(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】内燃機関の制御システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/025 20060101AFI20241210BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20241210BHJP
F01N 3/033 20060101ALI20241210BHJP
F02B 37/12 20060101ALI20241210BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F01N3/025 101
F01N3/023 A
F01N3/033 K
F01N3/033 G
F02B37/12 302Z
F02D43/00 301K
F02D43/00 301R
(21)【出願番号】P 2022038909
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川島 一仁
(72)【発明者】
【氏名】津田 正広
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 真由子
(72)【発明者】
【氏名】山本 譲
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賢治
(72)【発明者】
【氏名】原 義高
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-298064(JP,A)
【文献】特開2002-285824(JP,A)
【文献】特開2002-242732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00- 3/38、 9/00-11/00
F02B 33/00-41/10
F02D 41/00-45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1燃料と第2燃料が混合された燃料を使用可能な内燃機関の制御システムであって、
前記内燃機関の排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタの上流に供給する燃料を噴射する噴射弁と、
前記フィルタを再生する前に前記フィルタの上流の排気温度を上昇させる昇温制御を実行する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1燃料と前記第2燃料との混合割合に基づいて、
前記内燃機関の前記噴射弁による噴射量を制御して前記排気温度を上昇させる第1昇温制御、および前記内燃機関の
前記噴射弁による噴射量を維持し、排気流量を制御して前記排気温度を上昇させる第2昇温制御のいずれか一方を優先して実行
し、
前記第1燃料はバイオ燃料を含み、前記第2燃料は前記バイオ燃料と異なる燃料であり、
前記制御装置は、前記第1燃料の混合割合が高いほど、前記第2昇温制御を優先する、
内燃機関の制御システム。
【請求項2】
前記内燃機関に供給される吸気量を調整するスロットル弁と、
前記内燃機関の排気を回収して前記内燃機関の吸気を過給する過給機と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記スロットル弁と、前記過給機と、によって前記内燃機関の排気流量を制御する排気流量制御を実行し、
前記第2昇温制御中は、前記スロットル弁による前記排気流量制御よりも、前記過給機による前記排気流量制御を優先する、
請求項
1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項3】
前記第1昇温制御の前に前記スロットル弁による前記排気流量制御を実行する、
請求項
2に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項4】
前記第1燃料
と前記第2燃料の混合割合が切り替わった場合に、前記第1昇温制御の前に前記
排気流量制御を実行する、
請求項
3に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項5】
前記内燃機関が所定負荷以上で運転される場合、前記昇温制御を禁止する、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気中の粒子状物質を捕集するフィルタが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、バイオ燃料を用いた内燃機関におけるフィルタの再生方法について開示している。このようなフィルタは、フィルタを再生する前に排気温度を上昇させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイオ燃料は、石油由来の燃料に比べて気化しにくい。このため、バイオ燃料によって排気温度を上昇させる場合、燃費が悪化する。さらに、近年、バイオ燃料は、石油由来の燃料と混合されて使用される場合も多い。したがって、バイオ燃料と石油由来の燃料との混合割合に応じて、最適な制御を実行し排気温度を上昇させることが好ましい。
【0005】
本開示の課題は、燃料の混合割合に応じた排気昇温制御を実行する内燃機関の制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1燃料と第2燃料が混合された燃料を使用可能な内燃機関の制御システムであって、前記内燃機関の排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、前記フィルタの上流に供給する燃料を噴射する噴射弁と、前記フィルタを再生する前に前記フィルタの上流の排気温度を上昇させる昇温制御を実行する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1燃料と前記第2燃料との混合割合に基づいて、前記内燃機関の前記噴射弁による噴射量を制御して前記排気温度を上昇させる第1昇温制御、および前記内燃機関の前記噴射弁による噴射量を維持し、排気流量を制御して前記排気温度を上昇させる第2昇温制御のいずれか一方を優先して実行し、前記第1燃料はバイオ燃料を含み、前記第2燃料は前記バイオ燃料と異なる燃料であり、前記制御装置は、前記第1燃料の混合割合が高いほど、前記第2昇温制御を優先する、内燃機関の制御システム。
【0007】
この内燃機関の制御システムによれば、第1燃料と第2燃料の混合割合に応じて第1昇温制御および第2昇温制御のいずれか一方を優先することによって、混合割合に応じた最適な排気昇温制御が実行できる。これによって、燃料消費を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、燃料の混合割合に応じた排気昇温制御を実行する内燃機関の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態による内燃機関の制御システムのシステム図。
【
図2】本開示の実施形態による制御装置が判定する混合割合を示す図。
【
図3】本開示の実施形態による制御装置の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において吸気、または排気の流れる方向に対して上流側を上流と明細書に記し、下流側を下流と明細書に記す。
【0011】
図1に示すように、内燃機関2の制御システム1は、燃料噴射弁(噴射弁の一例)2cと、フィルタ4と、PMセンサ(検知部の一例)6と、排気循環装置8と、燃料タンク10と、給油リッド12と、過給機14と、インタークーラ16と、スロットル弁18と、制御装置20と、を備える。本実施形態の内燃機関2は、燃料タンク10にバイオ燃料(第1燃料の一例)と、軽油(第2燃料の一例)を使用可能なディーゼルエンジンである。内燃機関2は、吸気通路2aから吸気を気筒2bに送り、燃料噴射弁2cから噴射した燃料と混合する。内燃機関2は、ピストン2dで混合気を圧縮し、自着火する。本実施形態の内燃機関2は、車両(例えば、自動車)に搭載される。
【0012】
本実施形態では、内燃機関2は、気筒2bから排出された排気が過給機14のタービン14aを回転させる。タービン14aは、同軸上に配置されたコンプレッサ14bを回転させ、吸気を過給する。過給した吸気はインタークーラ16によって冷却される。しかし、過給機14は必ずしも必要ではない。
【0013】
フィルタ4は、排気を浄化する排気浄化装置3に配置される。フィルタ4は、排気中に含まれる粒子状物質を捕集する。本実施形態では、フィルタ4は、ディーゼルエンジンの粒子状物質(PM)を捕集するディーゼルパーティキュレータフィルタである。フィルタ4の上流には、酸化触媒4aが配置される。排気浄化装置3は、フィルタ4の下流に配置される、図示しないNOxトラップ、または尿素選択還元触媒などを有してもよい。
【0014】
PMセンサ6は、フィルタ4の上流に配置され、粒子状物質の堆積状態を検知する。PMセンサ6は、粒子状物質が堆積すると電流値が変化するセンサである。具体的には、粒子状物質が堆積すると電流が流れやすくなり、電流値が増加する。PMセンサ6は、ヒータ6aを有する。ヒータ6aは、PMセンサ6に堆積した粒子状物質を焼き除去する。PMセンサ6のその他の構成は、既存のPMセンサと同様であればよく、より詳細な説明は省略する。本実施形態では、PMセンサ6は、酸化触媒4aとフィルタ4との間に配置される。これによって、PMセンサ6に燃料の燃え残り等が付着することを抑制できる。しかし、PMセンサ6は、酸化触媒4aよりも上流に配置されてもよい。PMセンサ6は、制御装置20と電気的に接続され、電流値を制御装置20に送信する。また、ヒータ6aの作動は、制御装置20によって制御される。
【0015】
排気循環装置8は、内燃機関2に排気循環ガスを導入する装置である。より具体的には、排気循環装置8は、気筒2bから排出された排気を吸気通路2aに循環する装置である。排気循環装置8は、排気循環通路8aと、排気循環弁8bと、を有する。排気循環通路8aは、排気通路4bと吸気通路2aとを接続する。排気循環弁8bは、排気循環通路8a上に設けられ、排気循環通路8aを開閉することによって、排気から循環された排気循環ガスを吸気通路2aに導入する。排気循環弁8bは、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20によって制御される。制御装置20は、排気循環弁8bを制御し、排気循環ガスの吸気への導入量を制御する。本実施形態では制御装置20は、スロットル弁18を制御し、スロットル弁18を閉じることによって吸気通路2aに負圧を発生させる。制御装置20は、これによっても排気循環ガスの導入量を制御できる。
【0016】
燃料タンク10は、バイオ燃料と軽油とを貯蔵し、燃料噴射弁2cに供給するための装置である。本実施形態では、燃料タンク10は、給油口10aを開閉する給油リッド12と、燃料レベルセンサ10bと、を有する。給油リッド12は、制御装置20と電気的に接続され給油リッド12の開閉状態を制御装置20に送信する。燃料レベルセンサ10bは、制御装置20と電気的に接続され、燃料タンク10の燃料の残存量(燃料レベル)を制御装置20に送信する。
【0017】
制御装置20は、バイオ燃料によって堆積される粒子状物質の堆積量を予め設定した第1堆積量と、軽油によって堆積される粒子状物質の堆積量を予め設定した第2堆積量と、PMセンサ6によって検知した粒子状物質の第3堆積量と、に基づいて、バイオ燃料と軽油の混合割合(混合率)を判定する判定制御を実行する。
【0018】
より具体的には、
図2に示すように、制御装置20は、内燃機関2にバイオ燃料のみを使用した場合における、所定時間中の粒子状物質の堆積量である第1堆積量の変化(
図2の一点鎖線参照)を記憶している。制御装置20は、内燃機関2に軽油のみを使用した場合における、所定時間中の粒子状物質の堆積量である第2堆積量の変化(
図2の破線参照)も記憶している。所定時間は、第1堆積量の変化および第2堆積量の変化を実験によって計測した時間であってもよい。制御装置20は、第1堆積量と、第2堆積量と、PMセンサ6から取得した第3堆積量(
図2の実線参照)と、を比較し、バイオ燃料と軽油の混合割合を判定する。
【0019】
本実施形態では制御装置20は、第1堆積量と第2堆積量とに基づいて、バイオ燃料と軽油の混合割合に応じた推定堆積量(
図2の二点鎖線参照)を演算している。制御装置20は、PMセンサ6の電流値から、実際に排気中に流れる粒子状物質の堆積量に相当する第3堆積量を取得する。制御装置20は、取得した第3堆積量と推定堆積量を比較することによって、推定した混合割合に対して、実際の混合割合が高いか低いかを判定する。制御装置20は、推定した混合割合に対して第3堆積量が多い場合、軽油の割合を推定した割合よりも高く補正する。一方、制御装置20は、推定した混合割合に対して第3堆積量が少ない場合、バイオ燃料の割合を推定した割合よりも高く補正する。これによって、制御装置20は、混合割合を判定できる。なお、PMセンサ6は、粒子状物質がPMセンサ6のセンサ素子に堆積するまでの一定期間は、不感帯を有する。制御装置20は、この間も、推定堆積量を演算している。
【0020】
制御装置20は、排気循環ガスの導入割合を決定し、排気循環ガスの導入量が、エアクリーナ32に取り付けられたエアフロセンサ22によって検知した吸気量に対して決定した導入割合となるように、排気循環弁8bの開度を制御する。制御装置20は、内燃機関2の運転領域ごとに排気循環ガスの導入割合を定めたマップに基づいて、排気循環ガスの導入割合を決定してもよい。
【0021】
また、制御装置20は、フィルタ4を再生する前にフィルタ4の上流の排気温度を上昇させる昇温制御を実行する。制御装置20は、昇温制御において、燃料噴射弁2cによる噴射量を制御して排気温度を上昇させる第1昇温制御、および酸化触媒4aに流れる排気流量を制御して排気温度を上昇させる第2昇温制御のいずれか一方を優先して実行する。
【0022】
本実施形態では、制御装置20は、第1昇温制御において、内燃機関2の膨張行程の後半に燃料噴射弁2cから燃料を噴射する。これによって、燃料がフィルタ4の上流に配置される酸化触媒4aに供給される。酸化触媒4aに供給された燃料は、酸化触媒4aに拡散し、吸着され、燃焼反応する。これによって、酸化触媒4aを通過した排気は、温度が上昇する。この結果、フィルタ4に流入する排気が高温になる。高温になった排気は、フィルタ4に捕集された粒子状物質を燃焼させ、フィルタ4を再生する。
【0023】
制御装置20は、第2昇温制御において、過給機14と、スロットル弁18と、を制御して、酸化触媒4aに流れる排気流量を制御する排気流量制御を実行する。より具体的には、制御装置20は、過給機14による過給圧を低下させることによって、吸気量を減少させる。一方、燃料噴射弁2cからの燃料噴射量は維持し、酸化触媒4aに空燃比が濃い混合気を供給する。これによって、燃料が酸化触媒4aと燃焼反応し、排気温度が上昇する。過給圧の低下は、ウェイストゲートバルブ14cの開度を低下させることで実現できる。また、タービン14aが可変ベーン式の場合は可変ベーンを大きくすることによっても過給圧を低下させることができる。また、制御装置20は、スロットル弁18の開度を低下させることによっても、吸気量を減少させることができる。これによって、過給圧を低下させることと同様に、排気温度が上昇する。
【0024】
このほか、制御装置20は、エアフロセンサ22、およびアクセルポジションセンサ30aなどのセンサから取得した値に基づいて、内燃機関2が所望の運転状態となるように、燃料噴射弁2c、排気循環弁8b、および過給機14の過給圧、などの各装置の制御を実行してもよい。制御装置20は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。制御装置20は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関2が、所望の運転状態となるように各装置を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0025】
次に、
図3のフローチャートを用いて、制御装置20が実行する制御について説明する。なお、制御装置20は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると制御手順を開始する。
【0026】
ステップS1では、制御装置20は、バイオ燃料と軽油の混合割合(混合率)を取得する。制御装置20は、混合割合を取得するとステップS2に処理を進める。
【0027】
ステップS2では、制御装置20は、フィルタ4の再生条件が成立したか否か判断する。本実施形態では、制御装置20は、フィルタ4の再生条件が成立したか否かを、フィルタ4の粒子状物質の堆積量が所定量以上か否かによって判断する。所定の粒子状物質が堆積したか否かは、例えば、フィルタ前後の圧力差などによって検知可能である。その他、PMセンサ6によって検知してもよい。
【0028】
さらに本実施形態では、制御装置20は、フィルタ4の粒子状物質の堆積量が所定量以上となったか否かに加えて、内燃機関2の運転状態、および車両の状態に応じて再生条件が成立したか否か判断する。制御装置20は、内燃機関2の燃料噴射量、排気温度、内燃機関2の回転数、などの内燃機関2の運転状態がフィルタ4の再生に適した条件か否かによって、再生条件が成立したか否か判断してもよい。また、制御装置20は、車両の速度がフィルタ4の再生に適した条件か否かによって、再生条件が成立したか否か判断してもよい。制御装置20は、フィルタ4の再生条件が成立していると判断すると(ステップS2 YES)、ステップS3に処理を進める。制御装置20は、フィルタ4の再生条件が成立していないと判断すると(ステップS2 NO)、ステップS1に処理を戻す。
【0029】
ステップS3では、制御装置20は、バイオ燃料の割合が所定割合以上か否か判断する。所定割合は、酸化触媒4aにおいて燃料を燃焼反応させるために必要な燃料の気化度合いに基づいて設定すればよい。一般的に、バイオ燃料の混合割合が高いほど、燃料の気化が悪くなる。このため、例えば所定割合を30パーセント(バイオ燃料3割、軽油7割)としてもよい。いずれにせよ所定割合は、バイオ燃料の混合割合が高いほど、第2昇温制御を優先的に実行できるように決定すればよい。制御装置20は、バイオ燃料の割合が所定割合以上であると判断すると(ステップS3 YES)、ステップS4に処理を進める。制御装置20は、バイオ燃料の割合が所定割合以上ではないと判断すると(ステップS3 NO)、後述するステップS10に処理を進める。
【0030】
ステップS4では、制御装置20は、第2昇温制御を実行する。制御装置20は、第2昇温制御を実行すると、ステップS5に処理を進め、過給機14による排気流量制御をスロットル弁18による排気流量制御に優先して実行する。スロットル弁18の開度を低下させると、ポンプロスが大きくなる。これによって、内燃機関2の燃費が悪化しやすい。このため、制御装置20は、過給機14による排気流量制御をスロットル弁18による排気流量制御に優先して実行することによって、ポンプロスを抑制し、燃費の悪化を抑制する。制御装置20は、過給機14による排気流量制御を実行すると、ステップS6に処理を進める。
【0031】
ステップS6では、制御装置20は、過給機14による過給圧の低下が限界点か否か判断する。制御装置20は、タービン14aの回転数の低下や、コンプレッサ14bの回転数が低下し、アクセルペダル30の踏み込み量に応じた内燃機関2の出力の維持が困難になる状況であると判断した場合、過給機14による排気流量制御が限界点であると判断してもよい。制御装置20は、過給機14による過給圧の低下が限界点であると判断した場合(ステップS6 YES)、ステップS7に処理を進める。
【0032】
ステップS7では、制御装置20は、スロットル弁18による排気流量制御(スロットル制御)を実行する。このように、制御装置20は、過給機14による排気流量制御を、スロットル弁18による排気流量制御よりも優先することによって、ポンプロスを抑制する。制御装置20は、スロットル弁18による排気流量制御を実行すると、ステップS8に処理を進める。
【0033】
ステップS8では、制御装置20は、排気流量制御が限界点か否か判断する。制御装置20は、スロットル弁18の開度をこれ以上低下させた場合、アクセルペダル30の踏み込み量に応じた内燃機関2の出力の維持が困難であると判断した場合、排気流量制御が限界点であると判断してもよい。制御装置20は、排気流量制御が限界点ではないと判断する場合(ステップS8 NO)、ステップS9に処理を進める。
【0034】
ステップS9では、制御装置20は、フィルタ4の再生が終了したか否か判断する。本実施形態では、制御装置20は、フィルタ4の前後の圧力差が所定範囲内である場合、フィルタ4の再生が終了したと判断する。制御装置20は、フィルタ4の再生が終了したと判断した場合(ステップS9 YES)、ステップS1に処理を戻す。
【0035】
ステップS2において、制御装置20がフィルタ4の再生条件が成立していないと判断した場合(ステップS2 NO)、制御装置20は、フィルタ4の再生を実行しない、または禁止するために、ステップS1に処理を戻す。
【0036】
例えば、制御装置20は、内燃機関2が所定負荷で運転される場合、フィルタ4の再生条件を成立していないと判断し、昇温制御を禁止する。所定の負荷は、例えば、アクセルペダル30が全開の場合である。このような場合、内燃機関2に要求される出力が高い。このため、制御装置20は、燃料をフィルタ4の再生ではなく内燃機関2の出力に使用する必要がある。
【0037】
また、例えば、内燃機関2が低回転で運転され、車両の速度が低い状態では、フィルタ4の再生によって内燃機関2の回転数が上昇すると、車両のユーザに不快感を与える。制御装置20は、このような状態では、再生条件が成立していないと判断してもよい。いずれにせよ、制御装置20は、内燃機関2の運転状態や、車両の走行状態に応じて、フィルタ4の再生条件が成立していないと判断し、フィルタ4の再生を禁止してもよい。
【0038】
ステップS3において、制御装置20がバイオ燃料の割合が所定割合未満であると判断した場合(ステップS3 NO)、制御装置20は、ステップS10に処理を進める。ステップS10以降については、後述する。
【0039】
ステップS6において、制御装置20が過給機14による過給圧の低下が限界点でないと判断した場合(ステップS6 NO)、制御装置20は、ステップS5に処理を戻し、過給機14による排気流量制御を継続する。
【0040】
ステップS8において、制御装置20が、排気流量制御が限界点であると判断した場合(ステップS8 YES)、制御装置20は、ステップS12に処理を進め、第1昇温制御を実行する。このように、制御装置20は、第2昇温制御がこれ以上実行できない場合、第1昇温制御を実行する。言い換えると、制御装置20は、バイオ燃料が所定割合以上の場合に、第2昇温制御を優先して実行する。ステップS8において、制御装置20が、排気流量制御が限界点ではないと判断した場合(ステップS8 NO)、制御装置20は、ステップS9に処理を進める。ステップS9では、制御装置20は、フィルタ4の再生が終了したか否かを判断する。
【0041】
ステップS9において、制御装置20がフィルタ4の再生が終了していないと判断した場合(ステップS9 NO)、制御装置20はステップS3に処理を戻し、混合割合の変化がない場合は、第2昇温制御を継続する。制御装置20がフィルタ4の再生が終了していると判断する場合(ステップS9 YES)、制御装置20は、ステップS1に処理を戻す。
【0042】
ステップS10では、制御装置20は、給油がされたか否か判断する。本実施形態では、制御装置20は、給油リッド12の開閉状態を検知し、給油リッド12が開いた場合に、給油が開始されたと判断する。その他、制御装置20は、燃料レベルが上昇したと判断した場合に給油がされたと判断してもよい。制御装置20は、給油があったと判断した場合(ステップS10 YES)、ステップS11に処理を進める。
【0043】
ステップS11では、制御装置20は、スロットル弁18による排気流量制御を実行する。給油があった場合は、燃料が入れ替わった可能性がある。これによって、混合割合も変化した可能性がある。このような場合、第1昇温制御の前に、スロットル弁18による排気流量制御を実行することによって、より早くフィルタ4に流れる排気を昇温できる。これによって、第1昇温制御中の燃料消費を抑制できる。制御装置20は、スロットル弁18による排気流量制御を実行すると、ステップS12に処理を進める。ステップS12では、制御装置20は、第1昇温制御を実行する。
【0044】
制御装置20は、ステップS12で、第1昇温制御を実行すると、ステップS9に処理を進める。制御装置20は、給油によって混合割合が変化していない場合、第1昇温制御を続ける。制御装置20は、ステップS1からステップS12までの処理を所定時間毎に繰り返し実行する。
【0045】
以上説明した通り、本開示の内燃機関2の制御システム1によれば、バイオ燃料と軽油の混合割合に応じて第1昇温制御および第2昇温制御のいずれか一方を優先することによって、混合割合に応じた最適な排気昇温制御が実行できる。これによって、燃料消費を抑制できる。
【0046】
さらに、本開示の内燃機関2の制御システム1によれば、バイオ燃料の混合割合が高いほど、第2昇温制御を優先し実行する。言い換えると、バイオ燃料の混合割合が低く、気化しやすい軽油の割合が多い場合は、第1昇温制御を優先し実行する。これによって、フィルタ4の再生による燃料消費の悪化を抑制しつつ、内燃機関2の出力低下も抑制しやすい。
【0047】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0048】
(a)上記実施形態では、フィルタ4を用いたディーゼルエンジンを例に説明したが、本開示はこれに限定されない。内燃機関2は、ガソリンエンジンであってもよい。この場合、内燃機関2は、バイオエタノール燃料(第1燃料の一例)と、ガソリン(第2燃料の一例)と、を使用可能な内燃機関2であってもよい。また、この場合、フィルタ4は、ガソリンパーティキュレートフィルタであってもよい。
【0049】
(b)上記実施形態では、昇温制御において、酸化触媒4aに燃料噴射弁2cから燃料を供給し、燃料を酸化触媒4aで燃焼させることによって排気温度を上昇させる例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。酸化触媒4aの上流に設けた、燃料噴射弁2cと別の噴射弁、例えば排気管に別途、噴射弁を設けることによって、酸化触媒4aに燃料を供給してもよい。
【0050】
(c)上記実施形態では、内燃機関2の制御システム1を、ディーゼルエンジンを搭載する車両に適用した例を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、内燃機関2の制御システム1を、外部充電または外部給電が可能なプラグインハイブリッド車両(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)に適用してもよい。
【0051】
(d)上記実施形態では、制御装置20がバイオ燃料と軽油の混合割合を判定する判定制御を実行し、混合割合を取得する例を用いて説明したが本開示はこれに限定されない。制御装置20は、例えば、燃料タンク10や燃料タンク10に接続される燃料配管等の燃料系に設置した、バイオ燃料と軽油の混合割合を検知可能なバイオ燃料混合率センサの出力値を用いて、混合割合を取得してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 :制御システム
2 :内燃機関
2c :燃料噴射弁
4 :フィルタ
14 :過給機
18 :スロットル弁
20 :制御装置