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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B62D1/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022022318
(22)【出願日】2022-02-16
(65)【公開番号】P2023119417
(43)【公開日】2023-08-28
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】フィン タン ミン チィット
(72)【発明者】
【氏名】寺田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】恒川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】梅村 紀夫
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167814(JP,A)
【文献】特開2021-180101(JP,A)
【文献】特開昭61-171660(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0015932(US,A1)
【文献】実開昭61-143965(JP,U)
【文献】特開2021-086806(JP,A)
【文献】特開2019-202446(JP,A)
【文献】特開平11-263872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル操舵時の把持を検知可能に、芯金の周囲に配設された軟質の被覆層の表面側に、導電性材料を含有させた塗膜からなるセンサ層、が配設され、
該センサ層が、把持を検知するための把持検知回路に導通するリード線の端子を接続させるハンドルであって、
前記被覆層が、前記センサ層を内周面側に延設させて、前記端子を挿入可能な挿入凹部を備え、
前記端子が、導電性接着剤を充填された前記挿入凹部に挿入されて、前記センサ層と接続される構成としていることを特徴とするハンドル。
【請求項2】
前記挿入凹部が、前記端子を嵌め込む挿入口より、内部を拡径させた形状としていることを特徴とする請求項1に記載のハンドル。
【請求項3】
前記端子が、前記挿入口の内周縁に係止可能に、先端部と元部との間の中間部に、前記先端部より拡径させた拡径部を備えて構成されていることを特徴とする請求項2に記載のハンドル。
【請求項4】
前記端子が、拡張式のリベット若しくはねじ、から構成されていることを特徴とする請求項3に記載のハンドル。
【請求項5】
前記センサ層が、
導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤から形成され、前記被覆層の成形時に、前記被覆層の表面側に、配設される構成としていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が操舵時に把持する部位に、把持を検出可能なセンサ層が配設されて構成されるハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハンドルでは、操舵時に把持する把持部に、静電容量の増加により、把持を検知可能なシート状の導電性部材からなるセンサ層、が配設されて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。センサ層は、ハンドルの把持部の表面側に配設されて、把持を検知する把持検知回路から延びるリード線の端子を、リベット止めしていた。センサ層は、ハンドルの把持部の芯金周囲の被覆層の表面側に、貼着等して配設されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-63761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、把持を検知するセンサ層が、芯金の周囲の被覆層の表面に、薄い塗膜のように配設されている場合には、センサ層の表面側に端子を配置させても、センサ層の裏面側に、貫通させたリベットの先端側を拡径させて、端子をセンサ層にリベット止めするようなスペースがなく、塗膜状のセンサ層と端子とを円滑に接続できない。この場合、センサ層の表面側に端子を載せた状態で、被覆層や芯金を貫通するように、リベットやねじ等の締結手段を貫通させて、締結させることが考えられる。しかしながら、この場合でも、センサ層が、被覆層の表面側に配設されており、締結時、リベットやねじの頭部が、センサ層を被覆層側に押し付ければ、端子の接触するセンサ層の部位が、センサ層の裏面側の被覆層の弾性変形により、破断等の亀裂を招く虞れが生じ、安定して、センサ層に端子を接続できず、センサ層と端子との安定した導通状態を確保し難い。特に、芯金を被覆する被覆層は、通常、発泡ウレタン等の軟質材から形成されており、被覆層の弾性変形が大きいことから、端子の接触するセンサ層の部位が、被覆層の弾性変形により、一層、破断等することとなって、安定してセンサ層に端子を接続できない。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、把持検知用の塗膜状のセンサ層と端子とを安定して接続できるハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハンドルでは、ハンドル操舵時の把持を検知可能に、芯金の周囲に配設された軟質の被覆層の表面側に、導電性材料を含有させた塗膜からなるセンサ層、が配設され、
該センサ層が、把持を検知するための把持検知回路に導通するリード線の端子を接続させるハンドルであって、
前記被覆層が、前記センサ層を内周面側に延設させて、前記端子を挿入可能な挿入凹部を備え、
前記端子が、導電性接着剤を充填された前記挿入凹部に挿入されて、前記センサ層と接続される構成としていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るハンドルでは、把持検知回路に導通するリード線の端子を、被覆層におけるセンサ層を内周面側まで延設させた挿入凹部に挿入させれば、挿入凹部内に充填されていた導電性接着剤により、挿入凹部内に接着させて配設させることができる。そして、挿入凹部に挿入された端子は、挿入凹部の内周面側まで延設されたセンサ層に対し、直接、接触していなくとも、導電性接着剤を介在させて導通状態を確保できる。また、センサ層は、端子と導通状態となる部位を、従来のリベットやねじ等の締結手段の締結力で圧縮させるわけではなく、単に、挿入凹部内に延設させるだけの構成でよいことから、破断する虞れは生じず、安定して、端子との導通状態を確保できる。
【0008】
したがって、本発明に係るハンドルでは、把持検知用の塗膜状のセンサ層と端子とを安定して接続することができる。また、センサ層と端子との接続作業が、導電性接着剤を充填した挿入凹部内に、単に、端子を挿入するだけで、簡便に行える。
【0009】
そして、本発明に係るハンドルでは、前記挿入凹部が、前記端子を嵌め込む挿入口より、内部を拡径させた形状としていてもよい。
【0010】
このような構成では、挿入凹部内で硬化した導電性接着剤が、端子と接合された状態で、挿入凹部の挿入口の内周縁に、係止されるような構成となることから、端子の挿入凹部からの外れが防止されて、端子とセンサ層との接続強度を向上させることができる。
【0011】
この場合、前記端子が、前記挿入口の内周縁に係止可能に、先端部と元部との間の中間部に、前記先端部より拡径させた拡径部を備えて構成されていれば、一層、端子の挿入凹部からの外れが防止される。
【0012】
そして、このような拡径部を有した端子としては、拡張式のリベット若しくはねじ、から構成することが望ましく、このような構成の場合、挿入凹部への挿入前には、拡径部を、外形寸法を広げない状態で、挿入できることから、挿入凹部への挿入が容易となる。
【0013】
また、本発明に係るハンドルでは、前記センサ層が、
導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤から形成され、前記被覆層の成形時に、前記被覆層の表面側に、配設される構成としていてもよい。
【0014】
このような構成では、塗膜として形成されるセンサ層が、モールドコート層(インモールドコート層)としており、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤を、被覆層を型成形する際の成形型の型面に、予め、塗布しておくだけでよく、後は、単に、被覆層を成形するだけで、センサ層を設けた被覆層を容易に形成できる。さらに、比較例として、例えば、センサ層をモールドコート層とせずに、センサ層を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、成形後の被覆層の外表面側に、塗布し、そして、硬化させて、センサ層を形成する場合では、成形後の被覆層の外表面に、プライマーを塗布したり、あるいは、ウレタン系塗料の塗布後の乾燥の工数も必要となってしまうが、この場合に比べて、本発明のモールドコート層からなるセンサ層を設けたハンドルでは、既述のプライマーの塗布工程や乾燥工程が不要となることから、簡便に、製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態のハンドルを示す概略平面図である。
図2】実施形態のハンドルにおける把持部位の概略断面図であり、図1のII-II部位に対応する。
図3】実施形態のハンドルの製造工程を説明する図である。
図4】実施形態のハンドルの製造工程を説明する図であり、図3の後の状態を示す。
図5】実施形態のハンドルにおける端子の配設部位の概略断面図であり、図1のV-V部位に対応する。
図6】実施形態の変形例における端子の配設部位の概略断面図である。
図7】実施形態の他の変形例における端子の配設部位の概略断面図である。
図8】実施形態のさらに他の変形例における端子の配設部位の概略断面図である。
図9】実施形態のさらに他の変形例における端子の配設部位の概略断面図である。
図10】実施形態のさらに他の変形例における端子の配設部位の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のハンドルWは、図1,2に示すように、図示しない車両の操舵時に把持する略円環状の把持部Rと、把持部Rの中央のボス部Bと、把持部Rとボス部Bとを連結するスポーク部S(L,R,B)と、を備えて構成されている。スポーク部Sは、ボス部Bから左右両側に延びるスポーク部SL,SRと、ボス部Bから後側に延びるスポーク部SBと、を備えている。また、ハンドルWは、ボス部Bの上部側に配設される二点鎖線で示したエアバッグ装置70と、ハンドル本体Hと、ボス部Bの下部側を覆うロアカバー72と、を備えて構成されている。
【0017】
なお、エアバッグ装置70とロアカバー72とは、上方から見て、外形形状を略同等として、ハンドル本体Hを間にして、上方に、エアバッグ装置70が、配設され、下方に、ロアカバー72が、配設される。エアバッグ装置70は、図示しない複数の取付脚を、対応するハンドル本体Hの係止孔9に係止させて、ハンドル本体Hに取り付けられて配設されている。ロアカバー72は、ポリプロピレン等の合成樹脂製として、所定のねじにより、ハンドル本体Hに取り付けられて配設されている。
【0018】
ハンドル本体Hは、把持部R、ボス部B、及び、スポーク部Sを連結するアルミニウム合金等の金属材からなる芯金3、を備えて構成されている。芯金3は、把持部Rに配設される把持芯金部4と、ボス部Bに配設されるボス芯金部5と、把持芯金部4とボス芯金部5とを連結するように、スポーク部S(L,R,B)に配設されるスポーク芯金部6(L,R),7と、を備えて構成されている。ボス芯金部5は、車両のステアリングシャフトと結合される鋼製のボス5aを配設させている。また、スポーク芯金部6は、左右のスポーク部SL,SRに配設されるスポーク芯金部6L,6Rと、後部側のスポーク部SBに配設されて、ボス芯金部5側で左右に分岐し、そして、把持芯金部4側で結合されるような2本のスポーク芯金部7,7と、から構成されている。
【0019】
なお、ボス部Bには、エアバッグ装置70に覆われたハンドル本体Hの部位に、把持検知回路35が配設されている。把持検知回路35は、後述するセンサ層13から延びるリード線36が結線されており、運転者の手が把持部Rを把持するように、把持部Rのセンサ層13に接近した際に、静電容量が上昇することから、その上昇を検出して、運転者の把持を検知する。
【0020】
そして、把持部Rは、図2に示すように、芯金3の把持芯金部4と、把持芯金部4の周囲を覆うように、型成形により形成される発泡ウレタンからなる被覆層10と、被覆層10の表面に配設されるセンサ層13と、センサ層13の表面側に配設される保護層16と、から構成されている。保護層16は、左右のスポーク部SL,SRにおけるエアバッグ装置70で覆われる部位において、把持芯金部4から離れた部位では、センサ層13を覆っておらず、センサ層13を露出させている。
【0021】
センサ層13は、導電性材料を含有したウレタン系塗料(導電性フィラーとして、導電性カーボンや金属酸化物等の粉末、を混ぜ込んだウレタン系塗料)からなるモールドコート剤58から形成され(図3参照)、型成形時の被覆層10の型面51a,52aに塗布されて、被覆層10の成形時に、被覆層10の表面側に、配設されるような塗膜として、構成されている。
【0022】
なお、実施形態の場合、センサ層13は、導電性カーボンを含有させたウレタン系塗料から形成されている。
【0023】
保護層16は、実施形態の場合、型成形により配設される発泡ウレタンからなる表皮層として、配設されている。
【0024】
すなわち、実施形態の場合、発泡ウレタンは、センサ層13の裏面側における把持芯金部4側の被覆層10としてのウレタン層と、センサ層13の表面側における保護層16としてのウレタン層と、を備えて構成されている。
【0025】
なお、実施形態の場合、センサ層13が、導電性カーボンを含有させたウレタン系塗料からなって、被覆層10の表面を暗色の黒色で覆っており、保護層167は、黒色でなく、意匠性を高めるために、明色のベージュ系の顔料を含有させた発泡ウレタンが使用されて、成形されている。
【0026】
実施形態の場合、センサ層13の厚さ寸法St1は、導電性、耐久性、及び、感触、を考慮して、5~50μm程度、好ましくは、10~30μm程度の範囲内の20μmとし、保護層16のウレタン層の厚さ寸法Ut1は、耐久性、感触、及び、センサ層13の感度、を考慮して、1~3mm程度の範囲内の2mmとしている。
【0027】
リード線36のセンサ層13への接続は、図5に示すように、リード線36の先端に結合されている端子40を、導電性接着剤48を充填された挿入凹部20に挿入させて、接続される構成としている。
【0028】
端子40は、導電性を有した金属製の円柱状として、リード線36を半田付けして接続させている。
【0029】
なお、端子40の配設部位、換言すれば、リード線36とセンサ層13との接続部位は、運転者が把持するエリアから離れて、ハンドルWにおけるエアバッグ装置70、あるいは、他のスイッチ類等に覆われる部位として、運転者から目視できない位置に、配設されている。実施形態の場合、端子40は、エアバッグ装置70に覆われる部位としたスポーク芯金部6Rを被覆した被覆層10の部位に、配設されている。
【0030】
そして、端子40を挿入させる挿入凹部20は、スポーク芯金部6Rを被覆した被覆層10の部位に配設され、センサ層13を内周面21側に延設させて、形成されている。実施形態の場合、端子40を嵌め込む挿入口22より、底部24側にかけた中間部26の内部を、略球状に拡径させた形状に形成されている。挿入凹部20の内周面21には、スポーク芯金部6Rを被覆した被覆層10の外周面10a側のセンサ層13が、延設されている。すなわち、内周面21の全面には、センサ層13の延設部14が、配設されている。
【0031】
導電性接着剤48は、エポキシ系やフェノール系等の接着剤の有機バインダーに、導電性を有した銀、銅、カーボン等の導電フィラーを分散させて形成されている。
【0032】
端子40のセンサ層13との接続作業は、導電性接着剤48を充填させた挿入凹部20内に、リード線36を接続させた端子40を挿入させ、導電性接着剤48を硬化させることにより、行っている。硬化した導電性接着剤48は、挿入口22のセンサ層13の外表面13a側の挿入口22の周縁30にも配設されて、端子40は、挿入凹部20内に充填された充填部48aと、挿入口周縁30に配設された流出部48bと、を利用して、センサ層13と導通されている。
【0033】
実施形態のハンドル本体Hの製造は、モールドコート剤塗布工程、被覆層10としての第1ウレタン層成形工程、及び、保護層16としての第2ウレタン層成形工程、を経て、製造される。
【0034】
まず、モールドコート剤塗布工程では、図3のA,Bに示すように、被覆層10としての第1ウレタン層を成形する成形型50の割型51,52の型面51a,52aに、センサ層13を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、モールドコート剤58として、塗布装置としてのスプレーガン57により、塗布する。なお、モールドコート剤58を塗布する前には、型面51a,52aに離型剤を塗布しておく。
【0035】
ついで、被覆層10としての第1ウレタン層成形工程として、図3のC,Dに示すように、割型51,52からなる成形型50を型締めし、キャビティ50a内に、第1ウレタン層としての被覆層10を成形するウレタン材料を注入して硬化させ、被覆層10を成形した中間成形品53を製造し、成形型50を型開きして、中間成形品53を取り出す。
【0036】
ついで、保護層16としての第2ウレタン層成形工程として、図4のA,Bに示すように、第2ウレタン層を成形する割型55,56からなる成形型54を型開きさせて、中間成形品53をセットし、成形型54を型締めし、図4のB,Cに示すように、キャビティ54a内に、保護層16としての第2ウレタン層を成形するウレタン材料を注入して硬化させ、第2ウレタン層16を成形する。なお、成形前には、割型55,56の型面55a,56aに離型剤を塗布しておく。そして、保護層16としての第2ウレタン層を成形した後には、型開きして、取り出せば、把持部Rを設けた成形品、すなわち、ハンドル本体Hを得ることができる。
【0037】
なお、ハンドル本体Hの製造時(成形時)、被覆層10には、センサ層13の延設部14を設けた挿入凹部20を賦形しておく。
【0038】
このように製造したハンドル本体Hでは、ボス部Bの配設エリアに、把持検知回路35等を組み付けるとともに、既述したように、導電性接着剤48を充填した挿入凹部20に、リード線36を結線させた端子40を挿入させて、端子40をセンサ層13に接着させておき、そして、ボス部Bの下部側にロアカバー72を取り付けつつ、ボス部Bのボス5aを、車両のステアリングシャフトに締結し、エアバッグ装置70の作動信号入力用のリード線や把持検知回路35等に接続させる種々のリード線を車両側と結線しつつ、ボス部Bの上部側に、エアバッグ装置70を取り付ければ、ハンドルWを組み立てることができるとともに、ハンドルWを車両に搭載することができる。
【0039】
車両に搭載されたハンドルWでは、運転者の手が、把持部Rを把持するように、把持部Rのセンサ層13に接近すれば、静電容量が上昇したことを所定の把持検知回路35が検知することから、運転者の把持を検知することができる。
【0040】
そして、実施形態のハンドルWでは、把持検知回路35に導通するリード線36の端子40を、被覆層10におけるセンサ層13を内周面21側まで延設させた挿入凹部20に挿入させれば、挿入凹部20内に充填されていた導電性接着剤48により、挿入凹部20内に接着させて配設させることができる。そして、挿入凹部20に挿入された端子40は、挿入凹部20の内周面21側まで延設されたセンサ層13に対し、直接、接触していなくとも、導電性接着剤48を介在させて導通状態を確保できる。また、センサ層13は、端子40と導通状態となる部位を、従来のリベットやねじ等の締結手段の締結力で圧縮させるわけではなく、単に、挿入凹部20内に延設させるだけの構成でよいことから、破断する虞れは生じず、安定して、端子40との導通状態を確保できる。
【0041】
したがって、実施形態のハンドルWでは、把持検知用の塗膜状のセンサ層13と端子40とを安定して接続することができる。また、センサ層13と端子40との接続作業が、導電性接着剤48を充填した挿入凹部20内に、単に、端子40を挿入するだけで、簡便に行える。
【0042】
また、実施形態のハンドルWでは、センサ層13が、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤58から形成され、被覆層10の成形時に、被覆層10の表面(外周面)10a側に、配設される構成としている(図2,3参照)。
【0043】
そのため、実施形態では、塗膜として形成されるセンサ層13が、モールドコート層(インモールドコート層)59としており、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤58を、被覆層10を型成形する際の成形型50の型面51a,52aに、予め、塗布しておくだけでよく、後は、単に、被覆層10を成形するだけで、センサ層13を設けた被覆層10を形成できる。さらに、比較例として、例えば、センサ層をモールドコート層とせずに、センサ層を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、成形後の被覆層10の外表面10a側に、塗布し、そして、硬化させて、センサ層を形成する場合では、成形後の被覆層の外表面に、プライマーを塗布したり、あるいは、ウレタン系塗料の塗布後の乾燥の工数も必要となってしまうが、この場合に比べて、実施形態のモールドコート層からなるセンサ層13を設けたハンドルWでは、既述のプライマーの塗布工程や乾燥工程が不要となることから、簡便に、製造できる。
【0044】
勿論、上記の点を考慮しなければ、センサ層をモールドコート層とせずに、センサ層を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、成形後の被覆層の外表面側に、塗布し、そして、硬化させて形成してもよい。
【0045】
また、実施形態のハンドルWでは、挿入凹部20が、端子40を嵌め込む挿入口22より、内部を拡径させた形状としている。
【0046】
そのため、実施形態では、挿入凹部20内で硬化した導電性接着剤48の充填部48aが、端子40と接合された状態で、挿入凹部20の挿入口22の内周縁28に、係止されるような構成となることから、端子40の挿入凹部20からの外れが防止されて、端子40とセンサ層13との接続強度を向上させることができる。
【0047】
勿論、図6に示すように、挿入凹部20Aを単に円柱状の凹部として、導電性接着剤48の接着力だけで、端子40Aをセンサ層13の延設部14に接着させて、導通させてもよい。なお、この端子40Aは、リード線36を円板状の頭部41の上面に半田付けして結線し、挿入凹部20A内に、頭部41から円柱状に延びる軸部42を、挿入させている。
【0048】
また、図7に示すように、挿入凹部20Bが、端子40Bを嵌め込む挿入口22より、内部を拡径させた形状としている場合には、端子40Bが、挿入口22の内周縁28に係止可能に、頭部41Bから延びる軸部42Bにおける先端部44と元部43との間の中間部に、先端部44より拡径させた拡径部45を設けてもよい。
【0049】
このような構成では、挿入口22の内周縁28に拡径部45を係止させるような構造となることから、一層、端子40Bの挿入凹部20Bからの外れが防止される。
【0050】
そして、このような拡径部を有した端子としては、図8,9に示すように、拡張式のリベット若しくはねじ、から構成してもよい。
【0051】
すなわち、図8に示す端子40Cは、拡張式リベットタイプとしており、頭部41Cから延びる軸部42Cの周囲に、頭部41C側の押し込み前には、閉じた状態とした拡張片46が配設されており、凹部20Cへの挿入後、頭部41C側を押し込めば、拡張片46が、傘のように開いて、外形寸法を広げた拡径部45Cを形成する構成としている。
【0052】
また、図9に示す端子40Dは、拡張式ねじタイプとしており、頭部41Dから延びる雄ねじが螺刻された軸部42Dに、拡張部材47が係合している。頭部41Dは、軸部42Dと連結された頭部本体41aと、リード線36を結線させて軸部42Dを挿通させた円環状の鍔部41bと、から構成されている。拡張部材47は、頭部41D側の軸部42Dを挿通させる元部47aと、軸部42Dに螺合される先端部47bと、元部47aと先端部47bとに連結される湾曲状の変形部47cと、を備えて構成されている。変形部47cは、拡径部45Dを構成するもので、頭部本体41aを回して、雄ねじを螺刻させた軸部42Dを所定方向に回せば、両側の変形部47cの外形寸法を狭めるように、先端部47bが頭部本体41aから離れる。この拡径部45Dが閉じた状態で、導電性接着剤48を充填させた挿入凹部20Dに、軸部42D側を挿入し、挿入後、頭部本体41aと軸部42Dとを所定方向に回して、先端部47bを元部47aに接近させれば、両側の変形部47cが外形寸法を広げて、変形部47cからなる拡径部45Dが、挿入凹部20Dにおける挿入口22の内周縁28に係止可能となる。
【0053】
また、実施形態では、端子40を保護層16の配設されていない部位に、配設する場合を示したが、エアバッグ装置70やスイッチカバー、あるいは、ロアカバー等の運転者側から隠れるエリアであれば、図10に示すように、保護層16の配設されているエリアに、リード線36を結線した端子40Eを、センサ層13に接続させるように、導電性接着剤48を充填させた挿入凹部20Eに、挿入させる構成としてもよい。なお、この端子40Eは、リード線36を結線させた頭部41Eと、頭部41Eから延びて、挿入凹部20Eに挿入される軸部42Eと、を配設させて、構成されている。
【符号の説明】
【0054】
3…芯金、6L…スポーク芯金部、10…被覆層、13…センサ層、14…延設部、20,20A,20B,20C,20D,20E…挿入凹部、22…挿入口、35…把持検知回路、36…リード線、40,40A,40B,40C,40D,40E…端子、45,45C,45D…拡径部、48…導電性接着剤、58…モールドコート材、W…ハンドル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10