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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20241210BHJP
   F01M 11/06 20060101ALI20241210BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F01M13/00 E
F01M11/06 Z
F02F7/00 301A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022034341
(22)【出願日】2022-03-07
(65)【公開番号】P2023129961
(43)【公開日】2023-09-20
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】池上 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】西尾 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】大脇 一之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健史
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-291089(JP,A)
【文献】特開2008-255816(JP,A)
【文献】特開2015-183527(JP,A)
【文献】特開2008-057501(JP,A)
【文献】特開2020-067005(JP,A)
【文献】特開2019-214958(JP,A)
【文献】特開2015-028331(JP,A)
【文献】特開2009-203960(JP,A)
【文献】米国特許第06431157(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/00 , 13/00
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸の軸線に沿う第1方向に順に並んだ気筒である、第1気筒、第2気筒、第3気筒、及び第4気筒と、
前記第1気筒に接続する第1クランク室、前記第2気筒に接続する第2クランク室、前記第3気筒に接続する第3クランク室、及び前記第4気筒に接続する第4クランク室と、
前記第1クランク室、前記第2クランク室、前記第3クランク室、及び前記第4クランク室に、前記気筒とは反対側で接続し、オイルを貯留するオイル室と、
前記第1気筒内で往復運動する第1ピストン、前記第2気筒内で前記第1ピストンとは逆位相で往復運動する第2ピストン、前記第3気筒内で前記第1ピストンとは逆位相で往復運動する第3ピストン、前記第4気筒内で前記第1ピストンと同位相で往復運動する第4ピストンと、
前記第1クランク室を前記第1方向とは反対の第2方向側から区画する第1壁、前記第1クランク室及び前記第2クランク室を仕切る第2壁、前記第2クランク室及び前記第3クランク室を仕切る第3壁、前記第3クランク室及び前記第4クランク室を仕切る第4壁、及び前記第4クランク室を前記第1方向側から区画する第5壁と、
前記第2壁内に区画され、前記オイル室とオイルセパレータとを繋ぐ第1ブローバイガス通路、前記第3壁内に区画され、前記オイル室と前記オイルセパレータとを繋ぐ第2ブローバイガス通路、及び前記第4壁内に区画され、前記オイル室と前記オイルセパレータとを繋ぐ第3ブローバイガス通路と、
前記第2壁内に区画され、前記第1クランク室及び前記第2クランク室を繋ぐ第1連通路、及び前記第4壁内に区画され、前記第3クランク室及び前記第4クランク室を繋ぐ第2連通路と、
を備えており、
前記第3壁は、前記第2クランク室及び前記第3クランク室を繋ぐ通路を有しておらず、
前記第1気筒、前記第2気筒、前記第3気筒、及び前記第4気筒を区画するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックに接続するとともに、前記第1クランク室、前記第2クランク室、前記第3クランク室、及び前記第4クランク室を区画するクランクケースと、
前記クランクケースに接続するとともに、前記オイル室を区画するオイルパンとを備え、
前記シリンダブロック及び前記クランクケースの一方は、前記シリンダブロック及び前記クランクケースの接続面において窪んだ第1凹部と、前記接続面において窪んだ第2凹部とを備えており、
前記第1凹部に区画される空間は、前記第1連通路であり、
前記第2凹部に区画される空間は、前記第2連通路である
内燃機関。
【請求項2】
前記第1連通路は、前記第1ブローバイガス通路に繋がっており、
前記第2連通路は、前記第3ブローバイガス通路に繋がっている
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記第1方向を向いて視たときに、前記第1連通路及び前記第2連通路は、同じ箇所に位置している
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記クランクケースは、前記第1凹部と、前記第2凹部とを備えている
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の内燃機関は、クランク軸及び4つのピストンを備えている。また、内燃機関は、4つの気筒、4つのクランク室、及びオイル室を有している。各気筒は、ピストンを収容している。4つの気筒は、クランク軸の軸線に沿って並んでいる。クランク室は、クランク軸が回転するための空間である。4つのクランク室のそれぞれは、対応する各気筒に接続している。オイル室は、オイルを貯留するための空間である。オイル室は、各気筒とは反対側で4つのクランク室に接続している。内燃機関は、3つの連通路を区画している。各連通路は、隣り合うクランク室を連通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-067005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような内燃機関は、複数のブローバイガス通路を備えている。ブローバイガス通路は、オイル室内のガスをオイルセパレータへと導くための通路である。こうした内燃機関では、各ピストンが往復運動するのに伴って、クランク室及びオイル室に気流が生じる。このクランク室及びオイル室内の気流に想定外の乱流が生じると、過剰な量のオイルがオイルセパレータに流入したり、オイルセパレータ内で適切にオイルを分離できなくなったりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための内燃機関は、クランク軸の軸線に沿う第1方向に順に並んだ気筒である、第1気筒、第2気筒、第3気筒、及び第4気筒と、前記第1気筒に接続する第1クランク室、前記第2気筒に接続する第2クランク室、前記第3気筒に接続する第3クランク室、及び前記第4気筒に接続する第4クランク室と、前記第1クランク室、前記第2クランク室、前記第3クランク室、及び前記第4クランク室に、前記気筒とは反対側で接続し、オイルを貯留するオイル室と、前記第1気筒内で往復運動する第1ピストン、前記第2気筒内で前記第1ピストンとは逆位相で往復運動する第2ピストン、前記第3気筒内で前記第1ピストンとは逆位相で往復運動する第3ピストン、前記第4気筒内で前記第1ピストンと同位相で往復運動する第4ピストンと、前記第1クランク室を前記第1方向とは反対の第2方向側から区画する第1壁、前記第1クランク室及び前記第2クランク室を仕切る第2壁、前記第2クランク室及び前記第3クランク室を仕切る第3壁、前記第3クランク室及び前記第4クランク室を仕切る第4壁、及び前記第4クランク室を前記第1方向側から区画する第5壁と、前記第2壁内に区画され、前記オイル室とオイルセパレータとを繋ぐ第1ブローバイガス通路、前記第3壁内に区画され、前記オイル室と前記オイルセパレータとを繋ぐ第2ブローバイガス通路、及び前記第4壁内に区画され、前記オイル室と前記オイルセパレータとを繋ぐ第3ブローバイガス通路と、前記第2壁内に区画され、前記第1クランク室及び前記第2クランク室を繋ぐ第1連通路、及び前記第4壁内に区画され、前記第3クランク室及び前記第4クランク室を繋ぐ第2連通路と、を備えており、前記第3壁は、前記第2クランク室及び前記第3クランク室を繋ぐ通路を有していない。
【0006】
上記構成によれば、第3壁は第2クランク室及び第3クランク室を繋ぐ通路を有していないため、その通路を介して第2クランク室及び第3クランク室の間でガスが移動することはない。そして、上記構成では、第1ピストン及び第2ピストンの組と第3ピストン及び第4ピストンの組とが、第3壁を境として対称的に往復運動する。これらにより、第3壁から視て第1方向側の空間と第3壁から視て第2方向側の空間とで、対称的な気流が生じやすくなる。その結果、内燃機関の内部の各空間において乱流が生じにくくなる。
【0007】
上記構成において、前記第1連通路は、前記第1ブローバイガス通路に繋がっており、前記第2連通路は、前記第3ブローバイガス通路に繋がっていてもよい。
上記構成において、第1ピストンと第2ピストンとは逆位相で往復運動する。このことから、第1ピストン及び第2ピストンの往復運動の周期に従った規則的なガスの流れが、第1連通路内に生じる。つまり、設計上意図しないような乱流は、第1連通路内に生じにくい。
【0008】
上記構成において、前記第1方向を向いて視たときに、前記第1連通路及び前記第2連通路は、同じ箇所に位置していてもよい。
上記構成によれば、第3壁から視て第1方向側の空間と第3壁から視て第2方向側の空間とで、ガスの流れが、より対称になりやすい。これら2つの空間のガスの流れが対称になるほど、内燃機関の内部において意図しない乱流が生じることは防げる。
【0009】
上記構成において、前記第1気筒、前記第2気筒、前記第3気筒、及び前記第4気筒を区画するシリンダブロックと、前記シリンダブロックに接続するとともに、前記第1クランク室、前記第2クランク室、前記第3クランク室、及び前記第4クランク室を区画するクランクケースと、前記クランクケースに接続するとともに、前記オイル室を区画するオイルパンとを備え、前記シリンダブロック及び前記クランクケースの一方は、前記シリンダブロック及び前記クランクケースの接続面において窪んだ第1凹部と、前記接続面において窪んだ第2凹部とを備えており、前記第1凹部に区画される空間は、前記第1連通路であり、前記第2凹部に区画される空間は、前記第2連通路であってもよい。上記構成によれば、シリンダブロック又はクランクケースに凹部を設けるという簡素な構造で各連通路を実現できる。
【0010】
上記構成において、前記クランクケースは、前記第1凹部と、前記第2凹部とを備えていてもよい。
上記構成によれば、比較的に構造が複雑なシリンダブロックに、各連通路を実現するための構造を採用する必要はない。したがって、第1凹部及び第2凹部に起因してシリンダブロックの構造がさらに複雑になることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】内燃機関の断面図である。
図2図1における2-2線での断面図である。
図3図1における3-3線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<内燃機関の概略構成>
以下、本発明の一実施形態を図1図3にしたがって説明する。先ず、内燃機関100の概略構成について説明する。なお、以下の説明で前後、左右、上下の方向をいうときは、内燃機関100が車両に搭載された状態で、車両の運転席に着座した運転者から視た方向をいう。
【0013】
図1に示すように、内燃機関100は、機関本体10、複数のピストン81、複数のコネクティングロッド82、クランク軸83、吸気管91、及び排気管92を備えている。機関本体10は、ヘッドカバー20、シリンダヘッド30、シリンダブロック40、クランクケース50、及びオイルパン60を備えている。
【0014】
シリンダブロック40の形状は、全体として四角柱形状である。シリンダブロック40は、内部の空間として、4つの気筒41を備えている。気筒41の形状は、略円柱形状である。気筒41は、シリンダブロック40の上端からシリンダブロック40における上下の中央付近まで延びている。気筒41は、燃料と吸気との混合気を燃焼させるための空間である。図2に示すように、4つの気筒41は、クランク軸83の軸線に沿って一列に並んでいる。本実施形態において、内燃機関100は、いわゆる直列4気筒エンジンである。また、クランク軸83は、車両の左右に延びている。本実施形態において、内燃機関100は、いわゆる横置きエンジンである。以下では、4つの気筒41を総称して説明するときには、単に気筒41と呼称する。また、4つの気筒41を区別して説明するときには、右端から左方向に向かう順に、第1気筒41A、第2気筒41B、第3気筒41C、第4気筒41Dと呼称する。
【0015】
図1に示すように、ピストン81は、気筒41の内部に位置している。ピストン81は、コネクティングロッド82を介してクランク軸83に連結している。ピストン81は、気筒41において燃料と吸気との混合気が燃焼することにより、気筒41の内部で往復運動する。そして、ピストン81の往復運動により、クランク軸83が回転する。内燃機関100は、4つの気筒41に対応して、4つのピストン81及び4つのコネクティングロッド82を備えている。以下では、4つのピストン81を総称して説明するときには、単にピストン81と呼称する。また、4つのピストン81を区別して説明するときには、右端から左方向に向かう順に、第1ピストン81A、第2ピストン81B、第3ピストン81C、第4ピストン81Dと呼称する。
【0016】
本実施形態において、内燃機関100は、第1気筒41A、第3気筒41C、第4気筒41D、第2気筒41Bの順に燃焼行程を迎える。そして、各気筒41は、クランク軸83が2回転する度に、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程を繰り返す。したがって、第1気筒41Aが燃焼行程を迎えるときに、第3気筒41Cが圧縮行程、第4気筒41Dが吸気行程、第2気筒41Bが排気行程を迎える。換言すると、第2ピストン81B及び第3ピストン81Cは、第1ピストン81Aとは逆位相で往復運動する。また、第4ピストン81Dは、第1ピストン81Aとは同位相で往復運動する。
【0017】
図1に示すように、シリンダブロック40は、内部の空間として、4つの上空間42を備えている。上空間42は、気筒41の下端に接続している。上空間42は、気筒41の下端からシリンダブロック40の下端まで延びている。車両の前後に沿う上空間42の寸法は、車両の前後に沿う気筒41の寸法よりも大きくなっている。車両の左右に沿う上空間42の寸法は、車両の左右に沿う気筒41の寸法よりも小さくなっている。以下では、4つの上空間42を総称して説明するときには、単に上空間42と呼称する。また、4つの上空間42を区別して説明するときには、右端から左方向に向かう順に、第1上空間42A、第2上空間42B、第3上空間42C、第4上空間42Dと呼称する。
【0018】
図2に示すように、シリンダブロック40は、上空間42を区画する壁として、第1上壁45A、第2上壁45B、第3上壁45C、第4上壁45D、及び第5上壁45Eを備えている。第1上壁45Aは、第1上空間42Aを右方向側から区画する壁である。第2上壁45Bは、第1上空間42A及び第2上空間42Bを仕切る壁である。第3上壁45Cは、第2上空間42B及び第3上空間42Cを仕切る壁である。第4上壁45Dは、第3上空間42C及び第4上空間42Dを仕切る壁である。第5上壁45Eは、第4上空間42Dを左方向側から区画する壁である。
【0019】
図2に示すように、シリンダブロック40は、5つの上凹部49を備えている。上凹部49は、シリンダブロック40の下面から上方に向かって窪んでいる。上凹部49は、第1上壁45A~第5上壁45E内に一つずつ位置している。左方向を向いて内燃機関100を視たときに、5つの上凹部49は、同じ箇所に位置している。左方向を向いて内燃機関100を視たときに、上凹部49に区画される空間の形状は、略半円形状である。上凹部49の内壁面は、図示しないベアリングを介してクランク軸83を上方側から支持している。なお、図2では、クランク軸83を簡略化して図示している。
【0020】
図1に示すように、クランクケース50は、シリンダブロック40の下端に接続している。クランクケース50の構造は、いわゆるラダーフレーム構造である。したがって、クランクケース50は、内部の空間として、4つの下空間51を備えている。下空間51は、クランクケース50の上端から下端まで貫通している。車両の前後に沿う下空間51の寸法は、車両の前後に沿う上空間42の寸法と略同じである。車両の左右に沿う下空間51の寸法は、車両の左右に沿う上空間42の寸法と略同じである。下空間51は、上空間42の下端に接続している。以下では、4つの下空間51を総称して説明するときには、単に下空間51と呼称する。また、4つの下空間51を区別して説明するときには、右端から左方向に向かう順に、第1下空間51A、第2下空間51B、第3下空間51C、及び第4下空間51Dと呼称する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態において、上空間42及び下空間51は、クランク室12を構成している。したがって、図2に示すように、第1上空間42A及び第1下空間51Aは、第1クランク室12Aである。第2上空間42B及び第2下空間51Bは、第2クランク室12Bである。第3上空間42C及び第3下空間51Cは、第3クランク室12Cである。第4上空間42D及び第4下空間51Dは、第4クランク室12Dである。
【0022】
図2に示すように、クランクケース50は、下空間51を区画する壁として、第1下壁55A、第2下壁55B、第3下壁55C、第4下壁55D、及び第5下壁55Eを備えている。第1下壁55Aは、第1下空間51Aを右方向側から区画する壁である。第2下壁55Bは、第1下空間51A及び第2下空間51Bを仕切る壁である。第3下壁55Cは、第2下空間51B及び第3下空間51Cを仕切る壁である。第4下壁55Dは、第3下空間51C及び第4下空間51Dを仕切る壁である。第5下壁55Eは、第4下空間51Dを左方向側から区画する壁である。
【0023】
本実施形態において、第1上壁45A及び第1下壁55Aは、第1クランク室12Aを右方向側から区画する第1壁71である。第2上壁45B及び第2下壁55Bは、第1クランク室12A及び第2クランク室12Bを仕切る第2壁72である。第3上壁45C及び第3下壁55Cは、第2クランク室12B及び第3クランク室12Cを仕切る第3壁73である。第4上壁45D及び第4下壁55Dは、第3クランク室12C及び第4クランク室12Dを仕切る第4壁74である。第5上壁45E及び第5下壁55Eは、第4クランク室12Dを左方向側から区画する第5壁75である。
【0024】
図2に示すように、クランクケース50は、内部の空間として、5つの下凹部59を備えている。下凹部59は、クランクケース50の上面から下方に向かって窪んでいる。下凹部59は、第1下壁55A~第5下壁55E内に一つずつ位置している。左方向を向いて内燃機関100を視たときに、5つの下凹部59は、同じ箇所に位置している。また、各下凹部59は、シリンダブロック40の上凹部49と上下に向かい合っている。左方向を向いて内燃機関100を視たときに、下凹部59に区画される空間の形状は、略半円形状である。下凹部59の内壁面は、図示しないベアリングを介してクランク軸83を下方側から支持している。
【0025】
図1に示すように、オイルパン60は、クランクケース50の下端に接続している。オイルパン60の形状は、底を有する概ね四角箱形状である。したがって、オイルパン60は、内部の空間として、オイル室61を備えている。車両の前後に沿うオイル室61の寸法は、車両の前後に沿う下空間51の寸法と略同じである。車両の左右に沿うオイル室61の寸法は、車両の左端に位置する下空間51の左端から車両の右端に位置する下空間51の右端までの寸法よりも大きくなっている。オイル室61は、4つの下空間51の下端に接続している。したがって、オイル室61は、クランク室12から視て、気筒41とは反対側に接続している。オイル室61は、オイルを貯留可能である。
【0026】
図1に示すように、シリンダヘッド30は、シリンダブロック40の上端に接続している。シリンダヘッド30の形状は、全体として四角柱形状である。シリンダヘッド30は、内部の空間として、4つの吸気ポート31、4つの排気ポート32、及び4つの燃焼凹部33を備えている。燃焼凹部33は、シリンダヘッド30の下面から上方に向かって窪んでいる。燃焼凹部33は、気筒41の上端に接続している。なお、燃焼凹部33、気筒41、及びピストン81は、燃焼室を区画している。
【0027】
吸気ポート31の第1端は、燃焼凹部33に接続している。吸気ポート31の第2端は、シリンダヘッド30の前面に開口している。吸気管91は、シリンダヘッド30の前面に接続している。吸気ポート31は、吸気管91を介して内燃機関100の外部から気筒41へと吸気を導入する。なお、図3では、吸気ポート31の図示を省略している。
【0028】
図1に示すように、排気ポート32の第1端は、燃焼凹部33に接続している。排気ポート32の第2端は、シリンダヘッド30の後面に開口している。排気管92は、シリンダヘッド30の後面に接続している。排気ポート32は、排気管92を介して気筒41から内燃機関100の外部へと排気を排出する。
【0029】
図1に示すように、ヘッドカバー20は、シリンダヘッド30の上端に接続している。ヘッドカバー20の形状は、天板を有する概ね四角箱形状である。したがって、ヘッドカバー20は、内部の空間として、内部空間21を備えている。内部空間21は、図示しない動弁機構等を収容している。
【0030】
<ブローバイガス通路に関する構成>
図1に示すように、クランクケース50は、内部の空間として、3つの上流通路52を備えている。上流通路52は、クランクケース50の上端から下端まで貫通している。上流通路52は、下凹部59から視て前方向側に位置している。上流通路52の1つは、第2下壁55B内に位置している。上流通路52の1つは、第3下壁55C内に位置している。上流通路52の1つは、第4下壁55D内に位置している。左方向を向いて内燃機関100を視たときに、3つの上流通路52は、同じ箇所に位置している。以下では、3つの上流通路52を総称して説明するときには、単に上流通路52と呼称する。また、3つの上流通路52を区別して説明するときには、右端から左方向に向かう順に、第1上流通路52A、第2上流通路52B、第3上流通路52Cと呼称する。
【0031】
図1に示すように、シリンダブロック40は、内部の空間として、3つの中流通路43、及び3つの下流通路44を備えている。中流通路43は、シリンダブロック40の下端からシリンダブロック40における上下の中央付近まで延びている。中流通路43の下端は、上流通路52の上端に接続している。中流通路43の1つは、第2上壁45B内に位置している。中流通路43の1つは、第3上壁45C内に位置している。中流通路43の1つは、第4上壁45D内に位置している。左方向を向いて内燃機関100を視たときに、3つの中流通路43は、同じ箇所に位置している。下流通路44は、中流通路43の上端からシリンダブロック40の前面まで延びている。以下では、3つの中流通路43を総称して説明するときには、単に中流通路43と呼称する。また、3つの中流通路43を区別して説明するときには、右端から左方向に向かう順に、第1中流通路43A、第2中流通路43B、第3中流通路43Cと呼称する。同様に、3つの下流通路44を総称して説明するときには、単に下流通路44と呼称する。また、3つの下流通路44を区別して説明するときには、右端から左方向に向かう順に、第1下流通路44A、第2下流通路44B、第3下流通路44Cと呼称する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態において、上流通路52、中流通路43、及び下流通路44は、ブローバイガス通路13を構成している。したがって、図3に示すように、第1上流通路52A、第1中流通路43A、及び第1下流通路44Aは、第1ブローバイガス通路13Aである。第2上流通路52B、第2中流通路43B、及び第2下流通路44Bは、第2ブローバイガス通路13Bである。第3上流通路52C、第3中流通路43C、及び第3下流通路44Cは、第3ブローバイガス通路13Cである。
【0033】
図1に示すように、内燃機関100は、オイルセパレータ95を備えている。オイルセパレータ95は、シリンダブロック40の前面に固定されている。オイルセパレータ95は、当該オイルセパレータ95の内部に導入されたガスに含まれるオイルを分離可能である。オイルセパレータ95は、シリンダブロック40の下流通路44に接続している。したがって、オイルセパレータ95は、ブローバイガス通路13を介してオイル室61内のガスを導入可能である。なお、オイルセパレータ95内でオイルが分離されたガスは、図示しない接続通路を介してヘッドカバー20の内部空間21へと流入する。図1では、オイルセパレータ95を簡略化して図示している。
【0034】
図3に示すように、クランクケース50は、内部の空間として、第1凹部56、及び第2凹部57を備えている。第1凹部56は、クランクケース50の上面から下方に向かって窪んでいる。第1凹部56は、下凹部59から視て前方側に位置している。第1凹部56は、第2壁72における第2下壁55B内に位置している。第1凹部56は、第1クランク室12Aから第2クランク室12Bまで延びている。したがって、第1凹部56に区画される空間は、第1クランク室12A及び第2クランク室12Bを繋ぐ第1連通路56Zである。第1連通路56Zは、第1ブローバイガス通路13Aにも繋がっている。本実施形態において、クランクケース50の上面は、シリンダブロック40及びクランクケース50の接続面である。
【0035】
第2凹部57は、クランクケース50の上面から下方に向かって窪んでいる。第2凹部57は、下凹部59から視て前方側に位置している。第2凹部57は、第4壁74における第4下壁55D内に位置している。第2凹部57は、第3クランク室12Cから第4クランク室12Dまで延びている。したがって、第2凹部57に区画される空間は、第3クランク室12C及び第4クランク室12Dを繋ぐ第2連通路57Zである。第2連通路57Zは、第3ブローバイガス通路13Cにも繋がっている。
【0036】
本実施形態において、左方向を向いて内燃機関100を視たときに、第1連通路56Z及び第2連通路57Zは、同じ箇所に位置している。なお、第3壁73は、第2クランク室12B及び第3クランク室12Cを繋ぐ通路を有していない。
【0037】
<本実施形態の作用>
内燃機関100の駆動中において、第2気筒41Bが燃焼行程を迎えているとする。このとき、第2ピストン81B及び第3ピストン81Cは、オイル室61に近づくように下方に運動する。このように運動する場合、オイル室61のうち、第3壁73の近傍のガスの圧力が上昇する。すると、図3において実線矢印で示すように、オイル室61のうち、第3壁73の近傍のガスは、第2ブローバイガス通路13Bを介してオイルセパレータ95の内部へと流れる。その結果、オイルセパレータ95の内部の圧力が上昇する。すると、オイルセパレータ95の内部のガスは、第1ブローバイガス通路13Aを介して第1クランク室12A及びオイル室61のうち第2壁72の近傍へと流れる。同様に、オイルセパレータ95の内部のガスは、第3ブローバイガス通路13Cを介して第4クランク室12D及びオイル室61のうち第4壁74の近傍へと流れる。
【0038】
また、内燃機関100の駆動中において、第2気筒41Bが排気行程を迎えているとする。このとき、第2ピストン81B及び第3ピストン81Cは、オイル室61から離れるように上方に運動する。このように運動する場合、オイル室61のうち、第3壁73の近傍のガスの圧力が低下する。すると、図3において二点鎖線矢印で示すように、オイルセパレータ95の内部のガスは、第2ブローバイガス通路13Bを介してオイル室61のうち第3壁73の近傍へと流れる。その結果、オイルセパレータ95の内部の圧力が低下する。すると、第1クランク室12Aのガス及びオイル室61のうち第2壁72の近傍のガスは、第1ブローバイガス通路13Aを介してオイルセパレータ95の内部へと流れる。同様に、第4クランク室12Dのガス及びオイル室61のうち第4壁74の近傍のガスは、第3ブローバイガス通路13Cを介してオイルセパレータ95の内部へと流れる。
【0039】
このように、内燃機関100では、第1ピストン81A及び第2ピストン81Bの組と第3ピストン81C及び第4ピストン81Dの組とが、第3壁73を境として対称的に往復運動する。すると、第3壁73から視て左方側の空間と第3壁73から視て右方側の空間とで対称的な気流が生じる。
【0040】
<本実施形態の効果>
(1)仮に、第3壁73が、第2クランク室12B及び第3クランク室12Cを繋ぐ通路を有しているとする。この場合、その通路を介して第2クランク室12B及び第3クランク室12Cの間でガスが移動し得る。一方、第2ピストン81B及び第3ピストン81Cは同位相で往復運動する。したがって、理想的には、第2クランク室12Bのガスの流れと及び第3クランク室12Cのガスの流れが同じである。その結果、第3壁73が、第2クランク室12B及び第3クランク室12Cを繋ぐ通路を有していても、この通路を介して多くのガスが流れることはない。しかしながら、実際には、第2クランク室12Bのガスの流れと及び第3クランク室12Cのガスの流れとのわずかな違いにより、第3壁73の上記通路にガスが流れることがある。すると、第3壁73の通路を介したガスの移動に起因して、上述した第3壁73から視て左方側の空間と第3壁73から視て右方側の空間との対称的な気流が生じない可能性がある。そして、このようにガスの流れの対称性が乱れると、設計通りに各ブローバイガス通路13でガスが流れることは担保できない。
【0041】
この点、本実施形態において、第3壁73は、第2クランク室12B及び第3クランク室12Cを繋ぐ通路を有していない。そのため、第3壁73の通路を介して第2クランク室12B及び第3クランク室12Cの間でガスが移動することはない。これにより、上述した第3壁73から視て左方側の空間と第3壁73から視て右方側の空間との対称的な気流が、より確実に生じる。その結果、機関本体10の内部の空間において乱流が生じることは抑制できる。なお、このように乱流が抑制できれば、ガスに含まれるオイルが多くなることに起因して過剰な量のオイルがオイルセパレータ95に流入することを抑制できる。また、ガスに含まれるオイルを、オイルセパレータ95内で適切に分離できる。
【0042】
(2)本実施形態において、第1連通路56Zは、第1ブローバイガス通路13Aにも繋がっている。ここで、内燃機関100では、第1ピストン81Aと第2ピストン81Bとは逆位相で往復運動する。そのため、例えば、第2気筒41Bが燃焼行程を迎えているとき、図3において実線矢印で示すように、第1連通路56Zを介して第2クランク室12Bから第1クランク室12Aへとガスが流れる。一方、例えば、第2気筒41Bが排気行程を迎えているとき、図3において二点鎖線矢印で示すように、第1連通路56Zを介して第1クランク室12Aから第2クランク室12Bへとガスが流れる。このように、第1ピストン81A及び第2ピストン81Bの往復運動の周期に従った規則的なガスの流れが、第1連通路56Z内に生じる。すなわち、設計上意図しないような乱流は、第1連通路56Z内に生じにくい。これにより、第1連通路56Zが第1ブローバイガス通路13Aに繋がっていても、第1連通路56Z内で生じる乱流に起因して第1ブローバイガス通路13Aに乱流が生じることは抑制できる。むしろ、第1クランク室12A及び第2クランク室12Bのガスの流れを利用して、積極的に第1ブローバイガス通路13A内でガスを流通させることができる。なお、詳細は省略するが、第2連通路57Zについても同様である。
【0043】
(3)本実施形態において、左方向を向いて内燃機関100を視たときに、第1連通路56Z及び第2連通路57Zは、同じ箇所に位置している。そのため、第3壁73から視て左方側の空間と第3壁73から視て右方側の空間とで、ガスの流れが、より対称的になりやすい。このように2つの空間のガスの流れが対称になるほど、機関本体10の内部において意図しない乱流が生じることは防げる。
【0044】
(4)本実施形態において、第1凹部56に区画される空間が第1連通路56Zとして機能し、第2凹部57に区画される空間が第2連通路57Zとして機能する。これにより、仮に、シリンダブロック40の凹部とクランクケース50の凹部との2つの凹部に区画される空間が第1連通路56Zとして機能する場合に比べて、簡素な構造で第1連通路56Zを実現できる。この点、第2連通路57Zについても同様である。
【0045】
(5)一般的に、クランクケース50の構造に比べてシリンダブロック40の構造は複雑になる傾向がある。この点、本実施形態において、クランクケース50が第1凹部56及び第2凹部57を備えている。これにより、比較的に構造が複雑なシリンダブロック40に、第1連通路56Z及び第2連通路57Zを実現するための構造を採用する必要がない。したがって、第1凹部56及び第2凹部57に起因してシリンダブロック40の構造がさらに複雑になることは抑制できる。
【0046】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
・上記実施形態において、4つの気筒41が燃焼行程を迎える順番は変更してもよい。例えば、内燃機関100は、第1気筒41Aが燃焼行程を迎えるときに、第2気筒41Bが圧縮行程、第4気筒41Dが吸気行程、第3気筒41Cが排気行程を迎える構成でもよい。すなわち、内燃機関100としては、第2ピストン81B及び第3ピストン81Cが第1ピストン81Aとは逆位相で往復運動し、第4ピストン81Dが第1ピストン81Aと同位相で往復運動すれば、4つの気筒41が燃焼行程を迎える順番は変更できる。
【0048】
・上記実施形態において、第1連通路56Z及び第2連通路57Zの形状は変更してもよい。例えば、第1連通路56Zは、第1ブローバイガス通路13Aを迂回して第1クランク室12A及び第2クランク室12Bを繋いでいてもよい。同様に、第2連通路57Zは、第3ブローバイガス通路13Cを迂回して第3クランク室12C及び第4クランク室12Dを繋いでいてもよい。
【0049】
・上記実施形態において、第1連通路56Z及び第2連通路57Zの位置は変更してもよい。例えば、第1連通路56Zは、第2連通路57Zよりも前方に位置していたり、第2連通路57Zよりも後方に位置していたりしてもよい。また、例えば、第1連通路56Zは、第2連通路57Zよりも上方に位置していたり、第2連通路57Zよりも下方に位置していたりしてもよい。すなわち、左方向を向いて内燃機関100を視たときに、第1連通路56Z及び第2連通路57Zが同じ箇所に位置していなくてもよい。なお、第1連通路56Z及び第2連通路57Zは、クランクケース50の上面に開口せず、クランクケース50の内部に位置していてもよい。つまり、第1連通路56Zは、クランクケース50の第2下壁55Bを貫通する貫通孔であってもよい。同様に、第2連通路57Zは、クランクケース50の第4下壁55Dを貫通する貫通孔であってもよい。
【0050】
・上記実施形態において、第1連通路56Z及び第2連通路57Zを構成する部材は変更してもよい。例えば、第1連通路56Zは、クランクケース50の第1凹部56及びシリンダブロック40の凹部により区画される空間であってもよい。また、例えば、第1連通路56Zは、シリンダブロック40の凹部のみにより区画される空間であってもよい。さらに、例えば、第1連通路56Zがシリンダブロック40のみに区画される場合、第1連通路56Zはシリンダブロック40の下面に開口せず、シリンダブロック40の内部に位置していてもよい。つまり、第1連通路56Zは、シリンダブロック40の第2上壁45Bを貫通する貫通孔であってもよい。同様に、第2連通路57Zを構成する部材は変更できる。
【0051】
・上記実施形態において、クランクケース50に代えて、いわゆるクランクキャップを採用してもよい。この場合、クランクキャップが第1下壁55A~第5下壁55Eとして機能する。
【0052】
・上記実施形態において、内燃機関100は、直列4気筒エンジンに限らず、例えばV型8気筒エンジンであってもよい。すなわち、4つの気筒41がクランク軸83の軸線に沿って並んだ内燃機関100であれば、本件技術を適用でき得る。
【符号の説明】
【0053】
10…機関本体
12…クランク室
12A…第1クランク室
12B…第2クランク室
12C…第3クランク室
12D…第4クランク室
13…ブローバイガス通路
13A…第1ブローバイガス通路
13B…第2ブローバイガス通路
13C…第3ブローバイガス通路
20…ヘッドカバー
30…シリンダヘッド
40…シリンダブロック
41…気筒
50…クランクケース
56Z…第1連通路
57Z…第2連通路
60…オイルパン
61…オイル室
71…第1壁
72…第2壁
73…第3壁
74…第4壁
75…第5壁
81…ピストン
82…コネクティングロッド
83…クランク軸
95…オイルセパレータ
100…内燃機関
図1
図2
図3