(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】生物汚損防止装置、生物汚損防止装置の構造的特徴を評価するための方法、及び同方法を実行するためのコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B63B 59/04 20060101AFI20241210BHJP
B63B 81/00 20200101ALI20241210BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B63B59/04 C
B63B81/00
B63B59/04 Z
G01N21/33
(21)【出願番号】P 2021555437
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 EP2020059145
(87)【国際公開番号】W WO2020201293
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-16
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ヒットブリンク ローラン ボードウィン
(72)【発明者】
【氏名】ニーセン エドュアルド マテウス ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】シュデラーロ アントニウス アドリアヌス ペトルス
(72)【発明者】
【氏名】ロス ルーディー
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/167629(WO,A1)
【文献】特開昭62-214093(JP,A)
【文献】特開平04-147031(JP,A)
【文献】特開2018-122105(JP,A)
【文献】国際公開第2018/114556(WO,A1)
【文献】特開2003-164881(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0005395(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 59/04
B63B 81/00
B63B 79/00
G01N 21/33
E02B 1/00
B08B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトと、活性化状態において生物汚損防止光を放射するように構成される生物汚損防止システムとを有する生物汚損防止装置であって、前記生物汚損防止システムは、前記オブジェクトに適用され、前記オブジェクトに対して位置決めされて固定される構造ユニットを備え、前記生物汚損防止システムはセンサシステムを有し、当該センサシステムは、前記生物汚損防止装置の構成に関する構造的特徴に関する測定データを取得するように構成さ
れ、前記構造的特徴が、前記オブジェクトおよび前記生物汚損防止システムのインタフェイスにおける構造的特徴である、生物汚損防止装置。
【請求項2】
前記構造的特徴が前記オブジェクトの構造的特徴である、請求項1に記載の生物汚損防止装置。
【請求項3】
前記構造的特徴が前記生物汚損防止システムの構造的特徴である、請求項1または2に記載の生物汚損防止装置。
【請求項4】
前記センサシステムが、前記オブジェクトおよび/もしくは前記構造ユニットの機械的変形を評価するように構成されたひずみゲージ、ならびに/または、前記オブジェクトの領域の機械的完全性を評価するように構成された超音波センサを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の生物汚損防止装置。
【請求項5】
前記センサシステムが、前記オブジェクトに対する前記構造ユニットの密着性および/または位置を評価するように構成される少なくとも1つのUVセンサを有する、請求項
1に記載の生物汚損防止装置。
【請求項6】
前記センサシステムが、前記生物汚損防止装置の或る領域の生物汚損の程度に関する測定データを取得するようにさらに構成される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の生物汚損防止装置。
【請求項7】
前記生物汚損防止装置において前記オブジェクトから離れるように前記生物汚損防止光を放射するように構成される、請求項1から
6のいずれか一項に記載の生物汚損防止装置。
【請求項8】
前記オブジェクトが船舶であり、前記構造ユニットが、前記船舶の船体の領域に適用される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の生物汚損防止装置。
【請求項9】
前記生物汚損防止システムの前記センサシステムから測定データを受信して処理し、前記測定データが関連する前記構造的特徴を表す出力を提供するように構成されたプロセッサを有する、請求項
8に記載の生物汚損防止装置。
【請求項10】
請求項1から
9に記載の生物汚損防止装置を得るためオブジェクトに生物汚損防止システムを適用する方法であって、前記構造ユニットを前記オブジェクトに対して位置決めして固定するステップを有する、方法。
【請求項11】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の生物汚損防止装置の前記構造的特徴を評価するための情報を取得する方法であって、
前記センサシステムから取得される測定データを受信して処理するステップと、
前記測定データが関係する前記構造的特徴を表す出力を提供するステップと、を有する方法。
【請求項12】
コンピュータにより実行され、当該コンピュータに請求項
11に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1に、本発明は、その活性化状態において生物汚損防止光を放射し、オブジェクトに適用されるように構成された生物汚損防止システムに関する。
【0002】
第2に、本発明はオブジェクトと、該オブジェクトに適用される生物汚損防止システムとを含む生物汚損防止構成に関し、該生物汚損防止システムは、その活性化状態において生物汚損防止光を放射するように構成される。
【0003】
第3に、本発明は上述した生物汚損防止構成において、生物汚損防止システムをオブジェクトに適用する方法に関する。
【0004】
第4に、本発明は、上述したような生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴を評価することに関連する情報を得る方法に関する。
【0005】
第5に、本発明は、コードがプロセッサ上で実行されるときに、プロセッサに上述の方法を実行させるコードを含むコンピュータプログラムに関する。
【0006】
第6に、本発明は、上述したような生物汚損防止構成の構造を設計することに関連する情報を得る方法に関する。
【背景技術】
【0007】
水性環境に一時的または永久的に暴露される様々な構造は、生物汚損しやすい。例えば、海洋環境(海水及び淡水の両方を含む)において、船舶、石油リグ、パイプライン、海上風力タービンのための支持構造、潮力/波力エネルギーを収穫するための構造等は、特に一時的又は永久的に水に曝される領域において、 それらの上で成長する生物に曝される。その結果、船舶の抗力が増加し、部品の移動が妨げられ、フィルタが詰まることがある。船舶の抗力に対する生物汚損の影響に関しては、生物汚損が燃料消費の40%までの増加を引き起こす可能性があることに留意されたい。
【0008】
一般に、生物汚損は、微生物、植物、藻類、小動物などが表面に蓄積することである。いくつかの推定によれば、4,000 を超える生物を含む1,800 種を超える種が生物汚損の原因である。したがって、生物汚損は、多種多様な生物によって引き起こされ、フジツボおよび海藻の表面への付着よりもはるかに多くのものを含む。生物汚損は、バイオフィルム形成および細菌付着を含むマイクロ汚損と、より大きな生物の付着を含むマクロ汚損とに分けられる。それらが定着するのを妨げるものを決定する別個の化学および生物学のために、生物はまた、硬質または軟質に分類される。硬質汚損生物には、フジツボ、外皮小体、軟体動物、多毛類および他の管虫などの石灰質生物、ならびにゼブライガイが含まれる。軟質汚損生物には、海藻、ハイドロイド、藻類およびバイオフィルム「粘菌」などの非石灰質生物が含まれる。これらの生物は一緒になって汚損コミュニティを形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、生物汚損は重大な問題を引き起こす。これらの問題に対処するために、様々な解決策が開発されてきた。例えば、船舶の船体から汚損生物を掻き取るように設計されたロボットが存在する。WO 2014/188347 A1は別の解決策、すなわち、生物汚損しやすい表面に生物汚損防止層を適用することを含む解決策を開示しており、ここで、生物汚損防止層は、該表面から紫外線を放射するように配置されている。このようにして、前記表面(すなわち、ここでは、紫外線が発する表面)上で生物が成長する危険性が低減される。あるいは生物汚損を受ける表面に紫外線を照射してもよく、ここで、WO 2014/188347 A1による解決策は通常、紫外線に対する透明性が低い水中の表面にとって好ましいことに留意されたい。一般に、Cタイプの紫外線、すなわちUV-C光は、生物汚損防止に関して有効であり、良好な結果が達成され得ることが知られている。
【0010】
国際公開第2017/167629号パンフレットは、生物汚損の程度を監視するために光学センサが設けられている生物汚損防止システムを開示している。UV放射線の量は、生物汚損の程度に依存して制御され、それによって、システムの使用の間のエネルギーを節約することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はオブジェクトと共に使用するための生物汚損防止システムに追加の機能、特に、生物汚損防止システムおよびオブジェクトの両方を含む生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴に関する測定データを取得する機能を帰属させることが可能であるという洞察を含む。このようにして、別個の手段を必要とせずに、オブジェクトの少なくとも1つの構造的特徴を評価/監視する方法が可能になるので、オブジェクトとともに生物汚損防止システムを使用することがさらに興味深くなることが達成される。また、本発明が適用される場合、生物汚損防止システムの少なくとも1つの構造的特徴、および/または生物汚損防止システムとオブジェクトとの実際の組み合わせの少なくとも1つの構造的特徴が、必要に応じて評価/監視され得ることが達成される。本発明は、全ての複雑すぎる手段を含まず、構造レベルで測定を実行するように構成された1つ以上のセンサ、および電力供給、データ伝送などに必要であり得る任意のさらなるコンポーネントを含むように、従来の生物汚損防止システムの設計を適合させることによって実施され得る。
【0012】
本発明の文脈において、用語「生物汚損防止装置の少なくとも1つの構造的特徴」は、生物汚損防止構成の構造の少なくとも1つの具体的態様に直接関連する少なくとも1つの特徴を指すものとして理解されるべきである。したがって、この用語は、生物汚損防止システムの構造の態様、例えば、オブジェクトの構造の態様、および生物汚損防止システムとオブジェクトとの組み合わせの構造の態様、例えば、生物汚損防止システムの少なくとも1つのユニットとオブジェクトとの間の結合に関する態様を包含する。上記のことから、「生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴」という用語は、生物汚損防止構成の構造および機械的性質の両方に関連する態様を少なくとも包含することになる。
【0013】
このような生物汚損防止構成の構造は、オブジェクトへの適用前の初期を含む、生物汚損防止構成の物理的および機械的特性に関連する。そのようなオブジェクトの構造は、最初に生物汚損防止構成がオブジェクトに適用される前、および生物汚損の前を含む、オブジェクトの物理的および機械的特性に関連する。生物汚損防止システムとオブジェクトとの組み合わせの構造は、生物汚損防止システムとオブジェクトとの間のインタフェイスに関連し、生物汚損に曝される前の最初のインタフェイス特性を含む。使用中、このインタフェイスは、オブジェクト表面が生物汚損防止構成によって覆われるので、生物汚損に曝されることは意図されていない。したがって、構造的特徴は、最初に、生物汚損防止構成の構造、またはオブジェクトの構造、またはオブジェクトと生物汚損防止構成との組み合わせの一部として確立される機械的特性である。それぞれの場合において、そのような構造的特徴は、生物汚損への暴露の前に、したがって生物汚損処理の前に、最初に確立される。次いで、例えば構造的損傷または腐食を検出するために、構造的特徴の進展を監視することができる。
【0014】
本発明は、生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴に関する測定データを取得するプロセスの任意の特定のタイミングに限定されない。このプロセスは、連続的な、継続的プロセスであってもよく、または、測定が規則的または不規則な間隔で、自動化された様式で、またはオンデマンドで実行される、不連続なプロセスであってもよい。
【0015】
本発明は、海洋構造物の分野を含む様々な分野に適用するのに適している。本発明による生物汚損防止システムを使用することができるオブジェクトの例には、船及び他の船舶、海洋ステーション、海上油又はガス設備、浮力装置、海上での風力タービンの支持構造、波/潮力エネルギーを収集するための構造、シーチェスト、水中工具等が含まれる。一般に、本発明は、海水中での使用のためのオブジェクトの文脈において適用されるのに適しているだけでなく、汚損生物を含むことが知られている任意のタイプの水中での使用のための任意のオブジェクトに関する利点を含み得ることに留意されたい。
【0016】
上記に示唆されるように、測定データがセンサシステムによって取得され得る、生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴は、オブジェクトの少なくとも1つの構造的特徴であり得る。例えば、センサシステムはオブジェクトの外面の状態を検査して、外面に対する任意の損傷を検出するように構成されてもよく、および/または、オブジェクトの部品の機械的完全性を評価する目的などのために、オブジェクトの中をさらに見下ろすように構成されてもよく、および/または、オブジェクトの突出コンポーネントが存在するかどうかを検査するように構成されてもよく、コンポーネントが存在することが分かった場合、実際に、コンポーネントとオブジェクトの残りの部分との間の任意の考え得る結合が無傷であるかどうかを検査するように構成されてもよい。センサシステムの多数の他の実現可能な機能も利用可能であり、本発明によってもカバーされる。
【0017】
センサシステムが、オブジェクトおよび/もしくは生物汚損防止システムの少なくとも1つの構造ユニットの機械的変形を評価するように構成された少なくとも1つのひずみゲージ、ならびに/または、例えば、オブジェクトの少なくとも1つの領域の機械的完全性を評価するように構成された少なくとも1つの超音波センサを備えることが実用的であり得る。上述したようなひずみゲージの可能な使用に関して、オブジェクトの機械的変形に関する情報を得ることが望ましい場合には、オブジェクトに直接的にひずみ測定を実行することによって直接的に、および/または、オブジェクトに適用される生物汚損防止システムにおいてひずみ測定を実行することによって間接的に、これを行うことができることに留意されたい。言及されるような超音波センサは、例えば、オブジェクトの金属カバー等上の溶接継ぎ目の状態を評価するために使用され得る。
【0018】
一般に、センサシステムは、少なくとも1つの構造的特徴についてオブジェクトを検査するための任意の適切なタイプのセンサを備えることができ、より一般的には、センサシステムは、オブジェクトおよび/または生物汚損防止システム(の少なくとも1つの構造ユニット)、および/または少なくとも1つの構造的特徴についてオブジェクトと生物汚損防止システムとの間の構造的相互作用を検査するための任意の適切なタイプのセンサを備えることができる。この点に関して、センサシステムによって測定データを得ることができる生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴がオブジェクトの少なくとも1つの構造的特徴であるという選択肢に加えて、またはそれに代わるものとして、本発明は、前述の少なくとも1つの構造的特徴が生物汚損防止システムの少なくとも1つの構造的特徴であること、および、前述の少なくとも1つの構造的特徴がオブジェクトと生物汚損防止システムのインタフェイスにおける生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴であるという選択肢のうち少なくとも1つをカバーするものであることに留意されたい。
【0019】
少なくとも1つの構造的特徴がオブジェクトと生物汚損防止システムとのインタフェイスにおいてチェックされるべき場合、センサシステムが、オブジェクトに対する生物汚損防止システムの少なくとも1つの構造ユニットの密着性および/または位置を評価するように構成された少なくとも1つのUVセンサを備えることが実用的であり得る。これは、例えば、生物汚損防止システムの構造ユニットがオブジェクトから分離し始めると、オブジェクトと構造ユニットとのインタフェイスにおける紫外線の反射の検出可能な変化を引き起こす可能性があるという洞察に基づく。
【0020】
センサシステムはさらに、生物汚損防止構成の少なくとも或る領域の生物汚損の程度に関する測定データを取得するように構成されてもよい。例えば、前述したように、オブジェクトに対する生物汚損防止システムの少なくとも1つの構造ユニットの密着性および/または位置を評価するために使用されるUVセンサは、生物汚損検査を実行する際の追加の機能を有することができる。生物汚損防止構成において最小限のコンポーネントを有することが非常に有利であり得る。それにもかかわらず、本発明はまた、少なくとも1つのセンサが生物汚損防止構成における少なくとも1つの構造的特徴のチェックを実行するために専用であり、少なくとも1つの他のセンサが、構成における1つ以上の領域における生物汚損の程度のチェックを実行するために専用であるというオプションを包含する。
【0021】
本発明による生物汚損防止システムは、少なくとも2つの別個の構造ユニットを含むことが実用的であり得る。多数の構造ユニットを有する選択肢が有利であり得る場合の例は、オブジェクトが大きな寸法の表面を有し、生物汚損防止システムがその表面に適用される場合である。言及された構造ユニットは、例えば、生物汚損防止システムの厚さ方向に垂直な2つの直交方向、すなわち表面に沿った2つの方向に実質的にサイズ制限されてもよく、この場合、構造ユニットは、生物汚損防止タイルと呼ばれてもよく、または生物汚損防止システムの厚さ方向に垂直な一方向のみに実質的にサイズ制限されてもよく、この場合、構造ユニットは生物汚損防止ストリップと呼ばれてもよい。生物汚損防止タイルおよびストリップは、それらが箔様の外観を有し得るように非常に薄くてもよい。
【0022】
生物汚損防止システムの任意の構造ユニットは、任意の適切な設計のものであってもよい。例えば、少なくとも1つの構造ユニットは、生物汚損防止光に対して透明な材料のスラブを含むことができる。材料のスラブは、活性化された状態で1つ以上の光源から発する光を輸送/ガイドする機能を有してもよく、任意の適切な表面構造を有する光取り出し面を含んでもよい。そのような場合、1つ以上の光源は、任意の適切な態様で材料のスラブに関連付けられてもよい。例えば、1つまたは複数の光源が材料のスラブ内に埋め込まれることは実用的であり得る。これは、システムが生物汚損防止構成においてオブジェクトから離れるように生物汚損防止光を放射するように構成された本発明による生物汚損防止システムの一実施形態を実現する1つの態様である。
【0023】
生物汚損防止光は、紫外線、特にUV-Cタイプの紫外線であることができるが、これは、他のタイプの生物汚損防止光が本発明によってカバーされないことを意味しない。生物汚損防止システムは、任意の適切なタイプの1つ以上の光源を含んでもよい。例えば、生物汚損防止システムは、活性化されて光を放射することができる材料の層を含むことができる。他方、生物汚損防止システムは、LEDのような多数の別個の発光体を含むことが可能である。
【0024】
前述によれば、本発明は、オブジェクトと、当該オブジェクトに適用される生物汚損防止システムとを含む生物汚損防止構成にも関し、生物汚損防止システムは、その活性化状態で生物汚損防止光を放射するように構成され、生物汚損防止システムは、生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴に関する測定データを取得するように構成されたセンサシステムを備えることに留意されたい。前述の生物汚損防止システムの詳細は、生物汚損防止構成の文脈において等しく適用可能である。オブジェクトは、任意の形状およびサイズであってもよく、任意のタイプの材料を含んでもよい。例えば、オブジェクトは、生物汚損防止システムの少なくとも1つの構造ユニットが適用される導電性表面を含んでもよく、その場合、オブジェクトは、生物汚損防止システムを作動させるために使用され得る電力を輸送する機能を有してもよく、生物汚損防止システムは、コイルシステムまたは生物汚損防止システムに電力を供給することを可能にするように構成される任意の他のシステムを装備してもよい。オブジェクトの1つの実用的な例は船舶であり、その場合、生物汚損防止システムの少なくとも1つの構造ユニットは、船舶の船体の少なくとも或る領域の位置で船舶に適用されてもよい。
【0025】
本発明による生物汚損防止構成の実際の実施形態では、当該構成は、生物汚損防止システムのセンサシステムから測定データを受信し、処理し、測定データが関連する生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴を表す出力を提供するように構成されたプロセッサを備える。出力は、何らかの種類のアクションが取られる必要があるかどうかを決定するために、および/または、そのような構成の将来の実施形態を改善するために使用されることができる生物汚損防止構成の構造の設計態様に関する知識を得るために、自動化された態様で、および/または、1人以上の人によって、解釈されることができる。
【0026】
別の態様では、本発明は、上述したような生物汚損防止構成においてオブジェクトに生物汚損防止システムを適用する方法であって、生物汚損防止システムの少なくとも1つの構造ユニットがオブジェクトに対して位置決めされ、固定される方法に関する。
【0027】
さらに、本発明は、上述のような生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴を評価することに関連する情報を取得する方法に関し、生物汚損防止システムのセンサシステムから取得された測定データを受信して処理するステップと、測定データに関連する生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴を表す出力を提供するステップとを含む。プロセッサ上でコードが実行されるときに、このプロセッサに上記の情報取得方法を実行させるためにコードを含むコンピュータプログラムも本発明の対象である。
【0028】
さらに、本発明は、上述のような生物汚損防止構成の構造を設計することに関連する情報を取得する方法に関し、少なくとも2つの異なる実際の生物汚損防止構成に関して上述の情報取得方法を実行することによって、少なくとも2つの異なる実際の生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴を表す出力を取得するステップと、少なくとも2つの異なる実際の生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴を表す出力を処理するステップと、少なくとも2つの異なる実際の生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴の傾向を表す出力を提供するステップとを含む。そのような方法は、少なくともその構造的側面に関する限り、生物汚損防止構成の実際的な設計、すなわち、オブジェクト、生物汚損防止システムおよび/またはオブジェクトと生物汚損防止システムとの間のインタフェイス/結合の実際的な設計をどのように改善することができるかを決定することを目的とするプロセスの一部として適用されることができる。
【0029】
本発明の文脈において、データ収集システムが、生物汚損防止構成の一部である生物汚損防止システムのセンサシステムによって得られる生物汚損防止構成の少なくとも1つの構造的特徴に関連する測定データおよび/またはそのようなデータに基づく情報を収集/記憶するために使用されてもよい。
【0030】
本発明の上記および他の態様は、オブジェクトと、オブジェクトに適用され、その活性化状態で生物汚損防止光を放射するように構成された生物汚損防止システムとを含む生物汚損防止構成の基本的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになり、それを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明は、図面を参照してより詳細に説明され、図面において、等しい又は類似の部分は同じ参照符号によって示される。
【
図1】船舶と船体に配置された生物汚損防止システムの断面図。
【
図2】船体と生物汚損防止システムの一部を拡大して示す図。 説明のために、生物汚損防止システムは、図面において誇張して厚く描かれている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面を参照すると、本発明による生物汚損防止構成1の実現可能な実施形態は、船10と、船体11上に配置された生物汚損防止システム20とを備えることに留意されたい。船体11の位置では、船体11上の生物汚損の形成を回避し、それによって船舶10の抗力の増加を回避するために、船舶10は生物汚損防止作用を受けることになる。特に、生物汚損防止装置1は、連続的に、または時々、光放射に基づいて船舶10に生物汚損防止作用を有するように設計され、良好な生物汚損防止効果を達成するために、光は紫外線、特にUV-C光であってもよいことに留意されたい。
【0033】
上述したように、生物汚損防止システム20は、船体11上に配置されている。生物汚損防止システム20は、例えば、WO 2014/188347 A1から知られているような、オブジェクトから離れる方向に生物汚損防止光を放射することによって、オブジェクトに対する生物汚損防止効果を実現するのに使用するのに適したタイプのシステムであってもよい。このようなシステムは、生物汚損防止光を生成するように構成された多数の光源21を含むことができる。このような光源21の実用例は、UV-C LEDである。
【0034】
生物汚損防止システム20は、生物汚損防止光に対して透明であり、例えば、光源21を埋め込むか、または別の方法で光源21を支持する構造的機能を有することができ、船体11の領域を覆うように構成されることができる材料を含むことができる。この透明の材料は、様々なスラブで提供されてもよく、その場合、生物汚損防止システム20は、例えば、
図2に示されるように、タイルまたはストリップなどの構造ユニット22の集合として実現されてもよく、透明材料のスラブの厚さは非常に薄く、ミリメートルのオーダーであることができ、そのため、スラブは、通常、箔片と呼ばれことができる。光源21の動作中、透明材料は生成された生物汚損防止光を船体11に沿って輸送する機能を有することができ、生物汚損防止光が船体11を横切って多かれ少なかれ均等に広がることを保証し、すなわち、生物汚損防止光が様々な位置で船10から離れる方向に光ガイドからアウトカップリング(outcouple)される光ガイドとして機能することができる。内部全反射のような現象が、透明な材料を通しての光の輸送に寄与することができる。透明材料の実用的な例は、シリコーン材料である。
【0035】
一般に、生物汚損を受ける表面は必ずしも平面/平坦であるとは限らず、代わりに、1つ以上の方向に湾曲している場合があり、1つ以上の凸状の湾曲領域および/または凹状の湾曲領域を含んでいる場合がある。船体11は、曲面の一例である。さらに、突出部が表面上に配置されてもよく、この突出部は、生物汚損防止システム20の一部であってもなくてもよい。船舶10の文脈における突出部の例としては、
図2に示されるように、船体11上のフィン(図示せず)、船体11上の溶接継ぎ目12、および、水中に浮遊する樹幹のような外部オブジェクトの衝撃に対して生物汚損防止システム20を保護するように配置された突出部(図示せず)が挙げられる。
【0036】
本発明の注目すべき態様によれば、生物汚損防止システム20は、生物汚損防止構成1の少なくとも1つの構造的特徴に関する測定データを取得するように構成されたセンサシステム30を備える。生物汚損防止システム20が複数の構造ユニット22を含む場合には、これらのユニット22の各々に、1つまたは複数のセンサ31と、センサ31に電力を供給するための手段などの関連する手段とが設けられるようにすることができる。しかしながら、これは必ずしも必要ではなく、また、センサシステム30が、ただ1つまたは限られた数の構造ユニット22に現れるようにすることもできる。いずれの場合も、それは、1つ以上のセンサ31および/またはセンサシステム30の1つ以上の他のコンポーネントが、生物汚損防止システム20(の構造ユニット22)に一体化されるようなものであってもよい。例えば、生物汚損防止システム20が透明材料のスラブを含むと仮定すると、センサ31および/または他のコンポーネントは、これらのスラブのうちの1つ以上に埋め込まれてもよい。生物汚損防止システム20のセンサシステム30は、評価されるべき生物汚損防止構成1の構造的特徴の数および種類に応じて、ただ1つのタイプのセンサまたは少なくとも2つの異なるタイプのセンサを備えることができる。
【0037】
生物汚損防止システム20のセンシング機能を実際に実現するために必要な電力供給は、任意の適切な態様で実現することができ、同じことが、生物汚損防止システム20の光放射機能に関してあてはまる。
図2に示すように、生物汚損防止構成1は、センサシステム30から測定データを受信し、処理し、測定データが関連する生物汚損防止構成1の少なくとも1つの構造的特徴を表す出力を提供するためのプロセッサ32をさらに備えることができる。さらに、測定データおよび/またはプロセッサ32からの出力を受信し、記憶するために、データ収集システム33を備えることができる。
図2には、様々なデータ伝送の可能性が破線および矢印によって示されている。プロセッサ32およびデータ収集システム33は、オプションとしてさらなるコンポーネントを含むことができるデータ分析システム34の一部である。
【0038】
本発明は、生物汚損防止構成1の少なくとも1つの構造的特徴に関する測定データを得る目的でセンサシステム30を使用する場合に、多種多様な可能性を提供する。いくつかの実用的な例を以下に列挙する。
【0039】
第1に、センサシステム30は、船舶10の少なくとも1つの構造的特徴に関する測定データを得るように構成されることができる。特定の状況の下で、船10が変形する態様についての情報、1つ以上の領域で金属疲労が生じるか否かについての情報、1つ以上の領域にヘアクラックが存在するか否かについての情報、および/または、船体11上の溶接継ぎ目12の状態についての情報などを有することが望ましい場合がある。
【0040】
第2に、センサシステム30は、生物汚損防止システム20の少なくとも1つの構造的特徴に関する測定データを取得するように構成されてもよい。例えば、構造ユニット22が変形および/または損傷しているかどうかに関する情報を有することが望ましい場合がある。このような場合、生物汚損防止システム20は、システムの状態を構造レベルで評価する場合に、自己診断機能を有するシステムとして示されてもよい。
【0041】
第3に、センサシステム30は、船舶10と生物汚損防止システム20とのインタフェイスにおける生物汚損防止構成1の少なくとも1つの構造的特徴に関する測定データを取得するように構成されることができる。例えば、生物汚損防止システム20が依然として船体11に対して正しい位置にあり、船体11に適切に取り付けられているかどうかについての情報を有することが望ましい場合がある。
【0042】
センサシステム30は、1つまたは複数の適切な種類のセンサを備えることができ、想定される1つまたは複数の機能を実現するために必要な数のセンサ31を含むことができる。センサ31は、任意の可能なサイズの領域、限定された数の領域、または或る範囲の領域上で、特定の方向、限定された数の方向、または或る範囲の方向にセンシング動作を実行するように構成されてもよい。センサシステム30によって、定期的または不定期的に、自動化されたやり方で、または要求に応じて、生物汚損防止構成1の1つまたは複数の重要な構造的特徴の連続的な監視プロセスおよび/または単一のチェックを実行することが可能である。生物汚損防止システム20は生物汚損防止装置1の1つ以上の領域、例えば生物汚損防止システム20の外面に生物汚損堆積物が存在するかどうかをチェックする機能を有することが有益であり、そうことが分かった場合には、実際に、生物汚損の定量的要因を決定する機能を有することが有益である。そのために、生物汚損防止システム20は、別のセンサシステム(図示せず)を備えることができ、または、生物汚損防止構成1の少なくとも1つの構造的特徴に関する測定データを取得するように構成されたセンサシステム30に含まれる1つまたは複数のセンサ31は、二重機能を有することができ、すなわち、生物汚損防止構成1の少なくとも1つの構造的特徴に関する測定データを取得することと生物汚損測定データを取得することとの両方に使用されるのに適していることができる。この点において、UVセンサは、生物汚損防止システム20の構造ユニット22の船体11への付着を構造ユニット22の片側で確認するため、および構造ユニット22の反対側で構造ユニット22の生物汚損をチェックするために適用されるのに適しているので、上述のような二重機能を有し得るセンサの一例であることに留意されたい。
【0043】
本発明の枠組みにおいて、センサシステム30が動作されるときに得られる測定データは、任意の適切な態様でさらに使用されてもよく、測定データを処理することが実用的であり得るが、これは特定の場合には測定データの直接的な解釈が同様に可能であり得るという事実を変更しない。測定データは生物汚損防止構成1の実際の状態を決定するため、または1つまたは複数の構造的態様の将来の状態を予測するために使用され得るだけでなく、設計レベルで生物汚損防止構成1の構造的態様を改善する可能性を生み出すことができるように、様々な構造的測度に関連する傾向を発見することを目的としたプロセスで使用されてもよい。
【0044】
本発明の範囲は、前述の例に限定されず、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、そのいくつかの修正および変更が可能であることは当業者には明らかであろう。本発明は、特許請求の範囲またはその均等物の範囲内に入る限り、そのようなすべての修正および変更を含むものと解釈されることが意図される。本発明が図面および詳細な説明において詳細に図示および説明されてきたが、そのような図示および説明は単なる例示であり、限定するものではないと考えられるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。図面は概略的であり、本発明を理解するために必要とされない詳細は省略されており、必ずしも縮尺通りではない。
【0045】
開示された実施形態に対する変形例は、図面、説明、および添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、達成されることができる。特許請求の範囲において、単語「有する」は他のステップ又は要素を除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。請求項におけるいかなる参照符号も、発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0046】
特定の実施形態のために、または特定の実施形態に関連して説明される要素および態様は、特に断らない限り、他の実施形態の要素よび態様と適切に組み合わせることができる。したがって、特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0047】
本文中で使用される用語「有する」は、用語「から成る」をカバーするものとして当業者に理解されるのであろう。したがって、用語「有する」は実施形態に関して、「から成る」ことを意味することができるが、別の実施形態では「少なくとも定義された種、および任意に1つ以上の他の種を含む」ことを意味する場合がある。
【0048】
本発明の注目すべき態様は、以下のように要約することができる。生物汚損防止の文脈では生物汚損防止システム20が提供され、これはその活性化された状態で生物汚損防止光を放出し、オブジェクト10に適用されるように構成される。さらに、生物汚損防止システム20は、生物汚損防止システム20がオブジェクト10上の適所にある実際の場合に、生物汚損防止システム20とオブジェクト10の両方を含む生物汚損防止構成1の少なくとも1つの構造的特徴に関する測定データを取得するように構成されたセンサシステム30を備える。生物汚損防止システム20において言及されるようなセンサシステム30を有する利点の1つは、生物汚損防止システム20が、いずれにしても、生物汚損防止構成1へとオブジェクト10と組み合わされることが意図され、したがって、そのような機能を満たすための別個の手段を必要とせずに、そのような生物汚損防止構成1の1つまたは複数の構造的態様を検査/監視する目的で使用され得るという洞察にある。