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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/449 20210101AFI20241210BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20241210BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20241210BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241210BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241210BHJP
   H01M 50/469 20210101ALI20241210BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20241210BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20241210BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20241210BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20241210BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20241210BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/434
H01M50/403 D
H01M50/469
H01M50/463 Z
H01M50/426
H01M10/04 Z
H01M50/46
H01M10/058
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022011523
(22)【出願日】2022-01-28
(65)【公開番号】P2023110219
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬上 正晴
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-123484(JP,A)
【文献】国際公開第2021/153966(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2008-0082289(KR,A)
【文献】特開2020-123543(JP,A)
【文献】特開2022-014065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40 - 50/497
H01M 10/00 - 04;10/06 - 10/34
H01M 10/05 - 10/0587;10/36 - 10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
セパレータと
を含み、
前記第1電極は、第1主面と第2主面とを含み、
前記第2主面は、前記第1主面の反対面であり、
前記第1電極に、複数個の貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、前記第1主面から前記第2主面まで前記第1電極を貫通しており、
前記セパレータは、前記貫通孔の内壁を被覆しており、
前記第2電極は、前記第1電極と異なる極性を有し、
前記第2電極は、前記貫通孔内に配置されており、
前記第2電極は、前記貫通孔の軸方向に沿って延びており、
前記セパレータは、第1厚さを有する第1層と、第2厚さを有する第2層とを含み、
前記第1層は、前記内壁と前記第2層との間に配置されており、
前記第1層は、第1平均粒子径を有する第1無機粒子群を含み、
前記第2層は、第2平均粒子径を有する第2無機粒子群を含み、
前記第2平均粒子径は、前記第1平均粒子径に比して小さ
前記第1層にボイドが形成されており、
前記ボイドに前記第2無機粒子群の一部が充填されている、
電池。
【請求項2】
前記第1電極は、ハニカムコアを形成している、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第2平均粒子径は、前記第1厚さに比して小さい、
請求項1または請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記第1厚さに対する、前記第2平均粒子径の比は、1/300以下である、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記第1平均粒子径は、0.3~2μmである、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記第1厚さは、10~150μmである、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電池。
【請求項7】
前記第2厚さは、30μm以下である、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電池。
【請求項8】
前記第1厚さに対する、前記第2厚さの比は、0.5以下である、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電池。
【請求項9】
前記第1層は、第1バインダをさらに含み、
前記第2層は、第2バインダをさらに含む、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電池。
【請求項10】
前記第1無機粒子群および前記第2無機粒子群は、それぞれ独立に、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、水酸化アルミニウムおよび酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電池。
【請求項11】
前記第1電極は、柱状であり、
前記第1主面および前記第2主面は、それぞれ、前記第1電極の軸方向の両端に位置する、
請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の電池。
【請求項12】
電解液をさらに含む、
請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の電池。
【請求項13】
(a)複数個の貫通孔が形成された第1電極を準備すること、
(b)前記貫通孔の内壁を被覆するセパレータを形成すること、および
(c)前記(b)の後、前記貫通孔内に第2電極を配置すること
を含み、
前記(b)は、
(b1)前記貫通孔の前記内壁に第1ペーストを塗布することにより、第1層を形成すること、および
(b2)前記第1層の表面に第2ペーストを塗布することにより、第2層を形成すること、
を含み、
前記第2電極は、前記第1電極と異なる極性を有し、
前記第1ペーストは、第1平均粒子径を有する第1無機粒子群を含み、
前記第2ペーストは、第2平均粒子径を有する第2無機粒子群を含み、
前記第2平均粒子径は、前記第1平均粒子径に比して小さい、
電池の製造方法。
【請求項14】
前記第1電極は、第1主面と第2主面とを含み、
前記第2主面は、前記第1主面の反対面であり、
前記貫通孔は、前記第1主面から前記第2主面まで前記第1電極を貫通しており、
前記(b1)は、前記第1主面または前記第2主面から、前記第1ペーストを吸引することを含み、
前記(b2)は、前記第1主面または前記第2主面から、前記第2ペーストを吸引することを含む、
請求項1に記載の電池の製造方法。
【請求項15】
前記第1ペーストは、第1バインダと第1分散媒とをさらに含み、
前記第2ペーストは、第2バインダと第2分散媒とをさらに含む、
請求項1または請求項1に記載の電池の製造方法。
【請求項16】
(d)前記セパレータに電解液を含浸すること
をさらに含む、
請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-123484号公報(特許文献1)は、複数の貫通孔を有する電極と、該貫通孔の内壁に積層されたセパレータ層と、を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-123484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池は、第1電極と第2電極とを含む。第2電極は、第1電極と異なる極性を有する。第1電極と第2電極との接触を回避するため、第1電極と第2電極との間にセパレータが配置される。セパレータは電気絶縁性である。セパレータは多孔質であり、イオン透過性を有する。一般に電極はシート状である。シート状の電極に対応して、フィルム状のセパレータが使用されている。例えば、ポリオレフィン製の微多孔フィルム等がセパレータとして普及している。
【0005】
特殊構造の電極も検討されている。例えば、第1電極に貫通孔が形成される。貫通孔の内壁がセパレータで被覆される。内壁がセパレータで被覆された貫通孔内に、第2電極が配置される。電極がシート状ではないため、フィルム状のセパレータにより、第1電極と第2電極との接触を回避することは困難である。
【0006】
そこで、例えば、塗布型セパレータの使用が考えられる。すなわち、貫通孔の内壁に無機粒子群が塗布されることにより、塗布型セパレータが形成され得る。しかしながら、本開示の新知見によると、貫通孔の内壁に形成された塗布型セパレータには、ボイド(気泡)が残存しやすい傾向がある。ボイドが存在する位置では、局所的に絶縁耐力が低下する可能性がある。例えば、ボイドに電極の一部が侵入することにより、短絡経路が形成される可能性がある。例えば、ボイドによってピンホールが形成される可能性もある。
【0007】
本開示の目的は、貫通孔の内壁に形成された塗布型セパレータにおいて、ボイドを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本開示の技術的範囲を限定しない。
【0009】
1.電池は、第1電極と、第2電極と、セパレータとを含む。第1電極は、第1主面と第2主面とを含む。第2主面は、第1主面の反対面である。第1電極に、複数個の貫通孔が形成されている。貫通孔は、第1主面から第2主面まで第1電極を貫通している。
セパレータは、貫通孔の内壁を被覆している。第2電極は、第1電極と異なる極性を有する。第2電極は、貫通孔内に配置されている。第2電極は、貫通孔の軸方向に沿って延びている。
セパレータは、第1厚さを有する第1層と、第2厚さを有する第2層とを含む。第1層は、内壁と第2層との間に配置されている。第1層は、第1平均粒子径を有する第1無機粒子群を含む。第2層は、第2平均粒子径を有する第2無機粒子群を含む。第2平均粒子径は、第1平均粒子径に比して小さい。
【0010】
塗布型セパレータにおいて、無機粒子群の粒子サイズが小さくなる程、ボイドのサイズが小さくなる傾向がある。したがって、粒子サイズが小さい無機粒子群が使用されることにより、ボイドの低減が期待される。ただし、無機粒子群の粒子サイズが小さくなる程、塗布型セパレータが緻密になり、イオン透過性が低下し得る。すなわち電池抵抗が増大し得る。
【0011】
上記「1.」の電池においては、セパレータが第1層と第2層とを含む。第1層(下層)は、第2層(上層)に比して、内壁に近接している。第1層は、第1無機粒子群(大粒子群)により形成されている。第2層は、第2無機粒子群(小粒子群)により形成されている。第2層の形成時、第1層中のボイドに、小粒子群の一部が充填され得る。すなわちボイドが低減され得ると考えられる。さらに第1層が大粒子群により形成されていることにより、セパレータが適度に疎となり得る。そのため、電池抵抗の増大が軽減され得る。
【0012】
2.第1電極は、例えばハニカムコアを形成していてもよい。
【0013】
すなわち、第1電極の軸方向と直交する断面において、貫通孔がハニカム状に敷き詰められていてもよい。特殊構造の電極として、ハニカム構造の電極が有望である。電極がハニカム構造を有することにより、反応面積の増大と、活物質密度の増大とが期待される。すなわち、入出力特性とエネルギー密度との両立が期待される。
【0014】
第1電極がハニカム構造を有する時、塗布型セパレータ以外のセパレータを適用することは困難であると考えられる。第1電極がハニカム構造を有する時、貫通孔の内壁に形成された塗布型セパレータの欠陥を検出することは困難であると考えられる。またハニカム構造を破壊せずに、塗布型セパレータの欠陥を除去することも困難であると考えられる。上記「1.」のセパレータは、ハニカム構造の電極に対して、有効であると考えられる。
【0015】
3.第1層にボイドが形成されていてもよい。ボイドに第2無機粒子群の一部が充填されていてもよい。
【0016】
4.第2平均粒子径は、例えば第1厚さに比して小さくてもよい。
【0017】
メカニズムは不明ながら、ボイドのサイズは、第1層の厚さ(第1厚さ)に依存し得る。第2無機粒子群の粒子サイズが、第1厚さに比して小さいことにより、第2無機粒子群がボイドを埋めやすくなることが期待される。
【0018】
5.第1厚さに対する、第2平均粒子径の比は、例えば1/300以下であってもよい。ボイドの低減が期待されるためである。
【0019】
6.第1平均粒子径は、例えば0.3~2μmであってもよい。
【0020】
7.第1厚さは、例えば10~150μmであってもよい。
【0021】
8.第2厚さは、例えば30μm以下であってもよい。
【0022】
9.第1厚さに対する、第2厚さの比は、例えば0.5以下であってもよい。電池抵抗の増大が軽減され得るためである。
【0023】
10.第1層は、第1バインダをさらに含んでいてもよい。第2層は、第2バインダをさらに含んでいてもよい。
【0024】
11.第1無機粒子群および第2無機粒子群は、それぞれ独立に、例えば酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、水酸化アルミニウムおよび酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0025】
12.第1電極は、例えば、柱状であってもよい。第1主面および第2主面は、それぞれ、第1電極の軸方向の両端に位置していてもよい。
【0026】
13.電池は、電解液をさらに含んでいてもよい。
【0027】
14.電池の製造方法は、下記(a)~(c)を含む。
(a)複数個の貫通孔が形成された第1電極を準備する。
(b)貫通孔の内壁を被覆するセパレータを形成する。
(c)上記(b)の後、貫通孔内に第2電極を配置する。
上記(b)は、下記(b1)および(b2)を含む。
(b1)貫通孔の内壁に第1ペーストを塗布することにより、第1層を形成する。
(b2)第1層の表面に第2ペーストを塗布することにより、第2層を形成する。
第2電極は、第1電極と異なる極性を有する。第1ペーストは、第1平均粒子径を有する第1無機粒子群を含む。第2ペーストは、第2平均粒子径を有する第2無機粒子群を含む。第2平均粒子径は、第1平均粒子径に比して小さい。
【0028】
上記「14.」の製造方法によれば、上記「1.」の電池が製造され得る。
【0029】
15.第1電極は、第1主面と第2主面とを含む。第2主面は、第1主面の反対面である。貫通孔は、第1主面から第2主面まで第1電極を貫通している。
上記(b1)は、第1主面または第2主面から、第1ペーストを吸引することを含んでいてもよい。
上記(b2)は、第1主面または第2主面から、第2ペーストを吸引することを含んでいてもよい。
【0030】
貫通孔内にペーストが吸引されることにより、貫通孔の内壁にペーストが塗布され得る。
【0031】
16.第1ペーストは、第1バインダと第1分散媒とをさらに含んでいてもよい。第2ペーストは、第2バインダと第2分散媒とをさらに含んでいてもよい。
【0032】
17.電池の製造方法は、下記(d)をさらに含んでいてもよい。
(d)セパレータに電解液を含浸する。
【0033】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(以下「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本実施形態における電池の一例を示す概略図である。
図2図2は、第1電極の一例を示す概略図である。
図3図3は、貫通孔の第1例を示す概略断面図である。
図4図4は、貫通孔の第2例を示す概略断面図である。
図5図5は、電池要素の概略断面図である。
図6図6は、セパレータの概略断面図である。
図7図7は、本実施形態における電池の製造方法の概略フローチャートである。
図8図8は、本実施例におけるセパレータの形成過程を示す第1図である。
図9図9は、本実施例におけるセパレータの形成過程を示す第2図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<用語の定義等>
本明細書において、「備える」、「含む」、「有する」、および、これらの変形(例えば「から構成される」等)の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる」との記載はクローズド形式である。ただしクローズド形式であっても、通常において付随する不純物であったり、本開示技術に無関係であったりする付加的な要素は排除されない。「実質的に…からなる」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式においては、本開示技術の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない要素の付加が許容される。
【0036】
本明細書において、「してもよい」、「し得る」等の表現は、義務的な意味「しなければならないという意味」ではなく、許容的な意味「する可能性を有するという意味」で使用されている。
【0037】
本明細書において、各種方法に含まれる複数のステップ、動作および操作等は、特に断りのない限り、その実行順序が記載順序に限定されない。例えば、複数のステップが同時進行してもよい。例えば複数のステップが相前後してもよい。
【0038】
本明細書における幾何学的な用語(例えば「平行」、「垂直」、「直交」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「平行」は、厳密な意味での「平行」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本開示技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0039】
本明細書において、例えば「m~n%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「m~n%」は、「m%以上n%以下」の数値範囲を示す。また「m%以上n%以下」は「m%超n%未満」を含む。さらに数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値または下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0040】
本明細書において、全ての数値は用語「約」によって修飾されている。用語「約」は、例えば±5%、±3%、±1%等を意味し得る。全ての数値は、本開示技術の利用形態によって変化し得る近似値であり得る。全ての数値は有効数字で表示され得る。測定値は、複数回の測定における平均値であり得る。測定回数は、3回以上であってもよいし、5回以上であってもよいし、10回以上であってもよい。一般に測定回数が多い程、平均値の信頼性が向上することが期待される。測定値は有効数字の桁数に基づいて、四捨五入により端数処理され得る。測定値は、例えば測定装置の検出限界等に伴う誤差等を含み得る。
【0041】
本明細書において、化合物が化学量論的組成式(例えば「LiCoO2」等)によって表現されている場合、該化学量論的組成式は該化合物の代表例に過ぎない。化合物は、非化学量論的組成を有していてもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。さらに、微量元素によるドープ、置換等も許容され得る。
【0042】
本明細書において、「固形分率」は、塗料(例えばペースト等)における、固体成分の合計質量分率を示す。なお、分散媒に溶解している成分は、固体成分とみなされる。
【0043】
本明細書の「平均粒子径」は、体積基準の粒子径分布において、粒子径が小さい側からの頻度の累積が50%に到達する粒子径を示す。平均粒子径は、レーザ回折法により測定され得る。
【0044】
本明細書の「電池」は、任意の電池系であり得る。本実施形態においては、一例として、電池がリチウムイオン電池である形態が説明される。第2電極は、第1電極と異なる極性を有する。第1電極は正極であってもよいし、負極であってもよい。本実施形態においては、一例として、第1電極が負極である形態が説明される。
【0045】
<電池>
図1は、本実施形態における電池の一例を示す概略図である。以下「本実施形態における電池」が「本電池」と略記され得る。本電池100は、電池要素50を含む。本電池100は、例えば、電解液、外装体等(いずれも不図示)をさらに含んでいてもよい。外装体は、電池要素50および電解液を収納し得る。外装体は、例えば、金属製の容器等であってもよいし、金属箔ラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。電解液は、電池要素50に含浸されていてもよい。電池要素50は、第1電極10と、第2電極20と、セパレータ30とを含む。電池要素50は、集電体、端子等(いずれも不図示)をさらに含んでいてもよい。
【0046】
《第1電極》
図2は、第1電極の一例を示す概略図である。第1電極10は、任意の外形を有し得る。第1電極10は、例えば柱状であってもよい。第1電極10は、例えば円柱状であってもよいし、角柱状であってもよい。
【0047】
図2において、第1電極10はZ軸方向に延びている。第1電極10が延びる方向は、「軸方向」とも記される。本実施形態において、軸方向と直交する断面は「XY平面」とも記される。軸方向と平行な断面は「YZ平面」とも記される。
【0048】
第1電極10は、直径dを有する。直径dは、XY平面における最大幅を示す。直径dは、例えば、1~1000mmであってもよいし、10~100mmであってもよい。第1電極10は、高さhを有する。高さhは、YZ平面における最大幅を示す。高さhは、例えば、1~1000mmであってもよいし、5~500mmであってもよいし、10~100mmであってもよい。直径dに対する、高さhの比は、例えば、0.1~10であってもよいし、0.1~1であってもよい。
【0049】
本電池100において、第1電極10は負極である。第1電極10は、負極活物質を含む。第1電極10は、導電材、バインダ等をさらに含んでいてもよい。第1電極10は、例えば、質量分率で、1~10%のバインダと、0~10%の導電材と、残部の負極活物質とを含んでいてもよい。
【0050】
負極活物質は、任意の成分を含み得る。負極活物質は、例えば、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、珪素、酸化珪素、錫、酸化錫およびチタン酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。導電材は、例えば、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等を含んでいてもよい。バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を含んでいてもよい。
【0051】
第1電極10は、第1主面11と第2主面12とを含む。第1主面11および第2主面12は、軸方向の両端に配置されている。第2主面12は、第1主面11の反対面である。第1主面11および第2主面12の各々は、XY平面と平行であってもよいし、非平行であってもよい。第1主面11および第2主面12の各々は、平坦面であってもよいし、曲面であってもよい。
【0052】
第1電極10には、複数個の貫通孔13が形成されている。複数個の貫通孔13は、規則的に配置されていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。複数個の貫通孔13は、例えばハニカム状に形成されていてもよい。すなわち、第1電極10は、ハニカムコアを形成していてもよい。XY平面において、貫通孔13は、例えば、0.1~10個/mm2の密度を有していてもよい。
【0053】
貫通孔13は、第1主面11から第2主面12まで第1電極10を貫通している。すなわち、貫通孔13は、第1主面11および第2主面12の各々に開口部を有する。複数個の貫通孔13の延びる方向(軸方向)は、第1電極10の軸方向と平行であってもよい。XY平面において、貫通孔13は、任意の断面形状を有し得る。貫通孔13の断面形状は、例えば円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。多角形は、例えば、3~12角形であってもよい。多角形は、正多角形であってもよい。
【0054】
図3は、貫通孔の第1例を示す概略断面図である。XY平面において、貫通孔13の断面形状は、例えば四角形状であってもよい。「孔径」は、XY平面における貫通孔13の最大幅を示す。貫通孔13は、例えば、0.1~10mmの孔径を有していてもよいし、0.5~5mmの孔径を有していてもよいし、1~3mmの孔径を有していてもよい。
【0055】
貫通孔13同士を隔てる壁は、「リブ」とも称される。XY平面において、リブは、例えば網目状に延びていてもよい。リブは、例えば、50~500μmの厚さを有していてもよいし、100~300μmの厚さを有していてもよい。
【0056】
図4は、貫通孔の第2例を示す概略断面図である。XY平面において、貫通孔13の平面形状は、例えば六角形状であってもよい。貫通孔13の平面形状が六角形状であることにより、例えば充放電に伴う歪みが緩和される傾向がある。
【0057】
《セパレータ》
図5は、電池要素の概略断面図である。セパレータ30は、貫通孔13の内壁を被覆している。セパレータ30は、第1電極10と第2電極20との間に介在している。セパレータ30は、第1電極10から第2電極20を分離するように延びる。
【0058】
図6は、セパレータの概略断面図である。セパレータ30は、第1層31と第2層32とを含む。第1層31は、貫通孔13の内壁(第1電極10)と、第2層32との間に配置されている。第1層31は、内壁に直接接触していてもよい。第2層32は、第1層31に直接接触していてもよい。第2層32は、第2電極20に直接接触していてもよい。
【0059】
第1層31は、第1厚さT1を有する。第2層32は、第2厚さT2を有する。第2厚さT2は、例えば、第1厚さT1以下であってもよい。すなわち、「T2/T1≦1」の関係が満たされていてもよいし、「T2/T1<1」の関係が満たされていてもよいし、「T2/T1≦0.9」の関係が満たされていてもよいし、「T2/T1≦0.6」の関係が満たされていてもよいし、「T2/T1≦0.5」の関係が満たされていてもよい。「T2/T1≦0.5」の関係が満たされることにより、電池抵抗の増大が軽減され得る。例えば、「0.3≦T2/T1」の関係が満たされていてもよい。
【0060】
第1厚さT1は、例えば10~150μmであってもよいし、30~100μmであってもよいし、30~70μmであってもよい。第2厚さT2は、例えば、1~60μmであってもよいし、10~40μmであってもよいし、10~30μmであってもよい。
【0061】
第1層31は、第1無機粒子群1を含む。第1無機粒子群1は、第1平均粒子径D150を有する。第2層32は、第2無機粒子群2を含む。第2無機粒子群2は、第2平均粒子径D250を有する。第2平均粒子径D250は、第1平均粒子径D150に比して小さい。すなわち「D250<D150」の関係が満たされている。例えば、「0<D250/D150<1」の関係が満たされていてもよいし、「0.1<D250/D150<1」の関係が満たされていてもよいし、「0.125≦D250/D150≦0.5」の関係が満たされていてもよいし、「0.125≦D250/D150≦0.25」の関係が満たされていてもよい。
【0062】
第1平均粒子径D150は、例えば、0.3~2μmであってもよいし、0.8~1.5μmであってもよい。第2平均粒子径D250は、例えば、0.05~0.3μmであってもよいし、0.1~0.2μmであってもよい。
【0063】
第1層31にボイド3が形成されていてもよい。ボイド3に第2無機粒子群2の一部が充填されていてもよい。ボイド3が第2無機粒子群2の一部によって埋められることにより、短絡耐性の向上が期待される。下記表1に、第1厚さT1とボイド3の平均径との関係が示される。ボイド3の平均径は、X線CT画像において測定され得る。
【0064】
【表1】
【0065】
上記表1に示されるように、ボイド3のサイズは、第1厚さT1に依存する傾向がある。第2無機粒子群2の第2平均粒子径D250は、例えば、第1厚さT1に比して小さくてもよい。これにより、ボイド3に第2無機粒子群2が入り込みやすくなることが期待される。
【0066】
ボイド3の平均径は、第1厚さT1の1/2~1/3であり得る。第2無機粒子群2の第2平均粒子径D250は、例えば、第1厚さT1の1/2以下であってもよい。すなわち「D250/T1≦1/2」の関係が満たされていてもよい。例えば、「D250/T1≦1/3」の関係が満たされていてもよいし、「D250/T1≦1/10」の関係が満たされていてもよいし、「D250/T1≦1/100」の関係が満たされていてもよいし、「D250/T1≦1/300」の関係が満たされていてもよい。「D250/T1≦1/300」の関係が満たされることにより、短絡耐性の向上が期待される。
【0067】
第1無機粒子群1および第2無機粒子群2は、電気絶縁性の無機化合物を含む。第1無機粒子群1と第2無機粒子群2とは、同一組成を有していてもよいし、互いに異なる組成を有していてもよい。例えば、第1無機粒子群1および第2無機粒子群2は、それぞれ独立に、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、水酸化アルミニウムおよび酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば、第1無機粒子群1および第2無機粒子群2は、それぞれ独立に、アルミナ、ベーマイト、ギブサイト、およびチタニアからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0068】
第1層31は、第1バインダ(不図示)をさらに含んでいてもよい。第2層32は、第2バインダ(不図示)をさらに含んでいてもよい。第1バインダと第2バインダとは、同一組成を有していてもよいし、互いに異なる組成を有していてもよい。第1バインダおよび第2バインダは、それぞれ独立に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0069】
第1層31は、例えば、質量分率で、1~20%の第1バインダと、残部の第1無機粒子群1とを含んでいてもよい。第2層32は、例えば、質量分率で、1~20%の第2バインダと、残部の第2無機粒子群2とを含んでいてもよい。
【0070】
《第2電極》
第2電極20は、貫通孔13内に配置されている。第2電極20は、柱状(ピラー状)であってもよい。第2電極20は、貫通孔13の軸方向に沿って延びている。第2電極20は、貫通孔13の外部まで延びていてもよい。
【0071】
本電池100において、第2電極20は正極である。第2電極20は、正極活物質を含む。第2電極20は、導電材、バインダ等をさらに含んでいてもよい。第2電極20は、例えば、質量分率で、1~10%のバインダと、1~10%の導電材と、残部の正極活物質とを含んでいてもよい。
【0072】
正極活物質は、任意の成分を含み得る。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、およびリン酸鉄リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。導電材は、例えば、アセチレンブラック等を含んでいてもよい。バインダは、例えばPVDF等を含んでいてもよい。
【0073】
《電解液》
本電池100は、電解液をさらに含んでいてもよい。電解液は、支持電解質と溶媒とを含む。支持電解質は溶媒に溶解している。支持電解質は、任意の成分を含み得る。支持電解質は、例えば、LiPF6、LiBF4、およびLi(FSO22Nからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。支持電解質の濃度は、例えば、0.5~2mоl/kgであってもよい。
【0074】
溶媒は、非プロトン性である。溶媒は、任意の成分を含み得る。溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびジエチルカーボネート(DEC)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。電解液は、支持電解質および溶媒に加えて、任意の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0075】
<電池の製造方法>
図7は、本実施形態における電池の製造方法の概略フローチャートである。以下「本実施形態における電池の製造方法」が「本製造方法」と略記され得る。本製造方法は、「(a)第1電極の準備」、「(b)セパレータの形成」および「(c)第2電極の配置」を含む。本製造方法は、例えば「(d)電解液の含浸」等をさらに含んでいてもよい。
【0076】
《(a)第1電極の準備》
本製造方法は、第1電極10を準備することを含む。第1電極10には、複数個の貫通孔13が形成されている。第1電極10は、任意の方法により準備され得る。例えば、押出成形により、第1電極10が準備されてもよい。
【0077】
例えば、負極活物質とバインダと分散媒とが混合されることにより、負極ペーストが準備される。例えば、バインダの種類等に応じて適当な分散媒が選択され得る。分散媒は、例えば水等を含んでいてもよい。金型が準備される。金型は、押出口(ダイ)を有する。押出口は、第1電極10の形状と対応する。押出口から負極ペーストが押し出されることにより、成形体が形成される。成形体は、複数個の貫通孔13を有するように形成される。成形体が乾燥されることにより、第1電極10が準備され得る。
【0078】
《(b)セパレータの形成》
本製造方法は、セパレータ30を形成することを含む。セパレータ30は、貫通孔13の内壁を被覆する。すなわち、本製造方法は、「(b1)第1層の形成」と「(b2)第2層の形成」とを含む。
【0079】
(b1)第1層の形成
本製造方法は、貫通孔13の内壁に第1ペーストを塗布することにより、第1層31を形成することを含む。第1ペーストは、第1無機粒子群1を含む。第1ペーストは、第1バインダと第1分散媒とをさらに含んでいてもよい。例えば、第1無機粒子群1と、第1バインダと、第1分散媒とが混合されることにより、第1ペーストが準備され得る。例えば、第1バインダの種類等に応じて、適当な材料が第1分散媒として選択され得る。第1分散媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等を含んでいてもよい。
【0080】
塗布方法は任意である。例えば、第1主面11または第2主面12から、第1ペーストが吸引されてもよい。例えば、第1主面11上に第1ペーストが載せられる。例えば真空ポンプ等により、第2主面12側から第1ペーストが吸引されてもよい。これにより第1ペーストが貫通孔13の内壁に付着し得る。以下、当該方法が「吸引法」とも記される。吸引法は、貫通孔13の内壁にペーストを塗布する方法として好適である。その半面、吸引法によると、ペーストに気体(気泡)が混入しやすい可能性がある。ペーストに混入した気体は、ボイド3を形成する可能性がある。本製造方法においては、第1層31と第2層32とが順次形成されることにより、ボイド3が低減され得る。
【0081】
内壁に付着した第1ペーストが乾燥することにより、第1層31が形成され得る。第1層31の第1厚さT1は、例えば、第1ペーストの固形分率により調整され得る。固形分率が低い程、第1厚さT1が薄くなる傾向がある。第1ペーストの固形分率は、例えば、45~65%であってもよいし、55~65%であってもよい。
【0082】
(b2)第2層の形成
本製造方法は、第1層31の表面に第2ペーストを塗布することにより、第2層32を形成することを含む。第2ペーストは、第2無機粒子群2を含む。第2ペーストは、第2バインダと第2分散媒とをさらに含んでいてもよい。例えば、第2無機粒子群2と、第2バインダと、第2分散媒とが混合されることにより、第2ペーストが準備され得る。例えば、第2バインダの種類等に応じて、適当な材料が第2分散媒として選択され得る。第2分散媒は、例えば、NMP等を含んでいてもよい。
【0083】
第2ペーストも吸引法により塗布されてもよい。すなわち、第1主面11または第2主面12から、第2ペーストが吸引されてもよい。これにより第2ペーストが第1層31の表面に付着し得る。第1層31に付着した第2ペーストが乾燥することにより、第2層32が形成され得る。第2層32の第2厚さT2は、例えば、第2ペーストの固形分率により調整され得る。第2ペーストの固形分率は、例えば、45~65%であってもよいし、45~55%であってもよい。
【0084】
《(c)第2電極の配置》
本製造方法は、セパレータ30の形成後、貫通孔13内に第2電極20を配置することを含む。
【0085】
例えば、第2電極20の配置に先立って、端面(第1主面11および第2主面12)に絶縁処理が施されてもよい。例えば、電着法等により、端面に樹脂粒子群が付着され得る。これにより絶縁膜(不図示)が形成され得る。絶縁膜は、第2電極20が貫通孔に挿入される際に、第2電極20と第1電極10との接触を阻害し得る。樹脂粒子群は、例えば、ポリイミド等を含んでいてもよい。
【0086】
第2電極20は、任意の方法により配置され得る。例えば、正極活物質と導電材とバインダと分散媒とが混合されることにより、正極ペーストが準備される。例えば正極ペーストが貫通孔13に圧入されてもよい。これにより貫通孔13内に正極ペーストが充填され得る。正極ペーストが乾燥されることにより、第2電極20が形成され得る。
【0087】
以上より、電池要素50が形成され得る。電池要素50に集電体が取り付けられてもよい。例えば、第1電極10の側面に金属線が巻き付けられてもよい。金属線は、第1電極10の集電体として機能し得る。例えば、第1主面11および第2主面の少なくとも一方に金属箔が貼り付けられてもよい。金属箔は、第2電極20と接触する。金属箔は、第2電極20の集電体として機能し得る。さらに、各集電体に端子が接続されてもよい。
【0088】
《(d)電解液の含浸》
本製造方法は、セパレータ30に電解液を含浸することを含んでいてもよい。例えば、外装体が準備される。外装体に電池要素50が収納される。外装体内に電解液が注入される。電解液の注入後、外装体が密閉される。電解液はセパレータ30に含浸され得る。
以上より、本電池100が製造され得る。
【実施例
【0089】
<試験電池の製造>
以下のように、No.1~9に係る試験電池が製造された。以下、例えば「No.1に係る試験電池」が「No.1」と略記され得る。
【0090】
《No.1》
(a)第1電極の準備
下記材料が準備された。
負極活物質:天然黒鉛(D50:15μm)
バインダ:CMC
分散媒:イオン交換水
【0091】
100質量部の負極活物質と、10質量部のバインダと、60質量部の分散媒とが混合されることにより、負極ペーストが準備された。負極ペーストが金型から押し出されることにより、成形体が形成された。成形体が120℃で3時間乾燥されることにより、第1電極が形成された。第1電極は下記構造を有していた。
【0092】
外形:円柱状(直径:20mm、高さ:10mm)
貫通孔の配置:規則的(ハニカム状)
貫通孔:正六角形状(1辺の長さ:700μm、リブの厚さ:200μm)
【0093】
(b)セパレータの形成
(b1)第1層の形成
下記材料が準備された。
第1無機粒子群:ベーマイト(D150:0.5μm)
第1バインダ:PVDF(製品名「KFポリマー」、グレード「♯8500」、クレハ社製)
第1分散媒:NMP
【0094】
57質量部の第1無機粒子群と、5質量部の第1バインダと、38質量部の第1分散媒とが混合されることにより、第1ペーストが準備された。3~5gの第1ペーストが第1電極の第1主面に載せられた。真空ポンプにより、第2主面側から第1ペーストが貫通孔内に吸引された。これにより第1ペーストが貫通孔の内壁に付着した。第1ペーストが付着した第1電極(ハニカム電極)が120℃で15分乾燥された。これにより第1層が形成された。光学顕微鏡により、第1層の平均厚さ(第1厚さ)が測定された。第1厚さは65μmであった。
【0095】
(b2)第2層の形成
下記材料が準備された。
第2無機粒子群:酸化アルミニウム(D250:0.1μm)
第2バインダ:PVDF(製品名「KFポリマー」、グレード「♯8500」、クレハ社製)
第2分散媒:NMP
【0096】
45質量部の第2無機粒子群と、7質量部の第2バインダと、48質量部の第2分散媒とが混合されることにより、第2ペーストが準備された。3~5gの第2ペーストが第1電極の第1主面に載せられた。真空ポンプにより、第2主面側から第2ペーストが貫通孔内に吸引された。これにより第2ペーストが第1層の表面に付着した。第2ペーストが付着した第1電極が120℃で15分乾燥された。これにより第2層が形成された。光学顕微鏡により、セパレータ全体の厚さ(第1層と第2層との合計厚さ)が測定された。セパレータ全体の厚さは87μmであった。すなわち第2層の厚さ(第2厚さ)は、22μmであった。
【0097】
図8は、本実施例におけるセパレータの形成過程を示す第1図である。図8には、第1層31形成後のX線CT画像が示されている。第1電極10(ハニカム電極)に、複数の貫通孔13が形成されている。貫通孔13の内壁が第1層31で被覆されている。
【0098】
図9は、本実施例におけるセパレータの形成過程を示す第2図である。図9には、第1層31形成後のX線CT画像と、第2層32形成後のX線CT画像とが示されている。第1層31の形成後、第1層31内に球状のボイド3がみられる。第2層32の形成後(セパレータ30の形成後)、ボイド3が小さくなっている。第2無機粒子群2の一部がボイド3に充填されるためと考えられる。
【0099】
(c)第2電極の配置
電着塗料(製品名「エレコートPI」、シミズ社製)が準備された。電着塗料は、分散質と、分散媒とを含んでいた。分散質は、樹脂粒子群(ポリイミド)を含んでいた。分散媒は、水を含んでいた。Ni平線(厚さ:50μm、幅:3mm)が準備された。Ni平線が第1電極の側面に巻き付けられた。Ni平線が電源に接続された。第1電極が電着塗料に浸漬された。第1電極を陰極とし、かつ作用極を陽極として、30Vの電圧が2分間印加された。これにより、第1主面および第2主面が絶縁膜で被覆された。絶縁膜の形成後、水によって第1電極が軽く洗浄されることにより、余分な電着塗料が除去された。洗浄後、第1電極が180℃で1時間熱処理された。
【0100】
下記材料が準備された。
正極活物質:コバルト酸リチウム(D50:10μm)
導電材:アセチレンブラック
バインダ:PVDF(製品名「KFポリマー」、グレード「♯1300」、クレハ社製)
分散媒:NMP
【0101】
64質量部の正極活物質と、4質量部の導電材と、2質量部のバインダと、30質量部の分散媒とが混合されることにより、正極ペーストが準備された。プラスチック製のシリンジが準備された。シリンジのバレル内に、第1電極(ハニカム電極)が固定された。バレル内において、第1電極とプランジャとの間に、3.5gの正極ペーストが配置された。プランジャにより、正極ペーストが第1電極内に押し込まれた。すなわち、正極ペーストが貫通孔に圧入された。押し込み側と反対側の開口部から、正極ペーストが吐出した時点で、プランジャの押し込みが停止された。正極ペーストの圧入後、第1電極が120℃で3時間乾燥された。これにより、貫通孔内に第2電極が形成された。以上より電池要素が形成された。
【0102】
電池要素において、第1電極と第2電極との間の直流抵抗がテスターにより測定された。下記表2において、「OK」は、直流抵抗が1MΩ以上であったことを示す。「NG」は、直流抵抗が1MΩ未満であったことを示す。なお結果が「OK」であった試料では、直流抵抗が測定限界を超えていた。
【0103】
第1主面と第2主面とに、それぞれ、0.5gの正極ペーストが塗布された。正極ペーストを接着材として、アルミニウム(Al)箔が第1主面および第2主面に貼り付けられた。Al箔は第1電極(正極)の集電体である。Al箔は15μmの厚さを有していた。電池要素が120℃で15分乾燥された。第2電極の側面(外周面)に、Ni平線(厚さ:50μm、幅:3mm)が1周にわたって巻き付けられた。Ni平線は第2電極(負極)の集電体である。Al箔と、Ni平線とに、それぞれステンレス製のリードタブ(端子)が溶接された。
【0104】
(d)電解液の含浸
外装体として、アルミニウムラミネートフィルム製のパウチが準備された。外装体に、電池要素が収納された。5gの電解液が外装体に注入された。電解液の注入後、外装体が真空封止された。電解液は下記組成を有していた。
【0105】
電解液の組成
支持電解質:LiPF6(濃度:1mоl/kg)
溶媒:EC/EMC/DMC=1/1/1(体積比)
【0106】
以上より、試験電池が製造された。試験電池の設計容量は、400mAhであった。
【0107】
初回充放電
下記条件の充電、休止、放電が順次実施された。
充電:CCCV、CC電流=40mA、CV電圧=4.2V、終止電流=10mA
休止:10分
放電:CCCV、CC電流=40mA、CV電圧=3V、終止電流=10mA
【0108】
なお「CC」は定電流方式を示し、「CV」は定電圧方式を示し、「CCCV」は定電流-定電圧方式を示す。
【0109】
初回充放電後、下記条件により、試験電池の電圧が調整された。
充電:CCCV、CC電流=40mA、CV電圧=3.85V、終止電流=10mA
【0110】
電圧の調整後、200mAのCC電流で、試験電池が5秒間放電された。放電開始から5秒経過後の電圧降下量が測定された。電圧降下量と放電電流とから、電池抵抗が求められた。電池抵抗は、下記表2に示される。
【0111】
《No.2~9》
下記表2のセパレータを有する試験電池がそれぞれ製造された。第1厚さおよび第2厚さは、第1ペーストおよび第2ペーストの固形分率により調整された。
【0112】
No.6においては、ベーマイトに代えて酸化チタンが第1無機粒子群として使用された。
【0113】
No.9においては、第2層が形成されなかった。すなわちNo.9において、セパレータが第1層からなる。No.9は、絶縁が不十分であったため、電池抵抗が測定されていない。
【0114】
【表2】
【0115】
<結果>
No.1~8においては、十分な絶縁が達成された。No.1~8においては、セパレータが第1層と第2層とを有し、第2平均粒子径が第1平均粒子径に比して小さい。No.1~8においては、ボイドが低減されていると考えられる。
【0116】
No.9においては、絶縁が不十分であった。No.9においては、セパレータが単層構造を有する。No.9においては、大きいボイドが残存していると考えられる。
【0117】
No.1~6は、No.7~8に比して、小さい電池抵抗を有していた。No.1~6においては、「T2/T1≦0.5」の関係が満たされている。
【0118】
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【符号の説明】
【0119】
1 第1無機粒子群、2 第2無機粒子群、3 ボイド、10 第1電極、11 第1主面、12 第2主面、13 貫通孔、20 第2電極、30 セパレータ、31 第1層、32 第2層、50 電池要素、100 電池。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9