取り込まれる。したがって、所定のペプチドを内包しているフェリチンの使用により、細胞膜を破壊せずに、所定のペプチドを細胞内に送達させることで、上記課題を解決できる。また、フェリチンは、ヒト等の哺乳動物に天然に存在する天然タンパク質であるため、フェリチンの種類(フェリチンが由来する哺乳動物種)と、ペプチド内包フェリチンが投与される哺乳動物種とを一致させることで、免疫原性の課題を解決できる。さらに、フェリチンは、天然アミノ酸で構成されており、天然アミノ酸の代謝物も生体中に存在する天然物質であることに照らすと、天然アミノ酸の代謝物には細胞毒性も懸念されないため、代謝物による細胞毒性の課題も解決することができる。
【0012】
以上のように、本発明者らは、上記課題を解決することに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕ペプチドが、3~19個のアミノ酸残基から構成され、かつ
下記条件:
a)-10.2≦X≦5.9、かつ445≦Y≦2524;
(ここで、XはpH9でのペプチドの電荷を示し、Yはペプチドの化学式量を示す)
を満たす、ペプチド内包フェリチン。
〔2〕ペプチドが4~16個のアミノ酸残基から構成される、〔1〕のペプチド内包フェリチン。
〔3〕ペプチドが下記条件:
b)-10.2≦X≦0.0、かつ445≦Y≦2524;あるいは
c)3.7≦X≦5.9、かつ445≦Y≦2524
(ここで、XおよびYは〔1〕と同じである)
を満たす、〔1〕または〔2〕のペプチド内包フェリチン。
〔4〕ペプチドの細胞内送達剤であって、
ペプチド内包フェリチンを含み、
ペプチドが、3~19個のアミノ酸残基から構成され、かつ
下記条件:
a)-10.2≦X≦5.9、かつ445≦Y≦2524;
(ここで、XはpH9でのペプチドの電荷を示し、Yはペプチドの化学式量を示す)
を満たす、ペプチドの細胞内送達剤。
〔5〕ペプチドがヒト細胞の細胞内に送達される、〔4〕の剤。
〔6〕ペプチドが癌細胞の細胞内に送達される、〔4〕または〔5〕の剤。
〔7〕ペプチド内包フェリチンの製造方法であって、
1)ペプチドの存在下または不在下において、フェリチンをpH3.0以下の緩衝液中で放置して、フェリチンを解離させること;および
2)解離したフェリチンおよびペプチドをpH5.0以上10.0以下の緩衝液中に共存させて、ペプチド内包フェリチンを生成すること;
を含み、
ペプチドが、3~19個のアミノ酸残基から構成され、かつ
下記条件:
a)-10.2≦X≦5.9、かつ445≦Y≦2524;
(ここで、XはpH9でのペプチドの電荷を示し、Yはペプチドの化学式量を示す)
を満たす、製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のペプチド内包フェリチンは、細胞膜を破壊せずに、所定のペプチドを細胞内に送達できる。本発明のペプチド内包フェリチンはまた、免疫原性、および代謝物による細胞毒性の双方を回避できる。本発明のペプチド内包フェリチンはさらに、所定のペプチドをトランスフェリン受容体提示細胞(特に、トランスフェリン受容体の発現量が高い細胞)の細胞内に特異的かつ再現良く送達できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、カラムクロマトグラフィーによる、フェリチン(FTH)およびペプチド(PKC-F)の複合体の形成の確認を示す図である。
【
図2】
図2は、フェリチン(FTH)に内包されたペプチド(PKC-F)に対する、LC-MS分析の結果を示す図である。
【
図3】
図3は、ペプチド(PKC-F)に対する、LC-MS分析の結果を示す図である。
【
図4】
図4は、ペプチド(PKC-F)内包フェリチン(FTH)の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【
図5】
図5は、ペプチド(PKC-F)非内包フェリチン(FTH)、およびペプチド(PKC-F)内包フェリチン(FTH)の表面電荷の比較を示す図である。
【
図6】
図6は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)による、トランスフェリン受容体(TfR)提示細胞(SKBR-3細胞)内へのペプチド(PKC-F)の取込みの測定結果を示す図である。ペプチド(PKC-F)は、フェリチン(FTH)に内包されている状態(試験対象)、およびペプチド(PKC-F)のみの状態(陰対象)で用いられた。
【
図7】
図7は、二光子励起蛍光顕微鏡による、トランスフェリン受容体TfR提示細胞(SKBR-3細胞)内へのペプチド(PKC-F)の取込みの測定結果を示す図である。ペプチド(PKC-F)は、フェリチン(FTH)に内包されている状態(試験対象)、およびペプチド(PKC-F)のみの状態(陰対象)で用いられた。
【
図8】
図8は、カラムクロマトグラフィーによる、フェリチン(FTH)およびペプチド(FAM-SV40)の複合体の形成の確認を示す図である。
【
図9】
図9は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)による、トランスフェリン受容体TfR提示細胞(SKBR-3細胞)内へのペプチド(FAM-SV40)の取込みの測定結果を示す図である。ペプチド(FAM-SV40)は、フェリチン(FTH)に内包されている状態(試験対象)、およびペプチド(FAM-SV40)のみの状態(陰対象)で用いられた。
【
図10】
図10は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)による、トランスフェリン受容体TfR提示細胞(TfR発現量の多いSKBR-3細胞、およびTfR発現量の低いHEK293E細胞)間でのペプチド(FAM-SV40)の取込みの比較を示す図である。
【
図11】
図11は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)による、トランスフェリン受容体TfR提示細胞(TfR発現量の多いSKBR-3細胞、およびTfR発現量の低いHEK293E細胞)間でのペプチド(FAM-SV40)の取込みの比較を示す図である。
図10の結果が
図11にプロットされている。
【
図12】
図12は、脱会合・再会合プロセスを行った場合におけるペプチド(ClAc-FHC)内包フェリチン(FTH)由来のペプチド(ClAc-FHC)のMSピークの存在(A)、および脱会合・再会合プロセスを行わなかった場合における同MSピークの不存在(B)を示す図である。
【
図13】
図13は、脱会合・再会合プロセスを行った場合におけるペプチド(EGFR、cyloRGDfV、またはFGF3-FP16)内包フェリチン(FTH)由来のペプチド(EGFR、cyloRGDfV、またはFGF3-FP16)のMSピークの存在を示す図である。
【
図14】
図14は、脱会合・再会合プロセスを行った場合におけるペプチド(Hymenistatin I、Ex10、またはανβ6)内包フェリチン(FTH)由来のペプチド(Hymenistatin I、Ex10、またはανβ6)のMSピークの存在を示す図である。
【
図15】
図15は、脱会合・再会合プロセスを行った場合におけるペプチド(NRP-1-2、Murepavadin、またはPakti-L1)内包フェリチン(FTH)由来のペプチド(NRP-1-2、Murepavadin、またはPakti-L1)のMSピークの存在を示す図である。
【
図16】
図16は、脱会合・再会合プロセスを行った場合におけるペプチド(NS、GRP78-3、またはFBP0032)内包フェリチン(FTH)由来のペプチド(NS、GRP78-3、またはFBP0032)のMSピークの存在を示す図である。
【
図17】
図17は、脱会合・再会合プロセスを行った場合におけるペプチド(FBP0033)内包フェリチン(FTH)由来のペプチド(FBP0033)のMSピークの存在を示す図である。
【
図18】
図18は、フェリチン(FTH)での各種ペプチドの内包の可否について、ペプチドのpH9でのペプチドの電荷とペプチドの化学式量の間の相関性を示す図である(試行数3回)。●:3回とも再現性良く内包が確認されたペプチド;△:内包が確認できた場合が2回以下であったペプチド;×:1回も内包が確認できなかったペプチド。すなわち、a)-10.2≦pH9でのペプチドの電荷(X)≦5.9、かつ445≦ペプチドの化学式量(Y)≦2524の条件を満たすペプチドをフェリチンに内包することができた。また、上記条件を満たすペプチドの内、b)-10.2≦X≦0.0、かつ445≦Y≦2524、あるいはc)3.7≦X≦5.9、かつ445≦Y≦2524の条件を満たすペプチドはフェリチンに再現性良く内包できていた。
【
図19】
図19は、カラムクロマトグラフィーによる、フェリチン(FTL)およびペプチド(PKC-F)の複合体の形成の確認を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ペプチドが、3~19個のアミノ酸残基から構成され、かつ
下記条件:
a)-10.2≦X≦5.9、かつ445≦Y≦2524;
(ここで、XはpH9でのペプチドの電荷を示し、Yはペプチドの化学式量を示す)
を満たす、ペプチド内包フェリチンを提供する。
【0016】
ペプチドを構成するアミノ酸は、アミノ基およびカルボキシ基の双方を有する化合物である限り特に限定されない。例えば、ペプチドを構成するアミノ酸は、タンパク質を構成する天然アミノ酸(20種のL-α-アミノ酸)であっても、タンパク質を構成しない非天然アミノ酸であってもよい。天然アミノ酸としては、例えば、L-アラニン(A)、L-アスパラギン(N)、L-システイン(C)、L-グルタミン(Q)、L-イソロイシン(I)、L-ロイシン(L)、L-メチオニン(M)、L-フェニルアラニン(F)、L-プロリン(P)、L-セリン(S)、L-スレオニン(T)、L-トリプトファン(W)、L-チロシン(Y)、L-バリン(V)、L-アスパラギン酸(D)、L-グルタミン酸(E)、L-アルギニン(R)、L-ヒスチジン(H)、L-リジン(K)、およびグリシン(G)が挙げられる。非天然アミノ酸としては、例えば、L体またはD体の任意の非天然アミノ酸(例、α-アミノ酸、β-アミノ酸、およびγ-アミノ酸)を使用することができる。より具体的には、非天然アミノ酸としては、例えば、2,4-ジアミノブタン酸(Dab)、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、オルニチン、ホモヒスチジン、ホモフェニルアラニン、シクロロイシン、1-アミノシクロヘキサンカルボン酸、カルボキシシクロプロピルアミン、2-アミノシクロヘキサンカルボン酸、1-アミノシクロブタンカルボン酸、tert-ロイシン、ノルバリン、ノルロイシン、ピログルタミン、ペニシラミン、ホモアミノ酸、4-アミノブチル酸、6-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ酪酸、5-アミノレブリン酸、D-2-アミノアジピン酸、ならびに上記天然アミノ酸および非天然アミノ酸の修飾化合物(例えば、N-メチル化等のN-アルキル化化合物、カルボベンゾキシアミノ化化合物、tert-ブトキシカルボニル化化合物、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル化化合物やアジド化化合物)が挙げられる。
【0017】
ペプチドは、天然アミノ酸のみから構成されていてもよく、非天然アミノ酸のみから構成されていてもよく、天然アミノ酸および非天然アミノ酸の混合物から構成されていてもよい。ペプチドはまた、N末端アミノ基、およびC末端カルボキシ基が保護されたものであっても、保護されていないものであってもよい。N-末端アミノ基の保護基としては、例えば、アルキルカルボニル基(アシル基)(例、アセチル基、プロポキシ基、tert-ブトキシカルボニル基等のブトキシカルボニル基)、アルキルオキシカルボニル基(例、フルオレニルメトキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基、アリールアルキル(アラルキル)オキシカルボニル基(例、ベンジルオキシカルボニル基)が挙げられる。C-末端カルボキシ基の保護基としては、例えば、エステルまたはアミドを形成可能な基が挙げられる。エステルまたはアミドを形成可能な基としては、例えば、アルキルオキシ基(例、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(例、フェニルオキシ、ナフチルオキシ)、アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ)、アミノ基が挙げられる。
【0018】
ペプチドは、主鎖がアミド結合及び炭素鎖から構成されていてもよい。炭素鎖としては、例えば、アルキレン(例、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のC1~C6アルキレン)、シクロアルキレン(例、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロへプチレン、シクロオクチレン等のC3~C8シクロアルキレン)、アリーレン(例、フェニレン、ナフチレン等のC6~C12アリーレン)が挙げられる。あるいは、ペプチドは、主鎖がアミド結合以外の結合構造、および/または炭素鎖以外の鎖構造を含むように構成されていてもよい。アミド結合以外の結合構造としては、例えば、N-アルキルアミド結合(例、N-メチルアミド結合、N-エチルアミド結合等の、窒素原子上にC1~C6アルキルを有するアミド結合)、エステル結合、エーテル結合、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、およびチオエステル結合が挙げられる。炭素鎖以外の鎖構造としては、例えば、ヘテロ環(例、オキサゾール、メチルオキサゾール、チアゾール、トリアゾール)を含む構造が挙げられる。
【0019】
ペプチドはまた、直鎖状もしくは分岐状、または環状の構造を有することができる。例えば、環状の構造を有するペプチドは、N末端アミノ酸残基とC末端アミノ酸残基がアミド結合を介して環化したものであってもよい。また、複数(例、2個)のシステイン残基を含むペプチドは、システイン残基の側鎖にあるチオール基を介してジスルフィド結合を形成することにより、環状の構造を形成することができる。さらに、1個のシステイン残基を含むペプチドであっても、N末端アミノ酸残基またはC末端アミノ酸残基のいずれかと結合することにより、環状の構造を形成することもできる。
【0020】
ペプチドを構成するアミノ酸残基数は、3~19個である。ペプチドを構成するアミノ酸残基数は、好ましくは4個以上であってもよい。ペプチドを構成するアミノ酸残基数はまた、18個以下、好ましくは17個以下、より好ましくは16個以下であってもよい。より具体的には、ペプチドを構成するアミノ酸残基数は、3~18個、3~17個、3~16個、4~18個、4~17個、または4~16個であってもよい。
【0021】
本発明において、フェリチンに内包されるペプチドは、
図18に示されるように、下記条件を満たす。
a)-10.2≦X≦5.9、かつ445≦Y≦2524;
(ここで、XはpH9でのペプチドの電荷を示し、Yはペプチドの化学式量を示す)
【0022】
ペプチドの化学式量の値は、ペプチドの組成式に基づいて原子量と原子数の積の総和として求めることができる。
【0023】
pH9でのペプチドの電荷は、ChemAxon(O.Toure et. al., Oil Gas Sci. Technol. 2013, 68, 281-297.)を利用して評価することができるが(実施例を参照)、ChemAxonでの評価が所望されない場合(例えば、ChemAxonでの評価が困難である又は正確性に欠ける極めて特殊なペプチドが用いられる場合)、L.Settimo et. al., Pharm. Res. 2014, 31, 1082-1095.に記載される実験的手法により評価してもよい。
【0024】
理論によって本発明が拘束されることを望まないが、上記条件を満たすペプチドがフェリチンに内包される理由としては、以下が考えられる。
【0025】
(1)-10.2≦Xの条件が望ましい理由
pH5より高いpHの水溶液中でフェリチンは強く負に帯電する。そのため、フェリチンの内包に用いられる溶液のpH(例、pH9)では、中性から正に帯電した分子はフェリチンに内包され易く、強い負に帯電した分子はフェリチンに内包され難いと考えられる。そのため、-10.2>Xの強く負に帯電したペプチドはフェリチンとの電気的反撥により、フェリチンに内包され難いと考えられる。一方、-10.2≦Xのペプチドでは、ペプチド-フェリチン間の負電荷の反撥よりもフェリチンがかご状の超分子構造を形成する力の方が強いため、フェリチンに内包された可能性がある。
【0026】
(2)X≦5.9の条件が望ましい理由
あまりにも強く正に帯電したペプチドは、電気的相互作用によりフェリチンの内外にペプチドが吸着し、フェリチンのカゴ状構造の形成を妨げ、内包されない可能性がある。また、強く正に帯電したペプチドは凝集しやすく、フェリチンに内包できないサイズの粒子を形成し、内包されない可能性もある。
【0027】
(3)445≦Yの条件が望ましい理由
化学式量があまりにも小さいペプチドは、フェリチンがかご状構造を形成している途中で、フェリチン内部から拡散により流出してしまい、内包されにくい可能性がある。
【0028】
(4)Y≦2524の条件が望ましい理由
フェリチン内腔の直径は7nmであり、化学式量が大きいため、かさ高い分子はフェリチンに内包され難いと考えられる。
【0029】
好ましくは、フェリチンによるペプチドの内包に関する再現性の向上等の観点より、ペプチドは、下記条件を満たす:
b)-10.2≦X≦0.0、かつ445≦Y≦2524、あるいはc)3.7≦X≦5.9、かつ445≦Y≦2524
【0030】
(5)0.0<X<3.7を除外した理由
化学式量がある程度大きく、あまり帯電していないペプチドは、ペプチド分子自体が凝集し、フェリチンに内包できないサイズの粒子を形成するため、フェリチンに内包され難いと考えられる。
【0031】
本発明では、フェリチンとして、種々の動物に由来するフェリチンを使用することができる。フェリチンが由来する動物としては、例えば、哺乳動物または鳥類(例、ニワトリ)が挙げられるが、哺乳動物が好ましい。哺乳動物としては、例えば、霊長類(例、ヒト、サル、チンパンジー)、齧歯類(例、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ)、家畜および使役用の哺乳動物(例、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)が挙げられる。
【0032】
ヒト等の動物では、フェリチンを構成するフェリチン単量体としてフェリチンH鎖およびL鎖の2種の単量体が存在すること、ならびにフェリチンは24個の単量体から構成される多量体(多くの場合、H鎖およびL鎖の混合物)であることが知られている。したがって、本発明では、フェリチンH鎖のみから構成されるフェリチン、フェリチンL鎖のみから構成されるフェリチン、並びにフェリチンH鎖およびL鎖の混合物から構成されるフェリチンを用いることができる。
【0033】
フェリチン単量体としては、天然フェチリン単量体、または24量体の形成能を有するその遺伝子組換えフェリチン単量体のいずれも使用することができる。例えば、遺伝子組換えフェチリン単量体は、フェリチン単量体を構成する6つのα-ヘリックス間のフレキシブルリンカー領域において改変されていてもよい。このような遺伝子組換えフェチリン単量体としては、例えば、フェリチン単量体を構成する6つのα-ヘリックスのうちのN末端から数えて1番目と2番目の間、2番目と3番目の間、3番目と4番目の間、4番目と5番目の間、または5番目と6番目の間のフレキシブルリンカー領域に機能性ペプチドが挿入されたフェリチン単量体が挙げられる(例、米国特許出願公開第2016/0060307号;Jae Og Jeon et al.,ACS Nano(2013),7(9),7462-7471;Sooji Kim et al.,Biomacromolecules(2016),17(3),1150-1159;Young Ji Kang et al.,Biomacromolecules(2012),13(12),4057-4064を参照)。例えば、ヒトフェリチンH鎖(配列番号1)、およびヒトフェリチンL鎖(配列番号2)では、6つのα-ヘリックスのうちのN末端から数えて1~6番目のα-ヘリックスは、表1に示されるとおりである。したがって、ヒトフェリチンH鎖(配列番号1)のフレキシブルリンカー領域は、1番目と2番目の間のフレキシブルリンカー領域(43~49位のアミノ酸残基からなる領域)、2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域(78~96位のアミノ酸残基からなる領域)、3番目と4番目の間のフレキシブルリンカー領域(125~127位のアミノ酸残基からなる領域)、4番目と5番目の間のフレキシブルリンカー領域(138位のアミノ酸残基の位置)、または5番目と6番目の間のフレキシブルリンカー領域(160~164位のアミノ酸残基の領域)である。また、ヒトフェリチンL鎖(配列番号2)のフレキシブルリンカー領域は、1番目と2番目の間のフレキシブルリンカー領域(38~45位のアミノ酸残基からなる領域)、2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域(74~92位のアミノ酸残基からなる領域)、3番目と4番目の間のフレキシブルリンカー領域(121~123位のアミノ酸残基からなる領域)、4番目と5番目の間のフレキシブルリンカー領域(134位のアミノ酸残基の位置)、または5番目と6番目の間のフレキシブルリンカー領域(155~159位のアミノ酸残基の領域)である。
【0034】
【0035】
遺伝子組換えフェチリン単量体はまた、そのN末端領域および/またはC末端領域において改変されていてもよい。フェリチン単量体のN末端は多量体の表面上に露出され、そのC末端は表面上に露出し得ない。したがって、フェリチン単量体のN末端に付加されるペプチド部分は多量体の表面に露出して、多量体の外部に存在する標的材料と相互作用することができる(例、国際公開第2006/126595号)。一方、フェリチン単量体のC末端は、そのアミノ酸残基を改変することで、フェリチン内腔中に内包される有機化合物と相互作用することができる(例、Y.J.Kang,Biomacromolecules.2012,vol.13(12),4057)。このような遺伝子組換えフェチリン単量体としては、例えば、N末端またはC末端に機能性ペプチドが付加されたフェリチン単量体が挙げられる。
【0036】
好ましくは、フェリチンは、臨床応用の観点より、ヒトフェリチンである。ヒトフェリチンとして、ヒトフェリチンH鎖のみから構成されるヒトフェリチン、ヒトフェリチンL鎖のみから構成されるヒトフェリチン、並びにヒトフェリチンH鎖およびL鎖の混合物から構成されるヒトフェリチンを用いることができる。
【0037】
好ましくは、ヒトフェリチンH鎖は、以下であってもよい:
(A1)配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(B1)配列番号1のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および付加からなる群より選ばれる、1もしくは数個のアミノ酸残基の修飾を含むアミノ酸配列を含み、かつ、24量体形成能を有するタンパク質;または
(C1)配列番号1のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、24量体形成能を有するタンパク質。
【0038】
好ましくは、ヒトフェリチンL鎖は、以下であってもよい:
(A2)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(B2)配列番号2のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および付加からなる群より選ばれる、1もしくは数個のアミノ酸残基の修飾を含むアミノ酸配列を含み、かつ、24量体形成能を有するタンパク質;または
(C2)配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、24量体形成能を有するタンパク質。
【0039】
上記(B1)および(B2)では、アミノ酸残基の欠失、置換、付加および挿入からなる群より選ばれる1、2、3または4種の修飾により、1個または数個のアミノ酸残基を改変することができる。アミノ酸残基の修飾は、アミノ酸配列中の1つの領域に導入されてもよいが、複数の異なる領域に導入されてもよい。用語「1または数個」は、タンパク質の活性を大きく損なわない個数を示す。用語「1または数個」が示す数は、例えば1~50個、好ましくは1~40個、より好ましくは1~30個、さらにより好ましくは1~20個、特に好ましくは1~10個または1~5個(例、1個、2個、3個、4個、または5個)である。
【0040】
上記(C1)および(C2)では、タンパク質の同一性%の算出は、アルゴリズムblastpにより行うことができる。より具体的には、ポリペプチドの同一性の算定%は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)において提供されているアルゴリズムblastpにおいて、デフォルト設定のScoring Parameters(Matrix:BLOSUM62;Gap Costs:Existence=11 Extension=1;Compositional Adjustments:Conditional compositional score matrix adjustment)を用いて行うことができる。
【0041】
アミノ酸配列において変異を導入すべきアミノ酸残基の位置は、当業者に明らかであるが、配列アライメントをさらに参考にして特定されてもよい。具体的には、当業者は、1)複数のアミノ酸配列を比較し、2)相対的に保存されている領域、および相対的に保存されていない領域を明らかにし、次いで、3)相対的に保存されている領域および相対的に保存されていない領域から、それぞれ、機能に重要な役割を果たし得る領域および機能に重要な役割を果たし得ない領域を予測できるので、構造・機能の相関性を認識できる。したがって、当業者は、配列アライメントを利用することによりアミノ酸配列において変異を導入すべき位置を特定でき、また、既知の二次および三次構造情報を併用して、アミノ酸配列において変異を導入すべきアミノ酸残基の位置を特定することもできる。好ましくは、変異の導入部位として、上記フレキシブルリンカー領域、並びにN末端およびC末端領域を利用することができる。
【0042】
アミノ酸残基が置換により変異される場合、アミノ酸残基の置換は、保存的置換であってもよい。本明細書中で用いられる場合、用語「保存的置換」とは、所定のアミノ酸残基を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換することをいう。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で周知である。例えば、このようなファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖を有するアミノ酸(例、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β位分岐側鎖を有するアミノ酸(例、スレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)、ヒドロキシル基(例、アルコール性、フェノール性)含有側鎖を有するアミノ酸(例、セリン、スレオニン、チロシン)、および硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(例、システイン、メチオニン)が挙げられる。好ましくは、アミノ酸の保存的置換は、アスパラギン酸とグルタミン酸との間での置換、アルギニンとリジンとヒスチジンとの間での置換、トリプトファンとフェニルアラニンとの間での置換、フェニルアラニンとバリンとの間での置換、ロイシンとイソロイシンとアラニンとの間での置換、およびグリシンとアラニンとの間での置換であってもよい。
【0043】
遺伝子組換えフェチリン単量体はまた、機能性ペプチドを含む遺伝子組換えフェチリン単量体であってもよい。機能性ペプチドとしては、目的タンパク質と融合された場合に任意の機能を目的タンパク質に付加することができるペプチドを用いることができる。このような機能性ペプチドとしては、生体有機分子に対する結合能を有するペプチド、プロテアーゼ分解性ペプチド、安定化ペプチド、細胞透過性ペプチドが挙げられる。
【0044】
生体有機分子としては、例えば、タンパク質(例、オリゴペプチドまたはポリペプチド)、核酸(例、DNAまたはRNA、あるいはヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド)、糖質(例、モノサッカリド、オリゴサッカリドまたはポリサッカリド)、脂質が挙げられる。生体有機分子はまた、細胞表面抗原(例、癌抗原、心疾患マーカー、糖尿病マーカー、神経疾患マーカー、免疫疾患マーカー、炎症マーカー、ホルモン、感染症マーカー)であってもよい。生体有機分子はまた、疾患抗原(例、癌抗原、心疾患マーカー、糖尿病マーカー、神経疾患マーカー、免疫疾患マーカー、炎症マーカー、ホルモン、感染症マーカー)であってもよい。このような生体有機分子に対する結合能を有するペプチドとしては、タンパク質に対する結合能を有するペプチド(例、F.Danhier et al.,Mol. Pharmaceutics,2012,vol.9,No.11,p.2961;C-H.Wu et al.,Sci.Transl.Med.,2015,vol.7,No.290,290-91;L.Vannucci et.al.Int.J.Nanomedicine.2012,vol.7,p.1489;J.Cutrera et al.,Mol.Ther.2011,vol.19(8),p.1468;R.Liu et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.2017,vol.110-111,p.13を参照)、核酸に対する結合能を有するペプチド(例、R.Tan et.al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995、vol.92,p.5282;R.Tan et.al.Cell、1993、vol.73, p.1031;R.Talanian et.al.Biochemistry.1992,vol.31,p.6871を参照)、糖質に対する結合能を有するペプチド(例、K.Oldenburg et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1992,vol.89,No.12,p.5393-5397;K.Yamamoto et.al.,J.Biochem.,1992,vol.111,p.436;A.Baimiev et.al.,Mol.Biol.(Moscow),2005,vol.39,No.1,p.90.を参照)、脂質に対する結合能を有するペプチド(例、O.Kruse et.al.,B Z. Naturforsch.,1995,vol.50c,p.380;O.Silva et.al., Sci.Rep.,2016,vol.6,27128;A.Filoteo et.al.,J.Biol.Chem.,1992,vol.267,No.17,p.11800を参照)等の種々のペプチドが報告されている。
【0045】
機能性ペプチドとしてプロテアーゼ分解性ペプチドが用いられる場合、プロテアーゼとしては、例えば、カスパーゼやカテプシンなどのシステインプロテアーゼ(D. McIlwain1 et al.,Cold Spring Harb Perspect Biol.,2013,vol.5,a008656;V.Stoka et al.,IUBMB Life.2005,vol.57,No.4-5p.347)、コラゲナーゼ(G.Lee et al.,Eur J Pharm Biopharm.,2007,vol.67,No.3,p.646)、トロンビンやXa因子(R.Jenny et al.,Protein Expr.Purif.,2003,vol.31,p.1;H.Xu et al.,J.Virol., 2010,vol.84,No.2,p.1076)、ウイルス由来プロテアーゼ(C.Byrd et al., Drug Dev. Res.,2006,vol.67,p.501)が挙げられる。
【0046】
プロテアーゼ分解性ペプチドとしては、種々のペプチドが報告されている(例、E.Lee et al.,Adv.Funct.Mater.,2015,vol.25,p.1279;G.Lee et al.,Eur J Pharm Biopharm.,2007,vol.67,No.3,p.646;Y.Kang et al.,Biomacromolecules,2012,vol.13,No.12,p.4057;R.Talanian et al.,J.Biol.Chem.,1997,vol.272,p.9677;Jenny et al.,Protein Expr.Purif.,2003,vol.31,p.1;H.Xu et al.,J.Virol.,2010,vol.84,No.2,p.1076を参照)。したがって、本発明では、このようなペプチド、またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなペプチド、またはそれらの変異ペプチドのアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドをプロテアーゼ分解性ペプチドとして用いることができる。
【0047】
安定化ペプチドとしては、種々のペプチドが報告されている(例、X.Meng et al.,Nanoscale,2011,vol.3,No.3,p.977;E.Falvo et al.,Biomacromolecules,2016,vol.17,No.2,p.514を参照)。したがって、本発明では、このようなペプチド、またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなペプチド、またはそれらの変異ペプチドのアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドを安定化ペプチドとして用いることができる。
【0048】
細胞透過性ペプチドとしては、種々のペプチドが報告されている(例、Z.Guo et al.Biomed.Rep.,2016,vol.4,No.5,p.528を参照)。したがって、本発明では、このようなペプチド、またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなペプチド、またはそれらの変異ペプチドのアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドを細胞透過性ペプチドとして用いることができる。
【0049】
機能性ペプチドとしては、生体有機分子に対する結合能を有するペプチドが好ましい。生体有機分子に対する結合能を有するペプチドとしては、タンパク質に対する結合能を有するペプチドがより好ましい。
【0050】
本発明はまた、上述のペプチド内包フェリチンを含むペプチド送達剤を提供する。
【0051】
本発明のペプチド送達剤は、フェリチンとトランスフェリン受容体提示細胞との間の相互作用を介して、ペプチド内包フェリチン中のペプチドをトランスフェリン受容体提示細胞の内部に送達することができる。トランスフェリン受容体提示細胞としては、例えば、表皮基底層、膵内分泌組織、脳下垂体、胎盤、脳内皮質、線条体、腎臓近位尿細管、食道、子宮頚管、胃粘膜上皮、胸部上皮等の組織および部位に存在する細胞、ならびに赤血球、血芽細胞、脳毛細血管内皮細胞、肝細胞、クッパー細胞、海馬ニューロン等の細胞が挙げられる。トランスフェリン受容体提示細胞としては、任意の哺乳動物に由来する細胞を利用することができる。このような哺乳動物としては、例えば、霊長類(例、ヒト、サル、チンパンジー)、齧歯類(例、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ)、家畜および使役用の哺乳動物(例、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)が挙げられる。臨床応用という観点から、哺乳動物は、好ましくはヒトである。
【0052】
本発明のペプチド送達剤はまた、トランスフェリン受容体提示細胞全般の内部にペプチドを送達することができるが、トランスフェリン受容体の発現量が高い細胞の内部にペプチドをより特異的かつ再現良く送達することができる。したがって、トランスフェリン受容体提示細胞としては、トランスフェリン受容体の発現量が高い細胞が好ましい。トランスフェリン受容体の発現量が高い細胞としては、例えば、上述のトランスフェリン受容体提示細胞のうち、表皮基底層、膵内分泌組織、脳下垂体、胎盤等の組織および部位に存在する細胞、ならびに赤血球、血芽細胞、脳毛細血管内皮細胞、肝細胞、クッパー細胞等の細胞が挙げられる。
【0053】
特定の実施形態では、トランスフェリン受容体提示細胞は、特定の疾患の原因となり得る細胞であってもよい。このような特定の疾患としては、例えば、癌、白血病、悪性リンパ腫が挙げられるが、癌が好ましい。癌としては、例えば、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌、肺癌(例、扁平上皮がん、腺がんおよび大細胞がん等の非小細胞癌、ならびに小細胞癌)、消化器系癌(例、胃癌、小腸癌、大腸癌、直腸癌)、膵臓癌、腎臓癌、胸腺癌、脾臓癌、甲状腺癌、副腎癌、前立腺癌、膀胱癌、骨癌、皮膚癌、脳腫瘍、黒色腫が挙げられるが、乳癌が好ましい。したがって、本発明のペプチド送達剤は、このような特定の疾患の予防または治療に有用である。
【0054】
本発明はまた、下記1)および2)を含む、上述のペプチド内包フェリチンの製造方法を提供する:
1)pH3.0以下の緩衝液中にフェリチンを放置して、フェリチンを解離させること(脱会合プロセス);および
2)解離したフェリチンおよびペプチドをpH5.0以上10.0以下の緩衝液中に共存させて、ペプチド内包フェリチンを生成すること(再会合プロセス)。
【0055】
上記1)では、pH3.0以下の緩衝液中にフェリチンを放置することで、フェリチン(24量体)をフェリチン単量体に脱会合させることができる。緩衝液中でのフェリチンの放置は、ペプチドの存在下または不在下で行うことができる。緩衝液中でのフェリチンの放置がペプチドの不在下で行われる場合、上記2)の前にペプチドが緩衝液中に添加される。
【0056】
緩衝液としては、pH3.0以下の酸性条件に対応できる任意の緩衝液を用いることができる。このような緩衝液としては、例えば、グリシン緩衝液;クエン酸緩衝液;酢酸緩衝液;リン酸緩衝液;炭酸緩衝液;ホウ酸緩衝液;酒石酸緩衝液;MES(2-モルホリノエタンスルホン酸)緩衝液が挙げられる。
【0057】
1)で用いられる緩衝液のpHは、好ましくは2.8以下、より好ましくは2.6以下、さらにより好ましくは2.5以下である。pHの測定は、pH分析計(LAQUA、F-72、Horiba)とpH電極(9680S-10D)を用いた25℃での計測により行うことができる。
【0058】
pH3.0以下の緩衝液中でのフェリチンの放置時間は、フェリチンの脱会合に要する時間である限り特に限定されない。より具体的には、このような時間は、pH等の条件によっても異なるが、ペプチド内包フェリチンの作製効率、およびペプチド内包フェリチンの作製時間の短縮等の観点から、例えば1分~10時間であり、好ましくは2分~5時間、より好ましくは3分~2時間、さらにより好ましくは4分~1時間、特に好ましくは5~30分間である。
【0059】
1)の終了後、緩衝液の交換、または緩衝液もしくは塩基の追加により、2)の操作を行うことができる。例えば、緩衝液の交換は、1)の操作後の緩衝液を中和および放置し、次いで、解離したフェリチンおよびペプチドを含む上清を回収した後、pH5.0以上10.0以下の緩衝液と混合することにより行うことができる。pH5.0以上10.0以下の緩衝液としては、例えば、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン緩衝液が挙げられる。
【0060】
2)で用いられる緩衝液のpHは、好ましくはpH5.0以上9.5以下、より好ましくはpH5.0以上9.2以下、さらにより好ましくはpH5.0以上9.0以下である。
【0061】
解離したフェリチンおよびペプチドの緩衝液中での放置時間は、フェリチンの再会合に要する時間である限り特に限定されない。より具体的には、このような時間は、pH等の条件によっても異なるが、ペプチド内包フェリチンの作製効率、およびペプチド内包フェリチンの作製時間の短縮等の観点から、例えば10分~72時間であり、好ましくは20分~48時間、より好ましくは30分~24時間である。
【実施例】
【0062】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
<実施例1:フェリチンの調製>
ヒト由来フェリチンH鎖(FTH(配列番号1))をコードするDNAを全合成した。全合成されたDNAを鋳型として、5’-GAAGGAGATATACATATGACGACCGCGTCCACCTCG-3’(配列番号3)および5’-CTCGAATTCGGATCCTTAGCTTTCATTATCACTGTC-3’(配列番号4)をプライマーとしてPCRを行った。また、pET20(メルク社)を鋳型として、5’-TTTCATATGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAAC-3’(配列番号5)および5’-TTTGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG-3’(配列番号6)をプライマーとしてPCRを行った。各々得られたPCR産物をWizard DNA Clean-Up System(プロメガ社)で精製した後、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)で、50℃、15分間のIn-Fusion酵素処理することで、FTHをコードする遺伝子が搭載された発現プラスミド(pET20-FTH)を構築した。
【0064】
続いて、構築したpET20-FTHを導入したEscherichia coli BL21(DE3)をLB培地(10g/lのBacto-typtone、5g/l Bacto-yeast extract、5g/lのNaCl、100mg/lのアンピシリンを含む)100ml、37℃で24時間フラスコ培養した。得られた菌体を超音波破砕した後、上清を60℃で20分間加熱した。加熱後得られた上清を、50mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPerp Q HPカラム(GE healthcare社)に注入し、0mMから500mM NaClを含む50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)で塩濃度勾配をかけることで、目的タンパク質を分離精製した。そのタンパク質を含む溶液の溶媒をVivaspin 20-100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)に置換した。その溶液を、10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPrep 26/60 Sephacryl S-300 HRカラム(GE healthcare社)に注入し、サイズによってFTHを分離精製した。そのFTHを含む溶液をVivaspin 20-100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて濃縮し、含有タンパク質濃度をプロテインアッセイCBB溶液(ナカライテスク社)にて、ウシアルブミンを標準として決定した。結果、培養液100mlあたり、5mg/mlのFTHを含む溶液1mlを得ることができた。
なお、pHの測定は、pH分析計(LAQUA、F-72、Horiba)とpH電極(9680S-10D)を用いて、25℃で行った。
【0065】
<実施例2:蛍光修飾されたペプチドの内包検討(1)>
フェリチンを用いたペプチド送達に向けて、蛍光色素フルオロセイン(FAM)で修飾されたペプチド(5(6)-FAM-RFARKGALRQKNVHEVKN(配列番号9)、PKC-F、化学式量2524、表3)が内包されたFTHの構築を試みた。
【0066】
終濃度5mg/mlのFTH(化学式量509421)と終濃度0.5mMのペプチドを含む50mM グリシン塩酸塩緩衝液(pH2.3)0.5mlを、室温で15分間放置した。その後、1Mのトリス塩酸塩緩衝液(pH9.0)50μlを加え中和し、3時間室温で放置した。放置後、遠心分離(15,000rpm、1分間)した後、上清を回収し、10mM トリス塩酸塩緩衝液(pH8)で3mlまで容量を増やした。その溶液を、10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPrep 26/60 Sephacryl S-300 HRカラム(GE healthcare社)に注入し、流速1.3ml/分で、サイズによって24量体のFTHを分離精製した。精製されたフェリチンを10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPrep 16/60 Sephacryl S-300 HRカラム(GE healthcare社)を用いて流速0.5ml/分で分析したところ、FTHのみでは確認されない480nmの吸光がFTHのピークと同じ位置に確認され、FTHとペプチドが複合体を形成していることが分かった(
図1)。
【0067】
そのFTHを含む溶液をVivaspin 20-100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて0.25mlまで濃縮した。溶液中にペプチドが含有されることはLC-MS分析で確認した。LC-MS分析のために、サンプル溶液50μlに1Mグリシン塩酸塩緩衝液(pH2.3)50μlを加え室温で15分間放置した。その溶液に900μlのエタノールを加え、激しく攪拌した後、遠心分離(15000rpm、5分間)により上清を回収した。その上清を分析した。今回、LC-MSとして、LCMS-2020(島津製作所)、カラムはInertsil(登録商標) ODS-3、粒子径2μm、2.1mmx50mm(GL science)を用いた。そして、カラムに供されたサンプル10μlを、溶液A(0.1%ぎ酸/99.9%アセトニトリル)と溶液B(50%水/50%アセトニトリル)の混合比が95対5から95対5となるように流速0.2ml/分、10分間かけて溶出させた。また、含有タンパク質濃度はプロテインアッセイCBB溶液(ナカライテスク社)にて、ウシアルブミンを標準として決定した。また、内包するペプチドの濃度はPKC-Fに修飾された蛍光色素FAMの480nmの吸光から決定した。
【0068】
その結果、LC-MSの分析より、フェリチン内包されたペプチド(
図2)と標品ペプチド(
図3)の保持時間は共に3.9分間で同じで、MSスペクトルも同等であり、フェリチン内包操作によってPKC-Fは分解されずに、内包されていることが確認された。そして、4.3mg/ml(8.5μM)のFTHと0.18mg/ml(72μM)のペプチドを含む溶液0.25mlを得ることができた。この時のモル比からフェリチン1個あたり、平均8.5個のPKC-Fが内包されていた。
【0069】
<実施例3:蛍光修飾されたペプチドを内包したフェリチンの形状>
精製されたPKC-F内包FTHがカゴ状形状を示すことは、
図4に示すように、3%りんタングステン酸染色による透過型電子顕微鏡(TEM)像によって確認した。この時のペプチド内包FTHの直径は12nmであり、天然型ヒトフェリチンと同じサイズであり、ペプチド内包により、フェリチンの高次構造が大きく損なわれないこと分かった。
【0070】
続いて、そのPKC-F内包FTH複合体を終濃度50mMのリン酸緩衝液(pH6あるいは7)、酢酸緩衝液((pH4あるいは5)、あるいはトリス塩酸塩緩衝液(pH8)に各々FTH量として終濃度0.1g/lとなるように懸濁し、その緩衝液中、25℃での表面電荷をゼータサイザーナノZS(マルバーン社)にて測定した。測定は、サンプル750μlをDTS1070セルに入れ、Material設定(RI:1.450、Absorption:0.001)、Dispersant設定(Temperature:25℃、Viscosity:0.8872cP、RI:1.330、Dielectric constant:78.5)、Smoluchowski model(Fκa value:1.50)にて行われた。その結果、ペプチド内包処理されていないFTHとPKC-F内包FTH複合体の表面電荷は同等であり、FTH表面にペプチドが吸着することで複合化しているわけではないことが分かった(
図5)。
【0071】
<実施例4:蛍光修飾されたペプチド内包フェリチンを用いた細胞取り込み試験(1)>
得られたPKC-F内包FTHを用いて、フェリチンによるPKC-Fの細胞内への輸送性を評価した。
【0072】
評価用培地(Opti-MEMTM(Thermo Fisher Scientific社)+1%非必須アミノ酸溶液(Thermo Fisher Scientific社)+1%ペニシリン-ストレプトマイシン(ナカライテスク社))にPKC-F内包FTHの終濃度が100nM(PKC-F濃度0.86μM)、200nM(PKC-F濃度1.72μM)あるいは400nM(PKC-F濃度3.44μM)となるように各々添加された培地100μl中で、ヒト乳癌由来であるSKBR-3細胞(20,000 cell/well、96-well plate)に添加し、37℃で培養した。このSKBR-3細胞はトランスフェリン受容体TfRが発現している。また、陰対照として、FTH内包されていないペプチドが終濃度0.86μM、1.72μMあるいは3.44μMで添加された培地でSKBR-3細胞を同様に培養した。各々24時間培養後、リン酸緩衝生理食塩水100μlにて2回洗浄し、Trypsin-EDTA(Sigma-Aldrich社)50μl中で37℃、10分間放置した。その後、Opti-MEMTM培地100μlを加え、蛍光活性化セルソーティング(FACS)用プレートに細胞を移し、400xg、5分間遠心分離した。各細胞をFACS用緩衝液(AttuneTM Focusing Fluid、Thermo Fisher Scientific社)に懸濁し、FACS(Attune NxT、Thermo Fisher Scientific社)で分析した。
【0073】
その結果、PKC-F内包FTHでは濃度依存的な蛍光強度の変化が確認(
図6)され、濃度依存的に細胞への取り込み量が増加していることが示唆された。
【0074】
同じ条件で調整された細胞を二光子励起蛍光顕微鏡(CQ-1、横川電機株式会社)で観察したところ、PKC-F内包FTHでのみ細胞内の蛍光を観察することができ、濃度依存的なPKC-F内包FTHの細胞への取り込みを確認することができた(
図7)。一方、フェリチンに内包されていないPKC-Fでは、細胞内へ輸送は確認されなかった。
【0075】
以上のことから、FTHで内包する事で、TfR提示細胞内にペプチドを送達できることが分かった。
【0076】
<実施例5:蛍光修飾されたペプチドの内包検討(2)>
フェリチンを用いたペプチド送達の汎用性を調べるために、PKC-F以外のペプチドをフェリチンに内包させ細胞内への輸送を試みた。
【0077】
先ず、蛍光修飾された2種類のペプチド〔(5(6)-FAM-CGGPKKKRKVG(配列番号10)、FAM-SV40、化学式量1516、および5(6)-FAM-CGGKRPAAIK KAGQAKKKKG(配列番号11)、FAM-Np、化学式量384)〕が内包されたFTHの構築を試みた。終濃度5mg/mlのFTH(化学式量509421)と終濃度0.5mMのペプチドを含む50mM グリシン塩酸塩緩衝液(pH2.3)0.5mlを、室温で15分間放置した。その後、1Mのトリス塩酸塩緩衝液(pH9.0)50μlを加え中和し、3時間室温で放置した。放置後、遠心分離(15,000rpm、1分間)した後、上清を回収し、10mM トリス塩酸塩緩衝液(pH8)で3mlまで容量を増やした。その溶液を、D-PBS(-)(富士フイルム和光純薬(株))で平衡化されたHiPrep 16/60 Sephacryl S-300 HRカラム(GE healthcare社)を用いて流速0.5ml/分でサイズによって24量体のFTHを分離精製した。このとき、FAM-SV40の内包操作を行ったフェリチンでは430nmの吸光がフェリチン24量体と同じ溶出位置に確認され、フェリチン内にFAM-SV40が内包されていることが示唆された(
図8)。しかし、FAM-Npの内包操作を行ったフェリチンでは480nmの吸光は確認されず、FAM-Npが内包されていないことが分かった。このことは物性等の違いによりフェリチンに内包が難しいペプチドが存在することを示唆する。
【0078】
次に、精製されたフェリチンに内包されたFAM-SV40ペプチド量の定量を480 nmの吸光、フェリチン量アルブミンを標準としたCBB染色による定量を行った。
【0079】
その結果、6.3mg/ml(12μM)のFTHと0.09mg/ml(30μM)のFAM-SV40ペプチドを含む溶液0.3mlを得ることができた。この時のモル比からフェリチン1個あたり、平均2.5個のFAM-SV40が内包されていた。
【0080】
<実施例6:蛍光修飾されたペプチド内包フェリチンを用いた細胞取り込み試験(2)>
得られたFAM-SV40内包FTHの細胞への取り込みを評価した。評価用培地(Opti-MEMTM(Thermo Fisher Scientific社)+1%非必須アミノ酸溶液(Thermo Fisher Scientific社)+1%ペニシリン-ストレプトマイシン(ナカライテスク社))にFAM-SV40内包FTHの終濃度が100nM(FAM-SV40濃度250nM)、200nM(FAM-SV40濃度500nM)あるいは400nM(FAM-SV40濃度1000nM)となるように各々添加された培地100μl中で、SKBR-3細胞(20,000 cell/well、96-well plate)に添加し、37℃で培養した。また、陰対照として、FTH内包されていないペプチドが終濃度250nM、500nMあるいは1000nMで添加された培地でSKBR-3細胞を同様に培養した。各々24時間培養後、リン酸緩衝生理食塩水100μlにて2回洗浄し、Trypsin-EDTA(Sigma-Aldrich社)50μl中で37℃、10分間放置した。
【0081】
その後、Opti-MEM
TM培地100μlを加え、蛍光活性化セルソーティング(FACS)用プレートに細胞を移し、400xg、5分間遠心分離した。各細胞をFACS用緩衝液(Attune
TM Focusing Fluid、Thermo Fisher Scientific社)に懸濁し、FACS(Attune NxT、Thermo Fisher Scientific社)で分析した。結果として、FAM-SV40内包FTHでのみ濃度依存的な蛍光強度の上昇を観察することができた一方、FAM-SV40のみでは、蛍光は確認されなかった(
図9)。
【0082】
以上のことから、FTHに内包されることで、従来膜透過できないペプチドも細胞内に送達できることが分かった。
【0083】
<実施例7:TfR発現量によるペプチド送達量の依存性の確認>
フェリチンに内包することで、目的のペプチドを、トランスフェリン受容体(TfR)提示細胞に特異的に送達できることを確認するために、TfRの発現量の異なる細胞株を用いて、FTHの取り込み効率のTfR依存性を評価した。
【0084】
今回の評価では、TfR発現量の多い細胞SKBR3(発現強度449.7 TPM、データベース「The Human Protein Atlas(https://www.proteinatlas.org/)」を参照。)とTfR発現量の少ない細胞HEK293細胞(発現強度74.5 TPM、データベース「The Human Protein Atlas」を参照。)の亜株であるHEK293E細胞を用いた。
【0085】
はじめにSKBR3細胞とHEK293E細胞からPureLink(登録商標) RNA Miniキット(Thermo Fisher Scientific社)を用いて全RNAを回収した。50ngの各細胞由来の全RNAと2μLのSuperScriptTM VILOTM Master Mix(Thermo Fisher Scientific社)を混合し、全量10μLとなるよう水を添加した。25℃で10分、42℃で60分、85℃で5分インキュベートした後、115μLの水を添加して希釈することで0.4ng/μLのcDNA溶液を得た。各cDNA溶液5μLにTaqMan(登録商標) Fast Advanced Master Mix(Applied Biosystems社)、水4.8μL、25μMのプライマーミックスを加え、定量PCR溶液を調製した。TfR遺伝子用プライマーミックスは(Forward:TGGCAGTTCAGAATGATGGA(配列番号26)、Reverse:AGGCTGAACCGGGTATATGA(配列番号27))を混合して用いた。内標としては18S rRNAを定量した。18S rRNA用遺伝子用プライマーミックスは(Forward:TGAGAAACGGCTACCACATC(配列番号28)、Reverse:TTACAGGGCCTCGAAAGAGT(配列番号29))を混合して用いた。定量PCR(StepOnePlusTMシステム、Applied Biosystems社)により、TfRのmRNAの発現量を確認したところ、SKBR3細胞のTfR発現量はHEK293E細胞の3.2倍高かった。
【0086】
評価用培地(Opti-MEMTM(Thermo Fisher Scientific社)+1%非必須アミノ酸溶液(Thermo Fisher Scientific社)+1%ペニシリン-ストレプトマイシン(ナカライテスク社))にFAM-SV40内包FTHの終濃度が0から800nM(FAM-SV40濃度2μM)となるように各々添加された培地100μl中で、各細胞(20,000 cell/well、96-well plate)に添加し、37℃で培養した。各々24時間培養後、リン酸緩衝生理食塩水100μlにて2回洗浄し、Trypsin-EDTA(Sigma-Aldrich社)50μl中で37℃、10分間放置した。
【0087】
その後、Opti-MEMTM培地100μlを加え、蛍光活性化セルソーティング(FACS)用プレートに細胞を移し、400xg、5分間遠心分離した。各細胞をFACS用緩衝液(AttuneTM Focusing Fluid、Thermo Fisher Scientific社)に懸濁し、FACS(Attune NxT、Thermo Fisher Scientific社)で分析した。
【0088】
その結果、FAM-SV40内包FTHを100nMで含む培地で培養されたSKBR3細胞の90%以上が蛍光を発しており、ほとんどの細胞がFAM-SV40内包FTHを取り込んでいることが示唆された。そして、その割合は同じ条件で得られたHEK293E細胞の60倍であった(
図10)。HEK293E細胞の場合、90%以上の細胞が蛍光を発するようになるには、FAM-SV40内包FTHを800nM以上の高濃度で含む培地で培養する必要があった(
図11)。これらの結果は、TfR発現量の多い細胞SKBR3は、より効率的にフェリチンを細胞内に取り込んだことを示唆する。
【0089】
すなわち、フェリチンに内包することで、目的のペプチドを、対象細胞のTfR発現量に応じて細胞内に送達量を制御可能であることが分かった。
【0090】
<実施例8:フェリチンに内包可能なペプチドの探索(1)>
脱会合・再会合プロセスによってフェリチンに内包可能なペプチドの探索を行った。脱会合・再会合プロセスでは、終濃度5mg/mlのFTHと終濃度0.5mMのペプチドを含む50mM グリシン塩酸塩緩衝液(pH2.3)1mlを、室温で15分間放置した。その後、1Mのトリス塩酸塩緩衝液(pH9.0)310μlを加え中和し、3時間室温で放置した。放置後、50mMトリス塩酸塩緩衝液(pH8.0)1.2mlを加え、遠心分離(15,000rpm、1分間)した後、上清2.5mlを50mM トリス塩酸塩緩衝液(pH8)で平衡化された脱塩カラムPD-10(Sephadex G-25充填品、GEヘルスケア社)に供し、3.0mlの50mMトリス塩酸塩緩衝液(pH8.0)で溶出し、封入されなかったペプチドとフェリチンとを分離した。その溶液全量(3.0ml)をVivaspin 20-100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて0.1mlに濃縮した。その濃縮液に10mlの50mM トリス塩酸塩緩衝液を加え濃縮する操作を2回繰り返すことで、PD-10で除去しきれなかったペプチドを除去し、サンプル溶液0.1mlを得た。LC-MS分析のために、サンプル溶液50μlに1Mグリシン塩酸塩緩衝液(pH2.3)50μlを加え室温で15分間放置した。その溶液に900μlのエタノールを加え、激しく攪拌した後、遠心分離(15000rpm、5分間)により上清を回収した。その上清を分析した。今回、LC-MSとして、LCMS-2020(島津製作所)、カラムはInertsil(登録商標) ODS-3、粒子径2μm、2.1mmx50mm(GL science)を用いた。そして、カラムに供されたサンプル10μlを、溶液A(0.1%ぎ酸/99.9%アセトニトリル)と溶液B(50%水/50%アセトニトリル)の混合比が95対5から95対5となるように流速0.2ml/分、10分間かけて溶出させた。
【0091】
今回内包検討に用いたペプチドの一覧を表1に示す。ペプチドのフェリチンへの内包は、脱会合・再会合プロセスによるフェリチン内へのペプチド内包操作を行ったサンプルと、単純にフェリチンとペプチドを混合したサンプルを各々調製し、LC-MSにより検出されたペプチドの量を比較した。例えば、ClAc-FHCは保持時間0.8分間で溶出し、脱会合・再会合プロセスではm/z=445にClAc-FHC(化学式量445)由来のピークを確認できた(
図12A)。しかし、脱会合・再会合プロセスを行わない単純なペプチドとフェリチンの混合のみではそのピークを観察できなかった(
図12B)。今回、脱会合・再会合プロセスでペプチドが内包されたFTHのLC-MSの結果を
図13から
図17に示す。
【0092】
【0093】
今回評価されたペプチドのフェリチンへの内包可否は次表5に示す。
【0094】
<実施例9:フェリチンに内包可能な物性の検討>
今回、フェリチンに内包されたペプチドおよび内包できなかったペプチドについて、下記の各物性値とフェリチンへのペプチドの内包可否との相関関係を調べた。
(1)ペプチドの長さ(鎖長)
(2)ペプチドの化学式量
(3)疎水性度(Hydrophobicity)
(4)GRAVY
(5)平均親水性度(Average of hydrophilicity)
(6)ペプチドに占める親水性アミノ酸の割合(Ratio of hydrophilic residues/total number of residues)
(7)pH9におけるペプチドの電荷
【0095】
上記(1)~(7)の物性値は、以下の方法に基づき決定した。
【0096】
(1)ペプチドの長さ(鎖長)
ペプチドの長さは、ペプチドを構成するアミノ酸残基の総数に基づき決定した。
【0097】
(2)ペプチドの化学式量
ペプチドの組成式に基づいて原子量と原子数の積の総和として決定した。
【0098】
(3)疎水性度
ペプチドの疎水性度(Hydrophobicity)は、SSRCalc Hydrophobicityに基づき算出した(O. V. Krokhin Anal. Chem.(2006),78(22)7785-7795)。今回、Prot pi(https://www.protpi.ch/Calculator/PeptideTool)を用いて、300オングストロームC18カラム、0.1%TFA溶出条件のデータベースを使用し、算出した。
【0099】
(4)GRAVY
GRAVY(grand average of hydropathy)は、各アミノ酸残基のハイドロパシー値(hydropathy score)を加算し、そして配列の長さで割ることによって計算した(J, Kyte and R. F.Doolittle, J Mol Biol. 1982 157(1) 105-32.)。
【0100】
【0101】
(5)平均親水性度
平均親水性度(Average of hydrophilicity)は、各アミノ酸残基の親水度値(hydrophilicity score)を加算し、そして配列の長さで割ることによって計算した(Hopp and Woods Proc Natl Acad Sci U S A. 1981 78(6) 3824-8.)。
【0102】
【0103】
(6)ペプチドに占める親水性アミノ酸の割合
ペプチドに占める親水性アミノ酸の割合(Ratio of hydrophilic residues/total number of residues)は、ペプチドを構成する全アミノ酸の内、親水性アミノ酸(H、C、T、S、K、Q、E、D、NおよびR)の占める割合を評価することにより決定した。
【0104】
(7)pH9におけるペプチドの電荷
pH9におけるペプチドの電荷は、ペプチドを構成する各アミノ酸残基の側鎖、修飾基、N末端のアミノ基又はその保護基、C末端のカルボキシ基又はその保護基を含む全ての官能基の電荷について、各官能基の解離定数(pKa)と電荷の正負を各々用いてpH9として、以下の式を用いて算出した。
【0105】
【0106】
各アミノ酸のpKaの評価は、ChemAxon(https://chemaxon.com/)を利用した(O.Toure et. al., Oil Gas Sci. Technol. 2013, 68, 281-297.)。
【0107】
【0108】
フェリチンへの内包の検討で使用されたペプチドの上記各物性値と、フェリチンへのペプチドの内包可否との関係は、以下のとおりである。
【0109】
【0110】
その結果、pH9.0での電荷と化学式量の関係式と、ペプチドの内包のされ易さとの間に相関性が見出された(
図18)。
【0111】
すなわち、a)-10.2≦pH9でのペプチドの電荷(X)≦5.9、かつ445≦ペプチドの化学式量(Y)≦2524の条件を満たすペプチドをフェリチンに内包することができた(
図18)。
【0112】
また、上記条件を満たすペプチドの内、b)-10.2≦X≦0.0、かつ445≦Y≦2524、あるいはc)3.7≦X≦5.9、かつ445≦Y≦2524の条件を満たすペプチドはフェリチンに再現性良く内包できていた(
図18)。
【0113】
<実施例10:フェリチンの調製(2)>
ヒト由来フェリチンL鎖(FTL(配列番号2))をコードするDNAを全合成した。全合成されたDNAを鋳型として、5’-GAAGGAGATATACATATGAGCTCCCAGATTCGTCAG-3’(配列番号7)および5’-CTCGAATTCGGATCCTTAGTCGTGCTTGAGAGTGAG-3’(配列番号8)をプライマーとしてPCRを行った。また、pET20(メルク社)を鋳型として、5’-TTTCATATGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAAC-3’(配列番号5)および5’-TTTGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG-3’(配列番号6)をプライマーとしてPCRを行った。各々得られたPCR産物をWizard DNA Clean-Up System(プロメガ社)で精製した後、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)で、50℃、15分間のIn-Fusion酵素処理することで、FTLをコードする遺伝子が搭載された発現プラスミド(pET20-FTL)を構築した。
【0114】
続いて、構築したpET20-FTLを導入したEscherichia coli BL21(DE3)をLB培地(10g/lのBacto-typtone、5g/l Bacto-yeast extract、5g/lのNaCl、100mg/lのアンピシリンを含む)100ml、37℃で24時間フラスコ培養した。得られた菌体を超音波破砕した後、上清を60℃で20分間加熱した。加熱後得られた上清を、50mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPerp Q HPカラム(GE healthcare社)に注入し、0mMから500mM NaClを含む50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)で塩濃度勾配をかけることで、目的タンパク質を分離精製した。そのタンパク質を含む溶液の溶媒をVivaspin 20-100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)に置換した。その溶液を、10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPrep 26/60 Sephacryl S-300 HRカラム(GE healthcare社)に注入し、サイズによってFTLを分離精製した。そのFTHを含む溶液をVivaspin 20-100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて濃縮し、含有タンパク質濃度をプロテインアッセイCBB溶液(ナカライテスク社)にて、ウシアルブミンを標準として決定した。結果、培養液100mlあたり、3mg/mlのFTLを含む溶液1mlを得ることができた。
【0115】
<実施例11:蛍光修飾されたペプチドの内包検討>
蛍光色素フルオロセイン(FAM)で修飾されたペプチド(5(6)-FAM-RFARKGALRQKNVHEVKN(配列番号9)、PKC-F、化学式量2524)が内包されたFTLを構築した。
【0116】
終濃度5mg/mlのFTL(化学式量480466)と終濃度0.5mMのペプチドを含む50mM グリシン塩酸塩緩衝液(pH2.3)0.5mlを、室温で15分間放置した。その後、1Mのトリス塩酸塩緩衝液(pH9.0)50μlを加え中和し、3時間室温で放置した。放置後、遠心分離(15,000rpm、1分間)した後、上清を回収し、10mM トリス塩酸塩緩衝液(pH8)で3mlまで容量を増やした。その溶液を、D-PBS(-)(富士フイルム和光純薬(株))で平衡化されたHiPrep 26/60 Sephacryl S-300 HRカラム(GE healthcare社)に注入し、流速1.3ml/分で、サイズによって24量体のFTLを分離精製した。精製されたフェリチンを、PBSで平衡化されたHiPrep 16/60 Sephacryl S-300 HRカラム(GE healthcare社)を用いて流速0.5ml/分で分析したところ、FTLのみでは確認されない480nmの吸光がFTLのピークと同じ位置に確認され、ペプチドがFTLに内包されていた(
図19)。以上のことからFTLでもペプチドが内包可能であることが分かった。
【配列表】