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特許7601022発光装置の検査方法および発光装置の検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】発光装置の検査方法および発光装置の検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20241210BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20241210BHJP
【FI】
G01R31/26 F
H01L33/00 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022019127
(22)【出願日】2022-02-09
(65)【公開番号】P2023116361
(43)【公開日】2023-08-22
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】田部 哲夫
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-204176(JP,A)
【文献】特開2020-038854(JP,A)
【文献】特開2017-098051(JP,A)
【文献】特開2008-060604(JP,A)
【文献】特開2002-111461(JP,A)
【文献】特開2000-151898(JP,A)
【文献】特開2009-198196(JP,A)
【文献】特開平2-078977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0131345(US,A1)
【文献】特表2008-518459(JP,A)
【文献】中国実用新案第2672509(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/26-31/27、
H01L 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード端子とカソード端子とを有する発光素子と、
前記発光素子と直列に接続された第1抵抗器と、
前記発光素子と並列に接続された迂回抵抗器と、
を有する発光装置の検査方法において、
反転入力端子と出力端子とを導通させたオペアンプを用い、
定電流源の定電流源正極端子および電圧計の電圧計正極端子と導通する第1端子と、
前記定電流源の定電流源負極端子および前記電圧計の電圧計負極端子と導通する第2端子と、
前記オペアンプの前記反転入力端子または非反転入力端子と導通する第3端子と、を用い、
前記第1端子を前記発光素子の前記アノード端子に接続し、
前記第2端子を前記発光素子の前記カソード端子に接続し、
前記第1端子または前記第2端子と、前記第3端子と、の間に前記第1抵抗器または前記迂回抵抗器の少なくとも一部の区間を挟むように、前記第3端子を接続し、
前記発光素子に定電流を流しながら前記発光素子の前記アノード端子と前記カソード端子との間の電圧を測定すること
を含む発光装置の検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置の検査方法において、
前記第2端子と前記第3端子との間に前記迂回抵抗器を配置するように前記第3端子を接続すること
を含む発光装置の検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の発光装置の検査方法において、
前記第1端子と前記第3端子との間に前記第1抵抗器を配置するように前記第3端子を接続すること
を含む発光装置の検査方法。
【請求項4】
請求項1に記載の発光装置の検査方法において、
前記発光装置の前記迂回抵抗器は、
第1迂回抵抗器と前記第1迂回抵抗器と直列に接続された第2迂回抵抗器とを有し、
前記第1端子と前記第3端子との間に前記第1迂回抵抗器を配置するように前記第3端子を接続すること
を含む発光装置の検査方法。
【請求項5】
請求項1に記載の発光装置の検査方法において、
前記発光装置の前記迂回抵抗器は、
第1迂回抵抗器と前記第1迂回抵抗器と直列に接続された第2迂回抵抗器とを有し、
前記第2端子と前記第3端子との間に前記第2迂回抵抗器を配置するように前記第3端子を接続すること
を含む発光装置の検査方法。
【請求項6】
発光装置の検査方法において、
前記発光装置は、
発光素子と、
前記発光素子と直列に接続された第1抵抗器と、
前記発光素子と並列に接続された迂回抵抗器と、を有するものであり、
前記第1抵抗器または前記迂回抵抗器の少なくとも一部の区間の電位差を-100μV以上100μV以下に制御しつつ、
前記発光素子に定電流を流しながら前記発光素子のアノード端子とカソード端子との間の電圧を測定すること
を含む発光装置の検査方法。
【請求項7】
発光装置の検査方法において、
前記発光装置は、
発光素子と、
前記発光素子と直列に接続された第1抵抗器と、
前記発光素子と並列に接続された迂回抵抗器と、を有するものであり、
前記第1抵抗器または前記迂回抵抗器の少なくとも一部の区間の電位差をゼロとなるように制御しつつ、
前記発光素子に定電流を流しながら前記発光素子のアノード端子とカソード端子との間の電圧を測定すること
を含む発光装置の検査方法。
【請求項8】
アノード端子とカソード端子とを有する発光素子と、前記発光素子と直列に接続された第1抵抗器と、前記発光素子と並列に接続された迂回抵抗器と、を有する発光装置の検査装置において、
前記発光素子の前記アノード端子と接続するための第1端子と、
前記発光素子の前記カソード端子と接続するための第2端子と、
第3端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間に定電流を流す定電流源と、
前記第1端子と前記第2端子との間の電圧を測定する電圧計と、
オペアンプと、
を有し、
前記定電流源は、
前記第1端子と導通する定電流源正極端子と、
前記第2端子と導通する定電流源負極端子と、を有し、
前記電圧計は、
前記第1端子と導通する電圧計正極端子と、
前記第2端子と導通する電圧計負極端子と、を有し、
前記オペアンプは、
正電源端子と、負電源端子と、非反転入力端子と、反転入力端子と、出力端子と、を有し、
前記オペアンプは、
前記出力端子と前記反転入力端子とが導通されており、
前記第1端子または前記第2端子と、前記第3端子と、の間に前記第1抵抗器または前記迂回抵抗器の少なくとも一部の区間を挟むように、前記第3端子を接続することが可能であること
を含む発光装置の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、発光装置の検査方法および発光装置の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDを搭載された発光装置は、製品製造時にLEDの劣化を判定することがある。LEDを実装済みの回路基板において、LEDに微小電流を流し、LEDの両端子間の電圧を測定することによりLEDの劣化を判定する。
【0003】
特許文献1には、LEDの順方向に1μA以下の第1定電流を流して第1の電圧を測定し、第1定電流の約10倍の第2定電流をLEDの順方向に流して第2の電圧を測定する検査方法が開示されている。第1の電圧が予め定められた一定基準電圧以上の発光装置を適正であると判断し、その後、第1電圧と第2電圧との差が予め定められた一定の範囲内にある発光装置を適正であると判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-170311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LEDを制御するために半導体スイッチが用いられることがある。半導体スイッチは、数μA程度の漏れ電流を発生させることがある。この漏れ電流により、LEDがわずかに点灯する。このLEDの微点灯を防止するために、LEDに並列に迂回抵抗器を設けることがある。このような発光装置を検査する場合には、迂回抵抗器に迂回電流が流れ、LEDに流れる電流が迂回電流の分だけ定電流からずれてしまう。
【0006】
迂回電流を防止するために、LEDに直列にダイオードを発光装置に設けることがある。しかし、このダイオードはこの劣化検査のときにだけ必要な素子であり、発光装置の使用時には不要である。ダイオードによる電圧降下は比較的小さい。しかし、ダイオードが発光装置内に存在することにより、駆動電圧が上昇し、使用電力が上昇し、回路基板が複雑化する。
【0007】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、LEDに並列な迂回電流抵抗器を有する発光装置の劣化を判定することができる発光装置の検査方法および発光装置の検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様における発光装置の検査方法は、アノード端子とカソード端子とを有する発光素子と、発光素子と直列に接続された第1抵抗器と、発光素子と並列に接続された迂回抵抗器と、を有する発光装置の検査方法である。この方法では、反転入力端子と出力端子とを導通させたオペアンプを用い、定電流源の定電流源正極端子および電圧計の電圧計正極端子と導通する第1端子と、定電流源の定電流源負極端子および電圧計の電圧計負極端子と導通する第2端子と、オペアンプの反転入力端子または非反転入力端子と導通する第3端子と、を用いる。第1端子を発光素子のアノード端子に接続する。第2端子を発光素子のカソード端子に接続する。第1端子または第2端子と、第3端子と、の間に第1抵抗器または迂回抵抗器の少なくとも一部の区間を挟むように、第3端子を接続する。発光素子に定電流を流しながら発光素子のアノード端子とカソード端子との間の電圧を測定する。
【0009】
この発光装置の検査方法は、迂回抵抗器の両端の端子間にかかる電圧をほとんどゼロに制御しつつ、発光素子に定電流を流しながら、発光素子の両端の端子間の電圧を測定する。測定の際に、迂回抵抗器に電流がほとんど流れないため、発光素子に流れる電流は定電流源が流す定電流にほぼ等しい。したがって、この発光装置の検査方法を用いることにより、漏れ電流を迂回するための迂回抵抗器を有する発光素子の劣化を正確に判定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書では、LEDに並列な迂回電流抵抗器を有する発光装置の劣化を判定することができる発光装置の検査方法および発光装置の検査装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態の検査対象である発光装置DV1の回路図である。
図2】第1の実施形態の発光装置DV1の検査装置100の回路図である。
図3】第1の実施形態の発光装置DV1の検査方法を示す回路図(その1)である。
図4】第1の実施形態の発光装置DV1の検査方法を示す回路図(その2)である。
図5】従来の発光装置の検査方法を示す回路図(その1)である。
図6】従来の発光装置の検査方法を示す回路図(その2)である。
図7】第2の実施形態の発光装置DV1の検査方法を示す回路図である。
図8】第3の実施形態の検査対象である発光装置DV2の回路図である。
図9】第3の実施形態の発光装置DV2の検査方法を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施形態について、発光装置の検査方法および発光装置の検査装置を例に挙げて図を参照しつつ説明する。しかし、本明細書の技術はこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、実施形態において、所定の抵抗器の両端の端子間の電位差をゼロとなるように制御するが、実際には、完全にゼロとなるわけではなく、極めて小さい電位差が生じることがある。
【0013】
(第1の実施形態)
1.発光装置
図1は、第1の実施形態の検査対象である発光装置DV1の回路図である。発光装置DV1は、発光素子LED1と、抵抗器R1と、迂回抵抗器RD1と、半導体スイッチSW1と、を有する。
【0014】
発光素子LED1は、電圧の印加により発光する半導体発光素子である。発光素子LED1は、アノード端子TM1とカソード端子TM2とを有する。
【0015】
抵抗器R1は、発光素子LED1と直列に接続されている電気抵抗である。抵抗器R1は単一の素子に限らず、発光素子LED1と直列に接続されている複数の素子等の抵抗を含めたものである。
【0016】
迂回抵抗器RD1は、半導体スイッチSW1による漏れ電流を迂回させるための電気抵抗である。迂回抵抗器RD1は、発光素子LED1および抵抗器R1と並列に接続されている。迂回抵抗器RD1は単一の素子に限らず、発光素子LED1および抵抗器R1と並列に接続されている複数の素子等の抵抗を含めたものである。
【0017】
半導体スイッチSW1は、発光素子LED1に電圧を印加するためのスイッチである。半導体スイッチSW1は、発光素子LED1および抵抗器R1と、迂回抵抗器RD1と、直列に接続されている。半導体スイッチSW1は、発光素子LED1と直列に接続されていれば、図1と異なる位置に配置されていてもよい。以降の図では、半導体スイッチSW1を省略することがある。
【0018】
発光装置DV1は、端子TM3を有する。アノード端子TM1と端子TM3との間には抵抗器R1が配置されている。カソード端子TM2と端子TM3との間には迂回抵抗器RD1が配置されている。
【0019】
2.発光装置の検査装置
図2は、第1の実施形態の発光装置DV1の検査装置100の回路図である。検査装置100は、定電流源A1と、電圧計VM1と、正電圧電源BP1と、負電圧電源BM1と、オペアンプOA1と、第1端子TL1と、第2端子TL2と、第3端子TL3と、を有する。
【0020】
定電流源A1は、第1端子TL1と第2端子TL2との間にある素子に定電流を流すための電流源である。定電流源A1は、第1端子TL1と導通する定電流源正極端子と、第2端子TL2と導通する定電流源負極端子と、を有する。実際には、定電流源A1は、発光装置DV1のアノード端子TM1とカソード端子TM2との間に定電流を流す。定電流源A1が流す電流の向きは、アノード端子TM1からカソード端子TM2の向きである。つまり、発光素子LED1のアノードからカソードに向かって電流ILEDが順方向に流れる。電流ILEDは、例えば、0.1μA以上10μA以下である。
【0021】
電圧計VM1は、第1端子TL1と第2端子TL2との間の電圧を測定するための計測器である。電圧計VM1は、第1端子TL1と導通する電圧計正極端子と、第2端子TL2と導通する電圧計負極端子と、を有する。実際には、電圧計VM1は、発光装置DV1のアノード端子TM1とカソード端子TM2との間の電圧を測定する。これにより、電圧計VM1は、発光素子LED1の端子間の電圧を測定することができる。
【0022】
オペアンプOA1は、正電源端子と負電源端子と非反転入力端子と反転入力端子と出力端子とを有する。
【0023】
正電源端子は正電圧電源BP1に接続されている。負電源端子は負電圧電源BM1に接続されている。
【0024】
非反転入力端子は、第3端子TL3と導通している。反転入力端子および出力端子は、第2端子TL2と導通している。
【0025】
オペアンプOA1はボルテージフォロワ回路を構成している。すなわち、反転入力端子と出力端子とを導通させるネガティブフィードバックが実現されている。
【0026】
正電圧電源BP1は、オペアンプOA1の正電源端子に正の電圧を入力する。正電圧電源BP1は、オペアンプOA1の正電源端子に電気的に接続されている。
【0027】
負電圧電源BM1は、オペアンプOA1の負電源端子に負の電圧を入力する。負電圧電源BM1は、オペアンプOA1の負電源端子に電気的に接続されている。
【0028】
第1端子TL1は、発光素子LED1のアノード端子TM1と接続させるための端子である。第1端子TL1は、定電流源A1の定電流源正極端子および電圧計VM1の電圧計正極端子と導通している。
【0029】
第2端子TL2は、発光素子LED1のカソード端子TM2と接続させるための端子である。第2端子TL2は、定電流源A1の定電流源負極端子および電圧計VM1の電圧計負極端子と導通している。
【0030】
第3端子TL3は、オペアンプOA1の反転入力端子または非反転入力端子と導通させるための端子である。
【0031】
検査装置100は、第1端子TL1または第2端子TL2と、第3端子TL3と、の間に抵抗器R1または迂回抵抗器RD1の少なくとも一部の区間を挟むように、第3端子TL3を接続することが可能である。
【0032】
3.発光装置の検査方法
図3は、第1の実施形態の発光装置DV1の検査方法を示す回路図(その1)である。図3に示すように、検査装置100を用いる。
【0033】
第1端子TL1は定電流源A1の定電流源正極端子および電圧計VM1の電圧計正極端子と導通している。第2端子TL2は定電流源A1の定電流源負極端子および電圧計VM1の電圧計負極端子と導通している。
【0034】
ボルテージフォロワを構成するオペアンプOA1を用いる。オペアンプOA1の非反転入力端子を第3端子TL3に導通させる。オペアンプOA1の反転入力端子および出力端子を第2端子TL2に導通させる。このように、第2端子TL2と第3端子TL3との間に迂回抵抗器RD1を配置するように第3端子を接続する。
【0035】
ネガティブフィードバックによりボルテージフォロワを構成しているため、オペアンプOA1の反転入力端子の電位と、オペアンプOA1の非反転入力端子の電位とは、原理的に等しい。このため、第2端子TL2と第3端子TL3との間の電位差は、ネガティブフィードバックの精度の範囲内においてゼロである。
【0036】
第1端子TL1を発光素子LED1のアノード端子TM1に接続する。第2端子TL2を発光素子LED1のカソード端子TM2に接続する。第3端子TL3と第1端子TL1との間に抵抗器R1を挟むように第3端子TL3を配置する。
【0037】
迂回抵抗器RD1の正極側端子は、第3端子TL3に接続されており、迂回抵抗器RD1の負極側端子は、第2端子TL2に接続されている。このとき、迂回抵抗器RD1の両端の電位は等しい。すなわち、迂回抵抗器RD1には電圧が印加されず、迂回抵抗器RD1には電流が流れない。
【0038】
図4は、第1の実施形態の発光装置DV1の検査方法を示す回路図(その2)である。図4には、回路に流れる電流が示されている。図4に示すように、定電流源A1が定電流I1を流す。これにより、発光素子LED1に素子電流ILEDが流れる。このとき、抵抗器R1および迂回抵抗器RD1は、発光素子LED1に並列に接続された状態となっている。抵抗器R1および迂回抵抗器RD1に流れる電流を仮想的に電流Iとする。
【0039】
上記の電流は次式を満たす。
LED = I1 - I ………(1)
【0040】
ここで、迂回抵抗器RD1の両端の端子間の電圧がゼロである。このため、迂回抵抗器RD1には電流は流れない。また、抵抗器R1にも電流は流れない。したがって、電流Iはゼロである。これにより、次式が成り立つ。
LED = I1 ………(2)
【0041】
この場合には、発光素子LED1に所望の定電流I1を流すことができる。つまり、発光素子LED1に定電流I1を流しながら、発光素子LED1の両端の端子間の電圧を測定することができる。
【0042】
電圧計VM1が測定した発光素子LED1の電圧が予め定められた閾値電圧以上であれば、その発光素子LED1を良品であると判断する。電圧計VM1が測定した発光素子LED1の電圧が予め定められた閾値電圧未満であれば、その発光素子LED1を不良品であると判断する。ここで、良品とは、劣化しておらず好適に発光する発光素子を意味している。このように、検査装置100は、発光素子LED1の電圧を正確に測定することができる。
【0043】
第1の実施形態では、迂回抵抗器RD1の両端の端子間の電位差をゼロとなるように制御している状態で、定電流源A1が発光素子LED1のアノード端子TM1とカソード端子TM2との間に定電流を流しながら、電圧計VM1が発光素子LED1のアノード端子TM1とカソード端子TM2との間の電圧を測定する。
【0044】
4.従来技術との比較
4-1.従来の場合
図5は、従来の発光装置の検査方法を示す回路図(その1)である。この場合には、電流Iがゼロでなく、式(2)が成り立たない。このため、定電流源A1が流す電流I1と、電圧計VM1が測定する電圧とが対応していない。すなわち、発光素子LED1の電圧を正確に測定することができない。
【0045】
4-2.従来の場合(ダイオード)
図6は、従来の発光装置の検査方法を示す回路図(その2)である。この場合には、発光素子LED1に直列にダイオードD1が配置されている。このため、式(2)が成り立つ。しかし、ダイオードD1は、この検査のときにだけ必要な素子である。発光装置の使用時には不要である。ダイオードD1による電圧降下は約0.7V程度である。ダイオードD1が発光装置DV1内に存在することにより、駆動電圧が上昇し、使用電力が上昇し、回路基板が複雑化する。
【0046】
5.第1の実施形態の効果
第1の実施形態の発光装置DV1の検査方法は、検査装置100を用いる。これにより、迂回抵抗器RD1の両端の端子間にかかる電圧をゼロに制御しつつ、発光素子LED1に定電流を流しながら、発光素子LED1の両端の端子間の電圧を測定する。測定の際に、迂回抵抗器RD1に電流が流れないため、発光素子LED1に流れる電流は定電流I1である。これにより、漏れ電流を迂回するための迂回抵抗器を有する発光素子LED1の劣化を正確に判定することができる。
【0047】
6.変形例
6-1.端子の接続状態
前述のように、非反転入力端子の電位と反転入力端子の電位とは等しくなるように制御されている。このため、非反転入力端子と反転入力端子とを入れ替えてもよい。つまり、図3において、オペアンプOA1の非反転入力端子を第2端子TL2に接続し、オペアンプOA1の反転入力端子を第3端子TL3に接続してもよい。このように、第2端子TL2と第3端子TL3との間に迂回抵抗器RD1を配置するように第3端子を接続する。
【0048】
6-2.接地
検査装置100のいずれかの箇所を接地してもよい。
【0049】
6-3.電位差
迂回抵抗器RD1の両端の端子間の電位差を-100μV以上100μV以下に制御してもよい。
【0050】
6-4.組み合わせ
上記の変形例を組み合わせてもよい。
【0051】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。第2の実施形態において検査する発光素子LED1および検査装置100は第1の実施形態のものと同様である。したがって、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0052】
1.発光装置の検査方法
図7は、第2の実施形態の発光装置DV1の検査方法を示す回路図である。図7に示すように、検査装置100を用いる。定電流源A1および電圧計VM1の接続状態は、第1の実施形態と同様である。オペアンプOA1の接続状態は、第1の実施形態と異なっている。
【0053】
オペアンプOA1の非反転入力端子を第1端子TL1に導通させる。オペアンプOA1の反転入力端子および出力端子を第3端子TL3に導通させる。このように、第1端子TL1と第3端子TL3との間に抵抗器R1を配置するように第3端子を接続する。
【0054】
このため、抵抗器R1および迂回抵抗器RD1に電流Iが流れない。
【0055】
2.第2の実施形態の効果
第2の実施形態の発光装置DV1の検査方法は、検査装置100を用いる。これにより、抵抗器R1の両端の端子間にかかる電圧をゼロに制御しつつ、発光素子LED1に定電流を流しながら、発光素子LED1の両端の端子間の電圧を測定する。測定の際に、抵抗器R1に電流が流れないため、発光素子LED1に流れる電流は定電流I1である。これにより、漏れ電流を迂回するための迂回抵抗器を有する発光素子LED1の劣化を正確に判定することができる。
【0056】
3.変形例
3-1.端子の接続状態
非反転入力端子と反転入力端子とを入れ替えてもよい。つまり、図7において、オペアンプOA1の非反転入力端子を第3端子TL3に接続し、オペアンプOA1の反転入力端子を第1端子TL1に接続してもよい。このように、第1端子TL1と第3端子TL3との間に抵抗器R1を配置するように第3端子を接続する。
【0057】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。第2の実施形態において検査に用いる検査装置100は第1の実施形態のものと同様である。したがって、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0058】
1.発光装置
図8は、第3の実施形態の検査対象である発光装置DV2の回路図である。発光装置DV2は、発光素子LED1と、抵抗器R1と、迂回抵抗器RD2、RD3と、半導体スイッチSW1と、を有する。
【0059】
迂回抵抗器RD2、RD3は、半導体スイッチSW1による漏れ電流を迂回させるための迂回抵抗器である。迂回抵抗器RD2、RD3は、発光素子LED1と並列に接続されている抵抗成分である。迂回抵抗器RD2、RD3は単一の素子に限らず、発光素子LED1と並列に接続されている複数の素子等の抵抗を含めたものである。
【0060】
迂回抵抗器RD2と迂回抵抗器RD3とは直列に接続されている。迂回抵抗器RD2は、迂回抵抗器RD3よりもアノード側に配置されている。迂回抵抗器RD2の電気抵抗値と迂回抵抗器RD3の電気抵抗値との間の大小関係はいずれであってもよい。
【0061】
迂回抵抗器RD2、RD3は、抵抗器R1に直列に接続されている。
【0062】
2.発光装置の検査方法
図9は、第3の実施形態の発光装置DV2の検査方法を示す回路図である。図9に示すように、検査装置100を用いる。定電流源A1および電圧計VM1の接続状態は、第1の実施形態と同様である。オペアンプOA1の接続状態は、第1の実施形態と異なっている。
【0063】
オペアンプOA1の非反転入力端子を第1端子TL1に導通させる。オペアンプOA1の反転入力端子および出力端子を第3端子TL3に導通させる。このように、第1端子TL1と第3端子TL3との間に迂回抵抗器RD2を配置するように第3端子を接続する。
【0064】
このため、抵抗器R1に電流が流れず、迂回抵抗器RD2、RD3に電流Iが流れない。
【0065】
3.第3の実施形態の効果
第3の実施形態の発光装置DV2の検査方法は、検査装置100を用いる。これにより、迂回抵抗器RD2の両端の端子間にかかる電圧をゼロに制御しつつ、発光素子LED1に定電流を流しながら、発光素子LED1の両端の端子間の電圧を測定する。測定の際に、迂回抵抗器RD2に電流が流れないため、発光素子LED1に流れる電流は定電流I1である。これにより、漏れ電流を迂回するための迂回抵抗器を有する発光素子LED1の劣化を正確に判定することができる。
【0066】
4.変形例
4-1.端子の接続状態
非反転入力端子と反転入力端子とを入れ替えてもよい。つまり、図9において、オペアンプOA1の非反転入力端子を第3端子TL3に接続し、オペアンプOA1の反転入力端子を第1端子TL1に接続してもよい。このように、第1端子TL1と第3端子TL3との間に迂回抵抗器RD2を配置するように第3端子を接続する。
【0067】
4-2.抵抗器
オペアンプOA1の非反転入力端子を第2端子TL2に導通させ、オペアンプOA1の反転入力端子および出力端子を第3端子TL3に導通させてもよい。このように、第2端子TL2と第3端子TL3との間に迂回抵抗器RD3を配置するように第3端子を接続する。
【0068】
オペアンプOA1の非反転入力端子を第3端子TL3に導通させ、オペアンプOA1の反転入力端子および出力端子を第2端子TL2に導通させてもよい。
【0069】
(付記)
第1の態様における発光装置の検査方法は、アノード端子とカソード端子とを有する発光素子と、発光素子と直列に接続された第1抵抗器と、発光素子と並列に接続された迂回抵抗器と、を有する発光装置の検査方法である。この方法では、反転入力端子と出力端子とを導通させたオペアンプを用い、定電流源の定電流源正極端子および電圧計の電圧計正極端子と導通する第1端子と、定電流源の定電流源負極端子および電圧計の電圧計負極端子と導通する第2端子と、オペアンプの反転入力端子または非反転入力端子と導通する第3端子と、を用いる。第1端子を発光素子のアノード端子に接続する。第2端子を発光素子のカソード端子に接続する。第1端子または第2端子と、第3端子と、の間に第1抵抗器または迂回抵抗器の少なくとも一部の区間を挟むように、第3端子を接続する。発光素子に定電流を流しながら発光素子のアノード端子とカソード端子との間の電圧を測定する。
【0070】
第2の態様における発光装置の検査方法においては、第2端子と第3端子との間に迂回抵抗器を配置するように第3端子を接続する。
【0071】
第3の態様における発光装置の検査方法においては、第1端子と第3端子との間に第1抵抗器を配置するように第3端子を接続する。
【0072】
第4の態様における発光装置の検査方法においては、発光装置の迂回抵抗器は、第1迂回抵抗器と第1迂回抵抗器と直列に接続された第2迂回抵抗器とを有する。第1端子と第3端子との間に第1迂回抵抗器を配置するように第3端子を接続する。
【0073】
第5の態様における発光装置の検査方法においては、発光装置の迂回抵抗器は、第1迂回抵抗器と第1迂回抵抗器と直列に接続された第2迂回抵抗器とを有する。第2端子と第3端子との間に第2迂回抵抗器を配置するように第3端子を接続する。
【0074】
第6の態様における発光装置の検査方法においては、発光装置は、発光素子と、発光素子と直列に接続された第1抵抗器と、発光素子と並列に接続された迂回抵抗器と、を有する。この方法では、第1抵抗器または迂回抵抗器の少なくとも一部の区間の電位差を-100μV以上100μV以下に制御しつつ、発光素子に定電流を流しながら発光素子のアノード端子とカソード端子との間の電圧を測定する。
【0075】
第7の態様における発光装置の検査方法においては、発光装置は、発光素子と、発光素子と直列に接続された第1抵抗器と、発光素子と並列に接続された迂回抵抗器と、を有する。この方法では、第1抵抗器または迂回抵抗器の少なくとも一部の区間の電位差をゼロとなるように制御しつつ、発光素子に定電流を流しながら発光素子のアノード端子とカソード端子との間の電圧を測定する。
【0076】
第8の態様における発光装置の検査装置は、アノード端子とカソード端子とを有する発光素子と、発光素子と直列に接続された第1抵抗器と、発光素子と並列に接続された迂回抵抗器と、を有する発光装置を検査する。検査装置は、発光素子のアノード端子と接続するための第1端子と、発光素子のカソード端子と接続するための第2端子と、第3端子と、第1端子と第2端子との間に定電流を流す定電流源と、第1端子と第2端子との間の電圧を測定する電圧計と、オペアンプと、を有する。定電流源は、第1端子と導通する定電流源正極端子と、第2端子と導通する定電流源負極端子と、を有する。電圧計は、第1端子と導通する電圧計正極端子と、第2端子と導通する電圧計負極端子と、を有する。オペアンプは、正電源端子と、負電源端子と、非反転入力端子と、反転入力端子と、出力端子と、を有する。オペアンプは、出力端子と反転入力端子とが導通されている。検査装置は、第1端子または第2端子と、第3端子と、の間に第1抵抗器または迂回抵抗器の少なくとも一部の区間を挟むように、第3端子を接続することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
DV1、DV2…発光装置
LED1…発光素子
R1…抵抗器
RD1、RD2、RD3…迂回抵抗器
100…検査装置
A1…定電流源
VM1…電圧計
OA1…オペアンプ
TL1…第1端子
TL2…第2端子
TL3…第3端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9