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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 23/20 20060101AFI20241210BHJP
   C03B 35/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B65B23/20
C03B35/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021563878
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2020044707
(87)【国際公開番号】W WO2021117555
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2019222808
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】桐畑 福三
(72)【発明者】
【氏名】塩路 拓也
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100119(JP,A)
【文献】特開2014-201449(JP,A)
【文献】特開2005-170399(JP,A)
【文献】特開2007-173364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 23/20
C03B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の製造方法であって、
第一梱包室で、ガラス板と保護シートとをパレットに積載する積載工程と、
前記第一梱包室から第二梱包室に、前記ガラス板と前記保護シートとが積載された前記パレットを搬出する搬出工程と
前記第二梱包室で、前記パレットに積載された前記ガラス板と前記保護シートとを保護部材で覆う最終梱包工程とを備え、
前記第一梱包室の気圧を前記第二梱包室の気圧よりも高くすることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記第二梱包室の気圧を大気圧よりも高くする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記積載工程は、保護シート供給室に配置された保護シートロールから引き出された帯状シートを前記保護シート供給室から前記第一梱包室に供給する工程と、前記第一梱包室に供給された前記帯状シートを所定長さに切断して前記保護シートを得る工程とをさらに含む請求項1又は2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記保護シート供給室の気圧を大気圧よりも高くする請求項3に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記保護シート供給室の気圧を前記第一梱包室の気圧と略同じにする請求項3又は4に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記保護シート供給室は、前記第一梱包室の上に位置する請求項3~5のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記第一梱包室内の気体及び/又は前記保護シート供給室内の気体を、フィルタ部を備えた空調機を介して循環させる請求項3~6のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのディスプレイ用の基板をはじめとする様々な分野において、ガラス板が使用されている。
【0003】
この種のガラス板の製造工程では、まず、オーバーフローダウンドロー法やフロート法などの公知の方法により、帯状のガラスリボンを連続的に成形する。次に、ガラスリボンを所定の長さ毎に幅方向に切断し、ガラスリボンからガラス板を切り出す。その後、切り出されたガラス板は、搬送装置により搬送経路上を搬送される。この搬送経路上で、例えば、ガラス板の耳部を除去する工程や、ガラス板の欠陥の有無などを検査する工程などが必要に応じて実施される。そして、このような各種工程を経た後に、搬送装置の搬送経路の下流端では、積載装置により、ガラス板と保護シートとがパレットに積載される。そして、このようにガラス板と保護シートとが積載されたパレットに対して、例えばガラス板の位置ずれ規制部材などを取り付けることで、ガラス板梱包体が作製される。作製されたガラス板梱包体は、保管あるいは輸送(出荷)される(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-30744号公報
【文献】特開2019-89674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガラス板と保護シートとをパレットに積載するための梱包室は、ガラス板に対する異物(パーティクル)の付着を防止するために清浄な空間である必要がある。しかしながら、梱包室の気圧が正しく管理されていなければ、屋外の気体(空気)及び当該気体に含まれる異物が梱包室に流入し、ガラス板及び/又は保護シートに異物が付着するおそれがある。そして、異物が付着したガラス板や保護シートがパレットに積載されると、ガラス板と保護シートとの接触面に異物が持ち込まれ、ガラス板に異物が圧着したり擦り傷が生じたりするなどの不具合が生じ得る。
【0006】
本発明は、ガラス板と保護シートとをパレットに積載する際に、ガラス板と保護シートとの接触面に異物が持ち込まれるのを確実に抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ガラス板の製造方法であって、第一梱包室で、ガラス板と保護シートとをパレットに積載する積載工程と、第一梱包室から第二梱包室に、ガラス板と保護シートとが積載されたパレットを搬出する搬出工程とを備え、第一梱包室の気圧を第二梱包室の気圧よりも高くすることを特徴とする。
【0008】
このようにすれば、梱包室が第一梱包室と第二梱包室とに分割される。そして、ガラス板と保護シートとをパレットに積載する第一梱包室の気圧が、第二梱包室の気圧よりも高く設定される。そのため、第二梱包室の気体や当該気体に含まれる異物が、第一梱包室に流入するのを抑制できる。つまり、第一梱包室を第二梱包室よりも清浄に保つことができる。したがって、第一梱包室でガラス板と保護シートとをパレットに積載する際に、ガラス板と保護シートとの接触面に異物が持ち込まれるのを確実に抑制できる。
【0009】
上記の構成において、第二梱包室の気圧を大気圧よりも高くすることが好ましい。
【0010】
このようにすれば、第二梱包室に外部(例えば屋外)から気体や異物が流入するのを抑制できる。つまり、外部からの異物の流入が抑制されるため、第二梱包室の清浄性を確保しやすくなる。また、外部からの気体の流入が抑制されるため、第二梱包室の気圧の管理も容易となる。
【0011】
上記の構成において、積載工程は、保護シート供給室に配置された保護シートロールから引き出された帯状シートを保護シート供給室から第一梱包室に供給する工程と、第一梱包室に供給された帯状シートを所定長さに切断して保護シートを得る工程とをさらに含んでいてもよい。
【0012】
このようにすれば、保護シートロールが配置された保護シート供給室を、第一梱包室と別室にすることができる。したがって、第一梱包室でガラス板が割れた場合でも、そのガラス粉が、保護シート供給室内の保護シートロールや帯状シートに付着しにくくなる。
【0013】
上記の構成において、保護シート供給室の気圧を大気圧よりも高くすることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、保護シート供給室に外部(例えば屋外)から気体や異物が流入するのを抑制できる。つまり、外部からの異物の流入が抑制されるため、保護シート供給室の清浄性も確保しやすくなる。また、外部からの気体の流入が抑制されるため、保護シート供給室の気圧の管理も容易となる。
【0015】
上記の構成において、保護シート供給室の気圧を第一梱包室の気圧と略同じにすることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、第一梱包室と保護シート供給室との間に、気圧差に伴う気流(例えば上昇気流)が形成されるのを抑制できる。したがって、帯状シートが気流によって揺れて帯状シートの供給不良や切断不良が生じるのを抑制できる。
【0017】
上記の構成において、保護シート供給室は、第一梱包室の上に位置することが好ましい。
【0018】
空間中を浮遊するガラス粉などのパーティクル(微小異物)は、重力によって上から下に移動する傾向がある。そのため、上記のように第一梱包室の上に保護シート供給室を位置させれば、第一梱包室のパーティクルが保護シート供給室に流入しにくくなり、保護シート供給室内の保護シートロールや帯状シートを清浄な状態に維持しやすくなる。
【0019】
上記の構成において、第一梱包室内の気体及び/又は保護シート供給室内の気体を、フィルタ部を備えた空調機を介して循環させることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、第一梱包室内の気体及び/又は保護シート供給室内の気体を循環させると共に、その清浄度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガラス板と保護シートとをパレットに積載する際に、ガラス板と保護シートとの接触面に異物が持ち込まれるのを確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一実施形態に係るガラス板の製造装置の概略側面図である。
図2】本発明の第二実施形態に係るガラス板の製造装置の概略側面図である。
図3】本発明の第三実施形態に係るガラス板の製造装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0024】
(第一実施形態)
図1に示すように、第一実施形態に係るガラス板の製造装置1は、オーバーフローダウンドロー法によってガラス板Gを製造する装置であり、建屋の一部を構成する。
【0025】
本製造装置1は、切断室2と、第一梱包室3と、第二梱包室4と、保護シート供給室5と、予備室6とを備える。各室2~6は、外部からの汚染物質をある程度遮断できる空間を区画形成する室(例えばクリーンルーム)である。
【0026】
本実施形態では、切断室2、第一梱包室3及び第二梱包室4が建屋の同一フロアに配置され、保護シート供給室5及び予備室6が建屋の同一フロアに配置される。保護シート供給室5及び予備室6が配置されたフロアは、切断室2、第一梱包室3及び第二梱包室4が配置されたフロアの上階であり、このうち、保護シート供給室5は、第一梱包室3の真上に配置されている。
【0027】
切断室2と第一梱包室3との間、第一梱包室3と第二梱包室4との間、及び保護シート供給室5と予備室6との間は、仕切り部材としての開閉可能な扉7,8,9によって仕切られている。
【0028】
切断室2では、まず、第一切断装置(図示省略)により、オーバーフローダウンドロー法により製造された帯状のガラスリボンを所定長さ毎に切断し、枚葉状のガラス板Gを得る。次に、切断室2では、第二切断装置(図示省略)により、ガラス板Gの耳部(厚肉部)を含む幅方向両端部を切断する。
【0029】
第一梱包室3では、積載装置(図示省略)により、縦姿勢のガラス板Gと縦姿勢の保護シートSとがパレットTに積載される。これにより、ガラス板Gと保護シートSとを含むガラス板積層体LがパレットT上に載置される。なお、切断室2と第一梱包室3との間に検査室を設け、ガラス板GをパレットTに積載する前に、検査室内で検査装置(図示省略)により、ガラス板Gを検査してもよい。検査装置は、例えば、ガラス板Gの偏肉(板厚)、筋(脈理)、欠陥の種類(例えば、泡、異物など)・位置(座標)・大きさなどを測定する。
【0030】
第一梱包室3には、天井に給気装置10aが設けられ、床面に排気装置11aが設けられている。給気装置10aによる給気量と、排気装置11aによる排気量とを調整することにより、第一梱包室3の気圧が調整される。第一梱包室3の気圧は、圧力センサ12aにより測定される。
【0031】
第二梱包室4には、第一梱包室3で、ガラス板積層体Lが載置されたパレットTが搬入される。第二梱包室4では、最終梱包工程が行われ、ガラス板積層体Lが載置されたパレットTから最終的なガラス板梱包体Xが得られる。最終梱包工程は、例えば、パレットTに対してガラス板Gの位置ずれを規制する位置規制部材(図示省略)を取り付ける工程や、ガラス板積層体Lに異物が付着するのを防止するために、ガラス板積層体Lを保護部材Cで覆う工程などを含む。位置規制部材は、例えば、ガラス板積層体Lの最前面に配置される押さえ板と、この押さえ板をパレットT側に押圧するベルトとを備える。保護部材Cとしては、例えば、ガラス板積層体Lに被せる保護袋や、ガラス板積層体Lに巻かれる保護フィルムなどが使用できる。なお、第二梱包室4には、ガラス板梱包体Xや空のパレットTが保管される。
【0032】
第二梱包室4には、天井に給気装置10bが設けられ、床面に排気装置11bが設けられている。給気装置10bによる給気量と、排気装置11bによる排気量とを調整することにより、第二梱包室4の気圧が調整される。第二梱包室4の気圧は、圧力センサ12bにより測定される。なお、第二梱包室4の給気装置10b及び排気装置11bは省略してもよい。
【0033】
保護シート供給室5には、保護シートロールSrが配置されている。保護シートロールSrは、保護シートSの元となる帯状シートSwを巻芯Rの周囲にロール状に巻いたものである。帯状シートSw(保護シートS)としては、例えば発泡樹脂シートや合紙などが使用できる。保護シートロールSrから引き出された帯状シートSwは、保護シート供給室5と第一梱包室3とを連通するように保護シート供給室5の床面に設けられた貫通孔13を通じて、保護シート供給室5から第一梱包室3に供給される。第一梱包室3では、切断装置(図示省略)により、帯状シートSwを所定長さ毎に切断し、枚葉状の保護シートSを得る。このようにして得られた保護シートSは積載装置によりパレットTに積載される。
【0034】
保護シート供給室5には、天井に給気装置10cが設けられ、床面に排気装置11cが設けられている。給気装置10cによる給気量と、排気装置11cによる排気量とを調整することにより、保護シート供給室5の気圧が調整される。保護シート供給室5の気圧は、圧力センサ12cにより測定される。
【0035】
予備室6は、例えば保護シート供給室5に新しい保護シートロールSrを搬入する際に利用される。予備室6には、エレベータが設けられている。
【0036】
予備室6の気圧は、圧力センサ12dにより測定される。なお、本実施形態では、予備室6には、気圧を調整するための給気装置及び排気装置は設けられていないが、第一梱包室3などと同様に、給気装置及び排気装置が設けられていてもよい。
【0037】
なお、上記の給気装置10a~10cは、気体流路上にフィルタ部(図示省略)を備えることが好ましい。これにより、室内に清浄な気体を給気できる。同様に、上記の排気装置11a~11cには、気体流路上にフィルタ部を備えることが好ましい。これにより、室外に清浄な気体を排気できる。給気装置10a~10cのフィルタ部としては、例えば、粗塵用フィルタ、中性能フィルタ(例えば、MEPAフィルタ等)、高性能フィルタ(例えば、HEPAフィルタ、ULPAフィルタ等)などが使用できる。
【0038】
次に、本実施形態に係るガラス板の製造方法を説明する。本製造方法は、上記の製造装置1を用いて、ガラス板Gを製造する方法である。
【0039】
図1に示すように、本製造方法は、第一梱包室3で、ガラス板Gと保護シートSとをパレットTに積載する積載工程と、第一梱包室3から第二梱包室4に、ガラス板Gと保護シートSとが積載されたパレットT、つまりガラス板積層体Lが載置されたパレットTを搬出する搬出工程と、第二梱包室4で、ガラス板積層体Lが載置されたパレットTから最終的なガラス板梱包体Xを得る最終梱包工程とを備える。
【0040】
積層工程は、保護シート供給室5に配置された保護シートロールSrから引き出された帯状シートSwを保護シート供給室5から貫通孔13を通じて第一梱包室3に供給する供給工程と、第一梱包室3に供給された帯状シートSwを所定長さ毎に切断して保護シートSを得る切断工程とをさらに含む。
【0041】
そして、このような各工程を行う間、つまりガラス板Gの製造工程を行う間、第一梱包室3、第二梱包室4及び保護シート供給室5の気圧は、次のように管理される。
【0042】
すなわち、第一梱包室3の気圧P1は、第二梱包室4の気圧P2よりも高く設定される。
【0043】
詳細には、第一梱包室3の気圧P1と第二梱包室4の気圧P2との差圧(P1-P2)は、例えば、3~10Paであることが好ましく、5~8Paであることがより好ましい。差圧(P1―P2)は、例えば、給気装置10a,10b及び排気装置11a,11bにより管理される。
【0044】
このようにすれば、ガラス板Gと保護シートSとをパレットTに積載する第一梱包室3の気圧P1が、第二梱包室4の気圧P2よりも高く設定される。そのため、第二梱包室4の気体や当該気体に含まれる異物が第一梱包室3に流入するのを抑制できる。つまり、第一梱包室3を第二梱包室4よりも清浄に保つことができる。したがって、第一梱包室3でガラス板Gと保護シートSとをパレットTに積載する際に、ガラス板Gと保護シートSとの接触面に異物が持ち込まれるのを確実に抑制できる。なお、ガラス板Gと保護シートSとをパレットTに積層した後は、ガラス板Gと保護シートSとが互いに接触しているため、ガラス板Gと保護シートSとの接触面に外部から異物は持ち込まれにくくなる。
【0045】
保護シート供給室5の気圧P3は、予備室6の気圧P4よりも高く設定される。本実施形態では、予備室6には、気圧を管理する装置は配置されておらず、外気と連通するエレベータなどが設けられているため、予備室6の気圧P4は大気圧である。したがって、保護シート供給室5の気圧P4は、大気圧よりも高く設定される。
【0046】
詳細には、保護シート供給室5の気圧P3と予備室6の気圧P4(大気圧)との差圧(P3-P4)は、例えば、1~10Paであることが好ましく、2~7Paであることがより好ましい。差圧(P3-P4)は、例えば、給気装置10c及び排気装置11cにより管理される。
【0047】
このようにすれば、保護シート供給室5に予備室6を通じて屋外の気体や異物が流入するのを抑制できる。つまり、屋外からの異物の流入が抑制されるため、保護シート供給室5の清浄性も確保しやすくなる。また、屋外からの気体の流入が抑制されるため、保護シート供給室5の気圧の管理も容易となる。
【0048】
保護シート供給室5の気圧P3は、第一梱包室3の気圧P1と略同じに設定される。
【0049】
詳細には、保護シート供給室5の気圧P3と第一梱包室3の気圧P1との差圧(P3-P1)は、例えば、-1~1Paであることが好ましく、-0.2~0.2Paであることがより好ましく、0~0.2Paであることが最も好ましい。差圧(P3―P1)は、例えば、給気装置10a,10c及び排気装置11a,11cにより管理される。
【0050】
このようにすれば、第一梱包室3と保護シート供給室5との間の貫通孔13近傍に、気圧差に伴う気流(例えば上昇気流)が形成されるのを抑制できる。したがって、帯状シートSwが気流によって揺れて、帯状シートSwの供給不良や切断不良が生じるのを抑制できる。なお、帯状シートSwの供給不良や切断不良は、貫通孔13近傍に上昇気流が生じたときにより生じやすいため、保護シート供給室5の気圧P3と第一梱包室3の気圧P1との差圧(P3-P1)は、0Pa以上であることが好ましい。
【0051】
第二梱包室4の気圧P2は、大気圧よりも高く設定される。
【0052】
詳細には、第二梱包室4の気圧P2と大気圧PAとの差圧(P2-PA)は、例えば、0.5~10Paであることが好ましく、2~6Paであることがより好ましい。差圧(P2-PA)は、例えば、給気装置10b及び排気装置11bにより管理される。
【0053】
このようにすれば、第二梱包室4に屋外から気体や異物が流入するのを抑制できる。つまり、屋外からの異物の流入が抑制されるため、第二梱包室4の清浄性を確保しやすくなる。また、屋外からの気体の流入が抑制されるため、第二梱包室4の気圧の管理も容易となる。
【0054】
なお、各室3~6の気圧及び/又は各室3~6の差圧は、特に限定されるものではなく適宜変更できる。また、差圧は、圧力センサ12a~12dの測定結果に基づいて求められるが、差圧計で直接測定してもよい。
【0055】
(第二実施形態)
図2に示すように、第二実施形態に係るガラス板の製造装置1が、第一実施形態と相違するところは、第一梱包室3内の気体及び保護シート供給室5内の気体を、空調機(エアハンドリングユニット)21により循環させている点である。
【0056】
詳細には、本実施形態では、第一梱包室3及び保護シート供給室5に共通の空調機21が接続されている。空調機21は、気体(空気)を第一梱包室3及び保護シート供給室5側に送り出すための送風機(ブロアー)22と、送風機22で送り出された気体中の異物を取り除くためのフィルタ部23とを内部に備えている。フィルタ部23は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、気体を取り込む側(送風機22側)から順に、粗塵用フィルタ23aと、中性能フィルタ(例えば、MEPAフィルタ等)23bと、高性能フィルタ(例えば、HEPAフィルタ、ULPAフィルタ等)23cとを備えている。なお、図示は省略するが、空調機21は、給気する気体の温度及び/又は湿度を調整するための温湿度調整部(例えば、温水コイル、冷却コイル、加湿ノズル、エリミネータ等)を内部にさらに備えていてもよい。
【0057】
空調機21の気体を取り込む側には、外気を取り込むための外気ダクト24と、第一梱包室3内の気体及び保護シート供給室5内の気体を、排気装置(排気口)11a,11cから取り込むための還気ダクト25,26とが接続されている。また、空調機21の気体を給気する側には、清浄な気体を給気装置(給気口)10a,10cから第一梱包室3内及び保護シート供給室5内に給気するための給気ダクト27,28が接続されている。
【0058】
このように空調機21を設けることで、第一梱包室3内の気体及び保護シート供給室5内の気体の循環が行われると共に、これら気体の清浄度が向上するという利点がある。つまり、ガラス板積層体Lやその梱包体Xに異物が付着するのをより確実に抑制できる。
【0059】
(第三実施形態)
図3に示すように、第三実施形態に係るガラス板の製造装置1が、第二実施形態と相違するところは、第一梱包室3内の気体を循環させる第一空調機31と、保護シート供給室5内の気体を循環させる第二空調機32とを、別々に設けた点である。
【0060】
第一空調機31及び第二空調機32の内部構造は、第二実施形態の空調機21の内部構造と同じである。
【0061】
第一空調機31の気体を取り込む側には、外気を取り込むための外気ダクト33と、第一梱包室3内の気体を排気装置(排気口)11aから取り込むための還気ダクト34とが接続されている。また、第一空調機31の気体を給気する側には、清浄な気体を給気装置(給気口)10aから第一梱包室3内に給気するための給気ダクト35が接続されている。
【0062】
同様に、第二空調機32の気体を取り込む側には、外気を取り込むための外気ダクト36と、保護シート供給室5内の気体を排気装置(排気口)11cから取り込むための還気ダクト37とが接続されている。また、第二空調機32の気体を給気する側には、清浄な気体を給気装置(給気口)10cから保護シート供給室5内に給気するための給気ダクト38が接続されている。
【0063】
このように第一空調機31及び第二空調機32を設けることで、第一梱包室3内の気体と、保護シート供給室5内の気体とを別々に管理できる。第一梱包室3で主に発生する異物は、保護シートSなどの梱包材の粉とガラス粉とである。一方、保護シート供給室5で主に発生する異物は、保護シートSなどの梱包材の粉であり、ガラス粉をほとんど含んでいない。したがって、第一梱包室3と保護シート供給室5とで発生する異物が異なるため、上述のように別々に管理することが好ましい。また、別々の空調機31,32とすることで、共通の空調機を使用する場合に比べて、個々の空調機を小型化できる。また、それぞれの空調機31,32のダクトの配管構造も簡単にできる。したがって、設備コスト面でも有利になる。
【0064】
本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
上記の実施形態では、天井に設けられた給気装置10a~10cと、床面に設けられた排気装置11a~11cとにより、各室3~5の気圧を管理する場合を例示したが、各室3~5の気圧を管理する気圧管理機構はこれに限定されない。例えば、気圧管理機構は、給気装置のみを備える構成でもよい。また、気圧管理機構の位置も、天井や床面に限定されるものではなく適宜変更できる。
【0066】
上記の実施形態では、第一梱包室3において、縦姿勢のガラス板Gと縦姿勢の保護シートSとを縦置き用のパレットTに積載する場合を例示したが、横姿勢のガラス板Gと横姿勢の保護シートSとを横置き(平置き)用のパレットに積載してもよい。
【0067】
上記の実施形態では、保護シート供給室5が第一梱包室3の上に位置する場合を例示したが、保護シート供給室5と第一梱包室3との位置関係はこれに限定されない。例えば、保護シート供給室5が第一梱包室3の下に位置していてもよい。また、保護シート供給室5を省略し、保護シートロールSrを第一梱包室3に配置してもよい。
【0068】
上記の実施形態では、第一梱包室3において、ガラス板G及び保護シートSをパレットTに積載し、ガラス板積層体Lが載置されたパレットTを得る積載工程を行い、第二梱包室4において、ガラス板積層体Lが載置されたパレットTに位置規制部材を取り付けたり、ガラス板積層体Lを保護部材Cで覆ったりすることにより、ガラス板梱包体Xを得る最終梱包工程を行う場合を例示したが、各室3,4での梱包作業の内容はこれに限定されない。例えば、第一梱包室3に十分なスペースがある場合などには、第一梱包室3で上記の積載工程及び最終梱包工程を行ってもよい。この場合、第二梱包室4では、集荷前のガラス板梱包体Xが保管される。なお、通常は、第一梱包室3には、積載装置の作業スペース以外の余分なスペースがないことが多い。そのため、製造効率を考慮すると、一つのパレットTの積載工程が完了した後は、ガラス板積層体Lが載置されたパレットTを第二梱包室4に搬出し、第一梱包室3における積載装置の作業スペースには、空のパレットTを直ぐに配置することが好ましい。
【0069】
上記の実施形態では、帯状シートSwを所定長さ毎に切断して保護シートSを得る場合を例示したが、事前に枚葉式の保護シートSを準備してもよい。この場合、積層工程は、前述の供給工程及び切断工程に代え、保護シートSを保護シート供給室5から貫通孔13を通じて第一梱包室3に供給する工程を含む。
【0070】
上記の実施形態において、第一梱包室3の気圧P1は、切断室2の気圧P0よりも高く設定されることが好ましい。これにより、切断室2で発生するガラス粉などの異物が第一梱包室3に流入するのを抑制できる。
【0071】
上記の第二実施形態及び第三実施形態では、第一梱包室3内の気体及び保護シート供給室5内の気体を、空調機21,31,32により循環させる場合を説明したが、空調機により気体を循環させる構成は、第一梱包室3内のみでもよく、または保護シート供給室5内のみに設けられてもよく、さらに、第二梱包室4、予備室6、検査室などの他の場所に適用してもよい。各室における給気口及び排気口の位置や個数は特に限定されず、各室の大きさや要求される気体の清浄度等に応じて適宜変更できる。
【0072】
上記の実施形態では、オーバーフローダウンドロー法によりガラスリボンを成形する場合を説明したが、スロットダウンドロー法、リドロー法、フロート法等の他の公知の成形方法によりガラスリボンを成形するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 ガラス板の製造装置
2 切断室
3 第一梱包室
4 第二梱包室
5 保護シート供給室
6 予備室
10a~10c 給気装置
11a~11c 排気装置
12a~12d 圧力センサ
13 貫通孔
21,31,32 空調機(エアハンドリングユニット)
G ガラス板
C 保護部材
S 保護シート
T パレット
X ガラス板梱包体
図1
図2
図3