(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/00 20160101AFI20241210BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20241210BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20241210BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20241210BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20241210BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20241210BHJP
B60W 20/40 20160101ALI20241210BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20241210BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241210BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/54
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/02 900
B60W20/40
F02D29/02 321B
B60L50/16
B60L15/20 J
(21)【出願番号】P 2022029270
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中野 智洋
(72)【発明者】
【氏名】尾田 真一
(72)【発明者】
【氏名】井戸側 正直
(72)【発明者】
【氏名】市川 晃次
(72)【発明者】
【氏名】福田 敦史
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-25858(JP,A)
【文献】特開平9-30294(JP,A)
【文献】特開2011-105022(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0375889(US,A1)
【文献】特開2013-189136(JP,A)
【文献】特開2013-170502(JP,A)
【文献】特開2020-111276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547
B60W 20/00
B60W 20/40
B60W 10/02
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 10/10
B60W 10/18
B60W 10/26
B60W 10/30
F02D 29/02
B60L 50/16
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上に設けられているモータと、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記モータとの間に設けられているクラッチと、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
処理回路を備え、
前記処理回路は、前記クラッチの解放状態において、目標エンジン回転数に従って前記エンジンをアイドル運転させるとともに、目標モータ回転数に従って前記モータを作動させるように構成され、
前記クラッチの前記解放状態において前記エンジンがアイドル運転するとき、前記目標モータ回転数は前記目標エンジン回転数よりも小さ
く、
前記処理回路は、前記クラッチを前記解放状態から係合状態に切り替える要求である切り替え要求がされたとき、
前記目標モータ回転数よりも大きい前記目標エンジン回転数を、前記目標モータ回転数に一致させる処理と、
エンジン回転数が前記目標エンジン回転数に一致するまで待機する処理と、
前記クラッチを係合状態に制御する処理と、を実行するように構成されている、
ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上に設けられているモータと、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記モータとの間に設けられているクラッチと、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
処理回路を備え、
前記処理回路は、前記クラッチの解放状態において、目標エンジン回転数に従って前記エンジンをアイドル運転させるとともに、目標モータ回転数に従って前記モータを作動させるように構成され、
前記クラッチの前記解放状態において前記エンジンがアイドル運転するとき、前記目標モータ回転数は前記目標エンジン回転数よりも小さ
く、
前記処理回路は、前記クラッチの前記解放状態において前記エンジンがアイドル運転するとき、前記エンジンの運転状態によらず、シフト位置に基づいて前記目標モータ回転数を設定するように構成されている、
ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上に設けられているモータと、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記モータとの間に設けられているクラッチと、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
処理回路を備え、
前記処理回路は、前記クラッチの解放状態において、目標エンジン回転数に従って前記エンジンをアイドル運転させるとともに、目標モータ回転数に従って前記モータを作動させるように構成され、
前記クラッチの前記解放状態において前記エンジンがアイドル運転するとき、前記目標モータ回転数は前記目標エンジン回転数よりも小さ
く、
前記処理回路は、前記クラッチの前記解放状態において前記エンジンが暖気運転するとき、シフト位置によらず、前記エンジンの暖気状態に基づいて前記目標エンジン回転数を設定するように構成されており、
前記エンジンの前記暖気状態に基づいて設定される前記目標エンジン回転数は、エンジン水温がより低いときに、より高くなり、
前記処理回路は、前記クラッチの前記解放状態において前記エンジンが暖気運転するとき、シフト位置及び前記エンジンの前記暖気状態に基づいて前記目標モータ回転数を設定するように構成され、
前記シフト位置及び前記エンジンの前記暖気状態に基づいて設定される前記目標モータ回転数は、前記エンジン水温がより低いときに、より高くなり、
前記処理回路は、前記クラッチの前記解放状態における前記エンジンの暖気運転中に、前記クラッチを係合状態に切り替える要求である切り替え要求がされたとき、
前記目標モータ回転数よりも大きい前記目標エンジン回転数を、前記目標モータ回転数に一致させる処理と、
エンジン回転数が前記目標エンジン回転数に一致するまで待機する処理と、
前記クラッチを係合状態に制御する処理と、を実行するように構成されている、
ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上に設けられているモータと、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記モータとの間に設けられているクラッチと、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
処理回路を備え、
前記処理回路は、前記クラッチの解放状態において、目標エンジン回転数に従って前記エンジンをアイドル運転させるとともに、目標モータ回転数に従って前記モータを作動させるように構成され、
前記クラッチの前記解放状態において前記エンジンがアイドル運転するとき、前記目標モータ回転数は前記目標エンジン回転数よりも小さ
く、
前記処理回路は、前記エンジンの始動時において、吸気温度が閾値吸気温度以上、かつ、エンジン水温が閾値水温以上であることを条件に高温再始動処理を実行するように構成され、
前記高温再始動処理は前記目標エンジン回転数を設定する処理を含み、
前記高温再始動処理において設定される前記目標エンジン回転数は、前記エンジン水温がより高いときに、より高くなる、
ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記処理回路は、前記クラッチの前記解放状態において前記高温再始動処理を実行するとき、シフト位置及び前記エンジン水温に基づいて前記目標モータ回転数を設定するように構成され、
前記高温再始動処理において設定される前記目標モータ回転数は、前記エンジン水温がより高いときに、より高くなり、
前記処理回路は、前記クラッチの前記解放状態における前記高温再始動処理中に、前記クラッチを係合状態に切り替える要求である切り替え要求がされたとき、
前記目標モータ回転数よりも大きい前記目標エンジン回転数を、前記目標モータ回転数に一致させる処理と、
エンジン回転数が前記目標エンジン回転数に一致するまで待機する処理と、
前記クラッチを係合状態に制御する処理と、を実行するように構成されている、
請求項4に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド車両の制御装置が開示されている。当該ハイブリッド車両は、エンジンと、モータと、トルクコンバータと、トランスミッションとを備えている。エンジンと、モータと、トルクコンバータと、トランスミッションとが、この順で並んでいる。
【0003】
ハイブリッド車両は、エンジンとモータとの間に設けられたK0クラッチをさらに備えている。K0クラッチは、エンジンの出力軸であるクランク軸を、モータのロータに連結可能である。すなわち、K0クラッチの係合状態において、クランク軸とロータとは一体回転する。ここで、K0クラッチの解放状態において、エンジン回転数とモータ回転数とが異なる状況を想定する。K0クラッチを解放状態から係合状態に切り替えることによって、エンジン回転数とモータ回転数とは同じになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記制御装置は、エンジン回転数とモータ回転数とを同一の目標回転数に制御した状態で、K0クラッチを解放状態から係合状態に切り替える。これにより、K0クラッチを解放状態から係合状態に切り替える際に、モータ回転数が急激に変化することが抑制される。すなわち、K0クラッチを係合させる際の駆動力の変動が抑制される。
【0006】
例えば、K0クラッチの解放状態において、エンジンがアイドル運転をする場合がある。係る場合、高めのエンジン回転数が、エンジンにおける燃焼を安定させるために要求されることがある。上記制御装置は、これに伴い、モータ回転数も高くする。すなわち、上記制御装置は、燃焼が安定するようにエンジンを制御する場合、モータにおける電力消費が増大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
本開示の一態様によれば、エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上に設けられているモータと、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記モータとの間に設けられているクラッチと、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、処理回路を備え、前記処理回路は、前記クラッチの解放状態において、目標エンジン回転数に従って前記エンジンをアイドル運転させるとともに、目標モータ回転数に従って前記モータを作動させるように構成され、前記クラッチの前記解放状態において前記エンジンがアイドル運転するとき、前記目標モータ回転数は前記目標エンジン回転数よりも小さい、ハイブリッド車両の制御装置が提供される。
【0008】
処理回路は、クラッチの解放状態において、目標エンジン回転数に従ってエンジンをアイドル運転させるとともに、目標モータ回転数に従ってモータを作動させる。目標モータ回転数は目標エンジン回転数よりも小さい。したがって、目標エンジン回転数に一致する目標回転数に従ってモータを作動させる構成と比較して、モータにおける電力消費を低減できる。
【0009】
上記ハイブリッド車両の制御装置において、前記処理回路は、前記クラッチを前記解放状態から係合状態に切り替える要求である切り替え要求がされたとき、前記目標モータ回転数よりも大きい前記目標エンジン回転数を、前記目標モータ回転数に一致させる処理と、エンジン回転数が前記目標エンジン回転数に一致するまで待機する処理と、前記クラッチを係合状態に制御する処理と、を実行するように構成されていてもよい。
【0010】
モータ回転数を変更すると、駆動力が変化する。切り替え要求がされたとき、目標エンジン回転数を目標モータ回転数に一致させる。すなわち、モータ回転数を変更しなくてもエンジン回転数とモータ回転数を一致させることができる。これにより、クラッチを係合させる際の駆動力の変動が抑制される。
【0011】
上記ハイブリッド車両の制御装置において、前記処理回路は、前記クラッチの前記解放状態において前記エンジンがアイドル運転するとき、前記エンジンの運転状態によらず、シフト位置に基づいて前記目標モータ回転数を設定するように構成されていてもよい。
【0012】
クラッチが解放状態にあるとき、モータはエンジンの影響を受けない。したがって、シフト位置に基づいて目標モータ回転数を自由に設定することができる。
上記ハイブリッド車両の制御装置において、前記処理回路は、前記クラッチの前記解放状態において前記エンジンが暖気運転するとき、シフト位置によらず、前記エンジンの暖気状態に基づいて前記目標エンジン回転数を設定するように構成されていてもよい。
【0013】
クラッチが解放状態にあるとき、エンジンはモータの影響を受けない。このため、クラッチが解放状態にあるとき、エンジンの暖気状態に基づいて自由に目標エンジン回転数を設定できる。
【0014】
上記ハイブリッド車両の制御装置において、前記エンジンの前記暖気状態に基づいて設定される前記目標エンジン回転数は、エンジン水温がより低いときに、より高くなってもよい。
【0015】
エンジン水温が低いときには、エンジンの回転数を上昇させて積極的にエンジンの暖気を行うべきである。上記構成では、目標エンジン回転数は、エンジン水温がより低いときに、より高くなる。これにより適切にエンジンの暖気を行うことができる。
【0016】
上記ハイブリッド車両の制御装置において、前記処理回路は、前記クラッチの前記解放状態において前記エンジンが暖気運転するとき、シフト位置及び前記エンジンの前記暖気状態に基づいて前記目標モータ回転数を設定するように構成され、前記シフト位置及び前記エンジンの前記暖気状態に基づいて設定される前記目標モータ回転数は、前記エンジン水温がより低いときに、より高くなり、前記処理回路は、前記クラッチの前記解放状態における前記エンジンの暖気運転中に、前記クラッチを係合状態に切り替える要求である切り替え要求がされたとき、前記目標モータ回転数よりも大きい前記目標エンジン回転数を、前記目標モータ回転数に一致させる処理と、エンジン回転数が前記目標エンジン回転数に一致するまで待機する処理と、前記クラッチを係合状態に制御する処理と、を実行するように構成されていてもよい。
【0017】
クラッチの解放状態におけるエンジンの暖気運転中に切り替え要求がされることがある。上記構成では、予め目標モータ回転数を目標エンジン回転数に追従するように増大した状態から、目標エンジン回転数を目標モータ回転数に一致させている。次いで、クラッチが係合状態に制御される。ここで、目標モータ回転数を目標エンジン回転数に追従させるように増大させていない状態から、目標エンジン回転数を目標モータ回転数に一致させる比較例が考えられる。上記構成によれば、比較例よりも、切り替え要求がされた際の目標エンジン回転数の変化を小さくできる。したがって、上記構成では、比較例よりもエンジンの暖気が妨げられにくい。エンジン回転数をモータ回転数に一致させた後にクラッチを係合状態に制御することにより、クラッチ係合時の駆動力の変動を抑制できる。
【0018】
上記ハイブリッド車両の制御装置において、前記処理回路は、前記エンジンの始動時において、吸気温度が閾値吸気温度以上、かつ、エンジン水温が閾値水温以上であることを条件に高温再始動処理を実行するように構成され、前記高温再始動処理は前記目標エンジン回転数を設定する処理を含み、前記高温再始動処理において設定される前記目標エンジン回転数は、前記エンジン水温がより高いときに、より高くなってもよい。
【0019】
高外気温下でエンジンが停止した場合、燃料のベーパー化が生じることがある。係る場合、燃料が噴射されにくくなるため、エンジン始動後にラフアイドルが生じる。上記構成では、処理回路は、吸気温度が閾値吸気温度以上、かつ、エンジン水温が閾値水温以上である場合に、ラフアイドルを予期する。
【0020】
エンジン水温が高いとき、燃料パイプが熱くなっていると考えられる。このため、燃料のベーパー化は、エンジン水温が高いほど生じやすいと考えられる。上記構成では、目標エンジン回転数は、エンジン水温がより高いときに、より高くなる。目標エンジン回転数を高くすることによって、燃料の噴射がより促される。これにより、燃焼を安定させることができる。
【0021】
上記ハイブリッド車両の制御装置において、前記処理回路は、前記クラッチの前記解放状態において前記高温再始動処理を実行するとき、シフト位置及び前記エンジン水温に基づいて前記目標モータ回転数を設定するように構成され、前記高温再始動処理において設定される前記目標モータ回転数は、前記エンジン水温がより高いときに、より高くなり、前記処理回路は、前記クラッチの前記解放状態における前記高温再始動処理中に、前記クラッチを係合状態に切り替える要求である切り替え要求がされたとき、前記目標モータ回転数よりも大きい前記目標エンジン回転数を、前記目標モータ回転数に一致させる処理と、エンジン回転数が前記目標エンジン回転数に一致するまで待機する処理と、前記クラッチを係合状態に制御する処理と、を実行するように構成されていてもよい。
【0022】
クラッチの解放状態における高温再始動処理中に切り替え要求がされることがある。上記構成では、予め目標モータ回転数を目標エンジン回転数に追従するように増大した状態から、目標エンジン回転数を目標モータ回転数に一致させている。次いで、クラッチが係合状態に制御される。ここで、目標モータ回転数を目標エンジン回転数に追従させるように増大させていない状態から、目標エンジン回転数を目標エンジン回転数に一致させる比較例が考えられる。上記構成では、比較例よりも切り替え要求がされた際の目標エンジン回転数の変化を小さくできる。したがって、上記構成では、比較例よりも高温再始動処理が妨げられにくい。エンジン回転数をモータ回転数に一致させた後にクラッチを係合状態に制御することにより、クラッチ係合時の駆動力の変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置と、同制御装置が制御するハイブリッド車両を示す模式図である。
【
図2】K0クラッチの解放状態において、通常マップ、暖機運転マップ、及び高温再始動マップからマップを選択する処理に係るフローチャートである。
【
図6】K0クラッチを係合状態にすることによってEV走行モードからエンジン走行モードに切り換える一連の処理のフローチャートである。
【
図7】K0クラッチの解放状態において通常マップが選択されている場合に、EV走行モードからエンジン走行モードに切り換えるときの作用を示す図である。
【
図8】K0クラッチの解放状態において暖機運転マップが選択されている場合に、EV走行モードからエンジン走行モードに切り換えるときの作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、一実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置について、図面を参照して説明する。
<ハイブリッド車両90の構成>
図1は、制御装置10と、制御装置10の制御対象であるハイブリッド車両(以下、車両)90と、を示している。車両90は、エンジン91とモータ82とを駆動源として備えている。車両90は、エンジン91から駆動輪72への動力伝達経路に、変速ユニット80を備えている。変速ユニット80と駆動輪72とは、差動ギア71を介して連結されている。
【0025】
変速ユニット80は、モータ82を備えている。モータ82は、エンジン91と駆動輪72との間の動力伝達経路上に設けられている。モータ82は、インバータを介して電源に接続されている。モータ82は、電源からの電力の供給によって車両90の駆動力を発生する駆動源として機能する。また、モータ82は、エンジン91又は駆動輪72からの動力伝達によって電力を発電する発電機として機能させることもできる。
【0026】
変速ユニット80は、K0クラッチ81を備えている。K0クラッチ81は、動力伝達経路上においてエンジン91とモータ82との間に位置している。K0クラッチ81は、変速ユニット80が備える油圧制御機構86から供給される油圧によって作動する。K0クラッチ81が係合されているK0クラッチ81の係合状態において、エンジン91の出力軸であるクランク軸92がモータ82のロータと連結される。K0クラッチ81が解放されているK0クラッチ81の解放状態において、クランク軸92とモータ82のロータとが切り離されている。
【0027】
変速ユニット80は、トルクコンバータ83と自動変速機85とを備えている。自動変速機85は、動力伝達経路上においてモータ82よりも駆動輪72に近い。自動変速機85は、トルクコンバータ83を介してモータ82と連結されている。
【0028】
トルクコンバータ83は、入力側のポンプインペラ83Aと出力側のタービンライナ83Bとを備えている。ポンプインペラ83Aは、エンジン91及びモータ82からの動力が入力される入力軸と一体に回転する。タービンライナ83Bは、自動変速機85に接続されている出力軸と一体に回転する。トルクコンバータ83では、ポンプインペラ83Aとタービンライナ83Bとの間において流体を介したトルク伝達が行われる。
【0029】
また、トルクコンバータ83は、ポンプインペラ83Aとタービンライナ83Bとを直結して両者を一体的に回転させることができるロックアップクラッチ84を備えている。ロックアップクラッチ84は、油圧制御機構86から供給される油圧によって作動する。ロックアップクラッチ84の作動状態には、直結状態と、解放状態と、スリップ状態とがある。直結状態は、ロックアップクラッチ84を介してポンプインペラ83Aとタービンライナ83Bとが直結されている状態である。解放状態は、ロックアップクラッチ84が解放されている状態である。スリップ状態は、ロックアップクラッチ84がスリップしている状態である。
【0030】
車両90では、EV(Electric Vehicle)走行モードと、エンジン走行モードと、を切り換えることによって走行モードを変更することができる。EV走行モードは、モータ82のみを駆動源とするモードである。エンジン走行モードは、エンジン91の動力を駆動輪72に伝達させるモードである。EV走行モードでは、K0クラッチ81が解放されている。エンジン走行モードは、K0クラッチ81が係合されている。走行モードの変更は、車両90の制御装置10によって行われる。
【0031】
制御装置10は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェース等を有する所謂マイクロコンピュータを含む。制御装置10は、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。制御装置10は、エンジン91及びモータ82等を制御可能である。
【0032】
モータ回転数センサ14がモータ82に設けられている。制御装置10は、モータ回転数センサ14を通じてモータ82の回転数であるモータ回転数を取得できる。エンジン回転数センサ20がエンジン91に設けられている。制御装置10は、エンジン回転数センサ20を通じてエンジン91の回転数であるエンジン回転数を取得できる。回転数とは、1分間当たりに回転する回数である。エンジン水温センサ16がエンジン91に設けられている。制御装置10は、エンジン水温センサ16を通じてエンジン91の水温であるエンジン水温を取得できる。吸気温度センサ18がエンジン91に設けられている。制御装置10は、吸気温度センサ18を通じて、エンジン91に吸気される空気の温度である吸気温度を取得できる。
【0033】
<制御装置10が実行する処理の概要>
エンジン91のアイドル運転について説明する。アイドル運転とは、エンジン91の外部に取り出す出力が要求されておらず、エンジン回転数が一定である状態を指す。換言すると、アイドル運転とは、エンジン91の軸トルク(すなわち、正味トルク)が0の状態の運転を意味する。エンジン91の軸トルクとは、エンジン91における燃焼によって生じるトルクから、エンジン91におけるフリクションによって消費されるトルクを差し引いたトルクである。換言すると、エンジン91の軸トルクとは、エンジン91の外部に取り出されるトルクである。K0クラッチ81が解放されており、かつ、エンジン91の軸トルクが0である場合、エンジン回転数は一定に維持される。K0クラッチ81が解放されており、かつ、エンジン91の軸トルクが負である場合、エンジン回転数は減少する。K0クラッチ81が解放されており、かつ、エンジン91の軸トルクが正である場合、エンジン回転数は増大する。なお、K0クラッチ81の係合状態におけるアイドル運転も考えられる。
【0034】
図2に示すように、制御装置10は、K0クラッチ81の解放状態において、通常マップ、暖機運転マップ、及び高温再始動マップからマップを選択する。ここで、これらのマップは、目標エンジン回転数及び目標モータ回転数を指定するマップである。制御装置10は、選択されたマップに従いエンジン91をアイドル運転させるとともに、モータ82を作動させる。
図3~
図5を参照しつつ、これらの通常マップ、暖機運転マップ、及び高温再始動マップについては後述する。K0クラッチ81が解放されているとき、上述したように制御装置10は、モータ82のみを駆動源とするEV走行モードに従い車両90を制御している。
【0035】
図6に示すように、制御装置10は、K0クラッチ81を解放状態から係合状態に切り替える要求である切り替え要求がされたとき、目標回転数一致処理を実行する。目標回転数一致処理とは、目標モータ回転数よりも大きい目標エンジン回転数を、目標モータ回転数に一致させる処理である。切り替え要求がされるとは、エンジン91の動力を駆動輪72に伝達させるエンジン走行モードが要求されることを意味する。制御装置10は、エンジン回転数とモータ回転数とが一致した後、K0クラッチ81を解放状態から係合状態に切り替える。これにより、K0クラッチ81を係合させる際の駆動力の変動が抑制される。
【0036】
<K0クラッチ81の解放状態において制御装置10が実行する処理>
制御装置10は、K0クラッチ81の解放状態において、目標エンジン回転数に従ってエンジン91をアイドル運転させるとともに、目標モータ回転数に従ってモータ82を作動させる。すなわち、制御装置10は、エンジン回転数が目標エンジン回転数に一致するようにエンジン91を制御する。また、制御装置10は、モータ回転数が目標モータ回転数に一致するようにモータ82を制御する。
【0037】
図2を参照して、目標エンジン回転数及び目標モータ回転数を指定するマップを選択する処理を説明する。
図2の処理は、所定周期で繰り返し実行される。
制御装置10は、ステップS200において、暖機運転要求があるか否かを判定する。制御装置10は、暖機運転要求がある場合(ステップS200:YES)、ステップS202に進む。制御装置10は、ステップS202において、
図4に示す暖機運転マップを選択する。
【0038】
制御装置10は、暖機運転要求がない場合(ステップS200:NO)、ステップS204に進む。制御装置10は、ステップS204において、高温再始動要求があるか否かを判定する。制御装置10は、高温再始動要求がある場合(ステップS204:YES)、ステップS206に進む。詳細には、制御装置10は、エンジン91の始動時において、吸気温度が閾値吸気温度以上、かつ、エンジン水温が閾値水温Th以上であることを条件に高温再始動要求があると判定する。制御装置10は、ステップS206において、
図5に示す高温再始動マップを選択する。高温再始動処理について、ここで説明する。高外気温下でエンジン91が停止した場合に燃料のベーパー化が生じる。この場合、燃料が噴射されにくくなるため、エンジン91の始動後にラフアイドルが生じる。高温再始動処理は、目標エンジン回転数を高くすることによって、燃料の噴射を促す処理である。これにより、燃焼を安定させることができる。
【0039】
制御装置10は、高温再始動要求がない場合(ステップS204:NO)、ステップS208に進む。制御装置10は、ステップS208において、
図3に示す通常マップを選択する。
【0040】
制御装置10は、上述したステップS202、ステップS206、又はステップS208においてマップを選択した後、ステップS210に進む。制御装置10は、ステップS210において、選択されたマップに従って目標エンジン回転数及び目標モータ回転数を設定する。
【0041】
次に、
図3を参照して、通常マップを説明する。
図3に示すように、通常マップでは、シフト位置によらず一定の目標エンジン回転数が設定される。
図3に示す例では、目標エンジン回転数は800である。シフト位置によらず一定の目標エンジン回転数が設定される理由について説明する。エンジン91は、モータ82、トルクコンバータ83、及び自動変速機85よりも上流に位置している。K0クラッチ81は、エンジン91とモータ82との間に位置している。このため、K0クラッチ81が解放されている場合、エンジン91は、シフト位置から影響を受けない。したがって、K0クラッチ81の解放状態では、シフト位置によらず一定の目標エンジン回転数が設定される。
【0042】
図3に示すように、通常マップでは、シフト位置に基づいて目標モータ回転数が設定される。
図3に示す例では、目標モータ回転数は、シフト位置がD(ドライブ)レンジのとき650である。Dレンジとは、車両90の通常の走行時に用いられるシフト位置であって、車両90の速度に応じて自動で変速が行われるシフト位置である。
図3に示す例では、目標モータ回転数は、シフト位置がN(ニュートラル)レンジのとき700である。Nレンジとは、自動変速機85中のギアによる動力伝達が遮断されたシフト位置である。
図3に示す例では、目標モータ回転数は、シフト位置がR(リバース)レンジのとき650である。Rレンジとは、車両90の後退時に用いられるシフト位置である。このように、制御装置10は、K0クラッチ81の解放状態においてエンジン91がアイドル運転するとき、エンジン91の運転状態によらず、シフト位置に基づいて目標モータ回転数を設定する。
【0043】
図3に示すように、K0クラッチ81の解放状態においてエンジン91がアイドル運転するときに用いられる通常マップでは、目標モータ回転数は目標エンジン回転数よりも小さい。
【0044】
次に、
図4を参照して、暖機運転マップを説明する。
図4に示すように、制御装置10は、K0クラッチ81の解放状態においてエンジン91が暖気運転するとき、シフト位置によらず、エンジン91の暖気状態に基づいて目標エンジン回転数を設定する。暖気状態を規定する変数としてエンジン水温が用いられる。エンジン91の暖気状態に基づいて設定される目標エンジン回転数は、エンジン水温がより低いときに、より高くなる。
【0045】
図4に示すように、制御装置10は、K0クラッチ81の解放状態においてエンジン91が暖気運転するとき、シフト位置及びエンジン91の暖気状態に基づいて目標モータ回転数を設定する。シフト位置及びエンジン91の暖気状態に基づいて設定される目標モータ回転数は、エンジン水温がより低いときに、より高くなる。
図4に示すように、所与のエンジン水温について、目標モータ回転数(Nレンジ)>目標モータ回転数(Dレンジ)≧目標モータ回転数(Rレンジ)の関係が成立している。目標モータ回転数(Dレンジ)と目標モータ回転数(Rレンジ)は、部分的に一致している。
図4では説明の便宜上、目標モータ回転数(Dレンジ)は、目標モータ回転数(Rレンジ)に対して少し上にずらして示している。
【0046】
図4に示すように、暖気完了温度Tnにおける目標モータ回転数(Nレンジ)を除き、エンジン91がアイドル運転するとき、目標モータ回転数は目標エンジン回転数よりも小さい。
【0047】
次に、
図5を参照して、高温再始動マップを説明する。
制御装置10は、上述した高温再始動要求があると判定した場合、高温再始動処理を実行する。高温再始動処理は目標エンジン回転数を設定する処理を含む。
図5に示すように、高温再始動処理において設定される目標エンジン回転数は、エンジン水温がより高いときに、より高くなる。
【0048】
制御装置10は、K0クラッチ81の解放状態において高温再始動処理を実行するとき、シフト位置及びエンジン水温に基づいて目標モータ回転数を設定する。
図5に示すように、高温再始動処理において設定される目標モータ回転数は、エンジン水温がより高いときに、より高くなる。
図5に示すように、所与のエンジン水温について、目標モータ回転数(Nレンジ)>目標モータ回転数(Dレンジ)=目標モータ回転数(Rレンジ)の関係が成立している。
【0049】
図5に示すように、エンジン91がアイドル運転するとき、目標モータ回転数は目標エンジン回転数よりも小さい。
<K0クラッチ81を解放状態から係合状態に切り替える際に制御装置10が実行する処理>
図6を参照して、K0クラッチ81を解放状態から係合状態に切り替える際に制御装置10が実行する処理について説明する。制御装置10は、K0クラッチ81を解放状態から係合状態に切り替える要求である切り替え要求がされたとき、
図6の処理を開始する。
【0050】
制御装置10は、ステップS600において、目標モータ回転数よりも大きい目標エンジン回転数を、目標モータ回転数に一致させる目標回転数一致処理を実行する。
制御装置10は、ステップS602において、エンジン回転数が目標エンジン回転数に一致するまで待機する回転数一致待機処理を実行する。
【0051】
制御装置10は、ステップS604において、K0クラッチ81を係合状態に制御するK0クラッチ係合処理と、を実行する。
制御装置10は、ステップS606において、トルクすり替え処理を実行する。トルクすり替え処理とは、エンジン軸トルクとモータトルクの合計したトルクの大きさを維持しつつ、エンジン軸トルクとモータトルクとの配分を変化させる処理である。ここで、エンジン軸トルクとはエンジン91の軸トルクであり、モータトルクとはモータ82の出力トルクである。
【0052】
制御装置10は、ステップS606の処理を完了した場合、本フローを終了する。
<本実施形態の作用>
図7を参照して、通常マップに従ってエンジン91をアイドル運転させている状態において、切り替え要求がされた場合の作用を説明する。
【0053】
まず、制御装置10は、K0クラッチ81の解放状態において、目標エンジン回転数に従ってエンジン91をアイドル運転させるとともに、目標モータ回転数に従ってモータ82を作動させている。目標エンジン回転数は、目標モータ回転数よりも大きい。このため、エンジン回転数はモータ回転数よりも大きい。エンジン91はアイドル運転しているのでエンジン軸トルクは0である。これに対し、モータトルクは正である。
【0054】
制御装置10は、切り替え要求がされると、K0クラッチ81の解放状態(すなわち、K0クラッチ係合率は0の状態)から僅かにK0クラッチ係合率を上昇させる。目標回転数一致処理に起因して、時刻T11から時刻T12にかけて、モータ回転数よりも大きいエンジン回転数が、減少することにより、モータ回転数に近づく。時刻T11から時刻T12においては、エンジン軸トルクは負である。
【0055】
時刻T12において、エンジン回転数がモータ回転数にほぼ一致する。制御装置10は、時刻T12から時刻T13にかけて、僅かにK0クラッチ係合率を上昇させる。これにより、時刻T13においてエンジン回転数がモータ回転数に一致する。これにより、エンジン回転数がモータ回転数に一致しているか否かを示す回転同期フラグが0から1に変化する。
【0056】
制御装置10は、時刻T13から時刻T14にかけて、K0クラッチ係合率を1まで急激に上昇させる。エンジン回転数がモータ回転数にほぼ一致した時刻T12から、K0クラッチ係合率が1となる時刻T14までの期間は、係合期間と称される。
【0057】
制御装置10は、時刻T14から時刻T15にかけてトルクすり替え処理を実行する。時刻T15においてモータトルクは0になっている。時刻T15において、エンジン軸トルクは、切り替え要求がされる前にモータ82から出力されていたトルクに等しくなっている。
【0058】
図8を参照して、暖機運転マップに従ってエンジン91をアイドル運転させている状態において、切り替え要求がされた場合の作用を説明する。本実施形態に係るエンジン回転数の変化、モータ回転数の変化、及びエンジン軸トルクの変化を実線で示している。比較例に係るエンジン回転数の変化、モータ回転数の変化、及びエンジン軸トルクの変化を一点鎖線で示している。
【0059】
まず、制御装置10は、K0クラッチ81の解放状態において、目標エンジン回転数に従ってエンジン91をアイドル運転させるとともに、目標モータ回転数に従ってモータ82を作動させている。ここで、暖機運転要求があるので、通常マップの目標エンジン回転数と比較して高めの目標エンジン回転数が設定されている。また、通常マップの目標モータ回転数と比較して高めの目標モータ回転数が設定されている。比較例の目標モータ回転数は、通常マップの目標モータ回転数である。
【0060】
制御装置10は、時刻T21から時刻T23にかけて、エンジン回転数をモータ回転数に一致させる。エンジン回転数を目標モータ回転数に一致させるためには、比較例では、本実施形態よりも大幅にエンジン回転数を減少させる必要がある。本実施形態では、切り替え要求がされる前において高めの目標モータ回転数が設定されているので、比較例よりもエンジン回転数を減少させる量が少なくなっている。ここで、目標モータ回転数は、エンジン回転数をモータ回転数に一致させてもエンジン91の暖機運転に悪影響が出ない程度の大きさに設定されている。
【0061】
なお、高温再始動マップに従ってエンジン91をアイドル運転させている状態において、切り替え要求がされた場合の作用は、
図8に示した作用と同様である。
<本実施形態の効果>
(1)制御装置10は、K0クラッチ81の解放状態において、目標エンジン回転数に従ってエンジン91をアイドル運転させるとともに、目標モータ回転数に従ってモータ82を作動させる。目標モータ回転数は目標エンジン回転数よりも小さい。したがって、目標エンジン回転数に一致する目標回転数に従ってモータ82を作動させる構成と比較して、モータ82における電力消費を低減できる。
【0062】
(2)モータ回転数を変更すると、駆動力が変化する。切り替え要求がされたとき、目標エンジン回転数を目標モータ回転数に一致させる。すなわち、モータ回転数を変更しなくてもエンジン回転数とモータ回転数を一致させることができる。これにより、K0クラッチ81を係合させる際の駆動力の変動が抑制される。
【0063】
(3)K0クラッチ81が解放状態にあるとき、モータ82はエンジン91の影響を受けない。したがって、シフト位置に基づいて目標モータ回転数を自由に設定することができる。
【0064】
(4)K0クラッチ81が解放状態にあるとき、エンジン91はモータ82の影響を受けない。このため、K0クラッチ81が解放状態にあるとき、エンジン91の暖気状態に基づいて自由に目標エンジン回転数を設定できる。
【0065】
(5)エンジン水温が低いときには、エンジン91の回転数を上昇させて積極的にエンジン91の暖気を行うべきである。上記構成では、目標エンジン回転数は、エンジン水温がより低いときに、より高くなる。これにより適切にエンジン91の暖気を行うことができる。
【0066】
(6)K0クラッチ81の解放状態におけるエンジン91の暖気運転中に切り替え要求がされることがある。上記構成では、予め目標モータ回転数を目標エンジン回転数に追従するように増大した状態から、目標エンジン回転数を目標モータ回転数に一致させている。次いで、K0クラッチ81が係合状態に制御される。ここで、目標モータ回転数を目標エンジン回転数に追従させるように増大させていない状態から、目標エンジン回転数を目標モータ回転数に一致させる比較例が考えられる。上記構成によれば、比較例よりも、切り替え要求がされた際のエンジン回転数の変化を小さくできる。したがって、上記構成では、比較例よりもエンジン91の暖気が妨げられにくい。エンジン回転数をモータ回転数に一致させた後にK0クラッチ81を係合状態に制御することにより、K0クラッチ81の係合時の駆動力の変動を抑制できる。
【0067】
(7)高外気温下でエンジン91が停止した場合、燃料のベーパー化が生じることがある。係る場合、燃料が噴射されにくくなるため、エンジン91の始動後にラフアイドルが生じる。上記構成では、制御装置10は、吸気温度が閾値吸気温度以上、かつ、エンジン水温が閾値水温Th以上である場合に、ラフアイドルを予期する。
【0068】
エンジン水温が高いとき、燃料パイプが熱くなっていると考えられる。このため、燃料のベーパー化は、エンジン水温が高いほど生じやすいと考えられる。上記構成では、目標エンジン回転数は、エンジン水温がより高いときに、より高くなる。目標エンジン回転数を高くすることによって、燃料の噴射がより促される。これにより、燃焼を安定させることができる。
【0069】
(8)K0クラッチ81の解放状態における高温再始動処理中に切り替え要求がされることがある。上記構成では、予め目標モータ回転数を目標エンジン回転数に追従するように増大した状態から、目標エンジン回転数を目標モータ回転数に一致させている。次いで、K0クラッチ81が係合状態に制御される。ここで、目標モータ回転数を目標エンジン回転数に追従させるように増大させていない状態から、目標エンジン回転数を目標エンジン回転数に一致させる比較例が考えられる。上記構成では、比較例よりも切り替え要求がされた際のエンジン回転数の変化を小さくできる。したがって、上記構成では、比較例よりも高温再始動処理が妨げられにくい。エンジン回転数をモータ回転数に一致させた後にK0クラッチ81を係合状態に制御することにより、K0クラッチ81の係合時の駆動力の変動を抑制できる。
【0070】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0071】
・上記実施形態では、制御装置10は、K0クラッチ81の解放状態において、通常マップ、暖機運転マップ、及び高温再始動マップからマップを選択する。しかしながら、これは例示に過ぎない。K0クラッチ81の解放状態においてエンジン91がアイドル運転するとき、目標モータ回転数は目標エンジン回転数よりも小さいだけでもよい。
【0072】
・上記実施形態で
図3に示した目標エンジン回転数及び目標モータ回転数は例示に過ぎない。例えば、目標モータ回転数(D/Rレンジ)が650で、目標エンジン回転数が目標モータ回転数(Nレンジ)と同じ700でもよい。この場合、例えば、シフト位置がDレンジにある状態でエンジン91がアイドル運転するとき、目標モータ回転数が目標エンジン回転数よりも低い。係る場合、上記の効果(1)と同様に効果を奏することができる。
【0073】
・上記実施形態では、エンジン91の暖気状態に基づいて設定される目標エンジン回転数は、エンジン水温がより低いときに、より高くなる。しかしながら、これは例示に過ぎない。例えば、暖気要求がある場合の目標エンジン回転数は、暖気要求がない場合目標エンジン回転数と比較して高い固定値であってもよい。
【0074】
・上記実施形態では、エンジン91の暖気状態に基づいて設定される目標エンジン回転数は、エンジン水温がより低いときに、より高くなる。
図4に示した暖機運転マップは例示に過ぎない。例えば、目標エンジン回転数は、エンジン水温に応じて階段状に変化してもよい。
【0075】
・上記実施形態では、シフト位置及びエンジン91の暖気状態に基づいて設定される目標モータ回転数は、エンジン水温がより低いときに、より高くなる。
図4に示した暖機運転マップは例示に過ぎない。例えば、目標モータ回転数は、エンジン水温に応じて階段状に変化してもよい。
【0076】
・上記実施形態では、高温再始動処理において設定される目標エンジン回転数は、エンジン水温がより高いときに、より高くなる。
図5に示した高温再始動転マップは例示に過ぎない。例えば、目標エンジン回転数は、エンジン水温に応じて階段状に変化してもよい。
【0077】
・上記実施形態では、高温再始動処理において設定される目標モータ回転数は、エンジン水温がより高いときにより高くなる。
図5に示した高温再始動転マップは例示に過ぎない。例えば、目標モータ回転数は、エンジン水温に応じて階段状に変化してもよい。
【0078】
・上記実施形態では、制御装置10は、CPUとROMとRAMとを備えて、ソフトウェア処理を実行する。しかしながら、これは例示に過ぎない。例えば、制御装置10は、上記実施形態において実行されるソフトウェア処理の少なくとも一部を処理する専用のハードウェア回路(例えばASIC等)を備えてもよい。すなわち、制御装置10は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)制御装置10は、プログラムに従って全ての処理を実行する処理装置と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。すなわち、制御装置10は、ソフトウェア実行装置を備える。(b)制御装置10は、プログラムに従って処理の一部を実行する処理装置と、プログラム格納装置とを備える。さらに、制御装置10は、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路を備える。(c)制御装置10は、全ての処理を実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、ソフトウェア実行装置、及び/又は、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。すなわち、上記処理は、ソフトウェア実行装置及び専用のハードウェア回路の少なくとも一方を備えた処理回路(processing circuitry)によって実行され得る。処理回路に含まれるソフトウェア実行装置及び専用のハードウェア回路は複数であってもよい。プログラム格納装置すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0079】
10…制御装置
72…駆動輪
81…K0クラッチ
82…モータ
90…ハイブリッド車両(車両)
91…内燃機関(エンジン)