(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置及び移動体
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20241210BHJP
B60K 35/235 20240101ALI20241210BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/235
(21)【出願番号】P 2021574076
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2021002846
(87)【国際公開番号】W WO2021153616
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2020014838
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐治 俊輔
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/009217(WO,A1)
【文献】特開2017-056933(JP,A)
【文献】米国特許第09690098(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23 - 35/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面(23)に表示される画像(M)に対応する画像光を射出する表示器(21)と、
前記表示器(21)からの前記画像光を、被投影部を介して車両内の視域(200)に向け、
前記視域(200)内から見た表示領域(100)内で前記画像(M)の虚像を視認させるリレー光学系(25)と、を備え、
前記表示領域(100)は、上端部(111;121)と、下端部(113:123)と、前記上端部(111)と前記下端部(113)との間の中心部(112;122)と、を含み、
前記視域(200)内の所定の目位置(200s)から見た前記上端部(111)及び前記下端部(113)は、所定の基準平面(300)よりも前記視域(200)に近い位置に配置され、前記所定の目位置(200s)から見た前記中心部(112)は、前記基準平面(300)よりも前記視域(200)から遠い位置に配置される第1曲面形状(110)、又は
前記所定の目位置(200s)から見た前記上端部(121)及び前記下端部(123)は、所定の基準平面(300)よりも前記視域(200)から遠い位置に配置され、前記所定の目位置(200s)から見た前記中心部(122)は、前記基準平面(300)よりも前記視域(200)に近い位置に配置される第2曲面形状(120)であり、
前記目位置(200s)から前記上端部(111;121)までの輻輳角と、前記目位置(200s)から前記上端部(111;121)を通過する前記基準平面(300)上の第1点(301)までの輻輳角との第1輻輳角差(P11:P21)、
前記目位置(200s)から前記中心部(112;122)までの輻輳角と、前記目位置(200s)から前記中心部(112;122)を通過する前記基準平面(300)上の第2点(302)までの輻輳角との第2輻輳角差(P12;P22)、及び
前記目位置(200s)から前記下端部(113;123)までの輻輳角と、前記目位置(200s)から前記下端部(113;123)を通過する前記基準平面(300)上の第3点(303)までの輻輳角との第3輻輳角差(P13;P23)、のそれぞれが4ミリラジアン以内になるような前記基準平面(300)を有するように、形成される、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記表示領域(100)は、
前記視域(200)の上端(201)から見ると、上端部(111)が前記基準平面(300)よりも前記視域(200)に近い位置に配置され、前記下端部(113)と前記中心部(112)が前記基準平面(300)よりも前記視域(200)から遠い位置に配置される、及び/又は、
前記視域(200)の下端(203)から見ると、下端部(113)が前記基準平面(300)よりも前記視域(200)に近い位置に配置され、前記上端部(111)と前記中心部(112)が前記基準平面(300)よりも前記視域(200)から遠い位置に配置される、ように形成される、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記表示領域(100)は、
視域(200)の上端(201)から見ると、上端部(121)が前記基準平面(300)よりも視域(200)に遠い位置に配置され、前記下端部(123)と前記中心部(122)が前記基準平面(300)よりも視域(200)に近い位置に配置される、及び/又は、
視域(200)の下端(203)から見ると、下端部(123)が前記基準平面(300)よりも視域(200)より遠い位置に配置され、前記上端部(121)と前記中心部(122)が前記基準平面(300)よりも視域(200)に近い位置に配置される、ように形成される、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記所定の目位置(200s)は、前記視域(200)の中心(202)と下端(203)との間に配置され、
前記表示領域(100)は、
前記所定の目位置(200s)からの前記第1輻輳角差(P11)、前記第2輻輳角差(P12)、及び前記第3輻輳角差(P13)、
が等しくなるように、形成される、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記表示領域(100)は、前記車両の進行方向に対して非平行となる前記基準平面(300)を有するように、前記上端部(111;121)、前記中心部(112;122)、及び前記下端部(113;123)が配置されるように形成される、
請求項4に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記表示領域(100)は、前記視域(200)から見て、上側が下側より遠方に配置されるように、傾いて配置される前記基準平面(300)を有するように、前記上端部(111;121)、前記中心部(112;122)、及び前記下端部(113;123)が配置されるように形成される、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
表示面(23)に表示される画像(M)に対応する画像光を射出する表示器(21)と、
被投影部材(2)と、
前記表示器(21)からの前記画像光を、前記被投影部材(2)を介して車両内の視域(200)に向け、
前記視域(200)内から見た表示領域(100)内で前記画像(M)の虚像を視認させるリレー光学系(25)と、を備え、
前記表示領域(100)は、上端部(111;121)と、下端部(113:123)と、前記上端部(111)と前記下端部(113)との間の中心部(112;122)と、を含み、
前記視域(200)内の所定の目位置(200s)から見た前記上端部(111)及び前記下端部(113)は、所定の基準平面(300)よりも前記視域(200)に近い位置に配置され、前記所定の目位置(200s)から見た前記中心部(112)は、前記基準平面(300)よりも前記視域(200)から遠い位置に配置される第1曲面形状(110)、又は
前記所定の目位置(200s)から見た前記上端部(121)及び前記下端部(123)は、所定の基準平面(300)よりも前記視域(200)から遠い位置に配置され、前記所定の目位置(200s)から見た前記中心部(122)は、前記基準平面(300)よりも前記視域(200)に近い位置に配置される第2曲面形状(120)であり、
前記目位置(200s)から前記上端部(111;121)までの輻輳角と、前記目位置(200s)から前記上端部(111;121)を通過する前記基準平面(300)上の第1点(301)までの輻輳角との第1輻輳角差(P11:P21)、
前記目位置(200s)から前記中心部(112;122)までの輻輳角と、前記目位置(200s)から前記中心部(112;122)を通過する前記基準平面(300)上の第2点(302)までの輻輳角との第2輻輳角差(P12;P22)、及び
前記目位置(200s)から前記下端部(113;123)までの輻輳角と、前記目位置(200s)から前記下端部(113;123)を通過する前記基準平面(300)上の第3点(303)までの輻輳角との第3輻輳角差(P13;P23)、のそれぞれが4ミリラジアン以内になるような前記基準平面(300)を有するように、形成される、
移動体。
【請求項8】
前記表示領域(100)は、
前記視域(200)の上端(201)から見ると、上端部(111)が前記基準平面(300)よりも前記視域(200)に近い位置に配置され、前記下端部(113)と前記中心部(112)が前記基準平面(300)よりも前記視域(200)から遠い位置に配置される、及び/又は、
前記視域(200)の下端(203)から見ると、下端部(113)が前記基準平面(300)よりも前記視域(200)に近い位置に配置され、前記上端部(111)と前記中心部(112)が前記基準平面(300)よりも前記視域(200)から遠い位置に配置される、ように形成される、
請求項7に記載の移動体。
【請求項9】
前記表示領域(100)は、
前記視域(200)の上端(201)から見ると、上端部(121)が前記基準平面(300)よりも前記視域(200)に遠い位置に配置され、前記下端部(123)と前記中心部(122)が前記基準平面(300)よりも前記視域(200)に近い位置に配置される、及び/又は、
前記視域(200)の下端(203)から見ると、下端部(123)が前記基準平面(300)よりも前記視域(200)より遠い位置に配置され、前記上端部(121)と前記中心部(122)が前記基準平面(300)よりも前記視域(200)に近い位置に配置される、ように形成される、
請求項7に記載の移動体。
【請求項10】
前記所定の目位置(200s)は、前記視域(200)の中心(202)と下端(203)との間に配置され、
前記表示領域(100)は、
前記所定の目位置(200s)からの前記第1輻輳角差(P11)、前記第2輻輳角差(P12)、及び前記第3輻輳角差(P13)、
が等しくなるように、形成される、
請求項7に記載の移動体。
【請求項11】
前記表示領域(100)は、前記車両の進行方向に対して非平行となる前記基準平面(300)を有するように、前記上端部(111;121)、前記中心部(112;122)、及び前記下端部(113;123)が配置されるように形成される、
請求項10に記載の移動体。
【請求項12】
前記表示領域(100)は、前記視域(200)から見て、上側が下側より遠方に配置されるように、傾いて配置される前記基準平面(300)を有するように、前記上端部(111;121)、前記中心部(112;122)、及び前記下端部(113;123)が配置されるように形成される、
請求項7に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントウインドシールドやコンバイナ等に虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントウインドシールドやコンバイナ等の反射透光部材を透過する実景(車両前方の風景)に重ねて、その反射透光部材に反射された画像光により虚像を生成して表示するヘッドアップディスプレイ装置は、車両を運転する観察者の視線移動を極力抑えつつ、観察者が所望する情報を虚像により提供することによって、安全で快適な車両運行に寄与する。
【0003】
フロントウインドシールド(被投影部材)は、曲面であるため、この曲面に投影された画像には、歪みが生じる。また、ヘッドアップディスプレイ装置は、光学的パワーを有するリレー光学系を有しており、これらリレー光学系と、被投影部材と、により、画像を拡大した虚像を観察者に視認させている。すなわち、リレー光学系と被投影部材とで、虚像光学系を形成しているとも言える。観察者の目位置が異なると、その目位置に到達する画像光の光路が異なる、すなわち、虚像光学系により画像光に付加される光学的パワーも異なる。したがって、観察者の目位置の変化に応じても、画像の歪みが生じる。
【0004】
特許文献1には、虚像光学系で生じてしまう歪みと逆となる歪みを付加した画像を事前に生成する(事前歪み処理を実行する)ことで、虚像として視認される際には、歪みの少ない画像を知覚させるヘッドアップディスプレイ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
虚像光学系で生じてしまう歪みは、観察者から見た左右方向の歪みと、上下方向の歪みだけではなく、奥行方向の歪みも生じ得る。例えば、虚像全体を1つの平面上に表示させたい場合でも、この奥行方向の歪みが大きい場合、観察者が知覚する虚像は、平面上にあるように知覚されず、違和感を与えることが想定される。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、奥行き方向の歪みを認識しにくい画像の虚像を表示することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを課題としている。具体的には、視域内で目位置が異なる場合でも、奥行き方向の歪みを認識しにくい画像の虚像を表示することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のヘッドアップディスプレイ装置の態様では、画像光を射出する表示面を有する表示器と、表示器21からの画像光を、被投影部を介して車両内の視域に向け、視域内から見た表示領域内で画像の虚像を視認させるリレー光学系と、を備え、表示領域は、上端部と、下端部と、上端部と下端部との間の中心部と、を含み、視域内の所定の目位置から見た上端部及び下端部は、所定の基準平面よりも視域に近い位置に配置され、所定の目位置から見た中心部は、基準平面よりも視域から遠い位置に配置される第1曲面形状、又は所定の目位置から見た上端部及び下端部は、所定の基準平面よりも視域から遠い位置に配置され、所定の目位置から見た中心部は、基準平面よりも視域に近い位置に配置される第2曲面形状であり、目位置から上端部までの輻輳角と、目位置から上端部を通過する基準平面上の第1点までの輻輳角との第1輻輳角差、目位置から中心部までの輻輳角と、目位置から中心部を通過する基準平面上の第2点までの輻輳角との第2輻輳角差、及び目位置から下端部までの輻輳角と、目位置から下端部を通過する基準平面上の第3点までの輻輳角との第3輻輳角差、のそれぞれが4ミリラジアン以内になるように、形成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の移動体用の表示システムが設けられた車両を示す説明図である。
【
図2】
図2は、
図1のヘッドアップディスプレイ装置の構成を示す説明図である。
【
図4A】
図4Aは、第1実施形態の移動体用の表示システムにおける、視域の所定の位置にある両目から表示領域の上端部に向けた輻輳角と、この上端部と重なる基準平面上の第1点に向けた輻輳角と、を示す。
【
図4B】
図4Bは、第1実施形態の移動体用の表示システムにおける、視域の所定の位置にある両目から表示領域のミドル領域に向けた輻輳角と、このミドル領域と重なる基準平面上の第2点に向けた輻輳角と、を示す。
【
図4C】
図4Cは、第1実施形態の移動体用の表示システムにおける、視域の所定の位置にある両目から表示領域の下端部に向けた輻輳角と、この下端部と重なる基準平面上の第3点に向けた輻輳角と、を示す。
【
図5A】
図5Aは、第1実施形態の移動体用の表示システムにおける、視域の視域下部から見た際の表示領域の配置を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、第1実施形態の移動体用の表示システムにおける、視域の視域上部から見た際の表示領域の配置を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の移動体用の表示システムにおける、表示領域の配置を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の移動体用の表示システムが設けられた車両を示す説明図である。
【
図8】
図8は、
図7のヘッドアップディスプレイ装置の構成を示す説明図である。
【
図9A】
図9Aは、第2実施形態の移動体用の表示システムにおける、視域の所定の位置にある両目から表示領域の上端部に向けた輻輳角と、この上端部と重なる基準平面上の第1点に向けた輻輳角と、を示す。
【
図9B】
図9Bは、第2実施形態の移動体用の表示システムにおける、視域の所定の位置にある両目から表示領域のミドル領域に向けた輻輳角と、このミドル領域と重なる基準平面上の第2点に向けた輻輳角と、を示す。
【
図9C】
図9Cは、第2実施形態の移動体用の表示システムにおける、視域の所定の位置にある両目から表示領域の下端部に向けた輻輳角と、この下端部と重なる基準平面上の第3点に向けた輻輳角と、を示す。
【
図10A】
図10Aは、第2実施形態の移動体用の表示システムにおける、視域の視域下部から見た際の表示領域の配置を示す図である。
【
図10B】
図10Bは、第2実施形態の移動体用の表示システムにおける、視域の視域上部から見た際の表示領域の配置を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の移動体用の表示システムにおける、表示領域の配置を示す図である。
【
図12A】
図12Aは、第1実施形態のリレー光学系と表示面との配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1ないし
図6、
図12A、及び
図12Bでは、第1実施形態の移動体用の表示システム、及びヘッドアップディスプレイ装置の構成の説明を提供する。また、
図7ないし
図11では、第2実施形態の移動体用の表示システム、及びヘッドアップディスプレイ装置の構成の説明を提供する。
なお、本発明は以下の実施形態(図面の内容も含む)によって限定されるものではない。下記の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略する。
【0011】
図1を参照する。移動体用の表示システム10は、HUD(Head-UP DisPlay)装置20と、HUD装置20を制御する表示制御装置30と、被投影部材2と、で構成される。
図1では、本実施形態に係る移動体用表示システムが、自動車に採用された場合が示されているが、自動車に限らず、移動体における表示装置に採用することが可能である。なお、本実施形態の説明では、車両1の運転席に着座する観察者(典型的には、車両1の運転者。)が車両1の前方を向いた際の左右方向をX軸(左方向がX軸正方向)、上下方向をY軸(上方向がY軸正方向)、前後方向をZ軸(前方向がZ軸正方向)とする。
【0012】
HUD装置20は、画像光40をフロントウインドシールド(被投影部材2の一例である。)に向けて出射し、被投影部材2は、HUD装置20が表示する画像Mの画像光40を視域200へ反射する。観察者は、視域200内に目位置4を配置することで、被投影部材2を介して視認される現実空間である前景に重なる位置に、HUD装置20が表示する画像Mの虚像を視認することができる。
【0013】
本実施形態の説明で用いる「視域」とは、(1)領域内では表示領域100内の画像Mの虚像の全てが視認でき、領域外では画像Mの虚像の少なくとも一部が視認されない領域、(2)領域内では画像Mの虚像の全てが所定の輝度以上で視認でき、領域外では画像Mの虚像の一部が前記所定の輝度未満である領域、又は(3)HUD装置20が立体視可能な虚像を表示可能である場合、領域内では虚像の少なくとも一部が立体視でき、領域外では虚像の一部分も立体視されない領域である。すなわち、観察者の目位置4を視域200外に配置すると、観察者は、画像Mの虚像の一部が視認できない、画像Mの虚像の一部の視認性が非常に低く知覚しづらい、又は画像Mの虚像が立体視できない。前記所定の輝度とは、例えば、視域の中心で視認される画像Mの虚像の輝度に対して1/50程度である。
【0014】
図2は、本実施形態のHUD装置20の構成を示す図である。HUD装置20は、画像を表示する表示面を有する表示器21と、リレー光学系25と、を含む。
【0015】
図2の表示器21は、プロジェクタ22(画像生成部の一例)と、プロジェクタ22からの投影光を受光して画像(実像)を表示するスクリーン(表示面23の一例)と、で構成されるプロジェクション型ディスプレイである。なお、表示器21は、LCDなどのバックライトからの光を透過する透過型ディスプレイ(画像生成部の一例)であってもよく、自発光型ディスプレイ(画像生成部の一例)であってもよい。これらの場合、表示面は、透過型ディスプレイにおけるディスプレイ表面(表示面23の一例)であり、プロジェクション型ディスプレイのスクリーン(表示面23の一例)である。前記表示面は、前記表示面から、後述のリレー光学系25及び被投影部材2を介して前記視域(前記視域の中央)へ向かう画像光40の光軸40pに対し垂直になる角度から傾いて配置され、これにより、表示領域100を路面310に沿うように配置することもできる。
【0016】
また、表示器21は、表示制御装置30により制御されるモータなどを含む不図示のアクチュエータが取り付けられ、表示面23を移動、及び/又は回転可能であってもよい。
【0017】
リレー光学系25は、表示器21と被投影部材2との間の表示器21からの画像の光(表示器21から前記視域へ向かう光。)の光路上に配置され、表示器21からの画像の光をHUD装置20の外側の被投影部材2に投影する1つ又はそれ以上の光学部材で構成される。
図2のリレー光学系25は、1つの凹状の第1ミラー26と、1つの平面の第2ミラー27と、を含む。なお、本実施形態では、リレー光学系25は、2つのミラーを含んでいたが、これに限定されるものではなく、これらに追加又は代替で、1つ又はそれ以上の、レンズなどの屈折光学部材、ホログラムなどの回折光学部材、反射光学部材、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0018】
リレー光学系25は、視域200を上下方向(Y軸方向)に移動させる2つの回転軸(第1の回転軸AX1、第2の回転軸AX2)を有する。第1の回転軸AX1、第2の回転軸AX2それぞれは、HUD装置20が車両1に取り付けられた状態で、車両1の左右方向(X軸方向)と垂直とならない(換言すると、YZ平面と平行にならない)ように設定される。具体的には、第1の回転軸AX1、第2の回転軸AX2は、車両1の左右方向(X軸方向)との間の角度が、45[degree]未満に設定され、さらに好ましくは、20[degree]未満に設定される。
【0019】
第1の回転軸AX1でのリレー光学系25の回転によれば、表示領域100の上下方向の移動量が比較的小さく、視域200の上下方向の移動量が比較的大きい。また、第2の回転軸AX2でのリレー光学系25の回転によれば、表示領域100の上下方向の移動量が比較的大きく、視域200の上下方向の移動量が比較的小さい。すなわち、第1の回転軸AX1と第2の回転軸AX2とを対比すると、第1の回転軸AX1の回転による『視域200の上下方向の移動量/表示領域100の上下方向の移動量』は、第2の回転軸AX2の回転による『視域200の上下方向の移動量/表示領域100の上下方向の移動量』より大きくなる。言い換えると、第1の回転軸AX1でのリレー光学系25の回転による表示領域100の上下方向の移動量と視域200の上下方向の移動量との相対量が、第2の回転軸AX2でのリレー光学系25の回転による表示領域100の上下方向の移動量と視域200の上下方向の移動量との相対量とが異なる。
【0020】
HUD装置20は、第1の回転軸AX1で第1ミラー26を回転させる第1アクチュエータ28と、第2の回転軸AX2で第1ミラー26を回転させる第2アクチュエータ29と、を含む。言い換えると、HUD装置20は、1つのリレー光学系25を2つの軸(第1の回転軸AX1、第2の回転軸AX2)で回転させる。なお、第1アクチュエータ28と第2アクチュエータ29は、統合された1つの2軸アクチュエータで構成されてもよい。
【0021】
また、他の実施形態におけるHUD装置20は、2つのリレー光学系25を2つの軸(第1の回転軸AX1、第2の回転軸AX2)で回転させる。例えば、HUD装置20は、第1の回転軸AX1で第1ミラー26を回転させる第1アクチュエータ28と、第2の回転軸AX2で第2ミラー27を回転させる第2アクチュエータ29と、を含んでいてもよい。
【0022】
なお、第1の回転軸AX1の回転により、視域200の上下方向の移動量が比較的大きくなり、第2の回転軸AX2の回転により、表示領域100の上下方向の移動量が比較的大きくなるのであれば、第1の回転軸AX1と第2の回転軸AX2との配置は、これらに限定されない。また、アクチュエータによる駆動は、回転に加えて又は代えて、移動を含んでいてもよい。
【0023】
また、他の実施形態におけるHUD装置20は、リレー光学系25を駆動しなくてもよい。換言すると、HUD装置20は、リレー光学系25を回転、及び/又は回転させるアクチュエータを有していなくてもよい。この実施形態のHUD装置20は、車両1の使用が想定される運転者の目高さのレンジをカバーする広い視域200を備え得る。
【0024】
図3は、移動体用の表示システム10のブロック図である。表示制御装置30は、1つ又は複数のI/Oインタフェース31、1つ又は複数のプロセッサ33、1つ又は複数の画像処理回路35、及び1つ又は複数のメモリ37を備える。
図3に記載される様々な機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれら両方の組み合わせで構成されてもよい。
【0025】
図示するように、プロセッサ33及び画像処理回路35は、メモリ37と動作可能に連結される。より具体的には、プロセッサ33及び画像処理回路35は、メモリ37に記憶されているプログラムを実行することで、例えば画像データを生成、及び/又は送信するなど、移動体用の表示システム10の操作を行うことができる。プロセッサ33及び/又は画像処理回路35は、少なくとも1つの汎用マイクロプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。メモリ37は、ハードディスクのような任意のタイプの磁気媒体、CD及びDVDのような任意のタイプの光学媒体、揮発性メモリのような任意のタイプの半導体メモリ、及び不揮発性メモリを含む。揮発性メモリは、DRAM及びSRAMを含み、不揮発性メモリは、ROM及びNVRAMを含んでもよい。
【0026】
図示するように、プロセッサ33は、I/Oインタフェース31と動作可能に連結されている。I/Oインタフェース31は、例えば、車両に設けられた車両ECU401、及び/又は他の電子機器(後述する符号403~417)と、CAN(Controller Area Network)の規格に応じて通信(CAN通信とも称する)を行う。なお、I/Oインタフェース31が採用する通信規格は、CANに限定されず、例えば、CANFD(CAN with Flexible Data Rate)、LIN(Local Interconnect Network)、Ethernet(登録商標)、MOST(Media Oriented Systems TransPort:MOSTは登録商標)、UART、もしくはUSBなどの有線通信インタフェース、又は、例えば、Bluetooth(登録商標)ネットワークなどのパーソナルエリアネットワーク(PAN)、802.11x Wi-Fi(登録商標)ネットワークなどのローカルエリアネットワーク(LAN)等の数十メートル内の近距離無線通信インタフェースである車内通信(内部通信)インタフェースを含む。また、I/Oインタフェース31は、無線ワイドエリアネットワーク(WWAN0、IEEE802.16-2004(WiMAX:Worldwide InteroPerability for Microwave Access))、IEEE802.16eベース(Mobile WiMAX)、4G、4G-LTE、LTE Advanced、5Gなどのセルラー通信規格により広域通信網(例えば、インターネット通信網)などの車外通信(外部通信)インタフェースを含んでいてもよい。
【0027】
図示するように、プロセッサ33は、I/Oインタフェース31と相互動作可能に連結されることで、移動体用の表示システム10(I/Oインタフェース31)に接続される種々の他の電子機器等と情報を授受可能となる。I/Oインタフェース31には、例えば、車両ECU401、道路情報データベース403、自車位置検出部405、車外センサ407、操作検出部409、目位置検出部411、視線方向検出部413、携帯情報端末415、及び外部通信機器417などが動作可能に連結される。なお、I/Oインタフェース31は、移動体用の表示システム10に接続される他の電子機器等から受信する情報を加工(変換、演算、解析)する機能を含んでいてもよい。
【0028】
表示器21は、プロセッサ33及び画像処理回路35に動作可能に連結される。したがって、画像表示部20によって表示される画像は、プロセッサ33及び/又は画像処理回路35から受信された画像データに基づいてもよい。プロセッサ33及び画像処理回路35は、I/Oインタフェース31から取得される情報に基づき、画像表示部20が表示する画像を制御する。
【0029】
HUD装置20が生成する表示領域100は、曲面、又は一部曲面の領域であり、結像面とも呼ばれる。表示領域100は、HUD装置20の表示器21の表示面23(
図1参照。)の虚像が結像される位置であり、すなわち、表示領域100は、HUD装置20の後述する表示面に対応し(言い換えると、表示領域100は、後述する表示器21の表示面と、共役関係となる。)、表示領域100で視認される虚像は、HUD装置20の後述する表示面23に表示される画像Mに対応している、と言える。表示領域100自体は、実際に観察者に視認されない、又は視認されにくい程度に視認性が低いことが好ましい。以下では、HUD装置20が生成する表示領域100の実施形態を説明する。
【0030】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る移動体用の表示システム10(HUD装置20)は、視域200から見た際に配置される第1表示領域110が、
図1に示すように、車両1の前後方向と上下方向と平行な平面(YZ平面)での第1表示領域110の断面形状において、視域200側がへこんだ形状になるように、光学的に設計される。すなわち、第1表示領域110の上端部111と下端部113とを結ぶ線分を基準に、上端部111と下端部113との間のミドル領域(観察者が第1表示領域110を見た際の上端部111と下端部113との中心にあたる中心部112も含む。)が、視域200から離れて配置される。
【0031】
図1では、車両1の前方に、車両1の左右方向(X軸)、及び上下方向(Y軸)で湾曲しない(曲率を有さない)基準平面300が仮想的に設定され、第1実施形態に係る移動体用の表示システム10(HUD装置20)は、上端部111と下端部113とがこの基準平面300よりも視域200に近い位置に配置され、中心部112が基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置される。
【0032】
図4Aないし
図4Cを参照する。
図4Aないし
図4Cは、HUD装置で生成される表示領域の各点に向いた輻輳角と、各点と重なる基準平面上の各点に向いた輻輳角と、を示す図である。
図4Aないし
図4Cでは、θHUDは、視域200の所定の位置にある両目(右眼4R、左眼4L)から表示領域100での各点(上端部111、中心部112、及び下端部113)に向けた輻輳角を示し、θspは、両目(右眼4R、左眼4L)の中心と表示領域100の各点(上端部111、中心部112、及び下端部113)とを結ぶ線が交わる基準平面300上の各点(第1点301、第2点302、及び第3点303)に向けた輻輳角を示す。
【0033】
図4Aは、視域200の所定の位置にある両目(右眼4R、左眼4L)から第1表示領域110の上端部111に向けた輻輳角と、この上端部111と重なる基準平面300上の第1点301に向けた輻輳角と、を示す。ここでは、第1表示領域110(上端部111)が、基準平面300(第1点301)より視域200の所定の位置に近く、すなわち、第1表示領域110の上端部111に向けた輻輳角θHUD11は、基準平面300上の第1点301に向けた輻輳角θsp11より大きい。
【0034】
図4Bは、視域200の所定の位置にある両目(右眼4R、左眼4L)から第1表示領域110の中心部112に向けた輻輳角と、この上端部111と重なる基準平面300上の第2点302に向けた輻輳角と、を示す。ここでは、第1表示領域110(中心部112)が、基準平面300(第2点302)より視域200の所定の位置から遠く、すなわち、第1表示領域110の中心部112に向けた輻輳角θHUD12は、基準平面300上の第2点302に向けた輻輳角θsp12より小さい。
【0035】
図4Cは、視域200の所定の位置にある両目(右眼4R、左眼4L)から第1表示領域110の下端部113に向けた輻輳角と、この下端部113と重なる基準平面300上の第3点303に向けた輻輳角と、を示す。ここでは、第1表示領域110(下端部113)が、基準平面300(第3点303)より視域200の所定の位置に近く、すなわち、第1表示領域110の下端部113に向けた輻輳角θHUD13は、基準平面300上の第3点303に向けた輻輳角θsp13より大きい。
【0036】
θHUDとθspとの差を輻輳角差P(
図1のP11,P12,P13)と称する。この輻輳角差を、所定値(閾値)θth以内とするのが好ましい。すなわち、虚像の結像点と、この結像点に対する仮想的な平面(基準平面)がずれたことに起因する輻輳角の変位量を、閾値θth以内とすることで、距離ずれ(焦点ずれとも称する)を観察者が知覚しづらくすることができる。本実施形態では、例えば、第1表示領域110の上端部111と基準平面300との輻輳角差P11(輻輳角θHUD11と輻輳角θsp11との差)、第1表示領域110の中心部112と基準平面300との輻輳角差P12(輻輳角θHUD12と輻輳角θsp12との差)、及び第1表示領域110の下端部113と基準平面300との輻輳角差P13(輻輳角θHUD13と輻輳角θsp13との差)、を閾値θth以内とすることで、第1表示領域110の形状は、平面(基準平面300)に近似され、すなわち、第1表示領域110内に表示された虚像は、平面上に表示されているように観察者に知覚されやすくなる。
【0037】
両目(瞳孔間距離を平均的な65[mm]で仮定。)から見た2点間の輻輳角差[mrad]の算出結果を表1に示す。第1の距離は、2ないし10[m]までとし、第2の距離は、5ないし10[m]までとし、それぞれの交点部分の数値が、第1の距離と第2の距離との輻輳角差[mrad]を表す。例えば、第1の距離が6[m]であり、第2の距離が7[m]である場合、両目(瞳孔間距離を平均的な65[mm]で仮定。)から見た2点間の輻輳角差は、3.7[mrad]となる。
【0038】
【0039】
本出願人は、2点間の輻輳角差が、4[mrad](0.23[degree])以内とすることで、奥行方向の2点間の距離差を知覚しにくく、さらに好ましくは2[mrad](0.11[degree])とすることでよりさらに2点間の距離差を知覚しにくいことを認識した。表1では2点間の輻輳角差が4[mrad]となる箇所を太線で囲み塗りつぶしてある。例えば、第1の距離が6[m]であれば、5~9[m](具体的には、4.4~9.5[m])までの範囲が、2点間の輻輳角差が4[mrad]の範囲となり、距離差を知覚しにくくなる。したがって、輻輳角差の閾値θthは、4[mrad]、さらに好ましくは2[mrad]に設定され得る。
【0040】
なお、基準平面300は、視域200内の所定の視域基準位置200sから見る際に配置される表示領域100に対して、輻輳角差P11、P12、P13が等しくなるように設定される。いくつかの実施形態では、視域基準位置200sは、視域200の上下方向(Y軸方向)において、視域中心205と視域下端203との間の所定の位置に設定される。これについては、後述する。表示領域100の形状、及び配置は、観察者の目位置4により変化する。
【0041】
図5Aは、視域200の視域下端202から見る際に配置される第1表示領域110aを示す図である。比較例として、視域基準位置200sから見る際に配置される第1表示領域110sを点線で示す。視域下端203から見る際に配置される第1表示領域110aは、上端部111a、及び中心部112aが、基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置され、下端部113が基準平面300よりも視域200に近い位置に配置される。表示領域100sと第1表示領域110aとを比較すると、上端部111aの位置が大きく変化するが、基準平面300を跨ぐため、上端部111の移動量に対する基準平面300との距離差(輻輳角差P11)の変化量(増加量)は抑制することができる。
【0042】
図5Bは、視域200の視域上端201から見る際に配置される第1表示領域110bを示す図である。比較例として、視域基準位置200sから見る際に配置される第1表示領域110sを点線で示す。視域上端201から見る際に配置される第1表示領域110bは、下端部113b、及び中心部112bが、基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置され、上端部111が基準平面300よりも視域200に近い位置に配置される。表示領域100sと第1表示領域110bとを比較すると、下端部113bの位置が大きく変化するが、基準平面300を跨ぐため、下端部113bの移動量に対する基準平面300との距離差(輻輳角差P13)の変化量(増加量)は抑制することができる。
【0043】
車両1の被投影部材2をフロントウインドシールドとした場合、目位置の変化による表示領域100の形状、及び配置の変化は、視域200の下の領域(例えば、視域中心205より下側の領域)では比較的大きく。視域200の上の領域(例えば、視域中心205より上側の領域)では比較的小さい。したがって、本実施形態のHUD装置20は、視域200の上下方向(Y軸方向)において、視域中心205と視域下端203との間の所定の位置を、視域基準位置200sと設定し、この視域基準位置200sから見る際の表示領域100の形状、及び配置を、表示領域100の各点(上端部111、中心部112、下端部113)が所望の基準平面300に近くなるように設定する。具体的には、表示領域100は、視域基準位置200sからの第1輻輳角差P11、第2輻輳角差P12、及び第3輻輳角差P13、が概ね等しくなるように、形成される。これにより、視域200内で目位置4が異なる場合でも、所望の基準平面300とのずれを少なくすることができる。なお、上記実施形態では、視域下端203では、上端部111が基準平面300を跨ぎ(
図5A参照。)、かつ、視域上端201では、下端部113が基準平面300を跨ぐ(
図5B参照。)ように、表示領域100の形状、配置、及び視域200の範囲が設定されていたが、どちらか一方のみであってもよい。すなわち、例えば、視域下端203では、上端部111が基準平面300を跨ぎ(
図5A参照。)、かつ、視域上端201では、下端部113が基準平面300を跨がなくてもよい。また、本実施形態では、視域下端203では、上端部111が基準平面300を跨がず(
図5A参照。)、かつ、視域上端201でも、下端部113が基準平面300を跨がない場合もあり得る。
【0044】
また、いくつかの実施形態のHUD装置20では、目位置4が視域下端203にある際の、第1表示領域110aと基準平面300との輻輳角差Pの最大値と、目位置4が視域上端201にある際の、第1表示領域110bと基準平面300との輻輳角差Pの最大値と、が概ね等しくなるように、表示領域100の形状、配置、及び視域200の範囲が設定されてもよい。具体的に、例えば、HUD装置20は、目位置4が視域下端203にある際の、第1表示領域110aの上端部111aと基準平面300との輻輳角差P11と、目位置4が視域上端201にある際の、第1表示領域110bの下端部113bと基準平面300との輻輳角差P13と、が概ね等しくなるように、表示領域100の形状、配置、及び視域200の範囲が設定されてもよい。これにより、視域200内で目位置4が異なる場合でも、所望の基準平面300とのずれを少なくすることができる。
【0045】
なお、上記実施形態の第1湾曲形状の第1表示領域110は、車両1の左右方向(X軸)で視域200に向けて凹となっていたが、これに加えて、車両1の上下方向(Y軸)でも視域200に向けて凹となってもよい。当実施形態における移動体用の表示システム10(HUD装置20)は、視域200から見た際に配置される第1表示領域110が、
図6に示すように、車両1の前後方向と左右方向と平行な平面(ZX平面)での第1表示領域110の断面形状において、視域200側がへこんだ形状になるように、光学的に設計される。すなわち、第1表示領域110の左端部116と右端部117とを結ぶ線分を基準に、左端部116と右端部117との間のミドル領域(観察者が第1表示領域110を見た際の左端部116と右端部117との中心にあたる中心部112も含む。)が、視域200から離れて配置される。
【0046】
図6に示すように、第1実施形態に係る移動体用の表示システム10(HUD装置20)では、視域200の左右方向の中心に両目の中心を置いた際に配置される第1表示領域110は、左端部116と右端部117とがこの基準平面300よりも視域200に近い位置に配置され、中心部112が基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置される。視域200の左右方向の中心から右側に両目の中心を置いた際に配置される第1表示領域110は、左端部116、及び中心部112が、基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置され、右端部117が基準平面300よりも視域200に近い位置に配置される。逆に、視域200の左右方向の中心から左側に両目の中心を置いた際に配置される第1表示領域110は、右端部117、及び中心部112が、基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置され、左端部116が基準平面300よりも視域200に近い位置に配置される。すなわち、視域右部(不図示)では、左端部116が基準平面300を跨ぎ、かつ、視域左部(不図示)では、右端部117が基準平面300を跨ぐように、表示領域100の形状、配置、及び視域200の範囲が設定されていたが、どちらか一方のみであってもよい。すなわち、例えば、視域右部(不図示)では、左端部116が基準平面300を跨ぎ、かつ、視域左部(不図示)では、右端部117が基準平面300を跨がなくてもよい。また、本実施形態では、視域右部では、左端部116が基準平面300を跨がず、かつ、視域左部でも、右端部117が基準平面300を跨がない場合もあり得る。
【0047】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る移動体用の表示システム10(HUD装置50)は、視域200から見た際に配置される第2表示領域120が、
図7に示すように、車両1の前後方向と上下方向と平行な平面(YZ平面)での第2表示領域120の断面形状において、視域200側が凸の形状になるように、光学的に設計される。すなわち、第2表示領域120の上端部121と下端部123とを結ぶ線分を基準に、上端部121と下端部123との間のミドル領域(観察者が第2表示領域120を見た際の上端部121と下端部123との中心にあたる中心部122も含む。)が、視域200の近くに配置される。
【0048】
HUD装置50は、
図8に示すように、リレー光学系55で上下方向の画像光40をクロスさせている点で、第1実施形態のHUD装置20とは異なる。これにより、第2実施形態のHUD装置50が生成する第2表示領域120は、第1実施形態のHUD装置20が生成する第1表示領域110とは逆向きの凸とすることができる。
【0049】
図7では、車両1の前方に、車両1の左右方向(X軸)、及び上下方向(Y軸)で湾曲しない(曲率を有さない)基準平面300が仮想的に設定され、第2実施形態に係る移動体用の表示システム10(HUD装置50)は、上端部121と下端部123とがこの基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置され、中心部122が基準平面300よりも視域200に近い位置に配置される。
【0050】
図9Aないし
図9Cを参照する。
図9Aないし
図9Cは、第2実施形態のHUD装置で生成される表示領域の各点に向いた輻輳角と、各点と重なる基準平面上の各点に向いた輻輳角と、を示す図である。
【0051】
図9Aは、視域200の所定の位置(視域基準位置200s)にある両目(右眼4R、左眼4L)から第2表示領域120の上端部121に向けた輻輳角と、この上端部121と重なる基準平面300上の第1点301に向けた輻輳角と、を示す。ここでは、第2表示領域120(上端部121)が、基準平面300(第1点301)より視域200の所定の位置から遠い、すなわち、第2表示領域120の上端部121に向けた輻輳角θHUD21は、基準平面300上の第1点301に向けた輻輳角θsp21より小さい。
【0052】
図9Bは、視域200の所定の位置(視域基準位置200s)にある両目(右眼4R、左眼4L)から第2表示領域120の中心部122に向けた輻輳角と、この上端部121と重なる基準平面300上の第2点302に向けた輻輳角と、を示す。ここでは、第2表示領域120(中心部122)が、基準平面300(第2点302)より視域200の所定の位置に近い、すなわち、第2表示領域120の中心部122に向けた輻輳角θHUD22は、基準平面300上の第2点302に向けた輻輳角θsp22より大きい。
【0053】
図9Cは、視域200の所定の位置(視域基準位置200s)にある両目(右眼4R、左眼4L)から第2表示領域120の下端部123に向けた輻輳角と、この下端部123と重なる基準平面300上の第3点303に向けた輻輳角と、を示す。ここでは、第2表示領域120(下端部123)が、基準平面300(第3点303)より視域200の所定の位置から遠い、すなわち、第2表示領域120の下端部123に向けた輻輳角θHUD23は、基準平面300上の第3点303に向けた輻輳角θsp23より小さい。
【0054】
θHUDとθspとの差を輻輳角差P(
図7のP21,P22,P23)と称する。本実施形態では、例えば、第2表示領域120の上端部121と基準平面300との輻輳角差P21(輻輳角θHUD21と輻輳角θsp21との差)、第2表示領域120の中心部122と基準平面300との輻輳角差P22(輻輳角θHUD22と輻輳角θsp22との差)、及び第2表示領域120の下端部123と基準平面300との輻輳角差P23(輻輳角θHUD23と輻輳角θsp23との差)、を閾値θth以内とすることで、第2表示領域120の形状は、平面(基準平面300)に近似され、すなわち、第2表示領域120内に表示された虚像は、平面上に表示されているように観察者に知覚されやすくなる。
【0055】
なお、基準平面300は、視域200内の所定の視域基準位置200sから見る際に配置される表示領域100に対して、輻輳角差P21、P22、P23が等しくなるように設定される。
【0056】
図10Aは、視域200の視域下端203から見る際に配置される第2表示領域120aを示す図である。比較例として、視域基準位置200sから見る際に配置される第2表示領域120sを点線で示す。視域下端203から見る際に配置される第2表示領域120aは、上端部121a、中心部122a、及び下端部123aが、基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置される。表示領域100sと第2表示領域120aとを比較すると、中心部122aが基準平面300を跨ぐため、中心部122の移動量に対する基準平面300との距離差(輻輳角差P22)の変化量(増加量)は抑制することができる。
【0057】
図10Bは、視域200の視域上端201から見る際に配置される第2表示領域120bを示す図である。比較例として、視域基準位置200sから見る際に配置される第2表示領域120sを点線で示す。視域上端201から見る際に配置される第2表示領域120bは、下端部123b、及び中心部122bが、基準平面300よりも視域200に近い位置に配置され、上端部121が基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置される。表示領域100sと第2表示領域120bとを比較すると、下端部123bの位置が大きく変化するが、基準平面300を跨ぐため、下端部123の移動量に対する基準平面300との距離差(輻輳角差P23)の変化量(増加量)は抑制することができる。
【0058】
第2実施形態のHUD装置50でも同様に、車両1の被投影部材2をフロントウインドシールドとした場合、目位置の変化による表示領域100の形状、及び配置の変化は、視域200の下の領域(例えば、視域中心205より下側の領域)では比較的大きく。視域200の上の領域(例えば、視域中心205より上側の領域)では比較的小さい。したがって、本実施形態のHUD装置50は、視域200の上下方向(Y軸方向)において、視域中心205と視域下端203との間の所定の位置を、視域基準位置200sと設定し、この視域基準位置200sから見る際の表示領域100の形状、及び配置を、表示領域100の各点(上端部121、中心部122、下端部123)が所望の基準平面300に近くなるように設定する。これにより、視域200内で目位置4が異なる場合でも、所望の基準平面300とのずれを少なくすることができる。なお、上記実施形態では、視域下端203では、中心部122が基準平面300を跨ぎ(
図10A参照。)、かつ、視域上端201では、下端部123が基準平面300を跨ぐ(
図10B参照。)ように、表示領域100の形状、配置、及び視域200の範囲が設定されていたが、どちらか一方のみであってもよい。すなわち、例えば、視域下端203では、上端部121が基準平面300を跨ぎ(
図10A参照。)、かつ、視域上端201では、下端部123が基準平面300を跨がなくてもよい。また、本実施形態では、視域下端203では、上端部121が基準平面300を跨がず(
図10A参照。)、かつ、視域上端201でも、下端部123が基準平面300を跨がない場合もあり得る。
【0059】
また、いくつかの実施形態のHUD装置50では、目位置4が視域下端203にある際の、第2表示領域120aと基準平面300との輻輳角差Pの最大値と、目位置4が視域上端201にある際の、第2表示領域120bと基準平面300との輻輳角差Pの最大値と、が概ね等しくなるように、表示領域100の形状、配置、及び視域200の範囲が設定されてもよい。具体的に、例えば、HUD装置50は、目位置4が視域下端203にある際の、第2表示領域120aの上端部121と基準平面300との輻輳角差P21と、目位置4が視域上端201にある際の、第2表示領域120bの下端部123bと基準平面300との輻輳角差P23と、が概ね等しくなるように、表示領域100の形状、配置、及び視域200の範囲が設定されてもよい。これにより、視域200内で目位置4が異なる場合でも、所望の基準平面300とのずれを少なくすることができる。
【0060】
なお、上記実施形態の第1湾曲形状の第2表示領域120は、車両1の左右方向(X軸)で視域200に向けて凸となっていたが、これに加えて、車両1の上下方向(Y軸)でも視域200に向けて凸となってもよい。当実施形態における移動体用の表示システム10(HUD装置50)は、視域200から見た際に配置される第2表示領域120が、
図11に示すように、車両1の前後方向と左右方向と平行な平面(ZX平面)での第2表示領域120の断面形状において、視域200側へ突出した形状になるように、光学的に設計される。すなわち、第2表示領域120の左端部126と右端部127とを結ぶ線分を基準に、左端部126と右端部127との間のミドル領域(観察者が第2表示領域120を見た際の左端部126と右端部127との中心にあたる中心部122も含む。)が、基準平面300よりも視域200に近い位置に配置される。
【0061】
図11に示すように、第2実施形態に係る移動体用の表示システム10(HUD装置50)では、視域200の左右方向の中心に両目の中心を置いた際に配置される第2表示領域120は、左端部126と右端部127とがこの基準平面300よりも視域200に近い位置に配置され、中心部122が基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置される。視域200の左右方向の中心から右側に両目の中心を置いた際に配置される第2表示領域120は、左端部126、及び中心部122が、基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置され、右端部127が基準平面300よりも視域200に近い位置に配置される。逆に、視域200の左右方向の中心から左側に両目の中心を置いた際に配置される第2表示領域120は、右端部127、及び中心部122が、基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置され、左端部126が基準平面300よりも視域200に近い位置に配置される。
【0062】
次に、虚像光学系90(凹面鏡26)における全領域又は一部の領域の光学的特性を調整すること、及び光学部材(例えば、凹面鏡26)と表示面23との配置を調整することで、表示領域100の形状、及び配置を設定する例を説明する。
【0063】
図12Aは、第1実施形態のリレー光学系25と表示面23との配置を示す図である。なお、
図12Aでは、比較例との違いをわかりやすくするため、リレー光学系25の各領域251,252,253の焦点を符号251f,252f,253fで表記するが、リレー光学系25、又は表示面23との距離関係を正確に示したものではない。本実施形態の表示面23は、表示面23から視域200へ向かう画像光40の光軸40pとの垂直面23aから角度αだけ傾いて配置される。具体的には、表示面23は、垂直面23aと比べて、観察者から見て第1表示領域110の上端部111(
図12B参照)に対応する表示面23の領域231が、リレー光学系25から離れ、中心部112(
図12B参照)に対応する表示面23の領域232が、リレー光学系25に近づくように配置される。本実施形態のリレー光学系25は、領域毎に曲率半径が異なる。具体的には、運転者から見て第1表示領域110の上端部111に虚像を表示する第1画像光41が通るリレー光学系25の第1領域(第1光路)251の第1光学的パワーを、運転者から見て第1表示領域110の上端部111より下側に視認される中心部112に虚像を表示する第2画像光42が通るリレー光学系25の第2領域(第2光路)252の第2光学的パワーより小さくする。すなわち、リレー光学系25の主たる光学的パワーが凹面鏡である第1ミラー26に起因する場合、第1画像光41を反射する第1領域251の第1曲率半径(第1光学的パワーの一例。)を、第2画像光42を反射する第2領域252の第2曲率半径(第2光学的パワーの一例。)より大きくする。第1画像光41を反射する第1領域251の第1曲率半径が大きくなると、第1領域251の焦点251fの焦点距離(曲率半径の1/2)が長くなる。
【0064】
ここで、物体と凹面ミラーの距離a(>0)、虚像と凹面ミラーの距離b(>0),そして、凹面ミラーの焦点距離f(>a)の間には、以下の関係式が成り立つ。この関係式によれば、凹面ミラーの曲率半径が大きく(ミラーの曲率が小さく)なれば、凹面ミラーの焦点距離が長くなり、焦点距離が長いほど、虚像の距離bが短くなる。
1/a-1/b=1/f
【0065】
上述したように、表示面23が、表示面23から視域200へ向かう画像光の光軸40pとから傾いて配置されることで、第1表示領域110が、路面310に沿うように(近傍から遠方に向けて徐々に結像距離が長くなるように)、配置することもできる。表示面23から第1ミラー26の曲率半径が大きい第1領域251に投射した第1画像光41は、焦点距離(第1領域251から焦点251fまでの距離)が長いため、被投影部材2に反射された際に、(曲率半径を大きくしない場合と比較して)被投影部材2からの結像距離が短くなる。
【0066】
本実施形態のリレー光学系25は、通過する画像光で表示される虚像が上方側である程、光学的パワーを徐々に小さくする(曲率半径を徐々に大きくする)ことで、第1表示領域110の上端部111が路面310に沿う傾きから起き上がるように湾曲させることができる。上端部111が路面310に沿う傾きから起き上がるように湾曲させるとは、
図12B示すように、上端部111における第1表示領域110の接線と路面310との間のチルト角θ(第1チルト角θ1)が、上端部111より運転者に近い中心部112における第1表示領域110の接線と路面310との間のチルト角θ(第2チルト角θ2)より大きく、かつチルト角θが、中心部112(近傍側)から上端部111(遠方側)に向かうに連れて連続的に増加する(単調増加する)。
【0067】
すなわち、HUD装置20(HUD装置50も同様。)は、虚像光学系90における全領域又は一部の領域の光学的特性を調整すること、光学部材(例えば、凹面鏡26;56)と表示面23との配置を調整すること、表示面23の形状を調整すること、又はこれらの組み合わせにより、表示領域100(110,120)の形状、及び配置を設定することができる。
【0068】
以上に説明したように、本実施形態のヘッドアップディスプレイ装置20;50は、画像光を射出する表示面23を有する表示器21と、表示器21からの画像光40を、被投影部材2を介して車両1内の視域200に向け、視域200内から見た表示領域100内で表示面23に表示された画像の虚像を視認させるリレー光学系25と、を備え、表示領域100は、上端部111;121と、下端部113:123と、上端部111と下端部113との間の中心部112;122と、を含み、1)視域200内の所定の目位置200sから見た上端部111及び下端部113は、所定の基準平面300よりも視域200に近い位置に配置され、所定の目位置200sから見た中心部112は、基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置される第1曲面形状110、又は2)所定の目位置200sから見た上端部121及び下端部123は、所定の基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置され、所定の目位置200sから見た中心部122は、基準平面300よりも視域200に近い位置に配置される第2曲面形状120であり、目位置200sから上端部111;121までの輻輳角と、目位置200sから上端部111;121を通過する基準平面300上の第1点301までの輻輳角との第1輻輳角差P11:P21、目位置200sから中心部112;122までの輻輳角と、目位置200sから中心部112;122を通過する基準平面300上の第2点302までの輻輳角との第2輻輳角差P12;P22、及び目位置200sから下端部113;123までの輻輳角と、目位置200sから下端部113;123を通過する基準平面300上の第3点303までの輻輳角との第3輻輳角差P13;P23、のそれぞれが4ミリラジアン以内になるように、形成される。虚像を表示する領域である表示領域を、所望の平面より上端及び下端を手前側、ミドル領域を奥側になるように、視域側が凹むような形状で配置し、上端、下端、及びミドル領域と所望の平面との輻輳角差を4ミリラジアン以内に設定することで、表示領域内に表示される虚像の奥行方向の歪みを認識しづらくすることができ、目位置が上下方向にずれた場合でも、所望の平面と表示領域との輻輳角差の局所的な増大を抑えることができる。また、虚像を表示する領域である表示領域を、所望の平面より上端及び下端を奥側、ミドル領域を手前側になるように、視域側が突出するような形状で配置し、上端、下端、及びミドル領域と所望の平面との輻輳角差を4ミリラジアン以内に設定することでも、表示領域内に表示される虚像の奥行方向の歪みを認識しづらくすることができ、目位置が上下方向にずれた場合でも、所望の平面と表示領域との輻輳角差の局所的な増大を抑えることができる。
【0069】
また、いくつかの実施形態では、表示領域100は、視域200の視域上端201から見ると、視域200から見た上端部111が基準平面300よりも視域200に近い位置に配置され、下端部113と中心部112が基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置される、及び/又は、視域200の下端203から見ると、視域200から見た下端部113が基準平面300よりも視域200に近い位置に配置され、上端部111と中心部112が基準平面300よりも視域200から遠い位置に配置される、ように形成されてもよい。このように、視域の範囲(視域の上端又は下端)が、表示領域の上端又は下端が所望の平面を奥行方向に跨ぐ範囲に設定されることで、視域の範囲を広く確保しつつ、視域内で目位置が上下方向にずれた場合でも、所望の平面と表示領域との輻輳角差の局所的な増大を抑えることができる。
【0070】
また、いくつかの実施形態では、表示領域100は、視域200の視域上端201から見ると、上端部121が基準平面300よりも視域200に遠い位置に配置され、下端部123と中心部122が基準平面300よりも視域200に近い位置に配置される、及び/又は、視域200の下端203から見ると、下端部123が基準平面300よりも視域200より遠い位置に配置され、上端部121と中心部122が基準平面300よりも視域200に近い位置に配置される、ように形成されてもよい。このように、視域の範囲(視域の上端又は下端)が、表示領域の上端又は下端が所望の平面を奥行方向に跨ぐ範囲に設定されることで、視域の範囲を広く確保しつつ、視域内で目位置が上下方向にずれた場合でも、所望の平面と表示領域との輻輳角差の局所的な増大を抑えることができる。
【0071】
また、いくつかの実施形態では、所定の目位置200sは、視域中心205と下端203との間に配置され、表示領域100は、所定の目位置200sからの第1輻輳角差P11、第2輻輳角差P12、及び第3輻輳角差P13、が概ね等しくなるように、形成されてもよい。表示領域100の形状、配置の変化の大きさは、視域内で目位置が上方向へのズレと下方向へのズレとで異なる。言い換えると、視域内で目位置が上方向へのズレ量に対する表示領域100の形状、配置の変化率が、視域内で目位置が下方向へのズレ量に対する表示領域100の形状、配置の変化率が異なる。したがって、下方向へのズレ量に対する表示領域100の形状、配置の変化率が大きい場合、第1輻輳角差P11、第2輻輳角差P12、及び第3輻輳角差P13、が概ね等しくなる視域基準位置200sを、視域中心205と下端203との間に配置することで、目位置4が視域200の視域下端203になったとしても、所望の平面と表示領域との輻輳角差の局所的な増大を抑えることができる。なお、所定の目位置200sは、視域中心205と視域上端201との間に配置されてもよい。
【0072】
また、いくつかの実施形態では、基準平面300は、視域中心205からの円の接線であってもよい。これにより、視域の中心から見た凹又は凸形状の表示領域が、概ね正対して配置され、視域内で目位置が変化した場合であっても基準平面からの奥行き方向のズレ量を少なく抑えることができる。
【0073】
また、いくつかの実施形態では、基準平面300は、視域中心205からの円の接線であり、かつ車両の進行方向に対して非平行となるように配置されてもよい。
【0074】
また、いくつかの実施形態では、基準平面300は、視域200から見て、上側が下側より遠方に配置されるように、傾いて配置されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 :車両
2 :被投影部材
4 :目位置
4L :左眼
4R :右眼
10 :表示システム
20 :ヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)
21 :表示器
22 :プロジェクタ
23 :表示面
23a :垂直面
25 :リレー光学系
26 :第1ミラー
27 :第2ミラー
40p :光軸
41 :第1画像光
42 :第2画像光
50 :HUD装置
55 :リレー光学系
90 :虚像光学系
100 :表示領域
100s :表示領域
110 :第1表示領域(第1曲面形状)
111 :上端部
112 :中心部
113 :下端部
116 :左端部
117 :右端部
120 :第2表示領域(第2曲面形状)
121 :上端部
122 :中心部
123 :下端部
126 :左端部
127 :右端部
200 :視域
200s :視域基準位置(所定の目位置)
201 :視域上端
203 :視域下端
205 :視域中心
310 :路面
M :画像
P :輻輳角差
P11 :第1輻輳角差
P12 :第2輻輳角差
P13 :第3輻輳角差