(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】熱硬化性インクジェットインク及び印字方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/38 20140101AFI20241210BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20241210BHJP
C09D 11/102 20140101ALI20241210BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241210BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C09D11/38
C09D11/101
C09D11/102
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 134
B41J2/01 501
B41J2/01 127
B41J2/01 125
(21)【出願番号】P 2021554966
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2020041325
(87)【国際公開番号】W WO2021090872
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019202843
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河南 朋恵
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/153035(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/152177(WO,A1)
【文献】特開2016-069571(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161298(WO,A1)
【文献】特開2013-173907(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163564(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/164164(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/38
C09D 11/101
C09D 11/102
B41M 5/00
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性化合物を含有する熱硬化性インクジェットインクであって、
光重合性化合物と熱硬化性化合物と光重合開始剤とゲル化剤とを含有し、
前記光重合開始剤が、アシルホスフィン系開始剤又はアミノアセトフェノン系開始剤であり、その含有量が、1~100mmol/kgの範囲内であり、かつ、
温度によりゾル・ゲル相転移することを特徴とする熱硬化性インクジェットインク。
【請求項2】
前記熱硬化性化合物が、ポリイソシアネートがブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性インクジェットインク。
【請求項3】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートであることを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性インクジェットインク。
【請求項4】
前記光重合開始剤の含有量が、1~70mmol/kgの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の熱硬化性インクジェットインク。
【請求項5】
光重合開始剤として、さらにチオキサントン系開始剤を40~400mmol/kgの範囲内で含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の熱硬化性インクジェットインク。
【請求項6】
光重合開始剤として、さらにチオキサントン系開始剤を100~400mmol/kgの範囲内で含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の熱硬化性インクジェットインク。
【請求項7】
熱硬化性インクジェットインクを用いた印字方法であって、
前記熱硬化性インクジェットインクが、光重合性化合物と熱硬化性化合物と光重合開始剤とを含有し、
前記光重合開始剤が、アシルホスフィン系開始剤又はアミノアセトフェノン系開始剤であり、その含有量が、1~100mmol/kgの範囲内であり、かつ、
以下の(1)~(3)の工程を有することを特徴とする印字方法。
(1)熱硬化性インクジェットインクをノズルから吐出して記録媒体に着弾させる工程
(2)着弾した熱硬化性インクジェットインクに、酸素濃度が0.1~10.0体積%の範囲内の雰囲気で活性光線を照射して仮硬化する工程
(3)その後、仮硬化した熱硬化性インクジェットインクを加熱して本硬化する工程
【請求項8】
前記熱硬化性化合物が、ポリイソシアネートがブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであることを特徴とする請求項7に記載の印字方法。
【請求項9】
前記ポリイソシアネートが脂肪族ポリイソシアネートであることを特徴とする請求項8に記載の印字方法。
【請求項10】
前記光重合開始剤の含有量が、1~70mmol/kgの範囲内であることを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載の印字方法。
【請求項11】
前記光重合開始剤として、さらにチオキサントン系開始剤を40~400mmol/kgの範囲内で含有することを特徴とする請求項7から請求項10までのいずれか一項に記載の印字方法。
【請求項12】
前記光重合開始剤として、さらにチオキサントン系開始剤を100~400mmol/kgの範囲内で含有することを特徴とする請求項7から請求項10までのいずれか一項に記載の印字方法。
【請求項13】
前記熱硬化性インクジェットインクが、ゲル化剤を含有することを特徴とする請求項7から請求項12までのいずれか一項に記載の印字方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性インクジェットインク及び印字方法に関する。より詳しくは、本発明は、基板密着性に優れ表面硬度が高く表面タック性が良好な塗膜を形成することのできる熱硬化性インクジェットインクに関する。また、基板密着性に優れ表面硬度が高く表面タック性が良好な塗膜を形成することのできる印字方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント回路基板のエッチングレジスト、ソルダーレジスト及びマーキングの形成には、フォトリソ現像法やスクリーン印刷法が用いられていた。
インクジェットプリンターを用いたプリント回路基板の製造方法としては、プリント配線板用銅張積層板にインクジェットプリンターを用いて導体回路パターンを描くことによりエッチングレジストを形成し、エッチング処理を行うことが既に提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、フォトマスクを必要とするフォトリソ現像法や、スクリーン版を必要とするレジストインクやマーキングインクをスクリーン印刷法に比べて、工程数や手間が大幅に削減できると同時に、現像液や各種インク、洗浄溶剤などの消耗品も削減でき、また、廃水も削減できることから環境のクリーン化が期待できる。
【0003】
ソルダーレジストについても、インクジェット方式を用いて、光による仮硬化を行った後、熱による本硬化より硬化膜を形成することが既に提案されている(例えば、特許文献2及び3参照。)。
【0004】
しかしながら、プリント回路基板において、これらインクジェット方式を用いたインクで形成したソルダーレジストと金属基板、例えば銅基板との膜界面の密着性は十分でなく、問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5731746号公報
【文献】特許第4936725号公報
【文献】特許第5969208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、基板密着性に優れ表面硬度が高く表面タック性が良好な塗膜を形成することのできる熱硬化性インクジェットインクを提供することである。また、基板密着性に優れ表面硬度が高く表面タック性が良好な塗膜を形成することのできる印字方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、熱硬化性化合物の反応性を上げるために、光による仮硬化を抑えることで、具体的には光重合開始剤の使用量を特定範囲内に限定し、かつゲル化剤を用いることで、熱による本効果を向上させ金属密着性が良好な塗膜が得られることがわかった。さらに、光重合開始剤の使用量を減少することに伴う表面タック性の低下は、ゲル化剤を用いることにより防止できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
1.熱硬化性化合物を含有する熱硬化性インクジェットインクであって、
光重合性化合物と熱硬化性化合物と光重合開始剤とゲル化剤とを含有し、
前記光重合開始剤が、アシルホスフィン系開始剤又はアミノアセトフェノン系開始剤であり、その含有量が、1~100mmol/kgの範囲内であり、かつ、
温度によりゾル・ゲル相転移することを特徴とする熱硬化性インクジェットインク。
【0009】
2.前記熱硬化性化合物が、ポリイソシアネートがブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであることを特徴とする第1項に記載の熱硬化性インクジェットインク。
【0010】
3.前記ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートであることを特徴とする第2項に記載の熱硬化性インクジェットインク。
【0011】
4.前記光重合開始剤の含有量が、1~70mmol/kgの範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の熱硬化性インクジェットインク。
【0012】
5.光重合開始剤として、さらにチオキサントン系開始剤を40~400mmol/kgの範囲内で含有することを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の熱硬化性インクジェットインク。
【0013】
6.光重合開始剤として、さらにチオキサントン系開始剤を100~400mmol/kgの範囲内で含有することを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の熱硬化性インクジェットインク。
【0014】
7.熱硬化性インクジェットインクを用いた印字方法であって、
前記熱硬化性インクジェットインクが、光重合性化合物と熱硬化性化合物と光重合開始剤とを含有し、
前記光重合開始剤が、アシルホスフィン系開始剤又はアミノアセトフェノン系開始剤であり、その含有量が、1~100mmol/kgの範囲内であり、かつ、
以下の(1)~(3)の工程を有することを特徴とする印字方法。
(1)熱硬化性インクジェットインクをノズルから吐出して記録媒体に着弾させる工程
(2)着弾した熱硬化性インクジェットインクに、酸素濃度が0.1~10.0体積%の範囲内の雰囲気で活性光線を照射して仮硬化する工程
(3)その後、仮硬化した熱硬化性インクジェットインクを加熱して本硬化する工程
【0015】
8.前記熱硬化性化合物が、ポリイソシアネートがブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであることを特徴とする第7項に記載の印字方法。
【0016】
9.前記ポリイソシアネートが脂肪族ポリイソシアネートであることを特徴とする第8項に記載の印字方法。
【0017】
10.前記光重合開始剤の含有量が、1~70mmol/kgの範囲内であることを特徴とする第7項から第9項までのいずれか一項に記載の印字方法。
【0018】
11.前記光重合開始剤として、さらにチオキサントン系開始剤を40~400mmol/kgの範囲内で含有することを特徴とする第7項から第10項までのいずれか一項に記載の印字方法。
【0019】
12.前記光重合開始剤として、さらにチオキサントン系開始剤を100~400mmol/kgの範囲内で含有することを特徴とする第7項から第10項までのいずれか一項に記載の印字方法。
【0020】
13.前記熱硬化性インクジェットインクが、ゲル化剤を含有することを特徴とする第7項から第12項までのいずれか一項に記載の印字方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の上記手段により、基板密着性に優れ表面硬度が高く表面タック性が良好な塗膜を形成することのできる熱硬化性インクジェットインクを提供することができる。また、基板密着性に優れ表面硬度が高く表面タック性が良好な塗膜を形成することのできる印字方法を提供することができる。
【0022】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0023】
光と熱により、ソルダーレジスト硬化膜を、インクジェット方式を用いて、形成する従来のダブルキュア方式では金属基板との密着性が不十分であった。
基板との密着性は熱硬化反応により得られると考えられるため、いかに熱硬化性化合物の反応性を上げるかが重要である。熱硬化温度を高温にすることで、密着性は上がるが、それでは工程負荷が大きく現実的ではない。
【0024】
本発明では光による仮硬化を抑え、かつゲル化剤を用いることで熱硬化性を向上させ、高い金属密着性が得られる。具体的には、光重合開始剤の使用量を特定範囲内に減少することにより、光硬化(仮硬化)で消費される光重合性基を有する化合物だけでなく、熱硬化性化合物も少なくなるため、相対的に、その後熱硬化するとき、金属基板近傍の熱硬化性化合物を多く残すことができるためであると推定される。さらにゲル化剤が活性光線、例えば紫外光(UV光)照射時の重合反応には組み込まれず、かつ加温融解性があるため熱重合時に熱硬化剤の溶解助剤として機能し熱硬化反応を促進させる。
【0025】
一方、光硬化性を落とすことに伴い、表面タック性が劣る方向になり、表面のべたつきが生じ、工程での取り扱いが低下するが(例えば両面印刷やゴミの混入)、ゲル化剤が光硬化時の表面硬化性向上にも機能し、工程での取り扱いも問題なくなることがわかった。
【0026】
また、本発明の熱硬化性インクジェットインクを用いた印字方法は、上記光硬化性を落とすことに伴う、表面タック性が劣る対応として、ゲル化剤を用いずに、酸素濃度が0.1~10.0体積%の範囲内の雰囲気で活性光線を照射して仮硬化する工程を有している。このような印字方法により、ゲル化剤を用いなくても、表面タック性を改善することができる。
【0027】
これは酸素ラジカルが発生しないため、活性光線で硬化した膜中に残存したラジカルモノマーが熱硬化性反応を促進しているものと考えている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の熱硬化性インクジェットインクは、熱硬化性化合物を含有する熱硬化性インクジェットインクであって、光重合性化合物と熱硬化性化合物と光重合開始剤とゲル化剤とを含有し、前記光重合開始剤が、アシルホスフィン系開始剤又はアミノアセトフェノン系開始剤であり、その含有量が、1~100mmol/kgの範囲内であり、かつ、温度によりゾル・ゲル相転移することを特徴とする。この特徴は、下記各実施態様(形態)に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、熱硬化性化合物が、ポリイソシアネートがブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであることが好ましい。
また、前記ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートであることが、高い基板密着性が得られ、さらに鉛筆硬度も向上させることができることから好ましい。
さらに、本発明においては、前記光重合開始剤の含有量が、1~70mmol/kgの範囲内であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、光重合開始剤として、さらにチオキサントン系開始剤を40~400mmol/kgの範囲内で含有することが好ましく、さらにチオキサントン系開始剤を100~400mmol/kgの範囲内で含有することが、表面タック性と基板密着性の観点から好ましい。
本発明の印字方法は、熱硬化性インクジェットインクを用いた印字方法であって、前記熱硬化性インクジェットインクが、光重合性化合物と熱硬化性化合物と光重合開始剤とを含有し、前記光重合開始剤が、アシルホスフィン系開始剤又はアミノアセトフェノン系開始剤であり、その含有量が、1~100mmol/kgの範囲内であり、かつ、前記(1)~(3)の工程を有することを特徴とする。
本発明の印字方法の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、熱硬化性化合物が、ポリイソシアネートがブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであることが好ましい。
また、前記ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートであることが、高い基板密着性が得られ、さらに鉛筆硬度も向上させることができることから好ましい。
さらに、本発明においては、前記光重合開始剤の含有量が、1~70mmol/kgの範囲内であることが好ましい。
また、本発明の効果発現の観点から、光重合開始剤として、さらにチオキサントン系開始剤を40~400mmol/kgの範囲内で含有することが好ましく、さらにチオキサントン系開始剤を100~400mmol/kgの範囲内で含有することが、表面タック性と基板密着性の観点から好ましい。
さらに、前記熱硬化性インクジェットインクが、ゲル化剤を含有する印字方法であることが好ましい。
【0029】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0030】
また、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタアクリロイル基を意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0031】
《本発明の熱硬化性インクジェットインクの概要》
本発明の熱硬化性インクジェットインクは、光重合性化合物と熱硬化性化合物と光重合開始剤とゲル化剤とを含有し、
前記光重合開始剤が、アシルホスフィン系開始剤又はアミノアセトフェノン系開始剤であり、その含有量が、1~100mmol/kgの範囲内であり、かつ、
温度によりゾル・ゲル相転移することを特徴とする。
【0032】
本発明では上述したように、光による仮硬化を抑えることで、熱硬化性を向上させ、基板密着性が向上する。また、光重合反応に組み込まれないゲル化剤を用いることで、熱重合性化合物を溶融させ熱硬化性の促進をさらに進める。光硬化時の重合度を抑えるには光重合開始剤を減量するが、一方光硬化性を落とすことで表面タック性が悪くなり、工程での取り扱いが難しくなる(例えば両面印刷やゴミの混入)。
そこで、ゲル化剤を添加した熱硬化性インクジェットインクにより表面硬化性を上げつつ、内部の重合度を抑えることで、高い表面硬度を有しながら、基板密着性と表面タック性の両立を可能としている。
【0033】
光重合開始剤の含有量が、1mol/kg未満の場合は、表面硬化が十分でないため、表面硬度が不足する、また、その含有量が、100mmol/kgを超えると、基板密着性が十分な強さにならないため好ましくない。
【0034】
熱硬化剤が、ブロックイソシアネートである場合、特に脂肪族ポリイソシアネート型の場合に、熱硬化時のゲル化剤との溶解性が上がり、その結果より高い基板密着性が得られる。さらに重合が塗膜中均一に進むことで鉛筆硬度も向上させることができる。
【0035】
さらに、表面タック性に効果のある開始剤であるチオキサントン系開始剤を増量することでも、同様に基板密着性が良くなる。光重合時における表面での光吸収が良くなる一方で、深さ方向のフォトン数が減り、結果基材界面の重合度が下がり熱硬化反応がより促進したためであると考えられる。
【0036】
《本発明の熱硬化性インクジェットインクの詳細》
以下本発明の熱硬化性インクジェットインクの構成について詳細に述べる。
【0037】
[熱硬化性化合物]
本発明に使用される熱硬化性化合物としては、環状エーテル基含有熱硬化性化合物、イソシアネート基含有熱硬化性化合物及びマレイミド基を含む化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0038】
(環状エーテル基含有熱硬化性化合物)
環状エーテル基含有熱硬化性化合物は、分子中に環状エーテル基を複数有しても良く、エポキシ基やオキセタニル基を有する化合物が好ましい。
【0039】
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、各種の鎖式エポキシ基含有単量体(例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等)、各種の(2-オキソ-1,3-オキソラン)基含有ビニル単量体(例えば(2-オキソ-1,3-オキソラン)メチル(メタ)アクリレート等)、各種の脂環式エポキシ基含有ビニル単量体(例えば3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート等)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノール又はこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などが挙げられる。
【0040】
さらに、エポキシ基を有する化合物として、(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有する化合物、エポキシ化合物の部分(メタ)アクリル化合物物等が挙げられる。上記(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0041】
オキセタニル基を有する化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0042】
(イソシアネート基含有熱硬化性化合物)
イソシアネート基含有熱硬化性化合物としては、例えば、分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、具体的には、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI)、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′-MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)などの脂環式ポリイソシアネート;ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどのポリイソシアネート;これらのビュレット体、イソシアヌレート体及びカルボジイミド変性物;などを挙げることができる。
【0043】
中でも、とくに熱解離性のブロック剤で保護されたイソシアネート基を有する多官能イソシアネートである、ブロックイソシアネートが基板密着性と塗膜の表面硬度の観点で好ましい。
つまり、ポリイソシアネートがブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであることが好ましい。ブロック剤で保護されたイソシアネート基が熱解離することで、熱硬化反応が進行するが、ダブルキュア方式の場合、UV重合後に熱硬化反応を促進することが難しいが、本発明の場合、ゲル化剤がUV照射時のモノマー重合に組み込まれず、かつ加温融解性があるため熱重合時に熱硬化剤の溶解助剤として機能し熱硬化反応を促進させる。
イソシアネートとゲル化剤の相溶性が高いためその効果は顕著に表れる。その中でも脂肪族ポリイソシアネート型の場合にさらに溶解性が上がり、その結果より高い基板密着性が得られる。熱重合時に熱硬化剤が塗膜中均一になるため、表面硬度も向上する。
【0044】
前記熱解離性のブロック剤は、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物及び活性エチレン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であることが、インク保存性と熱解離性の点で好ましい。
【0045】
オキシム系化合物としては、ホルムアミドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、等が挙げられる。
【0046】
ピラゾール系化合物としては、ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、等が挙げられる。
【0047】
活性エチレン系化合物としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、等が挙げられる。
【0048】
前記ブロック剤で保護されたイソシアネート基を有する多官能イソシアネートとしては、例えば、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、2-[(3-ブチリデン)アミノオキシカルボニルアミノ]エチルメタクリレート、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルアクリレート、2-[(3-ブチリデン)アミノオキシカルボニルアミノ]エチルアクリレートが挙げられる。
【0049】
(マレイミド基を含む化合物)
マレイミド基を含む化合物としては、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-p-カルボキシフェニルマレイミド、N-p-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-p-クロロフェニルマレイミド、N-p-トリルマレイミド、N-p-キシリルマレイミド、N-o-クロロフェニルマレイミド、N-o-トリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-2,5-ジエチルフェニルマレイミド、N-2,5-ジメチルフェニルマレイミド、N-m-トリルマレイミド、N-α-ナフチルマレイミド、N-o-キシリルマレイミド、N-m-キシリルマレイミド、ビスマレイミドメタン、1,2-ビスマレイミドエタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、ビスマレイミドドデカン、N,N′-m-フェニレンジマレイミド、N,N′-p-フェニレンジマレイミド、4,4′ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4′-ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4′-ビスマレイミド-ジ(3-メチルフェニル)メタン、4,4′-ビスマレイミド-ジ(3-エチルフェニル)メタン、4,4′-ビスマレイミド-ジ(3-メチル-5-エチル-フェニル)メタン、N,N′-(2,2-ビス-(4-フェノキシフェニル)プロパン)ジマレイミド、N,N′-2,4-トリレンジマレイミド、N,N′-2,6-トリレンジマレイミド、N,N′-m-キシリレンジマレイミド、ビスフェノール A ジフェニルエーテルビスマレイミド等が挙げられる。これらの中では、ビスマレイミドが好ましい。
【0050】
[光重合性化合物]
光重合性化合物の例には、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物が含まれる。
【0051】
光重合性化合物は、活性光線の照射によって重合又は架橋反応を生じて重合又は架橋し、インクを硬化させる作用を有する化合物であればよい。光重合性化合物の例には、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物が含まれる。光重合性化合物は、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマー又はこれらの混合物のいずれであってもよい。光重合性化合物は、インクジェットインク中に1種のみが含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。
【0052】
光重合性化合物の含有量は、例えば、インクジェットインクの全質量に対して1質量%以上97質量%以下とすることができる。
ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステルであることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタアクリロイル基を意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0053】
(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、及びt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどを含む単官能のアクリレート、ならびに、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及びトリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどを含む2官能のアクリレート、ならびにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートなどの3官能以上のアクリレートを含む多官能のアクリレートなどが含まれる。
【0054】
(メタ)アクリレートは、感光性などの観点から、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0055】
(メタ)アクリレートは、変性物であってもよい。変性物である(メタ)アクリレートの例には、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどを含むエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどを含むカプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ならびにカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを含むカプロラクタム変性(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0056】
(メタ)アクリレートは、重合性オリゴマーであってもよい。重合性オリゴマーである(メタ)アクリレートの例には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、及び直鎖(メタ)アクリルオリゴマーなどが含まれる。
【0057】
カチオン重合性化合物は、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、及びオキセタン化合物などでありうる。カチオン重合性化合物は、インクジェットインク中に、1種のみが含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。
【0058】
[ゲル化剤]
本発明に係るゲル化剤は活性光線による硬化後の硬化膜中で重合に組み込まれず存在し、かつ熱重合時に塗膜中で溶融状態になり、熱硬化剤を均一にすることが好ましい。
【0059】
このようなゲル化剤は、下記一般式(G1)又は(G2)で表される化合物うちの少なくとも一種の化合物であることが、インクの硬化性を阻害せずに硬化膜中に分散される点で好ましい。さらに、インクジェット印字において、ピニング性が良好で、細線と膜厚が両立した描画ができ、細線再現性に優れる点で好ましい。
【0060】
一般式(G1):R1-CO-R2
一般式(G2):R3-COO-R4
(式中、R1~R4は、それぞれ独立に、炭素数12以上の直鎖部分を持ち、かつ分岐を持ってもよいアルキル鎖を表す。)
前記一般式(G1)で表されるケトンワックス又は上記一般式(G2)で表されるエステルワックスは、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基(アルキル鎖)の炭素数が12以上であるため、ゲル化剤の結晶性がより高まり、耐水性が向上する、かつ、下記カードハウス構造においてより十分な空間が生ずる。そのため、溶媒、光重合性化合物等のインク媒体が上記空間内に十分に内包されやすくなり、インクのピニング性がより高くなる。
【0061】
また、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基(アルキル鎖)の炭素数は26以下であることが好ましく、26以下であると、ゲル化剤の融点が過度に高まらないため、インクを出射するときにインクを過度に加熱する必要がない。
【0062】
上記観点からは、R1及びR2、又は、R3及びR4は炭素原子数12以上23以下の直鎖状の炭化水素基であることが特に好ましい。
【0063】
また、インクのゲル化温度を高くして、着弾後により急速にインクをゲル化させる観点からは、R1若しくはR2のいずれか、又はR3若しくはR4のいずれかが飽和している炭素原子数12以上23以下の炭化水素基であることが好ましい。
上記観点からは、R1及びR2の双方、又は、R3及びR4の双方が飽和している炭素原子数11以上23未満の炭化水素基であることがより好ましい。
【0064】
前記一般式(G1)で表されるケトンワックスの例には、ジリグノセリルケトン(C24-C24)、ジベヘニルケトン(C22-C22)、ジステアリルケトン(C18-C18)、ジエイコシルケトン(C20-C20)、ジパルミチルケトン(C16-C16)、ジミリスチルケトン(C14-C14)、ジラウリルケトン(C12-C12)、ラウリルミリスチルケトン(C12-C14)、ラウリルパルミチルケトン(C12-C16)、ミリスチルパルミチルケトン(C14-C16)、ミリスチルステアリルケトン(C14-C18)、ミリスチルベヘニルケトン(C14-C22)、パルミチルステアリルケトン(C16-C18)、バルミチルベヘニルケトン(C16-C22)、ステアリルベヘニルケトン(C18-C22)が含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、カルボニル基で分断される二つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
【0065】
一般式(G1)で表されるケトンワックスの市販品の例には、Stearonne(Alfa Aeser社製;ステアロン)、18-Pentatriacontanon(Alfa Aeser社製)、Hentriacontan-16-on(Alfa Aeser社製)及びカオーワックスT-1(花王社製)が含まれる。
【0066】
一般式(G2)で表される脂肪酸又はエステルワックスの例には、ベヘニン酸ベヘニル(C21-C22)、イコサン酸イコシル(C19-C20)、ステアリン酸ステアリル(C17-C18)、ステアリン酸パルミチル(C17-C16)、ステアリン酸ラウリル(C17-C12)、パルミチン酸セチル(C15-C16)、パルミチン酸ステアリル(C15-C18)、ミリスチン酸ミリスチル(C13-C14)、ミリスチン酸セチル(C13-C16)、ミリスチン酸オクチルドデシル(C13-C20)、オレイン酸ステアリル(C17-C18)、エルカ酸ステアリル(C21-C18)、リノール酸ステアリル(C17-C18)、オレイン酸ベヘニル(C18-C22)リノール酸アラキジル(C17-C20)が含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、エステル基で分断される二つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
【0067】
一般式(G2)で表されるエステルワックスの市販品の例には、ユニスターM-2222SL及びスパームアセチ、日油社製(「ユニスター」は同社の登録商標)、エキセパールSS及びエキセパールMY-M、花王社製(「エキセパール」は同社の登録商標)、EMALEX CC-18及びEMALEX CC-10、日本エマルジョン社製(「EMALEX」は同社の登録商標)並びにアムレプスPC、高級アルコール工業社製(「アムレプス」は同社の登録商標)が含まれる。
【0068】
これらの市販品は、2種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製してインクに含有させてもよい。これらのゲル化剤のうち、溶解性の観点からは、ケトンワックス、エステルワックス、高級脂肪酸、高級アルコール及び脂肪酸アミドが好ましい。
【0069】
本発明に係るゲル化剤の含有量は、インクの全質量に対して0.5~5.0質量%の範囲内であることが好ましい。ゲル化剤の含有量を上記範囲内とすることで、ゲル化剤の溶媒成分に対する溶解性が良好となる。また、上記観点からは、インクジェットインク中のゲル化剤の含有量は、0.5~2.5質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0070】
また、ゲル化剤は、インクのゲル化温度以下の温度で、インク中で結晶化することが好ましい。ゲル化温度とは、加熱によりゾル化又は液体化したインクを冷却していったときに、ゲル化剤がゾルからゲルに相転移し、インクの粘度が急変する温度をいう。具体的には、ゾル化又は液体化したインクを、粘弾性測定装置(例えば、MCR300、Physica社製)で粘度を測定しながら冷却していき、粘度が急激に上昇した温度を、そのインクのゲル化温度とすることができる。
【0071】
[光重合開始剤]
本発明に係る光重合性開始剤はアシルホスフィン系開始剤又はアミノアセトフェノン系開始剤が好ましい。アシルホスフィン系開始剤は、アシルホスフィンオキサイドが好ましい。アシルホスフィンオキサイドは長波長に吸収のある光重合開始剤であり、内部の高感度化に有効である。具体的にはモノアシルホスフィンオキサイド、ビスアシルホスフィンオキサイドが挙げられる。また、アミノアセトフェノン系の開始剤はベンゾイル基のパラ位にアルキルチオ基やジアルキルアミノ基などの強い電子供与基が置換している構造をもつ光重合開始剤である。この置換基のため吸収裾が長波長まで伸びている。これにより内部の高感度化に有利にはたらく。具体的には2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-I-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1が挙げられる。
【0072】
光による仮硬化を抑えることで、熱硬化反応を促進させるために添加量は少ないほうが良い。しかし光仮硬化性を落とすことで表面タック性が悪くなるため1~100mmol/kgの範囲内が好ましい。1~70mmol/kgの範囲内にすることで、さらに基板密着性をよくすることができる。
【0073】
本発明では、さらに、チオキサントン系開始剤を添加することが好ましい。表面硬化性の改善に効果のある開始剤であるチオキサントン系開始剤を増量すると特に基板密着性が良くなる。表面での光吸収が良くなる一方で、深さ方向のフォトン数が減り、結果基板界面の重合度が下がり熱硬化反応がより促進すると考えている。
【0074】
チオキサントン系開始剤の具体例として2-イソプロピルチオキサントン、2-4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン及び2,4-ジクロロチオキサントンが挙げられる。添加量は上記の観点から40~400mmol/kgの範囲内が好ましく、より好ましくは100~400mmol/kgの範囲内である。
【0075】
[着色剤]
本発明のインクは、必要に応じて着色剤をさらに含有してもよい。
着色剤は、染料又は顔料でありうるが、インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れることから、顔料が好ましい。顔料は、特に限定されないが、例えば、カラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料又は無機顔料が挙げられる。
【0076】
赤又はマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36から選ばれる顔料又はその混合物等が含まれる。
【0077】
青又はシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、60から選ばれる顔料又はその混合物等が含まれる。
【0078】
緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50から選ばれる顔料又はその混合物が含まれる。
【0079】
黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193から選ばれる顔料又はその混合物等が含まれる。
【0080】
黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26から選ばれる顔料又はその混合物等が含まれる。
【0081】
顔料の市販品の例には、Black Pigment(Mikuni社製)、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF-1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレット RE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS-3、5187、5108、5197、5085N、SR-5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN-EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G-550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA-1103、セイカファストイエロー10GH、A-3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY-260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR-116、1531B、8060R、1547、ZAW-262、1537B、GY、4R-4016、3820、3891、ZA-215、セイカファストカーミン6B1476T-7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B-430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN-EP、4940、4973(以上、大日精化工業社製); KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(以上、DIC社製);Colortex Yellow 301、314、315、316、P-624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA-414、U263、Finecol Yellow T-13、T-05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P-625、102、H-1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、ColortexBlue516、517、518、519、A818、P-908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(以上、山陽色素社製);Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP-S(以上、東洋インキ社製)、Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG-02、Hostapeam BlueB2G(以上、ヘキストインダストリー社製);Novoperm P-HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(以上、クラリアント製);カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(以上、三菱化学製)等が挙げられる。
【0082】
顔料の分散は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、及びペイントシェーカー等により行うことができる。
【0083】
顔料の分散は、顔料粒子の体積平均粒径が、好ましくは0.08~0.5μmの範囲内、最大粒径が好ましくは0.3~10μmの範囲内、より好ましくは0.3~3μmの範囲内となるように行われることが好ましい。
顔料の分散は、顔料、分散剤、及び分散媒体の選定、分散条件、及び濾過条件等によって、調整される。
【0084】
本発明のインクは、顔料の分散性を高めるために、分散剤をさらに含んでもよい。
分散剤の例には、ヒドロキシ基を有するカルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びステアリルアミンアセテート等が含まれる。分散剤の市販品の例には、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズ等が含まれる。
【0085】
本発明のインクは、必要に応じて分散助剤をさらに含んでもよい。分散助剤は、顔料に応じて選択されればよい。
分散剤及び分散助剤の合計量は、顔料に対して1~50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0086】
本発明のインクは、必要に応じて顔料を分散させるための分散媒体をさらに含んでもよい。分散媒体として溶剤をインクに含ませてもよいが、形成された画像における溶剤の残留を抑制するためには、前述のような光重合性化合物(特に粘度の低いモノマー)を分散媒体として用いることが好ましい。
【0087】
染料は、油溶性染料等が挙げられる。
油溶性染料は、以下の各種染料が挙げられる。マゼンタ染料の例には、MS Magenta VP、MS Magenta HM-1450、MS Magenta HSo-147(以上、三井化学社製)、AIZENSOT Red-1、AIZEN SOT Red-2、AIZEN SOTRed-3、AIZEN SOT Pink-1、SPIRON Red GEH SPECIAL(以上、保土谷化学社製)、RESOLIN Red FB 200%、MACROLEX Red Violet R、MACROLEX ROT5B(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Red B、KAYASET Red 130、KAYASET Red 802(以上、日本化薬社製)、PHLOXIN、ROSE BENGAL、ACID Red(以上、ダイワ化成社製)、HSR-31、DIARESIN Red K(以上、三菱化成社製)、Oil Red(BASFジャパン社製)が含まれる。
【0088】
シアン染料の例には、MS Cyan HM-1238、MS Cyan HSo-16、Cyan HSo-144、MS Cyan VPG(以上、三井化学社製)、AIZEN SOT Blue-4(保土谷化学社製)、RESOLIN BR.Blue BGLN 200%、MACROLEX Blue RR、CERES Blue GN、SIRIUS SUPRATURQ.Blue Z-BGL、SIRIUS SUPRA TURQ.Blue FB-LL 330%(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Blue FR、KAYASET Blue N、KAYASET Blue 814、Turq.Blue GL-5 200、Light Blue BGL-5200(以上、日本化薬社製)、DAIWA Blue 7000、OleosolFast Blue GL(以上、ダイワ化成社製)、DIARESIN Blue P(三菱化成社製)、SUDAN Blue 670、NEOPEN Blue 808、ZAPON Blue 806(以上、BASFジャパン社製)等が含まれる。
【0089】
イエロー染料の例には、MS Yellow HSm-41、Yellow KX-7、Yellow EX-27(三井化学社製)、AIZEN SOT Yellow-1、AIZEN SOT YelloW-3、AIZEN SOT Yellow-6(以上、保土谷化学社製)、MACROLEX Yellow 6G、MACROLEX FLUOR.Yellow 10GN(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Yellow SF-G、KAYASET Yellow2G、KAYASET Yellow A-G、KAYASET Yellow E-G(以上、日本化薬社製)、DAIWA Yellow 330HB(ダイワ化成社製)、HSY-68(三菱化成社製)、SUDAN Yellow 146、NEOPEN Yellow 075(以上、BASFジャパン社製)等が含まれる。
【0090】
ブラック染料の例には、MS Black VPC(三井化学社製)、AIZEN SOT Black-1、AIZEN SOT Black-5(以上、保土谷化学社製)、RESORIN Black GSN 200%、RESOLIN BlackBS(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Black A-N(日本化薬社製)、DAIWA Black MSC(ダイワ化成社製)、HSB-202(三菱化成社製)、NEPTUNE Black X60、NEOPEN Black X58(以上、BASFジャパン社製)等が含まれる。
【0091】
着色剤は本発明のインク中に、1種又は2種類以上を含み、所望の色に調色してもよい。
着色剤の含有量は、インク全量に対して0.1~20質量%の範囲内であることが好ましく、0.4~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0092】
[その他の成分]
本発明のインクは、本発明の効果が得られる範囲において、重合禁止剤及び界面活性剤を含むその他の成分をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、本発明のインク中に、1種のみが含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。
【0093】
(重合禁止剤)
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム及びシクロヘキサノンオキシムが含まれる。
【0094】
重合禁止剤の市販品の例には、Irgastab UV10(BASF社製)、Genorad 18(Rahn A.G.社製)等が含まれる。
重合禁止剤の量は、本発明の効果が得られる範囲において、任意に設定することができる。
【0095】
重合禁止剤の量は、インクの全質量に対して、例えば0.001質量%以上1.0質量%未満とすることができる。
【0096】
(界面活性剤)
界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類及び脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類及びポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、及び第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、並びにシリコーン系やフッ素系の界面活性剤が含まれる。
【0097】
シリコーン系の界面活性剤の例には、ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物、具体的には、Tego rad 2250、Evonik社製、KF-351A、KF-352A、KF-642及びX-22-4272、信越化学工業社製、BYK307、BYK345、BYK347及びBYK348、ビッグケミー社製(「BYK」は同社の登録商標)、並びにTSF4452、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製が含まれる。
【0098】
フッ素系の界面活性剤は、通常の界面活性剤の疎水性基の炭素に結合した水素の代わりに、その一部又は全部をフッ素で置換したものを意味する。
フッ素系の界面活性剤の例には、Megafac F、DIC社製(「Megafac」は同社の登録商標)、Surflon、AGCセイケミカル社製(「Surflon」は同社の登録商標)、Fluorad FC、3M社製(「Fluorad」は同社の登録商標)、Monflor、インペリアル・ケミカル・インダストリー社製、Zonyls、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社製、Licowet VPF、ルベベルケ・ヘキスト社製、及びFTERGENT、ネオス社製(「FTERGENT」は同社の登録商標)が含まれる。
【0099】
界面活性剤の量は、本発明の効果が得られる範囲において、任意に設定することができる。界面活性剤の量は、インクの全質量に対して、例えば0.001質量%以上1.0質量%未満とすることができる。
【0100】
(硬化促進剤)
本発明においては、必要に応じて硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、樹脂成分の熱硬化を促進するものであれば特に制限はなく用いることができる。
硬化促進剤として、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール-テトラフェニルボレート、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7-テトラフェニルボレートなどが挙げられる。
【0101】
(カップリング剤)
本発明においては、必要に応じて各種カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤が含まれることによって、基板密着性を向上させることができる。
各種カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系カップリング剤が挙げられる。
【0102】
(イオン捕捉剤)
本発明においては、必要に応じてイオン捕捉剤を含んでもよい。イオン捕捉剤が含まれることによって、イオン性不純物が吸着され、硬化膜が吸湿した条件における絶縁性が向上するなどの利点がある。
【0103】
イオン捕捉剤としては、例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤、ジルコニウム化合物、アンチモンビスマス系マグネシウムアルミニウム化合物などの無機イオン吸着剤などが挙げられる。
【0104】
(溶剤)
本発明のインクにおいて、硬化性の観点から本来は無溶剤が好ましいが、インク粘度の調整のために添加することもできる。
【0105】
[物性]
本発明のインクの25℃における粘度は、1~1×104Pa・sの範囲内であることが、着弾して常温に降温した際にインクを十分にゲル化させ、ピニング性が良好となる点で好ましい。
【0106】
また、インクジェットヘッドからの吐出性をより高める観点からは、本発明のインクの80℃における粘度は、3~20mPa・sの範囲内であることが好ましく、7~9mPa・sの範囲内であることがより好ましい。
【0107】
本発明のインクは、40℃以上100℃未満の範囲内に相転移点を有することが好ましい。相転移点が40℃以上であると、記録媒体に着弾後、インクが速やかにゲル化するため、ピニング性がより高くなる。また、相転移点が100℃未満であると、インク取り扱い性が良好になり射出安定性が高くなる。
より低温でインクを吐出可能にし、画像形成装置への負荷を低減させる観点からは、本発明のインクの相転移点は、40~60℃の範囲内であることがより好ましい。
【0108】
本発明のインクの80℃における粘度、25℃における粘度及び相転移点は、レオメータにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。
【0109】
本発明において、これらの粘度及び相転移点は、以下の方法によって得られた値である。
本発明のインクを100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータPhysica MCR301(コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°)、Anton Paar社製によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃までインクを冷却して、粘度の温度変化曲線を得る。
【0110】
80℃における粘度及び25℃における粘度は、粘度の温度変化曲線において80℃、25℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求めることができる。相転移点は、粘度の温度変化曲線において、粘度が200mPa・sとなる温度として求めることができる。
【0111】
インクジェットヘッドからの吐出性をより高める観点からは、本発明に係る顔料粒子の平均分散粒径は、50~150nmの範囲内であり、最大粒径は300~1000nmの範囲内であることが好ましい。さらに好ましい平均分散粒径は80~130nmの範囲内である。
【0112】
本発明における顔料粒子の平均分散粒径とは、データサイザーナノZSP、Malvern社製を使用して動的光散乱法によって求めた値を意味する。なお、着色剤を含むインクは濃度が高く、この測定機器では光が透過しないので、インクを200倍で希釈してから測定する。測定温度は常温(25℃)とする。
【0113】
[印字方法]
本発明の印字方法は、熱硬化性インクジェットインクを用いた印字方法であって、前記熱硬化性インクジェットインクが、光重合性化合物と熱硬化性化合物と光重合開始剤とを含有し、前記光重合開始剤が、アシルホスフィン系開始剤又はアミノアセトフェノン系開始剤であり、その含有量が、1~100mmol/kgの範囲内であり、かつ、以下の(1)~(3)の工程を有することを特徴とする。
【0114】
(1)熱硬化性インクジェットインクをノズルから吐出して記録媒体に着弾させる工程
(2)着弾した熱硬化性インクジェットインクに、酸素濃度が0.1~10.0体積%の範囲内の雰囲気で活性光線を照射して仮硬化する工程
(3)その後、仮硬化した熱硬化性インクジェットインクを加熱して本硬化する工程
【0115】
本発明では上述したように、光による仮硬化を抑えることで、熱硬化性を向上させ、基板密着性が向上する。光硬化時の重合度を抑えるには光重合開始剤を減量するが、一方硬化性を落とすことで表面タック性が悪くなり、工程での取り扱いが難しくなる(例えば両面印刷やゴミの混入)。
そこで、前述した本発明の熱硬化性インクジェットインクは、ゲル化剤を含有することで解決したが、ゲル化剤を含有しなくても、酸素濃度が0.1~10.0体積%の範囲内の雰囲気で活性光線を照射して仮硬化する印字方法により表面硬化性を上げつつ、内部の重合度を抑えることで、高い表面硬度を有しながら、基板密着性と表面タック性の両立を可能とすることができる。
【0116】
以下の印字方法で述べる、熱硬化性インクジェットインクは、ゲル化剤を含有しなくても良い点を除き、前述した本発明の熱硬化性インクジェットインクと、構成は同じである。印字方法で使用する熱硬化性インクジェットインクを、「本発明に係るインク」ともいう。
【0117】
本発明に係るインクは、プリント回路基板に用いられるソルダーレジストパターン形成用のインクであることが好ましい。
【0118】
<(1)の工程>
(1)の工程は、熱硬化性インクジェットインクをノズルから吐出して記録媒体に着弾させる工程である。(1)の工程では、本発明に係るインクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体である基板、例えばプリント回路基板上の、形成すべきレジスト膜に応じた位置に着弾させて、パターニングする。
【0119】
インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式とコンティニュアス方式のいずれでもよい。
オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型及びシェアードウォール型等の電気-機械変換方式、並びにサーマルインクジェット型及びバブルジェット(登録商標)(バブルジェットはキヤノン社の登録商標)型等の電気-熱変換方式等のいずれでもよい。
【0120】
インクの液滴を、加熱した状態でインクジェットヘッドから吐出することで、吐出安定性を高めることができる。吐出される際のインクの温度は、40~100℃の範囲内であることが好ましく、吐出安定性をより高めるためには、40~90℃の範囲内であることがより好ましい。特には、インクの粘度が7~15mPa・sの範囲内、より好ましくは8~13mPa・sの範囲内となるようなインク温度において射出を行うことが好ましい。
【0121】
ゲル化剤を含有するゾル・ゲル相転移型のインクを用いる場合は、インクジェットヘッドからのインクの吐出性を高めるために、インクジェットヘッドに充填されたときのインクの温度が、当該インクの(ゲル化温度+10)℃~(ゲル化温度+30)℃に設定されることが好ましい。インクジェットヘッド内のインクの温度が、(ゲル化温度+10)℃未満であると、インクジェットヘッド内若しくはノズル表面でインクがゲル化して、インクの吐出性が低下しやすい。一方、インクジェットヘッド内のインクの温度が(ゲル化温度+30)℃を超えると、インクが高温になりすぎるため、インク成分が劣化することがある。
【0122】
インクの加熱方法は、特に制限されない。例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプ及びヘッド直前の前室インクタンク等のインク供給系、フィルター付き配管並びにピエゾヘッド等の少なくともいずれかをパネルヒーター、リボンヒーター又は保温水等によって加熱することができる。
【0123】
吐出される際のインクの液滴量は、記録速度及び画質の面から、2~20pLの範囲内であることが好ましい。
【0124】
プリント回路基板は、特に限定されないが、例えば、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR-4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板、ステンレス鋼板等であることが好ましい。
【0125】
<(2)の工程>
(2)の工程では、着弾した熱硬化性インクジェットインクに、酸素濃度が0.1~10.0体積%の範囲内の雰囲気で活性光線を照射して仮硬化する。(2)の工程では、(1)の工程で着弾させたインクに活性光線を照射して、該インクを仮硬化する。
【0126】
活性光線は、例えば電子線、紫外線、α線、γ線、及びエックス線等から選択することができるが、好ましくは紫外線である。
紫外線の照射は、例えばPhoseon Technology社製の水冷LEDを用いて、波長395nmの条件下で行うことができる。LEDを光源とすることで、光源の輻射熱によってインクが溶けることによるインクの硬化不良を抑制することができる。
【0127】
紫外線の照射は、370~410nmの範囲内の波長を有する紫外線のレジスト膜表面におけるピーク照度が、好ましくは0.5~10W/cm2の範囲内、より好ましくは1~5W/cm2の範囲内となるように行う。輻射熱がインクに照射されることを抑制する観点からは、レジスト膜に照射される光量は500mJ/cm2未満であることが好ましい。
【0128】
本工程では、着弾したインクに、酸素濃度が0.1~10.0体積%の範囲内の雰囲気で活性光線を照射することで、インクを硬化させる。インクの硬化性を高める観点から、活性光線は、インク着弾後0.001~300秒の間に照射することが好ましく、より高精細な画像を形成する観点から、0.001~60秒の間に照射することがより好ましい。
【0129】
酸素濃度は、0.1~10.0体積%の範囲内である。ブルーミングをより生じにくくする観点からは、酸素濃度は0.5~8.0体積%の範囲内であることが好ましく、0.5~6.0体積%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0130】
<(3)の工程>
(3)の工程は、仮硬化した熱硬化性インクジェットインクを加熱して本硬化する工程である。(2)の仮硬化後、さらにインクを加熱して本硬化する。
【0131】
加熱方法は、例えば、110~180℃の範囲内に設定したオーブンに10~60分投入することが好ましい。
【0132】
なお、熱硬化性インクジェットインクは、前記したソルダーレジストパターン形成用のインクとして用いる他、電子部品用の接着剤や封止剤、回路保護剤などとして用いることもできる。
【実施例】
【0133】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0134】
[実施例1]
<イエロー顔料分散体の調製>
下記分散剤1及び分散剤2と、分散媒をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解し、室温まで冷却した後、これに下記顔料を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gとともにガラス瓶に入れ密栓した。これをペイントシェーカーにて、所望の粒径になるまで分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
【0135】
分散剤1:EFKA7701(BASF社製) 5.6質量部
分散剤2:Solsperse22000(日本ルーブリゾール社製)
0.4質量部
分散媒:ジプロピレングリコールジアクリレート(0.2%UV-10含有)
80.6質量部
顔料:PY185(BASF社製、パリオトールイエローD1155)
13.4質量部
【0136】
<シアン顔料分散体の調製>
前記イエロー顔料分散体の調製において、分散剤、分散媒及び顔料を下記に示すとおりに変更した以外は同様にして調製した。
【0137】
分散剤:EFKA7701(BASF社製) 7質量部
分散媒:ジプロピレングリコールジアクリレート(0.2%UV-10含有)
70質量部
顔料:PB15:4(大日精化製、クロモファインブルー6332JC)
23質量部
【0138】
<光重合性化合物>
光重合性化合物として、下記に示すものを用いた。
a1:トリプロピレングリコールジアクリレート(分子量300)
a2:トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296)
a3:ネオペンチルグリコールジアクリレート(分子量212)
a4:2PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(分子量328)
【0139】
<熱硬化性化合物>
熱硬化性化合物として、下記に示すものを用いた。
(ブロックイソシアネート(脂肪族ポリイソシアネート))
b1:trixeneBI7982(LANXESS社製)(分子量793)
b2:trixeneBI7961(LANXESS社製)(分子量793)
b3:EA-1010N(ビスフェノールA型エポキシアクリレート)(新中村化学社製)(分子量400)
b4:YD-127(新日鐵住金化学社製)(分子量793)
【0140】
(脂肪族エポキシド)
b5:4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(BMI-1000 日本化成社製)(分子量793)
【0141】
(マレイミド基を含む化合物)
b6:4,4′-ジフェニルメタンビスマレイミド(BMI-1000 大和化成工業社製)(分子量793)
【0142】
<光重合開始剤>
光重合性化合物として、下記に示すものを用いた。
(アシルホスフィン系開始剤)
c1:Omnirad TPO H(IGM社製)(分子量348)
c2:Omnirad 819(IGM社製)(分子量419)
(アミノアセトフェノン系開始剤)
c3:Omnirad 907(IGM社製)(分子量279)
c4:Omnirad 379(IGM社製)(分子量381)
(チオキサントン系開始剤)
c5:2-イソプロピルチオキサントン(ITX:分子量254)
c6:2,4-ジエチルチオキサントン(DETX:分子量268)
【0143】
<ゲル化剤>
ゲル化剤として、下記に示すものを用いた。
d1:ジステアリルケトン(分子量507)
d2:ベヘニン酸ベヘニル(分子量199)
【0144】
<インクジェットインクの調製>
イエロー顔料分散体3.0g及びシアン顔料分散体1.0gに加えて、下記表I~IIに記載のインク組成物を加えてインクジェットインクを調製し、ADVATEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブレンフィルターで濾過を行った。Physica社製粘弾性測定装置 MCR300、シェアレート1000(1/s)にて、各インクの80℃粘度及びゲル相転移温度を測定した。
【0145】
ここで、ゲル相転移温度は、降温速度0.1℃/s、歪み5%、角周波数10radian/s、降温速度0.1℃/sで温度変化させて得られる粘弾性曲線において、複素粘性率が1Pa以上となる温度を表す。
【0146】
本発明のインクの25℃での粘度はいずれも1~1×104Pa・sであるのに対し、比較例のインクはいずれも1Pa・s未満であった。
また、本発明のインクのゲル相転移温度はいずれも40~100℃の温度であったが、比較例のインクはゲル相転移現象が見られなかった。
【0147】
<インクジェットによるパターン形成>
調製した各インクジェットインクを、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッドを有するインクジェット記録装置に装填した。この装置を用いて、プリント配線板用銅張積層板上(FR-4 厚さ1.6mm、大きさ150mm×95mm)にパターン形成を行った。
【0148】
インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、金属フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなる。インクタンクからヘッド部分までインクを90℃に加温する。ピエゾヘッドにもヒーターを内蔵させ、記録ヘッド内のインク温度を90℃に加熱した。ピエゾヘッドは、ノズル径22μmで、ノズル解像度360dpiのヘッドを千鳥に配置して720dpiのノズル列を形成した。
【0149】
このインクジェット装置を用いて、液滴量が6.0plのドットになるように電圧を印加し、基板上に、20mm×50mmのベタパターンとライン&スペースが100μmの櫛型パターンを、それぞれ厚さが20μmになるように印字したのち、Phoseon Technology社製LEDランプ(395nm、8W/cm2、water cooled unit)を500mJ/cm2になるよう照射してインク層を仮硬化した。その後、150℃に設定したオーブンに60分投入し本硬化し、印字サンプルを得た。
【0150】
[評価]
<基板密着性>
作成した前記べタパターンの印字サンプルについて、硬化膜にJIS K5600のクロスカット法に準じて碁盤目状に切り込みをいれ、粘着テープを貼付けし、引きはがすことで硬化膜の剥離状態を観察し、下記方法で付着残留率を求め、下記基準にしたがって評価した。ここで付着残留率は切り込みをいれて作成したマス目の数を分母とし、テープ剥離に残留しているマス目の数を分子として算出される。
(基準)
6:付着残留率 100%
5:付着残留率 90%以上100%未満
4:付着残留率 70%以上90%未満
3:付着残留率 50%以上70%未満
2:付着残留率 25%以上50%未満
1:付着残留率 25%未満
【0151】
<表面タック性>
作成した前記べタパターンの印字サンプルについて、「JIS規格 K5701-1 6.2.3 耐摩擦性試験」に記載の方法に準じ、4cm2となる大きさに切り取った印刷用コート紙を画像上に設置し、500gの荷重をかけて擦り合わせた。その後、画像濃度低下の程度を目視観察し、下記の基準に従って評価した。結果を表3に示す。
【0152】
(基準)
4:50回以上擦っても、画像の変化、印刷用コート紙への着色はまったく認められない
3:50回以上擦っても、画像の変化は認められないが、印刷用コート紙への着色がみられる。
2:50回擦った段階で画像濃度の低下が認められるが、実用上許容範囲にある
1:50回未満の擦りで、明らかな画像濃度低下が認められ、実用に耐えない品質である
【0153】
<鉛筆硬度>
作成した前記べタパターンの印字サンプルについて、「JIS規格 K-5400」の記載方法に準じて表面の鉛筆硬度を測定した。評価は下記の基準で行った。
(基準)
5:鉛筆硬度6H以上
4:鉛筆硬度5H
3:鉛筆硬度4H
2:鉛筆硬度3H
1:鉛筆硬度2H以下
以上の結果を表I~IIに示す。
【0154】
【0155】
【0156】
表I~IIに示されるように、本発明の熱硬化性インクジェットインクは、比較例のインクに比べて、基板密着性、表面硬度及び表面タック性で優れていることが分かる。
【0157】
[実施例2]
<インクジェットインクの調製>
イエロー顔料分散体3.0g及びシアン顔料分散体1.0gに加えて、下記表III~Vに記載のインク組成物を加えてインクジェットインクを調製し、ADVATEC社製テフロン3μmメンブレンフィルターで濾過を行った。
【0158】
<インクジェットによるパターン形成>
調製した各インクジェットインクを、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッドを有するインクジェット記録装置に装填した。この装置を用いて、プリント配線板用銅張積層板上(FR-4 厚さ1.6mm、大きさ150mm×95mm)にパターン形成を行った。
【0159】
インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、金属フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなる。インクタンクからヘッド部分までインクを90℃に加温する。ピエゾヘッドにもヒーターを内蔵させ、記録ヘッド内のインク温度を90℃に加熱した。ピエゾヘッドは、ノズル径22μmで、ノズル解像度360dpiのヘッドを千鳥に配置して720dpiのノズル列を形成した。
【0160】
このインクジェット装置を用いて、液滴量が6.0plのドットになるように電圧を印加し、基板上に、20mm×50mmのベタパターンとライン&スペースが100μmの櫛型パターンを、それぞれ厚さが20μmになるように印字したのち、Phoseon Technology社製LEDランプ(395nm、8W/cm2、water cooled unit)を500mJ/cm2になるよう照射してインク層を仮硬化した。
【0161】
ただし、実施例1とは異なり、上記活性光線を照射するとき、酸素濃度を3.0体積%に制御しながら行った。
【0162】
酸素濃度は、国際公開2017/164164号の
図2に記載のように、インクジェットヘッドと光源との間にガス供給ノズルを設置して、窒素ガス発生装置(コフロック株式会社製、N2 IMPACT)を0.5MPa・sの圧力で接続し、窒素(N
2)ガスをフローさせることにより行った。
その後、150℃に設定したオーブンに60分投入し本硬化し、印字サンプルを得た。
【0163】
得られた印字サンプルについて、実施例1で示した評価を同様に行った。
得られた結果を、表III~Vに示す。
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
表III~Vに示されるように、本発明の印字方法によれば、ゲル化剤を含有しなくても、低酸素濃度の雰囲気で活性光線を照射して仮硬化する印字方法により表面硬化性を上げつつ、内部の重合度を抑えることで、高い表面硬度を有しながら、基板密着性と表面タック性の両立を可能とすることができ、比較例のインクに比べて、基板密着性、表面硬度及び表面タック性で優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明の熱硬化性インクジェットインクは、基板密着性に優れ表面硬度が高く表面タック性が良好な塗膜を形成することのできるため、プリント回路基板のソルダーレジスト等の公的に適用できる。