(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/50 20160101AFI20241210BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20241210BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20241210BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20241210BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20241210BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20241210BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241210BHJP
B60L 9/18 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
B60W20/50
B60K6/445 ZHV
B60W10/08 900
B60W10/10 900
B60W10/30 900
B60K6/40
B60L50/16
B60L9/18 P
(21)【出願番号】P 2022022070
(22)【出願日】2022-02-16
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木田 裕一
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-066369(JP,A)
【文献】特開2013-203382(JP,A)
【文献】特開2013-086654(JP,A)
【文献】特開2014-189102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
B60L 50/16
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
第1モータジェネレータと、
第2モータジェネレータと、
前記内燃機関のトルク、前記第1モータジェネレータのトルク、及び前記第2モータジェネレータのトルクを、互いに分配可能な遊星歯車機構と、
前記内燃機関のクランク軸の回転に基づきオイルを吐出するオイルポンプと、
前記第1モータジェネレータの回転軸の回転を規制する規制装置と、
を備え、
前記遊星歯車機構は、自転するサンギアと、前記サンギアと同軸で自転するリングギアと、前記サンギア及び前記リングギアの双方に噛み合っており、且つ前記サンギアを中心に公転する複数のピニオンギアと、前記ピニオンギアの公転に従って前記サンギアと同軸で回転するキャリアとを有し、
前記キャリアは前記クランク軸に接続しており、前記サンギアは前記第1モータジェネレータの回転軸に接続しており、前記リングギアは前記第2モータジェネレータの回転軸に接続している
車両に適用され、
前記車両の走行モードを、前記内燃機関を停止させつつ前記第2モータジェネレータを駆動させて前記車両を走行させるEVモード、及び、前記内燃機関を駆動させて前記車両を走行させる非EVモードのいずれかの走行モードに制御可能な制御装置であって、
前記EVモード中に前記オイルポンプの駆動が要求される規定要件が満たされたことを条件に、前記内燃機関での燃料の燃焼を停止させた状態で、前記規制装置により前記第1モータジェネレータの回転軸の回転をゼロに規制しつつ前記クランク軸を回転させる第1駆動処理と、
前記EVモード中に前記規定要件が満たされたことを条件に、前記内燃機関での燃料の燃焼を停止させた状態で、前記第1モータジェネレータから前記クランク軸にトルクを付与しつつ、前記クランク軸の回転速度が予め定められた規定範囲内となるように前記クランク軸を回転させる第2駆動処理と、を実行可能であり、
前記第1駆動処理を実行したと仮定したときに前記回転速度が前記規定範囲内になると予想される場合には前記第1駆動処理を実行し、前記第1駆動処理を実行したと仮定したときに前記回転速度が前記規定範囲外になると予想される場合には前記第2駆動処理を実行する
車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両は、内燃機関、第1モータジェネレータ、第2モータジェネレータ、及び遊星歯車機構を備えている。遊星歯車機構は、サンギア、リングギア、複数のピニオンギア、及びキャリアを備えている。サンギアは、自転可能である。リングギアは、サンギアと同軸で回転可能である。ピニオンギアは、サンギア及びリングギアの双方に噛み合っている。ピニオンギアは、サンギアを中心に公転可能である。キャリアは、ピニオンギアの公転に従ってサンギアと同軸で回転可能である。内燃機関のクランク軸は、キャリアに接続している。第1モータジェネレータの回転軸は、サンギアに接続している。第2モータジェネレータの回転軸は、リングギアに接続している。
【0003】
さらに、特許文献1の車両は、オイルポンプ、及びブレーキ装置を備えている。オイルポンプは、内燃機関のクランク軸の回転に基づきオイルを吐出する、いわゆる機械式のオイルポンプである。ブレーキ装置は、第1モータジェネレータの回転軸の回転を規制可能である。
【0004】
特許文献1の車両の制御装置は、車両の走行モードを、内燃機関を停止させつつ第2モータジェネレータを駆動させて車両を走行させるEVモード、及び、内燃機関を駆動させて車両を走行させる非EVモードのいずれかの走行モードに制御する。また、特許文献1の車両の制御装置は、EVモード中にオイルポンプの駆動が要求される条件が満たされたときに、オイルポンプを駆動するポンプ駆動処理を実行する。このポンプ駆動処理では、ブレーキ装置により第1モータジェネレータの回転軸の回転速度をゼロに規制することでクランク軸を回転させる。その結果、オイルポンプが駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような車両では、ポンプ駆動処理が実行されると、第2モータジェネレータの回転軸の回転速度に応じて内燃機関のクランク軸の回転速度が定まる。また、第2モータジェネレータの回転軸の回転速度は、車両の速度等によって定まる。つまり、ポンプ駆動処理中のクランク軸の回転速度は、車両の速度等によって定まる。そのため、ポンプ駆動処理中のクランク軸の回転速度は、必ずしも好ましい範囲内に収まるとは限らない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための車両の制御装置は、内燃機関と、第1モータジェネレータと、第2モータジェネレータと、前記内燃機関のトルク、前記第1モータジェネレータのトルク、及び前記第2モータジェネレータのトルクを、互いに分配可能な遊星歯車機構と、前記内燃機関のクランク軸の回転に基づきオイルを吐出するオイルポンプと、前記第1モータジェネレータの回転軸の回転を規制する規制装置と、を備え、前記遊星歯車機構は、自転するサンギアと、前記サンギアと同軸で自転するリングギアと、前記サンギア及び前記リングギアの双方に噛み合っており、且つ前記サンギアを中心に公転する複数のピニオンギアと、前記ピニオンギアの公転に従って前記サンギアと同軸で回転するキャリアとを有し、前記キャリアは前記クランク軸に接続しており、前記サンギアは前記第1モータジェネレータの回転軸に接続しており、前記リングギアは前記第2モータジェネレータの回転軸に接続している車両に適用され、前記車両の走行モードを、前記内燃機関を停止させつつ前記第2モータジェネレータを駆動させて前記車両を走行させるEVモード、及び、前記内燃機関を駆動させて前記車両を走行させる非EVモードのいずれかの走行モードに制御可能な制御装置であって、前記EVモード中に前記オイルポンプの駆動が要求される規定要件が満たされたことを条件に、前記内燃機関での燃料の燃焼を停止させた状態で、前記規制装置により前記第1モータジェネレータの回転軸の回転をゼロに規制しつつ前記クランク軸を回転させる第1駆動処理と、前記EVモード中に前記規定要件が満たされたことを条件に、前記内燃機関での燃料の燃焼を停止させた状態で、前記第1モータジェネレータから前記クランク軸にトルクを付与しつつ、前記クランク軸の回転速度が予め定められた規定範囲内となるように前記クランク軸を回転させる第2駆動処理と、を実行可能であり、前記第1駆動処理を実行したと仮定したときに前記回転速度が前記規定範囲内になると予想される場合には前記第1駆動処理を実行し、前記第1駆動処理を実行したと仮定したときに前記回転速度が前記規定範囲外になると予想される場合には前記第2駆動処理を実行する。
【0008】
上記構成によれば、第1駆動処理及び第2駆動処理のいずれを実行した場合でも、クランク軸の回転速度は、規定範囲内に収まる。したがって、各駆動処理の実行に伴い、クランク軸の回転速度が、規定範囲外の好ましくない回転速度になることは抑制できる。
【0009】
また、上記構成によれば、第1モータジェネレータの回転軸の回転をゼロに規制してもクランク軸の回転速度が規定範囲内になるときには、第1駆動処理を実行する。したがって、第1モータジェネレータに対する電力の授受が必要な第2駆動処理が過度に頻繁に実行されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】車速が低い場合の車両の状態を示す共線図である。
【
図4】車速が高い場合の車両の状態を示す共線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<車両の機械的構成>
以下、本発明の一実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。先ず、本発明の制御装置90が適用された車両100の機械的構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、車両100は、内燃機関10、動力分割機構40、リダクション機構50、第1モータジェネレータ61、及び第2モータジェネレータ62を備えている。
内燃機関10は、出力軸としてクランク軸11を備えている。クランク軸11は、動力分割機構40に接続している。動力分割機構40は、サンギア41、キャリア42、複数のピニオンギア43、リングギア44、及びリングギア軸45を有する遊星歯車機構である。
【0013】
外歯歯車のサンギア41及び内歯歯車のリングギア44は、同軸上に位置している。サンギア41は、自転可能である。リングギア44は、自転可能である。サンギア41は、複数のピニオンギア43を介してリングギア44に連結している。すなわち、ピニオンギア43は、サンギア41及びリングギア44の双方に噛み合っている。キャリア42は、ピニオンギア43を自転可能な状態で支持している。また、キャリア42は、ピニオンギア43を公転可能に支持している。すなわち、ピニオンギア43は、サンギア41を中心に公転する。また、キャリア42は、ピニオンギア43の公転に従ってサンギア41と同軸で回転する。キャリア42は、クランク軸11に接続している。サンギア41は、第1モータジェネレータ61の回転軸61Aに接続している。リングギア44は、リングギア軸45に接続している。
【0014】
本実施形態において、動力分割機構40は、内燃機関10のトルク、第1モータジェネレータ61のトルク、第2モータジェネレータ62のトルクを、互いに分配可能な遊星歯車機構である。
【0015】
内燃機関10のトルクがキャリア42に入力されると、当該内燃機関10のトルクは、サンギア41側とリングギア44側とに分配される。そして、サンギア41を介して伝達された内燃機関10のトルクが第1モータジェネレータ61の回転軸61Aに入力されると、第1モータジェネレータ61が発電機として機能する。
【0016】
一方、第1モータジェネレータ61を電動機として機能させた場合、第1モータジェネレータ61のトルクがサンギア41に入力される。すると、サンギア41に入力された第1モータジェネレータ61のトルクは、キャリア42側とリングギア44側とに分配される。そして、キャリア42を介して伝達された第1モータジェネレータ61のトルクが内燃機関10のクランク軸11に入力されると、内燃機関10のクランク軸11が回転する。すなわち、第1モータジェネレータ61は、当該第1モータジェネレータ61のトルクをクランク軸11に伝達させることによりクランク軸11を回転させることが可能である。
【0017】
図1に示すように、車両100は、伝達機構66、ディファレンシャル67、及び複数の駆動輪68を備えている。伝達機構66は、リングギア軸45に接続している。伝達機構66は、例えば減速歯車機構及び自動変速機を含んでいる。伝達機構66は、ディファレンシャル67を介して駆動輪68に接続している。ディファレンシャル67は、左右の駆動輪68に回転速度差が生じることを許容する。
【0018】
また、リングギア軸45は、リダクション機構50に接続している。リダクション機構50は、サンギア51、キャリア52、複数のピニオンギア53、リングギア54、及びケース55を有する遊星歯車機構である。外歯歯車のサンギア51及び内歯歯車のリングギア54は、同軸上に位置している。サンギア51は、複数のピニオンギア53を介してリングギア54に連結している。キャリア52は、ピニオンギア53を自転可能な状態で支持している。キャリア52は、リダクション機構50のケース55に固定されている。すなわち、キャリア52は、回転不可能である。したがって、ピニオンギア53は、キャリア52により公転不可能な状態になっている。リングギア54は、リングギア軸45に接続している。サンギア51は、第2モータジェネレータ62の回転軸62Aに接続している。換言すると、動力分割機構40のリングギア44は、リングギア軸45及びリダクション機構50を介して第2モータジェネレータ62の回転軸62Aに接続している。
【0019】
第2モータジェネレータ62は、車両100を減速させる際に発電機として機能することで、第2モータジェネレータ62の発電量に応じた回生制動力を車両100に発生させることができる。
【0020】
一方、第2モータジェネレータ62を電動機として機能させた場合、第2モータジェネレータ62のトルクは、リダクション機構50、リングギア軸45、伝達機構66、及びディファレンシャル67を介して駆動輪68に入力される。すると、第2モータジェネレータ62のトルクによって、駆動輪68が回転する。
【0021】
図1に示すように、車両100は、オイルを供給するための機構として、オイルポンプ77を備えている。オイルポンプ77は、クランク軸11に連結している。オイルポンプ77は、クランク軸11が回転することにより駆動する。したがって、オイルポンプ77は、クランク軸11の回転に基づきオイルを吐出する、いわゆる機械式のオイルポンプである。オイルポンプ77は、図示しない供給通路を介して内燃機関10の各所にオイルを供給する。
【0022】
図1に示すように、車両100は、ブレーキ装置65を備えている。ブレーキ装置65は、第1モータジェネレータ61の回転軸61Aの近傍に位置している。ブレーキ装置65は、第1モータジェネレータ61の回転軸61Aの回転を規制可能である。例えば、ブレーキ装置65が回転軸61Aと接触する係合状態では、ブレーキ装置65は、回転軸61Aの回転を規制する。一方、ブレーキ装置65が回転軸61Aに対して離れている開放状態では、ブレーキ装置65は、回転軸61Aの回転を規制しない。ブレーキ装置65は、規制装置の一例である。
【0023】
<車両の電気的構成>
次に、車両100の電気的構成について説明する。
図1に示すように、車両100は、電力を授受するための装置として、第1インバータ71、第2インバータ72、及びバッテリ73を備えている。第1インバータ71は、第1モータジェネレータ61とバッテリ73との間の電力の授受量を調整する。第2インバータ72は、第2モータジェネレータ62とバッテリ73との間の電力の授受量を調整する。
【0024】
図1に示すように、車両100は、クランク角センサ81、アクセル開度センサ82、車速センサ83、第1回転角センサ84、第2回転角センサ85、電流センサ86、電圧センサ87、及び温度センサ88を備えている。
【0025】
クランク角センサ81は、クランク軸11の近傍に位置している。クランク角センサ81は、クランク軸11の角度位置であるクランク角SCを検出する。アクセル開度センサ82は、運転者により操作される図示しないアクセルペダルの操作量であるアクセル開度ACCを検出する。車速センサ83は、車両100の速度である車速SPを検出する。第1回転角センサ84は、第1モータジェネレータ61の回転軸61Aの近傍に位置している。第1回転角センサ84は、第1モータジェネレータ61の回転軸61Aの角度位置である第1回転角SM1を検出する。第2回転角センサ85は、第2モータジェネレータ62の回転軸62Aの近傍に位置している。第2回転角センサ85は、第2モータジェネレータ62の回転軸62Aの角度位置である第2回転角SM2を検出する。電流センサ86は、バッテリ73に入出力される電流である電流IBを検出する。電圧センサ87は、バッテリ73の端子間電圧である電圧VBを検出する。温度センサ88は、バッテリ73の温度であるバッテリ温TBを検出する。
【0026】
車両100は、制御装置90を備えている。制御装置90は、クランク角SCを示す信号をクランク角センサ81から取得する。制御装置90は、アクセル開度ACCを示す信号をアクセル開度センサ82から取得する。制御装置90は、車速SPを示す信号を車速センサ83から取得する。制御装置90は、第1回転角SM1を示す信号を第1回転角センサ84から取得する。制御装置90は、第2回転角SM2を示す信号を第2回転角センサ85から取得する。制御装置90は、電流IBを示す信号を電流センサ86から取得する。制御装置90は、電圧VBを示す信号を電圧センサ87から取得する。制御装置90は、バッテリ温TBを示す信号を温度センサ88から取得する。
【0027】
制御装置90は、クランク角SCに基づいて、クランク軸11の回転速度である機関回転速度NEを算出する。制御装置90は、第1回転角SM1に基づいて、第1モータジェネレータ61の回転軸61Aの回転速度である第1回転速度NM1を算出する。制御装置90は、第2回転角SM2に基づいて、第2モータジェネレータ62の回転軸62Aの回転速度である第2回転速度NM2を算出する。
【0028】
制御装置90は、電流IB、電圧VB、及びバッテリ温TBに基づいて、バッテリ73の充電率SOCを算出する。具体的には、制御装置90は、以下の式に基づき充電率SOCを算出する。
【0029】
式(1):充電率SOC[%]=バッテリ73の残容量[Ah]/バッテリ73の満充電容量[Ah]×100[%]
上記の式(1)のうち、満充電容量は、例えばバッテリ73の電圧VB及びバッテリ温TBに基づき算出される。また、残容量は、例えばバッテリ73の電圧VB及び電流IBに基づき算出される。
【0030】
制御装置90は、バッテリ73の充電制御を行う。この充電制御により、バッテリ73の充電率SOCは、充電率上限値SOCHと充電率下限値SOCLとの間の範囲に制御される。充電率上限値SOCHの一例は、60~80%である。また、充電率下限値SOCLの一例は、20~30%である。
【0031】
また、制御装置90は、アクセル開度ACC及び車速SPに基づいて、車両100が走行するために必要な出力の要求値である車両要求出力を算出する。制御装置90は、車両要求出力に基づいて、内燃機関10、第1モータジェネレータ61、及び第2モータジェネレータ62のトルク配分を決定する。制御装置90は、内燃機関10、第1モータジェネレータ61、及び第2モータジェネレータ62のトルク配分に基づいて、内燃機関10の出力と、第1モータジェネレータ61及び第2モータジェネレータ62の力行及び回生とを制御する。
【0032】
制御装置90は、内燃機関10に制御信号を出力することにより、当該内燃機関10における吸入空気量の調整、燃料噴射量の調整、点火時期の調整などの各種の制御を実行する。また、制御装置90は、第1モータジェネレータ61を制御するにあたって、第1インバータ71に制御信号を出力する。そして、制御装置90は、第1インバータ71を介して、第1モータジェネレータ61とバッテリ73との間の電力の授受量を調整することにより、第1モータジェネレータ61を制御する。さらに、制御装置90は、第2モータジェネレータ62を制御するにあたって、第2インバータ72に制御信号を出力する。そして、制御装置90は、第2インバータ72を介して、第2モータジェネレータ62とバッテリ73との間の電力の授受量を調整することにより、第2モータジェネレータ62を制御する。
【0033】
制御装置90は、車両100が走行する場合、車両100の走行モードとして、EVモード及びHVモードの何れか一方を選択する。ここで、EVモードとは、内燃機関10を停止させつつ、第1モータジェネレータ61及び第2モータジェネレータ62から選択される1以上のモータジェネレータを駆動させて車両100を走行させる走行モードである。したがって、EVモードでは、第1モータジェネレータ61の駆動力、及び第2モータジェネレータ62の駆動力によって車両100を走行させる。また、HVモードとは、第1モータジェネレータ61及び第2モータジェネレータ62に加えて、内燃機関10を駆動させて車両100を走行させる車両100の走行モードである。したがって、HVモードでは、第1モータジェネレータ61及び第2モータジェネレータ62の駆動力に加えて、内燃機関10の駆動力によって車両100を走行させる。本実施形態において、HVモードは非EVモードの一例である。
【0034】
制御装置90は、例えば、バッテリ73の充電率SOCに十分な余裕があり、且つ、上述した車両要求出力が小さい場合にEVモードを選択する。車両要求出力が小さい例としては、車両100の発進時、車両100の加速度の小さい軽負荷走行時、などである。一方、制御装置90は、例えば、バッテリ73の充電率SOCに十分な余裕がない場合には、HVモードを選択する。
【0035】
車両100は、カーナビゲーションシステム95を備えている。カーナビゲーションシステム95は、車両100を所定の目的地に誘導する装置である。カーナビゲーションシステム95は、予め地図情報を記憶している。カーナビゲーションシステム95は、図示しないGPSなどから車両100の現在地を取得可能である。カーナビゲーションシステム95は、地図情報、車両100の現在地、運転者等により設定された目的地に基づいて、車両100の現在地から目的地までの経路に関する情報及び経路上の地形情報を算出する。カーナビゲーションシステム95は、制御装置90と互いに通信可能である。
【0036】
制御装置90及びカーナビゲーションシステム95は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを含む回路(circuitry)として構成し得る。なお、制御装置90及びカーナビゲーションシステム95は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又はそれらの組み合わせを含む回路として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる媒体を含む。
【0037】
<ポンプ制御>
次に、制御装置90が行うポンプ制御について説明する。制御装置90は、車両100の走行モードとしてEVモードを選択しており、且つ、車両100の加速が要求されていない状況になる度に、ポンプ制御を実行する。上記の状況の一例は、車両100が下り坂などを走行している場合に、運転者がアクセルペダルから足を離したような状況である。
【0038】
図2に示すように、制御装置90は、ポンプ制御を開始すると、ステップS11の処理を進める。ステップS11において、制御装置90は、オイルポンプ77の駆動が要求されているか否かを判定する。例えば、制御装置90は、オイルポンプ77が駆動していない期間の長さが予め定められた所定期間以上である場合に、オイルポンプ77の駆動が要求されていると判定する。また、例えば、制御装置90は、オイルポンプ77が駆動していない状況で車両100が走行した距離が予め定められた所定距離以上である場合に、オイルポンプ77の駆動が要求されていると判定する。ステップS11において、制御装置90は、オイルポンプ77の駆動が要求されていないと判定する場合(S11:NO)、再びステップS11の処理を行う。一方、ステップS11において、制御装置90は、オイルポンプ77の駆動が要求されていると判定する場合(S11:YES)、処理をステップS21に進める。換言すると、制御装置90は、EVモード中にオイルポンプ77の駆動が要求される規定要件が満たされたことを条件に、ステップS21以降の処理を進める。
【0039】
ステップS21において、制御装置90は、回生エネルギーが得られやすい状況であるか否かを判定する。例えば、制御装置90は、以下のように回生エネルギーが得られやすい状況であるか否かを判定する。先ず、制御装置90は、車両100の現在値から目的地までの経路に関する情報及び経路上の地形情報をカーナビゲーションシステム95から取得する。次に、制御装置90は、カーナビゲーションシステム95から取得した情報に基づいて、車両100の現在地から一定距離離れた地点までの下り坂の長さ及び下り坂の勾配等を取得する。そして、制御装置90は、下り坂の長さ及び下り坂の勾配等に基づいて、回生エネルギーが得られやすい状況であるか否かを判定する。例えば、制御装置90は、下り坂の長さが予め定められた所定距離以上である場合に、回生エネルギーが得られやすい状況であると判定する。また、例えば、制御装置90は、下り坂の勾配が予め定められた所定勾配以上である場合に、回生エネルギーが得られやすい状況であると判定する。ステップS21において、制御装置90は、回生エネルギーが得られやすい状況であると判定する場合(S21:YES)、処理をステップS41に進める。一方、ステップS21において、制御装置90は、回生エネルギーが得られやすい状況でないと判定する場合(S21:NO)、処理をステップS31に進める。
【0040】
ステップS31において、制御装置90は、バッテリ73の充電率SOCが予め定められた充電規定値A以下であるか否かを判定する。ここで、充電規定値Aは、充電率下限値SOCLよりも高く、且つ、充電率上限値SOCHよりも低い値である。充電規定値Aの一例は、50%程度である。ステップS31において、制御装置90は、バッテリ73の充電率SOCが充電規定値Aよりも高いと判定する場合(S31:NO)、処理をステップS41に進める。一方、ステップS31において、制御装置90は、バッテリ73の充電率SOCが充電規定値A以下であると判定する場合(S31:YES)、処理をステップS64に進める。換言すると、制御装置90は、バッテリ73に対して充電できる状態である場合に、処理をステップS64に進める。
【0041】
ステップS64において、制御装置90は、機関駆動処理を実行する。具体的には、制御装置90は、車両100の走行モードとしてHVモードを選択する。そして、制御装置90は、内燃機関10を駆動させて車両100を走行させる。すなわち、内燃機関10が駆動することでクランク軸11が回転する。その結果、オイルポンプ77が駆動する。なお、このとき、内燃機関10のトルクが動力分割機構40を介して第1モータジェネレータ61の回転軸61Aに入力されると、第1モータジェネレータ61が発電機として機能する。そして、ステップS64の処理が実行される時点では、バッテリ73に対して充電できる状態である。したがって、内燃機関10を駆動しても、バッテリ73に過充電等が生じることはない。
【0042】
一方、上述したとおり、ステップS21において、制御装置90は、回生エネルギーが得られやすい状況であると判定する場合(S21:YES)、処理をステップS41に進める。また、ステップS31において、制御装置90は、バッテリ73の充電率SOCが充電規定値Aよりも高いと判定する場合(S31:NO)、処理をステップS41に進める。
【0043】
ステップS41において、制御装置90は、後述するステップS63におけるロック処理を実行したと仮定したときのクランク軸11の回転速度である仮機関回転速度NEXを算出する。例えば、制御装置90は、ステップS41の処理時点の第2回転速度NM2が高いほど、仮機関回転速度NEXを高い値として算出する。
【0044】
具体的には、
図3及び
図4に示すように、本実施形態の車両100において、サンギア41の回転速度、キャリア42の回転速度、及びリングギア44の回転速度は、互いに関連している。したがって、第1モータジェネレータ61の回転軸61Aの回転速度である第1回転速度NM1、内燃機関10の機関回転速度NE、及び第2モータジェネレータ62の回転軸62Aの回転速度である第2回転速度NM2も、互いに関連している。そして、
図3及び
図4に示す共線図上において、各回転速度は、各回転速度を結ぶ直線が引ける関係にある。したがって、ロック処理を実行した状態、すなわち第1回転速度NM1をゼロと仮定した場合、仮機関回転速度NEXは、第2回転速度NM2と正の比例関係にある。なお、
図3及び
図4の共線図において、S軸は、サンギア41の回転速度及び第1回転速度NM1を示す軸である。また、C軸は、キャリア42の回転速度及び機関回転速度NEを示す軸である。さらに、R軸は、リングギア44の回転速度及び第2回転速度NM2に比例する値を示す軸である。
図2に示すように、制御装置90は、ステップS41の処理の後、処理をステップS42に進める。
【0045】
図2に示すように、ステップS42において、制御装置90は、後述するステップS63におけるロック処理を実行したと仮定したときにオイルポンプ77から供給できるオイルの量である供給オイル量BXを算出する。具体的には、先ず、制御装置90は、車両100の現在値から目的地までの経路に関する情報及び経路上の地形情報をカーナビゲーションシステム95から取得する。次に、制御装置90は、車速SP、車速SPの単位時間当たりの低下量である減速度、及びカーナビゲーションシステム95から取得した地形情報に基づいて、現時点から車速SPがゼロになるまでの期間の予測値を算出する。さらに、制御装置90は、車速SPがゼロになるまでの予測の期間、及び仮機関回転速度NEXに基づいて、現時点から車速SPがゼロになるまでにクランク軸11が回転する回数の予測値を算出する。そして、制御装置90は、クランク軸11が回転する回数の予測値が大きいほど、供給オイル量BXを大きな値として算出する。その後、制御装置90は、処理をステップS51に進める。
【0046】
ステップS51において、制御装置90は、供給オイル量BXが予め定められたオイル規定値Bよりも小さいか否かを判定する。ここで、オイル規定値Bは、例えば以下のように定めている。先ず、ステップS11の処理で肯定判定する状況において、オイルポンプ77から内燃機関10の各所に供給すべき最低限のオイル量を実験等により求める。そして、上記の最低限のオイル量よりも一定量だけ大きい値を、オイル規定値Bとして定めている。ステップS51において、制御装置90は、供給オイル量BXがオイル規定値Bよりも小さいと判定する場合(S51:YES)、処理をステップS61に進める。一方、ステップS51において、制御装置90は、供給オイル量BXがオイル規定値B以上であると判定する場合(S51:NO)、処理をステップS52に進める。
【0047】
ステップS52において、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが予め定められた第1閾値NEAよりも低いか否かを判定する。ここで、第1閾値NEAの一例は、1000rpm程度である。第1閾値NEAは、例えば以下のように定めている。先ず、機関回転速度NEが比較的に低い場合には、機関回転速度NEが変動しやすい。すると、このような機関回転速度NEの変動に起因して伝達機構66等のギアが離れたり再び接触したりすることで、伝達機構66等から異音が発生することがある。そこで、伝達機構66等から異音が発生する機関回転速度NEの上限値を実験等により求める。そして、求めた機関回転速度NEの上限値よりも一定値だけ高い値を、第1閾値NEAとして定めている。ステップS52において、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが第1閾値NEAよりも低いと判定する場合(S52:YES)、処理をステップS61に進める。
【0048】
ステップS61において、制御装置90は、第1モータジェネレータ61による機関回転速度NEの上昇処理を実行する。具体的には、制御装置90は、第1モータジェネレータ61からクランク軸11に正のトルクを付与することにより、機関回転速度NEが第1閾値NEA以上になるようにクランク軸11を回転させる。本実施形態において、制御装置90は、機関回転速度NEが第1閾値NEAよりも一定回転速度だけ高くなるように制御する。なお、制御装置90は、機関回転速度NEが第1閾値NEA以上であって且つ後述する第2閾値NEB以下になるように制御する。また、上記の正のトルクとは、機関回転速度NEが高くなるようにクランク軸11に加わるトルクである。なお、ステップS61の処理が実行されると、機関回転速度NEは正の値になるが、内燃機関10の気筒において燃料の燃焼はされていない。つまり、内燃機関10での燃料の燃焼を停止させた状態であるため、内燃機関10のクランク軸11は空回りしている状態である。その後、制御装置90は、今回のポンプ制御を終了する。
【0049】
一方、ステップS52において、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが第1閾値NEA以上である判定する場合(S52:NO)、処理をステップS53に進める。
ステップS53において、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが予め定められた第2閾値NEBよりも高いか否かを判定する。ここで、第2閾値NEBは、第1閾値NEAよりも高い値である。第2閾値NEBの一例は、4000rpm程度である。第2閾値NEBは、例えば以下のように定めている。先ず、機関回転速度NEが比較的に高い場合には、内燃機関10のピストンの運動に起因した音が発生しやすい。そして、内燃機関10のピストンの運動に起因した音は、機関回転速度NEが高いほど大きくなる傾向がある。そこで、内燃機関10のピストンの運動に起因した音の大きさの許容値を定める。また、上記の音の大きさの許容値に対応する機関回転速度NEの値を実験等により求める。そして、求めた機関回転速度NEの値よりも一定値だけ低い値を、第2閾値NEBとして定めている。ステップS53において、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが第2閾値NEBよりも高いと判定する場合(S53:YES)、処理をステップS62に進める。
【0050】
ステップS62において、制御装置90は、第1モータジェネレータ61による機関回転速度NEの低下処理を実行する。具体的には、制御装置90は、第1モータジェネレータ61からクランク軸11に負のトルクを付与することにより、機関回転速度NEが第2閾値NEB以下になるようにクランク軸11を回転させる。本実施形態において、制御装置90は、機関回転速度NEが第2閾値NEBよりも一定回転速度だけ低くなるように制御する。なお、制御装置90は、機関回転速度NEが第1閾値NEA以上であって且つ第2閾値NEB以下になるように制御する。また、上記の負のトルクとは、機関回転速度NEが低くようにクランク軸11に加わるトルクである。なお、ステップS62が実行された状態では、内燃機関10での燃料の燃焼を停止させた状態であるため、内燃機関10のクランク軸11は空回りしている状態である。その後、制御装置90は、今回のポンプ制御を終了する。
【0051】
一方、ステップS53において、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが第2閾値NEB以下であると判定する場合(S53:NO)、処理をステップS63に進める。換言すると、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが第1閾値NEA以上であって且つ第2閾値NEB以下の範囲内になると予想される場合に、処理をステップS63に進める。
【0052】
ステップS63において、制御装置90は、第1モータジェネレータ61のロック処理を実行する。具体的には、制御装置90は、ブレーキ装置65に制御信号を出力する。そして、制御装置90は、ブレーキ装置65により第1モータジェネレータ61の回転軸61Aの回転を規制することで第1回転速度NM1をゼロにする。すると、クランク軸11は、サンギア41の回転速度及びリングギア44の回転速度に応じて定まる回転速度で回転する。このとき、サンギア41の回転速度はゼロになるため、リングギア44の回転速度に比例する第2回転速度NM2に応じてクランク軸11が回転する。なお、ステップS63が実行された状態では、内燃機関10での燃料の燃焼を停止させた状態であるため、内燃機関10のクランク軸11は空回りしている状態である。その後、制御装置90は、今回のポンプ制御を終了する。
【0053】
本実施形態において、第1閾値NEA以上であって且つ第2閾値NEB以下の範囲は、規定範囲の一例である。すなわち、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが規定範囲内になると予想される場合にステップS63の処理を実行する。したがって、ステップS63の処理は、第1駆動処理に相当する。また、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが規定範囲外になると予想される場合にステップS61の処理又はステップS62の処理を実行する。したがって、ステップS61及びステップS62の処理は、第2駆動処理に相当する。
【0054】
<本実施形態の作用>
車両100のEVモード中は、内燃機関10が停止するため、内燃機関10を駆動源とするオイルポンプ77も停止する。そのため、オイルポンプ77からのオイルが内燃機関10の各所に供給されない。そこで、制御装置90は、ポンプ制御を実行することにより、オイルポンプ77を駆動することで内燃機関10の各所にオイルを供給する。
【0055】
ここで、ポンプ制御においてステップS63のロック処理を実行したとする。すると、ブレーキ装置65により第1モータジェネレータ61の回転軸61Aの回転を規制することで第1回転速度NM1がゼロになる。そのため、例えば
図3において二点鎖線の直線で示すように、第1モータジェネレータ61の回転軸61Aに接続するサンギア41の回転速度もゼロになる。そして、キャリア42及びクランク軸11は、サンギア41の回転速度及びリングギア44の回転速度に応じて定まる回転速度で回転する。このとき、サンギア41の回転速度はゼロになるため、リングギア44の回転速度に比例する第2回転速度NM2に応じた機関回転速度NEでクランク軸11が回転する。そして、オイルポンプ77は、クランク軸11の回転に基づきオイルを吐出する。
【0056】
<本実施形態の効果>
(1)制御装置90は、仮機関回転速度NEXが第1閾値NEA以上であって且つ第2閾値NEB以下の範囲である規定範囲外になると予想される場合にステップS61の処理又はステップS62の処理を実行する。一方、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが規定範囲内になると予想される場合にステップS63の処理を実行する。これにより、ステップS61~ステップS63の処理のいずれを実行した場合でも、機関回転速度NEは規定範囲内に収まる。したがって、ステップS61~ステップS63の処理の実行に伴い、機関回転速度NEが規定範囲外の好ましくない回転速度になることは抑制できる。
【0057】
具体的に説明すると、車両100において、第2回転速度NM2は、車速SPによって定まる。そのため、ポンプ制御におけるステップS63のロック処理を実行中の機関回転速度NEは、車速SPによって定まる。より具体的には、ステップS63のロック処理を実行中の機関回転速度NEは、車速SPが高くなるほど高くなる。ここで、例えば、ポンプ制御におけるステップS63のロック処理を実行する際に、車速SPが比較的に低い値になっているものとする。すると、例えば
図3において二点鎖線の直線で示すように、車速SPに応じて第2回転速度NM2も比較的に低い値になる。すると、第2回転速度NM2に応じた機関回転速度NEは比較的に低い値になる。そして、機関回転速度NEが第1閾値NEAよりも低くなっていると、機関回転速度NEが変動しやすくなる。その結果、機関回転速度NEの変動に起因して伝達機構66等のギアが離れたり再び接触したりすることで、伝達機構66等から異音が発生することがある。
【0058】
この点、本実施形態において、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが第1閾値NEAよりも低いと判定する場合に、ステップS61において第1モータジェネレータ61による機関回転速度NEの上昇処理を実行する。すると、第1モータジェネレータ61からクランク軸11に正のトルクが付与される。具体的には、例えば
図3において実線の直線で示すように、第1モータジェネレータ61からの正のトルクによりサンギア41の回転速度がゼロよりも高くなる。すると、サンギア41の回転速度及びリングギア44の回転速度に応じて定まるキャリア42の回転速度が高くなる。その結果、キャリア42に接続するクランク軸11の回転速度、すなわち、機関回転速度NEが第1閾値NEA以上になる。これにより、機関回転速度NEが第1閾値NEAよりも低くなることに起因して伝達機構66等から異音が発生することを抑制できる。
【0059】
また、例えば、ポンプ制御におけるステップS63のロック処理を実行する際に、車速SPが比較的に高い値になっているものとする。すると、例えば
図4において二点鎖線の直線で示すように、車速SPに応じて第2回転速度NM2も比較的に高い値になる。すると、第2回転速度NM2に応じた機関回転速度NEは比較的に高い値になる。そして、機関回転速度NEが第2閾値NEBよりも高くなっていると、内燃機関10のピストンの運動に起因した音の大きさが過度に大きくなることがある。
【0060】
この点、本実施形態において、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが第2閾値NEBよりも高いと判定する場合に、ステップS62において第1モータジェネレータ61による機関回転速度NEの低下処理を実行する。すると、第1モータジェネレータ61からクランク軸11に負のトルクが付与される。具体的には、例えば
図4において実線の直線で示すように、第1モータジェネレータ61からの負のトルクによりサンギア41の回転速度がゼロよりも低くなる。すると、サンギア41の回転速度及びリングギア44の回転速度に応じて定まるキャリア42の回転速度が低くなる。その結果、キャリア42に接続するクランク軸11の回転速度、すなわち、機関回転速度NEが第2閾値NEB以下になる。これにより、機関回転速度NEが第2閾値NEBよりも高くなることに起因して内燃機関10のピストンの運動に伴う音の大きさが過度に大きくなることを抑制できる。
【0061】
(2)上述したように、制御装置90は、仮機関回転速度NEXが規定範囲内になると予想される場合にステップS63の処理を実行する。したがって、第1モータジェネレータ61に対する電力の授受が必要なステップS61の処理及びステップS62の処理が過度に頻繁に実行されることはない。これにより、例えば、第1モータジェネレータ61に対する電力の授受の頻度が多くなることに起因した当該第1モータジェネレータ61の劣化を抑制できる。
【0062】
(3)制御装置90は、仮機関回転速度NEXが第2閾値NEBよりも高いと判定する場合に、ステップS62において第1モータジェネレータ61による機関回転速度NEの低下処理を実行する。このとき、第1モータジェネレータ61はクランク軸11に負のトルクを付与する、すなわち、第1モータジェネレータ61は発電機として機能する。これにより、第1モータジェネレータ61より機関回転速度NEを第2閾値NEB以下に制御しつつ、第1モータジェネレータ61が発電した電力をバッテリ73に蓄えることができる。
【0063】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0064】
・上記実施形態において、ポンプ制御の処理内容は変更してもよい。
例えば、制御装置90は、ステップS21の処理を行わず、ステップS11の処理で肯定判定した後に、ステップS41の処理を実行してもよい。先ず、EVモード中にあってはバッテリ73の電力を用いるため、ポンプ制御を実行している際には、バッテリ73の充電率SOCがある程度確保されていると予想できる。そのため、ステップS21の判定結果に拘わらず、ステップS61における上昇処理を実行したとしても、第1モータジェネレータ61からクランク軸11に正のトルクを付与する、すなわち、第1モータジェネレータ61を電動機として機能させることができ得る。つまり、ポンプ制御において、ステップS21の処理を省略してもよい。
【0065】
・例えば、ステップS42における供給オイル量BXの算出処理は変更できる。具体例としては、制御装置90は、車速SP、及び車速SPの単位時間当たりの低下量である減速度のみに基づいて、供給オイル量BXを算出してもよい。
【0066】
・例えば、制御装置90は、ステップS41の処理の後に、ステップS52の処理を実行してもよい。この場合であっても、少なくとも機関回転速度NEが規定範囲外になることは抑制できる。つまり、ポンプ制御において、ステップS42及びステップS51の処理を省略してもよい。
【0067】
・上記実施形態において、規定範囲は変更してもよい。
例えば、第1閾値NEAの値は変更できる。具体例としては、伝達機構66の構造等によっては、伝達機構66等から異音が発生する機関回転速度NEは変わり得る。そこで、第1閾値NEAの値は、伝達機構66の構造等に合わせて変更してもよい。
【0068】
・例えば、第1閾値NEAを定める条件は変更してもよい。具体例としては、伝達機構66等から発生する異音に限らず、例えば、オイルポンプ77からのオイルの供給量の最低値を確保する観点等で、機関回転速度NEの低い状況が好ましくないことがあり得る。この場合、機関回転速度NEとして許容できる下限値を、第1閾値NEAとして設定してもよい。また、他の技術的な要因を考慮して、第1閾値NEAを定めても構わない。
【0069】
・例えば、第1閾値NEAを設定しなくてもよい。具体例としては、機関回転速度NEの低い状況が許容できる場合は、第1閾値NEAを設定する必要はない。この場合、規定範囲は、第2閾値NEB以下の範囲である。なお、この場合、制御装置90は、ステップS51で否定判定した後に、ステップS53の処理を実行すればよい。
【0070】
・例えば、第2閾値NEBの値は変更できる。具体例としては、内燃機関10の構造等によっては、内燃機関10のピストンの運動に起因した音の大きさの許容値に対応する機関回転速度NEは変わり得る。そこで、第2閾値NEBの値は、内燃機関10の構造等によって変更してもよい。
【0071】
・例えば、第2閾値NEBを定める条件は変更してもよい。具体例としては、内燃機関10のピストンの運動に起因した音に限らず、例えば、オイルポンプ77からのオイルの供給量の上限値を設定する観点等で、機関回転速度NEの高い状況が好ましくないことがあり得る。この場合、機関回転速度NEとして許容できる上限値を、第2閾値NEBとして設定してもよい。また、他の技術的な要因を考慮して、第2閾値NEBを定めても構わない。
【0072】
・例えば、第2閾値NEBを設定しなくてもよい。具体例としては、機関回転速度NEの高い状況が許容できる場合は、第2閾値NEBを設定する必要はない。この場合、規定範囲は、第1閾値NEA以上の範囲である。なお、この場合、制御装置90は、ステップS52で否定判定した後に、ステップS63の処理を実行すればよい。
【0073】
・上記実施形態において、車両100の構成は変更してもよい。
例えば、動力分割機構40のリングギア44は、リングギア軸45及びリダクション機構50を介さず、第2モータジェネレータ62の回転軸62Aに直接接続してもよい。
【符号の説明】
【0074】
NE…機関回転速度
NEA…第1閾値
NEB…第2閾値
NEX…仮機関回転速度
10…内燃機関
11…クランク軸
40…動力分割機構
41…サンギア
42…キャリア
43…ピニオンギア
44…リングギア
45…リングギア軸
50…リダクション機構
61…第1モータジェネレータ
61A…回転軸
62…第2モータジェネレータ
62A…回転軸
65…ブレーキ装置
66…伝達機構
67…ディファレンシャル
68…駆動輪
77…オイルポンプ
90…制御装置
95…カーナビゲーションシステム
100…車両